作家でごはん!鍛練場
チミチミ

海沿いの夫婦

 ある港街の海沿いの家に、夫婦が二人きりで住んでいた。夫は初老に差し掛かるくらいの歳で、妻はそれより二三歳下の中年であった。夫婦がこの街に越してきたのは四五年ほど前のことで、それもただ、海辺の景色が二人にとって似つかわしいように感じたというような、曖昧で感覚的な理由からだった。有給休暇をとって土日と合わせて三日で敢行した南九州の旅行の際、この辺りの風景をバスの窓越しに見たのが、そのきっかけである。
「ねぇ、見てよ」と妻がそのとき囁いた。
「ここ凄くきれいじゃない?」
「たしかに。老後はこんな場所に移り住むのもいいね」
そうして再びこの街に舞い戻り、海沿いの少し古びた一軒家を、二人は自分たちの終の棲家とした。
 妻は移り住む少し前から、心臓が弱っていた。夫も定年を迎える一年前に、肺癌を宣告されていた。その時期くらいから、二人は未来について考えることをやめた。死と隣り合わせの老化は二人の心を無邪気にした。深く思い悩むこともなく、退職金を使ってこの寂れた木造の空き家を購入した。そうして、これまでの人間関係も意識的に断ち切ることはなかったが、それは徐々に萎縮していき、夫婦はこの街で、この家で、本当に二人きりになった。
 夫婦はよく魚釣りをし、二三匹釣れたときはそのまま自宅に持ち帰って、夜ご飯にあさりのパスタと合わせてイタリアン風味の海鮮料理を拵えた。腕前は二人とも悪くはなかった。時には冒険をして、旅先で買った珍しい香辛料を使ったりもした。夫婦は木作りの素朴な形をしたテーブルを挟んで向かいあって食べる。料理がうまくいってもいかなくても、その時間は一日のうちで一番会話が弾むときである。食後に紅茶を飲んで、気分も悪くはないときは、そのまま夜の散歩に出る。二人は手を繋いで夜の砂浜を裸足で歩いたりした。ときどきは妻の趣味のハンドメイド用に、不思議な形をした貝殻を集めたりもした。家に帰って寝支度をした後は、それぞれシャワーを浴びてパジャマに着替え、同じベッドで眠りについた。
 しかし、夜はいつもすやすやと眠れるわけではなかった。妻が胸を抑えてうなされ続けるときもあれば、夫の咳が止まらないときもあった。最近は、さらにそういう日が多くなった。一人が患えば二人ともその夜を奪われてしまうことにはなるが、お互いに何があるか分からない年齢でもあり、その習慣は変わらなかった。何もないときは普通の夫婦のように寄り添いあって寝た。

 そういう何もない夜が明けたある日の朝、最初に目を覚ましたのは妻の方であった。
 妻は髪を結いながら、階段を降りて洗面台の方に向かった。夫はその音で目を覚ましたが、二三度咳込みながら再び寝返りを打って目を閉じた。だが窓から差し込む朝陽がその睡眠を許さなかった。夫は仰向けになって窓の方を見た。雲一つない快晴であった。時間が止まったかのように静かな朝だった。
 妻の方は夫が階段を降りてくる前に、朝の支度の大半を片付けるつもりでいた。洗顔と歯磨きの後に化粧をし、テーブルに皿を出して、トースターで焼いたパンを食べるつもりでいた。そのあと夫が起きてくるまで、リビングから見える海辺の方に体を向け、ゆっくりコーヒーを飲みながら読書をするつもりでいた。しかし洗面台で化粧をしている途中で、夫の姿が鏡越しに現れた。いつもより目が大きく開き、血色の良い表情の夫の顔に、不気味な感じさえ覚えた。今日は記念日とかの類の日ではなかったが、二人にとって何か大切なことが起きうることを、妻は瞬間的に予感した。悪いことではない。何か不思議なことか起きる気がして、夫に尋ねた。
「おはよう。昨日はよく寝れた?」
「おはよう。よく寝れたよ」
夫は洗面台の前に割って入り、軽く洗顔を済ませた後、妻の方を振り返っていった。
「今日はいい天気だよ。雲一つ無いんだ」
「そう。ちょっとどいて」
夫は洗面台から下がった後、続けて言った。
「何かいいことが起きる気がするよ」
「いいことって?」
「何だろう、でもそんな気がする」
夫は歯を磨き始めた。妻はアイラインを整えていた。二人は無言になった。カラスの鳴き声が遠くから響いてきた。
 妻の化粧が終わったとき、夫は洗面台からどこかの部屋に去っていた。廊下からリビングに出たときに夫の姿が見えず、妻は一瞬立ち止まった。そのとき後ろから声が聞こえた。
 「これ、プレゼント」
夫は笑みを浮かべ、両手で首飾りを抱えながら言った。それは先月、妻が完成させたハンドメイドの、貝殻を幾重にも通してできたものだった。
「私のじゃない」
「うん。でも売るのはよそう。君が一番似合うよ」
「いいの?」
「いいんじゃないかな」
夫は妻の首にそれをかけた。妻は微笑んだ。二人はそのままキッチンに向かい、トースターにパンをセットした後、夫はスクランブルエッグを作り、妻はトースターをコーヒーを淹れた。朝食はいつもより大目になった。二人はゆっくりそれを食べた。

