作家でごはん!鍛練場
クレヨン

光の速さで

 犬の唸り声みたいな音がする。だけど、数学の授業中に犬がうなるわけがない。謎の音は、考えている間も鳴り続けている。どこで、何が鳴っているのか。
「なんか変な音、鳴ってね?」
 俺は音の原因が知りたくなってクラスのみんなに尋ねてみる。するとみんなは耳をすましはじめる。
「音なんて聞こえないけど」
 やがて、立花が言う。
「いや、今も聞こえるから。なんか、ブーンっていう音がさ」
「いや、聞こえないって」
 立花はもう一度、言う。
「はい、音の話はあとで、休み時間とかにしてね。今は授業中だから」
 加藤先生は言う。
 結局、音のことはうやむやになる。誰も、俺の聞いたような音は聞こえなかったみたいだ。あの音を聞いたのは俺だけらしい。
 俺だけにしか聞こえない音なんて、変だ。音っていうのは、みんなに、平等に聞こえるものだ。そうじゃないとすれば、それは幻聴だ。でも、幻聴っていうのは、頭のおかしいやつにしか聞こえないものだ。しかし俺は頭のおかしいやつじゃない。
俺にだけあの音が聞こえたのはきっと、俺の耳が人並外れていいからだろう。そうやって考えたほうが怖くないし、むしろ自分に才能があるみたいでテンションがあがる。
そのあとは何事もなかった。変な音を聞いたからといって、体調不良になることもなかったし、普通に部活を終えて帰った。
 部活を終えて家に帰る頃になると、猛烈に腹が減っている。だけど今日の腹の減り具合は尋常じゃない。いつものが五なら、今日の減り具合は十一だ。十点満点の十一。つまり限界を突破してるってことだ。
 俺は家に帰ってすぐ、夕飯ができるのも待たずに、戸棚からポテトチップスを取り出す。普段ならそんなことはしない。けれども今は死ぬほどおなかが減っている。
 ポテトチップスを一枚ずつ食べるのももどかしくて、まとめてつかみだしたものを一気に口の中にほおばる。
 なんか変だ、という気がする。まる一日もごはんを食べなかった遭難者みたいに腹が減っている。
「雄太、そんなにおかしばっかり食べると、夕飯食べられなくなるよ」
 母さんは言う。
「大丈夫、なんかすげーおなかすいてるんだ」
「それは夕飯食べてないからでしょ。もう少しでできるから待ってなさい」
 母さんの言葉を聞いて少ししてから、ポテトチップスを食べ終えてしまう。それから少し待っていても夕飯はできない。
 母さんのもうすぐ、は信用できない。特に夕飯の時のやつはそうだ。どれくらい信用できないかっていったら、母さんの言うもうすぐの間に短めのアニメを一本見終わってしまうぐらい、あてにならない。
 死ぬほど待ちわびたところで、ようやく夕飯ができあがる。その日の夕飯はチャーハンと餃子だった。
 ポテトチップスを一袋食べ終えたあとにもかかわらず、チャーハンを三杯おかわりして、餃子も十二個食べる。
 夕飯を食べている途中で、強烈な睡魔に襲われる。おなかはいっぱいになっていなかったが、それ以上に眠くて、とてもごはんを食べ続けられそうにない。
 俺は食器を片付けると、早々に自分の部屋に戻ってしまう。歯磨きをしたりとか、風呂に入ったりとか、いろいろやらなきゃいけないことがあるのはわかっている。しかし今にも倒れそうなほど眠くて、何もできそうにない。
 俺はベッドに直行し、布団に入る。
 目が覚めると、部屋の中が明るい。照明をつけっぱなしにして寝てしまったのかと思ったがそうでもない。部屋の中が明るいのは、朝日が差し込んでいるからだった。ほんの少し、仮眠を取るつもりだったはずなのに、どうやら朝まで眠りこけてしまったらしい。
 俺は起き上がって時計を見る。時計の針は八時十一分を指していた。学校の始業時間は八時半。学校へ行くまでには三十分くらいかかる。完全に寝坊している。
 俺は慌てて学校へ行く支度を始める。準備をするために予定帳を見て、一時間目が体育だと気づく。小野田の授業に途中から参加するなんて最悪だ。何を言われるかわからない。
 朝からいきなり説教されるのは嫌だ、と思って死ぬ気で支度する。幸い、持って行くものはそんなにない。教科書は全部、学校に置いてある。
 家を出るときに、テレビの画面を見たら、八時半を過ぎていた。間に合うとは思えなかった。しかし朝礼には間に合わなくても、一時間目に間に合えばいい。
 とにかく死ぬ気で走らなければ、と思って家を出て走り始める。
 全速力で走ろうと駆け出した瞬間、体がふわっと浮いたような感覚がする。それと同時に体の動きが止まる。
 目の前の景色がおかしくなる。建物や空などの何もかもが、ぐっと俺のほうに向かって近づいて来る。目を向けていないのに、なぜか後ろにある建物も迫ってきているのが見える。まるで、この世界が紙箱の内側に絵を描いただけのものでしかなくて、それをぐしゃっと押しつぶしたみたいだ。
 押しつぶされて、俺のすぐそばに来た場所は、俺の体に触れて、それから俺の内側へと消えていく。
 消えていく景色を茫然と眺めていると、途中で学校の校門が見える。学校だ、と思っていると、学校の景色が急に、視界いっぱいに広がる。
 気が付けば、俺は学校にある、校門の前に立っていた。校門はすでに閉められていて、誰もいない。
俺はあたりを見回してみる。体はふわふわしてないし、世界は押しつぶされてもいないし、俺の中へ消えていったりもしていない。世界は、いつもと変わらない様子を見せている。
 しかしなぜ、俺は学校にいるのか。ついさきほどまで俺は、家の前にいたはずだ。家からここへ来た時の記憶もない。世界がおかしくなっている間に、勝手に学校に移動していた。
 この世界がおかしいのか、それとも俺がおかしいのか、わからない。だけど、そんなことを考えている暇はない、ということを思い出す。俺は学校に遅刻しているのだ。
 俺は肩にかけていたバッグから、スマホを取り出して時間を見る。八時三十三分。それを見て目を疑う。家を出てから、たった一分ぐらいしか経っていない。家から学校まで三十分かかる。それは間違いない。たった一分でここまで来られるわけがない。
 時計が壊れていたのか。時計が進みすぎていて、本当は八時なのに、八時半になっていたのか。そんなわけがない。テレビに表示される時間が進みすぎるなんて話、聞いたことがない。
 何が起きたのかはわからないが、とにかく遅刻であることには変わりない。俺は急いで歩き始める。走ることはできない。さっきは、走り出した途端に世界がおかしなことになった。また変なことになったら困る。
 二階にある自分の教室へ俺は入っていく。みんなはまだ教室にいる。しかし全員着席している。朝礼の途中だったらしい。
「おい、雄太。遅刻だぞ」
「すいませーん」
 俺はうわの空で謝りながら、自分の席に着く。先生の話を聞こうとするが、途中から来たのでよくわからない。わからないところを聞き流しているうちに、いつの間にかまた、さっきのことを考えている。
 朝を出たときには間違いなく八時半を過ぎていた。そして家を出た直後に変なことが起きて、一分後には学校にいた。
 俺はバカだから、あれがなんなのか考えても、答えはわからない。とにかくわかるのは、たった一分で、学校まで来たってこと。ぼーっとしてた時間とかをのぞいたら、ほぼ一瞬で学校まで移動したってこと。
 多分、世界がおかしくなったんじゃない。俺がおかしくなったんだ。無意識のうちに、どうにかして、一瞬で学校まで来てしまったのだ。
 でもいつからこんなことができるようになったのか。昨日、何かおかしなことがあっただろうか。特に、変わったことはなかったように思う。しいてあげるとすれば、授業中に変な音が聞こえたことぐらいだ。だけど、ただ音を聞いただけでこんなことになるとは思えない。
 それよりも気になるのは、俺がもう一回あれをできるのかってことだ。家に帰ったら、確かめなきゃいけないことがいっぱいある。
「おーい、起きてるかー? おーい」
 その声とともに、俺の視界の前で手が現れて、上下に揺れる。振り向くと、中也が俺を見ているのがわかる。
「起きた?」
「いや、寝てねえから」
「いや、どう考えたって寝てたでしょ。起立のときも座ったままだったし、見てて、めっちゃびびったかんね」
 自分が朝、体験したことは中也にも話す気にはなれない。このことはまだ、自分だけの秘密にしておきたい。
「疲れてたんだよ。朝起きたら、残り時間に十分くらいだったからよ、間に合わねえつって、もう光の速さで走ってきたからね」
「黄猿かよ。もう、高校卒業したら海軍になれよ」
「やだよ、俺は海賊王になるんだ」
 くだらない会話をしてやり過ごしたあとは、いつも通りを装った。割とうまくごまかせたと思う。それにみんな、俺が悩んだり考えたりするとは思っていないはずだ。なにしろ俺のあだ名はマッドハッター。アリス・イン・ワンダーランドに出てきたあのマッドハッターだ。でもジョニー・デップが演じたみたいにかっこいいっていう意味じゃない。マッドハッターの真似をしてたらそんなあだ名がついたってだけだ。とにかく、そういうくだらないことをするやつだと思われてる。
 二時間目の数学が終わった後で、中也から、東京タワーに隕石が衝突したという話を聞いた。昨日の午前に、隕石が東京タワーのてっぺんあたりを直撃して、東京タワーのてっぺん部分が地上に落ちたらしい。東京タワーの壊れた破片がぶつかって、一人死んだらしい。
 そのニュースを教えてくれた中也によると、隕石が東京タワーに衝突した時刻はちょうど、俺が変な音を聞いたと言い出した時刻らしい。
「もしかして俺が聞いた音って、その音なんかな」
 俺は言う。俺の言葉を聞いた中也は爆笑する。
「そんなわけねーだろ。東京から静岡まで、どんだけ離れてると思ってるんだよ」
「どんだけ離れてるんだよ?」
「そりゃ、スーパーめちゃくちゃ離れてるんだよ。」
「なんだよそれ。全然わかってねえじゃんか」
 中也はそのニュースのことをたいして深く考えていないようだ。しかし俺は真剣にならざるを得ない。二つのことが同じ時間に起きたということが、俺には偶然とは思えない。
 その隕石と東京タワーのせいでおかしくなってしまったのか。その隕石はもしかして、なんかやばい石だったのか。
 いくら考えてもわからない。そもそもバカな俺じゃ、どんなに脳みそをフル回転させたって正解にかすりもしないだろう。
 だがそれなら、俺よりも頭のいいやつに考えてもらえばいい。それぐらいのことは俺でもわかる。
 この学年で一番頭がいいやつといったら、牧野だ。去年の期末テストも学年一位だったようなやつだ。俺よりはだいぶましな答えを考え付くはずだ。
 昼休み、俺は牧野のところへ行く。牧野は俺と同じクラスにいる。牧野はいつものように、一人で弁当を食べている。一人で弁当を食べていて寂しくないのか。それとも、友達がいないのだろうか。
「よお、眼鏡。元気か?」
 俺はいつも、牧野のことを眼鏡、と呼んでいる。眼鏡ってなんとなく頭がよさそうな印象がある。それに牧野は眼鏡をかけている、というよりも、眼鏡に牧野がついている、というような気がする。眼鏡がなかったら、牧野だとわからないんじゃないかって気がする。
 牧野は箸を止めて、俺のほうを見る。
「元気だけど。あと、眼鏡って呼ぶのやめてくれる?」
「おい、そんなに怒るなよ。知的でいいじゃん、眼鏡君って。それに俺は、ただ話を聞きたいだけなんだって。別にお昼の邪魔はしないからさ」
「話かけられてる時点で、すでに邪魔をしているってことがわからないの?」
「いや、食べながらでいいから聞いてほしい話があるんだよ。眼鏡の大好きな科学の話だぜ」
「あ、そう。もう勝手に話せばいいじゃん。僕は弁当を食べてるから」
「おう、そうするぜ」
 牧野は宣言通り、再び弁当を食べ始める。俺は牧野の左の席から椅子を取ってきて牧野の前に座る。
「もし仮にだぜ、ある人がめちゃくちゃ急いでいたとするじゃないか。そして走り出した途端、急に体がふわーっとして、世界がぐしゃっとつぶされたみたいに俺に近づいてきて、うわーって思ってるうちに、いつの間にかブラジルにいたとしたらよ、何が起きたと思う?」
「ごめん、ちょっと何言ってるのかわからない」
「説明が下手だってことぐらいわかってるよ。でも、なんとか理解してくれよ」
「いや、それ以前に何を聞きたいのかがわからない。何が起きたのか、って言ったらそれは多分、言った通りのことが起きたんだと思う。本当に聞きたいのは、なぜそんなことが起きたのか、じゃないの?」
 さすがは眼鏡だ。俺のへたくそな説明から、話の核心をしっかり掘り出してくる。
「おお、そうだ。なぜこんなことが起きたんだ?」
「その人は、ブラジル行きの飛行機の中で夢でも見てたんじゃない?」
「違うんだよ! そいつは、一瞬で日本からブラジルまで移動したの。飛行機になんか乗っていないんだってば」
「あのさ、どの漫画で読んだ話なの? それの原作を読んで考えるから、教えてよ」
「漫画じゃねえよ。俺の想像。フィクションってやつだよ」
「漫画でも想像でも両方、フィクションだけどね。まあいいや、一瞬でってことは、一秒とかそれぐらいってことだよね?」
「そう」
 牧野は箸を止め、考え始める。
「この世界では、光より速く移動することはできない。もし、日本から地球の裏側まで、一秒以内に移動できるものがあるとしたら、それはニュートリノだけだと思う」
「おい、俺にわからない言葉を使うなよ。ニュートリノってなんだよ」
「ニュートリノっていうのは、光の速さで動ける粒で、地球を通り抜けられるし、今も僕たちの体を通り抜けてる。それだったら、ここから、地球を通ってそのまま、ブラジルまで行ける」
「ワープとかじゃねえのか?」
 俺はどちらかといえば、あれはワープだと思っていた。なぜなら、どこかを通り抜けた覚えなどないからだ。それに、光の速さで動いた覚えもない。
「ワープだったら、日本のある場所と、ブラジルのある場所をくっつけて移動することになる」
 牧野は両掌をくっつけながら、言う。
「くっつくわけねえだろ。何言ってんだ、お前?」
 今、俺のいるこの場所と、ブラジルをくっつけようっていったって、どうやるというのだ。地球をぺしゃんこにすれば、くっつくかもわからないが、その代わり、地球が滅亡してしまう。
「仮定の話だよ。君のと同じ、想像だ。たとえるなら、どこでもドアでやってるようなことをやろうって話だよ。どこでもドアがあれば、一秒でブラジルまで行けるだろ?」
「ああ、どこでもドアか。確かにどこでもドアがあれば、行けるよな」
「だから、日本からブラジルまで行く方法は、二つある。一つは、光の速さで移動すること。もう一つは、どこでもドアを使うこと。この場合、どこでもドアみたいな何かを使ったと考えるほうが、まだ考えやすいと思う。ただしこれだと、世界が押しつぶされる様子を見た、とかそういうことは起こりえない」
「じゃあ、結局何が起きたんだよ?」
「その人は、日本からブラジルまで一瞬で来た、と思う程度には、麻薬でラリってたってことだと思う」
「結局、幻覚じゃねえか! 俺は麻薬なんかやってねえよ」
「想像の話だろ。なんで君のことになるんだよ」
「いや、そりゃおめえ、想像だよ。俺の話じゃねえよ。だからよ、それじゃ一瞬で、いけねえだろ」
「一瞬で移動するってことは、何かを見る時間もないんだよ。光の速さで動いたら、光が目に入る前にブラジルにいることになる。道の途中に何かあっても、何も見えないはずだ。どこでもドアを通っていったら、向こうに見えるのはブラジルだけ。あっという間にブラジルの景色を目にすることになる。君の話は実現しないんだよ」
 実現しない、と言われても困る。今朝のようなことはありえない、なんてことぐらい、俺が一番よくわかっている。それでも間違いなく、あれは起きたし、俺は一瞬で移動した。
「わかったよ。要するに俺の話はめちゃくちゃだってことだな。作り話が下手くそで、悪かったな」
「そこまでは言ってない。それと、ありえないとは言ったけど、科学は絶対じゃない。科学にもわからないことは多くある。もし仮に、君の言ったようなことが実際に起きたのだとすれば、間違ってるのは君じゃない。間違っているのは科学の方だ。それだけは言えるよ」
 科学が間違えることなんてあるんだろうか? アインシュタインとかエジソンとか、俺よりもずっと頭のいいやつらが考えた理論で、この世のすべては説明できるんじゃないのか。それらが間違っているっていうよりは、俺がラリってたっていう方がまだしもありえそうな気がする。
「よくわかんないけど、ありがとよ。昼飯の邪魔して悪かったな。今度なんかお礼するわ」
「別にいいよ」
 牧野は言う。多分、こういうことを言うせいで友達ができないんだと思う。あと元気がない。俺と牧野を足して二で割ったらちょうどいいんじゃないだろうか。でも俺は牧野みたいに暗くなりたくないから、牧野を足したくない。牧野の知能だけ欲しい。
 

