作家でごはん!鍛練場
平山文人

不退転に生きる(Claudeとの共作)

第一章 誕生と発覚

 あまり広いとは言えない三崎家の居間に、五人の大人が集まっている。出窓の淡いブルーのカーテンの隙間から、優しい陽の光が射し込んでいる。微かなミルクの匂いが部屋を包んでいる。グレーの絨毯に座っている啓子が、まだ覚束(おぼつか)ない手つきで、白い産着に包まれた赤ちゃんを抱きしめていた。
「こう、もうちょっと首のほうを支えてあげて、うんそうそう」とアドバイスを送っているのは、啓子の母親の真里だ。その隣に座り、微笑みを浮かべながら、がらがらを振りたそうにしているのが夫の明(あきら)。いつもはワックスで固めている髪も、今は自然に垂れている。赤ん坊は眠そうにしていて、目線を動かさないので、ひとまず玩具を脇に置いた。
「小春ちゃん、体重が3600gもあったんだって? 健康な子に育つなぁ」
 と言ったのは、同じく満面の笑みを浮かべている真里の夫、つまり小春のお爺さんにあたる涼だ。
「大きな子だから大変だったわよね。ようがんばったわ」
 と言いながら真里は小春のほっぺたを撫でた。
「がんばったのは私なんだけど。もう出産は当分ごめんだわ」
 と啓子がつぶやいた言葉が、あまりにも実感が籠っていたので、三人は一斉に笑い声をあげた。その声に反応したのか、小春も少し口角をあげた。
「あ! 笑ったよ、こはるちゃん。かわいい。ちょっと、明さん」
 と呼ばれた夫、即座に立ち上がり、パソコンデスクに置いてあるデジカメを取ってくる。この二日ほど、彼が取った愛娘の写真は五十枚では済まないだろう。でも本人も撮りたくて仕方がないのだ。幸い、まだ小春は笑みを浮かべているので、たちまち二枚撮った。
「あ、そういえば、まだ産んだ直後のベッドの写真残ってるの?」と赤ん坊を揺らしながら啓子が聞いた。
「あ、枯れ果てた干し芋状態の時の写真? うん、残してるよ」
「やだ消しといてって言ったじゃない」
「だってあれはあれで記念だからさ、小春も一緒だし」
 と明が弁解すると、啓子はふくれっ面でしばし考えていたが、渋々納得した。その様子を見て、再び両親と夫は朗らかな笑い声を立てるのだった。空気さえも、家族を祝福しているかのように暖かく満ちていた。

 要再検査。先月受けた健康診断の結果通知書の太い文字を見て、チェアーに持たれていた明は目を疑った。中高と野球部に所属し、大学では運動こそしていなかったが、登山サークルに入り足腰を鍛えていて、健康には自信があった。現に、三十歳になるまで、大きな病気は一切せずにやってきた。続きを読むと、胸部X線・CT:「左肺野に結節影あり。再検」となっている。勤めている生保会社の昼休憩中のオフィスで、周囲の人たちが思い思いに雑談をしている中、突如として、厳寒の冬山に放り込まれた気持ちになった。これは、もしかして……。明の不穏な表情を見た、隣席の女子社員、渡辺ありさが怪訝そうな表情をして、
「三崎さん、どうしたんです? 何か、健康に問題が見つかりました?」
 と質問してきた。猛吹雪の中を遭難しているような、感情の猛烈な嵐の中にいた明は、返事するまでにかなりの時間を要した。ようやく振り絞った言葉は、
「がんになったかもしれない。精密検査を受けてこないと」だった。小声の返事を聞いたありさは、唾を飲みこんだ後立ち上がり、見せてもらえますか、と健診の通知書をそっと覗き込んできた。隠す理由もない、すぐに広まることだ、と明は彼女にそれを手渡し、ゆっくりと立ち上がり、重荷を背負った作業者の足取りで部長席に向かうのだった。

        第二章 宣告と誓い

 大学病院の診察室は、妙に静かだった。窓の外からは車の走る音が聞こえてくるが、それすらも遠くに感じられた。明は白い壁を見つめながら、医師の言葉を待っていた。隣には啓子が座っている。生後二ヶ月の小春は、真里に預けてきた。
「三崎さん」
 と呼びかけた医師は、五十代半ばほどの、白髪混じりの髪をした男性だった。穏やかな表情をしているが、目は真剣だ。パソコンの画面を見ながら、彼はゆっくりと口を開いた。
「CTと生検の結果が出ました。左肺の腺癌です。リンパ節への転移が認められますので、ステージはⅡBということになります」
 明は息を呑んだ。頭の中で、その言葉が何度も反響した。ステージⅡB。癌。転移。隣にいる啓子の手が、小さく震えているのが分かった。
「ステージⅡということは……」と明は声を絞り出した。
「どのくらい、進行しているんでしょうか」
「ステージⅡは、早期とは言えませんが、まだ手術が可能な段階です」医師は丁寧に説明を続けた。
「三崎さんの場合、まず抗がん剤治療で腫瘍を小さくしてから、手術を行う方針が最善だと考えています。その後、再発予防のために追加の化学療法を行います」
「治る、可能性は……」啓子が、か細い声で尋ねた。
「五年生存率は、およそ六十から七十パーセントです。決して低くはありません。ただし、治療は長期にわたりますし、副作用も伴います」
 医師の言葉を聞きながら、明は自分の手を見た。この手で小春を抱いた。この手でまだ、何もしてやれていない。結婚して三年、子どもができて、これから家族としての時間が始まるはずだったのに。
「どのくらいの期間、治療が必要ですか」と明は顔を上げて聞いた。
「術前化学療法が三、四ヶ月。手術後の回復期間を含めて、さらに数ヶ月。術後補助療法も加えれば、少なくとも一年は見ていただく必要があります」
 一年。小春が一歳になるまでの時間だ。首が座り、寝返りを打ち、這い始め、つかまり立ちをして、歩き出すまでの時間。その全てを、自分は病気と闘いながら過ごすことになる。
「分かりました」明は静かに頷いた。
「やります。やらせてください」
 医師は頷き、今後の治療スケジュールについて説明を始めた。抗がん剤の種類、投与のサイクル、予想される副作用。吐き気、倦怠感、脱毛、白血球の減少。一つ一つの言葉が、これから訪れる試練を物語っていた。

