作家でごはん!鍛練場
とよがわ

(未完)書簡体の練習

(中略)

「だが君は一向にして構ってくれなかった。言葉から、仕草まで、明らかに僕を軽蔑していた。否。『いた』ではなく、『いる』なのでは?疑わしい——いや、明白な事実なのだ。(世間から見ては)今こんな境遇に落ちた君はそれでも僕を軽蔑している。故に君を殺したい。有り体に云えば僕は数年間ずっと後悔と殺意に苛まれている。何故あの時君を殺さなかったのだ。殺さなくとも、理論上周りに涙を見せつければ、誰かが助けてくれていた知れなかったのに、僕は何かを怖がって、最後まで君に酷く扱われていた。君は僕以外の者を普通に接していやがったのに、僕だけを人間以下に扱うのは何故?」

「閑話休題(さて)。ついつい長文になってしまった。ただし僕は謝る気がない。最初から君の気持ちを害するつもりなのだ。おめでとう、ありがたい。貴様はやっと不具者になってくれた。正真正銘な障碍者であり、貧乏者でもある。君の今の惨状を見て、憂えていた心にも一筋の光が差し込んできた気がする。だがそれで足りておらず、俺のしたいことは実際、君を殺すことなのだ。俺は全てをまだ忘れていない。忘れられない。貴様は俺の人生に深い爪痕を残しやがった。この野郎!」

「金が無い故に貴様に嘲笑われ、見目が全く不細工だと云えないのに貴様に『ブス』呼ばわりされ、俺はお前にとって一体何者なのだ。よもや俺のことが好きだからそうした訣ではないよな?俺は弱気だから平日の鬱憤を、俺を丁度良く使える捌け口にしやがった訣なのでは?」

(以下略)

「まぁ!この手紙を読まずに燃やすのも、じっくり読んで破るのも、貴様の自由だ。こんな恨みを連ねた手紙を書くことは到底俺の精神的勝利法でしかない。片輪になっても昔は変えられない。故に俺は未だ貴様に負けている……
「それでも俺は「おめでとう、ありがたい」と書いている。天道への感謝だ。即座に罰を下してくれた訣ではないが、それでも俺は満足だ。貴様が俺よりもの貧乏片輪になってくれた事に。」

(以下略)


 男は当時からずっと誉められているかなり整った字でこんな手紙を書いて寄越した。が、寄越された片輪は果たして読んでくれたか?答えは意外に「YES」でした。ただし男の想像に反して、片輪はただざっくり読んだだけで心を破られて、手紙を千切って燃やしたのようだ。それでも男は満足する。男はただこの片輪を自殺まで追い込むつもりだ。

 男は次に直に会って嘲笑って返そうと思っている。大きなケーキと花束を持って……片輪の親の前に。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 男は有言実行して、大きなケーキと花を持って、仕事の合間に片輪の家に行った。片輪が昔「遊びに来てくれないか」という理由で自ら住所を男に教えたため、男はわざわざ片輪を特定する手間がかからなかった。

 花は黒百合でした。男は支払った瞬間、「なんであいつのためにケーキと花を買ったんだろ」と、自分の思考回路を疑ぐった。ただし、トドメを最大限に効かせるには何かを犠牲にしなければならないと男はまた自分をそう言い聞かせた。

 あまりの緊張で男は片輪の門前を立ち尽くしていた。男はいつも踏み出せなかった。追い出される覚悟をした彼はようやくベルを鳴らし、訝しむ片輪親の前で「小学校時代の同級生です。懐旧談がしたくて伺いました」を言い訳に誤魔化し、親は不審に思ってはいるが、仕方なく上がらせた。

 親は自室にいる片輪を呼び出した。不意に家に来やがった男に、片輪は当然驚かずにはいられなかった。男もまた片輪を頭から爪先まで凝視していた。夏場なので片輪は短パンを履いており、男はすぐ左足につけてある義肢を認めた。男は笑った。

