作家でごはん!鍛練場
労働

怪異ホラーの導入

 ぽつ、ぽつと星一つ輝くことのない夜の空から雫が落ちる。冷たくもない生温かなそれはまるで獣の口腔から滴る唾液のようだ。飢えた何かが闇に潜んでいるかのような、嫌な錯覚を感じながらも目的である其れへと足を歩ませる。軽量を売りにしているはずのスニーカーはまるで靴底が鉛に変わったように重たく、湿った土を踏み締める度に土の底へと沈んでいくかのようだった。
少しでも歩みを止めれば一歩も踏み出せなくなってしまいそうだ。この青年……千ヶ崎圭が、そう感じるのはこれからしようとしていることへの恐れからだろうか。やや釣り上がり気味の瞳であと数メートルに迫った、目的である其れを見る。煌々と白い明かりを灯す四方形のそれは、どこにでもあるような公衆電話だった。ガラスの壁は曇り、内側に貼られた使用方法が書かれたステッカーは日焼けで黄ばんでいる。その中に、玩具のように鮮やかな緑色の電話が鎮座していた。
突如頬を羽虫が掠めて、耳に不快な羽音を残す。気色の悪さにゾワっと鳥肌が浮かび指先が痒くなる。その感覚を振り切るようについに扉の前へと立った。

「……」

夏だというのに、異様な寒気が全身を包んでいた。体感的な暑さによって吹き出した汗で黒いシャツがベッタリと張り付いているはずなのに、骨の芯まで凍えるような寒気に全身が震えている。奥歯までカチカチと音を立てて噛み合わないほどに。
やはり、やめておくべきではないか?と警鐘が直感を打ち鳴らしている。
しかし、ここにきて後には退けなかった。それが意地なのか、もっと別の……それこそ人智の及ばぬようなものに突き動かされたとでもいうのだろうか。得体の知れぬ感覚に胸の奥がザワザワとする。血の気を失った指先がドアに触れ、初めて気がついた。
聞こえるのは虫の鳴き声程度でありながら、一枚のガラスを隔てた向こうで電話が鳴っている。チカチカと明暗するオレンジ色の電子画面に電話番号が連なっていることから明らかだ。
その番号を口に出して反芻する。その声は緊張で枯れて唇の端がワナワナと震え出した。視界に映るその番号は十数年前の、千ヶ崎が小学生の頃に住んでいた家の電話番号だった。視界の端が黒く染まり、視界が一気に狭まる。現実では起こり得ない状況を前に足が竦む。息は浅くなり酸素を深く取り込めずに肺が苦しかった。

──妹が呼んでいる。


それが確信となった今、ここから逃げ出すという選択肢は消えていた。恐怖と覚悟の間の心持ちで意を決して公衆電話の扉を押し開いた。ドアの隙間から脳に直接響くような電話のベルが響く。
ジリリリという音に焦燥感を掻き立てられながらも恐る恐るといった様子で受話器へと手を伸ばした。滲む程度だった汗は、滴るほどに多量に吹き出して床に滴を落としていく。