 病院を出ると、春の風が頬を撫でた。まだ日が高く、街路樹の葉が黄色く色づき始めている。二人は並んで歩道を歩いた。しばらく、どちらも口を開かなかった。
「啓子」ようやく明が言った。
「ごめん」
「何が」啓子は立ち止まり、夫を見上げた。
「こんな時に、病気になって。小春がまだあんなに小さいのに」
「謝らないで」啓子は強い口調で言った。目に涙が浮かんでいる。
「あなたが悪いわけじゃないでしょう」
「でも……」
「でも、何よ」啓子は明の腕を掴んだ。
「私たち、家族でしょう。一緒に乗り越えるに決まってるじゃない」
 明は啓子を見つめた。結婚式の日、彼女が誓いの言葉を述べた時の顔を思い出した。あの時と同じ、真っ直ぐな目をしている。
「俺、死ぬわけにいかない」明は言った。
「小春を育てないといけない。お前を支えないといけない。まだ何も、父親らしいことをしてない」
「そうよ」啓子は涙を拭いながら、笑った。
「だから頑張るのよ。私も頑張るから」
「育児、一人でやらせることになる。きつい思いをさせる」
「いいのよ。お母さんもいるし」啓子は明の手を取った。
「あなたは治療に専念して。それが今、一番大事なことだから」
 明は深く息を吸った。不安は消えない。恐怖もある。でも、隣にいる妻の手の温もりが、確かに自分を支えてくれている。
「ありがとう」明は言った。
「絶対に、勝つ」
「うん」啓子は頷いた。
「小春も待ってる。帰ろう」
 二人は再び歩き始めた。駅へ向かう道は、いつもと変わらない風景だった。でも、今日この日から、三崎家の闘いが始まる。明はそれを、心に刻んだ。帰ったら小春を抱こう。まだ小さな、温かな命を。そう思いながら、明は妻と並んで、家路を急ぐのだった。


       第三章 軋む両輪

 うるさい……なんとかならないのか。明は、体を捻じ曲げながらベッドで半身を起こす。以前のように腹筋を使って起き上がるのが苦痛なのだ。捩じった体をようやく動かし、立ち上がる。この時気を付けないと、目の前が真っ白になり、座り込んでしまう。まずは、と先週から始めた抗がん剤治療だが、ペメトレキセドの副作用が強く、制吐剤を併用していても、明は病室の洗面台に激しく嘔吐してしまった。副作用は人によって変わります、と医師に事前説明を受けていたのだが、運動と登山で鍛えていた明は、僕は体力あると思いますので、などと軽口を聞いたものだが、結果は惨たるものだった。そして今、寝室の扉越しに聞こえてくるのが小春の終わらない泣き声で、明は鉛のように重い体を引きずって、居間に出てみた。そこには、眉間に皺を寄せて必死に小春を抱いてあやしている啓子の姿があった。明は、その姿を見て何も言えなくなった。
「あなた、ごめんなさい……起きちゃった?」
「いや、別に寝てもなかったよ。泣き止まないからどうしたんだろう、と、思って」
 と話しながら、声すらしっかり出ない自分にうんざりした。どうした俺、しっかりしろ! と無理やり腹に力を入れて、ふらつく足取りで小春を受け取ろうとした。が、父親の顔を見た赤ん坊は火が付いたように泣き叫び始め、明は思わず目を閉じた。
「あなた、私が何とかするから休んでてくださいよ」
 という啓子の言葉がやけに冷たく感じられた。彼女の唾の匂いまでもが不快に感じられ、彼は二、三度首を振って、何も言わず寝室に重い体を運んでいった。そして、ベッドにうつ伏せになって、枕を後頭部に乗せて掴んで、我が子の終わらない叫びをシャットアウトしたのだった。肩の辺りが重く、後頭部までだるさに支配されている。俺はなんでこんな思いをしているんだろう、と働かない頭で考えているうちに、眠りについた。

 ふと気づくと、おでこが冷たい。なんだ? と思うまでもなく、顔の近くで啓子が微笑んでいるのを見た。
「だいじょうぶ? まだ気分は悪いですか」明は額のタオルの冷たさに感謝しながらも、口からはなにも出なかった。啓子は若干不満そうにしながら、自分も隣のベッドの毛布を被る。
「何やってるんだ、小春は……」と明が言いかけると、
「お母さんが見てくれてるよ。少し寝なさいって言われたから寝る」と被せるように言って、すぐに瞳を閉じた。鈍い頭の回転で、啓子の言葉の意味を把握すると、明はおでこのタオルを邪険に寝台のそばの台に置いた。しかし、すぐさま、これは八つ当たりの感情だ、と悟り、薄暗い部屋のベッドに縮こまり、小さな声で、けいこ、ごめん、と呟くのだった。

