作家でごはん!鍛練場
パレット

自我

 物心ついて初めて記憶に残った風景は、狭い海峡を挟んですぐ向こう側に見える、隣国の豊かな大地であった。それは、万年雪を抱いた山脈の広々とした裾野であり、よく晴れて空気が澄んだ秋の日には、収穫を前にした農地が柔らかな黄金色に覆われている様子がはっきりと見えたものである。
 それに引き換え、われらの国は山がちで岩肌が海まで迫り、耕せる土地は乏しかった。海峡は狭いがゆえに潮の流れが速く、あちこちで渦を巻き、隣国に渡るのはおろか漁に出るのすら容易ではない。だから険しい山肌をよじ登り、海鳥の巣から卵を手に入れたり、山腹を分け入った森の中で、木の実を取ったり動物を捕えたりして、先祖の時代から細々と命をつないできたのである。
 ところが、わたしが成年に達するころから不順な天候が続き、山の恵みにもすっかり見放されてしまった。この貧しい領土を棄て去り、屈辱を忍んで豊かな隣国に助けを求めなければならないことは、もはや誰の目にも明らかだった。ところが、事ここに至るまで、われらは自分たちの国そのものの正確な地理を知らなかったのである。たとえ隣国に渡るにしても、どの地点から海に漕ぎ出せばよいのか?あるいは隣国と地続きになっている場所はないのだろうか?
 われらは如何にして自分たちの領土を見定めることができるのか?若者たちを中心に、探索する部隊が幾つか編成され、そのうちの一つは危険を冒して背後の山岳地帯を登り切り、山頂から遥か遠方の海上や陸地を見渡す任務を担った。これに対して別の部隊、すなわちわたしが所属することになった部隊は、荒海が打ち寄せる絶壁に沿って伝い歩きしながら、海岸線を調査するという困難な使命を負った。しかし、いずれの部隊においても、若者たちの中で無事帰還できたものはほとんどいなかったのである。
 わたしはかろうじて生き残った。同僚は皆、荒波にさらわれて海にのみ込まれたが、わたしはひたすら海岸線をたどり続けた-無益な結果をもたらすためだけに。というのは、気の遠くなるほど長い探索の旅を通じて、港に適した場所を見つけられなかったばかりか、結局ひと回りして出発した地点に戻ってきてしまったからだ。つまり、われらの国は孤島である、という事実を明らかにしたに過ぎない。われらの領土が、人間の孤独な自我にそっくりである、という事実を…。

自我

執筆の狙い

作者 パレット
KD027094177155.ppp-bb.dion.ne.jp

 初めて投稿致します。どうか宜しくお願い致します。この作品を書くきっかけは、間宮林蔵が日本の北方を探検して樺太が島であることを発見した、という史実を知ったことです。島という存在は、他の世界から孤立しているという地理的条件のために、寓意的な想像をかきたてるところがあり、その想像の一つに形を与えたい、ということが今回の執筆の動機です。ご感想をお教え頂ければ幸いです。

コメント

偏差値45
KD106180000195.au-net.ne.jp

うーん、内容は分かるのだけれども、
文章上では、何所の場所を示しているのか、分かりませんでしたね。

とはいえ、「執筆の狙い」において

>間宮林蔵が日本の北方を探検して樺太が島であることを発見した、
とあるので、たぶん、わたし=間宮林蔵。

>われらの国は孤島である=樺太。ということになるのかな。

しかし、そういうヒントがあったとしても作品のみの感想しか書けないので、
個人的にはイメージできない、と指摘したいところです。

>隣国の豊かな大地であった。
>耕せる土地は乏しかった。

文章上では時代の設定がないので、現代として考えてしまいます。
日本は水が豊富ですし、寒冷地であっても水田もありますので、
その点で言えば、ロジア、韓国、台湾と比較しても納得できない部分が大きいかな。

>われらの国は孤島である

うーん、違うかな。日本は列島ですからね。
孤島って一つだけぽつんとある存在ですからね。

総じて詳細な設定の説明をしていないので方向性が欠ける、
意味のない内容に思えて仕方ないです。

パレット
KD027094177155.ppp-bb.dion.ne.jp

偏差値45さん、感想ありがとうございます。
そうですね...具体性が乏しいので
読者の方が内容を把握しようにも、手がかりがない、
ということですね。
ご指摘ありがとうございます。
参考にさせて頂きます。

夜の雨
ai248121.d.west.v6connect.net

「自我」読みました。

全体に漠然としていてわかりにくくなっています。
「樺太」に住んでいる住人の子供時代から始まって主人公が大人になったころに農作物が取れなくなったので、海の向こうの国(ロシア)が豊かそうに見えていたので、助けてもらおうと思ったが、自国(樺太)がロシアとつながっているのか、それとも離れているのかもわからないので、二班に分かれて、領土がどうなっているのか調べてみた(探検)という事ですよね。
ところが現在の地図を見ると「樺太」は500キロほどの長さがあり、日本の半分ほどの長さです。
なので、領土を探検するとなると、とんでもない旅路という事になります。
もちろん道などはありませんので。
断崖絶壁とか深い森とか。

