宙の漕ぎ手
そろそろヘンなカタチの雲が増えてきたよね。
それが文脈のみならず、とっくに宇宙的なそれとして変幻自在のベクトルで放たれた事実でしかないというあられもない鮮度。掴みどころのない事実は説明に不向きで、感覚によればよるほどそれこそままならず暴発する、そんな前のめりな友好の証に違いないからこそ、こちらこそままならずも許容する、してしまうばかりなだけで、ままなるまでもなく光栄。
見上げれば青空。
そこにはいくばくかの雲と、いくばくに含めて見過ごすにはややもかさばる素質を晴れ間に誇る水とチリの結晶。そろそろと、青に蔓延る。惚ける。
「継続案件ですか」
「いかにも」
揺るぎない指向が蔓延る文脈に適応するのはもちろん友として、その興味のありかにこそ猶予と共感の可能性を散りばめる空間に足る安堵をうながす、奢る立場としての個、すなわちあたしという存在の手応えにこそ昂るキミカのたかが都合、つまり話したくて、それしかなくて、あたしは誘われる日常として、もちろんやっぱり友として。
「計画ですか。それとも常套?」
「傲慢かよ人類。たかが対等として自覚しろやボケぇ」
唸る喉を、それを差すコントラストを。
細胞が瑞々しく満ちて、それでも足りないそれ以外からなる組織を探すみたいに眺めるあたしをあたしは心眼で俯瞰する、それを不満に思うキミカから漏れ出す要求が、その焦れた満ち足りなさが好き。
「地震ですか。それとも隕石?」
「放たれるならそれは集合として背くしかないんだろうしだからってスミレ、あたしはあんたのそばばっかには起きないように、堕ちないようにひたすら願うしなんなら迎え撃つためのなにかを一緒に探そうって思ってる。それって今日だってなにも変わらないんだし」
「やめてよ、漏れる」
天岩戸、手力男命。
方向音痴は自覚にあったかなかったか、日本列島のあちこちに岩戸のそれが、そんな逸話が溢れ祀られ果ては九尾の狐だとか毛が生え尾も生えてとっくにわけがわからない有り様にすら、だからってちっとも止まないウズメ様の舞ときたらまるでこんな青空みたいに、誘い晴らしてほら、つまりそんな横顔みたいだとか。
「心細いけどだからってキミカ、その欲求の在処ってさ、それってまさしく安堵。あたしはずっとそのままでいてほしいって、あってほしいって思ってるよ」
深刻な、実に深刻で純粋なエスケープ。だからこそ寄り道を選んでしまうのだと、そんな気枯れそうでも純粋な深刻さは願望に媚びたカフェモカなんかにはちっとも溶け込んではくれないし、それが何よりとして飽き足らずもはやあたしたちは脱走した堤防の土手、見守る青空の先、宙との共生を目論む。
「すなわち、さあ」
「なに」
「レンズ雲」
富士の笠、ときとして独立してそこかしこに現れるそれもあるとか説明してほしい。只今の視界に富士はなく、ただ斬撃よろしくたなびく大小のレンズがいち、に、さん、ならずよんとまで。
「いよいよなのかな。ワクワクする」
「欲しがるな、心得よ」
「まるでブルース」
「そこはリーで」
「まるでりー」
「なめんな」
「ほわちゃ」
生きるか死ぬかを驕り嘯くみたいな青春なんてとっくに死んだし、これからの生としてこれまで程度のたかが生を見事に裏切ることくらいただの当たり前なんだし。
キミカそのもの。そんな忘れ得ぬ長文と、唇の感触こそを長久の武器として携えつつ青空の下、今日も自習する。予感をなぞる。勝ち取るためにこそ必要となる女性性の時代だとか、馬鹿にしている。それでは価値がないし、黙れと思う。相応しく隔てながら報われるべき上昇の課題を自惚れて見くびるな。見込みながら嘯くな。
思い知ればいい。違う、知るべき。女体献上。残念だけどこれまでの人類によるこれまでの欲求はこれまでとして愚かしく正常、ふさわしくみすぼらしくありのまま至極なり当然なりとすら。そうしてだからこそ嫌うべき、そんなものとっくに汚れて廃れたものらしく然るべく見下した上で報われるべきとして、次元として、隔たるのだ、報われたいのだあたしもキミカも、報われなくたって細胞らしく当たり前に上昇する分岐を選択する適合種族として。
「でもスカートは、やっぱ穿きたくない?」
「無重力に訊いて」
小五の夏。あたしのスカートをめくった未熟な人類を、キミカは冷徹に殴り倒した。
ゼイリブ。キミカが男だったなら、あたしはアマテラスに耽る天国に漫然と生きたのか。そんなの馬鹿げてる。移行するただの晴れ間をいつだって、これからもずっと、きっと見上げるだけ。
木星がリリースした隕石の到着まであと一年余だとか、そんなことだけでもあたしたちの予感は自由加速をとっくに食い散らかして飽き足らない。宇宙空間は真空ではなくプラズマの集合体なんだとか、我ら人類があずかり知る感覚理解程度になど到底収まり切らない異次元加速も甚だしく訪れる進化か終末か転生する次元か、所詮二極化ぽっちに止まるだけなのかもしれないシケたアセンションだとか祭りの出店みたいなボロい建て付け、自由落下すらも覆るのかもしれないとかザマアミロ、所詮なにもわからないらしく白状してみろほら、今日も単位落としたしザマアミロって、そうしてそんなものよりこうして横に、キミカがすぐ隣に、いる、そんな距離、速度こそ。
宇宙波。
たった一メートル四方かぽっちばかりでも直撃したら地球丸ごと葬り去る、そんな凶暴で狂った周波数だとかってね、たとえばそれってたぶんこれ、明らかに言い過ぎてしまうそれにすり替わったとしか思えない、ちっともあり得なくなんかない超越した次元の確率。
「いつまで化けてんのかな、あいつら」
「もったいぶってんでしょ。ほっとけば」
とっくに存在している。雲のフリとかしながら。
それとは認識できないだけのことがすべてを分けるなら、報われないなら、勇気が足りないのだ。学校だけがシェルターでは、なにかと足りない。いろいろ物足りない。
「卒業する」
「うん」
「卒業したいから」
「うるせえぇ。リーなんでしょ」
見損なう。
それに足る人類としてこそ、加速するべき予感は尽きない。
もっともっと、繋いだ手で時速三万九千キロメートルを漕ぐ。
了
執筆の狙い
先日、いきなりバイクが燃えてびっくりしました。
どこかの何かがショートしたらしいです。
ショートわからんけど悲しかった。
2024、波乱の幕開けです。
だからって迎え撃つ精神は揺るぎないです。
バイク直ったし、ついでにグリップの色変えておしゃ度プチアガったし怪我の功名?
よくわかりませんがより一層深まった愛と共に極寒の空気が緩んだ隙間だけぺろっと駆け抜けてまいります今年もたぶんよろしくお願いします。
今年は喧嘩しません!
約束しませんっ!