ジリリリ──


何が待ち構えているかも分からない。正体の分からぬ者への恐怖に心臓が張り裂けそうだった。この透明な箱の中は酸素が薄いのか、息が詰まる。


ジリリリ──ジリリリ──


無機質なコール音は頭痛を引き起こすほどに異様に大きく聞こえた。小さな箱の中でその音は反響して千ヶ崎の鼓膜を苛む。


ジリリリ──ジリリリ──ジリリリ──


誰かこの音を止めてくれ、と懇願が頭の中を占める。しかしこの狭い箱の中にいるのは千ヶ崎一人だ。誰もこの状況を救うことはない。板挟みになっていた覚悟は恐怖へと傾き、揺らぎ始めていた。嫌な予感に思考がべっとりと上塗りされる中、思い出すのは三歳年の離れた妹のことだ。
少し体が弱く、夢みがちな子だったと記憶している。長い黒髪は癖がなく好んで身につけていたカチューシャがよく似合っていた。
お兄ちゃん、と呼ぶ声は鈴が鳴るように可憐だった。兎やハムスターの小動物が好きで大きな犬は少し苦手だった。それらが全て過去形になるのは、彼女がとうの昔に亡くなっているからだ。
「友達の家に遊びに行く」と告げた彼女が家に戻ることはなく、数日後に遺体となって、近くの山の中で発見された。左手が根元から切り落とされた遺体となって。痛々しい損壊があったにも関わらず表情は眠るように穏やかなものだったが、それが救いになると感じられなかった。彼女の小さな体の中に異変が起きていたのだ。心臓はまるで泡に包み込まれたかのように大小多くの腫瘍が生まれ、腫瘍によってあらゆる脈が押し潰された。血流が阻害された結果、死に至ったのだと。
血液が止まる心臓の痛みだって感じただろうに、その表情は全く苦痛を感じているようなものではなかった。白い花に囲まれた妹の表情は化粧を施されていたとはいえ、微睡の中にいるかのように穏やかなものとして千ヶ崎の目に映っていた。
最初こそ奇病として多くの大学病院が妹の遺体を調査したらしいが、未知のウイルスは発見されることもない。心房細胞に異常が起き、心臓弁膜症を引き起こしたという表向きの死因がとって付けられた。彼女の死の理由は、依然として不明という結果に終わったのだと成人を迎えてから父に聞いた。そして今、遺体の調査をしてもきっとその死因は明確にはならないだろうということも。

ジリリリ──ジリリリ──ジリリリ──ジ──


汗で濡れた指が受話器を捉えた、と同時にベルの音が途切れた。耳の奥にはベルの余韻が残り、いまだに聞こえるかのような錯覚を感じる。指紋の跡を残しながら受話器を撫でればだらりと両腕が垂れ下がった。

「はぁっ……!はあ……っ」

そこでようやく息を止めていたことに気がついた千ヶ崎は慌てて呼吸を繰り返した。どれほど酸素を取り込もうが息苦しさは緩和されることはない。それどころか肺が凍りついたように冷たく痺れて、酸素が全身に行き渡らないようだ。手足は重く、頭重感が増していく。胸元辺りのシャツを握りしめながら深呼吸を繰り返す、口腔はカラカラに乾いて喉奥が引き攣るように痛んだ。
逃げ出したい。本能が何度も訴えかけてくる。ここにいるべきでは無いと、居心地の悪さに全身の産毛が逆立っていた。しかし……、退路は残されてはいないのだろう。上げた視線の先にあるのは、ガラスの壁に刻まれた落書きだ。子供が書き殴ったようなそれは番号が書き連ねられている。話に聞いた通りだった。
死者に繋がる公衆電話がある──という、都市伝説まがいの噂だ。その公衆電話は都市部から数駅離れた、工業団地のぽっかりと開けた空間の中にあった。一応公園という体裁を保っているようだが、遊具などは一切なく場違いな様子で公衆電話が一つ置かれているような奇妙な場所。それが千ヶ崎の受けた印象だった。
三十路を迎えている千ヶ崎はそんな噂を鵜呑みにしていたわけではない。しかし死者と話ができるということに心が惹かれたことは否定できまい。急死という形で、怪死した妹を持つ身としては。彼女の死因は何だったのか。それを知りたい一心でここまで来たのだ、と心を奮い立たせて受話器を持ち上げた。ジーンズのポケットから十円玉を取り出して震える指で投入する。ガコンっと音を立てた後にカラカラと乾いた音が電話の中から響いた。硬貨が投入された音を聞き届ければ、メモに書かれている番号のボタンを押していく。古びたそれは押し込むのに難儀した。しかし確実にボタンを押し込み、メモ通りの番号を打ち込み終える。静かに長い吐息を吐いて、汗に濡れた瞼を下す。
受話器からは呼び出し音が鳴っていた。それがどこに通じているのか……見当もつかない。依然として鳴り続ける奥歯を噛み締め、無理やり震えを抑え込みながら受話器を強く握り込んだ。そうしなければ取り落としてしまいそうな程に指まで震えが走っている。

「あ──」

呼び出し音が途絶え、受話器が持ち上がる音が聞こえた。ノイズ一つ聞こえぬ静寂が受話器越しから訪れる。ノイズどころか、息遣いも感じられない。まるで気配がない。重い重い沈黙だ。チカチカと明暗する人工的なライトにさえ重力を感じてズブズブと膝まで地面に埋まっていきそうな錯覚さえ感じる。乾いた口腔を潤そうと唾液を飲み込むんでも、乾いていく一方だった。水分を失った唾液がねっとりと舌に纏わりついて言葉が絡れる。得体のしれぬ気配に背中を押されるように、噂に従った言葉を発した。