ところが周ってみないことにはどうなっているのかわからない。
それで長い旅路の結果、二班に分かれた隊員たちは、ほぼ全滅したという事ですよね。
主人公は樺太を一周して帰還したらしいですが。

それでタイトルになっている「自我」を「樺太(島)」と「主人公(人間)」と絡めたいというわけですかね。
これをやるには、探検する過程を描く必要があると思います。
極地を探検する小説などは結構ありそうなので、そのあたりの作品を読んで参考にするという手もあるかなと思いますが。

現状の御作だと、樺太を一周しました、その過程で二班に分かれて探検した若者たちはほとんど亡くなった。主人公は帰り着いたが。
というようなお話になっています。
それと隣国であるロシアの地が見えていて、農作物が豊などが書かれていますが。

このあたりは調べて書いた方がよさそうですね。
樺太から見える隣国で農業をしているのかどうかわからないので。
樺太も書籍を図書館から取り寄せて、(ほかネット検索)主人公たちがいた時代はどうなっていたとか。
そうすると、ある程度具体的なエピソードが描けるのではないかと思います。


お疲れさまでした。

神楽堂
p3339011-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp

はじめまして。
「自我」を読ませていただきました。
樺太は島だった→人間の孤独な自我にそっくり
これが作品のテーマだと思うのですが、ちょっと展開が急すぎますね^^;
着想はおもしろいと思いました。
このオチでいきたいのであれば、
登場人物の「孤独な自我」を、もっと具体的に書き、
それと「島」との類似点をいくつか挙げることで、
説得力のあるオチになるように思いました。

あとですね^^;
この物語はフィクションなので史実とは関係ないとは思いますが、
このお話だと、島の住人自身が樺太を島だと気づいた、みたいになっていますよね。
実際は、内地の人間である間宮林蔵が、間宮海峡を通過して、樺太が島であると
世界で初めて明らかにしています(世界の海峡の名前に日本人の名前が入っている稀有な例なのです)。

あと、私は稚内公園から樺太を見たことがありますが、晴れている日に水平線の彼方にぼんやり見える程度ですよ^^;
それと、北海道の北部では寒さが厳しく、農業は難しいです。
牧草を育てるのが精一杯なので、宗谷地方では農業ではなく、酪農が盛んです。

私はカクヨムというサイトでも小説を書いていますが、
北海道を題材とした作品もいくつか書いています。

樺太で実際に起きた出来事も作品にしました。
『最後の電話』という作品です。
私の名前をクリックすれば、カクヨムのわたしの作品リンクにいけますので、読んでみてください。
樺太に関心がおありでしたら、きっと、おもしろいと思っていただけると思います。

ぷりも
softbank060111105211.bbtec.net

拝読しました。
私は執筆の狙いをあとから読んだので、舞台は文明の発達していない時代の小さな(小豆島的な)島国かと思って読み進めました。
私は文学系は不得手で、「老人と海」とか「羅生門」とかオチがないというか、なんというかそういう話の面白さがわからない人です。でも、「蜘蛛の糸」「注文の多い料理店」なら教訓的なイソップ童話みたいな面白味を感じます。御作は後者だと感じました。筆力がある方だと思います。
「われらの領土が、人間の孤独な自我にそっくり」この部分がよくわかりませんでした。ここを明確にしたら個人的には引っ掛かりがありません。

パレット
KD027094177155.ppp-bb.dion.ne.jp

夜の雨さん、ご意見ありがとうございます。

まず何よりも、お詫びしなければいけないのは「執筆の狙い」で、お読みになる方を混乱させてしまったことです。あの内容を読めば、間宮林蔵の史実をもとにして書いた、と思われて当然ですよね。

今回、間宮林蔵の話から参考にしたのは「探検して島であることがわかった」という点だけなのですから、「執筆の狙い」と「作品(仮にそう呼べるものであるとして)」との間の落差に、誤解を持たれて当然です。

たた、間宮林蔵の史実とはほとんど関係のないフィクションだからと言って、作品中の具体的描写の薄弱さの言い訳にはならない、と思います。

夜の雨さんが指摘されているように、歴史的、地理的事実をもっと詳細に調べて、その内容を盛り込まない限りは、作品としてのリアリティが乏しいままで、結局、書きたかった「自我」との関わりも不明確なままに終わるでしょう。

ご意見ありがとうございます。
参考にさせて頂きます。

パレット
KD027094177155.ppp-bb.dion.ne.jp

神楽堂さん、ご意見ありがとうございます。

「島→人間の孤独な自我にそっくり、というオチでいきたいのであれば、登場人物の『孤独な自我』を、もっと具体的に書き、それと『島』との類似点をいくつか挙げることで、
説得力のあるオチになる」というご指摘、本当にその通りだと思います。

