作家でごはん!鍛練場
かぐつち・マナぱ

『ひまわりのかくれんぼ』

 夏休みのある日、僕たちは町はずれのひまわり畑に集まった。

毎年この季節になると、背の高いひまわりが一面に咲いて、子どもたちの秘密基地になる。

ひまわりの間をすり抜けて、かくれんぼをするのが、僕たちの夏の日課だった。

「今日もやろうよ、かくれんぼ」

まなみが目を輝かせて言った。

汗をぬぐいながら、僕とこうたはうなずいた。

「じゃあ、今日は俺がオニな」

こうたがじゃんけんで負けた。

目をつぶって、ゆっくり数え始める。

「いーち、にーい、さーん……」

僕は夢中で走った。

ひまわりのざわめき、蝉の声、風のにおい。

全部が、夏の音だった。

たどり着いたのは、ひまわりの中にぽっかり空いた小さな空き地。

太陽の光が差し込んで、少しだけ涼しかった。

しゃがみ込んで息を整えると、気配に気づいた。

「え……ここにいたの?」

まなみがいた。

僕と同じ場所を隠れ場所に選んだらしい。

「ここ、好きなんだ。静かで、だれも知らないと思ってたのに……」

まなみはおとなしい子だった。

いつも静かに、でもちゃんと自分の世界を持っていた。

「……ひまわりって、空の方ばっか向いててずるいね」

風が吹いて、まなみの髪が揺れた。

僕はその横顔を見つめた。

(……なんか、まなみって、可愛いな)