 その日の夕飯は、うどんだけだった。
「母さん、おかずねえの?」
「あんたね、うちにはもうそんな贅沢してる金なんかないんだよ。あんたも節約、しなさいよね。小遣いもちょっと、減らさなきゃならないから」
「はあ? 減らすほど多くねえじゃんか、俺の小遣い」
「明日から、昼ごはん代しか出せないから。百円でどうにかして」
「百円でどうにかできるわけねえだろ。二百円にしろよ、せめて」
「購買のパンって百円で買えないの? それなら二百円出すけど、無駄遣いしないでね」
「おい、勘弁してくれよ。なあ、親父。二百円じゃパン一個しか買えないよ。なんとかしてくれよ」
 俺はそれまで黙っていた親父に話を振る。
「ん、ああ、そうだな、悪い雄太、ちょっとだけ頑張ってくれ。仕事見つけるまでの間、辛抱してくれないか?」
「そりゃ待つけどよお、二百円は少ないぜ」
「ごめん」
 父さんは机に両手をついて、深く頭を下げる。
「ちょっとだけ、我慢してくれ」
 父さんにそこまでされると、何も言えない。父親が頭を下げる姿なんて見たくなかった。
「いいよ、我慢するよ。もういいよ」
「すまない」
 父さんは再び頭をあげてごはんを食べ始める。
 俺はさっさとご飯を食べ終えて、外に出る。父さんのあんな姿を忘れたくて外に出たのもあるが、別の目的もある。もう一度、あの時と同じことができるのか、確かめてみたい。あれは俺の妄想だったのかどうか、知りたい。
 俺は家の外に出て、思い切り走ってみる。だが普通に走れただけで、ワープなどできない。すぐに俺は走るのをやめる。
 やはり、朝のようにはできないらしい。家の前に変なものがあるわけでもない。学校に一瞬で行くことなどできない。
  あの時は、とにかくめちゃくちゃ急いでた。早く学校に着かなきゃ、と思っていた。その気持ちが足りないのかもしれない。
 俺は目を閉じて、学校を思い浮かべる。そこへたどり着きたいと願う。
 すると体がふわっとしはじめた。あのときと同じだ。そして、目を閉じているにもかかわらず、世界が見えた。世界が俺に向かって迫ってくる。
 学校が見えたと思ったら、すべては終わっている。気づけば、俺は朝と同じく、学校にいる。もっとも、今は夜で、暗いし、周りには誰もいない。
 俺は、家の前を思い浮かべる。すると、再び同じことが起こって、終わったら家の前にいる。
 今度は、ブラジルを思い浮かべ、新たに気づいたその能力を使う。
 世界が通り過ぎていくが、どこがブラジルかわからない。だがそう思っているとふいに、一か所だけすごく気になる箇所が出てくる。ブラジルのことを知りもしないのに、なぜかそこがブラジルっぽい、と思う。それでそこに行ってみる。
 そこは朝なのか知らないが、陽が昇っていて明るい。周囲を見渡してみて、俺のいる場所は、志摩スペイン村とかにありそうな建物がいっぱい並んでいる坂道だとわかる。そして、肌が黒く、髪も黒い、顔のほりが深い人たちが歩いている。ブラジルなのかどうかは、ちょっとわからない。
 少しだけ怖くなってきて、すぐに家へ戻る。家の前に立っていて、俺はようやく、ワープができるのだということを実感する。現実に、感情が追いついて来る。間違っているのは俺じゃなかった。間違っていたのは、科学の方だった。
 この能力があれば、どこへでも一瞬で行ける。旅行だって好きなところへ行ける。俺は早速、ちょっとした旅行へ出かけてみることにする。
 中国、イタリア、ドイツ、フランス、イギリス。思いつく国の名前を思い浮かべて、全部行ってみた。
 実際に行ってみて感じたのは、時差だった。日本が夜なのに昼だったり、逆に日本と同じように夜だったりする。
 そして一つ気づいたのは、せっかく外国に行っても、通貨がないから、何もできないってことだ。お土産の一つも買えやしない。
 明日、牧野に何ができるか聞いてみよう。牧野なら、この能力を生かす方法を思いつくかもしれない。


