作家でごはん!鍛練場
西山鷹志

暴力団組員と天才プログラマー

「組長、これで二人目ですぜ。このままでいいんですかい」
若頭の近藤が悔しそうに言った。
「いい訳がないだろうが。くそっ舐めた真似しゃがって、よくも可愛い子分を殺ってくれたな。まだ犯人は分らないのか」
「へぇ懸命に若い衆を総動員して探しているんですが、あれはかなり腕利きのヒットマンですぜ。二人共眉間を撃たれて即死ですからね。あれは狙撃銃(ライフル)ですよ。組長も気をつけてくださいよ。下手な外出は控えて下さいよ」
「ああ分かっている、処でうちの若い衆で銃の上手い奴は居ないのか?」 
「残念ながら一人も居ませんや。こうなったら闇サイトで一流のスナイパーを探しましょう」
「馬鹿言え、そう簡単に殺し屋がそんな所に闇サイトを開設している訳ないだろうが」
「まぁダメ元で探して見ますよ」
 暴力団組織は千九百九十一年頃、全国で最大十一万にも膨れ上がったが現在では二万六千人まで減少した。それでも生き残りをかけた下部組織は必死に生き抜いて来た。
関東では下部組織ながら勢力を誇っている、鬼勢組は組員百人程度の組だが他に準構成員三十人が居る。パシリもやるし、つまり使い走りで組には都合の良い人員であり、条件により組の名前の利用が許され、利点として組からシノギも貰えるし揉め事があった時に面倒を見てくれる。

今は売り出し中の鬼勢組でメキメキと力を付けて来ている。そうなると敵も多くなる。それで狙われたのだろう。たぶん敵対する組織が動いたのだろうと幹部連中は見ていた。既に二人が何者かにより射殺されている。
組員はどうして仇を取らないのかと組長に言った。
「相手も分からず動きようがない。何故、警察に届けず二人とも密かに病死として葬儀を済ませてやったか分かるか? 組のメンツの為だ。まさか警察に犯人捜しを頼む訳にも行かない。警察に頼んだ時点で極道界の笑い者となり、もはやこの世界では舐められたら組を畳むしかないのだ。なんとしても我々の手で始末するんだ」 
 
 組長の言い分は分っているが、諦め切れずに闇サイトを調べていた若頭の近藤は叫んだ。
「組長ありましたよ。これスナイパーじゃないですか」
「馬鹿な! 警察が調べたらすぐばれてしまう。どうせこんな所にサイトを開く奴は悪戯に決まっている」
 組長はまったく信用していないので若頭の近藤は駄目元でやっていのだから最後まで追求するつもりだ。取り敢えずアクセスしてみた。すると返事が返って来た。
『コンタクトを取りたければ次のメールに連絡せよ。但しこのメールアドレスは仮のものだ。そちらの身元が確認できしだい、新たなメールアドレスを知らせる。尚、このメールは一度使用すれば消滅する。また逆に罠を仕掛けた場合は、そちらのパソコンを強力なウイルスを送り込み住所氏名をあぶり出し攻撃する。以上』
「ほうこれは用心深いな。もしかしたら本物かもしれない。さてどうするか。いつまでも疑っていては先に進まない」
暫くすると身元が確認出来たので次のメールへ連絡せよとある。
近藤は指定されたアドレスにメールを送った。すると新にメールが届いた。そのメールアドレスに要件を入れて送った。途端に前のメールが勝手に削除されていた。これは相当なプログラマーが居るのかもしれない。うん臭いが掛けて見る事にした。
『こちらは関東鬼勢組、若頭の近藤と云う者だ。当方の舎弟が何者かに二人やられている。その相手を探し出し始末して欲しい』
 『それは暗殺かそれとも捕獲か、制裁を加える事かそれによって料金が異なる』
『暗殺して欲しい。それと何処の組織の者か調べて欲しい』
 『では料金だ。標的を探す出す費用は一人五百万、捕獲は一人千万、制裁は一人(重症を負わせる)千五百万、暗殺は四千万だ。それで良かったら引き受けよう。但し手付金一千万が必要だ。OKなら口座番号を知らせる。其処に振り込めば契約成立だ』
 
