何も無かったように
ダイエットをかねて散歩に出かける。
公園の桜が咲いていた。一年に一度、やさしく微笑んでくれる。
他に緑の芝生、小さな池、木製のベンチなどがある。市民のいこいの場所だ。
日曜日なので人影も多い。サラリーマンらや家族で花見をしている。なんだかにぎやか。
緑のヘルシーロードでは、青年が自転車でゆっくりと移動している。
ラグビーボールをたて割りしたようなヘルメットをかぶっていた。
一方、僕はただただ歩くだけ。そして時々、桜を見上げる。
何気なく視界に入ったのは二人の老女。小犬をつれていた。犬種はシーズー。
白色と黒色の毛並みがあざやかである。
僕の目と犬の目が合った。
実にかわいらしい。
僕は思わず、「お年はいくつになるのですか」と問う。
「今年で七十六才になりますよ」 しゃがれた声が返ってきた。
ち、ちがう。おまえじゃなーい! 小犬の年齢を訊(き)いてるの!
と言いたいところをグっとこらえた。
「そうですか。お達者ですねぇ」と棒読みの僕。
「あたしゃ、七十四才ですよ」 もう一人の老女の声だ。
まったく……、やれやれだ。
「お元気そうで、何よりです」 言って苦笑するしかない。
そして何も無かったように帰宅するのである。
執筆の狙い
賞味期限があるので投稿しました。もう少し考えたかったかな。
そうそうSFも書いていたのだけども、結末で悩んでしまった。
とりあえず、そちらの方はゆっくりと考えようと思う。
忌憚のない感想をお願いします。