作家でごはん!鍛練場
森山威則

 遠くの緑の山に、真っ直ぐ道が吸い込まれる。
 そこに向かって車を飛ばす。
 日差しが太腿を激しく照らしている。
 車を脇に止め、エンジンを切った。
 いつだろう?
 私は玄関の前に立っている。
 玄関のなかがやけに暗い。知らない靴が並んでいる。汗が頬を流れる。
 目の前の玄関は、巨大な闇の口だった。
 やけに外は眩しくて、蝉が鳴いているのに静かだった。
 敷居は世界の境界線だった。
 それはいつ反転してもおかしくない。
 内が外に、白が黒に、近接していることを誰も知らない。
 外の世界には影がない。
 太陽によってすべてが曝かれ、曖昧なものは何一つなかった。
 立ちすくむ私に、悩み・感情・欲心などの一切は存在しなかった。
 ただ肉体がそこにあった。
 雲を溶かして水色がかっている空も、暑くなるほど伸びる草も、青田に浮かぶ家々も、光を運ぶ川も、二三個列になってわだかまる雲も、虚飾に過ぎない。
 それらはただそこにある。
 エンジンをかけて、また車を走らせる。
 夏がここに静止したまま――。

執筆の狙い

作者 森山威則
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去年ですが、夏について感じたことを書きました。

コメント

偏差値45
KD106180001140.au-net.ne.jp

>去年ですが、夏について感じたことを書きました。

何を感じたか、よく分かりませんでしたね。
個人的には、作品の意図が不明な内容なので
不満が残るところです。
次回作に期待しております。

夜の雨
ai202131.d.west.v6connect.net

「夏」読みました。

車を飛ばして自宅に帰ってくると
>玄関のなかがやけに暗い。知らない靴が並んでいる。汗が頬を流れる。
>目の前の玄関は、巨大な闇の口だった。
ということは、父親でも亡くなったのですかね。
そうでもなければ「知らない靴が並んでいる」という事はないですよね。
おまけに主人公は「車を飛ばして自宅に帰っている」。
なので、急ぎの用という事になる。
>玄関は、巨大な闇の口だった。<
これなども、父が亡くなったとかという話なら、主人公のこれからに大きな困難が起きるかもしれないから、「巨大な闇の口だった」になる、玄関が。

A >遠くの緑の山に、真っ直ぐ道が吸い込まれる。<
冒頭のAですが、これは主人公の今までの人生が平穏だったという意味になります。
なので、遠く(長い人生)まで「真っ直ぐ道」なので、「吸い込まれる」安心して進める。

 >敷居は世界の境界線だった。<
父が亡くなっていたとしたら、今までの平穏な人生がこれから一変するので自宅の敷居は「敷居は世界の境界線だった。」になる。

 >それはいつ反転してもおかしくない。
 >内が外に、白が黒に、近接していることを誰も知らない。
これらも、主人公の今までの世界が変化するかもしれないという事になる。

 >外の世界には影がない。
 >太陽によってすべてが曝かれ、曖昧なものは何一つなかった。
 >立ちすくむ私に、悩み・感情・欲心などの一切は存在しなかった。
 >ただ肉体がそこにあった。
これらは、主人公には「肉体」しかないという事です。
自分を守るものは肉体しかない。
外の世界には影がないので、すべてがさらされる。
なので主人公は「立ちすくむ」。
「悩み・感情・欲心などの一切は存在しなかった。」これは、主人公は外の世界(主人公の周囲にある社会生活)に対して、敵意はないですよ、私は子供のように純粋ですよ、ただ、あなた方外の世界(社会)が恐れ多いので「立ちすくんでいるのです」という事かな。

B>雲を溶かして水色がかっている空も、暑くなるほど伸びる草も、青田に浮かぶ家々も、光を運ぶ川も、二三個列になってわだかまる雲も、虚飾に過ぎない。<
ここに描かれているものは社会です。その社会が「虚飾に過ぎない」ということは。
>他者に自己を良いように見てほしいため、うわべや体裁を整えること。周囲から自己をよく見てもらおうと無理をすること。実質を伴わない上辺だけの飾り。<
が、社会ということを主人公は知っていますよ、という事になる。

 >それらはただそこにある。<
しかし、Bに描かれている風景はどうも田舎のようなので、主人公は「村社会」(故郷)に帰ってきたのかもしれませんね。
父親が亡くなったので、車を飛ばして故郷の田舎に帰ってきた。
なので、ご近所の方々の靴などが玄関にあるのかも。
「それらはただそこにある。」これは、その田舎社会が「ぼくねん」とありますよ、という意味。「わからずや」「頑固」「無口」な村でした。

 >エンジンをかけて、また車を走らせる。
 >夏がここに静止したまま――。
主人公は村社会と決別するために車で脱出した。
「夏がここに静止したまま――。」これは、それらの時間がが止まったままという事です。

まとめると。
主人公は父親が亡くなったというので、車を飛ばして故郷の村に帰ってきたが、村は昔のままの閉鎖された世界(社会)だった。それで、主人公は時間の止まった村から出ました。

こんなところですかね。
妄想を膨らましました。


お疲れさまでした。

森山威則
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>偏差値45様

感想ありがとうございます。

森山威則
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>夜の雨様

感想ありがとうございます。
やっぱりこの手の作品だと感想は来ないかな、と思っていたので大変ありがたいです。
今忙しくなってしまって、ちゃんとしたお返事は少し待っていただけたら嬉しいです。

140.32.218.133.dy.bbexcite.jp

>暑くなるほど伸びる草

これはよい詩想だと思います。

>やけに、>玄関、>外

この分量なら、同じ言葉はなるべく繰り返さないほうが良いように感じました。


全体的に、悪くない出来だと思います。夏の詩は多すぎるので、もう少しニッチなテーマを選んでみては。

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

綺麗で良くまとまっているのですけど。
綺麗すぎて呼吸を感じないというか。

詩は難しいですー。

夏の鮮やかな色彩や気温は感じました。センスあると思います。

森山威則
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>夜の雨様

お返事遅くなりました。
父親が亡くなった、というのは面白い捉え方だな、と思いました。
たしかに、祖父母や母親より父親のほうが合ってそうですね。不思議です。

>「悩み・感情・欲心などの一切は存在しなかった。」これは、主人公は外の世界(主人公の周囲にある社会生活)に対して、敵意はないですよ、私は子供のように純粋ですよ、ただ、あなた方外の世界(社会)が恐れ多いので「立ちすくんでいるのです」という事かな。

ここはまさにそうだな、と思いました。
言われて私も気がつきました。
面白い考察ありがとうございました。
また投稿したら感想をいただければ、と思います。

森山威則
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>獏様

お褒めの言葉、アドバイスありがとうございます。
たしかにテーマがありきたりかもしれませんね。
また何か書いたら投稿したいと思います。

森山威則
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>えんがわ様

>綺麗すぎて呼吸を感じない

たしかに、パワーを感じないかもしれないですね。
ちょっと技巧的にまとめようとしすぎたか、そもそもテーマがありきたりだったのか。
センスはある、という言葉、嬉しかったです。
感想ありがとうございました。

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