 苦しい抗がん剤治療の日々は続いた。明は、感情の起伏が激しくなっているのを感じた。常に倦怠感に付きまとわれ、少しマシになった頃にまた投薬というサイクルが繰り返され、身も心もすり減ってきた。啓子も可能な限り明の看病に努めたが、いかんせん小春の就寝サイクルが二、三時間ごとに寝起きする、なので、まともに眠ることは出来ず、買い物にもろくにいけない始末で、もっぱらそういう役は啓子の両親、特に母親の真里が担当してくれていた。
「お金の心配は一切するな。俺が何とでもしてやる」と、大手信金の役員である父親の涼が頼もしく言ってくれた。しかし、幸いというか、明たちの勤める生保会社には傷病休暇があったので、有給も含めると、おそらく闘病中はカバーできそうだ、と総務の明は自分の休業手続きを自分でしながら頷いたものだった。隣席のありさに、うちのがん保険には入ってなかったんですか、と聞かれて、頭を叩いて後悔したものだった。自分だけは健康で、風邪もひかないなどと自惚れていたのは実に間抜けだった、と思ったのだった。
 よろばうようにトイレに行き、洗面台で手を洗っている時、ふと鏡に映った自分を見て、はっ、と声をあげた。そこには死神のように生気のない、クマのある痩せこけた男がいた。これは一体誰だ、俺なのか、と、全身の力が抜けるような気がした。風に舞う紙切れのような足取りで居間へ戻ると、ベビーベッドにいて、今は機嫌のいい小春が、だぁ、と明に手を伸ばしてきた。彼女の小さな手をつかんだ時、冗談ではなく命のエネルギーをもらった気がした。洗濯ものを畳んでいた啓子はその様子を見て微笑んでいた。小春は大事な原点を思い出させてくれる。明は妻のほうを向いて、にっこりと笑顔を返した。

       第四章 病室の声

 目を開けると、天井が白かった。視界がぼやけている。瞬きをすると、少しずつ焦点が合ってきた。喉が渇いている。体が重い。ああ、そうか、手術が終わったのか。明はそう理解するまでに、しばらく時間がかかった。
 左胸のあたりに鈍い痛みがある。麻酔が切れてきているのだろう。呼吸をすると、肺が引っ張られるような感覚がした。ゆっくりと首を動かすと、病室のカーテンが目に入った。四人部屋だ。隣のベッドからは、誰かの寝息が聞こえてくる。
「三崎さん、目が覚めましたか」
 看護師の声がして、明は顔をそちらに向けた。若い女性の看護師が、笑顔で覗き込んでいる。
「はい……」声がかすれていた。
「手術は無事に終わりましたよ。先生からまた説明がありますから。今は楽にしていてくださいね」
 明は頷いた。看護師は点滴を確認して、去っていった。再び天井を見つめる。無事に終わった。それだけで、少しほっとした。でも、これで終わりではない。まだ闘いは続く。そう思うと、体の重さが増したような気がした。
 翌日、啓子と真里が見舞いに来た。明はベッドを少し起こして、二人を迎えた。啓子は心配そうな顔をしていたが、明の顔を見ると安堵の表情を浮かべた。
「お疲れ様」啓子は椅子に座り、明の手を取った。
「痛む?」
「まあ、それなりに。でも我慢できる」
「無理しないでね」真里が言った。
「小春は元気よ。お父さんが見てくれてる」
「そうか……」明は少し笑った。
「写真、見せてもらえる?」
 啓子はスマホを取り出して、画面を明に向けた。そこには、寝返りを打とうとしている小春の姿があった。必死に体をひねって、少しだけ横を向いている。
「もうすぐ寝返りできそうなのよ」啓子が言った。
「この前、ちょっとだけ成功したの」
「そうか……見たかったな」
「動画もあるわよ」
 啓子が再生すると、小春が声を上げながら体を揺らしている様子が映った。明はそれを見つめながら、胸が温かくなるのを感じた。小春は成長している。自分がいない間も、確実に。
「早く帰りたい」明は呟いた。
「もうすぐよ」啓子は優しく言った。
「先生が、順調にいけば一週間ぐらいで退院できるって」
「ああ、そう言ってた」
 真里は果物の入った袋を棚に置きながら、
「無理は禁物よ。ちゃんと休んで、体力をつけてから帰ってきなさい」と言った。明は素直に頷いた。
 その日の午後、隣のベッドから声がかかった。
「三崎さん、だっけ? 手術、お疲れ様」
 カーテンの向こうから、中年の男性の声がした。明は首を向けた。
「ありがとうございます。あの、元谷さん、ですよね」
 看護師から聞いていた名前を口にすると、カーテンがさっと開いた。そこには、痩せた体つきの男性が、ベッドに座っていた。四十代半ばだろうか。頭髪は薄く、顔色はあまり良くない。でも、目には穏やかな光があった。
「そう、元谷鉄平。四十四歳。厄年ってやつが怖くてさ」元谷は苦笑した。
「まさか本当に厄が来るとは思わなかったけどね」
「同じ、肺がんなんですよね」
「ああ。俺はもうかれこれ半年ここにいる。長いよ、本当に」元谷は窓の外を見た。
「でも三崎さんはいいよ。すぐ退院できるんだもの」
「そう、ですね……」明は言葉に詰まった。
「羨ましいよ、本当に」元谷は振り返って、明を見た。
「若いし、家族もいるんだろう? 頑張れよ」
「元谷さんも……」
「俺は、まあ、長期戦だから」元谷は手を振った。
「でもさ、こうやって話せる相手がいるのはありがたい。他の二人はもう退院しちゃったし、新しく入ってくる人もすぐ出ていくからさ」
 明は元谷の言葉を聞きながら、自分がいかに恵まれているかを感じた。確かに、手術は成功した。一週間で退院できる。家に帰れば、啓子がいて、小春がいる。
「ありがとうございます」明は言った。
「元谷さんの言葉、励みになります」
「いいってことよ」元谷は笑った。
「お互い、頑張ろうぜ」
 
