作家でごはん!鍛練場
朧月

虹色の世界

 私ってなんだろう。机の上に書かれた、【バカ】【キモ】などの言葉を見ながら、そんな疑問が脳裏に浮かぶ。今までとは違う考えだ。今までには、いつものことだよね、と思ってばかりいた。
…考えて、みようかな。

 ホームルームが終わる。チャイムが鳴り終わった瞬間に1人の女子が立ち上がる。名前はハルヒ。私の唯一の友達だ。私の方に駆け寄ってくる。
「うわ!机やば!」
「うん…」
「そろそろ先生に相談しなよ!ずっと見て見ぬフリしてたでしょ」
「いいよ、大丈夫」
「…でも、」
本当に大丈夫なのに。いつもそうだ。ハルヒは昔から私のことばっかり気にしすぎだ。私と仲良くするせいで、自分の机もひどいことになっているというのに。
「変なこと言ってたって、いいと思うのにな…」
「…」
私がいじめられている理由は、本当に自業自得なことなのだ。
…私の目が、おかしいから。

 何年前のことだろう。私はある日突然、事故に遭った。家族と一緒に。そしてなぜか、私は生きていた。
家族がいなくなった。
ショックだった。毎日、死のうかなと考えるほどに。
そのせいかはわからないが私の世界は、色が、変わった。
色盲となった。
いや、色盲というのだろうか。

 世界が色とりどりに見えるようになった。
物、人、動物、植物など、全てが。
 人はみんな違った色を持っている。大体はその人の性格を表す。
ハルヒは、明るい子だ。だから桃色に見える。
他の子たちにも色がある。優等生の女の子は、紫色。クラスのムードメーカーは黄色。

 いじめられているのは、その目のせい。
ある女の子に、『緑。』と言ってしまったのだ。それから、気持ち悪いなどと思われるようになって、現在の状況に至る。正直なところ、私は本当に気にしていない。何をどうしようとも、私のせいだから。

「レイ!」
「あっごめん、何?」
「何ぼーっとしてるの、理科室行くよ」
「うん」
私の名前は、レイ。せっかくの女子校を楽しもうかと思っていたのに、入試は落ちた。
共学だから、男子もいるから、余計に色が狂っている。

 男子は、傍観者だ。男子に暴力でいじめられるよりマシないじめを受けているのに、男子が傍観しているのは、少し苦しい。
本当に、私ってなんだろう。

 一限が終わる。今日の実験楽しかったな…。
ハルヒが先に教室に帰った。私も教室に着く。
ハルヒは、自分の机を見下ろしていた。その瞳から、一粒の涙が落ちる。

…やっぱり、ハルヒは心が弱い。

 前からそうだ。怪我をした時とかも泣いてしまうタイプで、涙もろい。私の心配なんてしてたらダメだろう。特にハルヒは優しすぎる。
でも、そういうところがハルヒのいいところだ。

 私はトイレにこもった。自分が何かを見つけるため。
見つかったと言ってもいいのかわからないが、一つの考えが浮かんだ。

 私は、ハルヒにこの目のことを話してもいいのではないか。

自分が何かはわからなかったが、言おうかなと思った。
私はそう思った瞬間に、ハルヒのところに駆け出していた。

「…じゃあ、レイは私たちと違う世界を見ているってこと?」
「…うん」
「…」
ハルヒは俯いた。
私は全てを話した。家族の事故のことから、全てを。
ハルヒは顔を上げて言った。
「レイ、それってさ、すごいことなんじゃないの?」
「えっ?」
思ってもいない答えだった。
「だって、みんなに色があるんでしょう?それがわかるのってすごいよ!」
「…そ、そうかな…」
「うん!それをクラスのみんなに言ったら、人気者になるよ」
「そうかな?」

 その私の質問に、ハルヒは『うん』と元気に答えた。
私は教壇の上で、ハルヒと一緒に立って、全てを話した。みんなの顔が驚きの表情に変わっていく。

「…」
全てを言い終わると、沈黙が流れる。
みんなは目配りをしている。そんな中、1人が手を挙げた。
そして、口を開く。
「それってさ…すごい!」
「…っ!」
みんなが次々に言う。
「ホントに!」
「すごい!」

 1人の女の子が言った。
「今までごめんね。レイさん。」
「…よ、よかった〜っ」
「だから言ったでしょ、レイ。」
「うん…ありがとう、ハルヒ!」
それ以来、私はみんなに色を聞かれるようになった。

虹色の世界

執筆の狙い

作者 朧月
59-168-43-237.rev.home.ne.jp

小説投稿初めてです。お手柔らかに、よろしくお願いします。

みんなと違っても、希望を見たい。そんな人は多いと思う。
いじめられている子を主人公に、希望はあるということを大事にしてもらいたい。そして、自分は自分であるとポジティブに考えてもらいたい。また、人に相談することの大切さにも気づいてもらいたい。

