作家でごはん!鍛練場
sst57

誰も始点にならない輪

【帝国海軍第三艦隊旗艦〈カール・グスタフ〉士官私室「ホテル」/ ヴェスターラント泊地 / 七月二十八日 午前二時】
旗艦の第四甲板、機関区画の上に士官私室があった。正式な名称は第二士官待機室だったが、艦隊の士官たちはここを「ホテル」と呼んでいた。革張りのソファが二脚、紫檀のテーブルが一台、壁には帝国の地図と、先代司令長官の肖像画。戦時下にもかかわらず、ここだけは絨毯が敷かれていた。艦隊司令部の体面のためだった。
ブレヒト中佐が入室したとき、エーレンフェルト中将はテーブルの前に座っていた。軍服の上衣を脱ぎ、白いシャツの袖を片方だけ捲り上げていた。テーブルの上にはコーヒーポットと、航海用の陶製カップが二つ。一つはすでに半分空だった。
「失礼します」
「座れ」
ブレヒトは向かいに座った。エーレンフェルトが空のカップにコーヒーを注いだ。ブレヒトは礼を言って口をつけた。薄かった。本物のコーヒー豆は半年前に底をついていた。今は代用品に僅かな本物を混ぜて煮出したものだった。
「眠れませんか」
「寝てもやることがない。命令が来るまでここにいる」
「命令は——来るのでしょうか」
エーレンフェルトはカップを両手で包んだ。大きな手だった。砲術出身で、若い頃は砲塔の中にいた手だった。
「来るだろう。何かしらの形で」
ブレヒトはカップを置いた。
「閣下。少し、お話ししてよろしいでしょうか」
「愚痴か」
「はい」
エーレンフェルトの口元が僅かに動いた。
「聞こう」
ブレヒトは姿勢を崩さなかった。だが声の調子を少しだけ落とした。この「ホテル」では階級が半分だけ溶ける。旗艦の暗黙の規則だった。
「閣下は、此度の戦争に勝てるとお考えですか」
「勝つの定義による」
「では、此度の戦争の目的は何でありますか」
エーレンフェルトはコーヒーを啜った。答えなかった。
「私の弟はラーゲンブルクで戦死しました。去年の夏です。陸軍の第十四師団で、島嶼防衛に配置されていました。全滅です。玉砕と発表されました。弟は三十一歳で、妻と生まれたばかりの娘がいました」
エーレンフェルトはカップを置いた。
「弟の死に意味があったかどうか、私は問いません。意味がなければ耐えられないとか、そういうことでもありません。ただ知りたいのです。弟は何のために死んだのか。ラーゲンブルクを守ることが此度の戦争のどこに位置づけられるのか。あの島を守れていたら何が変わったのか。守れなかったから何が変わったのか。私にはわかりません。参謀本部にもわからないのではないかと思います」
エーレンフェルトは黙って聞いていた。
「それで、少し調べました。此度の戦争のことではなく、もっと前のことを。帝国がどうやってここに来たのかを。学生時代に歴史を学んでおりましたので、資料は頭にあります」
「言ってみろ」
「大戦のとき——最初の大戦のとき、帝国はアーヴィントン王国と同盟しておりました。アーヴィントンは帝国に地中海への艦隊派遣を要請しました。帝国は断りました。自国の防衛を理由にしましたが、要は利益が見えなかったからです。海軍を出して何を得るのか。それが定義されていなかった。だから出さなかった。結果、同盟国としての信用を失いました」
「それは知っている」
「はい。しかし同時期に、帝国は東方のユァン朝に対して二十一箇条の要求を突きつけています。地中海には出さないが、東方の権益は欲しい。アーヴィントンから見れば、帝国は義務を果たさず利益だけを取ろうとする国家に見えたはずです。ユァン朝から見れば、帝国は西洋列強と同じ収奪者に見えたはずです。そしてユァン朝の民間商人たちは、大戦中、連合国側に多大な資金援助を行っています。帝国が同盟の義務を渋っている間に、東方の商人のほうが帝国の同盟国に貢献していた」