 退院の日は、思ったより早く来た。術後六日目、医師の診察を受けて、明は退院の許可をもらった。傷口の痛みはまだあったが、歩くことも、日常生活を送ることも問題ないと判断された。
「ただし、無理は禁物です」医師は念を押した。
「二週間後にまた外来に来てください。その時に、術後補助化学療法のスケジュールを決めましょう」
 明は頷いた。抗がん剤治療。またあの苦しみが始まる。でも、今度は入院ではなく、通院だ。家にいながら、闘える。
 荷物をまとめて病室を出る前、明は元谷のベッドに近づいた。
「元谷さん、お世話になりました」
「ああ、もう帰るのか。早いな」元谷はベッドから手を伸ばした。
「頑張れよ、三崎さん」
「はい。元谷さんも」
 二人は握手をした。元谷の手は細く、冷たかった。でも、その握手には力があった。明は病室を後にした。
 家に帰ると、小春が待っていた。真里に抱かれて、明を見ると、少し首を傾げた。そして、だぁ、と声を上げた。明は小春を抱き上げた。軽い。こんなにも軽い命を、自分は守らなければならない。
「ただいま」明は啓子に言った。
「おかえりなさい」啓子は涙ぐんでいた。
「よく頑張ったね」
「まだ、終わってない」明は小春を抱いたまま、窓の外を見た。
「また、抗がん剤との闘いだ」
 でも、今度は家族と一緒だ。それだけで、明は少し強くなれる気がした。小春の温もりを感じながら、明は静かに、次の闘いへの覚悟を決めるのだった。

        第五章 寛解の後の空

 食べなければ。食事は文字通り栄養補給なのだと明はこの闘病期間で、文字通り体で思い知った。気分が悪い、と一食でも抜くと、みるみる体重が落ちる。元々70㎏あった体重は今や56㎏まで落ちた。医師に相談すると、多少無理をしてでも食べてください、それが回復のエネルギーになりますから、と言われ、今もたくあんを齧っている。脂っこいものは重たくて受け付けないので、もっぱら和食系の味の薄いものを食べていた。テーブルの向かいでは、首の座った小春がベビーチェアに座って離乳食を食べている。啓子が楽しそうに、あーん、どうぞ、と言って小春の口にスプーンを運んでいる。明は興味を感じて、おかゆのようなものを少しだけ食べてみた。
「あんまりおいしくないな」と実感を込めて明が言うと、啓子は弾けたように笑った。小春もつられてけへへ、という感じの声をあげて、手を叩いた。三人のいる部屋は、朗らかな幸せに満ちていた。だが、明はまだ抗がん剤治療が続いている身で、倦怠感が長く座っている事を許さない。お腹を満たした明は、リビングのソファに横になってテレビを見るでもなく見ていたのだった。

 仄かに暗い中、明は自転車を漕いでいる。ああ、またこれか、と思った。夢の中なのは不思議と分かっていた。彼は延々と漕ぎ続ける。ある時は草原を駆け抜け、ある時は雑踏の中を人にぶつかりながらすり抜け、ある時は海岸をずっと走る。息が切れて苦しくなる時、自転車で並走してくれる少年が現れる。彼は、明が小学四年生の時、交通事故で死んでしまった友達、佐藤吉広だった。

 だいじょうぶか、まだまだいけるよ
 ありがとう、でもしんどいよ
 あきらはまだいける まだちからがのこってる
 もうやめたいよこんなの
 ばかいうな はしるのやめたらだめだ こっちにくるな

 ──目が覚めた。暗闇の中、白い豆電球の光だけが目に入った。胸の痛みと息切れを感じ、胸に手を当てて呼吸を整える。そして、よっくん……何度も俺を励ましに来てくれてありがとう。まだまだ頑張るよ。明は目じりを拭いて、遠い過去の彼と遊んだ時の事を思い出すのだった。隣では啓子と小春が安らかな寝息を立てていた。

 街に並ぶ緑樹たちが葉を落とし、吹いてくる風に細くなった身を震わせている。道行く人たちもコートやジャンパーを羽織り、手を息で温めたりしていた。。空は青く太陽も照っているが、どこか心あらずで、冬の到来を告げているようだ。明と啓子は何度も訪れた大学病院の内科の診察室で医師と向かい合っている。手に持ったCTの写真と、血液検査の結果などが書かれた診断書をじっくりと見た後、軽やかな声で
「三崎さん、よく頑張られましたね。ひとまず、異常はどこにも見られません。寛解と言っていいと思います」と宣言した。明の体は芯から熱くなった。勝った。俺は、がんに勝ったんだ。彼の肩を強く啓子が揺すった。
「ありがとうございます!」と明は体を震わせて大きな声で言った。医師も大きく頷いた。横にいた看護師が笑顔で、おめでとうございます、と言ってくれた。何度も抗がん剤などの点滴を打ってくれた人だった。明は彼女にも深く頭を下げた。そこから、病院を出るまで、見覚えのある看護師や職員に何度も何度もお礼をした。啓子も同じように振舞った。病院の敷地内の駐車場に停めた自分の車に向かう時、自分でもおかしいと思うぐらい足取りが弾み、啓子と手をつないだ。啓子は少し驚いたが、強く握り返した。
「勝ったよ、俺。啓子の、おかげだ」自然とこういう言葉が出た。
「私、何もしてないわ。あなたが勝ったのよ」
 啓子は明の右手を両手で高々と掲げた。
「勝者、みさきあきらーっ!」
「よっしゃーっ」
 と明は両手を天高くつき上げて叫んだ。見上げた空には雲一つなく、どこまでも突き抜けていた。(終)

不退転に生きる(Claudeとの共作)

執筆の狙い

作者 平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

実験的な小説を書いてみました。何がかと言うと、この小説のとある一章は丸ごと全部Claude先生に書いてもらっているのです。
一章だけかも知れませんし、二章かも三章かもしれませんが、全部ではありません。私も書いています。
皆さまはどの章を生成AIのclaudeが書いたか分かるでしょうか。見抜いてみて欲しいのです。

また、それとは別に、純粋な小説の感想を書いていただけるのも大歓迎です。皆さまよろしくお願いします。

コメント

天ピカ
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第2章、第4章がAIと見ました。

それにしてもAIはすごいですね。
絵画の歴史における写真の登場みたいに、
人が書くべき、力を注ぐべきジャンルというのが絞られていくようです。

内容の感想ですが、AIに合わせたのか、平坦な内容だと思いました。
平成の時代によく見た、ケータイ小説、ノベルゲーのような「病気で人が死んじゃう話」て今読むと時代まるごと感じられてエモなんですが、
こちらは結局寛解するし、特別なエピソードもないし、実話だったらギリいい話ですが、文量のせいか、内容が薄いなという印象でした。