「よお眼鏡、ちょっと話を聞いてくれよ」
 翌日の昼休み、俺は昨日のように牧野の前で座って話しかける。
「昨日といい、どうしたの? なんか変だよ。いつもはそんなに絡んでこないじゃん」
「いやなあ、俺、科学の間違いを発見したんだよ」
「何の話?」
「麻薬でラリってなくてもよお、現実に、一瞬で移動ができちまうんだよ。俺はそれができるんだ」
「頭でも打った?」
「打ってねえよ。見せてやろうか? いや、見せてやる。お前の自慢の科学をぶち破ってやるぜ。見てろよ、俺は今から焼きそばパンを買ってくるからな」
 俺は能力を使って、購買室へ行き、そこで焼きそばパンを買う。そしてまた、教室へ戻る。
 戻ってみると、目を丸くしている牧野が、目の前にいる。
「どうよ? 一瞬で、購買で焼きそばパンを買って来てやったぜ」
「まじか……」
 牧野はそう言ったきり、何も言わない。
「ちょ、お前、今消えなかった?」
 そこへ中也が話しかけてくる。
「消えた? ああそうか、消えたように見えたのか。違うぜ、俺は一瞬で移動ができるんだ。ワープってやつか、牧野? 俺のやったこれはよ?」
「た、多分」
「え、おま、もう一回やってみろよ」
 中也は言う。
「いいぜ」
 俺は再び購買室へワープし、今度は何も買わずにまた戻る。
 戻るやいなや、中也は興奮して叫びだす。
「すげー、雄太、お前まじでワープできるんか!」
 中也のでかい声に反応して、クラスの全員が俺の方を見る。
「おい、声でけーって。みんなびっくりしてるじゃんよ」
「いや、ぜってー声のせいじゃねえから。お前、いつからそんなことができるようになったんだよ?」
「昨日」
「え、なんで隠してたん?」
「昨日は、本当にワープしてるなんて思わなかったんだよ。あとちょっと怖かったし」
「へえ。ま、いいや。ほんとすげーな、まじ神じゃん」
「なんでもいいけどよ、話の邪魔すんなよ。俺は今、眼鏡に、この能力をどう使えばいいか教えてもらおうとしてるんだからよ。なあ眼鏡、お前だったらワープをどう使うよ?」
「ワープをどう使うって、ちょっと待ってよ」
「おう、いくらでも待つぜ」
 牧野は長いこと考えていた。俺はその間、じっと黙ってそれを見守っていた。
「多分、僕だったら、研究機関に協力する、と思う」
「おお。なんだ、研究機関に協力するって、どうやるんだ?」
「簡単だよ、大学に電話すればいい。そしたら、物理学の教授に、ワープを実際に見せればいい」
「そしたら、どうなるのよ?」
「研究に協力する代わりにお金をもらう契約を、結べばいい。アメリカとかなら、全然お金を出すと思う。いや、引く手あまたじゃないかな。何しろこれは革命的な発見だし、もしワープのメカニズムを解き明かせたら、みんなワープができる未来が来るかもしれないからね。そう思えば、坂上が協力するっていうならいくらでも出すんじゃないかな」
「マジで? いくら出してくれるの?」
「それは、教授とかと相談してよ。欲しいだけ言ってみればいいんじゃない?」
「そんなことより、ティックトックやれよ! 絶対バズるだろ、これ」
 中也が話に割り込んでくる。見ると、中也はスマホを手にもって俺を撮影している。
「いや、お前が早速ティックトックにあげようとしてるじゃねえか」
「いいだろ、お前は研究機関から大金もらえるんだからよ。そのおすそわけってやつをしてくれてもいいじゃんか」
「すねるなよ、好きなだけ見せてやるからよ。じゃあどこ行って何を取ってきてほしい? 変なのとか重いのはだめだぜ。あと盗みもやらねえからな。俺は犯罪だけはやらない主義なんだ」
「じゃあ、小野田のかつら取って来いよ」
「バカか! 犯罪よりやべえだろ」
「じゃあ、黒板消し取ってきてくれよ」
「なんで黒板消しなんだよ。まあいいや」
 俺は黒板の前にワープする。そして黒板消しを手に取る。それから元の場所にワープして戻る。
「うええい! よし、オッケオッケ。撮れたよ」
「おう、バズるといいな」
 

 朝、俺は家から出て、家の前から学校へワープする。三十分かけて歩いてこない分、楽だし、家を出る時間も遅くて済む。これはきっと、この世の学生のすべてが手に入れたいと望む能力なんじゃないか。
しかも俺が研究に協力すれば、みんなが同じことをできるようになるかもしれないのだ。下手をすれば俺は学生の救世主になれるかもしれない。
 朝練を終えて校舎に入ろうとしてげた箱を開けると、中で白い便箋を見つける。俺は便箋を手に取って見る。差出人は書いていない。だが、ラブレターだってことは内容を見る前からわかっている。
 俺はラブレターをポケットに入れて、トイレの個室に入る。そこで便箋から手紙を取り出して、手紙を読む。
「放課後の十七時、二年三組の教室で待ってます」
 桜田さんからだろうか。わからないが、俺の想像の中で勝手に、屋上で待っている人は桜田さんになってしまっている。すらりとしていて、髪をボブカットにしていて、きりっとした目の彼女の姿を思い浮かべるだけで、胸が高鳴る。
 俺は手紙をそっと便箋に戻す。それをバッグに入れて、トイレから出る。
 だが、俺に好意を寄せているのは手紙の主だけではない。
「雄太、お前、ふざけんなよ」
 中也が俺に絡んでくる。
「なんだよ急に」
「朝倉って女子がお前のこと、好きなんだって。急にモテやがって、コノヤロウ」
「あ、朝倉って誰だよ?」
「朝倉仁美。お前も知らないの?」
「知らないよ。つか、好きって言われても無理だよ、俺。好きな人いるもん」
「言ったんだよ、俺もそうやって。でも坂上君付き合ってる人いないよね、って言われてさ。とりあえず言ってきてよ、だって」
「そりゃ、まだ告白できてないから」
「さっさと付き合っちゃえよ、桜田と。俺は伝書鳩にされるのなんてごめんだぞ」
「お、おう。任しとけ。うまくいけば今日、決着つくかもしれねえ」
「頼むぞ、ちゃんと決めて来いよ。じゃないと俺が困るんだからな」
「わかってるよ」
 十七時になる頃、俺はトイレに行くふりをして練習を抜け出す。ダッシュで屋上まで行く。
 屋上で待っていたのは桜田さん、ではなかった。まったく知らない女子だった。そのことに気づいた時点で帰りたくなった。それでも、話だけは聞く必要がある。それに、まだ恋の告白と決まったわけじゃない。
「用事ってなに?」
 俺は名前も知らない女子に尋ねる。
「坂上君ってさ、今、彼女いないよね?」
「うん」
「だったらさ、私と付き合わない?」
 想定していた告白のされ方と、ちょっと違っていた。本当の告白って、こういう軽いノリなのか。
「ああ、ごめん。俺、好きな人がいるから」
「好きな人って誰なの?」
「ごめん、部活抜け出してきてるから、急いで戻らないと。じゃ」
 俺は軽い胸の痛みを覚えつつ、立ち去ろうとする。
「どうせ桜田でしょ!」
 俺は立ち止まり、振り向く。
「知ってたのか?」
「知ってるよ。なんであの子なの?」
「なんでって、関係ないだろ」
 俺は今度こそ立ち去る。俺は内心で失望していた。待っていたのは桜田さんじゃなかった。でも、桜田さんから告白してくることを期待するなんて、いくらなんでも虫が良すぎたかもしれない。
 

「おい、桜田さんからオッケーもらえたのか?」
 翌日の朝礼の前に、中也が尋ねてくる。
「だめだった」
「うわーまじ。ドンマイ」
「違う。昨日、ラブレターもらってたんだけど相手が桜田さんだと思ってたら、そうじゃなくて」
「は? いや、お前なあ。そういうのは、事前に確認しとけよ」
「なんだよ、確認って」
「つか、なんでそんなに桜田が好きなの? かわいいっちゃかわいいけど、なんか本ばっか読んでるし、性格きつくね?」
「中也、わかってねえな、おめえよ。桜田さんは、こんなバカな俺にも優しくしてくれたんだぜ」
 そうして、桜田さんとあった出来事を語って聞かせる。


 俺は去年の九月くらいに、図書館に行っていた時期があった。行き始めたきっかけは漫画を探すためだった。でも結局、漫画は見つからなかった。
 それで図書室で受付をしてた桜田さんに、漫画があるかどうか尋ねたら、ない、と答えられた。
 去年、俺は桜田さんとクラスが違った。だから桜田さんのことを知らなくて、ただ、結構かわいい女の子だなあ、って思った。せっかくだからちょっと口説いてみようかと思った。
「それならさ、君の好きな本を教えてよ。それ読んでみたい」
「いいけど、少し古いよ。千一夜物語っていうんだけど。アラジンと魔法のランプのお話とか、シンドバッドとか出てくる本なんだけど」
「え、いいじゃん、面白そう。どこにあるの?」
 桜田さんは本のある場所へ案内してくれた。だが、俺は千一夜物語なるものを見てびっくりした。
 古すぎて紙も表紙も黄色くなったような分厚い本が、十三巻もあるのだ。
「こ、これはすごいね。俺、バカだからこんなん読めないな」
「それは違うと思うよ」
 桜田さんは言った。
「違うって、何が?」
「読めないかどうかは、読んでみなきゃわからないと思う」
 桜田さんは千一夜物語の一巻を取り出して、ページをめくった。そして冒頭を声に出して少しだけ読んだ。
「続きが気になる?」
 桜田さんは読み終えた後で尋ねてきた。俺がうなずくと、桜田さんはページをめくって、さらに少し読んだ。
「内容がわからないなんてこと、ないでしょ? 内容がわかったら、続きが読んでみたくならない?」
 読み終わった後で、桜田さんはもう一度、尋ねてきた。
「読んでみるより、もっと君の声が聞きたいな。ねえ、名前なんて言うの?」
「ずっと読んでたら疲れちゃうから。あと、名前は桜田美穂」
 桜田さんは俺の手に千一夜物語を押し付けた。
「続き、読んでみて」
「桜田さん、わかったよ。読んでみる。俺でも多分、読めるかも。少なくとも読んでもらってるときは、そんな気がしたな。ありがとう」
「こっちこそありがとう。好きな本を人に読んでもらえるのはとてもうれしいから」
 一度も本なんてまともに読んだことがないのに、俺は毎日、千一夜物語を読み続けた。約束したというのもあるが、桜田さんと話すきっかけが欲しくて、毎日図書室に行っては、感想を言った。
 千一夜物語を読み終えた後も、別の本で同じことをするつもりだった。ところが、それはできなかった。それどころか、千一夜物語を読み終えることすら、できなかった。
 十月くらいから文化祭の準備が忙しくなってきて、図書室に行く余裕も、本を読む余裕もなくなってきた。それに正直、千一夜物語は現代の言葉とはかけ離れた言葉遣いをするから、文字を追うのが大変だった。それで毎日読むのもしんどかった。
 一か月くらい、本を借りない期間が続いて、なんとなく気まずくなってしまった。それでとうとう俺は、図書室に通うのをやめてしまった。
 正直、告白には、あのときの謝罪も含まれている。約束を守れなくてごめん、と言うつもりだ。