 朝食後に妻は、家でごろごろする、と夫に告げた。夫は一人で釣りに出かけた。妻も一人きりの時間を過ごした。妻は時折、窓から海の方を眺めながら襟元の首飾りを触って、夫の帰宅を待った。本のページを開く気さえ起きなかった。雲一つない青空と静かに波打つ海が、ただ目の前に広がっていた。
 夫が釣りから帰宅したとき、陽はすでに落ちかけていた。夫は釣れたアジを抱えてキッチンに入ると、リビングで泣き崩れている妻の姿に会った。夫は妻に寄り添い、背中をさすった。
「どうしたの?」
「なんでもないの」
「言ってみて」
「昔飼っていた犬のことを思い出して。犬が死んだとき、私は何もしてあげられなかった」
「君のせいじゃないよ」
「私はね、一瞬だけその犬を機械のように『直せる』と思ったの。一瞬だけ。でも、そうはいかなかった。その身体は微動だにせずに、徐々にこの世界から去っていった。それがすごく悲しい」
夫にはまだこの状況がうまく飲み込めなかった。妻に犬のことを思い出させたものが何なのか分からなかったからだ。しかし妻を落ち着かせながら、ふと窓の方を見上げると、そこには一面に広がる平坦な、青い海があった。
 夜ご飯はよくやるように、あさりのパスタと釣れたアジの煮付けを作った。その頃にはもう、妻は普段の平静さを取り戻していた。しかしそれを食べるとき、二人はいつもと異なり終始無言だった。気まずいわけではなく、むしろ二人とも会話が不用なほど安心しているような顔つきで夜ご飯を食べた。夜ご飯を食べ終わった後はいつも通り、食器を片付け、お湯を沸かし、また同じ席に戻って紅茶を飲んだ。しばらくして夫が口を開いた。
「海に行こうか」
妻は何も言わずに頷いた。二人は窓から夜の海を見た。闇の中に、三日月だけがあった。
 二人は窓から外に出て、縁側で靴を脱ぎ、手を繋いで裸足で砂浜に入っていった。砂は暖かかった。適当なところまで歩いていって、渚の近くで二人は並んで腰を下ろした。目が慣れると少しずつ、月の明かりに照らされた夜の海辺の景色がはっきりとした絵になってきた。二人はそれを眺めながら、さざ波の音に耳を澄ましていた。
「さっきはごめんなさい」
「何が?」
「取り乱してしまって」
「大丈夫だよ」
「昼寝してるときに夢を見たの。犬の思い出の」
「そうだったんだね」
夫は、ふと妻の胸元にある首飾りに目を遣った。海から来た貝殻で作ったものだけに、何かそういう情感を呼び寄せる効果があったのかもしれない。
「夢って不思議ね。あれだけ泣いたけど、今すごい幸せな気分よ」
夫はしばらく無言のままでいた。波が何度か打ち寄せては引いてを繰り返した後、夫は言った。
「僕も昔、不思議な夢を見たことがある」
「どんな?」