メモ:
1: 「枯れ果てた干し芋状態の時の写真」という独特な表現、出産からのがん告知、AIだったらそこで不幸な流れにしないんじゃないかな
2: ただのがんの説明なので、AIでもできるだろうけど
3: 詳細すぎるほどの描写、第一章と似てる気もする
4: 「でも、これで終わりではない。まだ闘いは続く。」 AIっぽい
5: 何のひねりもない寛解エンド。AIだから強引にハッピーエンドにするのだろうか

(メタ読み)
1: 最初はAIに書かせるつもりなく書いてみたんだろう
2: 続きが思いつかなくてAIに任せたんだろう
3: AIが書いてくれたから続きが書けたんだろう
4: いっそのことAIにまかせちゃおう
5: オチは全体に関わるから、人が書いた方が全体的に騙せるだろう

平山文人
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天ピカさん、感想と予想をかいてくれてありがとうございます!

まず最初に謝罪しないといけないのですが、(執筆の狙いに書いておくべきでした)
どの章をClaudeが書いたかの回答は、一週間後までお待ちいただけますか。ここで正解を書いてしまうと、
他の方が予想出来なくなってしまうからです。本当にすみません、よろしくお願いします。

生成AIの執筆能力はとんでもないです。コマンドを入れてから10秒もしないうちに、瞬く間に一つの章を
書き終えてしまいましたし、誤字脱字もなく、ちゃんと物語を書いてくるんです。ですから、Claudeと冗談で
「その内全部AIに書かせて、私が書きましたっていう人出てきそうですね」「可能性は大です」とか、
あんまり笑えない会話をしておりました。だからこそ、「人はAIの文章を見抜けるか」というこの実験、
意味あると思うんですよね。

そう、ですので、物語は単純というか、かなり駆け足で終わらせています。本来は最低10章はいるな、と
書きながら感じていたのですが、長いと判断がますます難しくなるだろう、という事で無理やり5章で終わらせました。

メタ読みは、外れです。最初から生成AIと共作してみたら、読者は見抜けるだろうか、をテーマに
この作品は書きはじめました。ちなみに、GeminiとChatgptに見抜かせてみたら、両方間違えました。
あ、生成AIでも分からないんだ、と、ちょっとどう考えたらいいのか分からない結果になりましたね。

重ねてすみません、一週間後にまた見に来ていただければ嬉しいです。よろしくお願いします。

しいな ここみ
KD106130120118.au-net.ne.jp

失礼します。予想だけ──
①③と②④⑤は文体が違うように思えました。
そしてどちらがAIかというと、②④⑤だと予想します。

平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

しいな ここみさん、予想をありがとうございます!

それで、申し訳ないのですが、他の方の予想も書いてほしいので、回答は29日、来週の木曜日までお待ちいただけますか。
お待たせしてすみません、よろしくお願いします。

文体の事をちょっとだけ話しますと、私が生成AIに寄せるという方法もあるな、とも思ったのですが
それはフェアじゃないな、ありのままで判断してもらうべきだ、と考え、そのまま書いたままにしました。
逆に、生成AIが書いた文章も、一切いじっていません。書かれたものをそのまま採用しています。

青井水脈
171.3.112.195

「不退転に生きる(Claudeとの共作)」
>皆さまはどの章を生成AIのclaudeが書いたか分かるでしょうか。見抜いてみて欲しいのです。

せっかくの読者参加型なので。①⑤で。

第一章 要再検査を告げられる。
>周囲の人たちが思い思いに雑談をしている中、突如として、厳寒の冬山に放り込まれた気持ちになった。

なんとなく引っ掛かったのは、表現がなんとなく無理してるような感じがしたので。

>厳冬の冬山に放り込まれた、そんな気がした。 こうした方がしっくりくるかと。

>猛吹雪の中を遭難しているような、感情の猛烈な嵐の中にいた明は、

戸惑い、恐れ、急な不安、否定や楽観など。人の手による小説では、感情をもう少し丁寧に、じっくり描かれるかと思ったので。


第三章から四章にかけては、真に迫る、そういう感じを受けました。
第五章。
>明と啓子は何度も訪れた大学病院の内科の診察室で医師と向かい合っている。

ここで、担当医が口を開くまでの、果てしないであろう緊張感。ラストでの喜びをもう少し表現してほしいところなので。

平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

青い山脈さん、お久しぶりです。今回も感想を予想をありがとうございます!

ありがとうございます、重ねてお詫びしますが、他の方にも予想を書いていただきたいので、
正解は来週の木曜日、29日までお待ちください、よろしくお願いします。

分析もとても興味深いです。「何を人間が書くだろうか、AIが書くだろうか」と、私自身が学びになります。
更にいうと、「私たちはAIも含む作家に何を求めるだろうか」という問いかけも産まれてくると思うのです。
人間臭い、息遣いが聞こえるような作品か、理路整然と描かれ、楽しめるAI作品だろうか、などと考えています。

夜の雨
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平山文人さん「不退転に生きる(Claudeとの共作)」読みました。

「第三章 軋む両輪」が、生成AIのclaudeが書いた文章ですね。

理由は、ほかの章では主人公を「明」と言っているのに第三章だけは、「彼」の場面がありました。
ちなみに主人公以外は「彼」と呼んでいる場面はほかの章でもあります。
あと三章の冒頭の文章がかなりの部分、詰めて書いてあり、ほかの章とは、若干ちがうなと、感じました。
「よろばうようにトイレに行き、」 ←「よろけるようにトイレに行き、」になりますね。これはAIが間違うだろうかと思いましたが、人間だから間違うかもと、判断が付きませんが。