そんな気持ちを持つ自分にびっくりした。

そのときのドキドキを、僕はたぶん、ずっと忘れない。

「どこだーっ!」

遠くで、こうたの声が響く。

僕たちは、ふたりでくすくす笑った。

「逃げよっか?」

僕が言うと、まなみは首を振った。

「ううん。ここにいよう」

ふたりで肩を寄せて笑った。

世界から隠れたみたいに。

夏の陽射しはまぶしく、ひまわりは空に向かってまっすぐ伸びていた。

そしてそのとき、僕は思ったんだ。

たぶん、こんなふうに誰かと一緒にひまわりの影で笑った夏のことを、大人になっても忘れないんじゃないかって。

それが、僕とまなみの、いちばん夏の思い出だった。


※※※※※※※※

 時は流れて、大人になった。

真奈美(まなみ)が、康太(こうた)と結婚することになったと聞いたのは、夏の初めだった。

正直、驚きはなかった。

資産家の息子であるあいつは、昔から足も手も速くて、何でも手に入れるやつだった。

聞けば、真奈美の家が少し大変で、安定した生活のためだという。

納得したふりをして、僕は何も言わなかった。

式の直前、電話が鳴った。

「真奈美が、消えた」

康太の声だった。

「どこか、心当たりはないか?」

その問いに、僕は即答できなかった。

でも、心の奥にふと浮かんだ風景があった。

――あの、ひまわり畑の空き地。


※※※※※※※

 数年ぶりに訪れたその場所は、半分は住宅地になっていた。

けれど、奥のほうにはまだ、あの日のままのひまわりたちが立っていた。

風が吹いて、蝉が鳴いて、ざわざわと夏が鳴っている。

そしてそこに、まなみはいた。

背中を丸めて、ひまわりの茂みに身をひそめるように座っていた。

空を見上げて、まぶしそうに目を細めていた。

風がひまわりの葉を揺らすたびに、その髪もそっと揺れていた。

「……見つけた」

僕は流れる汗を拭い、そう言った。

懐かしくて、でも少しだけ震える声で。

まなみが、ゆっくりとこちらを振り向いた。

「みつかっちゃった……覚えててくれたんだね?」

笑っていた。

でも、その目は少しだけ潤んでいた。

「嬉しかった……でも、もう逃げないよ」

そう言って、まなみはゆっくりと立ち上がった。

まるで、しゃがみ込んでいた時間が、何かを抱えていた年月そのもののようだった。

陽射しが彼女の背を照らして、ひまわりの影がすっと伸びた。

まなみの顔は、ひまわりの間から見える空のように澄んでいた。

僕は、彼女が今ここで“覚悟”を決めたのだとわかった。

だから、僕は言った。

「逃げてよ」

彼女が一瞬、目を見開いた。

「え?」

「いっしょに。鬼の手の届かない場所に」

静かに、でもはっきりと。

まなみは小さく息をのんだ。

そして、微笑んだ。

その笑みは、子どもの頃に見せた、あの秘密の場所での笑顔とまったく同じだった。

次の瞬間、まなみは僕の手を取った。

何も言わずに、強く。

僕たちふたりは、ひまわりの間をすり抜けるように走り出した。

風がざわざわと音を立て、蝉の声が夏の空に響いた。

誰にも見つからないように。

鬼にも、世界にも、もう届かない場所へ。

『ひまわりのかくれんぼ』

執筆の狙い

作者 かぐつち・マナぱ
p845184-ipxg00c01otsu.shiga.ocn.ne.jp

今年の夏も終わってしまったので、夏の思い出を書いた掌編を置いてみます。(⁠⁠人´⁠ω⁠`⁠⁠)

ひまわりのようにまっすぐでありたいと願いながらも、影の中でしか見つけられない優しさもある──そんな夏の物語です。

コメント

青井水脈
softbank114049165225.bbtec.net

読ませていただきました。
夏休み、町外れにある背の高いひまわり畑は、子どもたちの絶好の遊び場となる。まなみとこうた、そして僕。3人はかくれんぼをして遊んでいた。
そして月日は流れ、大人になった彼らだったがーー。

うまいと思いました。子ども時代はこうた、まなみだったのが、大人になってから康太、真奈美に変わったところとか。まなみの本名が真奈美なら、数年後に再会してからも真奈美で通してほしかったですね。

>全部が、夏の音だった。
ハッとするような表現があって。

>「いっしょに。鬼の手の届かない場所に」
全体を通して、かくれんぼをモチーフにされてるところも、うまいと思いました。

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

拝読しました。
良かったです。余韻が良い。

詩的なスケッチというか、小さな装飾ながら的確な情感を誘う文章。僕は好きです。
ねっ、感情を語りすぎず、行間や余韻に託す。素敵じゃないですか。
そして自分には主人公のまなみへの憧憬や好きという感情がとても伝わったというかじわんとしたので、最後諦めさせるのかなと思ったら、一緒に手を取って「逃げる」という選択を取る。そこにすごく惹かれました。
それは客観的に観たら「逃げる」かもしれないけど、自分の気持ちに正直に向き合うことですもんね。それでも「逃げる」というその控えめさが好きです。

さて、こうたはフラれちゃいましたが決して悪い人とは描写されてません。そこが物語に深みを与えていると思います。ただ、もう少しこうたの人物像を示す、ほんと直接的に語るんじゃなくて間接的にやり取りとかで雰囲気を伝えるとかで良いんで、出し過ぎると作品の味わいが変わってしまうのもわかるのですが、もう少しほんの少しこうたを足すと、深みがより出たかなという気がします。こうたが良い人と描写されても、やるせなさや切なさが増す構成だろうし。

夏が過ぎ去った今だからこそ、届かないかもしれない恋心というのが際立ったのかなーとか。粋だにゃー。

かぐつち・マナぱ
p845184-ipxg00c01otsu.shiga.ocn.ne.jp

>青井水脈様へ

ご感想ありがとうございます。

子ども時代と大人になってからの「名前の違い」に気付いていただけて、とても嬉しいです。

大人になって「真奈美」と呼ばれる彼女を、あえて最後に「まなみ」として描いたのは、僕の中で彼女への想いがずっと“あの夏のまなみ”のままだった、という気持ちを込めたものでした。

純粋というか、大人になりきれていない彼の未熟さでもありますね。

ですが、仰る通り再会後も「真奈美」で通すことで、より現実との対比が明確になったかもしれませんね。
とても参考になります!ありがとうございます。m(_ _)m

「全部が、夏の音だった。」や「鬼の手の届かない場所に」など、印象に残った言葉を拾っていただけて光栄です。

かくれんぼという遊びを“逃避”や“再会”の象徴として使いたかったので、その意図を感じ取っていただけたことが、何より嬉しいです。

とても温かいお言葉、ありがとうございました。(*人´ω`*)

飼い猫ちゃりりん
118-105-102-152.area1a.commufa.jp

かぐつち・マナぱ様
題名は『ひまわりのかくれんぼ』より『倫理の墓場』の方が良いと思いました。
あと思いついたのは『尻軽女とこそ泥の恋』ですかね。
『美意識なんて吹き飛ばせ』なんてのもストレートでいいかもしれません。
楽しい作品を読ませもらいました。