「……千ヶ崎、芽衣子に──、お繋ぎください」

妹の名前を聞いた受話器の向こうが、笑った。もちろん視覚的に認知したわけではない。なのに分かってしまった。全く気配がしなかった向こう側で、ぐにゃりと空気が乱れて小刻みに揺れる。笑い声こそ聞こえないがケタケタと無邪気に笑っているのだと。受話器を握る腕の産毛が逆立ち、ゾワゾワと怖気が抜ける。虫が這い回るような薄寒い感覚に狭いボックス内で後ずさった。背中にぶつかる感触は柔らかい。ガラス製の壁ではない何かの気配を感じて、全身の血の気が引いていく。

「う、あ゛ッ──!?」

背後を確認する勇気もなくそのまま前のめりになるように背中を壁らしきものから引き離す。なのに、壁は離れた背を追って触れてきた。理解の及ばぬ状況に絡め取られて取り込まれそうだ。パニックになるなと必死に深い呼吸を繰り返す。うっかり過呼吸にでもなり、身動きが取れなくなったらどうなったか分かったものではないと。

「お兄ちゃんは、──だぁめ」

汗でぬるぬると濡れる受話器から、声変わり前の少年の声が聞こえた。明確な拒絶に心臓の鼓動が一瞬だけ止まる。息も忘れて呆然とその言葉の意味に虚をつかれ、青ざめた表情が固まる。ただ茫然自失といった様子で受話器を握り続けた。
拒絶が意味をすることは一つ。噂通りであれば……と思考が噂を反芻し始める。ダメだ、考えるなと恐怖のサイレンが内に響く。


──トン、と何かが背中を叩いた。もう見なくとも分かる。それは……小さな子供の手だ。小さな指の面積が横に線を描くように伝い、肩甲骨をトントンと叩く。弾けもしないピアノで遊ぶような指の動きだ。次に一本の指で背骨を撫で上げていく。
引き攣る呼吸を抑え込むように左手で口を押さえ込んでいた。今更遅いと分かっていても、気配を殺そうと無駄な抵抗をするのを嘲笑うように指の先は頸を撫でる。汗でぐっしょりと濡れた頸を伝って、さらに上へ。長身の千ヶ崎の髪を撫でるほどの高さまで指が届くなら子供ではないだろうに、それが小さな子供であるという確信は揺らがなかった。視界が狭まり、グラグラと足場が揺れるように意識が眩む。

「めい、こ……、だよな?」

絞り出すように妹の名前を呼んだ。その名に反応したとでもいうのか、指の動きがピタリと止まる。

「ごめ──、ごめん、っ。俺、……ダメな兄ちゃんで……っ!ま、守って、やれなくて……!ずっと、後悔、してたから……!謝りたくて……」

命乞いに聞こえてしまうだろうか、と思わなくはない。だがここに来た理由であることに嘘はない。妹に会える機会があるのであれば、彼女に謝りたかったのだ。
あの日、友達の家まで送ってやれば……と尽きぬ後悔の中に吹き溜まった懺悔を口にする。情けなく語尾が震えながらも妹への思いを吐露すれば、揺らいだ覚悟も再び固まった。意を決して振り返り、そこに立っているだろう妹へと向き合った。

「め、い──」

喩えるなら、歪に作った雪だるまに左右の長さの合わない枝を突き刺したようなシルエットがあった。細い胴体に、奇妙に伸びた白い腕、両足も長さが異なっているのか右上がりに体が傾いた……小さな子供がそこにいた。
ボロボロのTシャツに膝丈のデニムパンツ。黒い髪は綺麗に切り揃えられている。一見すればちょっと派手に転んだだけの子供にさえ見えるだろう。しかし、性別さえ判断できぬ異様な気配に満ち満ちていた。
理由は至極簡単。 “それ”の顔が異常に歪んでいるからだ。小さな顔に陣取る団子鼻は大きく、口は福笑いで失敗したように斜めに曲がってついている。短く切られた髪から除く左右の耳たぶも厚さが違う。子供に不釣り合いなピアス穴まで空いているような始末だった。

「お兄ちゃんは、だぁめ──」

先ほど受話器越しに聞こえた声が真向かいから聞こえた。その瞬間、両目が背後から塞がれる。体温のない人肌にゾッとしたのも束の間、目の前に立つ子供とは別の存在が背後に立っている事実に冷や汗がどっと吹き出した。この電話ボックスにいくら子供だろうと二人は入れまいだろう。だとしたら、この両眼を塞ぐ手は誰なのか。