ブレヒトはコーヒーを一口飲んだ。まだ薄かった。
「閣下、帝国はそのあと東方共栄圏を宣言しました。東方の解放、東方の近代化。しかし実態がどうであったかは、閣下もご存じの通りです。もし帝国が本気で共栄を意図していたなら、ユァン朝に工場を建て、鉄道を敷き、技術を与えればよかった。産業革命の灯火を東方に渡せばよかった。そうすれば帝国は東方全体の盟主として、合衆国と対等に渡り合える経済圏を手にしていたかもしれない。しかし帝国はそうしなかった。収奪しました。そして収奪した資源で艦隊を建造し、その艦隊で今、ここに浮いています」
エーレンフェルトは肖像画を見ていた。先代司令長官。帝国海軍の全盛期を率いた人物だった。その艦隊の残骸が、今この泊地に繋がれている。
「私が申し上げたいのは、帝国の対外政策には一貫した目標が一度もなかったのではないか、ということです。地中海派遣を断ったのは目的がなかったからです。東方に要求を突きつけたのは目の前の利益があったからです。共栄圏を宣言したのは資源が必要だったからです。開戦したのは——閣下、なぜ開戦したのでしょうか」
「資源を絶たれたからだ」
「はい。資源を絶たれた。なぜ絶たれたか。東方での行動が合衆国の権益と衝突したからです。なぜ衝突したか。東方での行動に歯止めがなかったからです。なぜ歯止めがなかったか。歯止めを定義するための上位目標がなかったからです。帝国が何を望む国家なのか、どこまでを自国の圏域とし、どこからを他国の圏域と認めるのか、それを定義する意思が——」
「ブレヒト」
「はい」
「お前の言いたいことはわかった」
ブレヒトは口を閉じた。
エーレンフェルトはコーヒーポットを持ち上げ、自分のカップに注ぎ足した。ポットはほとんど空だった。最後の数滴が陶器の底を叩いた。
「目的はない。最初からなかった。お前の言う通りだ」
ブレヒトは何も言わなかった。
「此度の戦争の目的を、俺に聞くな。俺は艦隊を預かっているだけだ。参謀本部は次の会戦を計画しているだけだ。政府はユーラティア連邦に仲介を依頼しているが、ユーラティアは来月にも我が国に宣戦する。外務省はそれを知っている。知っていてなお仲介を依頼している。なぜなら他にやることがないからだ。目的があって手段を選んでいるのではない。手段が先にあって、それを実行することが目的になっている。ユーラティアに電報を打つことが外務省の仕事だから打つ。艦隊を泊地に繋いでおくことが海軍の仕事だから繋いでおく。お前の弟を島に送ることが陸軍の仕事だから送った」
ブレヒトの手がカップの上で止まった。
「弟は——弟は、仕事として死んだのですか」
「そうではない。そうであってたまるか。だが、お前の弟を死なせた命令を出した人間に聞いても、答えは返ってこない。その人間もまた命令を受けて実行しただけだ。命令を出した人間も。その上も。全員が自分の職責を全うしている。全員が目の前の問題に対処している。誰も悪くない。誰も愚かではない。だが全体を見ている人間がいない。全体を見る責任が誰にあるのか、それすら定義されていない」
「皇帝陛下は——」
「陛下は御前会議で裁可される。裁可するためには案が上がってこなければならない。案は参謀本部と政府が作る。参謀本部と政府が案を作るためには目的が必要だ。目的は陛下が——わかるか。回っている。誰も始点にならない輪が回っている」
沈黙が落ちた。艦の機関は停止していた。泊地に繋がれた艦は、潮の動きだけで微かに揺れていた。
「閣下」
「なんだ」
「私の弟の娘は、今年一つになりました。名前はエリーゼです。弟が決めた名前です。出征の前日に届け出ました」
エーレンフェルトはブレヒトを見た。