夜の雨
sp160-249-22-144.nnk02.spmode.ne.jp

話はきれいにまとまっていますが、これって、主人公もまなみも子供のころの気持ちを忘れていなかったということになりますね、それだけ純真というか。

で、伏線になっている下記ですが。
A>そしてそのとき、僕は思ったんだ。

A>たぶん、こんなふうに誰かと一緒にひまわりの影で笑った夏のことを、大人になっても忘れないんじゃないかって。

子供の時に、大人になっている自分をイメージできるものかと、思いましたが。

しかし、大人になってみると、子供の時の思い出は思い出すことはあるのですよね。なのでAの伏線がなくても通じるとは思うのですが。その代わりに、子供のころのひまわり畑の中でまゆみと一緒に隠れていた息づかいのようなものは、しっかりと描く必要はありますが。これを描いておくと効果てきめんだと思います。いかに場面と人物を印象付けるかということです。

そのときに、子供のまゆみが好きだった唱歌などを口ずさんでいたとかで、主人公がひまわり畑へ行ったときに、その歌声が聞こえた、という事にすれば、彼女を見つけやすいかなとも思いましたが。

どちらにしろ、御作はきれいにまとまっています。
御作の良いところは、説明ではなくて全編、エピソードで描いているので、わかりよいし、イメージがしやすかったです。

かぐつち・マナぱ
182-167-191-131f1.shg1.eonet.ne.jp

>えんがわ様へ

沢山の素敵なお言葉のご感想、ありがとうございます。
いつも「語らずに滲む感情」を意識して書いているので、行間や余韻を感じ取っていただけたこと、とても嬉しいです。

まなみへの想いや、“逃げる”という選択を肯定的に感じていただけたのも、まさにこの作品で伝えたかった部分でした。

彼らの行動は、たしかに現実からの逃避かもしれません。

でも同時に、それは えんがわ様の仰る通り、“自分の心に正直であろうとする勇気”でもあって、そこに今の多様な価値観の中で生きる私たち自身の姿を少し重ねたつもりだったのです。

この先に困難があるとしても、読んでくださった方が「それでもふたりを応援したい」と思ってもらえるような、そんな余韻を残せたなら本望でした。

ご指摘のとおり、こうたについては“悪役ではないもう一人の夏の象徴”として、あえて描写を抑えていましたが、確かに少年時代と大人になってからも こうたの誠実さが少しだけ見えると、物語の深みや切なさがより滲むと思いました。

…こちらに出して良いか分かりませんが、いただいたアドバイスを元に、少し描写を増やした所を示してみます。

①少年時代の一節に

「じゃあ、今日は俺がオニな」
こうたがじゃんけんで負けた。

少し悔しそうに口を尖らせながらも、ちゃんと数え始める。
そういうところが、こうたのいいところだった。

負けても、ルールは守る。──誰よりまっすぐで、ずるができないやつだった。

②大人になってからの一節に

「真奈美が、消えた」
電話口の康太の声は、驚くほど落ち着いていた。

責めるでもなく、縋るでもなく、ただ真っ直ぐに真奈美を探していた。
その声音に、昔のままの彼なりの誠実さと優しさが滲んでいて、僕は少しだけ胸が痛んだ。

…全文を示さないとバランスが分かりませんが、雰囲気だけでも伝われば幸いです。

この度は、丁寧に読んでくださり、適切なご指摘も本当にありがとうございました。m(__)m

かぐつち・マナぱ
182-167-191-131f1.shg1.eonet.ne.jp

>飼い猫ちゃりりん様へ

私の思い違いならば申し訳ありませんが、まず『倫理の墓場』という挑発的なタイトル案を出されたのは、この作品のテーマである「好意という感情が社会的な道徳(家を守るなど)を超えての逃避を引き起こす」を浮き彫りにされる狙いがあるのではと思うのですが、いかがでしょうか?

言わば「単なる恋物語ではなく、倫理の境界線を越えた話」であるいうことかと…
(全くの当てずっぽうなので、ごめんなさいm(__)m)

また次の『尻軽女とこそ泥の恋』も露骨で俗っぽい言葉ですが、それが逆に登場人物たちの「人間くささ」を強調してくださっているようで、これも言わば「人間の欲望や衝動を書いた話」として捉えて下さっているのかと…
(またまた、これも間違っていたら、すいません!m(__)m)

