ファーザーダウンザスパイラル
耐えられなくなり、近くに置いてあったペンを手に取った。
身悶えするような自己嫌悪に任せて振り下ろすとまず鋭い痛みが皮膚を裂いた。
皮膚は次第にあからみ、
遅効性の鈍い痛みと、赤い球体を形作った血液とを以って、冷静さが私に報いた。
先程まで頭を支配していた醜い怒りは血液の這い出る赤黒い穴に消え、体を巡る多量の血液に希薄された。
愚かな怒りに、理性が反逆したのであった。
白けるような脱力感が、私を襲っていた。
しかし未だ私は自分を嫌っていた。
あの不徳な注射はほとんど意味を為さなかった。
怒りに代わって惨めさが自己嫌悪を亢進させていた。
しばらく経ってから、私はこの出来事を三島由紀夫かぶれの文体で書き起こした。
これが功を奏して、私はひとまず私を納得させることに成功した。
なるほど私は小説の主人公であったのだ。私は芸術だったのだ。
私は大理石の彫像で、私の浅薄は少し沈鬱な瞳で、私の怒りは通った鼻筋であったのだ。
そして私は芸術家であった。私がこの芸術を生み出したのだ!
自分を責め立てる声はもう聞こえなかった。
さて、それはしかしひどく自己満足的な芸術だった。
芸術ではなかった。単なる自慰であった。セックスではなかった。
私は、憎むべき汚さを、恨むべき醜さを、また一段と醜い自己肯定で、持続も進行もしない形へと閉じ込めていたのだ。
快楽物質は少しずつ体を蝕む毒だった。あの陶酔は、毒の作用によるものだった。神経の腐敗によるものだった。
私は分かっていた。私が芸術にはなり得ぬことも、こうした自己肯定の方法が破滅を導くことも。
陶酔が絶頂に至ろうとも、そういった考えは常に思考の裏側に張り付いていた。
思考を動かそうとすれば、その粘性が歯車の動くのを邪魔するのである。
しかし私には問題ではなかった。
いや、問題であったのだ。
問題であったが故に、それはまた不埒な美しさを放って私を陶酔させた。背徳の美しさ、退廃の甘さを私は知ってしまっていた。
私を苦しめれば苦しめるほど、その問題は私の芸術の素材としての適正を得るのであった。
こうして永久機関のように、私の感情は回転し続ける。
気づいていながら、脱することが今や不可能なのである。
いずれ回転は下向きの作用を受け、下へと向かい螺旋状を形作るであろう。
私は、より深い苦しみへと、もしくは、死へと、破滅へと、遅くしかし確実に下っていくのである。
執筆の狙い
三島由紀夫に憧れて執筆いたしました。
評価いただけると幸いです。
精神状態はいいです。