 夫は話し始めた。
「村とも言えないほど小さな集落に僕はいた。その集落はここみたいな砂浜の上にあって、切り立った崖の下にあり、どの家も潮風と日光で寂れ黒ずんでいた。
 夢の中では、僕にはその集落に住む友達がいて、その人の家にお邪魔した。そしたら家の中は腰のあたりまで浸水していて、僕は凄く驚いたんだ。でも友達は慣れているのか驚かない。家の中の海水に浮かぶソファで寝そべっていた。周囲を見渡すと彼の家族もそんな感じでベッドの上やテーブルの上でぐったりしている。
 慌てて僕は家の外に出た。見ると集落全体が海水に浸っていた。僕は集落の住人に、この状態が気にならないのか聞いた。その人は気にならないと答えた。私たち全てが、じき海にさらわれていくんだと言っていたよ。僕はなんだか不安になった。
 ふと崖の方を見上げると、その上に石造りの丈夫そうな家が一つだけ、ぽつんと立っていることに気づいた。あれは何だ、と住人に聞いた。住人はこんな風に親切に答えてくれた。
『あの家の住人は賢いですよ。海に流されないように、崖の上で、土台からしっかり家を作っているんです。私たちとは違う。アブラハムとその家族の家です』
そこで僕は目が覚めた」
夫の話が終わった。妻は何も言わなかった。さざ波の音が繰り返し聞こえるのみであった。
「ごめん、少し自分の話に夢中になってしまっていたような気がする」
「ううん、大丈夫。面白かった」
そうして、会話は途切れた。二人は砂浜に座り込み、さざ波の音に耳を澄ましながら、海面に漂う三日月の像を眺めていた。しばらくして妻が尋ねた。
「この月も、波にさらわれていくの?」
夫は言った。
「そうかもね」
二人は互いを見つめ合った。瞳の奥から、自分の顔がぼんやりと浮かんでいた。

 愛している

 言葉は声になり、声はさざ波の音と混じりあい、露となって去っていった。
 しばらくして、二人は手を取りあって地面から立ち上がった。夜の海風を十分に肌が感じ取り終わった後、夫婦は儀式を執り行ない、その場から立ち去った。あとには雲一つない空に浮かぶ三日月と、その明かりに照らされながら海面を漂う、貝殻の首飾りのみが残った。

海沿いの夫婦

執筆の狙い

作者 チミチミ
fs76eed591.tkyc303.ap.nuro.jp

最近抑鬱状態が続いていて、ふと南九州の方に旅行に出かけた際に、海沿いに住む夫婦の幻影が頭から離れなくなり、書きました。

とりあえず自己表現してみることが挑戦だったので、それ以上の意気込みはなく、書くだけ書いてみることにしました。

コメント

神楽堂
p3339011-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp

読ませていただきました。
とてもよかったです。

読み始める前に、執筆の狙いを見てみたのですが

>海沿いに住む夫婦の幻影が頭から離れなくなり、

とあったので、本文の方も、誰かがこの夫婦を見ているという設定なのかと思って読み始めてしまいました^^;
この物語は三人称視点だったのですね^^;


ほぼすべての文が「過去形」になっているため、ラストで現在の視点になるのかと思いきや、そうでもなかったですね。
すべて現在形にして、リアルタイムで進行する方法もありますし、
ところどころ生き生きとした表現にするために、現在形と過去形を織り交ぜて書く方法もありますし。
この作品のようにオール過去形で書くのもありだとは思いますが、どれがいいでしょうかね。
私の感覚で言わせてもらえば、オール過去形は退屈に感じてしまいます^^;

最後、貝殻の首飾りで物語が終わり、印象深くてよいのですが、
私だったら、の話で恐縮なのですけど、
その貝殻の首飾りを、物語の前半、あるいは冒頭で伏線として出しておきます。