そして、最後の>『美意識なんて吹き飛ばせ』なんてのもストレートでいいかもしれません。
         
からは私の作品を、「綺麗なまま終わらせずに、破綻したり、人間の生臭さをもっと出せ!」と提案し、応援して下さっているのだと感じます。

…でないと、>楽しい作品を読ませもらいました。

なんて言葉を書かれるはずがありませんもの。(*´▽`*)<正直に言うと、タイトル案すべてインパクトが強烈で、読んでいて思わず笑ってしまいましたw。

飼い猫ちゃりりん様は、素晴らしい観察眼の持ち主でいらっしゃいますね。

タイトル『ひまわりのかくれんぼ』という穏やかな題に隠れている、『実は価値観と本能のせめぎ合い』を読み取って下さった方ですから。

登場人物たちの人間くささをそんな風に感じて取っていただけたのなら、作者として嬉しい限りです。

ユーモアと洞察にあふれたコメント、本当にありがとうございました!(*‘∀‘人)

飼い猫ちゃりりん
sp49-97-25-144.msc.spmode.ne.jp

かぐつち・マナぱ様
飼い猫の真意を汲み取っていただき嬉しく思います。立腹されるかと思ってハラハラしていました。
この作品のストーリーは、まるでエメラルドの原石の様です。磨き上げれば、妖しい光を放つでしょう。想像力が刺激されます。
この作品には謎がいくつも仕掛けられています。

①真奈美はなぜ康太を捨てたのか?
康太の資産目当てに結婚の意志を固めたのに。真奈美家の経済状況は回復したとの記述もない。急に主人公が恋しくなった? なぜ? ちょっとフラフラしすぎ。

②真奈美は幼馴染である主人公が恋しくなった? しかし主人公と真奈美は幼馴染、つまり友達。資産を諦めれるほどの恋があったと思えない。そんな描写もない。

③主人公が真奈美に熱い恋心を持っていたなら、なぜ真奈美の婚約を傍観していたのか? 幼馴染だから、話す機会なんていつでも作れたのに。

①②③を合理的に説明するストーリーは非常に面白いものとなります。

幼い主人公は、幼い真奈美に純粋な恋心を抱いていた。しかしウブな主人公は告白なんてできない。
そんな主人公は、ある日、ひまわり畑で衝撃的な場面に出くわす。まだ小学六年生の真奈美が、康太と野獣のように交わっていたのだ。
それ以来主人公は女性が怖くなり、大人になっても女性を不潔な動物にしか思えない。
そんな主人公に真奈美からLINEが。
「ちょっと相談したことがあるから、一緒に晩飯を」
高級ホテルの最上階のレストランで真奈美と再会する。
「久しぶりね」
「相談ってなに? 僕は金なんて持ってないけど」
「金なんて、あの野郎からいくらでも踏んだくればいいのよ。ここもあいつの金で払うから」
「なら何を相談したいの?」
「あの野郎は下手くそなのよ」
「なにが?」
「そんなこと言わせないでよ。あいつは何がデカいだけでテクニックがないの」
「はあ?」
「あんたは上手いの?」
「実は、自分は童貞なんだ……」
「あはは! いいじゃない。あたし童貞好きよ。お金出してあげるから、風俗で勉強しなさいよ」
「でも……」
「遠慮はいらないわ。あたしのためと思って、思う存分楽しんできて。あたしの可愛いペット君」
主人公は絶句する。なんて女だ…… 金とSEXにしか興味ないのか。
主人公は憎悪に満たされ、真奈美奴隷化作戦を立てる。
真奈美の奢りで風俗に通い、テクニックを学び、街頭の外国人からゾンビドラッグを手に入れる。真奈美をシャブ漬けにし、康太毒殺計画に着手するのだ。

想像が止まらない。なんて素晴らしい作品なんでしょうか。

かぐつち・マナぱ
182-167-191-131f1.shg1.eonet.ne.jp

>夜の雨様へ

ご感想ありがとうございます。

ご指摘の「子どもの視点」について、確かに「子どもが将来の自分を想像するのは少し大人びすぎる」と感じました。
当時の純粋な息づかいをもう少し丁寧に描いて、未来を予感する言葉を置かなくても“永遠”が伝わるように改稿したいと思います。

貴重なご提案をありがとうございました。作品に息を吹き込むヒントをいただいた気持ちです。

(またこちらに改稿案を置かせていただきますm(__)m)

①少年時代の一節(挿入場所は、かくれんぼで僕がしゃがみ込んで息を整える所)