 これは悪戯じゃないようだ。近藤は組長に報告した。
「なに、まだやっていたのか。でっ信用出来るのか?」
「相手も巧妙にアドレスを変えています。用心深さから行っても信用出来るかと」
「それにしても随分吹っ掛けた金額だな。これだと二人を始末するに一億円も取るというのか馬鹿げている」
「じゃ諦めますか。しかしこのままだと第三、第四の被害者が出ますよ。それとも本家(関東大河原一家)に相談しますか」
「馬鹿言え、これはうちの問題だ。恥を晒すきか。下手に頼んだら上納金の上乗せを要求される。くそっ俺達で探すのは無理なのか。一億を何処から作るかだ。組員どもから一人十万円徴収するのはどうだ。手付金の一千万にはなるだろう」
「ですね、同じ組の仲間だし香典代と思えば安いものでしょう」
「シノギも厳しい時代だし、その位の金額なら文句もないだろう」
「なるほど組員は百人だけど、下っ端の三十人は準構成員だし免除としましょう。足りない分は組の費用で賄いませんか」

 これで話は纏まった。闇サイトの連絡を取った。早速下記の口座に振り込めとあった。
 渡嘉敷信用金庫 具志川支店 普通0000000 李恩心櫂
「なんだぁ、こりゃあ? 信用金庫だと、こんな沖縄の離れ小島の? しかも口座の持ち主がふざけて居る中国人か」
「まぁ取り敢えず手付金一千万だけ振り込みましょうや。成功しなかったら後は払わなくて済みますから」
「そうだ。但し仕事もしないでドロンしたら総動員で見つけ半殺しにしてやろう」

勿論、暴力団組織、また個人でも暴力団から引退しても五年は口座を持てなくなった。しかしそこは巧妙に組織と関係のない会社を設立し第三者が口座を操作して活用している。
 そして契約は成立した。二週間以内に仕事を完結するという返事だ。随分と自信がありそうだ。怪しいサイトだが今はそれに縋るしかない。そして十日が過ぎたがなんの連絡がない。
「おい、近藤。どうも心配になって来た。このまま騙す取られる可能性が出て来たぞ」
「へぇ……万が一そうなったら私が自腹で支払います。勿論その責任もとります。なんとしても探し出し半殺しにしてやりますよ」

 近藤も頭に来ている。騙された線が強い。これは全部自分の責任だ。そこで十人ほどのパソコンに詳しい者を呼んだ。しかし闇サイトのメールアドレスから相手を特定するのは無理だった。
 すると組員で近藤が可愛がっている鈴木が言った。
「若頭、俺らの中にはそこまで無理ですが一人有名なプログラマーなら知っていますよ」
「なに! 本当か。そいつなら相手を探し出せると言うのか?」
「まぁ保証は出来ませんが、あいつなら」
「でっどんな奴だ。まさかどこかの組のもんじゃないよな」
「へぇ、個人経営していますが。大手のゲーム会社に自分の作ったゲームを売り込んでいまして、もう何十本もヒット作品を作っていて恐らく年収は数億以上だと思います」
「ほうそれは凄い、しかしゲームを作るのと闇サイトやメールの元をたどるのは違うじゃないのか」
「いやいやゲーム一作るは大変なプログラムが必要です。奴なら警視庁や外国のサーバーに忍び込み極秘情報だって手に入れられるという噂ですよ」
「ほうそれは凄い、すぐ連絡を取って頼めないか。しかしなんでお前とどう言う関係なんだ」
「ひょんな事で長野という奴なんですがね。暴力団に脅されている所を助けてやったんですよ」
「鈴木、お前だって同じムジナじゃないのか」
「若頭、よして下さいよ。俺だって根っからの悪人じゃないですよ。キチンと話を付けて今後、長野には手を出さないと丸く収めたんですよ。それで奴は命の恩人だと今では兄のように慕ってくれていますよ」
「ほうお前もなかなかやるじゃないか、でっ相手はどこの組だ」
「佐島組のものですよ」
「佐島組? なんだ組員が二十人ほどの弱小組じゃないか、それで俺は鬼勢組の者だと啖呵を切ったのか」
「へっへへ鬼勢組と言ったら効果てきめんで大人しく引き下がりましたよ」
「お前の手柄じゃなく鬼勢組の、看板の恩恵じゃないか」

