花と蝶
私には姉がいる。姉は華奢で、綺麗な桃色の目を持っていた。そんな姉は、街ですごく人気だ。
姉を例えるなら、『花』だ。
姉は名を、カノンといった。
ある日。
「マリン」
姉さんが私の名前を呼んだ。
「なあに、姉さん」
「花冠を作ったの。マリンにきっと似合うわ」
「私より、姉さんの方が似合うと思うわ」
「もう…いいからつけてみて」
「…」
姉さんは、自分が持っているシロツメクサの花で作られた花冠を無理矢理私に被せた。
「うん、よく似合ってるわ」
こうやって姉さんは、私をよく褒める。[スタイルがいい][美人][かわいい]とかいろいろ。
私たちのお母さんとお父さんが海外での仕事で帰ってこない今、私たちは仲がいい。
…私なんて姉さんと天地の差なのに。
姉さんが綺麗な桃色の目を持っているのに比べて、私はただの紫色の目で。華奢な姉さんに比べて、私は10センチほど小さい。
姉さんと比べたら、私なんて…。
「…姉さん」
「うん?なあに、マリン」
「私を例えるなら何?」
「どうしたの、急に」
「いいから」
「う〜ん…『蝶』かしら」
ほらね、やっぱり。私は花には及ばない。蝶はたくさん種類があり、綺麗なのもいれば、穢れたようなものもいる。私は、穢れた方だろう。
「だってマリンって、私といるでしょう?」
「…え?」
姉さんが、何かを告白しようとしている。
そして、口を開く。
「…私ね、兄さんがいたの」
「えっ?」
「…」
「…姉さんの、兄さん?」
「うん」
「え…」
「名前はイアンっていうの。でも、私が3歳の時亡くなってしまった」
「…」
「それ以来、お母さんとお父さんは、私たちを守れないって言って行動し始めた」
「…だから、今、海外に…?」
「…うん」
「そうだったんだ…」
兄さんがいたなんて知らなかった。私は姉さんと5才差だから、私が生まれる前か…。
「私は1人だった。元からお母さんとお父さんはちょっとおかしかったから、兄さんがいた時も兄さんと2人だった。それで、死んじゃうんだもん…」
姉さんの目から、涙が出てくる。
姉さんは涙声で話を続ける。
「兄さんは、私のお世話をしてくれた。私とは7才差だったの」
「…10才」
「そう。兄さんは10才で死んだ」
「…」
「私、あの時3歳だったのに、よく覚えてるよね」
「…」
「…で、さっきマリンを『蝶』って言ったのは、」
「…!」
「蝶ってさ、花の蜜を吸うじゃない?」
「うん」
「自分で言うのもなんだけど、私、花って呼ばれてるじゃない?」
「うん…自分で言う?」
「もう!まあいいから。蝶と花って2人で一つな感じがするんだよねぇ」
「…!それって…」
「うん」
「!」
「私たちも、2人でひとつの姉妹でしょう?」
「…!姉さん…」
「マリン、これからも2人で頑張っていこうね」
「うん!」
私と姉さんは、今でも2人で暮らしている。2人で、助け合いながら。
執筆の狙い
注意:短めです。
花と蝶があった時、あなたが選ぶのはどちらですか?
2つとも、気高く綺麗なものですね。
でもよくよく考えてみると、この2つ、Win-Winに生きているように思えます。
花は蝶に蜜を与えて自分たちを増やせます。蝶は甘い蜜を吸い、花たちに花粉を運びます。
これって、花は蝶に、蝶は花に善を尽くしているように思えます。
この作品には、そんなWin-Winで生きていける世界になることを願う気持ちを込めました。
伝わることを願います。