手記
昨夜の月、美しかった。
世界には美しいものが溢れていて、それとおなじだけ哀しみも溢れていて。
わたし、何を感じているんだろう。
なんにもないな。
川面に浮かびふわふわ流れゆく泡に似て、知らぬまに生まれて流れてふと気がつけば消えている。そもそも人生はそんなもんで、泡が消えようが消えまいが質量はかわらない。だからこそ色を美しいと想うのかもしれない。だからこそ二度と再び廻りくることのない瞬間を大切にしたいと想うのかもしれない。
川はどこまでも続いている。それが大きな何かしらの流れというものなのかもしれない。
とてつもなく小さいわたしはいかんともしがたい枠に囚われて、ただ生まれただ消える線香花火みたいに。
想いはいつも空回りで、どこかに流れてただ消えていく。何度生み出しても流れてどこかで消える。寂しさだけがふわふわ漂ってて時間だけが前に前に。
ただ笑いあって手を繋いで 一緒に歩いて同じもの食べて、他愛ない話しして、隙あらば、くっついて。とにかく出来る限り一緒にいたくてただ好きだと言いたくて。
そういうのが幸せで。
いつからなんだかズレちゃったんだろ、がんばったらどうにかなる?
そんなものでもないことを実感し続けて今に至る。ただ抱き締めてほしいだけなんだろうなわたし。と独り勝手に思ってみる。
わたし、どうしたいんだろ。
どう生きたい?
もうすぐ 夜が明ける
夜明け前が 一番冷え込む
――ある自殺者の手記より――
了
執筆の狙い
昨日の月は美しかった。今夜はどうだろう?
さらっと書いてみました。
さらっと読んでみてください。