作家でごはん!鍛練場
三夜伊織

借りパクの挨拶

 学校ダルいな。
 朝起きて、制服に着替えながら思う。
 朝食を食べていても、歯を磨いていてもそう感じた。
 いよいよ憂鬱になってきて、僕は高校をサボることにした。
 僕は、友人の佐伯にメールを打った。
「今日学校サボらないか?」
「いいぜ」
 送信して、すぐに返事が来た。
 佐伯はよく学校をサボっていた。だから、佐伯を誘うのに、罪悪感はなかった。
 それから僕は、着替えるのが面倒くさくて、制服のまま家を出た。

 駅に着くと、佐伯は般若の顔が印刷されたTシャツに、超短い短パンという、クソみたいな格好でベンチに腰かけていた。
「よお」
僕に気づいた佐伯が、手をひらりと振ってそう言った。
「なんだよその服」
「いいだろ、気に入ってんだ」
「人生楽しそうだな」
「まあな。それで、どこに行くんだ?」
 少し返答に困った。僕はまだ行先を決めていなかった。それから少し考えて、言った。
「どこか、遠くへ行こう」

 僕たちが乗る電車は学校の最寄り駅を通り過ぎて、どこか遠く、離れた場所に向かっていた。
 見慣れた景色が、知らない景色に変わって、さっきまでいた場所から離れていくのを感じる。
「なあ、今日、どうして俺を誘ったんだ?」
「なんとなくだよ」
「そうか」
 佐伯はつまらなそうにそう言って、スマホに視線を戻した。
 その時僕は、ふと気になって聞いてみた。
「佐伯っていつも学校サボって何してんの?」
 少し間があった。
「女遊び。バレずに何人まで付き合えるか実験してんだよ。ちなみに今は6人な」
「……クズだな。お前」
「そうかもな。でもさ、つまんないだろ? なんとなく付き合って、なんとなく結婚して、なんとなく子供ができて、子供が育ったらあとは死ぬのを待つだけの人生なんてさ。どうせ一回きりの人生なんだ。楽しまないとやってらんないだろ」
 そうかもしれない、と素直に思った。そんな風に人生を楽しめる佐伯が、少し羨ましく感じた。
「お前もやるか?100股チャレンジ。女なら紹介してやるよ」
「やらない。女は間に合ってるから」
 次の瞬間、佐伯はゲラゲラと笑い出した。
「なんだよ」
「いや、お前、彼女いたのかよ」
 失礼な奴だ。
「そもそも女が必要ないから、間に合ってるって言ったんだよ」
 僕が少しいじけて言うと、佐伯はさらに大きな声で笑った。

 それから僕たちは、終点の駅で降りた。
 改札を抜けて少し歩くと、小さな川があって、僕たちはその川に沿って歩いていた。
 酒を飲みながら。
 きっかけは10分前、佐伯の一言だった。
「なあ、あれ見ろよ」
 佐伯が指をさす方を見ると、さびれた酒屋があった。
「酒屋がどうしたんだよ」
「確かに酒屋なんだけどさ、よく見ろよ。あそこ」
 もう一度佐伯が指を指している方を見ると、酒屋の横に、酒らしき飲み物を売っている自販機があった。
「あれ、飲もうぜ」
 佐伯が、企むように言った。
 僕はちょっとした好奇心が芽生えて、それに同意した。

「初めて飲む酒って思ってたほどうまくはないよな」
 佐伯が、舌を出してそう言った。
「そうだな」
 僕は頷いた。それから少し気になって、聞いた。
「なあ佐伯、お前もしかして、酒飲んだの始めてじゃない?」
「そうだけど?」
 佐伯はさぞ当たり前のことかのように言った。
「たまに佐伯は本気でバカなんじゃないかって思うよ」
「酒とタバコは中学から始めるもんだろ?」
 呆れた。
 僕は立ち止まって、息を大きく吸った。
「どうせ僕は、今日初めて酒を飲んだガキですよ!」
 佐伯はフフンと鼻で笑った。
 それから僕は、ビールを一気に飲んだ。空になった缶を道の端に投げ捨てて、佐伯を早歩きで追い越した。
 すると、佐伯も空き缶を投げ捨てて、僕を追い越そうとしてきた。
 僕は追い越されまいとスピードを上げる。
 僕たちは徐々に小走りになり、それから走った。
 ほぼ全力疾走だった。
 なんだか凄く楽しかった。