風がひまわりの葉をゆらす音がした。

その奥から、小さな歌声が聞こえた。

「ぼくらはみんな生きている~生きているから うたうんだ~」

淡々と、まるで誰に聞かせるでもなく、風に吹かれて消えてしまいそうな声で。

──僕は息をひそめて、そっと近づいた。

ひまわりの影がゆらめき、花の間から ちらりと赤いリボンが見えた。

「え……ここにいたの?」
 
まなみがいた。

僕と同じ場所を隠れ場所に選んだらしい。

「ここ、好きなんだ。静かで、だれも知らないと思ってたのに……」

まなみはおとなしい子だった。

いつも静かに好きな歌を口ずさみ、でもちゃんと自分の世界を持っていた。

「……ひまわりって、空の方ばっか向いててずるいね……この歌みたいに」

風が吹いて、歌うことをやめたまなみの髪が揺れた。

「……みつかっちゃうから、こっちにきて」

狭い空間に、まゆみの肩が僕の肩にふれた。

僕はその横顔を見つめた。

(……なんか、まなみって、可愛いな)

そんな気持ちを持つ自分にびっくりした。

風が通るたび、花びらがこすれ、かすかな音がした。

まゆみは笑いながら、小さく口ずさんだ。

「ゆうやけこやけで日がくれて~」 
 
僕は何も言えず、その声の粒が夏の光に溶けていくのを、ただ見つめていた。


②大人になってからの一節に(挿入場所は、僕が真奈美を探す所)

数年ぶりに訪れたその場所は、半分は住宅地になっていた。

もう「僕」と呼べるほどの無邪気さはない。

けれど、奥のほうにはまだ、あの日のままのひまわりたちが立っていた。
 
どこからともなく、かすかな歌声が聞こえた。

「手のひらを太陽に すかしてみれば〜」

あの歌の続きに、足が勝手に動いていた。

ひまわりの影をかきわけ、光の粒の中を進む。

その声は、遠い夏の残響と混じって消えていった。

花の隙間に、かつての夏が見えた気がした。

そこに、大人になったまなみはいた。

(長々と書きました。申し訳ありませんm(__)m)


夜の雨様には丁寧に読み込んでいただき、構成や伏線の部分まで見てくださってとても嬉しく思います。
重ねて、ありがとうございました。(*人^-^*)

かぐつち・マナぱ
182-167-191-131f1.shg1.eonet.ne.jp

>飼い猫ちゃりりん様へ

再び素敵なコメントありがとうございます。
大胆な謎の解釈と独創的な後日談には思わず微笑みました。

ひまわり畑という明るい舞台の中に、影を落とすようなそんな“妖しい光”を描いていただけて、とても嬉しいです。

おっしゃる通り、この作品には”子どもの頃の純粋さ”を表面に出していますが、子どもから大人になるまでのエピソードが欠けており、その裏には”大人になるまでの歪んだ現実”のあわいが流れていますよね。

純粋さは、時に一番危うい。
光の真ん中にこそ、人を狂わせる美しさがある。

描かれなかったまなみや僕に潜む人間的な曖昧な情欲と、言葉にできなかった衝動。
この掌編の根底にあるのは、そんな矛盾を愛おしく抱く感情なのかもしれません。

それらが読む人によって異なる形で“光る”ことこそ、その作品が真に”生きる”ことだと思っています。

磨き様によれば、明るく照らす貴石にもなれば、妖しく輝く魔石にもなる――そんな原石の一面を見つけてくださって、作者冥利に尽きます。

ちなみに私が後日談を書くならば、①ふたり苦労しながらハッピーエンドか、②結局、真奈美は康太の元へ戻る悲哀か、③愛を貫き通して心中ENDですかね~?( *´艸`)←マテ

想像が膨らむ素晴らしいコメント、まことに感謝いたします。
これからもどうぞ、宜しくお願いします♪(≧▽≦)<ありがとうございました!

夜の雨
sp160-249-25-185.nnk02.spmode.ne.jp

再訪です、かぐつち・マナぱさん。

>その代わりに、子供のころのひまわり畑の中でまゆみと一緒に隠れていた息づかいのようなものは、しっかりと描く必要はありますが。これを描いておくと効果てきめんだと思います。いかに場面を印象付けるかということです。<

