動くな点P!
「ピーンポーンパーンポーン」
チャイムが鳴った。
席に座って机の中から用具一式を取り出す。
すると、係の友達が号令をかける。
『起立!礼。』
『着席。』
そうして、授業が進んでいく。
今受けているのは数学。
内容は、一次関数。
先生が何かを話しているが、僕は全く理解できていない。
y=ax +b?
なにそれ美味しいの?
そんなこんなで授業が進んでいく。
「分かんねー」
そう呟くと、隣の席の賢い奴が「どうしたの?」と聞いてくる。
少しムカつきながら質問する。
「まず、このy=ax+bってなに?」
「あっ、そこから…」
「なんか悪い?」
「い、いやいや。」
「あっ、教えないと。ここはこうでね…」
ノートにペンを走らせながら説明を始める。
「この式 y = ax + b っていうのは、一次関数の基本的な式のことでね、グラフにすると直線になるんだよ」
「直線ねえ……」
「a は“傾き”っていって、線の角度みたいなもの。b は“切片”っていって、y軸と交わる点の高さのこと」
「ふーん……傾き? 切片? ちょっとカッコつけてない? なんだよ切片って」
「そういう名前なんだからしょうがないじゃん……」
俺は正直、まだピンと来てない。
しかし、ここまで説明してもらった以上全部聞かないわけにはいかない。
「まず、aに2を入れて、bに1を入れてみようか。」
「そしたら、いまさっきの式はどうなる?」
「どうなるでしょう!」
「質問を質問で返すようなことしないでよ…」
そいつが、困っている顔をしているのを心の底でクスッと笑って、答える。
「多分…y=2x+1?」
「おお!正解。」
「で、これをグラフに表すとbが1の時にaが2だろ?」
「つまり、bが1の時のaの数字を見ろと?」
「そーそ。分かってきたねー。」
「基礎は、分かったみたいだから次は、今やってる点p教えるね。」
理解しようとして脳がキャパオーバーしてる時に、さらに情報を入れようとしてくる賢い奴。
「し、死んでしまう!」
「まだ死ぬのは早いって。ここからが本番だから!」
「お前の中の“本番”の定義、たぶん間違ってる。」
「まあまあ、いいから聞けって。点Pっていうのはね、四角形とか三角形の辺?の上を動く点なんだ。」
「何で動くんだよ。『動くな点P!』」
「そんなこと言ったって、x の数字が変わると y の数字も変わるでしょ?だから点Pも、それに合わせて場所を変えないといけないんだよ。」
「それに、動かないと点pじゃあなくなっちゃうよ。」
「……つまり、xが勝手に変わったら、Pも勝手に動くのか。」
「そう。」
「じゃあ、xが変わらければ良いじゃん。」
「うーん、それじゃ一次関数の意味がなくなっちゃうんだよなあ。」
「どうしてよ。」
「xって、時間とか距離とか、いろんな“変わるもの”の代わりなんだよ。点 pが止まるってことはxが止まるってこと。大きく言ったら世界が止まるってことかもしれないね。」
「なにその哲学みたいな言い方……こわ。」
「でもさ、点Pが動くって、ちょっとロマンあると思わない?」
「マロン……点Pに……?」
「うん。マロンじゃないけど点Pは、数式に従ってキッチリ動くんだよ。自由に見えて、ちゃんとルールの中で生きてる。」
「まるで、人間みたいだよな。」
「……お、それいいセリフじゃん。パクろ。」
「やめろ!点Pで名言作るな!」
二人で笑い合うと先生が話しかけてきた。
「お前らの会話、たぶん数学史に残らんけど、ノートにはちゃんと残しとけよ」
返事をしてノートを取り始める。
すると、あいつが見つめてきた。
「動くな点P!迷言だね。」
俺はやっと理解し、赤面した。
「お願いだから定着すんなよ、その言葉……」
変な迷言作らなければ良かったと後悔した。
執筆の狙い
とある動画で見て、過去の思い出が蘇ってきたので書いてみました。