 しかし僕の体力は5分と持たず、あっという間にバテてしまった。
 一方で佐伯は余裕な様子で、「体力無さすぎだろ」と、僕を見て笑った。それにつられて僕も笑った。
 それからひとしきり笑って、笑い疲れた僕たちは、さっきの自販機で、また酒を買って飲んだ。
 その時飲んだ酒は、さっきと違って、うまかった。
 これほど酒がうまいと感じることはこの先の人生、無いのだろうと、そう思った。

 電車に乗って、朝に佐伯と待ち合わせた駅まで戻ると、すでに辺りは暗くなっていて、空には月が浮かんでいた。
 挨拶を済ませ、お互い逆の方向に歩き始めたとき、佐伯が遠くで言った。
「今日は楽しかった!じゃあな!」
「またな!だろ!」
 酒のせいか凄く気分がよかった僕は、恥ずかしげもなく、青春小説の主人公みたいなことを言っていた。
「じゃあな!」
 佐伯は譲らずにそう言って、背を向けて歩いていった。
 僕はそのまま家に帰る気にもなれなくて、コンビニで水とチョコを買って、家の近くの公園で酔いを覚ましてから家に帰った。


 3日後、佐伯は死んだ。
 その知らせを受けたのは、高校のホームルームの時間。担任の吉田先生が抑揚のない声で言った。
「皆さんにお知らせがあります。昨日、佐伯君が亡くなりました」
 教室がざわつき出した。泣き出す女子生徒、ヒソヒソと話し出す男子生徒たち、吉田先生に「どういうことだよ!」と、意味の無い質問をする男子生徒。
 僕はというと、割と冷静だった。
 なんというか、佐伯には、近いうちに死ぬんじゃないかと思わせる何かがあった。
しかし、なんというか、佐伯がこの世にいないと言われると、なんだか違和感があった。
 まだ学校をサボって、女遊びを繰り返している佐伯が、容易に想像できたからかもしれない。

 僕のそんな妄想は、かつて佐伯だった物をみて、完全に否定された。
 まあ、案の定というか、佐伯は自殺だった。部屋で練炭を焚いて死んだらしい。
 なんの嫌がらせか知らないが、佐伯の残した遺書には、僕を葬式に呼べとだけ書かれていたらしく、その隣には僕の電話番号が丁寧に記載されていたらしい。佐伯の死を告げられた日の放課後、その旨を伝える電話が、佐伯の父親からかかってきた。
 本当に勘弁してほしかった。
 しかし、佐伯の父親にそんなことを言われてしまうと、断る気にはなれなかった。(本当は断りたかったけど)
 そんなこんなで、僕は佐伯の葬式に来ていた。
 最初はお坊さんの話を聞いて、少し泣きそうになったが、唐突にお坊さんがよくわからない呪文を唱え始めて、なんだか涙は引っ込んで、冷めた気持ちになってしまった。
 お坊さんの唱える呪文をバックグラウンドミュージックにして、佐伯が僕を葬式に呼んだ理由を考えた。
 佐伯との記憶を、頭の中で再生する。
 思えば佐伯との出会いは、かなり特殊だったと思う。

 当時僕は、中学生だった。
 1年の始め、僕は病気にかかった。
 その病気は、当時から現在に至るまで、症状が改善したという話はあっても、完治したという例は無いという。
 そのことを知った僕は、未来の自分を考えて、憂鬱になった。
 大量な錠剤の束を見て、いつも考えた。
 これを全部飲めば、今すぐに楽になるのかな、と。
 そう考えて、毎日3錠だけ薬を飲んだ。そのたび僕は、人生の敗残者のような気分になった。

