作家でごはん!鍛練場
さぎざ

剣士と剣士

どこまでも続く真っ白な空間。背後には観音開きの大きな黒い門。その門にはたくさんの細やかな彫刻が施されているが、僕がいるところでは離れすぎていて、その凹凸を見分けることができない。

そう、僕はあの門から入ってきた。扉は開け放たれていて、いつでもこの空間から抜け出すことができる。しかし僕はこの空間から抜け出すことを拒み、敵を見据え、両手で剣の柄を握りしめたままでいた。
敵は僕から見ることができない。僕以外からも見ることができない。透明な敵だ。がむしゃらに剣を振り回す。剣はやけに重く、一振りするだけで取り落としそうになる。息が荒れて大きく肩が上下する。立っていることすらむずかしくなる。それでも構えを崩すことだけはできなかった。

ふと、背後から気配がした。おそらく誰かがあの門から入ってきたのだろう。この空間に用があるのは僕だけのはず。そいつは誰なのか。尋ねる前にそいつに蹴飛ばされた。
もう僕は立ち上がれなかった。そいつが強いからではない。僕が疲れ果てていたからだ。
うつ伏せに倒れていた。そいつが僕の右腕に刃先を当てた。そしてその刃は少しずつ僕の皮膚を破っていった。いたい、いたい。血が流れている。思わず声が漏れる。それだけじゃ済まなかった。皮膚を破って割り入った、その刃の角度をゆっくりと90度回転させた。あまりの痛みに叫ぶ。血がさらに流れ出す。四肢すべてで同じことが行われた。

このとき、僕は痛みよりも安心感を覚えていた。誰も見ていなかった孤独な戦い。それに割り込んで僕に傷を与えた誰か。血が流れることでやっと可視化された痛み。その痛みによってもたらされた産声に似た絶叫。叫んでいたとき、僕は開放感で満たされていた。誰も知らなかった僕の痛みがやっと表に出てきた。そいつの剣が僕の痛みを表に出し、それを聞いてくれていた名も姿もよく分からないもうひとりの剣士。

最後にそいつは言った。
「おまえは休むべきだ」
その言葉に安堵し、僕の意識は遠のいていった。

剣士と剣士

執筆の狙い

作者 さぎざ
p116.net042127081.tokai.or.jp

・なぜこの小説を書いたのか
暇でした。

・表現したいものは何か
自分自身のことです。

・執筆上どのような挑戦があるのか
あまり挑戦してはいなくて、ただなんとなく書いてみました。


誰かに見せるのはとっても怖いのですが、見てほしい気持ちもありましたので勇気を出して投稿いたしました。他のサイトにも同じ文章を投稿しています。

読んで下さる方がいらっしゃるだけで十分うれしいです。
よろしくお願いします。

ひっそりXもやっておりますので宣伝させていただきます…

コメント

夜の雨
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さぎざさん「剣士と剣士」読みました。

何やら映画の冒頭のようで。
それなりの剣士が地獄の門を思わせるような観音開きの大きな黒い門を背景に歩いてくるところが想像できますが、「細やかな彫刻が施されている」とあるからにも、何やらとんでもないところへとやってきた剣士で。きっと名のある勇者ではないかと。ただ、相手(これから向かう黒い門の中にいる敵方)の方が大きくて自分がちっぽけに見えているのでは。
今回登場するもう一人の剣士は、主人公の剣士に休息を与えるために出現したのかもしれません。それなのに、傷を与えるところが、エピソードとしては面白いかな。このあたりが、ドラマチックでよいですね。
いくら強くても疲れていては勝負ができないので、休息する必要があったのでは。主人公の体についた傷は、あとからくる者が薬品を持っているかもしれません。
ということで、今回描かれている世界は、映画の冒頭のような入り方でした。
このあと、物語は一度バックして剣士がどうしてこの黒い門をくぐらなければならなくなったのか、そのあたりの背景部分からお話が進んでいくものだと思われますが。


なかなか、結構でした。

夜の雨
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再訪です。

>・表現したいものは何か
>自分自身のことです。

ああ、なるほど。
ということは、ドラマとして描いたのではないという事になりますね。
「剣士」と書いてあるので、それなりに世の中と戦ってきたのでは。(働いてきたので、世間を知っているという意味)。
ところが、人生に疲れも出てきた。
自分の周囲には、いろいろ疲れることが多いので。
しかし、これから目指すモノは、まだまだ先が見えないモノである。それが「黒い門」という事になる。
そこで、登場したのが、もう一人の自分です。
「疲れているのだから、休んだら」という意味。
しかし、ふつうは「はい、そうですか」というわけにはいかないので「いや、まだ、これから、戦わなければならない相手がいるのですよ」と、黒い門からの道のりを見る。
「人生長いよ」と、もう一人の自分が言う。
「いや、前に進まなければならないんだ」
「そう、あせるなって。おれはさ、おまえ自身なんだよ。だから、わかっている。いま、これ以上無理したら、取り返しがつかないことになるから。ここで、休んでいろ」
ということで、無理やり休業させられました。

こんなところですかね。

お疲れさまです。

さぎざ
p116.net042127081.tokai.or.jp

夜の雨さま

ご感想ありがとうございます。

この文章の解釈に正解はありませんので、なるほどと思いながら文章を読ませていただきました。
僕ですら想像していないところの解釈もしてくださっていて、読んでいて面白かったです。

読んでいただきありがとうございました!

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