「弟が何のために死んだかはわかりません。わからないことは受け入れます。しかしエリーゼが大きくなったとき、伯父として何と伝えればよいのか。お父さんは帝国のために死んだと言えばいいのか。帝国は何のために戦ったか聞かれたら。答えがないと言うのか。一歳の姪に」
エーレンフェルトは答えなかった。答える代わりに、空のコーヒーポットをテーブルの端に寄せた。
「ブレヒト。お前は此度の戦争はツケだと思うか。帝国が三十年かけて溜め込んだツケだと」
「——はい。そう思います」
「俺もそう思う。だがツケだとわかったところで、払い方がわからん。払い方を決める人間がいない。ツケの総額すら誰も知らん」
午前三時四十八分。伝令が扉を叩いた。
「参謀本部より入電であります」
ブレヒトが立ち上がり、電文を受け取った。封を開け、目を通し、エーレンフェルトに渡した。
〈情勢ニ変化ナシ。ユーラティア連邦トノ仲介交渉ハ継続中。現態勢ヲ維持セヨ〉
エーレンフェルトは紙片をテーブルの上に置いた。紫檀の木目の上で、薄い紙がかすかに震えていた。機関の振動ではなかった。風もなかった。二人の呼吸だけだった。
「継続中だそうだ」
「はい」
「何の交渉かは書いていないな。いつも書いていない」
「はい。いつも書いておりません」
エーレンフェルトは紙片を裏返した。白い裏面を見た。何も書かれていなかった。当たり前だった。
「ブレヒト。お前の姪に伝えることは、お前が考えろ。俺には答えられん。俺にできるのは、この艦隊の人間をできる限り生きて帰すことだ。それが目的かと聞かれたら——いや、それは目的ではない。ただの願いだ。だが目的がない以上、願いしか残らん」
ブレヒトは敬礼した。エーレンフェルトは頷いた。
ブレヒトが「ホテル」を出て通路を歩いているとき、午前四時の時鐘が鳴った。泊地は暗かった。右舷の舷窓から、隣に停泊する重巡洋艦の灰色の艦体がぼんやり見えた。帝国海軍の残存戦力がここにあった。目的のない艦隊が、命令のない泊地で、来ない返事を待っていた。
通信室に戻ると、当直のヘッセ少尉が受信機の前に座っていた。
「何かあったか」
「いえ。参謀本部から定時連絡が一件。『情勢に変化なし』であります」
「そうか」
ブレヒトは木箱に座った。ヘッセの当直日誌が開いていた。余白に何か書いてあったが、ブレヒトは読まなかった。
午前五時。空が白み始めた。泊地の水面が灰色から薄い青に変わりかけていた。
午前五時十四分。合衆国の軍事周波数から平文の信号を傍受。ヘッセが書き取った。
“ALL STATIONS. CLEAR THE AREA. REPEAT. CLEAR THE AREA.”
ブレヒトは紙片を見た。ヘッセを見た。
「司令長官に——」
天井の電灯が消えた。
消えたのではなかった。電灯よりも強い光がどこかで生まれて、電灯が相対的に見えなくなったのだった。窓のない通信室でそれが起きるはずはなかった。だが起きた。光は鉄の壁を通さなかったが、隣接区画との隔壁の隙間から、通路の先から、艦のあらゆる継ぎ目から白い光が漏れた。
受信機の針が全周波数で振り切れた。
揺れが来た。
ブレヒトは壁に叩きつけられた。ヘッセが椅子ごと転倒するのが見えた。赤い非常灯が点き、すぐに消え、また点いた。金属が軋む音。水が入る音。
三十年分のツケの領収書が届いたのだと、ブレヒトは思った。宛先はなかった。差出人も読めなかった。金額だけが、泊地の全てを呑み込むほど莫大だった。
熱が鉄の壁を通して届いた。ブレヒトの頬が乾いた。
ヘッセが何か叫んでいた。若い声だった。
ブレヒトはエリーゼの顔を思い浮かべようとした。会ったことはまだなかった。写真を一枚だけ持っていた。胸ポケットの中にあった。
通信室の時計は午前五時十五分を指したまま止まっていた。