「ああもう、のろけ話がなげえよ。わかったから、今日行けよ。絶対行けよ。わかってるよな?」
 中也は言う。
「わかったよ。行くから」
 その日の授業がすべて終わって、終礼が終わったあとすぐ、俺は桜田さんのいるところへ向かう。
「桜田さん、ちょっと話があるんだけど」
 桜田さんは俺を見る。
「ごめん、部活に遅れちゃうから。また明日ね」
 なんとなく、桜田さんがそっけない気がする。あの時のことを、まだ怒っているのだろうか。
「待って、一秒で終わるから」
「ねえ、坂上君だって部活あるでしょ」
「すぐ終わるから。まじで一秒で終わるから。ついてきて」
「すぐ、終わらせてよね」
「ありがとう」
 俺は静かになれそうな場所を探して教室を出る。そして学習室を見つける。そこは人気がなく、中に入れば声も聞かれなさそうだった。
 俺は桜田さんと学習室に入り、ドアを閉める。それから桜田さんの方を向く。
「桜田さん、君のことが好きなんだ。付き合ってほしい」
「ごめんなさい」
 桜田さんは断る。即答だった。考える間もなかったんじゃなかろうか。
「それって、無理って、こと?」
「私、坂上君のことが好きじゃないの」
「なんで? 俺がバカだから?」
「わからないの? 盗みはするし、暴力はするし」
「そんなことしない!」
 でたらめだ。俺は犯罪は一度もやったことがない。喧嘩はするけど。
「他の女子を使って、自分と私を付き合うよう仕向けたりするし、そこまでやっておいて好かれると、本気で思ってるの?」
「そんなことしてないよ。誰がそんなこと言ったの?」
「言ったらあなた、その人を殴るでしょ」
「殴らないよ」
 殴ってやりたいくらい怒ってはいる。だが、殴るつもりはない。俺が殴るのは、俺を殴る度胸のあるやつだけだ。喧嘩はするけど、いじめはしない。
「悪いけど、信じられない。もういい?」
「待って、誤解なんだよ。きっと何かの間違いだ。待って」
 俺が止めるのも聞かず、桜田さんはドアを開けて出ようとする。
「千一夜物語、読み切れなくてごめん!」
 桜田さんは止まってくれず、出て行ってしまう。俺はそのあとを追って話し続ける。
「また絶対行くから! それで、ちゃんと全部読むから」
 桜田さんは返事をしてくれない。俺はそこで、これ以上声をかけても意味がないと理解する。
 そこで人の気配を感じる。振り向くと、中也の他、数人の友達が教室の外側にしゃがんでいるのが見える。俺が告白する様子を見ていたのだ。
「な、ナイスファイト」
 中也は言う。
 盗み聞きされていた、と知っても怒る気になれない。普段の元気が全然でない。
「振られちまったよ」
「なんで振られたんだ?」
「俺が泥棒で、暴力的で、ほかの女子を使って工作するようなせこいやつだからだって」
「え、全部でたらめじゃん。大体、お前に工作活動なんてできるほどの知能なんかないじゃん」
「桜田さんはそういう風に思わなかったんだよ」
 それ以上、話す気力もなくて、俺はその場から立ち去る。
 結局、その日はずっと、桜田さんに振られたことばかり考えていた。部活に集中することもできなかった。そのせいで、部活中に何をしていたのか、ほとんど覚えていない。
 学校から帰ってくると、家の前に知らない男の人がいる。スーツに身を包んでいて、髪の長い、中年の男だ。
俺は初めて、他人の前でワープをしたことになる。しかし、男は全然驚かない。何もなかったはずのところに突然、俺が現れたのにもかかわらず、だ。
「君が、坂上雄太君かな? 僕は、こういう者です」
 男は名刺を差し出してくる。E.P.Pリサーチセンター教授、福本正人と書いてある。
「ちょっと、お話したいんだけど」
「親を呼んできた方がいいですか?」
「それはあとでいい。僕はね、ティックトックで君がワープする様子を見たんだよ。あれはどう考えても、加工動画なんかではなかった。もし加工でないとすれば現実であり、現実ならばとんでもないことだ。ところで君、お金が欲しくないかい?」
 俺はこのとき、なんとなく嫌なかんじがした。なんか、見下されているというか、子供だからってバカにされているんじゃないかって気がしたのだ。
「お金は欲しいっすけど、でもこれから大学に電話して、研究に協力すればお金が入ると思うんで、大丈夫です」
「僕が、その教授だよ。僕の研究に協力してくれたら、君に今、降りかかっている重大な問題を解決してあげよう」
「問題?」
 俺はワープできるようにはなったが、それから一度も、特別大きな問題にぶつかったことはない。
「その様子だと、知らないみたいだね。君のお父さんが借金してるのは知ってるの? その額は知ってる?」
「借金?」
「ああ、知らないんだねえ。君のお父さんはギャンブルで、およそ五百万円もの借金を作ってるんだよ」
 そんなことは初耳だ。父さんも母さんも、そんなことは一度も言わなかった。
「僕がその借金を肩代わりしてあげよう。その代わり、研究に協力してくれ」
「やだ」
「なに?」
「もっと出してくださいよ。一億とか出してくれないなら、俺はアメリカとか、そういうところの、もっとお金を出してくれそうなところに協力します」
 そう言っても、福本はまったく動じない。相変わらずにやにやと、見ているだけでいらつくような笑みを浮かべている。
「君がそうしたいならしてもいいけど、契約先が見つかるのと、家が破滅するのとでは、どっちが早いかわからないよね。たとえば、明日すぐ、借金取りが押し寄せてきて、借金を今すぐ返せって言ってきたらどうするの?」
「そんなの、返せないっていうしかないじゃないですか」
「それじゃすまないよ。子供の君にはわからないかもしれないけど、大人っていうのはちゃんと責任を取らなきゃいけないんだからね。返せなかったら、できるだけのことはする。この家も、家の中にあるすべてのものも、手放さなくちゃいけなくなる。差し押さえってやつだ。そしたら君も、君の父さんも、家から出て行かなくちゃならなくなる」
「明日、借金取りが来るとは限らないじゃないですか」
「来るよ。僕が差し向けるからね」
 そこでようやく俺は、福本に脅されていることを理解する。協力しなければ家を破滅させる、とこの男は言っているのだ。
「あんた、最低だな」
「僕のことはどうでもいいでしょ。それより協力するの、それとも、ホームレスになって、電話もない状態で、協力者を見つけるの?」
 俺は両手でこぶしをぎゅっと握り締める。できることなら、今すぐこの男をこてんぱんにしてやりたい。部活で鍛えている俺なら、こんなもやしみたいなじじいはすぐに倒せるだろう。
 しかし殴るわけにはいかない。一発殴ればすっとするかもしれないが、その代わりに家を失うことになる。そうしたら、俺はよくても、父さんや母さんが困る。こいつがむかつくやつだとしても、俺の家を救ってくれるのはこいつしかいないのだ。
「わかりました、協力します」
「よし。じゃあ契約書を書かないとね。ちょっと来てくれる?」
 福本が歩き始める。俺は、手に持っていた名刺をポケットに入れようとして、やっぱり嫌になって(こんなやつの名前を身につけたくない)家のポストに捨てておいた。そうすれば、明日ぐらいに母さんあたりが捨ててくれるだろう。
「なんかした?」
 ポストに名刺が入った音を聞きつけたみたいで、福本は尋ねてきた。
「別に。なんの音もしなかったですけど」
 名刺を捨てたとばれたら怒られそうなのでしらばっくれておく。
「そうか」
 福本はそれで納得してしまう。こいつが間抜けでよかった。
 俺は福本の車が止めてある駐車場に連れて行かれる。そこで車に乗る。契約書をそこで書く、ということはなく、そのまま車で連れて行かれる。これって誘拐なのでは、と思ったが、契約がなかったことにされるのが怖くて、何も言えない。
 やがて、白い建物に連れて行かれる。俺はその建物の中にある、会議室みたいなところに通されて、そこでようやく、契約書とやらを書く。契約書には、難しい内容がいっぱい書いてあるうえに、じっくり読もうとすると福本にせかされるので、結局、内容は読まないでサインしてしまった。
 それで家に帰れるかと思ったら、福本に小さな部屋へと案内される。
「しばらくの間、ここで寝泊まりしてください。あと、スマホなどの貴重品を渡してください」
 これは監禁じゃないか、と思ったが、何も言わない。逆らっても無意味だ。それに、出て行こうと思えば、すぐに出て行くことができる。俺を鎖でつないでも、それは同じはずだ。
 翌日から、研究が始まる。福本や、その他の研究員の指示に従ってワープし続ける。朝から晩まで。ワープするのに体力は必要ない。ただ、気力が消費される。何度も同じようなことを繰り返すことにうんざりしてくる。
 その日の終わりぐらいに、福本は俺に発見したことを教えてくる。
「どうやら君はワープしているわけじゃないらしい。君は一度分解されて、別の場所で再び生成されているらしいのだ」
「どういうことですか?」
「バカでもわかるように言うと」
 自然に付け加えられたバカ、という言葉にいらっとする。俺は福本をにらみつける。だが福本はそんな俺の視線には気づかない様子でにやにやしながら説明を続ける。
「君は消えるのではなく、分解されているんだ。分解された君は未知の物質、ダークマターになる。それが何かは聞かないでくれ。まだよくわかっていないんだ。で、それが光速で周囲に広がる。このとき、君だったものはばらばらに散っている。それなのに、君がワープした先で、どういうわけかばらばらになる前と同量のダークマターが集まり、原子や分子を形づくり、君になる。それらのプロセスが一秒にも満たない時間で行われている」
 何を言っているのかわからない。そもそも、ダークマターというのがなんなのかわからない。なんかすごい必殺技みたいな名前のやつだ。だがわかる必要もない。別に理解しなくても、借金は返してもらえる。
 外のほうがなんか騒がしい。俺のワープで研究がはかどったおかげで、喜んでいるのか知らないが、どたばたする物音や、人の叫んでいる声が聞こえてくる。でも、そんなことはどうでもいい。
「で、借金はいつ返してもらえるんですか?」
「借金は僕が肩代わりした」
 福本は言う。
「へえ」
「ただし、もし君がこの計画から離れるというのなら、すぐにでも君の父親の顔に請求書を叩きつけるつもりだよ」
「はあ? 話と違うじゃないですか」
「なにも違わないよ。僕は君の家が破滅しないようにしてあげた。君が今後もここで働き続ければ、約束を守り続ける。だから君も、ちゃんと僕に協力し続けるんだ。逃げようなんて、思うなよ」
 俺は福本に対して、殺意を覚える。犯罪だけはやらない、と自分の中で決めている。しかしこの男さえ殺せば、父さんはもう、借金を返さなくて済むかもしれない。俺だって、こんなところで働き続けるくらいなら、刑務所のほうがましだ、という気がする。
 それでも、だ。福本は殺さない。そこは超えちゃいけない一線だ。そこを超えたら父さんと母さんが悲しむ。それだけはしちゃいけない。
「なんだよ、その目は。ずいぶん生意気な態度じゃないか。安心しろよ、君の仲間は世界にいっぱいいるんだ。君と同じように、謎の電波の影響で体に異変が起きた子供たちが大勢いる。君はそのなかの、実験体一号というわけだ。いずれ、他の子供も捕まえてくる。だからその時まで待っていろ」
 俺がなんか答えようとする前に、ドアが開く音がする。振り向くと、ドアから大勢の人が入ってくるのが見える。入ってくる人は皆、白衣を着ていない。スーツ姿のいかつい顔をした、がたいのいい男たちがいっぱい入ってきている。
「警察だ!」
「いました、坂上君です!」
 あっという間に、一人が俺を引き寄せて、二人で俺を守り、福本の前にブルドッグみたいな顔の男が立ちふさがる。
「け、警察」
「福本正人、誘拐罪および拉致監禁罪の容疑で逮捕します」
「いや、誘拐じゃないですよ。これはちゃんと本人の同意を得ています」
 福本は言う。
「お話は署でうかがいます。ご同行いただけますか?」
 警察の二人が福本の両腕を抑える。
「放せよ、自分で歩く」
 警察は福本の言葉になんか耳を貸さない。俺もゆっくりと歩かされて、建物の外へ出ることになる。