 そして二週間が過ぎた。やはりなんの連絡がない。近藤は騙された。もはや組長に謝っただけでは済まされない。一千万円弁償して更に、指を詰める覚悟で組長との所に出向いた。
「組長、申し訳ありません。全てあっしの責任です。勿論弁償します。それとケジメとして指を詰めさせて貰います」
「馬鹿野郎、てめぃの指を貰っても気持ち悪いだけだ。許可した俺にも責任がある。気持ちだけは受け取っておく。それにしても鬼勢組を舐めやがってなんとして探し出して東京湾に沈めてやる」
「組長、あっしが先頭になって探し出しますんで、組長の温情に応えてみせます」
 この時は凄いプログラマーが居るとは言わなかった。糠喜びさせては申し訳ないと。
 早速、長野という男を鈴木が連れて来た。その闇取引に使ったパソコンを見せてくれという事だった。その長野という男、三十代前半で華奢ではあるが、いかにもインテリ臭い風貌で頭が切れそうだ。自ら二台のパソコンと色んなパソコンと繋ぐのだろうか、見慣れない機械を用意していた。一部屋用意して欲しいとの事だ。組事務所にある十畳ほどの部屋を提供した。

 すると闇サイトと交信したパソコンと長野が持って来た二台とパソコンを繋ぎ更に見慣れない機械を繋いで行った。持って来たキーボードを二台セットし、まるで魔術師のように両方のキーボードを器用に操る。ピアノを奏でるような動きだ。これを目にも止まらぬ早業というのか。それから一時間ほどして長野はニャッと笑った。
「?? まさか突き止めたのか」
「はい、相手はデーター完全に消したと思っているでしょうが、発信元が特定出来ました。ベトナムを経由して更に数ケ国を経由し最終的には関西の暴力団傘下の闇金でした。豊田金融、洞門幸造が社長ですね。ああついでに振り込んだ一千万、その日のうちに引き出されて洞門幸造の個人口座に振り込まれていました」
「なんで口座が沖縄にあるんだ?」
「多分、ここにも豊田金融が支店を置いて在住する社員が居るでしょう」
「なるほど、しかし何もこんな辺鄙な所に支店を置かなくても。なんだって、そんなに巧妙に経由されては我々には分からないな。それにしてもあんたは凄い」
「辺鄙な所だからそれなりの利点があるからでしょう」
「確かに、それも一里あるが俺にはさっぱりその利点とやらが分からん」

「それで豊田金融のサイトの入り込み、この口座から二億円を逆に抜き取ってやりましたよ。それで日頃世話になって居る鈴木さんと若頭の近藤さんへそれぞれお礼として海外の新しい口座に五千万ずつ振り込んで起きました。勿論、暴力団組織は口座を作れないので、この口座を利用して下さい。引き出し時は私に連絡してくれれば上手く引き出しますから。ついでに私の秘密口座に一億円抜き取ってやりましたよ。だから礼は要りませんから。それと奴らに気づかれる事はありませんよ。架空の残高はそのまま残っていますから、例え分かってもいくつかの口座を回しスイス銀行に一旦入れて、グルグルと駆け巡るので絶対に分かりません」
「ほっ? 本当か。たった一時間少しで相手を探しただけでなく、金を取り返し更に二億円もふんだくったのか。そんな事が出来るのか」
「まぁ普段はやらないですが悪徳業業者に制裁を加えてやりました。なんならこの豊田金融闇を警察に告発してやれば豊田金融はお終いです。どうします?」 
「それは有難いが、あの豊田金融、洞門幸造から金を取り返しただけでは腹の虫がおさまらない。大阪に乗り込み、とっ捕まえて制裁を加えないとな」
「気持ちは分かります。まあ私が出来るのはネット関係だけですから、住所は調べて置きましたから、あとは若頭の好きなように」
「取り敢えず今日はありがとう。あんたの腕は凄いな。気に入ったよ。多分また頼むことになると思うが宜しく」