誰も始点にならない輪

執筆の狙い

作者 sst57
KD059138100197.ppp-bb.dion.ne.jp

昨今の日本について、私のできうる限りの文章能力を用いて執筆してみました。
冗長で読みづらく、面白みに欠ける文章ですが。何卒ご容赦ください。
辛口で具体的な評価、感想をお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。

コメント

偏差値45
KD059132064148.au-net.ne.jp

架空の世界のお話のようで、戦中の日本のようです。
ここで作者は、政府の政治的な仕組み、あるいは軍部の組織の仕組み、
そのようなものを批判したいのかな。そんな気がしましたね。

けれども、個人的にはどうでもいいことかな。基本的に根性なしなので……。
それは偏差値75さんに任せておけばいい気がしますね。
ひとつの軍艦を造る人も必要ですが、ひとつのネジを作る人も必要ですからね。

で、面白いか? と言えば「いいえ」かな。
問題提起はあるけれど、考える必要性はないですからね。
まあ、進歩がないわけですが、進歩がないから戦争は繰り返されるのでしょうね。

天ピカ
113x40x76x74.ap113.ftth.ucom.ne.jp

読ませていただきました。

大東亜帝国とか千年帝国とか黄金時代とかZとか、宗教とかでも
ナラティブなプロパガンダを共有することは、戦時中の民衆をコントロールするうえで不可欠です。

作中ではそういったプロパガンダが無い、もしくは崩壊後のようで、
いかにも戦時中ではないかのように自国の歴史を批評する余裕さえある。
それは敗戦濃厚の末期の雰囲気のようで、いいようによってはそれこそがラストの伏線とも言えます。

何の理由もない戦争ということはないはずで、
一貫した目標が無いというのは今の視点から読み直した場合の一つの考え方というだけで、
歴史修正主義ではないですが、当時は都度都度言い訳があり、歴史として見たときある程度正当化されるはず、ブレヒトはそれらをどう冷静に看破するか。
冷静と言っても単に今現在の結果論的視点というだけなので、その時代特有(歪んだ)の視点と歴史学のないまぜであることは自覚すべきですが。

一言で言えば、熱狂と不可分である戦時中にしては内省的過ぎるかなといった印象です。
sst57さんが「昨今の日本」をどう捉えているか分からないですが、全体的に敗戦の雰囲気を描いていると感じました。

平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

sst57さん、作品を拝読させていただきました。

この作品は、昨今というよりは、現代にも繋がっているかもしれませんが、大日本帝国を批判した物語かなと感じました。

大日本帝国の国是はたった一つだったんです。「西洋列強の植民地にならない」これに尽きます。
ところが、日露戦争に勝利し、国力もついて、国際連盟の常任理事国、「名誉白人」みたいなポジションについて、
「植民地を作る側」になっちゃったんですね。かつ、その頃には欧米諸国は「そろそろ植民地支配やめどきだな」
みたいな空気になってるところで、満州事変なんてやっちゃったわけです。しかし、当時の世界恐慌のさなか、
他にやりようあったか? と言われるとなんとも難しく、2,26事件などで政治家は委縮し、軍部台頭になるんですが、
その時の国是は「植民地を増やしてなんとかすべし」なので、中国は攻めるわ東南アジアにも進出するわ、となったのですが、
国際連盟は抜けてるし、味方欲しいとかいってナチスドイツと組むわけですから、やらかした感が凄いわけです。
そして戦後は「みんなと仲良くし加工貿易中心にものつくりで繫栄しよう」が大成功したわけですが……。

それまでは260年の「極東の鎖国によるミラクルピース」と江戸時代を謳歌していた日本人、突如帝国主義の荒波に飲まれ、
文明開化とか言って西洋文明を吸収したものの、そこにすら「国家百年の大計」もっと言うと「国家の目標とはなんだ」が
未だに掴めていない気もします。国民の生命と安全を守るのが国家なのですが、その方策は「日米同盟」に丸投げ。
これで「国家の目標」なんて難題は考えなくて済み、80年の平和と繁栄を謳歌しているのですが、これで大丈夫かな、と。