 中学2年のある日、いつも通り憂鬱な気分で薬を飲んだ僕は、ふと気になって、僕が飲んでいる薬の致死量を調べてみた。
 ネットに出てきた記事によると、僕が飲んでいる薬は、1200錠飲まないと死ねないらしい。
 途方もない数字だった。
 手元にある薬は、せいぜい200錠程度。1200錠には、到底足りなかった。
 これまで薬を飲むたびに考えていたことは、全部無意味だったのだ。
 なんだか虚しくなった。そして僕は、生きているのが、これから先、生きていくのが、嫌になった。
 僕は、死のうと思った。
 学校の屋上へ出る扉の鍵が壊れていることを、僕は知っていた。
 放課後、屋上へ続く扉のドアノブを捻って扉を開けると、そこには制服を着た男がいた。
 その男は、僕が扉を開けた音に気付くと、こちらに駆け寄ってきた。
「俺がここにいたこと、美鈴には言わないでくれ!」
 美鈴って誰だよ。てかお前誰だよ。と思ったが、とりあえず僕は頷いた。
 すると男はほっとした様子で「ありがとうな、佐々木」と言って僕の肩をぽんぽんと叩いた。
 気味が悪かった。僕が知らないその男は、僕の名前を知っていた。
「なんで僕の名前、知ってんの?」
「俺たち同じクラスだろ。もしかして俺の名前、知らない?」
 あいにく僕は、クラスメイトの名前なんて一人も覚えていなかった。
「……ごめん。分からない」
 僕がそう言うと、男はゲラゲラと笑い出した。
「冗談だよ、冗談。佐々木君、クラスメイトの名前覚えてなさそうだったから」
「はあ」
「俺は、佐伯智也。2ー1だから佐々木とは違うクラス。よろしく」
 それから佐伯は、僕に向かって手を差し出した。
 どうやら握手をしようということらしい。
「あ、うん。よろしく」
 僕はさっさと会話を終わらせたくて、素直に手を差し出した。
「……あの、手、離してくんない?」
 なぜか佐伯は、僕の手を離さなかった。
 そして佐伯は、なぜか泣きそうな声で言った。
「なあ佐々木、飯、行こうぜ。奢るよ」
「嫌だけど」
「お前が鈴音に俺がここにいたこと、黙ってるとは限らないだろ?」
 さっきは美鈴って言っていたような気がするが、どうでもいいので聞き流す。
「そんなことしなくたって僕は誰にも言わないよ」
「じゃあ友達になった記念でさ、行こうよ」
 佐伯は泣き出した。
 僕の頭は、「?」でいっぱいだった。
 あまりにも佐伯が泣きまくるから、結局僕は死ぬのをやめて、佐伯にマックを奢られて家に帰った。

 それから翌日も、翌々日も、佐伯にしつこく誘われて、僕と佐伯は、学校では会話すらしないのに、毎日夜にマックで待ち合わせてハンバーガーを一緒に食べるという、特殊な関係になっていた。
 そのせいで、僕は完全に死ぬタイミングを逃していた。
 それでもいいと、思い始めていた。
 佐伯といると、憂鬱な未来を想像するより、目の前にある今を見ていられた。
 佐伯といるのは、楽しかった。

 その日も僕は、佐伯とハンバーガーを食べていた。
 さすがに1週間も連続でハンバーガーを食べれば、たとえハンバーガーであっても飽きる。そんな事を考えていた。
「なあ、佐々木、おすすめの本貸してくれよ」
「なんで?」
佐伯が本を読むタイプには見えなかった。
「いや、佐々木のクラスの奴に聞いたら、佐々木、休み時間になったらすぐに読書はじめるって言ってたから、好きなのかなって」
「好きでずっと読書してるわけじゃないよ。ただ、話しかけられたくないから本を読んでるだけ」
「それでも本は読んでるんだろ? あ、読みやすいやつで頼むな」
「じゃあ人間失格、貸してやるよ」
「それ絶対難しいやつじゃん。もっとさ、簡単なやつ、無いの?」
「……福井潤の変人とかでいい?」
 変人は、僕が小学生のころに、初めて読んだミステリー小説だ。小学生の僕でも読めたのだから、佐伯なら読めるだろう。
「それ有名なやつだよな、うん。それ貸してくれ!」
 佐伯は手を合わせて、上目遣いで僕を見た。
「いいけど……」
「サンキューな、佐々木」
 そのときの佐伯は、嬉しそうに笑っていた。
 
