菜種博士シリーズ
菜種博士奮戦記 ナッタネオイル
ここは某県、腐乱巣(フランス)村という不思議な村があった。
なんでも初代村長がフランスに視察に行った時、そのフランスの美しい女性の魅力に取りつかれ、すっかり気に入りフランス村と改名したらしい。だが当時、地名はカタカナという訳には行かず。村一番の学者に頼んで当て字を選んだ結果、腐乱巣として登録した。だが村人は腐乱とはなんじゃと怒り学者を追放したらしいが登録は取り消されず現在に至る。
ここは村唯一の博士である研究所なのだが何故か朝から五月蠅い。
菜種の研究に取り組んで来て村人は菜種(なたね)博士と親しまれている。本名は園道油久(そのみち・ゆく)五十五歳が雄叫びを上げた。
「わぉ~ついに、ついに完成したぞ。ワッハハ」
それを聞いた助手であり娘の園道郁代(そのみち・いくよ)は慌てて駆け込んで来た。
「父ちゃん。本当に出来たのけっ?」
「ばか者! 研究所では博士と呼べと言っているだろうが」
「何を今更かっこを付けているのよ。研究費用だって娘の私が稼ぎ出しているのに。父ちゃんが六年前に発明した馬豚糞ガス装置(バットン)で村民栄誉賞の副賞として村が毎年出してくれた研究費だって、既に打ち切られているでしょうが」
「おお、そうじゃたな。馬豚糞ガス装置もじゃ、この村も近代化して近頃はすっかり売れなくなったしなぁ」
「仕方ないでしょ。村中が馬糞臭いと言われたもの。それより父ちゃん。新開発のナッタネが大量生産の見込みが立ったと言うこと?」
「そうだよ。公害の出ない新しい油だ。菜種と竹の子の成分をマレーシアから取り寄せたゴムの木に移植させたのが成功したのじゃ。竹の子は成長が早いから沢山の油が取れるのじゃ。それでも物足りないので新しくスギ風媒花を混ぜたら、これが見事な油が出来たのじゃよ」
「父ちゃん……なに言っているんだかサッパリ分かんないよ」
そこで菜種博士の言う事には。菜種油でディーゼルエンジンは回せるオイルはあったがガソリンエンジンに匹敵する油までは行かなかった。何せ手間が掛かる工程で、どこの農家でも本格的に菜種を生産するものはいなかった。そこで園道油久博士がゴムの木に、菜種の花を咲かせることに成功した。つまり移植したのだが、しかし世間からはゴムの木に菜種の花を咲かせるとは邪道だと顰蹙を買った。それでも竹の子の成分を混ぜたことで成長が早くなった。ゴムの木の切り口にホースを充てると自然と良質の油が出てくるという手間要らずの画期的な発明だったが、今ひとつ油の成分が足りない。そこでスギ風媒花を混合したら燃費が良くなったらしい。
「なに!? やっぱり分からんって。何を言っているスギの木から風媒花を取ったら花粉は減るし大いに喜ばれる発明だぞ、まぁとにかく出来たのじゃ、では新発明の油に命名はナッタネとする」
「本当かい? 父ちゃん。それなら村長に見てもらおうか」
「おお~そうだな。旨く行けば村の活性化と村の発展に繋がるし」
娘の園道郁代は、半信半疑の村長を連れて来た。
「ユクさんよ。あれから六年だぞ。完成だ、完成だってロクな物ができんじゃないか。もうこれ以上の研究費用は出せんぞ」
「村長、今度は間違いないって。そうだ。村長の息子が害車(外車)を持っているべぇあれでテストしてみよう」
「ガイシャ? 害車じゃなく外車だろうが……」
「いやいや、公害を撒き散らす害車と村のみんなが言っとるがな」
そして嫌がる村長の息子、悟(さとる)を郁代は脅かして連れて来た。
「郁代、なんでオラの一千万もするランボロボロギーニを実験に使うんだ」
「なに断るって言うのけ? それなら私に夜這いかけたのを村中に……」
「わぁ、わっ分かったよ。でもお前の父ちゃんの実験、本当に大丈夫かぁ」
「大丈夫よ。苦節六年の成果を信じてよ。これが成功すれば公害のない燃料は地球に優しく、まさに世紀の大発明ノーベル賞だって夢じゃないだ」
そして実験が開始された。
「俺の車はハイオクだぜ。菜種油でエンジンが壊れないかぁ……」
「菜種油じゃなくナッタネって言うの。何度教えたら分るの。じぁ~油を吸入するぞ。どうだ、エンジンを掛けてみろ」