曲がりなりにもWW2の時に「大東亜共栄圏」「東亜の解放」などと言っていたのですから、その辺にヒントがあるかもしれません。近隣諸国と仲良くし、経済交流、文化交流を深め、アジアのそれなりの大国としての地位を築いていく。この辺りが国家目標になっていくのではないでしょうか。

少しピント外れの私見を述べたかもしれません。作品はとてもよく書けていたと思います。この内容なら日本人っぽい名前でも良かったかもしれない、とは思います。「マサト」「ヤマト」「タケル」みたいな感じのほうが入りやすかったかもしれません。

それではこれからもお互いに頑張りましょう。

匿名希望者
nat-ftth1.kkm.ne.jp

拝読しました。

登場人物のドイツ語風の名前から、最初は『銀河英雄伝説』のような宇宙戦争ものを想像しましたが、実際の舞台設定がどのような世界なのか、読者として少し把握しにくい部分がありました。艦隊の状況や国家の背景などがもう少し分かると、物語の位置づけが理解しやすくなるのではないかと思いました。ドイツ帝国をモデルにした世界観なのかなとも感じましたが、確信は持てませんでした。

また、作中で言及される「ホテル」という言葉が、この物語の中でどのような意味を持つのかも、私には十分に読み取れませんでした。もし象徴的な意味があるのであれば、もう少し手がかりがあると理解しやすいと感じました。

細部の描写についても、いくつか気になった点があります。

>革張りのソファが二脚、紫檀のテーブルが一台、壁には帝国の地図と、先代司令長官の肖像画。

雰囲気を出すための描写だと思いますが、家具の情報が少し独立している印象もありました。人物や場面の状況と関連づけた形で描写されると、空気感がより伝わりやすくなるのではないかと思いました。

>ブレヒト中佐が入室したとき、エーレンフェルト中将はテーブルの前に座っていた。軍服の上衣を脱ぎ、白いシャツの袖を片方だけ捲り上げていた。テーブルの上にはコーヒーポットと、航海用の陶製カップが二つ。一つはすでに半分空だった。

中将の服装についての描写はありますが、人物像や外見の印象はあまり描かれていないため、読者として人物のイメージを持ちにくいと感じました。また、中佐の容姿についての描写もないため、登場人物の像がやや曖昧に感じられました。

三人称一元視点の場合でも、読者が視点人物を把握するまでの導入部では人物描写をある程度行っても問題ないと思います。もし視点の混同を避けたいのであれば、例えばブレヒトが廊下から部屋に入る場面から描写する方法もあるのではないかと感じました。

また、「テーブルの前に座っていた」という表現は位置関係がやや想像しにくいように思いました。例えば「壁際のソファに座り、テーブルに両肘をついていた」といった形だと場面が浮かびやすいかもしれません。

>カップが二つ。一つはすでに半分空だった。

この書き方だと、もう一つのカップの状態が少し気になりました。読者によっては「もう片方は満杯なのか」と考えるかもしれません。

>本物のコーヒー豆は半年前に底をついていた。今は代用品に僅かな本物を混ぜて煮出したものだった。

この部分から、補給の停滞や国家の疲弊を示唆しているのかなと感じました。もしそうした状況設定であれば、もう少し背景が分かると世界観がより伝わると思います。

>この「ホテル」では階級が半分だけ溶ける。旗艦の暗黙の規則だ。

「溶ける」は比喩的な表現だと思いますので、「規則」という言葉との関係が少し分かりにくく感じました。

>「閣下は、此度の戦争に勝てるとお考えですか」

佐官がこのような問いを上官に直接投げるのは、軍隊組織としてはやや大胆な発言にも思えました。もし意図的なキャラクター描写であれば、その人物像の説明がもう少しあると理解しやすいと感じました。
また、作中では中将がブレヒトを呼び捨てにしているようなので、親族関係や旧知の仲など、通常の上下関係とは少し違う関係性があるのかなとも感じました。そのあたりの背景がもう少し示されると、二人の会話のニュアンスがより伝わりやすくなるのではないかと思いました。