「あ、……ッ!うぁ゛あ──ッ!」

いよいよ恐怖に駆られて悲鳴が喉から迸る。視界を塞がれたまま両腕を振り被るが、風を切るばかりで手応えはない。なのに気配だけそこら中に感じた。一人二人ではない。自身を中心に何十と囲まれているようだ。見えもしないのに、直感がそう告げていた。そして……見えぬ何かがこちらへと両手を突き出してくる気配も。
ひっと喉から壊れた笛のような音が鳴る。その場にしゃがみ込みたいのに、棒が入ったかのように膝関節は曲がることもなく、その場に縫い付けられるだけだった。ガクガクと震える膝は今にも崩れ落ちそうだというのに、自分の体がまるで言うことが効かない。


殺される──。


異様に冷たい空気は殺意をそのまま形にしたかのよう。身が刻まれるような戦慄に囲まれながらただ震えるばかりだ。不意に両眼を隠す、小さな手が優しく瞼を撫でる。その仕草に覚えがあった。

「お兄ちゃん、寝付けないよぉ……」

妹は繊細なところがあり、昼間に何かしら興奮するようなことがあれば寝つきがすぐ悪くなった。そういう時は必ず、何故だか兄の元にやってきたのだった。

「まぁた〜……?」

そんな軽口ももう昔のことだ。カーテンの隙間から見える星を数えつつ、妹の瞼を撫で下ろしてやれば十分足らずで妹は寝てしまうのが常だった。ベッドの半分以上を占領されるのも、寝入り端を起こされるのも、当時は腹が立ってしょうがなかったが今となれば痛みを伴う記憶だ。その指の動きがやけに懐かしくて、恐怖を忘れてその手に触れようと腕が上がった。

「お兄ちゃんは……ダメだよ」

先ほどとは異なる、鈴を転がしたような声だ。その声を皮切りに伸ばされていた気配は波が引くように退いていくのを感じた。

「芽衣子……?」

その声に呼応するものはない。しかしそれは聞き間違えようもなく妹だった。

「早く寝ないと、お化けが来るからね──」

その言葉は、兄である圭が妹の寝かしつけによく口にした脅し文句だった。再び、妹の名前を呼ぼうとした瞬間、時が飛んだ。
実際には意識を失っていただけなのかもしれないが、千ヶ崎からすればそう形容する他なかった。
気づけば、公園の最寄り駅のベンチに腰をかけていた。
先ほどとは全く異なる、どこか無機質な人たちの気配を感じながら目を覚ましたが、瞳はまるで夜に置いてきたかのように何も見えなかった。瞼を擦り、辺りを見渡そうとして絶句した。

「な、んで──」

瞼を押した指がそのままめり込んだのだから当然だろう。眼窩に収まっているはずの眼球は両方とも引き抜かれてぽっかりとした空洞が支配していた。神経まで失った空っぽの目の奥を指が弄ったような掻痒を感じて、吐き気が込み上げる。

「──ッ、ぐ!ッぶ、……ンぇ、え゛ッ!」

両手で口元を押さえても迫り上がる胃液が飲み込めず、フラフラと数歩歩いて戻してしまった。側から見れば朝帰りの酔っ払いだろう。膝の上に両手を置き、前屈みの姿勢でビシャビシャと水気の多い吐瀉を散らせば、手慣れた様子で駅員が駆けつけてくる。
身に起きた異変に気付かれれば大事になると眼窩を隠すように瞼を下ろし、すみません……と掠れ声で告げて足早にその場から遠ざかる。身に起きた異変はそれだけではなかった。
視界を失った分、聴覚をはじめとした感覚が緊張状態にあるだけかと思ったが、それにしてはあまりにも鮮明だった。見えるはずもない表情や服装、髪型までもがはっきりと認知できてしまっていた。
悪い夢を見ているかのような心地で土地勘のない駅の中を彷徨う。この年で迷子になったような感覚にどうしようもなく不安が付き纏う。いっそこのまま、電車に飛び込んでしまえば夢も覚めるだろうか?そんな不穏なことを考えながら、ホームに駆け込んでくる電車の警笛に吸い寄せられるように足を踏み出した。
その腕を力強く引き止められた。