 結局、福本は逮捕された。最初は、契約を破ったせいで借金を返さなくちゃいけなくなるのかと思ったけれど、そういうわけではないらしい。
 福本が俺に言ったことは、五百万円の借金があるということ以外は、ほとんどでたらめで、法的には破滅なんてありえないらしい。
 つまり俺は、ゆっくりと協力者を探して、お金を稼いで、時間をかけて借金を返せばいいわけだ。さすがの福本も、檻の中から借金の請求には来られない。
 俺の居場所がわかったのは、俺がポストに入れた名刺のおかげだった。名刺には施設の名前に、福本の名前も書かれていた。それを発見した両親が警察に渡したことで、俺の居場所もわかったわけだ。
 学校に来ると、友達にめちゃくちゃ心配された。俺が誘拐されたことは学校中に広まっていたらしい。
 誘拐事件のことを話してやると、友達は全員、驚嘆した。それでまた俺は、クラス中の注目を集めた。
 そして昼休みになると、中也が話しかけてきた。
「なんかさ、雄太の変な噂が流れてたじゃん?」
「ああ、あったね」
「あれ、朝倉の友達が流してたらしい」
「朝倉って、誰?」
「だから、お前のこと好きだって言ってた女子だよ。お前が桜田のことを好きだってわかってたから、桜田がお前と付き合わないように友達に頼んだんだって、朝倉は。そしたら友達が桜田に、あることないこと吹き込んだらしい」
 俺と付き合うためにそこまでしたのか、と俺は驚く。それと同時に、それだけのために平気で人と人の仲を悪くするようなことができるような人がいる、という事実に怖くなる。
「一応、桜田さんには話をして、誤解を解いておいたから」
「え、まじ?」
「ついでに、お前は恋人にするには最高のやつだとも言っておいた」
「おま、それは言い過ぎ。ハードルぶちあがってんじゃん」
「そのハードルを越えてくんだよ、びびってんじゃねえよ。ほら、今日の放課後、告白して来いよ。また変な邪魔が入らないうちによ」
「ありがとう、中也。ありがとう」
 このとき俺は、持つべきものは友、という言葉の本当の意味を知ったような気がする。中也は間違いなく、最高の友達だ。
 放課後になり、俺は桜田さんのほうへ行く。
「桜田さん、話があるんだけど」
 桜田さんは俺の方を見る。
「いいよ。じつは私もちょっと、謝りたいことがあって」
「うん、じゃあちょっと、来てくれる?」
 桜田さんはうなずく。俺は桜田さんを連れて、前に告白した時と同じ学習室に入って、ドアを閉める。
「桜田さん、えっと、どっちから先、話す?」
「じゃあ、私の方から。あの私、坂上君のことを誤解してたみたいで。周りからいろいろ言われたことを全部、うのみにしちゃって。でも本当はそれだけじゃなくて、坂上君がああいう人たちと関わっているなら、坂上君とも関わりたくないって思っちゃって。あの人たちと友達になれる気がしなかったから。ちゃんと確認もしないで、ひどい態度をとっちゃって、ごめんなさい」
「いや、全然。俺も悪かったんだ。俺がちゃんと千一夜物語を読み終えて、図書室に通い続けられていたら、こういう風にはならなかったわけだし……」
「それは、坂上君にも事情があったと思うし、いいよ。大丈夫。坂上君の方の話は?」
「あ、えと、俺、バカだし、千一夜物語も読み終えられなかったけど、今度からはちゃんとする。ちゃんと千一夜物語を読み終えるし、バカだと嫌だっていうなら、ちゃんと勉強する。悪いところは全部治す……できる限り。いや、絶対! 絶対治す! だから、俺と付き合ってほしい」
「いいけど、私なんかでいいの?」
「いや、桜田さんじゃなきゃだめなんだ」
「そうなんだ、ありがとう。うれしい」
「それって、オッケーってこと?」
 桜田さんは小さくうなずく。
「よし、じゃあ早速図書室に行こう。そこで千一夜物語、借りてこよう」
「いや、部活行かないと。もう時間が」
「あ、ごめん、そうだった」
 俺は慌てて教室を出ようとする。そのとき、桜田さんは手を差し出す。俺ははっとして、それから、桜田さんの手をとる。そして手をつないだまま、学習室を出る。

光の速さで

執筆の狙い

作者 クレヨン
softbank060106204201.bbtec.net

 短編を書くつもりだったんですが、題材がでかすぎて持て余しました。特に、後半がひどいです。
 文章を現在形にしてあります。理由は、主人公がリアルタイムで体験していることを追っている、という体だからです。そのため、正しい文法から外れてしゃべり言葉みたいにしています。

コメント

京王J
sp1-75-243-106.msb.spmode.ne.jp

しゃべり言葉みたいにはあまりなってませんね…ごめんなさい。

何かを書きたいのか、誰に向けて書いてるのかわかりませんが、(たぶん他の人もわからないと思います)

とりあえず、自分のためにお書きになられたのなら、「よかったですね」としか、言いようがありません。
(他の人もそんな感想ぐらいしかないと思います…笑)

書いてる当人は気持ちよかったんだろうな…ということはビンビン伝わってきます笑

・まず誰に向けて書くのか明確にする  
・せめてジャンル(純文学とかミステリとか)ぐらいは設定する。

これらを意識されたなら良いかと思います。

おそらく、ごはん民に向けて、純文学のつもりで書かれたのかな?とは思いますが、ごはん民に向けて書いたらダメですよ笑

純文学なら、純文学の読者に向けて書いてください…

もし上記を考えずに書いたなら、自分のために書いただけなのて、他人に感想を求められても困ります(苦笑)

褒めてほしいのなら、一応、褒めておきます。

・素晴らしい作品です!
・文章も上手いです!