夜の雨さんへの返信にも書きましたが、作品中の具体的描写をもっと分厚くして、リアリティを高めるために、歴史的、地理的事実をもっと詳細に調べて、その内容を盛り込まなければいけない、と感じました。

そうでないと、オチにも説得力が出てきませんよね。

それにしても、北海道のこと、お詳しいですね。
『最後の電話』という御作、ぜひお読み致したく存じます。

ご意見ありがとうございます。
参考にさせて頂きます。

パレット
KD027094177155.ppp-bb.dion.ne.jp

ぷりもさん、ご意見ありがとうございます。

「執筆の狙い」をあとから読んでくださったので、その分誤解も少なく、お読み頂けたのではないか、と思います。

それでも「われらの領土が、人間の孤独な自我にそっくり」の部分は、理由を示す具体的な記述が文中に書かれていないので、不明確ですよね。

この部分の意図は以下のようなものです:島も、隣国も、それぞれが一人の人の自我を表しています。その二つの自我は、お互いに近い距離にいる(海峡が狭い)にもかかわらず、いざ、その短い距離を越えようとすると、超え難い障害がある(潮の流れが速く、あちこちで渦を巻いている)。そもそも、二つの自我はお互いに理解し合える方法があるのかどうか、わからない(自国の地理的条件がわからず、隣国へ渡ることができるかどうかも不明)。だから、自国の海岸線を辿って歩くのは、おのれの自我を探るとともに、隣人の自我を理解する方法を探ることを表しています。結局は、二つの自我、すなわち人間同士が理解し合うことの不可能を悟るがゆえに「孤独な自我」という表現になります。

口はばったいことを書いてしまってすみません。でも、
ぷりもさんにわかって頂きたくて、ついくどくどと書いてしまいました。

お読み頂き、本当にありがとうございました。

ぷりも
pw126157174232.30.panda-world.ne.jp

なるほど、それが伝えられたら面白いのでは。
島を周ってみたものの、外に出ることは無理そうというのは自分の殻で、渦巻く潮が相手を隔てる障壁。だけどそれは、本当に脅威なのか、自分が踏み出せばなんてことはないものだったりしないのか、だけど踏み出す勇気がないというような心の葛藤が表せたら深い感じになるかと。参考になるかどうかですが。

パレット
KD027094177155.ppp-bb.dion.ne.jp

ぷりもさん、どうもありがとうございます。とても参考になります。

たとえば、やむにやまれぬ気持に突き動かされ、弱い心を克服して荒海に乗り出した結果
隣国にたどりつく、といった展開だってありますよね!

結局、お互いの間で伝え合いたい、という意志の強さをどれほど持てるか?
ということかもしれません。

いろいろ考えてみると、この作品、ほんの入り口で止まっているようです。
皆さんのアドバイスを参考にして、さらに進めてみます。

たびたびご意見を頂き、誠にありがとうございます。

浮離
KD111239169124.au-net.ne.jp

書き手としてその作為を熱心に語れば語るほど明らかになる、

>われらの領土が、人間の孤独な自我にそっくりである、という事実を…。

という閉じを書きたがる“無知“をまずは認識することから始めないと、“小説“っていう前提にはずっと立てないままのような気がするんですよね。

“自我“と書かずにそれを書く。

そのために必要な気にさせられるものが“小説“っていう例えばそんな手口のことのはずではないのか? 
って、それはたぶん扱う上でものすごく基礎的な理解のはずだし、感覚として当たり前に踏まえながら楽しむことのようなつもりでやってるわけなんですよね、個人的には。



作品の立て直しそのものはそんなに難しくないはずなんですけど、捗らない感想のやり取りにこそ物足りなさを感じさせられます。

個人的には。

パレット
KD027094177155.ppp-bb.dion.ne.jp

浮離さん、ご意見を頂き本当にありがとうございます。

「“自我“と書かずにそれを書く。そのために必要な気にさせられるものが“小説“」
というご指摘、腹にこたえました。そういう基礎的な理解なくして、
「自我」という言葉を持ち出して話を閉じるのは、確かに「無知」以外の何物でもありませんね...。

よくよくご意見をかみしめたいと思います。
どうもありがとうございます。

ラピス
sp49-104-36-168.msf.spmode.ne.jp

執筆の狙いをよく読めば樺太ではないと分かりますから、作者さんに落ち度はありません。
印象としては長編の物語の冒頭に相応しい。硬質な筆致に好感が持てます。短編としてなら「書かずに書く」に同意ですね。自我。

パレット
KD027094177155.ppp-bb.dion.ne.jp

ラピスさん、ご意見を頂き、誠に有難うございます。「執筆の狙い」の件、サポートして頂き恐縮です。

構成においても、内容においても稚拙な点ばかりですが、それでも「硬質な筆致」とコメントして頂き、励みになります。

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

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