「おい!お兄さん、何やってんだよ!酔っ払ってんの?」

咎めるその声は若々しく、声変わりをして間もない少年といった頃合いか。その声に正気を引き戻され、何をしようとしたかゾッとしてしまう。通り過ぎる電車の風圧に髪を靡くのを感じながら情けなくも、その場にへたり込んでしまった。

失った視界の中、はっきりと電車が通り過ぎた向こう側。
そこにはあの歪な体と顔を持つ、怪異の姿が見えた。

「お兄ちゃんは、──だぁめ」

子供特有の無邪気な悪意をありありと滲ませて千ヶ崎を嘲笑っている。左右非対称な長さの腕をくねらせながら、ニタニタと全身で悪意の笑みを響かせていた。


 それから千ヶ崎は、長野県にある実家に戻った。
視力を失った息子を憐れむ、年老いた両親の支援を受けるのは正直応えた。
「可哀想に」と目を腫らして泣く母の姿も、掛ける言葉に迷う父の姿も、どれも千ヶ崎の胸をいちいち抉る。だが、彼らを頼らなければ生活もままならないのだ。
唯一態度が変わらなかったのは、母の飼い犬である雑種犬の虎鉄くらいだ。
慣れぬ白杖を付き、過敏になった感覚神経に苛まれる千ヶ崎を見ても、太々しく鼻を鳴らすばかり。しかし、同情という感情を見せない虎鉄の太々しさにはどうにも救われたような心地がした。

そうして半年以上を実家で過ごした後、盲導犬協会からルカがやってきた。そうして直ぐにマンションの一室を借りて探偵事務所を始めるに至る。
極めて特殊なこの仕事は何件もの依頼をこなしても、軌道に乗っているとは言い難い。それでもこの仕事を続ける理由はある。

必ず、あの怪異から失った目を奪還すること。
そして、妹の死の理由を明かすこと。
失った視力の代わりに得たこの力を利用すれば、回り道でも必ず辿り着くという予感があった。

「では、お困りごとについて聞かせて貰っても?」

淹れたての紅茶を机に置いて差し出し、向かい合った依頼者から話を聞き出す。今回もまた碌でもない怪異が背後に潜んでいるのを感じながら、極めて穏やかに振る舞うのだった。

怪異ホラーの導入

執筆の狙い

作者 労働
KD113154232154.ppp-bb.dion.ne.jp

文章の癖・読みやすさが自分では判断ができないため、客観的な意見をいただければと思います。
また、多くの人の目に留まるにはどうしたらいいのか等もご教示があれば有難いです。
上記以外でもなるべく多くの意見をいただければ幸いです。

コメント

平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

労働さん、作品を拝読させていただきました。

濃密に五感が感じ取るものを書かれた作品で、とても読みごたえがありました。
ただ、些細な事なのですが、文体作法として一行目は空白にする、というのがありますよね。
カクヨム読者は余り気にしないかもしれませんが、気になる人もいるので、開けたほうがいいのでは、と思います。

読みやすさ、というのは難しい感覚で、文章として問題がなければしっかり書き込んでいても私は全く気にならないのですが、いわゆるラノベ好きというような読者の方は、労働さんの文体を「読みにくい」と感じる可能性があります。冒頭ですが、

「ぽつ、ぽつと星一つ輝くことのない夜の空から雫が落ちる。冷たくもない生温かなそれはまるで獣の口腔から滴る唾液のようだ。飢えた何かが闇に潜んでいるかのような、嫌な錯覚を感じながらも目的である其れへと足を歩ませる」

 小雨が雲のない夜空から降ってくる。生ぬるい雨の雫は、まるで獣のよだれのように思える。
 飢えた何かが闇に潜んでいるような感覚を覚える。ただの錯覚だ、と打ち消しながら目的地へ向かう。

もしこういう風に改稿するなら、これは典型的な改悪です。作者様の豊かな語彙、構成を台無しにしていますよね。この方向性で書く気はおそらくないでしょう。今のままの文体でいいと思います。

それより、気になった事と言えば、ホラーものとはいえ、整合性に欠けるな、と感じた事です。なぜ千ヶ崎は目を奪われたのか?妹は何故左手首を切られ、全身腫瘍が出来て死んだのか?続編で説明されるのかもしれませんが、この作品しか読まない読者は分からないままです。そして、霊体となって出現する時出来の悪いオブジェみたいな風貌なのはなぜなのか?そういう部分を説明してほしいのですね、読者は。もっと言えば、その霊会と交信できる公衆電話の存在を千ヶ崎はどうやって知ったのか?利用した人が他にいたのなら、その人はどうなった?失った視力の代わりに得たこの力、とありますが、何ですかねこれは。探偵業に役立つなら、人の心が読める、とかなのでしょうが、これも説明はありません。というようなところの設定を詰めて欲しいです。