クレヨン
softbank060106201180.bbtec.net

 京王さん、コメントありがとうございます。

 書いてて気持ちよかった、っていうのは当たってます。

 何を書きたかったのかについては、もし光速で動けたらどうなるか、ということです。そこを広げていった感じです。

 誰に向けて書いたのか、ですがごはんで読んでくれる人たちを意識してました。それがダメだっていうのは初めて知りましたね。そんなルールがあるなんて知りませんでした。

 ジャンルは、SFです。光速で動ける、ってだけでSFになるかどうかは怪しいですが、SFだろうなと自分では思ってます。純文学のつもりで書いてはいません。

 あと、褒めてほしくて書いてるわけじゃないです。別に狙いの欄に書いてはないですけど、ここだったらどんなにひどい作品でも真剣に読んでくれて、感想をくれる人がいるから、載せてるんですよ。そうやって批評をもらって次につなげたいんです。暴言とか嘲りはいらないですけど。

京王J
sp1-75-243-106.msb.spmode.ne.jp

>>褒めてほしくて書いてるわけじゃないです。

あらら。図星ですか。
いろいろ刺さってしまったみたいですね。

>>そんなルールがあるなんて知りませんでした。

言わないとわからない感じですかね…
ごはん民に向けて書くと、ごはんでしか読まれない作品になるから、ですよ。
(なんでここまで丁寧に教えないといけないのでしょうか…笑)

>> 次につなげたい
つげなる気、あるように普通の人は思わないと思いますが笑

まあまあ。そうムキにならずに。
褒めてるからいいじゃないですか。
素晴らしい作品…ですよ!

m.s
104.28.101.164

序盤のコミカルなシーンがよかったです。しかし物語ぜんたいのスジが不明瞭に感じる。個別の設定やエピソードと小説ぜんたいの照応性や必然性がすくなくとも一読では見えてこない。

また以前にも感じたのですがある種の安定感というか、決して生々しい死や血や性は出てこないのだろうな、という学校の図書館にていそしむ読書のような感触があります。個人的にはもっと脅かして揺さぶってほしい。

細部の設定が締まらない。
たとえば「E.P.Pリサーチセンター」というのはおそらく民間の研究所やシンクタンクなのだろうが、そうした機関に『教授』という職種はそんざいするのだろうか。等の疑念を抱かせる。こういうの、いちど目につくと結構ずっと引きずる。
小説において学術的な概念や用語の適用をどこまで厳密にやるか、というのはあるけれど、個人的にはwikiで調べれば分かる知識までは反映したいな、って思っています。(まるでできてはいませんけど)
あとここからは趣味からくるSFてきな考察ですが、ニュートリノには質量があるので光速では移動できない。またニュートリノが出てきた文脈でダークマターが登場したりするとこの界隈では「ではそれは<冷たいやつ>なのですか?」とかさかしまな期待に沸き立ってしまうので、未知の現象を説明するのに現実の用語を用いるよりむしろ新規創作したほうがよいかも。しかし本作についていえば担ぎだすべきは『量子テレポーテーション』一択でしょう。なにせ旬だし。

取ってつけたようなラストだと思いました。きっと本当に書きたかったのはせかいが内向きに迫ってくるワープシーンだったのではないかと、あれに感嘆したので最後まで読みました。

序盤の出来とそれ以降の落差がはげしいが、まばゆい才能のひかりを見ました。

クレヨン
softbank060106204166.bbtec.net

 京王さん、コメントありがとうございます。参考にさせていただきます

クレヨン
softbank060106204166.bbtec.net

 m.sさん、コメントありがとうございます。
 
 物語の筋が見えなかった、ということで、これはこちらの実力不足によるものだと思います。「もし、光速で移動出来たらどうなるか」というのがテーマだったんですが、設定とテーマをはき違えてる、っていうのが結論だと思いました。

 血とか生々しい死が出てこないのは、子供でも読めるものを、という意識があるからです。狙いには書いていないんですけど、六歳の子供でも読めるんなら大人でも読めるだろう、そっちのほうが多くの人に読んでもらえるのでは、と思ってR18描写をカットしています。とはいえ、今回はさすがに主人公に対して優しくしすぎたと思います。

 ニュートリノとダークマターの部分は完全に間違ってますね。ニュートリノはちゃんと質量あるし、ダークマターについては勉強不足でした。そして、今回の移動はほぼ量子テレポーテーションでもよくね、という。もっとも、これを書く前は量子テレポーテーション知らなかったので書けなかったんですよね。それを知ったのは、これを書き終わったあとでした。

 本当に書きたかったのは、もし光速で動けても速く動けるだけで思ったより何も手に入らない、っていうところだったんです。で、短編で終わらせるつもりだったんです。ところが、思った以上に書くべきことが多いことに気づきまして、力尽きちゃったんですよね。

 前半の部分だけはすごい考えたんです。光の速さで動かして、一番、物語的にいいのはどれかって考えて、あれにたどり着いた感じです。その結果、中身のあるものとしては、あれしか残らなかったんだと思います。

中村ノリオ
flh2-122-130-109-65.tky.mesh.ad.jp

読ませていただきました。
読みやすく、分かりやすかったです。
素直で好感の持てる作品と思いました。青春している場面などはあまりに真っすぐで、眩しく感じられたほどです。
素直で真っすぐなところが良いところでもあり、悪いところでもあるという気がしました。
著者自身が愉しんで書いている勢いが感じられるのはいい。しかし勢いに任せて膨らみに欠けるところもある、といった具合に。

東京タワーに隕石が衝突したというくだりは面白かったです。
〈目の前の景色がおかしくなる。建物や空などの何もかもが、ぐっと俺のほうに向かって近づいて来る。目を向けていないのに、なぜか後ろにある建物も迫ってきているのが見える。まるで、この世界が紙箱の内側に絵を描いただけのものでしかなくて、それをぐしゃっと押しつぶしたみたいだ。
 押しつぶされて、俺のすぐそばに来た場所は、俺の体に触れて、それから俺の内側へと消えていく。〉
このあたりも瞬間移動する時の描写としてはいいんじゃないでしょうか。
それと瞬間移動の原理に関する説明。
体が分解されてダークマターになって広がりまた結集する、というのは初めて聞きました。何だかよく分からないけど凄そうです。

若い方だと思うのですけれど、早くから楽しんで書けているのは羨ましいです。私が若い時分に書こう試みた時には苦しくてたまらなかったので。

神楽堂
p3339011-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp

>クレヨンさん

読ませていただきました。
自分だけにしか聞こえない音から始まるこの物語。
つかみはOKですね!
とても気になります。

帰宅すると、いつも以上にお腹が空いている。
「いつも違う」というのは物語を盛り上げますよね。
ますます気になります。

ここまで読み進めて、確かに現在形で書いてありますが
違和感ないです。
むしろ読みやすいです。
一文を短くしているのもいいですね。
現在形 + 短文の積み重ね = 臨場感
場面が読者の頭の中に明確に描かれていくような表現です。
こう、なんというか、文体に若さを感じるんですよね。
主人公は学生さんの設定ですよね。
この書き方が、主人公にピッタリと合っているように思いました。

東京タワーに隕石。
これまたおもしろい。
あとは、この事件と、なぜか主人公にだけ能力が備わった
という設定とをつなげて匂わせることができればなおよかったかな、と。

パン代の百円、二百円のやり取り、
ブラジルに行ってみたいけど実はよく知らないので本当にいけたのか自信がないなど
リアリティがありつつも、笑わせてもらいました。
こういうユーモアのあるやり取り、いいですね。

ラストが桜田さんとのエンドになっていますが、前半とはつながらないですね^^;
主人公の最大目的が、桜田さんとの結ばれることなのであれば、冒頭で桜田さんを出しておくべきですし、
とはいっても、この物語の主題が高速移動ということであれば、桜田さんエンドにする必要はないかな、と。

他の方への返信の引用になって申し訳ないですが^^;

>本当に書きたかったのは、もし光速で動けても速く動けるだけで思ったより何も手に入らない

だったのですね。
これがオチなのであれば、今の能力について、別にいらないな、と本人が思う場面があった方がいいですし、
あるいは、この能力がなくってしまうが、本人の望みは叶ってしまう
つまりは、能力なんていらないじゃん、みたいなオチにしてもよかったかもです。

もし、この作品にSF的な、というか、相対性理論みたいな要素を入れるのであれば、
物体は光速に近づくほど、時間の進み方が遅くなる、という理論がありますよね。
しかし、この理論を取り入れると、風呂敷を広げすぎになってしまう感は否めませんが^^;

と、いろいろ書いてしまいましたが、
こういう、若い人向けの気軽に読める短編、私は好きですよ。
楽しませてもらいました。
読ませていただきありがとうございました。

クレヨン
softbank060106200219.bbtec.net

中村ノリオさん、コメントありがとうございます。

 勢いはあるけどふくらみに欠ける、という指摘を、僕は読者が知りたいところを書けていない、という風に解釈しています。あってるかどうかわからないですけど。

 その一つで欠けていたのは、光速で動けるからこその悩み、だと思います。運動不足になるとかいうちっちゃな悩みもありそうだし、運動会とか参加できないっていうのもあったと思います。早くたどり着きたいっていう意識が出ただけでゴールにワープしちゃうんで、失格になっちゃいます。そういうのを書かなかったのは失敗だったと思います。

 あとダークマターのくだりは、多分間違ってます。そもそもが、方程式でこういうのなきゃおかしいよねっていうので出てきているものなので、ある程度性質とかが予測されていたりすると思うんです。この性質じゃなきゃ方程式が成り立たないっていう形で。

 そこへ素人が変な特性を加えちゃったのは、普通に失敗だったと思います。

クレヨン
softbank060106200219.bbtec.net

 神楽堂さん、コメントありがとうございます。

 今回のは、多分、テーマを間違えた部分があると思います。前半で、光速で移動できるっていうものを提示したなら、もしかしたら、自分は何者なのかって、ところに焦点を当てるべきだったかな、と思いました。

 主人公は人なのか、などの問題がいろいろ出てきたはずなんですが、そこにラストをつなげていけたら、前後のつながりとか、前半の描写の意味、みたいなものが生まれたのかもしれない、と思いました。

浮離
KD111239169043.au-net.ne.jp

この前あたしの方に感想もらった上でお説教っぽいことお話ししちゃったんですけど、一応感想返しのつもりでお邪魔させていただいたものなんです。

あたしは面倒臭がりで無駄な気を遣う馬鹿馬鹿しさには堪えられないタチなので悪意も思いやりもなくお伝えしてしまうと、“めちゃくちゃじゃん“っていうのが何よりの感想だと思うんですよね。
狙いにもある通り書き手自身も自覚してるところらしいので、すり替えたような言い草は面倒なだけで誰のためにもならない気がするんだし。


>「もし、光速で移動出来たらどうなるか」というのがテーマだったんですが、

っていう思惑を持て余しちゃったってことらしいんですけど、どうして持て余しちゃったのか書き手なりに考えたらしいことも上の返信の中で色々語られてるみたいなんですし、とはいえそれもそうなんでしょうけど所詮“文章“じゃないですか? 

考えて書いたはずのものが間違っちゃった気がするなら、さらに考えるんじゃなくて目の前に失敗作あるんだからもっと客観的に批判的に性格悪く読んでダメ出しする方が手っ取り早いはずなんですよね。
ニュートリノだのダークマターだのなんてそんなどうでもいいしどうにでも出来るつもりがなくて知識だけで正確にやろうなんて思えばますますつまんなくなるくらいのバイタリティ思いついた方がいいと思うんですよね。

一読者として何より率直に感じたのは、“遅い“ってこと。
“ワープ“っていう本来ならお話の軸になるはずだったチートに辿り着くまでに、作品のほぼ半分近くう使ってるんですよね。
その間にどれだけのことが書かれてますか?
中也も牧野もはっきり言ってどうでもよくないですか?
青春風情がこの作品にどれほど重要なパーツだったかあたしにはわからないんですけど、中也も牧野も居なくたって書けそうな気がする時点でアウトだと思うんですよね個人的には。


あたしのお説教忘れましたか?