 佐伯の葬儀は一通り終わって、僕は家に帰った。
 僕はベッドの上で、あの時佐伯に貸した「変人」の表紙を眺めていた。
 結局佐伯からは、返してもらえなかった。
 佐伯の両親に「変人」を貸したときの話をしたら、佐伯の部屋の机に置いてあったと言って、わざわざ取りに行ってくれた。
 僕はベッドから起き上がって、「変人」のページをパラパラとめくる。
 どこかのページに挟まっていた栞が、床に落ちた。
 僕は栞を拾い上げて、部屋の窓にかざして眺めた。
 何の変哲もない、白い紙に紐が付いただけの、栞だった。
 しかし僕は佐伯に栞を貸していない。つまりこの栞は、佐伯の物ということになる。
 少し迷った。この栞を、佐伯の両親に返しに行くべきか。
 考えて、僕はこの栞を、返しに行くことにした。

 翌日、僕は栞を持って、佐伯の家の前に来た。
 佐伯の父親に、電話で栞を返したいと伝えると、すんなりと住所を教えてくれた。
 インターホンを押して少し待つと、玄関の扉から、佐伯が出てきた。
 佐伯が、扉から。
「よお、佐々木」
 僕は多分、精神を病んでしまったんだと思う。死んだはずの佐伯が見える。しかもそいつは、喋ってる。
 玄関の扉が開いて、佐伯の母親が出てきた。
「佐々木君。わざわざありがとうね」
「あ、いえ。これ、栞です」
 佐伯の母親に栞を手渡す。
「俺のこと、見えてるんだろ?」
「今、時間あるかしら。よかったらお茶でもどう? 智也との話とか、いろいろ聞きたくて」
「おい、無視すんなよ」
「この後予定あるんです、すみません。失礼します」
「待てよ」
 僕はインターホンを押すまでは無かった予定を作って、逃げた。
 どこか遠くを目指して、佐伯と酒を飲んだあの日のように、全力で走った。
 住宅街を走って、すぐに疲れて、歩いた。
 今だけは、自分の体力の無さを恨んだ。
 歩くと、嫌でも考えてしまう。
 僕が見たものは何なのか。
 しかしいくら考えても、幻覚という答えしか出ない。幻覚にしては、よく喋っていた気がする。そもそも幻覚というのは、喋るのだろうか。
 そんなことを考えながら歩いていると、小さな公園に辿り着いた。
 公園に入って、ベンチに座る。
 視界に違和感があった。
 横を見ると、佐伯が座っていた。
 これ以上逃げる気にはなれなかった。
「お前、なんなんだよ」
 吐き捨てるように言うと、砂場で遊んでいた子供たちに、気持ちの悪いものを見るような目で見られてしまった。
 僕も気味の悪いものを見ているのだから、同じような顔をしているのだろう。
「佐伯は死んだんだよ。それ以上でもそれ以下でもない。佐伯は死んで、佐伯の人生は終わったんだよ」
「俺、幽霊になったみたいだわ」
 どこか他人事みたいな言い方だった。
「でも、実際幽霊になってみると足はあるし、薄く透けてるってわけでもないんだな。想像でしか見れかった景色がこんなに普通だと、この世界のこと、もっと嫌いになるな」
 佐伯はそう言って、何かを諦めたように小さく笑った。
 隣に座る佐伯は、どうしようもなく佐伯だった。
 僕はなんだか、泣きそうになった。それじゃあ、佐伯が救われない気がした。死んでもなお、この世界に縛られるのは、僕なんかじゃ到底想像できないほどの苦痛だろう。それなのに平然としている佐伯が、僕には理解できなかった。
「そんなに俺に会えて嬉しいのかよ」
「そんなんじゃないよ」
「じゃあ、なんでそんな顔してんだよ」
「……佐伯に会ったからだよ」
 僕が本心を伝えると、佐伯は「そっか」と言って、顔を伏せた。
 数秒の沈黙の後、佐伯は空を見上げて言った。
「ありがとうな、佐々木」
「……うん」
 佐伯はまだ空を見ていて、どんな顔をしているのかは分からなかった。
 佐伯は、そのまま言った。
「佐々木、どっか遠くに行こうぜ」