上のようなところに、平山さんとClaudeとの違いを感じました。


作品の内容は、すばらしかった。
娘の小春の誕生の喜びと、主人公の明が、がん治療で生死をさまよう描き方が、家族を含んで、良く書かれていたのでは。
また、そのがん治療などが詳しく描かれているので、まるで医療小説かと思うような説得力がありました。
あと明と同室の元谷鉄平の存在感もよかったですね。家族とか、医療関係者以外の他人がそれも同じがん治療ということで対話をしているので。結構重いエピソードになっていて、この「第四章」があるのとないのとでは、えらい違いなのでは。
退院したあとで病院へ訪れたときに、再び元谷鉄平が登場するかなと思いましたが、それはなかった。
このあたりは、特段元谷の登場は必要ではなかったかもしれませんが。登場してもよかったかなと。ただ、登場すると、目立ちすぎになるかも。

夢の中での小学生時代の友達、佐藤吉広が出てくるエピソードも御作を厚くしていますね。自転車で走る主人公を励ますところが泣けてきます、彼は交通事故で亡くなっているので。

全体ではこの「不退転に生きる」という小説は、書籍の中に掲載されていても違和感がないレベルの作品ではないかと。

この小説は、医療のエピソードが繊細に描かれているところに値打ちがあります。明とその家族の人間ドラマ以外に医療の部分をリアルティーに描くことで、物語が存在感を増しました。

以上です。


それではプロを目指して公募、頑張ってください。

葉山
sp49-109-99-103.smd02.spmode.ne.jp

平山さんこんにちは、
遊んでいたら今抱えている原稿の締切が
恐ろしいことになってしまったので、
また今度改めて読みに伺います。

興味深いテーマを拝見しましたので、
ひとまずそのテーマにだけ参戦しに来ました。

今後、読者が何を求めるか、については
「ひと」になってくるかな、と。

つまり、なにを見せたい、なにを表現したい、
という思いを提供してくれる、
と信頼される「ひと」が求められる、
と感じます。

もはや単純な技術なら、全てAIが
肩代わりできてしまいますからね。

ちなみに、自作の遺書部分。
現代語から文語文への翻訳をAIでしています。
「この文章を鴎外ぐらいの、
 ギリギリ現代人だと
 わかりづらくなるレベルで
 翻案してください」
と指示しました。
(現代語パートは自前です)

それによってやりたい表現の精度が上がるわけで、
使わない理由がありませんでした。

平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

夜の雨さん、今回も感想と予想をありがとうございます!

まず。お詫びしないといけないのが、他の方にも予想を書いていただきたいので、正解発表は来週の木曜日、29日まで待っていただきたいのです。すみませんが、よろしくお願いします。

作品内容が素晴らしかったと言ってくださって、とても嬉しいです。本作のような、がんの闘病の苦しさを書いた小説って余りないと思うんですよね。しかも、いつ誰を襲ってくるか分からない、とても恐ろしい病ですので、小説の中で、少しでもそれを知ってもらえれば、という思いで書きました。元谷のキャラについては、出さねばならないと思って必然レベルで書きました。私は若い頃、骨折で一ヶ月ぐらい入院したことがあるのですが、内科の入院患者さんは長いんです、入院期間が。2年とか3年とかザラで、内科病棟だけは暗くどよんとしていたのを今でも覚えています。健康に生きていたら、なかなか知ることの出来ない事でしたので、書き残しておきたかったんです。

はい、夢の中のエピソードは、明の苦しい闘病を比喩的に表わしたもので、小学生の友達も、明自身の意志も反映して登場している、という設定です。まだよっくんの所へ行くわけにはいかない、そうだ、くるな、という感じで。抗がん剤を使うと、意識ももうろうとして、ふと眠ってしまったり、と本当に大変なようです。この小説、本来なら10章ぐらい必要だな、と感じていて、しかし、あまり長いと読者の方が分析が大変だろうと判断し、駆け足で5章で終わらせたのですが、本当はもっと明と啓子がギスギスする場面とか、手術前の緊張状態とか書きたかったので、いずれ形を少し変えてまた書こうと思っています。

はい、公募にはもう応募しています。落ちたところで失うものなどない、という感じで、気合で応募しました笑 
例えお世辞だとしても、書籍に載っていてもいい、というようなことを言ってくださるのは、とても嬉しいです。励みになります。それでは、これからもお互いに頑張りましょう。

平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

葉山さんこんにちは、感想を書いてくださってありがとうございます!

ああ……その辺り、本当にこれからの文学の世界において、とても重要なテーゼになってくると私も感じます。
もはや生成AIは、人と遜色ない、なんなら上のレベルで小説を書いてきます。よって、悪用も可能、生成AIに書かせて「私が書きました」という人間は絶対出てくると思います。そして、そのような詐称は全く望ましくない。「ひと」が苦悩して何時間も書けて必死に書いた小説に感動し、楽しみたい、という読者がほとんどなのだと思います。一方で、生成AIが書いていても面白ければいい、という考えもあると思います。私もそう思わなくもないのですが、大前提、その場合は「Geminiが書いた」と正直に言ってもらいたい、というように思いますね。「ひと」の誠実さが失われた時、文学の世界は焼け野原になる気がします。

ああ~遺書の部分は生成AIが書いたものでしたか笑 あれ、レベル高すぎますよね。研究者レベルでないとあれは書けないですよね、語彙が常用外すぎますもの。ギリギリどころか「無理ゲー」のレベルでした。旧漢字なんか読めませんって笑

ここで、先ほど言った葉山さんの「ひと」としての誠実さを見るわけです。自分で書いたんじゃないんですよ、と言ってくださる。これがある限り私たちは「みちのとぼそ」を安心して読み楽しめるのです。