>ラーゲンブルクを守ることが此度の戦争のどこに位置づけられるのか。あの島を守れていたら何が変わったのか。

領土防衛自体が大義になることも多いので、この島の戦略的意味がもう少し示されると納得感が出るかもしれません。

>〈情勢ニ変化ナシ。ユーラティア連邦トノ仲介交渉ハ継続中。現態勢ヲ維持セヨ〉

雰囲気づけとして、もしドイツ語などの原文と訳を併記する方法もあるのではないかと思いました。次が英語だから。

>午前五時十四分。合衆国の軍事周波数から平文の信号を傍受。ヘッセが書き取った。

平文通信は通常、傍受される可能性がある通信という印象がありますので、このあたりの設定(意図的なのか、緊急通信なのかなど)が少し気になりました。

最後の爆発の場面についても、

>天井の電灯が消えた。

という書き方より、強烈な光が差し込んだため相対的に電灯が見えなくなった、という描写の方が分かりやすいのではないかと感じました。また「艦のあらゆる継ぎ目から」という表現は、ブレヒトの視点から一度に把握できる範囲を少し超えているようにも思えました。

あくまで個人的な読者としての感想ですので、見当違いの部分もあるかもしれませんが、何か参考になる点があれば幸いです。

頑張ってください。

追伸
AIとのチャットで銀河英雄伝説の冒頭について話したことが参考になると思うので張っておきます。

戦記物や軍事ものは、世界観・勢力関係・戦況がある程度わからないと、読者が「今何が起きているのか」を把握しにくくなります。特に架空世界の場合は、その説明をどこかで自然に入れる必要があります。ただ、説明を前面に出すと今度は物語の流れが止まってしまうので、シーンの合間や会話、状況描写の中に少しずつ織り込む形にする必要があり、そこが難しいところですね。

その点で、銀河英雄伝説(田中芳樹)は非常に巧みだと思います。特にジークフリード・キルヒアイス視点の場面では、

艦隊や作戦の説明

帝国軍の組織や政治状況

ラインハルト・フォン・ローエングラムとの関係

戦場の状況

といった情報が、人物の行動や会話の中で自然に提示されるように設計されています。説明のための説明にならず、「人物が状況を考えている」形で情報が出てくるので、読者は物語を追いながら世界観を理解できます。戦記物を書くうえで一つの手本になる構成だと思います。

sst57
KD059138100197.ppp-bb.dion.ne.jp

皆様コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまって申し訳ありません。可能な限り一つづつ丁寧に返信していこうと思います。私の表現や文章能力が不適切、稚拙であることを先に謝罪します。申し訳ありません。また、いかなる表現であっても攻撃、ないし批判の意思はありません。誤解を与えてしまうような表現をお許しください。

偏差値45さん。コメントありがとうございます。まず、これはいかなる政治形態や軍部に対する批判ではありません。「大戦略次元での目的の喪失が戦略及び戦術次元での評価基準の喪失を意味する」これがテーマでした。しかしながら、私の文章能力の拙さから間違ったように伝わってしまったことを謝罪申し上げます。申し訳ありません。
さて、実際に”おもしろくない”物語であると私も思いますが、つまりは30年前には既に大戦略次元での目的を喪失したいた。これが一歩目です。大戦略次元での目的とは?国家の目的です。当時の日本は、列強になること、西洋諸国に追いつくこと、そういった指針で動いていたように思います。追いつくとはなんですか?何も定義されていませんでした。だから戦争が正しかったのか、なんの為に兵士が死んだのか評価できない。そう考えました。
ですから、これは私の歴史解釈をフィクションテイストして述べているに過ぎません。私の思う事実と結果、30年の空白と核によるツケ。(核と言うのは抽象的な表現ですが)空白の30年、これは現代では?同じように今の日本に明確な大戦略次元での目的があるのでしょうか?政策を評価できるのでしょうか?政治家が仕事をしているからいい。汚職をしないからいい。そうなっていませんか?と、私は思うのです。
長々と失礼しました。もしよろしければ、もう一度私の意図を確認していただいたうえで、私の表現力不足を指摘、そして今の日本について考えていただけると、幸いです。ご感想、ありがとうございました。