 それから僕たちは、駅まで歩いて、適当に目についた電車に乗った。
 しばらく電車に揺られていると、窓の外は暗くなっていた。
 僕たちは、他愛のない話を何時間も続けた。
 昔好きだった女の子の話をして、初めて学校をサボった日の話をした。
 いざ死んだ佐伯と話すってなっても、中身のある話なんてなかった。
 やがて空が明るくなり、佐伯が言った。
「佐々木、次の駅で降りて」
「なんで?」
「俺がそうして欲しいから」
「なんだよそれ、意味わかんないよ」
 少しイラつきながら言うと、佐伯は真剣な表情で僕を見た。
「頼む。これだけは、聞いてくれないか」
「……わかったよ」
 僕は押しに弱かった。
 それから、電車はすぐに駅に着いた。
 電車を降りて駅のホームに足をつけた瞬間、世界は無になった。

 気が付くと、僕はベッドの上にいた。
 時計の針は、朝の7時を指している。
 どうやら僕は、佐伯の葬式の後、寝てしまったらしい。
 ふと気になって「変人」のページをめくると、栞が出てきた。
 栞を手に持って、窓から差し込む光にかざす。
 栞には、文字が書いてあった。
「またな」

借りパクの挨拶

執筆の狙い

作者 三夜伊織
210-170-48-38.saitama.fdn.vectant.ne.jp

初めて書いた小説です。
感想とアドバイスが欲しくて投稿しました。
よろしくお願いします。

コメント

神楽堂
p3339011-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp

読ませていただきました。

まず、気になった点が
「僕」という単語が多すぎるかな、と。
これは、私の作品でも言えることなのですが^^;
主人公が語り手の場合、主語が僕なのは明白なので、主語を省ける場合はそうした方がすっきりします。
あと、ほとんどの文が「過去形」になっていますが、
ときどきは「現在形」を使った方が作品は生き生きとします。

>いよいよ憂鬱になってきて、僕は高校をサボることにした。
>僕は、友人の佐伯にメールを打った。

例えばこのように書き換えてみましょう。

いよいよ憂鬱になってきて、高校をサボることにした。
友人の佐伯にメールを打つ。

どうでしょうか?

あと、友人が急死する展開には驚きました。

>断る気にはなれなかった。(本当は断りたかったけど)

ここは心理描写する絶好のチャンスだと思います。
友人の葬式なのに参列を断りたい。
このあたりの心の葛藤は書いて欲しかったです。

>そして僕は、生きているのが、これから先、生きていくのが、嫌になった。

病気持ちだと生きているのが嫌になるのは何となく分かりますが、もう少し丁寧に書いて欲しいです。

完治した例がないから憂鬱になるとのことですが、世の中、完治しない病気や症状をもっている人はたくさんいます。
なので、「完治しない」にプラスして、その症状がどのくらい苦しいのか、そこを書くことで、読者は主人公に共感できると思います。

貸していた本を返してもらったり、その本から彼の栞が出てきたりするシーンは、とてもいいなと思いました。

ラストシーンで、また栞が出てくるのもとってもよかったです。
栞に書いた文字、それはいつ、どんな目的で書いたのか、それを想像する余韻も味わえました。

気になったのは、なぜその駅で降りたのか。
何か思い入れのある駅だったのでしょうか?

と、いろいろ書いてしまいましたが、
ぐいぐい読んでしまう、魅力的な作品でした。
読ませていただきありがとうございました。

三夜伊織
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>神楽堂さん
読んでくださりありがとうございます。
アドバイス、とても参考になります。ありがとうございます。

駅で主人公だけが降りた理由は、「主人公は佐伯がいなくても生きていこうと思っている」ということを表現したかったからで、主人公が乗っていた電車は「あの世」行きの電車だと考えて書きました。
主人公は佐伯に促されて電車を降りていますが、これは主人公が見ている夢なので、佐伯は主人公の意思で動き、話します。
主人公は佐伯のいない世界で生きていくことに後ろめたさを感じながらも、生きていこうと考えている。けれども自分では生きるという選択をできない。だから佐伯に電車を降りろと言われることで生きることへの後ろめたさを払拭したかった。
というようなことを考えて電車のシーンを書きました。