数日後、若頭の近藤は舎弟五人を連れて大阪に乗り込んだ。豊田金融の住所は調べてあるから後は洞門幸造を見つけて拉致して制裁を加える予定だ。大阪に乗り込んで三日目、やっと洞門幸造が一人になった所を、舎弟が攫って頭から袋を被せてワンボックスカーに乗せ大阪湾埠頭に連れて来て来た。
「外に出ろ! 洞門幸造この間は良くも騙してくれたな。ヤクザを騙しとはいい根性しているな。ヤクザを舐めているのか。テメイのバックに鳴海会が付いている事も調べてある。だがな、関東のヤクザを甘くみるんじゃないぞ」
「お前らこんな事をしてタダで済むと思うか」
「ほう文句があるなら鳴海会の連中を連れて来てもいいぜ。たかが五十人弱の関西の極道なんか蹴散らしてやる。もちろんその時はお前の命ないがな」
頼りの鳴海会も敵わないとなれば洞門もお手上げだ。急におとなしくなった。
「……俺にどうしろと言うのだ」
「勿論、謝罪だ。謝罪と言っても頭を下げただけでは許せない。落とし前をどうつけるかせ自分で考えろ」
「金か、金なら返す……二千万円でどうだ」
「なに! 舐めているのか、最低でも五千万だ。それでも嫌なら、命を貰うだけだ」
「わ、分かった。言う通りにするから助けてれ」
「分かればいい、ただここまで出向いた出張費は体で払って貰う。お前ら、やれ!」
すると一斉に洞門幸造を殴りつけ蹴とばしボコボコしてやった。金ですむと思った洞門幸造は泣きながら謝った。深夜一時頃、誰も居ない豊田金融の事務所に連れて行き金庫を開けさせ五千万の現金を受け取り引き上げて来た。
「俺達を騙した代償だ。命を取らないたけでも有難く思え」
洞門はよほど怖かったのか終始ガダカダ震えていた。鳴海会に泣きつく事も出来ず泣き寝入りするしかなかった。大阪に連れて行った舎弟には一人五百ずつ報酬としてくれてやった。話の分かる若頭だから信頼も高い。 

今回は舎弟の鈴木は大阪に連れて行かなかった。そんな事を知らない鈴木が言った。
「それなら折角貰った金の一部を使って有名な探偵を雇い犯人を捜し出しましょうや。若頭、それでいいんですかい」
「それりゃあお前の金だ。それを組の為に使ってくれるなら助かる。成功の暁にはお前も幹部に推薦しないとなぁ」
「へぇそれは有り難いです、じゃ早速コネを使って探してみますよ」
 それから数日経って鈴木が探偵を探り当てた。
「なに? 元デカか。それは駄目だ。警察って聞いただけでゾッとする」
「大丈夫ですよ。彼だってヤクザと裏取引して懲戒免職になっていますから、今ではヤクザが顧客らしいですよ」
「何だってヤクザが顧客? そうか分った。ただ四~五日待ってから頼んでくれ」

若頭の近藤は長野に頼みがあると呼んだ。
「長野先生、先日はありがとうよ」
「先生は止めて下さいよ。こちらにはお世話になっていますから。こちらこそ宜しくお願いします」
「いやいやあんたは先生だよ。実は今日来てもらったのは、うちの組のもんが二人殺されているんだ。犯人を探す方法はないか」
「それは無理です。パソコンに繋がるものなら突き止められますが。生身の人間のイザコザはどうにもなりませんよ」
「それなんだが、この探偵事務所のサイトを調べて欲しいだ。
「おーそれならサイトを調べて見ましょう」
 近藤はプログラマーの長野に頼み、その探偵事務所を調べさせた。若頭の近藤も闇サイトに騙され痛い目にあっている。特に怪しい探偵も信用出来ない。なんたって長野に掛かれば簡単な事だった。長野はその探偵事務所が開いているサイトを調べた。確か元警官と書いてある。探偵にとって警察官上がりの探偵は信頼出来るし頼りにされるからだ。
 ただ調べたのはそれだけではない。その探偵のサーバーに入り込み、更に仕事を引き受けに使われたメールも調べた。長野に掛かればネットに繋がったものは、相手のサーバーに忍び込みデーターを調べられる。其処には過去の取引内容などが残されていた。もっとも消されたメールの内容も長野に掛かれば簡単な事だ。長野の報告に若頭の近藤は、ほくそ笑んだ、とんでもない事実が隠されていた。
「ふん、鈴木はまだ甘いな、まっ俺の為ならなんでも引き受けるから可愛いところはあるが実にアマイ!!」
そして四日後、その探偵と連絡を取るように鈴木に頼んだ。その探偵は内海といった。
頼んだ内容は組員を撃った犯人を捜してくれというものだった。それなら犯人と思い当たる資料を揃えて持って来てくれという事だった。資料と言っても二人が殺された時の弾が二個あるだけだ。あと敵対する暴力団と、それに闇サイト関係の洞門幸造しか思い浮かばない。しかし確たる証拠がない。ドスで刺されたなら色々と分かるが遠くからライフルで撃たれれば何もつかめない。
待ち合わせ場所に内海が現れた。表向きは探偵、裏の顏はスナイパー。この内海、背丈は百六十前後で以外と華奢だった。スナイパーつまり殺し屋にしては小さすぎた。若頭の近藤が連れて来た若い衆は全員百八十センチ以上ある。腕力なら誰にも負けない。