天ピカさん。コメントありがとうございます。
彼らは将官ですから、プロパガンダを喧伝する方になります。過去の日本においては、プロパガンダによってプロパガンダが生み出されるという魔のループ、つまり将官クラスがプロパガンダに心酔するということも確かにありました。しかしながら、彼らは大学を出たエリートです。フィクションの上のチンパンジーではありません。事実を俯瞰し、正確に評価できたはずです。ただ、できたとて自らの仕事をこなすだけでした。
今現在でもそうではないですか?落ち着いて観測すれば、政策などの一貫性の無さ、場当たり的な対応。見えるかも知れませんが、見えたらなんです?と言い切ることもできます。もしかしたら皆そうしているのかも知れない。ただ、ツケはやってきます。
少し誤解を招く文章になってしまいましたが、何卒お許しください。もしよろしければ、このコメントに付いても議論の余地があると思いますので、コメント、お待ちしております。コメントありがとうございました。

平山文人さん。コメントありがとうございます。書いてから追記なのですが、コメントに対する返信ではなく、議論と私の私見です。すいません。
大戦略次元での目的とはなんなのでしょうか。"国民の生命と安全を守る"極論を言えば、GHQによって国民が守られるのであれば降伏すればいいのでしょうか。国家の存続とは?自衛隊の存在意義とは?
未定義であること、それは混沌をもたらし、最悪の結果を招くのではないですか?空白の30年のツケはやってきているのでは?
私が思うに、これは日本を描きましたが、私なりの歴史解釈であり、これはフィクションです。そのため、このようなテイストになりました。正直に言えば、日本に引っ張られすぎて、いかなる国家でもありうる事実と結果の羅列。ではなくて日本批判、と捉えられてしまいました。以後精進します。
疑問形が多く、正直私もわからない部分を描いてみたので、議論の余地が大きく、そこを埋めるようなコメントになってしまいました。お許しください。ええ、お互いに頑張りましょう!コメント、ありがとうございました。

匿名希望者さん。コメントありがとうございます。
まず、冗長な表現。ホテルや家具、コーヒーに関しましてはまさにその通りで、投稿後に修正をおこないました。ご指摘、ありがとうございます。
軍隊組織として大胆、とありますが、リアリティにおいては絶望的です。このような非公式の会話がなかったわけではありませんが、それなりのマナーとルールはあります。しかしながら、参謀を〇〇君呼びで私的な意見を求めることはあったので、リアリティと物語性の折衷であると考えました。
ラーゲンブルクはアッツ島玉砕です。地名そのものではなく、歴史的史実などを組み合わせて、推察しやすいように配置したつもりでしたが、私の技能不足でした。つまり、大戦略次元での目的が無いのに戦略次元での国土の防衛がどうであるか評価できないのです。と、いうのが私の私見です。
ドイツ語出ない理由は日本モデルであること、平文に意味があるからです。これは実際に米軍が行った核攻撃前の退避勧告です。最後の時間も、15分です。
艦のあらゆる継ぎ目からとはそういう意味で配置しました。
これらはあくまで私の考えですから、もしよろしければ容赦ない指摘をお待ちしております。
これはどちらかと言うと幼女戦記を切り取ったものではないでしょうか?銀英伝においてはどちらも大戦略次元での目的がありましたが、幼女戦記には、帝国にはあったでしょうか。つまり、国際関係も世界情勢もある意味では必要ないのではないでしょうか。
また、wikipediaに、歴史の教科書に載っている内容で構成しております。世界観のイメージが難しいということは、私の表現力不足です。ただ、日本であると明示してしまえばこれが歴史だと誤解されてしまいます。キャラクターの主観以前に、作家の主観なのです。
長文になってしまい申し訳ありません。細かな指摘、大いに参考になりました!コメント、ありがとうございました。

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