ハッピーエンドしか書けないタイプなので、お許しください。

コメント

神楽堂
p3339011-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp

朧月さん、作品を読ませていただきました。

・みんなと違っていても希望はある
・自分をポジティブにとらえる
・人に相談することは大切

これを伝えたかったのですね。
その意図はよく分かりました。

テーマはとてもいいと思いました。
あとは伝え方だと思うのですが、
主人公は色が人とは違って見える、という設定はとてもいいと思いました。

ただ、この表現はわかりにくいかな。

>色盲となった。
>いや、色盲というのだろうか。

ここは、次にように書いてみてはどうでしょうか?

こういうのを色盲というのだろうか。
いや、色盲とはちょっと違うみたいだ。

あと気になった点として、主人公がいじめられている理由がしっくりきませんでした。

>ある女の子に、『緑。』と言ってしまったのだ。それから、気持ち悪いなどと思われるようになって、現在の状況に至る。

ある子に緑と言っただけでいじめられるという展開は無理があるように思います。
きっと、いじめられるに至るさまざまな出来事があった、という設定なのだと思いますが、もっと読者が共感するような理由にした方がいいかな、と思いました。

色が違って見えるからいじめられる、というのが読者にどのくらい納得してもらえるのか、ここがこの作品で一番難しいところでもありますし、書き甲斐のあるところでもあります。
例えば、美術の時間に書いた絵が、かなりとんでもない色で、それで気持ち悪がられるとか、
クラスのカーストリーダーの陰謀を、「色」をきっかけに見抜いてしまったために、リーダーに恨まれていじめられるようになった、とか、
いじめられる理由の設定はもっと練った方がいいように思います。
あるいは、その特別な色覚のために、あまりにも素晴らしい絵を描いてしまい、カーストのリーダーよりも上手な絵を描いてしまって嫉妬され、それでいじめられるようになった、という展開でもいいかもです。
で、リーダーが好きだった男の子が、主人公の絵を褒めるのを見て、リーダーが嫉妬で発狂していじめを開始するとか。
いろいろ書き方はあるように思います。

>私は教壇の上で、ハルヒと一緒に立って、全てを話した。みんなの顔が驚きの表情に変わっていく。

レイは色が違って見えていたんだ~! と驚くためには、クラスメイトはレイについてあらかじめ誤解している必要があります。
レイはなんらかの事件でみんなを不快にさせていたが、それは、実はレイの見え方が違っていたからなんだ、で納得する展開がほしいです。
難しいですけどね^^;

とてもいいテーマを扱っていますし、朧月さんが作品を通じて主張したいことである
・みんなと違っていても希望はある
・自分をポジティブにとらえる
・人に相談することは大切
は、私もとてもたいせつなことだと思います。

