幻想物語(仮)【 #1】
この世界には能力者と呼ばれる人間たちが存在する。能力者は❝能力❞と呼ばれている特別な力を持った人間たちのことを指す。今から千年以上前に突然現れて魔族と人間の混血の子孫だとか神様が与えた力だとか様々な噂が飛び交っている。ただ、そこまで数がいるわけじゃない。人間全体のうちのほんの一握りなのだが、それでもこの世界で確かな地位を築いている。それは何故か。理由はいたって単純、この世界が魔王に支配されているからである。能力者以外はどこにでもいるような魔物にさえ太刀打ちできない。それ故に能力者はこの世界の人類にとって唯一の希望なのだ。そんな世界で私は目を覚ます。まだ視界が霞んでいるが右隣にある窓から光が溢れているのが分かった。
「ん…ああ、ここは」
「良かった起きたのね、あなた森の中で倒れ込んでいたのよ?体に異常はないかしら?」
薄紫色の長髪の美しい女性が私の左隣で優しく微笑んでいる。
「大丈夫です。あの…えっと助けてくれてありがとうございます…あの…名前を教えてもらえないでしょうか」
「もしかしてあなたあまり人とは話さないのかしら?そんなに緊張しなくてもいいのよ?私は魔法使いのワズン、よろしくね」
「はい、よろしくお願いします。」
ワズン、聞き覚えのある名前だ。もしかして、と試しに私は訪ねてみることにする。
「この前結成された…魔王討伐部隊の方ですか?」
「あら、知っていたのね」
魔王討伐部隊、❝部隊❞と名前に入っているが実際には勇者と呼ばれているリーダーを中心とした3~5人程度のいわゆる勇者パーティというやつである。となるとこの人、ワズンさんの仲間は…
「ただい…あれ、もう起きてたんだ」
「こいつは遊び人のルクルド、色々とふざけてるから相手にしなくていいわ」
「僕は至って真面目なんだけど?ま、いっか♪改めましてはじめまして、僕はルクルド、よろしくね」
ルクルドさん、知ってはいたがかなりマイペースな人である。すると次の瞬間だった。彼は突然こちらへととてつもない速度で近づき、見極めるようにこちらを見つめてきた。だが…
「あ痛!」
バシッと明らかに痛そうな音が鳴り響く。ワズンさんが叩いたわけなのだが魔法使いが叩いた音にしては大きすぎた気もする。とはいっても他に周りに誰かがいるわけでもないのだが…魔法使いってなんだろう。
「なんというか、ごめんなさいね。」
ワズンさんが謝ってきたが別にワズンさんは悪いことはしていないし、それにあの目は恐らく私の実力を確かめたのだろう。厳密にいえばあのときのルクルドさんの速度についてこれるのかを試された。
「いえ、全然大丈夫です」
ただ、ルクルドさんは…と彼がいたであろう場所に視線を向けたが
「居ないし」
私の気持ちをワズンさんが代弁してくれた。この感じだと勇者にあたるメンバーに私のことを報告しに行ったといったところだろうか。私がそう結論付けていると…
「悪い、ちょっと遅くなった」
恐らく勇者なのだろう。にしても…
「帰ってきてすぐで悪いんだけど、ルクルド連れ戻してくるわね」
「あいつ、またどっかに行ったのか…」
❝また❞ということはもう既に何回もこれを繰り返しているということなのだろう。マイペースなのは知っていたが…ここまですごいとは思っていなかった。……悪い意味で。
「折角2人きりなわけだし、自己紹介するか。俺はアクト、アクト・ブレーブだ。」
「よろしくお願いします…」
一瞬、不思議そうに見てきたので何かやらかしてしまったのだろうか。 …これから何を言われるのだろう。私が不安に駆られていると
「俺たちは魔王討伐部隊、それも俺は勇者だがこんなのはただの二つ名だ…故に敬語なんて使わなくてもいいんだぞ?」
「へ?」
想定外の言葉に思わず驚いてしまった。
「いいんです…いいの?」
「ははっ、まだその様子じゃ敬語が完全に外れるのにはもう少し時間が掛かりそうだな。」
恥ずかしい。でも少し楽しい…かも?
「今戻ったわ」
「戻されました」
「そうだったんですね、ちょっと意外…かも?あっえっとおかえりなさい…あ」
「今、敬語言った」
「なんか…想像の数倍距離が縮まってて正直驚いたわ」
ワズンさんからしたら私はついさっきまで敬語を使って話していたのだからこの反応は当然だろう。すると僅かの沈黙を挟んで次の瞬間、場の雰囲気が一気に真面目になった。
「なぁ、お前、俺たちの仲間にならないか?」
嬉しい、それに…。私は微笑んでその問いに返事をする。
「もし、アクトさんがそれでいいのなら…私は入れてほしい…私、多分だけど役に立てるから」
「駄目よ」
「どうしてだ?」
「あまりにも危険すぎる…それにこの子は森で倒れていたのよ?まだ体調だって万全じゃないし、申し訳ないけどあの森のモンスターは正直、そこまで強くないわ、だから…」
「そっかぁ、なら…」
次のルクルドさんの一言はあまりにも衝撃的すぎるものなのであった。
続く
執筆の狙い
この幻想物語(題名は仮決め)は私が初めて書く物語になります。主人公の名前がまだ未登場なのですが、これは名前がないのでナナシと後々名付けられます。尚他3人の名前にはしっかりとした意図があります。なので名前は全て(ナナシも含めて)適当ではありません。個人的にはナナシという名前を早めに登場させようかともおもったのですがどのタイミングが適切か分からず#2or3で登場予定ですが、やっぱり#1で登場させた方がいいですか。初心者なのでアドバイスを沢山もらえると嬉しいです。#1では読者に何となく「魔王を倒すお話なのかな」と思わせることと世界観(:地)、登場人物(:人)、世界の情勢(魔王が支配していること:天)の紹介が目的となります。よろしくお願いします。