情景が想像されるステキな作品でした。
読ませていただきありがとうございました。

チミチミ
om126167126069.29.openmobile.ne.jp

神楽堂さん ありがとうございます

過去形の文ばっかりだったのはご指摘されて初めて気づきました。たしかに現在形の文章もところどころ混ぜてみた方がよかったかもしれません。

貝殻の首飾りもおっしゃる通り、冒頭で何かしら伏線を貼っておくべきでした。もう少しプロットを練り直してもよかったですね。

拙作をお読みいただき、またこのようにご評価していただき、本当にありがとうございます。

クレヨン
softbank060106207129.bbtec.net

 チミチミさん、拝読しました。

 人はどうあっても個人であり、結局独りで生きていかなければならないというのはあるのでしょうが、この夫婦のように支えあっていられるのはお互いに愛し合っているからなのでしょうね。この二人の過去に何があったのかはここでは語られませんが、どうあれこういう最期が迎えられたのはいいですね。

チミチミ
om126167126069.29.openmobile.ne.jp

クレヨンさん

拙作、お読みいただき誠にありがとうございます。

>人はどうあっても個人であり、結局独りで生きていかなければならない

その通りだと思います。
人と人が同じ家で支えあって生きていくこと自体、不思議で魔術的な側面を抱えているものだと思います。

西山鷹志
softbank126077101161.bbtec.net

拝読いたしました。

初老と言うからには60歳前後でしょうかね。
私も旅行が好きで旅先で「ああこんな場所に住んでみいた」と思った事がありました」
その一つが沖縄、なんて綺麗な海なんだろう。
定年になったら移住したい思ったものです。
この夫婦の気持も良く分かります。
ただ二人共も病に侵され辛い日々を送って、少し気の毒。
それでも二人は慎ましく生きて行く姿は感動ものです。
まさに理想的な夫婦ですね。

気になった点は
>妻はそれより二三歳下
>四五年ほど前

これだと23歳年下 45年前と勘違いします。
妻はそれより二・三歳下
四・五年ほど前
と・を入れ方が良いかと……余計な事でした(笑)
楽しませて頂きました。

チミチミ
fs76eed591.tkyc303.ap.nuro.jp

西山鷹志さん

お読みいただき大変ありがとうございます。

さて、ご指摘いただいた「二三歳」「四五年」問題ですが、西山さんのコメントを見てその手があったか、と目から鱗が落ちた次第です。(笑)

ずっと「二三歳」か「二、三歳」のどちらにするか迷い最終的に前者にしましたが「二・三歳」がいいですね。ご指摘ありがとうございます。

作品自体についてのご感想の方も、大変嬉しく拝見させていただきました。本当にありがとうございます。

浮離
KD111239168250.au-net.ne.jp

初老の夫婦を役者に語られるお話にしては終始ふわっとしすぎた会話やエピソードも含め、あまりまともに考えてはいけない“雰囲気モノ“であるらしいことを前提にお付き合いしたいところではあるんですけど、“書きもの“っていうのはやっぱり正直なもので、お話にも書き筋にも設計にも、どうしてかその根拠みたいなことが通底して感じさせられる気がするのはむしろ当たり前のことだと個人的には思うし、そんな上で酌量する“雰囲気モノ“なりにもその物足りなさというのは否めないのではないのか、というのが個人的な印象だったりします。

このお話について、設計なり書き筋なりエピソードだとかそれぞれにまさしく性分らしく共通して感じさせられる気がする箇所をあたしなりに抜粋するなら、

>夫婦がこの街に越してきたのは四五年ほど前のことで、それもただ、海辺の景色が二人にとって似つかわしいように感じたというような、曖昧で感覚的な理由からだった。

>今日は記念日とかの類の日ではなかったが、二人にとって何か大切なことが起きうることを、妻は瞬間的に予感した。悪いことではない。何か不思議なことか起きる気がして、夫に尋ねた。