ありがとうございます、もし時間があればどの章が生成AIによるものか予想してみてください、よろしくお願いします。

偏差値45
KD182249049042.au-net.ne.jp

第一章だけ読んでみました。

もしかしたら、他の感想者さんが指摘しているかもしれないけど。

>五人の大人が集まっている。
啓子、明、真里、涼の 4人だけのような気がしますね。

総じて内容は理解できる。登場人物の紹介といった感じですね。
>要再検査、からは小説の起承転結の「起」にあたる部分かな。
しっかりした文章で構成されているイメージですね。

平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

偏差値45さん、感想をありがとうございます。

あぁ……今気づきました。四人ですねこれは。小春入れちゃってました。改稿の際訂正しておきます。

はい、実験的な作品ですが、生成AIに負けないようにしっかりと書いたつもりです。ありがとうございます。

平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

皆さまお待たせしました。どの章を生成AIのClaudeが書いたのか、回答を発表します。

第一章、三章、五章が私が書いたもので、二章と四章がClaude、つまりリレー形式で書いたのです。
出来上がった後、一読して、私の書いた文章のほうが生々しく感じたので、分かる人には分かるかな、と
改稿を考えたのですが、それはフェアではない、ありのままで判断してもらうのが一番だ、と考えて
そのままにしました。同じように、Claudeの書いた章を崩すことも考えましたが、同じ理由で却下しました。

この実験的小説と、皆様の判断を見て思うのは、これからますます生成AIの執筆力が上がっていくであろうことを考えますと、その内、いや、もはや今の段階でも生成AIが書いた小説を見抜くのはほぼ不可能なのではないか、という事です。それが何をもたらすかと言うと、生成AIに小説を書かせて、「私が書きました」と名乗る人間が出てくるという事です。当たり前ですが、小説は自分で書かないと何の意味もありません。特に、ネットに公開しているぐらいならまだしも、公募の文学系の新人賞に応募して受賞するなんてことになったら大ごとになります。これを防ぐには、受賞予定者を出版社に呼んで、その場で三つお題を出して、一時間以内に短編を書け、とでもやるしかないのではないでしょうか。もちろんそんなに急いで書いたら上手く作品にならないかもしれませんが、それでも、書き癖、語彙、文体などで、筆力は判断できるでしょう。などという事を私は考えています。そうならないためには、プロアマ問わず、高い倫理観が求められます。生成AIを創作のよきアドバイザーとしては使うけれども、書くのは自分自身である、と。

しかし、例えば、将棋の世界におけるAIはめちゃくちゃ強くなっていて、人間はもう絶対に勝てないところまで来ています。そこで、AIを利用して指し手を教えてもらいながら指す、いわゆる「ソフト指し」という人は出現しています。人の心は弱いらしく、名誉や利益のために誇りを捨てる人は一定数いるようです。ただし、方法は分かりませんが、ソフト指しは見抜けるようで、ネット将棋でそれをした場合垢バンになったり、現実でも処分されています。今後、文学界隈も生成AIの書き手を見抜く方法をどうにかして見つけ出すでしょう。先ほど説明したように、実技を課すか、それこそ生成AI自身に分析させるか。ただ、参考までに書きますと、GeminiもChatgptもこの小説のどこをClaudeが書いたか見抜けませんでした。まだ無理なようです。

これからの生成AIと小説がどのような関係になっていくか、期待と不安を交えて見守っていきたいと思います。
回答してくださった皆さま、本当にありがとうございました。

巻菱湖
sp49-109-144-33.tck02.spmode.ne.jp

コメントに対するレスで申し訳ないですが、芥川賞作家の九段理江さんが、95%をAIに書かせた『影の雨』という短編小説がプロンプト込みでネットで無料で読めるのでぜひご覧ください。
興味深いのは、綿密なプロンプト(本文の5倍ほど)が敷かれていることです。これは誰でも真似できないレベルにあると思います。特に純文学では小説を書く以前の思想や哲学のほうが重要になってくると思うのですが、まさに九段さんがやっているのはそれです。言い換えるなら、良いプロンプトを書ける人というのは、自分で小説を書いてもそれなりに良いものができる、と言えます。従って、全くの素人がAIに頼り切って書いたものが新人賞をとることは現状あまり考えられません。そういう意味では小説に関しては、AIが人を凌駕するレベル(誰がプロンプトを書いても高いクオリティのものができる)にはまだ到達していないと私は思います。

平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

巻菱湖さん、コメントをありがとうございます! はい、九段理恵さんのことは知っています。
現状では、そこまで大量のコマンドを命じないと、生成AIは私たちが納得する形で小説が書けない、という事だと思いますが、確かに仰る通り、漠然と「芥川賞を獲れるような小説を書いてください」では無理なのでしょうね。ただ、それはあくまでも現段階で、という条件だと思います。将来的には私は、更に学習を重ねて、人間の書き癖などをものにしてしまうのでは、と思います。

後、小声で言いますが、現段階でそんなにコマンドが必要なら、もう自分で書けばいいじゃん、とも思いました(苦笑)

ともあれ、要は、どんな便利な道具も使い方によってはろくでもないことになる、という事だと思います。ダイナマイトは鉱山を爆破し採掘をやりやすくするために発明されましたが、すぐに戦争で人を殺すために使われるようになりました。やはり、生成AIを使う私たちのモラル、倫理感が問われるのだと思います。

情報を教えてくださってありがとうございました!

