夢の
最後に、海へ落ちた。
それは突然だった。
誰も予告などしてくれなかった。ただ、足元が消えて、身体が宙を舞い、次の瞬間には冷たい塩水が全身を包んでいた。溢れだした水は、僕の肺まで侵入してきて、息をすることさえ許さなかった。
それでも、僕はまだ息をしていた。
いや、息を「していた」というより、息を「させられていた」。
誰かが、どこか遠くで、僕にまだ生きることを強いているような、そんな感覚だった。
遥か遠くを進む君へ、全てを託そうと思ったのは、あの日のことだ。
言葉はいつも纏まらなかった。
下手くそで、途切れて、角が尖って、相手を傷つけるだけの刃物みたいだった。それでも何度も何度も、君に向かって投げ続けた。
届いたのだろうか。
少なくとも一度でいいから、君の胸に刺さって、痛みとなって残ってくれれば、それで僕が生きた証になると思った。
生き絶える日に、何を思うのだろう。
多分、僕は後悔なんかしない。
ただ、少しだけ寂しいかもしれない。
あの頃、追いかけていた星屑の群れが、ゆっくりと僕の周りを回りながら、元の場所へ還っていくのを眺めているような、そんな気持ちになるのだろう。
「ここまで来たぞ」と、過去の自分に声をかける。
誰も聞いていない。
それでも、言わずにはいられなかった。
星をただ追いかけただけじゃ、何も変わらない。
明日を目指すだけじゃ、何もできやしない。
だから僕は、舞い上がった。
空高く。
声にならない叫びを、世界に響かせようとした。
水色の水槽の中で、青が混ざってゆく。
最初は薄く、淡く、透明だった色が、少しずつ濃くなって、僕の視界を塗り潰していく。
儚くて、切なくて、それでも止められない今。
未来への道標なんて、最初から取るに足らないものだったのかもしれない。
導きなんて幻想だ。
誰が見るっていうんだ。
足りない僕じゃ、全てなんてできない。
不甲斐ない僕でも——
走る。
まだ走る。
未来を見たい。
最後まで。
ソーダ色をした今日が、せめて意味を持って笑えるように。
落ちる光を追い抜いて、海の上へ。
二人の方へ。
また次へ。
僕が居られなくなるまで。
僕は僕だ。
過去も、今も、未来も、その先も。
変わってしまったって、変わらない。
矛盾だらけの、みっともない、脆い、でも確かにここにいる僕。
世界を超えて、全てを超えて、
手を伸ばす。
君を追いかけた僕。
昔も、今も、ずっと。
変わらないでいたいなんて、贅沢な願いかもしれない。
幻想だって、変わったって、意味なんてなくたって——
それでも僕は、僕らしく、何度だって立ち上がる。
楔はない。
この僕を、星を、残せたなら。
そう生きて、逝く。
海はまだ、静かに波を寄せていた。
僕の身体はもう、ほとんど浮かんでいなかった。
でも、最後の最後まで、視線の先にはあの水色の光があった。
君がいた場所へ。
僕らがいた場所へ。
もう一度だけ、届けばいい。
——手を伸ばした。
執筆の狙い
夢で、こんな感じの見たので書きました。
覚えてないところがあったので脚色しています。
感想、文章的なミスの指摘などよろしくお願いします。