この意味を具体的にすると、こんな感じです。

純度の高い文学作品の方向で描く。
御作の基本的な設定は文学作品に向いているのではないかと思いました。

ひまわり畑の一角に隠れようと主人公が

>たどり着いたのは、ひまわりの中にぽっかり空いた小さな空き地。
>太陽の光が差し込んで、少しだけ涼しかった。
>しゃがみ込んで息を整えると、気配に気づいた。

この場面ですが、まゆみがすでにひまわりの陰に隠れて小声で歌を唄っているわけですが、主人公は背後からまゆみを見るわけで、彼女の細いうなじに一筋ひかる汗のしずく。ぼくは、それをじっと見た。ふっくらとした頬と目元の長いまつげ。なぜかドキドキしていると。まゆみは僕に気が付いてふりむくと目をしばたたかせた。
「〇〇ちゃん、いつからいたの?」ちょっと怖い顔でにらまれたが、ぼくがおどおどしているとまゆみの瞳がひときわ大きくなって笑顔になった。
「こうたに見つからんかってよかった。鬼に見つかると食べられちゃうもんね」
ぼくはまゆみの動く唇を見詰めながら、なんどもうなずいた。

ちなみにこれは、僕がまゆみが歌っている歌に気が付いて、背後からじっと彼女をみているという場面です。
歌は、「かごめかごめ」です。
「かごめかごめ」は、日本の伝統的なわらべうたで検索すればわかりますが、解釈の仕方により「あやし気な世界」が広がります。

このわらべうたの「かごめかごめ」と主人公たちの置かれた世界がなんであるのか、というところが、文学的な味わいになるのではと思った次第です。
つまり子供の中にも性的なにおいを少々表現しておく。
主人公の「ぼく」が「まゆみ」に幼いながらもわずかに女を感じるところとか。まゆみにしても、「鬼」に男のにおいを感じているとか。
そこに来て、主人公へは好感を持っているので、その態度が背後から主人公に見つめられていたのを知ったときの気恥ずかしさから、つい、睨んでしまうとか。
そういった子供時代のちょっとした世界が時間を隔てて大人になって、記憶をたどってあのときのひまわり畑に来てみれば「かごめかごめ」が風に乗り聞こえてきたとか。
そして歌っている主をさがしていると「うしろのしょうめん、だ~れだ!」と、主人公は背後から目隠しされた。
つまりまゆみが背後から主人公へ目隠しをした、という流れです。

御作の世界を文学的な味付け(演出)にしてみましたが、背景部分は御作そのままで十分に面白いので、少し掘り下げるだけで、奥行きが出るのではないかと思い、提案させていただきました。

かぐつち・マナぱ
182-167-191-131f1.shg1.eonet.ne.jp

>夜の雨様へ

この度も丁寧で奥深いアドバイスありがとうございます。
この作品の核である、感情の余韻や空気の動きを”生と死、純粋さと汚れのはざま”として表現することで、より文学的な深みを増すことができるというご提案ですね。

まなみが口ずさむ歌を『かごめかごめ』として候補にあげられたのも、それが懐かしさと同時に、子どもだけの世界の中に潜む、どこか底知れぬ不穏さがありますね。
自分でもいくつか歌の候補を考えてみましたが、この考えには至りませんでした。ありがとうございます。

(またまたこちらに改稿案を置かせていただきますm(__)m)

①少年時代の一節(挿入場所は、かくれんぼで僕がしゃがみ込んで息を整える所)

「かごめ、かごめ…かごのなかの鳥は……」

最初はその声がどこから聞こえるのか、わからなかった。
僕は花の間を抜け、音のする方へ歩いた。

ひまわりの茎をすり抜けるたび、青く濃い草の匂いがした。

「いついつ出やる…夜明けの晩に…」

急に開けた黄色い壁の向こうに、白いうなじが見えた。
細い首すじを伝う汗が一筋、キラキラと光っている。

土の湿り気と混じって、風が止まるとほのかに石けんのような甘い匂いが漂ってきた。

後ろ姿のまなみを間近から見つめる僕の胸が、痛いように高鳴った。

「…鶴と亀がであった・・・」

いつも何気なく聞いている歌なのに、どこか不吉で、でも優しい声だった。

彼女が振り返ったのは、そのときだった。

「あっ・・・いつからいたの?」

まなみは少しだけ目を細めて僕を睨み、けれど、すぐにふっくらした頬をあげて笑った。

「こうたに見つからんかってよかった…見つかったら、すぐつかまっちゃうから」

陽を浴びた黒い瞳が宝石のように僕を見つめ、微笑みを浮かべるピンクの唇を僕は見つめていた。

(長々と書きました。申し訳ありませんm(__)m)

こんな感じで、子どもの無垢と芽生えの間にある空気を生かしていきたいと思います。
素晴らしい示唆と温かいお言葉、本当にありがとうございました!(*人´▽`*)

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

テクニカルサポート

3,000字以内