クレヨン
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三夜伊織さん、拝読しました。

 夢の中で電車に乗るのは死の暗示である、という話を聞いたことがあります。それと栞に書いてあった「またな」の言葉を掛け合わせると、佐々木はこのあと死ぬってことなのだろうか、と思いました。

三夜伊織
210-170-48-38.saitama.fdn.vectant.ne.jp

>クレヨンさん
読んでくださりありがとうございます。
感想を頂けて凄く嬉しいです。

偏差値45
KD106180000198.au-net.ne.jp

要するに夢オチですね。

特別、文章・表現は違和感はなかったです。
小説としてはまとまっているし、バランスも悪くない。

で、感想。
酒・タバコ・女、、、青春ですね。
これに博打があれば完璧。

自分だったら、本はパクられたままにするだろうし、
栞も返そうなんて発想はないので、共感は出来ないかな。

で、面白いか? と言えば「いいえ」かな。
意外性が欲しいところ。

三夜伊織
210-170-48-38.saitama.fdn.vectant.ne.jp

>偏差値45さん
読んでくださりありがとうございます。
確かに主人公の行動が無理矢理なところがあったなと思います。とても参考になりました。
次作からは意外性を組み込んで面白い小説を書けるよう、頑張ります。
感想ありがとうございました。

ぷりも
pw126157166212.30.panda-world.ne.jp

拝読しました。
ネタバレありの感想です。
文章力があって読みやすかったです。
ただ、途中がすっぽり抜けている印象を受けました。
佐伯は初対面の佐々木の手を握り、涙を流すというのは、体に触れると気持ちが流れ込んでくるとかいったものでしょうか?
だとすると、その後佐伯の方が自殺してしまうというか、その必要性というかは、脳内で埋められない行間がありました。
もしかしてラストありきで考えて、着地を急いでしまったのではと、そんなことを考えました。

三夜伊織
210-170-48-38.saitama.fdn.vectant.ne.jp

>ぷりもさん
読んでくださりありがとうございます。
屋上のシーンは着地を急ぎすぎて深く考えずに書いていました。
次はプロットをもう少し丁寧に作ってから書き初めてみようと思います。
感想ありがとうございました。

浮離
KD111239168250.au-net.ne.jp

夢オチというか夢とじというか夢逃げでもなんでもいいですけど、それを都合建前として当たり前みたいに過小評価したがる人は少なくないと思うんですけど、それも書き方次第と個人的には考える上ではこのお話はこのお話として夢何某としてまとまるしかなかったはずだよな、なんて勝手に思ってます。

さらに勝手に感じさせられるには、物語に対して、主には設計的な話のはずだとは思うんですけど、こういった整いや倫理みたいなものがないと不安であるらしい傾向が強い書き手っていうのは、ある程度のプロットは自覚して書き出す必要はあるんだろうな、といったことだったりします。

伝わるといいんですけど、どうして夢オチの類となるべきだったのか、って考えるにはたぶん、例えばファンタジーだとか、別の倫理を整えるまでの動機はこのお話にはそもそもなかったからだと思うんですよね。
物語として展開を根拠や倫理に紐付けて柔軟に預けられる、想像できるほどの動機やアイデアから発進したほどのものではなかったのかもしれないな、なんて感じさせられなくもないってことです。

たぶんこのお話っておしりでっかちのような気がするんですけど、個人的に感じさせられるのは、佐伯が死んだことを知らされる前までのパートで、このお話はその根拠を紐付けられないとダメなお話のはず、ということなんですよね。
それができるなら、たぶん文量的に半分くらいでも十分なものになるんじゃないのか、なんて個人的には感じさせられます。


書き手にはそのつもりはないのかもしれないんですけど、一読者として初読の段階ではっきりと感じさせられたこのお話のチョークポイントって、

>なんというか、佐伯には、近いうちに死ぬんじゃないかと思わせる何かがあった。

っていう一文なんだろな、ってことなんですね。
勘違いしないで欲しいんですけど、個人的にははっきりと悪手だと思う、ってことをお伝えするものですし、だけど書き手にしてみるとむしろそれを根拠にようやく筆が走り始めた、走らせるきっかけになったポイントのはず、なんて感じさせられなくなかったりもするわけなんですね。