真面目はいいんだけど、小さくまとまりたがり過ぎ。
って言ったと思うんですよね。
他人を面白がらせたがる前に、自分で面白いと思える興味や企みみたいなこともっと刺激しろみたいなえらそうなことお伝えした気がするんですよね。
なんか他の人にも似たようなこと言った気がするんですけど、ただ書いてるだけみたいなザルさが目立つ気がするんですよね。
あ、狐のやつだ思い出した。

書き出しの時点からの目論見からどんどんブレちゃったことには自覚があるらしいからいいんですけど、そういうことだと思うんですよね。
ブレることなんてよくあるし別にいいと思うんですよ、ただ、ブレかたが無自覚すぎる気がするんですね。

語り手、“ブーン“って聞こえたんでしょ。やけにお腹空いてたんでしょ。
あれ、なんだったんですか。
隕石が東京タワーに衝突したってさ、ってそれはわかってるんですけどそういうっこと言ってるんじゃないから勘違いしたらダメなんですよ。
そういう一個一個から物語って書きながらいくらでも分岐するし世界観なんてじゃんじゃん変化も劣化もするはずなんですよね。

ぶんぶん早く動けるんだけど、ワープ一回牛丼特盛一杯分カロリーしぬ。
それだけで想像できそうな別のお話ってあるでしょ?
“ブーン“を聞いてる他の誰かだっていそうなことくらい当たり前に想像するじゃないですか?
そんな誰かとワープトンネルで正面衝突して恋に落ちるでも人格入れ替わるでもなんでもいいですよベタな例えで恥ずかしいですけど例えばですよまさに。
“研究機関に“なんてとこからむしろお話はお得意の如くちっさくなり始めてるくらいの気付きかた心得た方がいい気がするんですよね書き手の場合。
ちょっとくらいぶっ壊れたっ方に引っ張ってみてからいくらでも修正すればいいんだし、それしないでまともに形作ろうとしたがるばっかだからちっさくなるばっかな気がするんですよね。

朝倉も“ブーン“聞いてたのかもしれないし、桜田は中也の元カノ。
これだって適当ですよ。
でも、それでもお話作れちゃうのが、無理くりでも全然無理っぽくなく作るのが“創作“ってことのはずなんですよね。
言ってる意味わかりますか?
その程度の力技も効かないなら、中也なんていない方がいいんですよ。
語り手一人で黙々とワープに戸惑わせておけばいいんですよ、「っつかお前、食い過ぎじゃね」って牧野が牧野っぽくないことボソッと、語り手冷や汗かきながらポッケの中に馬鹿ほど詰め込んだハイチュウ握りしめるだとか、それがどんな場面でどんなお話になるのかなんてあたしにはわかんないですけど、あたしは常にそういう余計なディテールとかぶん回しながら取捨選択するみたいな書き方ものすごいやるんですよね。
だって、当たり前に思いつくことだのたかが素人の読み手風情が“面白かったです“だとかって知った風な言い草とかクソ舐めてるとしか思えないようなこと書いたって仕方ないじゃないですか。


なんであたしがあちこちでイラつかれるかわかりますか?

わかんないからですよ。
あたしの言ってることわけわかんないでしょ?
ケチなだけの馬鹿っていうのは、自分の了見以外のことおっかながるんですよ。
それ隠すためにヘラヘラしたり悪口言ったりして強がって見せるしかないの。
そういうのばっかのあたしのこと、気の毒だと思いますか? 生きづらそうですか? 面倒なやつだって思いますか?

まさか。
あたしは“ザマアミロ“って、しめしめなこと思うばっかなんです困ったことに。
楽しいって、そういうことなんじゃないんですか?

あなたに寄せられる感想見てくださいよ、みんな優しいでしょ?
それ真に受けてあなたってお利口そうに反省ばっかしてるんですよお行儀も含めて褒めて欲しいらしい気持ちはわからなくもないですけどあたしはそういうの興味ないので無駄にしか見えないんだし。

なんで、優しくすんの?

あたしはたぶん、自分から進んで優しくとか親切に振る舞うべきって感じる相手って、体が不便だったり小さな子どもやお年寄りくらいのものだと思うんですよね。
お年寄りっても、近頃のお年寄りって結構ぶっ壊れた人多い気がするからかなり選別ある気はするけど。

なに言いたいかって、“優しさ“なんてそんなこともし自分で自覚的に振る舞うつもりなら相当自惚れた根っこがあることくらい自覚した上で振る舞えよ、なんてあたしはつい思っちゃうとこあるんですよね。
だって、あたしが“優しく“振る舞う程度のことが“優しい“ことであるつもりで振る舞うとかそんなもん鬱陶しいじゃないですか何様かよってまあまあ恥ずかしい気がするし、実際自惚れてるでしょそんなもん。

浮離
KD111239169043.au-net.ne.jp

あたしが思う“優しい“ってそうじゃなくって、相手のこと思い遣るより先に気の毒なもの見ていられない自分自身に耐えかねて発動するだけの自己擁護でしかない気がするし、電車乗ってても駅で扉が開くたびに緊張するのは足腰辛そうなお年寄りとか子連れのお母さんとか乗ってきたら見て見ぬ振りして座ったままでなんかいちゃダメだよな人として社会的にクソだよな絶対に譲んなきゃ立ち上がって“どうぞ“なんてたったの三文字を当たり前にさりげなくなんともなしに言って退けて恩も礼も受け取らない平常さ気取って受け取ってもらわなきゃな、ってそんな押し付けがましい恩着せがましいことこれみよがしに仕出かしやがるみたいな顔されてムカつかれたらどうしよう“大丈夫です“なんて空っぽな礼儀かお行儀かシンプルに不愉快みたいに突っぱねられたらださいなどうしよ、なんてもうぐるんぐるん考えちゃって緊張して落ち着かないからじゃないですか。
そんな自分に耐えられないからじゃないですか居心地悪過ぎてただそれだけ。

なんでそんなこと考えんだろ?
なんて湿気て思い耽る程度で済ませておきたい派なんですよ。
それ以上考えんの、“親切“なんて前提鵜呑みにして自分に着せんのなんかどっかちょっとのぼせてないですか下品っていうか要するに、どっか人を見下げてるって感じないと無理でしょそういうの。
そんなはずないけど、“見下げてる“なんてこじつけを自分の中に持ちたくないでしょ普通。


あなたは優しく扱われてる。
もし感想読んでそう感じたなら、“舐められてる“っていう失望を相手に呪うんじゃなくて自分自身を情けなく呪うくらいのことちゃんと自覚した方がいい気がするんですよね。
優しく扱われてそんなもん程度で反省チラつかせたって、所詮ズレてるじゃないですか実際。

あなたがこのたび得た学びは、“ニュートリノ正しく理解せねば“ってことなの?
そうじゃないですよね、物理学びたいんじゃなくて“小説“書きたいんでしょ?


“小説“における何よりの“ファクト“って、なんだと思いますか?

あなたは感想くれましたけど、あたしがこの度企画でやったこと、わざわざその目的まで事前におしゃべりして“こういうことやりますからね“って、読み方理解の仕方までエスコートしたのに、ただ悪口言いたいだけの馬鹿っぽいことしか思い当たれない人次々現れるわけじゃないですか。

わかりますか?

あたしは“でたらめ“でも突き抜ける力を“SF“っていう許容力に期待して楽しみたいってことをお伝えしたはずなんですよ。
それをやってないってきさと氏にケチつけたから、自分でやって見せなければっていう企画だってちゃんとお伝えしてやりきって見せたじゃないですか。
あたしはそのつもりってことでしかないけど、それで十分と思えない見てるだけの他人なんてとっくに負けてるんですよ。
あたしはそのくらいの気合いも覚悟も当たり前に譲らないし馬鹿にされる気なんてこれっぽちもないですしめっちゃ真剣にものすっごい“でたらめ“でっち上げて自分ばっかでわんわん泣きながら書いたんですよせんちゃんたちとお別れすんの寂しくて寂しくて。

馬鹿みたいでしょ?
でもそれがあたしには“ファクト“なんですよ、それも絶対的な。


多分ですけど、あなたはそういう馬鹿みたいな自分ばっかの“熱“みたいなことに自分を委ねることを恐れてるし、信じてないんですよ。
だからちっさいんだと思う。
自分ばっかにくれてやる“熱“より、他人にどう思われるか指摘されかねない齟齬ばかり気にしてどんどんどんどん自由なアイデア否定しちゃうんだと思うんですよね。
図書館がこのお話の墓場になっちゃったってこと、自分で気づいた方がいいと思うんですよ。
誰も言ってくれないでしょそんなこと。

あたしは一読者としてそう感じたって、自惚れたような気遣いなんて見苦しさ抜きで堂々と言わせて欲しいんですよ。
電車の席譲るみたいなたかが親切の脅迫におろおろするのは誰にでも出来ることだからこその馬鹿馬鹿しさのはずだしあたしのちっささでしかないけど、でも“小説“ばっかのことそんなわけないでしょって、そういう話をしてるつもり。


ダメだと思うんですよ、こんなバラけて腰引けたみたいな創作観に逃れたがってしまうのは。

しまるこ
133.106.204.52

私もどちらかというと、序盤のコミカルなシーンとか、日常や生活感がリアルに感じられて楽しかったです。

>ポテトチップスを一枚ずつ食べるのももどかしくて、まとめてつかみだしたものを一気に口の中にほおばる。

>でも俺は牧野みたいに暗くなりたくないから、牧野を足したくない。牧野の知能だけ欲しい。

ちょっとした文章に解像度が高かったり、全体的にテンポがいいなと感じなと思ったりはしました(特に序盤)

後半の展開はちょっと私の頭が追いつかなかったです^^;

クレヨンさんが伝えたいと思って書いた部分より、個性として浮かび上がってくる部分の方が、個人的には刺さった印象です。

クレヨン
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 浮離さん、コメントありがとうございます。

 このコメントに答えるのは、すごく難しいですね。

 とりあえず、主人公以外、ほとんどいらない人物ばっかりとか、後半の部分が死んでるっていうのは同意です。あとで読み返してみて、あれなんかおかしいぞって思ったところを言語化してもらったかんじです。