天ピカ
113x40x76x74.ap113.ftth.ucom.ne.jp

やはり2、4でしたか!
こういうのって外した方が「AIすごい!」って面白さがありますが、取り合えず安心しました^^
純文学はやはり中身の新規性で勝負なので、AIがガワを整えてる限りはまだ大丈夫そうですが、
余裕こいてAIで遊んでるつもりが、完全に乗っ取られるみたいなことにならないよう、お互い精進しましょう

青井水脈
softbank001115121018.bbtec.net

>第一章、三章、五章が私が書いたもので、二章と四章がClaude、つまりリレー形式で書いたのです。
私の回答 ①⑤
すみません、見事に外しました。

>一年。小春が一歳になるまでの時間だ。首が座り、寝返りを打ち、這い始め、つかまり立ちをして、歩き出すまでの時間。その全てを、自分は病気と闘いながら過ごすことになる。

第ニ章は全体的に淡々とした印象でしたが、上記はどうも、人間味を感じさせるような部分と思ったんですよね。医師による説明と明のモノローグとの対比が、医療ドラマなどのシーンを思い起こさせるようでしたが、生成AIでした。

>そこには死神のように生気のない、クマのある痩せこけた男がいた。これは一体誰だ、俺なのか、と、全身の力が抜けるような気がした。
第三章では、特にこちらが真に迫るように感じられたので。唯一の正解ということで(笑)
それと第四章、元谷さんとのやりとりなども自然でスムーズに読めたので。
見抜くとなると難しかったですね。

平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

天ピカさん、再訪ありがとうございます!

いやー、いきなり最初からズバリ見抜かれたので、あ、この企画もしかして簡単すぎた? とか思って焦りました汗

ですが、もう何人かに予想を書いていただきたかったのもあって、一週間待ってもらいました。

書いてる本人は100%分かっていますので、読み返すと、干し芋の比喩はバレバレだったか、などと思っていたのですが、それが逆に生成AIっぽいと感じる方もいて、本当に感嘆しました。私自身学ぶことが多かったので、やってよかったです。

まだ生成AIは生臭い人間らしさは学習出来ていない感じがします。Geminiが言ってたのですが、ネット上の小説からのラーニングが70%ぐらいらしいのです。つまり、なろうやカクヨムに溢れている異世界系のラノベ辺りを大量にラーニングしているようです。それゆえ、純文学的な比喩や表現はまだまだ苦手なのかな、と感じますが、そうではない小説を私などもせこせこネットに発表したりしていますので、これらを学習して生成AIはまだまだ進化するのでは、と思っています。

それではこれからもお互いに頑張りましょう。

夜の雨
sp160-249-19-40.nnk02.spmode.ne.jp

平山文人さん、「どの章を生成AIのClaudeが書いたのか」というご回答ありがとうございます。

私の予想は見事に外れましたが、「文章上の単純ミス」を人間ではなくて、AIがミスっていると考えたところに無理がありました。
平山さんのほうで先に、AIは「文章上の単純ミス」は、ない、というようなことが書いてありましたので。
いや、平山さんが、単純ミスをするような事はないよなぁと、買いかぶりました(笑)。


それにしてもAIの創作力というか、小説を創る技術はすごいですね。

今回は作者の平山さんに、AIも参加しています、小説を書くのに。
ということを聞かされていて、そのうえでしっかりと読みこんでも、どちらが人間でどちらがAIが書いたものかが、わからなかったのですからね。
最初から、人間が書いたものとして読めば一般の者には太刀打ちできません。

今回は作品だけではなくて、「人間VS生成AIのClaude」ということで、楽しめました。

あとで、再読してみます(笑)。


ありがとうございました。

平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

青井水脈さん、再訪ありがとうございます!

謝るなんてとんでもない、企画に参加していただけただけでただただ感謝です。ありがとうございました。

どういう文章に着目し、重点的に判断するかで、評価は大きく変わると思うんですよね。そこには読者自身の好みとか、ピンとくるポイントの違いというか、これはまさに十人十色ですので、それがいいとか悪いとかいう話では全くないと思います。

一つあるのは、生成AIは「優等生的な、整った隙のない文章を書く」というのがあります。そして、「泣いた、喜んだ」みたいな表現に対してとても厳しいです。そういうのは「視界がぐにゃりと歪み、頬を涙で濡らす」とか「両手をあげて弾けるような笑顔を見せた」みたいに、動作、行動で示せ、"Show, Don't Tell"(説明するな、描写せよ)と、徹底的に言ってきます。あとは、章の終わりに必ずと言っていいほど、次章につながる一文を入れたがります。「彼は、重い足取りで部屋の扉を開けて、中に入った」みたいな切り方をします。リーダビリティを重視するようです。こういうのは生成AIを利用していればなんとなく分かってきましたね。

いつも本当にありがとうございます、それではこれからもお互いに頑張りましょう。

平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

夜の雨さん、再訪ありがとうございます!

あはは、「よろばうように」ですね。これは私のタイプミスで、「よろぼうように」と書きたかったのです泣
こういうミスを人間のものと取るか、生成AIのものと取るか、難しいですね。もしも誰かが私と同じことをして、さぁ分かりますか、と言われて、正解する自信はそんなにありません。人によっては、生成AIに似た、整頓した文章が書ける人がいるかもしれないからです。生成AIの執筆力はとんでもないところにまで来ています。しかも早いんですよね、1000字ぐらいものの数秒で書いてきます。なんだこいつ、とか内心思ってます。こっちは一時間かけても書けないというのに(爆笑)

まだ生成AIには特徴らしきものがあるとはいえ、例えば、物語中心のライトノベル的な、簡素で勢いのある文章の作品は、はっきり言ってもう見抜けないと思います。それがやはり、なろうとかカクヨムとかで問題になってきているようですが、ネット上のやり取りでそれをどうにかするのは難しいでしょうね。自分で書いた、と言い張られたら何も出来ないでしょう。

それゆえにも、やはり、作者自身の倫理観、誇りが求められるのだと思います。これから色々問題が起こりそうな気がしますね。

それではこれからもお互いに頑張りましょう。

しいな ここみ
KD059132155140.au-net.ne.jp

解答をありがとうございます(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ

あー、②と④は当たったけど、⑤は平山さまでしたか〜。

惜しかったm(_ _)m

平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

しいな ここみさん、再訪ありがとうございます!

そうなんです、五章は私が書きました。しかし、二章と四章は当てられましたので、流石だと思いました。
作品の読み方も書き方も、人間らしさをどんな部分から感じるかも本当に人それぞれで、感慨深かったです。

それでは、しいなさんの小説に感想、意見を書きにいきますのでしばらくお待ちください。

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