>夫にはまだこの状況がうまく飲み込めなかった。妻に犬のことを思い出させたものが何なのか分からなかったからだ。

みたいな辺りに象徴的に感じさせられる気がするんですね。


伝わらないと思うんですけど、物語におけるパーツとしてはいかにもふわっとしてる然るべき扱いっぽく見せてるらしんですけど、その実書き手にとっては確信的なテクスチュアのつもりでも、そのあまりにも自覚的な手口であることが読者にはまったく明らかに見透かされがちであることには自覚がないらしいことが、よほど読み口を鈍らせる気がしてしまうんですよね。


誤解してほしくないのは、それって単純に筆力とか書き方の問題ではない気がする、ってことなんです。

書き手はなにが書きたかったのか、それってわからなくもない気もするんですけど、個人的にはその上であまりいいお話とは感じさせられていないですし、つまりなにが言いたいのかって、最初にお伝えしたことなんですよね。

>初老の夫婦を役者に語られるお話にしては終始ふわっとしすぎた会話やエピソード

わかりますか?
簡単に考えるならこのお話、別に地元の子どもが役者でもいいはずなんですよ。
酷い言い方かもしれないんですけど、その程度のことしか書いてない、ってことだと思うんですね個人的には。
初老の夫婦である必然性が、根拠が物語に反映されてないってことだと思ってます。

理解できないなら別にいいです。

個人的に考えさえられるには、これって物語の設計や筆力云々だとかそういうことじゃない気がするってことなんですね。
このお話を退屈に、ふわっと腐らせたその根拠として、書き手のひ弱な動機こそを白状する一文として個人的にとても物足りなく感じさせられる一文が、

>それもただ、海辺の景色が二人にとって似つかわしいように感じたというような、曖昧で感覚的な理由からだった。

ってこの一文なんですね。
これって、何よりも書き手自身に甘い一文のはずだと思うんです。
書き手自身を“曖昧“に許したはずで、その後の書きぶりは見ての通り、先に指摘した通りの覚束なさをまるで世界か手口の如く雰囲気に逃がすためだけの言い草に貶めた気がするんですよね。

亡くなった犬のこと思い出して、それもちょっと気を疑うような理由にかまけて夫を困らせる初老の女って、まあまあ普通じゃないはずなんですよね。
だからわざわざ心地いい景色ばっかに釣られて移住する必要があったんじゃなかったの? ってことがたぶん人生とかその人の基本的な理由のはずだし、だからってそのことはちっとも書かれていない気がするんです。
犬だけで察しろ、なんて読み手に甘えすぎですよなんて言い方は厳しすぎると思いますか。

百歩譲ってそんな二人がこんなとこにわざわざ移り住んで呑気な感情にかまけてる。
それって人生に、例えばどんな出来事をもたらすはずと思いますか?


あたしは、初老である二人の移り住んでくる以前の暮らしや出来事を想像したくなります。
そんな片一方が、過去の犬のことばっかでじめじめとパートナーを困らせるんですよ。
とはいえそんなパートナーこそ、

>妻に犬のことを思い出させたものが何なのか分からなかったからだ。

らしいんですよね。
なに言いたいか、わかりますか?

あたしにはこのお話って、懲りない二人の鈍感な逃避行には違いないですけど、それを当たり前程度にも踏まえられていない書き手の鈍感な書き振りこそをよほど感じさせられる気がしてしまうんですよね。

うっとりしすぎていてよくわからなかったんですけど、最後に二人は死んだんですか?
だとしたら、逃げたもんがちの逃亡成功みたいな気がするんですけど、とはいえ二人の来世はたぶん犬で決まりですよね。

だって、ちっともなんにも学んでいない二人みたいに見える。
うっとりしたまま逃げること許されて、なんにも気づいてないでしょたぶん。
学んでないでしょ。

本当なら、二人は移り住んだお気に入りの海辺の景色で、またしてもこれまでと同じ運命を繰り返すはずなんですよね。
場所ばっか、気分ばっかお気楽に変えても自分たち自身がなにも変わらないなら、どこにいたってそこなりに同じこと繰り返してしまうんですよ人間なんて。
そうして落ちぶれて身につまされて二人は途方に暮れる気力すらもいよいよなくて、波に飲まれて死ぬんじゃなかったんですか。
長く連れ添っても勝手ばっか、思いやりもないばっかの二人がうっとりとバラバラに自惚れて好き勝手な誤解も疑えないまま結ばれたまま死ぬことに素敵が許される世界なんて、たぶん甘っちょろいだけだと思うんですよね。