高い筆力を持った方ですので、書けば書くほど全てが伸びてゆくと思います。次作を書かれる時は、ホラーであるとしても、整合性、読者の知りたい事の説明、という事を考えてみて欲しいです。

それではこれからもお互いに頑張りましょう。

夜の雨
sp160-249-15-109.nnk02.spmode.ne.jp

労働さん「怪異ホラーの導入」読みました。

>文章の癖・読みやすさが自分では判断ができないため、客観的な意見をいただければと思います。<
文章力はある程度ありますので、このまま書き進めればよいのでは。


内容について。

文章(文体)は、ホラー系に合っているのでは、というか、工夫されていると思いました。現状の御作は冒頭だけなので、ここまでだと文体に違和感はないのですが、このあと、どういった災い(ホラー要素)が展開するかにより、細部の描写とかが必要になるかも。細部を描くことで、読み手をのめり込ませる。

話の流れスピードなども、特に違和感はなかったです。

いろいろあって、の冒頭のラストで、


「では、お困りごとについて聞かせて貰っても?」

淹れたての紅茶を机に置いて差し出し、向かい合った依頼者から話を聞き出す。今回もまた碌でもない怪異が背後に潜んでいるのを感じながら、極めて穏やかに振る舞うのだった。

という事ですが、構成は、特に違和感はなかったです。


基本、投稿サイトでは「ラストまで、書かれた作品を投稿されると」、感想は書きやすい。

作品の一部だけだと、どこがよいのかと、どこに問題があるのかとかが、わかりません。

御作の場合は、冒頭の文体がホラー様相でよかったですが、今後の展開次第で、細部の描写等があれば、のめり込めるところもあるかもしれません。

御作がラストまで書いてあれば、ここが、どうたらとか、書けると思いますが。

まあ、主人公の探偵に妹がいた、という背景の条件が特殊な事情であるようなので、このあと、依頼者により、もしかしたら妹が主人公に協力するとかもアリかなと。


また、多くの人の目に留まるにはどうしたらいいのか等もご教示があれば有難いです。
上記以外でもなるべく多くの意見をいただければ幸いです。

>多くの人の目に留まるには<
投稿サイトなら、他の投稿者の作品に感想等を書く。短いのでよい。
>monogatari Com<(ソニー系)
というサイトがありますが、ここでは毎日課題を出して、その課題に沿った作品が投稿されています。
それらのなかで人気者になるとすれば、ほかの方に「いいね」やら「感想を書く」などをしたら、相手も、同じようなことをしてくれるようになります。

ま、ほかの投稿サイトでも似たようなものだと思いますが。



ということで、お疲れさまでした。

労働
KD113154232154.ppp-bb.dion.ne.jp

平山文人さん

作品に目を通していただきありがとうございます。
肯定的な感想と基本的な注意点までいただけて非常に助かりました。

ライトノベル調の文体に書き換えることを自分でも考えたことがあったため、
こうして書き出していただけたのはとても有難く感じます。
その上で、今の描写や文体を肯定していただけて非常に励みにもなりました。
今の文体を伸ばす方向に持っていきたいと、気を引き締めていきたいと思います。

また、整合性についての指摘も非常に的を射ており勉強になりました。
長編の筋書きになるので端折っていた部分になるので、そこをどのように織り交ぜて整合性を図っていくか、今後の課題として改善していきたいと思います。

指摘のみならず、お褒めの言葉をいただきありがとうございました。
これからもっと伸ばしていけるよう、精進して参ります。

労働
KD113154232154.ppp-bb.dion.ne.jp

夜の雨さん

作品に目を通していただきありがとうございます。
また、文章力は自信を欠いていたためそのように仰っていただけたことも嬉しく思います。

感想が書きやすい作品は「ラストまで書かれたもの」という点には全く気がつかなかったので有難いご指摘です。
また、どのようにして感想が増やせるか人の目に留まれるのかも、細やかにご教示いただけて勉強になりました。
長編の予定になるのでいただいた内容を念頭に置き、ラストまで書き進められるよう努力いたします。

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

テクニカルサポート

3,000字以内