 僕の中で困ってるのが、自分を出すってことなんですよね。

 僕の中で大切にしてるのがいくつかあるんですけど、その一つは最近発見した、バランスを取る、みたいなことです。清らか過ぎてもだめだし、濁りすぎてもだめ。白でもだめだし、黒でもだめ。両方を混ぜるバランスみたいなものを学ばなければならないんだろう、ということです。だからまずはどんな異質な意見も取り込んでみて、わからなかったらスルーするってことを覚えようかと思ってます。

 で、なんで人に優しくするのか、ですよね。それは、情けは人のためならず、って言葉を信じてるからです。だからある意味、人に褒められたくて、とか悪口言われたくなくて、っていうのは当たってると思います。

 行動を変えるのは簡単です。心でどんなにひどいことを思っていても優しい言葉は書けますから。優しい行動を続けていったら、いつかは心がついてくるんじゃないかって信じて、やってます。だから練習なんですよ、これは。僕の本性が悪いからこそ、優しくするんです。悪いのを明るいものにしたいんですよ。

 的外れな返答になってるかもしれません。もしそうだとしたら、恥ずかしいですね。
 

クレヨン
softbank060106201030.bbtec.net

 しまるこさん、コメントありがとうございます。

 後半は、まあ、ついていく以前にそもそも不完全だと思いますので、読めなくても仕方ないと思います。いろいろ反省すべき点がいっぱいあります。

浮離
KD111239169043.au-net.ne.jp

逆さまだよ。

あなたがいろんな人に“わざわざ優しくされてる“ってことあたしは言ってます。
どうして優しくされるのか、それを目的に照らして“自分のこと正確に呪え“って言ってるです。

浮離
KD111239169043.au-net.ne.jp

言ってるです。


カタコトかボケえ

クレヨン
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 浮離さん、返答ありがとうございます。

 そうですね、牧野も中也もいらない、図書室がお前の墓場だ(そこまで言ってないかもしれませんが)、なんて言ってくれるの浮離さんぐらいですよね。ここまで痛烈なことを言う人もなかなかいませんからね。

 もともと、僕の作品っていうのは欠点だらけで、でも主観じゃそれはわからないから人に見てもらって、問題点を一個一個つぶしていけばいいものができあがっていくんじゃないか、って気がしていました。

 でも多分、そうじゃないんでしょうね。指摘がない作品がいい作品ではないですからね。問題点と呼ばれそうなものを全部つぶしたものが前作だと思うんですけど、なんかゴールがすり替わってるんじゃないかって、ここで思いました。

浮離
KD111239169043.au-net.ne.jp

あなたはたぶん自覚ないはずだし、お行儀よく親切な態度を心掛けているつもりなんだと思うんですけど、実際にはそのつもりでそうじゃない方が人間としてむしろ正常なはず、って感覚かあたしはほぼ事実のつもりでいるんですけど、そういうのってわかりますか?

あたしなりの観察によれば、あなたはおそらくあんまり素直じゃないし自分の主義主張に疑いがないし十分に頑固、聞く耳っていうことには当分辿りつきたくないなりにはむしろ自信家みたいな性分を隠さない性質のはずなんですよね。

そういう疑いのなさが、ものすごく作為に蓋してる気がする、っていうのはただの言いがかりに読み取れることかと思うんですけど、たぶん事実のはずなんですよね。

どんなに取り繕っても人の言葉って隠せないし、ましてや文章ですよ、ここで扱うものって。
あたしのこと嫌いな人すごくいっぱいいると思うんですけど、だからって仕方ないですよねあたしには示したなりの事実多すぎるじゃないですか。

わかんない人にはわかんないかもなんですけど、何気ないことでもあたしなりに“あ、クソだこいつ“って一端でも思っちゃった人、露骨にそう扱われちゃった人たちって百パーの確率で居場所追いやられちゃってるわけじゃないですか。
そうした同類と肩よせあって腐れた言い草で強がってますます立場失くすばっかになっちゃってるわけじゃないですか。

それがあたしの手口だとか結果論だとか思いたい人は思えばいいんですけど、馬鹿だと思うんですよね。
ここの人たちの大半って、見えることしか信じないらしいし理解出来ないみたいなんですよね。
その上で、自分の感覚や理解に適わないものは否定したいし嫌う方が楽ちんっていうか、天才な自分に心地いいばっからしいんですよね。

それってすっごいダブルスタンダードじゃないですか。

見たもんばっかがすべてなら、あたしがバラしてること素直に全部信じろって話なんですよね。
こいつアホだな文盲だな、ってあたしの見立てってそのままここの目的として明らかになってるだけの事実わかんないならそいつこそアホだし文盲のはずなんですよね明らかに。

その証左として、意図として作品があって感想があるわけじゃないですか。
それしか事実なんかあり得ないわけですよね実際。


なんでみんなそんなに感想短いの? ってあたしはいっつも思ってるんです。
それって、それくらいにしか読めてないってことでしょ? って思うの当たり前じゃないんですか。
いっつも長文で詰めるあたしは傲慢で図々しくて嫌なやつなんですか?
作品書くのにどれほどアタマと時間と労力と情熱費やしてるつもりなんだか、それに心当たりがあるつもりなら尚のこと、五行や十行で知った風なこと言える気がする方が感性として傲慢だし破廉恥すぎないですか何様のつもりなんですかむしろ、ってあたしは当たり前に思うし実行してしまうんですよねそっちのがまともな気がしてしまうくらいには馬鹿だし常識も自覚もあるので。

あたしの言葉の多さは図々しさなんかじゃなくてむしろその真逆、そんなつもりないしそのために精一杯尽くす態度でしかないですよわかんないですか馬鹿なんですか? っていっつも思ってるんですね。
きみたちですよ図々しいのは、っていっつも思ってるんです。


だから、そんなあたしから見るにはあなたの品性ってちっとも親切でも良識にも受け止められる気がしないし、むしろコミュニケーションっていう感性において傲慢で排他的な部類に含まれる気がするし、そもそも指摘もアドバイスも本音では求めていないことくらいとっくに透けてることくらい客観的にさっさと自覚できた方がいい気がするんですよね。
これって悪口でも人格批判でもなんでもなくて、あなたの書き手としての思考や感性を手っ取り早く正常に加速させるために当たり前に必要な感覚の正当性妥当性について話してるだけだから、自分に甘いばっかのねじ曲げた都合ばかり思い当たりたがるクセにいつも通りに放り込まない方がいいですよ。

わかんないと思うんですけど、こういううるさいことすら付き合ってもらえないクソは目に余って腐るほどいるわけなんですよねこのサイトには。
もうとっくに誰もが辟易して触れも構いもしないかまってかまっての常駐自己承認欲求お化けニートとかヘラヘラ腰抜けすみっコぐらしとかいるじゃないですか。
ああいうみっともないのには持ち出せない丁寧な話させてもらってることわかって欲しいんですよね、もう面倒臭いからいちいちわかりやすくお伝えしてしまうんですけど。
あなたもああいう自己欲求の怠慢に甘いベクトルに引かれて腐るばっかの人々になりたいですか?
今のところは、そういう人ではないはずとあたしは思ってるんです。

まともな人はちゃんとまともだし、作品もやっぱちゃんとしてるんですよ。
そういう事実が何よりとしてこのサイトには掲示されて明らかにされるわけじゃないですか。
どうして自分もそういう一人になろうってさ、なれるってこと期待して挑めないのかなあって、不思議に眺めなきゃなんない人多すぎるんですよ実際。

そういった点、あなたはあなた自身についてどう振る舞えるつもりなんですか? ってこと言ってんです。
そんな代表としての役割をあたしはお願いしてるのかもしれないですよね。
いちいち一人一人にこんなお話すんの面倒臭いですよ実際。


あなたの作品の至らなさ鈍さの何よりの原因は、あなた自身の素直さの足りなさが原因だと思うんですよね。
一応気にしてみてくれたら、そんな気持ちを活かせたならあなたはあなたを伸ばせるんじゃないですかたぶんですけど。
そういう当たり前でしかないコミュニケーションのつもりでした。


返信いらないです。
おつかれでえす。

may
133.106.214.254

初めは読み易い、テンポよく次へいける文章でした。他の方と感想が被ります。ご容赦ください、
犬のうなりの導入お腹が空いてたまらないのが何か関連があるのかと推察される。次に起こる不思議体験の導入ができているからすっと頭に入ってくる。sf展開が待っている。

東京タワー最初の下りは良かったと思います。でもそこから牧野と話すとこらへんから中弛みを感じました。家計が苦しい話に飛び、ラブレターに飛び、桜田さんとのであいにとび。ついていけなくなり、感情移入できず飛ばし読みになってしまいました。

読了して得るものがなんだったのかなっていう感想です。楽しくはなかった。読んだ後楽しかったなっていうのが欲しいです。

短編をおもいついて最初スラスラいくのは楽しくて、でも次の展開を考えるのは難しいですよね。

なにが御作に足りなかったのか考えました。sfならでのワクワク感やバトルがあってもいいし恋をからめるなら主人公に読者がひきつけられる魅力が必要です。現代は宇宙にぐるぐる衛星が飛び回っているしネットもあるし空だって飛べちゃうしこれ以上の科学の進歩によるわくわくを空想するのは難しい時代かなと思ったりします。

だってもう夢は全部叶っているから。アイディアは浮かびませんがたとえば小説に緩急をつけるのもいいんじゃないかと。文明を破壊しようと戦争がおこるとか、そこで恋人を守るためワープ能力を向上させ彼女を救う主人公、なんてありきたりですね。

すみません自分でできないことを棚に上げて御作を語ってみました。がんばってください

クレヨン
softbank060106197036.bbtec.net

 mayさん、コメントありがとうございます。

 mayさんの指摘も含めて思ったのは、もっと書き込めるというものでした。他に変異が起きた人間もいるだろうとか、この能力はなぜ手に入ったのか、何が起きているのか、っていうのをもろもろ組み合わせたら、長編ぐらい作れたはずだと、今では思っています。新世界の始まりから混乱へ、そして終焉(大体みんな、異能力を持て余して破滅するかさせられると思う)へ行きつくようなストーリーに書き直したほうがいいかな、とこのコメントを見て思いました。

 従来の科学による進歩で得られるものはあまりないと思います。おそらく、現代の科学は限界を迎えていると思います。この世はおそらくすべてが有限です。問題は、有限の外に何があるかです。宇宙の外に何があるか。それ以上分割することのできない最小の物質は、何でできているのか。そこは想像するしかないってところがあるので、そこに物語を想像する余地があるのかな、と最近思っています。

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