だって序盤から佐伯が死ぬ前までのパート、ずっとふわふわしてないですか。
物語を書いてるんじゃなくて、“小説“っぽいこと小説っぽく書くことによほど腐心してるらしいぎこちのなさが上滑りしてる感じがしなくもない気がするんですよね個人的には。
“プロット“っていうお話を最初にしたのももちろんそういった印象に基づくものでもあって。


個人的にこのお話の“雰囲気“にまんまと騙されたくないよなあ、と思わされてしまった理由っていうのは何よりも佐々木と佐伯の“距離感“ということで、その嘘臭さの何よりの根拠が佐々木というよりにもよって語り手である本人の嘘くささ、ってことだと個人的には感じさせられてしまったものなんです。


これってあたしなりの決まり文句みたいなもので、誰にもちっとも伝わったことのない言い方なんですけどつまり、

佐々木、おまえなんにもしてねえから

っていうつまんなさが何よりこのお話のダメさだと個人的には感じさせられてしまうものなんです。
その結果、孤軍奮闘さながらの佐伯すら自意識過剰なだけのイタいばっかの一人相撲みたいに受け止められなくもない、なんて言い過ぎですかね、あたしには当たり前にそう見える、っていうだけの話なので気を悪くしないで欲しいんですけど。

どうしてこのお話を書いたのか。
書きたかったのか。
その動機を書き手はこの世界の誰に請け負わせたものなのか。

伝わんないと思うんですけど、このお話、まともな読者なら佐々木の物語を読みますか? 佐伯の物語を読みますか?
って、わかりづらいですよね。

佐々木、おまえなんにもしてねえから

って、そういうことだと個人的には当たり前に感じさせられるってことなんですけど。



個人的には、佐伯を殺すまでに書くべきことを書けなかったから、佐伯が死んだ後に書くべき必要を感じてしまうことが押し寄せてしまったんだと感じさせられていますし、その上で佐伯が死んで以降のパートは極端な言い方をしてしまえばつまり蛇足、物語なのかもしれないけど“物語性”としての機能には到底促したものとは個人的には感じさせられなかったのだと思うし、その上で夢何某とする落とし前には一般論として持ち出しがちな過小評価に付き合わせるつもりもないですよ、ってことだと思ってます。


佐々木っていう理由を書けないなら、このお話は佐伯で書くべきだと思うし簡単なはずだと思うんですよね。
これは少しキツい言い方に伝わってしまうかもしれないですけど、どうしてこのお話がこういったバランスになってしまったのかと考えれば理由はきっと単純なはずで、書き手の狡さ、っていうことでしかない気がしてしまうってことなんですね。

佐々木のために、佐伯が必要だった

佐伯の不幸なまでの便利さっていうのはつまり書き手の都合、狡さのこと、ケチ臭さがさせるだけのこととあたしなりにははっきりと感じさせられたもので、佐々木というものぐさで薄情でええ格好しいなだけのうっとりとした見栄の世界を飾るためだけに必要とされて散々踊らされた挙句に便利に殺された佐伯は、まったく不幸なピエロとして、プロット未満の産物として誤解された影の出来損いの主人公に見えなくもなかったのかもしれないです。


佐伯が佐々木に執着する理由なんて、読者は誰一人分かってないはずなんですよねたぶん。
つまり、佐々木っていうただうっとりとしただけの見栄を飾るために必要だっただけでしょ、なんて酷いことを個人的には当たり前に感じさせられてしまったものなんです。

佐伯が佐々木の根拠になるお話を書き手は書いたつもりなのはわかるんですけど、実際にはすっかり逆さまとして破綻してるはずだと思うんですよね。
その上で、佐伯の理由を読者が誰一人として理解し得ないということは例えば“余韻“だとか、そういった出来映えのようなものを促すこととはまったく別のことだと個人的には感じさせられるものなんです。

三夜伊織
210-170-48-38.saitama.fdn.vectant.ne.jp

>浮離さん
読んでくださりありがとうございます。
どれも具体的な指摘で、改善するべき点がとても分かりやすかったです。
ありがとうございます。

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