 しかし内海は探偵、捉えどころが違う。まず射殺された現場検証すると言った。狙撃された場所から撃たれた角度で高さと方面が分かるそうだ。流石は元警察官、見所が違う。若頭の近藤に鈴木と、その他四人ほどの組員を連れて内海に同行する。
射殺された現場から打った方向を確認する。すると百メートルから百五十メートルほど先に狙うには手頃なビルを見つけた。双眼鏡で確認すると屋上がある七階建てのビルだ。そのビルに行くと古い雑居ビルだった。監視カメラもないし警備員を置いて居ない。だからすんなりと屋上に行く事が出来た。内海は鑑識経験もあるのか色んな道具を出して調べた。
「やはり此処から狙撃したのだろう。なんと間抜けな犯人だ。たぶん犯人は洞門幸造の配下か雇った殺し屋だろう。この男に前から狙われたんじゃないか」
まさかここで洞門幸造が手で来るとは思わなかった。 
「なんだって? 闇サイトを開いている相手と、どう繋がるんだ」
「洞門幸造って奴を調べたのだが、お宅等に恨みを持っているのか分かった」
 内海は洞門幸造を締め上げ吐かせた事を知らないようだ。しかも洞門幸造は殺し屋なんか雇っていない。頼む時は鳴海会に依頼する。若頭の近藤はとぼけて話に合わせた。
「するっていと洞門幸造は我々が闇サイトで依頼してくる読み網を張っていたのか」
「まぁあんた達は巧みに誘導されたようだな」
すると若頭の近藤が内海に向かってニヤニヤした。すると内海は不思議そうな顔をした。
「洞門幸造ってのはただの闇金融業者だ。それより一発で狙撃場所を特定するとはたいしたものだ。まさか真犯人が現場に連れて来るとは誰も考えはしない。裏の裏をかいたつもりだろうが、そう行かない。こっちはな先日、洞門幸造を襲って全部吐かせたぜ。撃った犯人はお前だからな。おい! お前等こいつを取り押さえろ。ふざけやがって」

すると鈴木は怪訝な顔した。自分が見つけた探偵が真犯人だったとは。
「若頭どういう事ですが」
「バカ、お前は嵌められたんだよ」
「まっまさか……」
「まだお前は甘いな。この内海を早く取り押さえろ」
「なっなんだと、ふざけているのはそっちだろう。俺は探偵だ」
「この野郎とぼけんな。お前の裏家業は探偵でなく殺し屋だろう。顧客の大半がヤクザだってなぁ、それでピンと来た。お前に頼んだ相手は、うちの組と敵対する楽天一家だろう。その楽天一家から洞門幸造の情報を聞いていたんだろう。以前にもお前は楽天一家から三千万で引き受けただろう。こっちだって優秀な者がついているんだ。お前が消したメールに犯行を請け負った形跡があるんだ。三千万と言ったら大金だ。まぁ一年は軽く遊んで暮らせる額だからな」
「馬鹿な、嘘に決まっている」
「いやお前は警察では射撃手として有名だったそうじゃないか」
「……し、知らん」
だがその言葉の続きが出て来ない。もはや認めたも同然だ。いくら有名なスナイパーでも、目の前で取り押さえられては何も出来ない。それから内海は行方不明になったそうだ。噂では暗殺されたとも言われるが死体が見つからない事には、ただの噂に過ぎなかった。