「やぁ。豊川。まだ僕のことを覚えてるかい?」

 男はいくら片輪を恨んでいても、久しぶりの対面のため、一応取り付きだけ丁寧な口調で挨拶してみた。

「お前は……まさかの江崎か」

 ややしばらく、片輪はやっと応じてくれた。男の容子は当時からほぼ変わっていない——幼めの顔に黒縁眼鏡。

「へぇ。まだ覚えててくれて、ありがとな」

 片輪も男のケーキと花に気がついた。彼は男の捻くれた性格を熟知していた。それにも拘らず男を畜生の如く扱っていた。

「前回の手紙、読んだか」

 男は実際、内心緊張で吐きそうになっていた。直接憎む人と向かい合って罵倒するのは初めてなので。だが涼しい顔をなるべく保っていた……片輪にボロを捉えられたくないから。そろそろ夕飯の時間のため、片輪の親は野菜の購入に出かけている。家は男と片輪二人きりになった。窓の外は夕焼けで、小供達の笑い声が聞こえてくる。片輪はただうざったく感じた。雲が流れていく。片輪はまだ黙っている。

「てめぇ、一体なんで来やがったんだ…」 泣きそうになった片輪。彼は男の質問に答える気分ではなかった。手紙? ざっくり読んだだけで男の露骨な罵倒に刺された劣等感で即座に燃やしたのだ。

「障害者になった噂を聞いて」 笑いを堪えている男。だが声は稍震えている。よく見ると目元には小さな雫が光っている。 「所謂因果応報ってゆうやつね」

「俺がお前をいじめてたから?」
「それじゃなかったら何なんだろう?夜な夜なお前を殺すのを考えてたんだ」

 片輪は言葉に詰まって黙ってしまった。実は彼は自覚はしていた。男のみならず、他の者をも虐めていた。幸い身体の暴力を振るっておらずーーさもなければ片輪は今まで生きていけずに誰かに殺されていたのだろう。

「君。なんでまだ覚えてんだ。なんで……」
「他に名前をまだ覚えられる恨んでも好い人が居なかったから」

 当時の男は複数人からの虐めを受けていた。片輪以外に、顔も覚えられず、そもそも名前がわからない男達でした。毎日理由(わけ)もなく揶揄われていた。その御蔭で男は戸籍上男なのに、男性恐怖症に罹ってしまったのである。ただし男は片輪の名前しか覚えられない。豊川業平。ト、ヨ、ガ、ワ、ゴ、ウ、ヘ、イ。男は片輪の名前を思い出すと心頭に怒りが来る。男は何もできない。片輪連中の虐めがなかったら男はどんな姿になってしまうのだろうか? 誰もわからない。

 男も無力である。彼は思い知っている。ただ、此処まで来た以上、片輪を追い詰めなければならない。ケーキと花を遺して謝って帰る訣が無い。彼は自分が背負っている黒い何かが蠢いている気がした。その正体は「責任」。負わざるを得ない物。片輪が本当に自殺してしまったら責任は誰が負う? 男は怖がっていた。社会に背中を刺されたくない。だけれど片輪から受けた嘲笑は変わらない。何時も其処にいる。

(続きが思いつかなかった故中略)

 男と親が去った後、片輪は自室に戻り、電気を点けずに頻りに泣いていた。後悔だか怨恨だかわからない。ただゴミ箱にはティッシュの山が積み上げられていた。片輪はそれから一層激しく対人に抵抗感を持つようになった。親もその理由がわからなくなったーー片輪が何も言わないから。男はまさかの疑りを免れた。全部童顔小柄物静かな性格の御蔭で。

 男が片輪の噂を知れたのは三ヶ月後。同じ住宅区に住んでいる方の話によると到頭片輪が狂人になり、深夜に人気の無い山に駆け込んで自殺したらしい。男は甲高い声で笑った。腹も痛くなる程笑った。けれどその後は虚無。恨むべき相手が自殺したから恨める人が居なくなる。男は漸く気づいてしまう。意識が飛んでいる途中に、片輪の脳から、他の無辜なる者への揶揄いも、嘲笑も、全部水のように消え去っていくーー男はそう想像している。そういった記憶を保存しているのは恐らく男一人しか居なくなったのだろう。