ブルンブルンギャンギャンガア~~~けたたましいエンジンの音が田園一帯に響き渡った。グワ~~~ンと、ランボロボロギーニが疾走していった。
まさに大成功だ。何しろ安くて燃費がよくガソリンに比べても値段は半分以下だ。
それを聞いて村人達が我も我もとナッタネを使った。
それから一ケ月、園道油久博士は二度目の村民栄誉賞を受賞する事になっていたが、何故か村の診療所は花粉症の患者で溢れていたと言う。
「まったくユクさんの発明は危なくてしょうがない。前に作ったバットンも同じように成功させたが村中臭くて酷い目にあったのに」
「だけどナッタネは大成功じゃないか、大量生産したら大儲けじゃ」
「何を言うとる村ばかりか日本国中、季節に関係なく花粉症にさせるきか。公害をまき散らしたとして逮捕されるぞ」
怒った村長は再審査するまで、村民栄誉賞を保留にした。
ハッ~~ハックショ~~~ン
「父ちゃん、風邪引いたの?」
「いや、どうやら花粉症になったらしい」
「え~いままで花粉症になった事なかったのに……やっぱりあの新開発のナッタネが原因?」
「ああ、スギ風媒花を原料にしたのが間違いだった」
怒った村長は村民栄誉賞を取り消して、研究費用もご破算となった。
「ちくしょう、こうなったら花粉症の薬を開発してやるぞ」
なぜか村民栄誉賞に拘る博士は、一向に懲りないようである。
了
菜種博士シリーズ
ラメちゃん奮闘記
♯ ゲストの登場人物紹介
出多羅芽(でた ラメ)二十五歳
星飛雄馬の父 星一徹の妹にあたる星徹子は元アメリカ大統領の弟と結婚してアメリカ名 ナターシャ・クリキントンという。巨人軍の影のオーナーでもある。
星飛雄馬の叔母でナターシャはアメリかで大富豪になり、兄一徹の頼みで、秘書を務めるのが出多羅芽に新薬が出来たから取りに行くように命じられた。ラメ真田は忍者の子孫にあたる。車が好きだが運転は下手糞なのが欠点だが武術は一流
今回特別ゲストとして菜種博士シリーズに登場。
尚、星飛雄馬はアメリカに渡りアメリカ人と結婚したが落雷により死亡、その忘れ形見が星ピューマで、後に巨人軍に入団。だがラメと星ピューマは犬猿の仲。(ここでは関係ない)
静かな田園地帯に、あの幻の名車ランボロボロギーニが疾走して来た。
百キロ近いスピードだ。その音を聴き、園道郁代は気分を憤慨した。
「また村長のとこのバカ息子が、害車(外車)を乗り回して五月蝿いわね」
腐乱巣村の人々はランボロボロギーニの事をみんな外車ではなく害車と呼んでいた。村の害以外の何者でもなかったからだ。
と、その害車(外車)が園道研究所の前で急停止した。が、ゴツンと何処かにぶつかった。
ドライバーが車から出て来た。颯爽と現れたが奇妙な格好をした美しい娘が現れた。
どうやら村長のバカ息子とは違うようだ。同型のランボロボロギーニだが名前の通り、あっちもこっちも傷だらけだった。しかもまだ新しいのに何故かボロボロの車に変わっていた。
「あの~~あんたダレ? 運転ヘタクソだねぇ」
「私? 人はラメと呼んでいますが。でっ下手だって? 別にいいでしょ」
「あのねぇ……人はどう呼ぼうが。アンタの本名を聞いているの」
「フルネームは……出多・羅芽」
「ハッハハふざけんな!! デタラメなんて冗談は止めてよ」
「だから言いたくなかったのよ。通称ラメでいいの。それを言うならこの村の名前だって腐乱の巣じゃないの。それが村の入り口にはなんと(ようこそフランスへ)と書かれているんじゃない」
「仕方がないちゃあ昔から、そう言う名前なのだから」
そこに博士の園道油久〔そのみちゆく〕五十五歳が研究所から出て来た。
「娘さんワシに何か用かね」
「ええ私、ナターシャ・クリキントンの秘書兼ボディーガードを務めますラメと申します。お願いしていた薬ですが完成したと聞き伺いました」
「おお、星一徹さんの妹で星徹子さん……じゃなくナターシャさん(星飛雄馬の叔母)。フォホッホッあれ? この車どこかで見たが」
「父ちゃん、それ村長とこのバカ息子と同じ型の車だ」
「菜種油を研究してこの道六十年ついに完成した視力倍増薬がな、それだけじゃない動体視力が凄いぞ。これは野球に応用したら凄いぞ。名付けて〔ミエール〕じゃ」