正直、まだまだ書き足りない作品だという感想は否めませんが、
書くことへの熱意は伝わってくる作品だったように私は思いました。

朧月さん、作品を読ませていただきありがとうございました。
2週間経ちましたら、また作品を投稿していただけると嬉しいです。

偏差値45
KD106180001218.au-net.ne.jp

>…私の目が、おかしいから。
>色盲となった。
>ある女の子に、『緑。』と言ってしまったのだ。

イジメの理由付けとしては弱いかな。

>ハルヒは、明るい子だ。だから桃色に見える。
>他の子たちにも色がある。優等生の女の子は、紫色。クラスのムードメーカーは黄色。

たとえば、オーラの色が見える、としたら伝わりやすい気がしましたね。

> 1人の女の子が言った。
>「今までごめんね。レイさん。」

むしろ、この変わり身の早さの方がすごいと思う。

イジメの問題は、そう簡単に解決できるものではないけれども、
ある種の核兵器を持っていれば、平和にはなると思いますね。
そんなことを思った次第です。

中小路昌宏
softbank060105034233.bbtec.net

読みました。

 なかなか良かったです。
 こういう設定で、物語を組み立ていくという、ひとつの実験だと思いますが、実験は成功したと思います。これからも頑張ってください。

朧月
59-168-43-237.rev.home.ne.jp

>神楽堂さん
アドバイスありがとうございます。

なるほど、「色盲とは少し違うみたいだ」ですか。確かに私はそこらへんの表現が苦手です。
神楽堂さんのご意見で良い学びになりました。

読んでいただき、ありがとうございました。2週間後には、1個でも成長できた作品を投稿できるよう、頑張ります。
その時にはまた読んでいただけると嬉しいです。

朧月
59-168-43-237.rev.home.ne.jp

>偏差値45さん
感想ありがとうございます。

いじめの理由付けですね。私はそこで引っかかっていたのですが、アドバイスのおかげでどのように構想したら良いかがわかりました。

読んでいただき、ありがとうございます。また今度新しいものを投稿しようと思うので、その時にまた読んでいただけると嬉しいです。

朧月
59-168-43-237.rev.home.ne.jp

>中小路昌宏さん
コメントありがとうございます。

成功したと言っていただき、嬉しいです。

読んでいただき、ありがとうございました。
次は今回よりも少しでも成長した作品を作ることができるよう、努力します。その時はまた読んでいただけると嬉しいです。

ぷりも
pw126157174101.30.panda-world.ne.jp

拝読しました。
展開が急な感じは否めないですが
初めてということと、この長さなら
まぁ許容範囲かなと。
で、朧月様はシナスタジア(共感覚)
というものを知ってて書いてますか?

知らずに書いてるならですが
実際、文字とかに色が見える人がいるんですね。
例えば、数字の1は青、2が赤に見える人。
で、4が紫に見えたりすると、1+2を4と間違えてしまうそうな。
ということで私なら案ですが、

暴力ふるうAさんが赤く見える。
悪口好きなBさんが青くみえる。
Cさんは紫に見えるから、暴力を振るう悪口好きだと思い込んでいたけど、実はいい人だったみたいなエピソードがらあってもよいかなと思いました。

朧月
59-168-43-237.rev.home.ne.jp

>ぷりもさん
アドバイスありがとうございます。

シナスタジアは知りませんでした。小説を書くにあたっての調べも足りなかったと改めて思いました。
エピソードがあってもいいのも、とても良い意見ですね。参考にできたら良いなと思います。

読んでいただき、ありがとうございました。次も読んでいただけると嬉しいです。

夜の雨
ai200231.d.west.v6connect.net

「虹色の世界」読みました。

この手のアイデアとテーマの組み合わせは初めて読みました。
なかなか新鮮でした。
冒頭は机に「いじめ」を思わせる落書きがあり、そこに友人の「ハルヒ」がやってきて「先生に言おうよ」という流れ。
主人公の「レイ」は気にしていないと言いながら『私ってなんだろう。』と、自分の存在感の意味について考えている。
そしてレイに友好的なハルヒの机にも落書きが。
ここで二人の違いは主人公のレイは家族の死と関わったので精神的に強くなっている。ただこの意味は逆にもとれて家族がいなくなったので、強がっているが、いつ、崩れるかもしれない危うさが背景にある。
このレイに対してハルヒは自分の机の落書きを見て泪が落ちているので精神的には弱い。
レイへのいじめに心を痛めているようで、そういったところでは優しい気持ちの持ち主でもある。
このレイがいじめの原因になっているのが「色盲」が原因でクラスの者を「緑」とか言ったので、「気持ち悪い」となじられた。
こういうことがあり、トイレの個室で自分が何かを見詰めた。
するとある考えが浮かんだ。

そのことをハルヒに言ったところ彼女は驚いた。
『レイは、自分の眼でしか見えないものを見ている』
ほかの者とは見ている世界の色が違う。
家族と一緒の時に事故に遭ったことから、すべてを話した。

結局、レイが体験したことやみんなとは見る世界の色が違うことをいうと、クラスの者は驚いて、レイは人気者になった。
レイが人気者になるということはハルヒも机に落書きをされないという事になる。

感想の冒頭でも書きましたが、アイデアが新鮮なのとテーマがよかったのでハートに感じるものがある。
御作は「文学」作品になっています。

「虹色の世界」というタイトルもよいですね。


お疲れさまでした。

朧月
59-168-43-237.rev.home.ne.jp

>夜の雨さん
感想ありがとうございます。

わかりやすく内容をまとめてくださって、私自身も改めて内容を理解できました。

読んでくださり、ありがとうございました。次も読んでいただけると嬉しいです。

クレヨン
softbank060106201163.bbtec.net

朧月さん、拝読しました。

 ストーリーとしては、閉鎖的でいじめが横行しているコミュニティから離れてまったく別のところへ行ったら受け入れられるようになった、という形のほうが自然かもしれない、とは思いました。誤解を解いてハッピーエンドよりはだいぶ楽にことを運べると思います。

 この作品のラストみたいに特殊な見え方などがポジティブに受け入れられるコミュニティはいいですね。多様性の重要さが叫ばれている昨今ですが、まだなかなかそれが受け入れられないところもあるようですね。特に田舎の小学校などはそうらしいです。その人たちにはその人なりのやり方もあるのでしょうけれど、みんな違ってみんないいっていうことを受け止めてもらえる社会ができるといいですね。

朧月
59-168-43-237.rev.home.ne.jp

>クレヨンさん
感想、ありがとうございます。

みんな違ってみんないい。本当にそんな社会になることを願うばかりです。

読んでくださり、ありがとうございました。次もまた読んでいただけると嬉しいです。

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