「結局自分は何をやってんだ」

 男は溜息を吐いた。精神の問題は一向に治らず、けれど薬で鎮まらなかった。彼はふと片輪の家に行く前の日、精神科に行く時に見た二人の男を思い出した。若い男はちんばで、松葉杖を使っており、老いた男は明らかに窶れており、若い男の世話をしていた。今よく考えると若い男の顔は微妙に片輪に似ていたのでは? だが男はいきなり話しかけることができなかった。若い男のほうが先だったので男は診察室外で待っていた。否。待たされた。若い男が部屋を出て、男はやっと這入れるようになる。診察が終わった後、精神科医が少し愚痴を洩らした。「さっきのあのちんば、足が使えなくなってから気狂いになってて全然ロクに話せない」

「僕にもそういう同級生が居て……」男は話を広げる糸口をでも見つけ出したような気分。まるで答え合わせみたいだ。ただ、話はそれ以上進まなかった。男が早めに処方を貰って仕事に戻らなければならない故。


 片輪の自殺を知ったの男もまたしても本気で自殺を考えてみた。後追い自殺ではない。自分を貶す者は今地獄に居る。なのに自分は未だ虚無を歩いている。そもそも片輪一味が居なくとも男の人生は失敗に決まっている。白く、何も無い部屋で彼は地べたに座り込んで、溜息を何回も何回も吐いた。息が詰まっている。鼻が使い物にならず、彼は口で空気を吸っては吐いて、吐いては吸っていた。彼の目の焦点は気に入っている物に当てていない。ただ建築の線や服の皺を脳内でトレスでもしているだけ。

 「もう好い……」男は薬を出して、口に入れる。水で喉に流し込む。苦い。けど生きている以上背負わなければならないーーそれは代償だ。片輪は死んでも男の中に生きている。ただし槍玉に上げる者として。一人脳内批判劇場でも上映されている。二番煎じで既にネタが切れている。それでも男は恨む。生きるには恨みが必要な好食糧であり、好画題でもある故。それも切れたら男には生きる意味が無くなる。それだけだ。

(未完)書簡体の練習

執筆の狙い

作者 とよがわ
andyw72651.vds

改行・空白除きだと3881文字です。時間のある時に書簡部分と本編の中略部分は後ほど補足していきたいと思います。文が読みづらく、ストーリーも痛いのは承知しておりますが、字書きの素人ゆえ、温かい目で見守っていただけますと幸いです、、、(^^;;

書簡部分の一人称二人称の揺らぎはわざとそう表記しております。あと 豊川(片輪)=精神科で遭遇したちんば なのだが、どうも自分の書き方が下手すぎてそう読み取れないのかな?

GPTに評価させたら「日本人らしさが薄い」と言われました。もしかして直球すぎた罵倒語が多すぎたから?それに明かしている文脈だけで見れば、微妙に「主人公」と「豊川」の関係性は薔薇の香りがする。BLを書くつもりは一切ありませんが…(^^;;

コメント

偏差値45
KD059132066213.au-net.ne.jp

>文が読みづらく、ストーリーも痛いのは承知しております
おっしゃる通りで……。

恨むことが男の生き甲斐だった、そんな話かな。
総じて費用対効果が良くないかな。
いい小説は負担が少なく、得るものが大きいものです。

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

内容が入らなかったです。あまり。
だから内容についてはコメントは言えないのですが。

多分、リズムというかイメージとして視覚的に読者も体験できるかという所で、ちょっと何かが歯車がかみ合ってないのかな。
空間とかを意識しても良いかもね。場所というか背景というか、そういうのが浮かぶとまた入ってきやすくなるかも。

あと、(中略)だから小説の途中から読んでるのかな。その性か。
感情移入の間や余裕もなく、また視点が誰視点なのか全く分からないで、それなのにどんどん最初の方展開するので、なんか置いてけぼりになってしまった気がします。

試行錯誤しているのかなって気がします。なかなかこのような作風を自分はどう読めばいいのか分からない部分があるのですけど。
意図したのかしてないのか分からないけど、小説全体からなんか病的なイメージ、なんか病人が書いているイメージが浮かんだりしました。それを上手く使えば個性になるかも。一人称にして狂人の日記とか書けそうな素質みたいなものを感じました。

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

テクニカルサポート

3,000字以内