個人的にはこのお話って、ちっとも勇気も意欲もない書き手のためばっかのちっともためにならないお話みたいに感じさせられるんです。

物語に芯がないですたぶん。


抑鬱なんて自分で言える程度ならそもそも大したことないですから目を覚ましましょう。
あたしは今日も未だに死にたいですけど、呑気な都合ばっかのあたし以外の馬鹿に付き合う気なんてさらさらないので今日も勝手にお休みしてます死にたくないので。
それであたしの周りから消える程度のものなんて、いらないんですよそんなもん。


気合い入れましょう。
あたしはあたしに負けたくないです。

夜の雨
ai201255.d.west.v6connect.net

「海沿いの夫婦」読みました。

なにやらふんわりと書いているなぁ、という感じです。
作品は結構ここちよく読めるような文体でしたが。

なので読んでいる最中から世界が広がりますね。
いろいろなパターンに世界が広がると思います。
要するに基本的な舞台を整えた作品を書きました。
この作品を基本にして、文学、ミステリー、怪奇、ファンタジー、童話を描くにはどうすればよいのでしょうか。
という具合の作品が御作ではないかと。

だから作品の味付けを薄くしてあります、加工しやすいように。
薄くしてあるので読み進めると、もっと濃い味にしたほうが面白くなるのではと思ったりします。
たとえば犬のシーンですが。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「昔飼っていた犬のことを思い出して。犬が死んだとき、私は何もしてあげられなかった」
「君のせいじゃないよ」
「私はね、一瞬だけその犬を機械のように『直せる』と思ったの。一瞬だけ。でも、そうはいかなかった。その身体は微動だにせずに、徐々にこの世界から去っていった。それがすごく悲しい」
夫にはまだこの状況がうまく飲み込めなかった。妻に犬のことを思い出させたものが何なのか分からなかったからだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
実は死んだのは犬ではなくて自分たちの子供だったとか。
亡くなったのが子供という事になればインパクトがあります。
産まれてきたときからかなり弱っていて、数日のうちに病院で亡くなったとか。
これを小学生ぐらいのときに亡くなったということにすれば、夫婦にとっては思い出がありすぎて、今回舞台になっている海辺で住んでいるという話が過去の子供のエピソードが多すぎて、違う話になりかねません。
このあたりは初老の夫婦が海辺で住んでいる日々のエピソードとのバランスですね。
夫婦にとっての過去と現在の生活部分の描き方のバランス。
もちろん現在を中心にして物語を描く。現在を生きている夫婦を描くのだから。

子供のことでもよいし、親族のことでもよいと思いますが、描いておくと背景部分がわかり物語が深くなる。

「怪奇、ファンタジー、童話」このあたりにする場合は、近隣から動物ほか「何かが」やってくるとか。
朝になったら玄関先にかなりな貝殻が置かれているとか。犯人は誰なのか(笑)。
怪しい奴が嵐の夜に「泊めてください」と来たらミステリーとか。美少女でも盛り上がりますが。この少女、もしかしたら死産で産まれた娘ではないのかとか……。

「私はね、一瞬だけその犬を機械のように『直せる』と思ったの。一瞬だけ。 ← これは、ファンタジーとか、童話的な発想ですね。

御作全体では、加工しやすそうな作品ではないかと思いました。
それは感想の冒頭でも書きましたが「ふんわりと書かれている」ので、そこから想像を膨らましやすいのだと思います。


お疲れさまでした。

飼い猫ちゃりりん
dw49-106-193-57.m-zone.jp

チミチミ様
インスピレーションを書き留めておく事は大切ですね。後はそれをいかに小説にするか。チミチミ様にはできると思うので、頑張ってください。

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

テクニカルサポート

3,000字以内