「父ちゃん! また嘘ばっかっし。自分の年より長く研究続けられる訳がないちゃ」
「ふ~ん菜種からそんなのが出来るんですか?」
「ああワシに掛かったら菜種で合金だってなんだって夢ではない」
「それよりラメちゃん……あんたさっき秘書兼ボディーガードと言ったっけ? 普通ボディーガードって屈強なレスラーみたいな人じゃない。そのか細い体で務まるの?」
どうやら郁代は出多羅芽が気に入らない様子で敵対心をあらわにした。
都会的で可愛い顔をして高級車を乗り回し、ママチャリとは運伝の差だ。
「あらあ~? 疑っているのねぇ。いいわ。あんたでも村でも一番強い人でも呼んでらっしゃいよ。試してみる?」
「おいおい育代、よしなさい。相手はお得意さんじゃ」
「いやよ! 若いのにランボロボロギーニに乗っているなんて生意気よ。父ちゃんの稼ぎが悪いから博士の助手とは名ばかり、車だと与えられたのはママチャリじゃないの、それも捨ててあった物を修理したボロ自転車じゃないのよ」
「まぁ許せ、今度の研究が成功したら、新車の自転車を買ってやる」
育代とラメは共に二十五才と聞き、育代は同じ年で雲泥の差に怒った。
完全にキレてしまった育代は、村の若い衆を集めて来た。
娘の少ない村では若い男たちの憧れの的だった育代。それ故に希少価値の高い郁代に味方をしなくてはならない。そうしないと一生嫁にありつけない腐乱巣村の若者達だった。ああ涙々……
「博士、丁度いいわ。その薬の効き目を試しチャンスだから飲ませて」
「おーいいよ。飲めばすぐに効き目が現れるミエールじゃ。頑張ってな」
「父ちゃん、あんたどっちの味方なの」
「勿論、ラメちゃんじゃよ。薬が成功すればまた村民栄誉賞ものじゃ」
「裏切り者~~それでも親かぁ。そんなに村民栄誉賞が欲しいのかぁもう頭にきたぁ、みんなぁこの生意気な小娘を懲らしめてやりなさい!」
「水戸黄門のドラマ見過ぎじゃないの。それに私、悪人じゃないからね」
村の若者がラメを取り囲んだ。力だけが自慢の若者達だ。
「あんた等に恨みはないが、チョコチョコっと懲らしめてやるぞ」
「いいわ、掛かってらっしゃい……う~~効いて来た。動体視力が特に効くみたい。まるで相手の動きがスローモーションのような動きにしか見えないわ」
「何をごちゃごちゃ言っている。覚悟せいや~~」
アチョ~~アッタタタタタタのタァ~
だが彼等はラメに触る事さえ出来なかった。次々と倒されていった。どうやらラメは薬の効用だけじゃないようだ。全員グロッキーとなって勝負はあっと云う間についてしまった。
「そうそう私、真田忍者の子孫なの。家系は代々に渡り忍びの術を受け継がないといけない規則があるの。忍者に勝てると思っているの」
郁代はガックリと肩を落とした。やっぱり腐乱巣村から出た事のない育代は世間の広さを思い知らされた。それに忍者が存在するとは?
「博士! うん、これはすごいわ。ナターシャさんもきっと喜ぶわ」
「そうだろうよ。ドーベル賞を貰いたいくらいじゃ。それで何に使うのじゃ」
「うん? ノーベル賞ね。勿論野球に使うのよ。止まって見える球なら全部ヒットかホームラン打てるわよ。じゃあ帰るわね」
出多ラメはランボロボロギーニに乗って、あぜ道を百キロ以上の猛スピードで疾走していた。だが間もなく田んぼに、のめり込んだ。そう、ラメちゃんの弱点はスピード狂で運転がヘタクソな事だった。それを見た育代は大喜びした。だが……村の若者達が一斉に駆け出した。
「ラメちゃ~~ん。いま助けに行くよ~ラメちゃ~ん」
いつのまにか村の若者は、ラメちゃんのファンになっていた。悔しがった育代は
「なんて出鱈目な女なの。グヤジィ~~~~~~~~」
尚、菜種博士が発明したミエールを巨人の選手が使用したところ、見えすぎて球が透き通ってまったく役に立たなかったとか。それならば、と女の子を覗き見た所これは凄い¡ 洋服を通り越し更には下着まで通り過ぎて骨しか見えなかったと。当然不採用となったらしい。
よって菜種博士の作ったミエールは失敗した。
了
執筆の狙い
今回は笑って頂く為に作りました。
掌編2作です。
尚、内容は笑う為に書いたために酷いかも知れません。
まぁ作者の自己満足ですが、宜しくお願い致します