剣士と剣士
どこまでも続く真っ白な空間。背後には観音開きの大きな黒い門。その門にはたくさんの細やかな彫刻が施されているが、僕がいるところでは離れすぎていて、その凹凸を見分けることができない。
そう、僕はあの門から入ってきた。扉は開け放たれていて、いつでもこの空間から抜け出すことができる。しかし僕はこの空間から抜け出すことを拒み、敵を見据え、両手で剣の柄を握りしめたままでいた。
敵は僕から見ることができない。僕以外からも見ることができない。透明な敵だ。がむしゃらに剣を振り回す。剣はやけに重く、一振りするだけで取り落としそうになる。息が荒れて大きく肩が上下する。立っていることすらむずかしくなる。それでも構えを崩すことだけはできなかった。
ふと、背後から気配がした。おそらく誰かがあの門から入ってきたのだろう。この空間に用があるのは僕だけのはず。そいつは誰なのか。尋ねる前にそいつに蹴飛ばされた。
もう僕は立ち上がれなかった。そいつが強いからではない。僕が疲れ果てていたからだ。
うつ伏せに倒れていた。そいつが僕の右腕に刃先を当てた。そしてその刃は少しずつ僕の皮膚を破っていった。いたい、いたい。血が流れている。思わず声が漏れる。それだけじゃ済まなかった。皮膚を破って割り入った、その刃の角度をゆっくりと90度回転させた。あまりの痛みに叫ぶ。血がさらに流れ出す。四肢すべてで同じことが行われた。
このとき、僕は痛みよりも安心感を覚えていた。誰も見ていなかった孤独な戦い。それに割り込んで僕に傷を与えた誰か。血が流れることでやっと可視化された痛み。その痛みによってもたらされた産声に似た絶叫。叫んでいたとき、僕は開放感で満たされていた。誰も知らなかった僕の痛みがやっと表に出てきた。そいつの剣が僕の痛みを表に出し、それを聞いてくれていた名も姿もよく分からないもうひとりの剣士。
最後にそいつは言った。
「おまえは休むべきだ」
その言葉に安堵し、僕の意識は遠のいていった。
執筆の狙い
・なぜこの小説を書いたのか
暇でした。
・表現したいものは何か
自分自身のことです。
・執筆上どのような挑戦があるのか
あまり挑戦してはいなくて、ただなんとなく書いてみました。
誰かに見せるのはとっても怖いのですが、見てほしい気持ちもありましたので勇気を出して投稿いたしました。他のサイトにも同じ文章を投稿しています。
読んで下さる方がいらっしゃるだけで十分うれしいです。
よろしくお願いします。
ひっそりXもやっておりますので宣伝させていただきます…