鈴木はとんだ恥をかいたがプログラマーを紹介してくれたお蔭でミスは帳消しになった。
だが鈴木の舎弟頭の座は遠のいた。しかし今回も長野のお陰だ。
それから長野には常に親しみを込めて、先生と呼び関東鬼勢組は彼の警護を引き受けるようになった。もはや関東鬼勢組には欠かせない存在である。
 若頭の近藤は今回ほどプログラマーの凄さを見せつけられたことはない。これからは暴力団組織も改革が必要だ。それ以来三カ月に一度、長野を講師に招きパソコン講習会を開くようになった。暴力団も力だけでは生きて行けない事も悟った。

 了
 
 

暴力団組員と天才プログラマー

執筆の狙い

作者 西山鷹志
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前回と違い、淡い恋もなければ愛情すらない、今回はヤクザの世界。
しかしヤクザも年々厳しくなっている。そんな中、組の者が二人殺された。
力の世界に飛び込んで来たのは超一流のプログラマーだった。
 

コメント

中小路昌宏
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 読みました。

 いやあ、西山さんはネタ切れということは無いのでしょうか? 2週間置きに、これで何回連続投稿されていますか? 作品の出来不出来はともかく、その持久力には感心します。

 私はヤクザの世界のことは何も分かりません。まあこのように、私たちの知らないところで殺したり、殺されたりして暗躍しているのでしょうね。

 もしかしたら西山さんもその筋の人? なんて事は無いのでしょうね? クワバラクワバラ・・・・・・

神楽堂
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読ませていただきました。
おもしろかったです。

これはこれで、エンタメとしては成立していますが、
もっとリアリティにこだわってみてもいいかなと思いました。

凄腕のハッカーが活躍する物語ということで、
サーバーにアクセスして情報を手に入れるという、
一般人のイメージ通りのハッカーなわけですが^^;

ええっとですね……
実際に相手の個人情報を手に入れる方法としては、
サーバーにアクセスというのは難易度が高いですし、あまりこういう方法は取られないと思います。

一人の凄腕が問題を解決するストーリーは読んでいておもしろいので、
それはそれでいいんですけど。

私が誰かの個人情報を知りたいとしたらという仮定での話になりますが、A○に勤めている知人にIPアドレスを伝えて情報を教えてもらう、それで終わりです。
住所氏名などはそれで分かりますので、私がハッキングする必要なんてないんです。

凄腕のハッカーの正体は、ただ単にその方面に知人がいるかどうか、なのです。

ただ、これは小説ですので、サーバーに侵入する方が物語的にはおもしろいとは思います。

やくざ系の作品は、非日常を味わえるので楽しいですよね。
読ませていただきありがとうございました。

西山鷹志
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中小路さん

早速のコメントありがとうございます。

>いやあ、西山さんはネタ切れということは無いのでしょうか? 2週間置きに、これで何回連続投稿されていますか?

昨年は26回投稿しました。その前の年とその前は23回でした。
エクセルに記録してあります(笑)
私が作家でごはんに最初に投稿したのは2008年10月です。
今では古株かも知れませんね。

>もしかしたら西山さんもその筋の人?

あっバレてしまいしましたか。

ここだけの話、桜組におりやすんた。
組長は女なんでけどね、あっしもとっく足を洗ってますけどね。 
小鳩幼稚園と申しまして関東じゃチト有名過ぎて誰も知りません(笑)

西山鷹志
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神楽堂さま

お読みいただきありがとうございます。

ヤクザもハッカーなども詳しくないのですが
両方組み合わたら面白いのではと作って見ました。
以前のもヤクザの小説を書いて、銀行口座を作れませんよとお叱りを受けました。
極道の世界も厳しくなりましたね。

