誘怪
目を開けると、そこに凪の姿はなかった。昨日も探した寝室や中庭などを何回も探しても、やはり見つかることはなかった。疲れて倒れ込んだとき、凪の布団の上に一つの紙切れが置いてあった…
「誘怪」
「凪〜!ご飯できたから早く起きて!」もうすぐ小学生になる娘を私、安藤優子がご飯を作り終えて起こしに行く。凪は朝に弱いためなかなか起きることがない。「早く起きなさい!保育園遅刻しちゃうよ!」「んぅ〜、あとちょっと…」「もぉ〜いいからご飯食べちゃって!!」将来どんな大人になるのやら。そんな事を考えながら、私は娘を着替えさせて保育園へ送った。家に着くと昨日面倒くさくて洗ってない洗濯物を洗濯機に放り込みながら今日の予定を考える。ふと、凪のズボンのポケットに赤色の何かが入っていて、取り出してみるとそれは紙のような物だった。綺麗に折りたたまれており、中を開いて見ても何か書いてある訳でもなく不思議に思ったがその時はあまり気にすることはなかった。洗濯も終わり少し仮眠をとろうとリビングで横になった。
目が覚めて時計を見てみると、針はすでに午後4時を指していた。保育園の終わりの時間だ。「いけない!お迎えいかなきゃ!」私は急いで家を出て車を走らせた。坂道を越え、保育園が見えてきた。「凪大丈夫かなぁ〜?悪いことしちゃったなぁ〜」車を駐車場に止め、急いで凪のところに向かう。寂しいがってないかと心配しながら園内に行くと保育士さんとお話している凪の姿があった。笑い合いながら話している姿を見て安堵しつつ、保育士さんに話しかけた。「ごめんね〜!遅くなっちゃったね!!」「だいじょうぶ!せんせいとしょうがっこうのことたくさんおなししてたから!」「そうなの?よかったわね!」「うん!」「どうもありがとうございました!」「いえいえ!お気をつけて帰ってくださいね」保育士さんに見送られながら車にもどる。家に向かっている途中で、今朝の赤い紙切れを思い出して「凪ー?」「なに?」私はカバンから赤い紙切れを取り出す。「この紙って何?」気になった事を凪に聞いてみた。すると「あ〜、それはねきょうこうえんであそんでたときにね、黒い人からもらったの!」「まさか知らない人からもらったの?」「そうだけど…」「ダメじゃない!何があるかわからないんだから知らない人から話しかけられても何かもらったりしちゃダメだからね!」「わかった…」知らない人から貰ったものなんて!あとで捨てておこう。家に着きすぐにゴミ箱の中に捨てた。
夕飯の支度をして凪を呼ぶ。さっき少しおこりすぎたせいか、しゅんとしてご飯を食べようとしない。「ごめんね凪。お母さん凪のこと心配していったことだから、でもねちょっときつく言い過ぎたね…でも今日は特別にアイス二本食べていいからさ」 「本当に!?」「うん!いいよ〜!」「やったー!!」元気になってくれてよかった。そうして時間が経っていき、いつのまにか夜の9時をまわっていた。お風呂から上がり、リビングの方へ向かった。しかし、リビングでアイスをほうばっているであろう凪が、どこにもいなかった。眠くて先に寝たのだろうと思い、寝室を見てみてもいない。中庭にもトイレにも押入れにもどこにもいない。「凪〜!!!!!いるなら返事して!!!」叫んでも返事はなく、忽然と姿を消してしまった。1時間たったところで警察に連絡して一緒に探してもらった。しかし見つかることなく気づけば深夜3時。捜索の疲れで倒れるように寝てしまった。
目を開けると、やはりそこに凪の姿はなかった。昨日も探した寝室や中庭などを何回も探しても、やはり見つかることはなかった。悲しみと疲れで倒れ込んだとき、凪の布団の上に何かが置いてあった。昨日捨てたはずの、赤い紙切れだった。
続
執筆の狙い
この小説を読んで頂きありがとうございました。
ずっとミステリーやホラーの短編小説を書いてみたくて、書かせていただきました。この小説では日常に潜む怪異、そして子供の大人じゃ知り得ないものを表現したいと考えていました。ぜひ、アドバイスや具体的な感想をお願い致します🙇♂️意見を参考に続編も書きたいと考えております。