東京タワー
ひとりで東京タワーに登った。
幼い頃、赤い鉄塔はすべて東京タワーだと思っていた。そこら中にそびえ立つ東京タワーが車窓を流れた少女時代。
思えばあの頃、私は数え切れないほどの下らないことに悩んでいた。
漢字テストで満点を取れなかったらどうすればいいだろうか。鍵盤ハーモニカの吹き口を無くしたことをどう母に伝えればいいだろうか。将来の夢はケーキ屋さんとアイスクリーム屋さんのどちらがいいだろうか。
幼い自分に答える。受験しない小学生の成績なんて何だっていいし、吹き口なんてこっそり買えばいいし、デパ地下のケーキ屋でバイトをしているが別に楽しくはない。
今よりずっとシンプルにデフォルメされた、美しい世界に生きていた少女時代。
少女。あの頃「少女ポリアンナ」を読んだ。その中で、17歳のポリーが「少女」と呼ばれていることに驚いた記憶がある。今にして思えば、17歳だってまだまだ子どもだし、正真正銘の「少女」である。私はどうだろうか。19歳の私にもまだ「少女」を名乗る資格はあるだろうか。小さな私に聞けば、きっと首を振るだろう。
エレベーターでカップルに挟まれ、ひとり東京タワーを上る。そういえば、元彼も私とここに来たいと言っていた。いつかふたりで受けたWeb上の恋愛診断。「恋人を子供らしくて可愛いと思ったことがあるか」という質問に、彼は「そう思わない」と答えた。5段階ある中の、いちばん左の選択肢が押されるのを見て、あるいは長いキスと息遣いの中で、もう子供を名乗ることはできないのだと悟った。「少女時代」は終焉を告げた。
エレベーターが開くと目の前には夜景が広がっていた。カップルや家族連れが楽しげに指さす夜の東京。そこにひとり浮かんでいるかのような妙な気分に陥る。そのうち私も就職すれば、この夜景を構成する光のひとつになる。そんなものになりたくはないのに。
爛々と光り輝く東京の街に背を向けて、東京タワーを下りた。
サラリーマンだらけの電車でぼんやり座っていると、車窓を赤い鉄塔が流れた。かつて東京タワーだったそれは、なんだかひどく小さく見えた。
執筆の狙い
大人になりたくない気持ちを表現したいです。
文章をもっと上手く書きたいのでアドバイスがほしいです。よろしくお願いします。