私が若いころ、友人の弟がそっち方面の人で友人の結婚式に
招待された事がありました。
一目見ただけでその方面の人だと分かりました。
「兄貴がお世話になっております」
腰が低く言葉使いも丁寧でした。堅気さんには優しいようです。

ありがとうございました。

平山文人
zaq31fb1c44.rev.zaq.ne.jp

西山鷹志様、作品を拝読させていただきました。

ヤクザもので言えば、「アウトレイジ」や「虎狼の血」「ザ・ファブル」などが好きで、
アウトローの世界の独自の美学というのがあるよなぁ……と思っていますが、本作でも
その辺りの任侠の独特の世界が上手に書かれていたと感じました。

読み終えて一点、誤字脱字がところどころにあるのが気になりました。

・すると新にメールが届いた。 →新たに
・うん臭いが →うさん臭いが
・用心深さから行っても →言っても
・騙す取られる →騙し取られる

こういうものは書き終えた後、推敲含めて最終チェックをすればなくなると思います。

アウトロー小説かと思って読んでいたら、最後にどんでん返しが待っていて驚きました。
小説を読む楽しみというのはこういうものですよね。とても面白い作品でした。
次回作も楽しみにしています。これからもお互いにがんばりましょう、それでは失礼します。

夜の雨
ai248123.d.west.v6connect.net

「暴力団組員と天才プログラマー」読みました。

むかし飯干晃一の小説を読んだことがありますが、系列が似た感じですね。
彼の小説も面白かったですが、御作も面白い。
長野という天才プログラマーですが、ゲームのプログラムで年収数億円稼いでいるのなら、暴力団と関わらないほうが得策だと思いますが。
いくら、以前お世話になったとはいえ。
また、暴力団に絡まれたとかのときは、警察に相談すればよいと思いますが。
芸能人で暴力団と付き合っていて、芸能活動ができなくなった者も多いのではありませんか。
またこの長野は闇金融とかのパソコンにネットから潜り込み、勝手に相手の銀行預金から自分の通帳へまわりまわって金が振り込まれるようにしていたようですが、こんなことができるのなら、いくらでも金を稼ぐことができますが。
まあ、被害に遭う方も、基本は必要な時以外は大事な情報が入っているパソコンはネットにつながないことですかね。

御作の構成(起承転結)はよかったです。
狙撃者にどうつながるかと思っていると、ネットつながりから、「それから内海は行方不明になったそうだ。」という流れで死体は上がらないと殺人事件にはなりませんね。
御作の面白さは、二重にも三重にも罠が張られているところですかね。


お疲れさまでした。

西山鷹志
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平山文人さま

お読みいただきありがとうございます。

>こういうものは書き終えた後、推敲含めて最終チェックをすればなくなると思います。

そうですね。つい物語の進行ばかり頭にあって確認したつもりですが毎度のことで(笑)。
指摘されて気づくようでは駄目ですね。

>アウトロー小説かと思って読んでいたら、最後にどんでん返しが待っていて驚きました。

プログラマーとヤクザの組み合わせも面白いかなと思いました。
ヤクザですから、やられたらやり返す。ところが犯人が見当もつかない。
そこでプログラマーがネットから沢山の情報を得て真相を暴いて行く。
すんなり終わっては面白味がないので最後にどんでん返しを取り入れました。
ありがとうございました。

西山鷹志
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夜の雨さま

いつもありがとうございます。

>ゲームのプログラムで年収数億円稼いでいるのなら、暴力団と関わらないほうが得策だと思いますが。

そうですね。何も危ないところと付き合わなくても生活には困らない。
しかし長野もヤクザ相手が犯罪者だとしても2億円も盗みとって、信頼できる後ろ盾が欲しかった。そんな設定しすれば疑問が解けたでしょうね。失敗です。

因みに狙撃銃の世界記録は
遠距離狙撃の世界記録は、2017年、カナダ軍の特殊部隊所属のスナイパーがイラクでイスラム国(IS)の兵士を射殺した3540メートル
これはもうゴルゴ13もビックリですね。
1000メートル以内なら、狙撃手なら楽勝らしいですが
2300メートルだと発射して標的に当たるまで6〜8秒かかるそうです。
勿論、風の計算もしないといけないし、標的が動いたらお終いですね。

ありがとうございました。

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