作家でごはん!鍛練場
中村ノリオ

アンドロイドには向かない職業

                   Ⅰ

 電源が入るとルーシーに生気が戻った。合成樹脂の瞳が動き出し、私の顔に焦点を合わせる。同時に少し頬が緩んだ。端正な顔立ちに、戸惑いながら微笑むような表情が浮かぶ。完全な制止から始まった僅かな動き。その効果は絶大である。こんな単純なことが無生物を魂を持った存在に見せるのは、何度体験しても不思議な感覚だった。
 私は彼女に問いかけた。
「こんにちは。ルーシー。いつもと変わりはないかい」
 ルーシーは間を置くことなく、サクランボのように可愛らしい唇を開いた。透き通った綺麗なハイボイスで、
「ええ。機能に異常はありません。それとも気分をお聞きになっているのですか。それならなおさらいつもと変わらないとお答えいたします」
 そしてルーシーは私の後ろに視線をやった。そこには見知らぬ男が二人いて、彼女に鋭い視線を送っているのである。不穏な雰囲気を感知したのか、彼女は小さく頭を下げて、
「すみません。後ろにいる方々はどなたですか」
「警察の人たちだよ」
「どうして警察の方々が来ているのですか」
「事件を調査するためだ」
「事件、ですか」ルーシーは不思議そうに小首を傾げた。「いったい何が起こったのでしょう」
 私は意外な気がした。事件の現場近くにいたルーシーは、当然それを知っていると思っていたからだ。
「君は、この邸裏手の断崖で起こったことを知らないんだね」
「知りません」
「ああ、江崎さん。質問は私たちがやりますので、その機械におかしな所がないかどうかを確かめてもらえますか。完全にいつも通りに作動しているのかどうかを」
 後ろにいる刑事のうち、年嵩の方が割って入ってきた。私は機械という冷たい言い方が気になったが、それを表に出さずに頷いて、
「分かりました。ルーシー、ちょっといいかい。機能表示パネルを見せてくれ」
「はい」
 応接間のソファーに座っているルーシーは、私の方に左腕を真っすぐに突き出してきた。清楚なメイド服を着た二の腕の外側には、機能表示パネルが内蔵されている。私は蓋を開いてそれを確認した。作動状態を示す表示はいずれも正常だった。電源も、今充電を終えたばかりなので満タンである。私は刑事たちに「異常はありません」と言おうとして、ちょっと気になる部分があるのに気がついた。人工知能の状態を示す部分を見ると、記憶データの一部が消去されていたのである。今日、六月二日の分の記憶が、そっくり消されてしまっている。ルーシーが事件のことを知らないのは当然だった。
 つまり、何者かが彼女を操作して、事件が起こった日の記憶を消し去ったということだ。その人物は、どうしてそんなことをしたのだろう。心の中に不穏なものが湧き上がってくるようだった。
 私は刑事たちのようすをチラリとうかがった。部屋の中央に立っている彼らは猟犬のような目をして硬い態度を崩さない。事故死の捜査にしてはやけに物々しいと思ったが、最初からこういう事態を想定していたのだろうか。
「正常に作動しています。ただ、記憶の一部が消されているようですね。このロボット、ルーシーには所有者のプライバシーを守るために記憶を消去する機能がついているのですが、それを誰かが操作して今日の分の記憶を消去してしまったようです」
「何だって?」年嵩の刑事は小さく舌打ちした。だが、さして意外に思っているようすはない。「つまり、このロボットは今日起ったことを何も覚えていないと言うんですか」
「ええ。そうなりますね」
「何とか記憶を復元できないですか」
「無理ですね。ひと昔前の携帯電話のような訳にはいきません」
「その、このロボットの記憶を消す操作は、普通の人間にもできるものですかね。特別な知識が必要なんじゃあないですか」
「知識はいりますが、操作は難しくない。今開いているパネルの記憶表示部分をタッチして、「記憶を消す」のコマンドを選び、その時間を指定するだけですから。彼女の操作に関するデータはネットに公開していますので、それを見れば誰でもできると思います。「ルーシー・人間型ロボット」で検索すれば見つけられますよ」
「参ったな・・・・・・」
 年嵩の刑事は横に立っている大柄な刑事と顔を見合わせた。
 ルーシーは、人間と見分けのつかない存在を目指して作られた最先端のヒューマノイドロボットである。その設計や機能については初期段階から学会で発表されており、情報はすべてオープンソース化されていた。彼女を作った研究チームのリーダーだった水森博士は、研究を多くの人に役立てて欲しいと考えていたからだ。
 ルーシーには高度な人工知能が搭載されていて、表情やしぐさの隅々にまで、人間らしい動きができるように設計されていた。人工知能は経験を積むに従って自ら学び、その精度をどんどん上げていく。
 作られて三年が過ぎた今では挙動は本物の人間とほとんど変わらなくなり、彼女を人間ではないと識別できる要素は外見の造形部分だけになっていた。どんなに精巧に作ろうとも顔立ちには人形っぽさが幾分かは残り、よく見れば本物の人間とは違うと分かったのである。
 ルーシーはキョトンとして、パッチリした目を戸惑うようにこちらに向けてきていた。
「この家の裏で起こった事件というのは何なのでしょう。差し支えなければ教えていただきたいのですけれど」
「ああ、お嬢さん」年嵩の刑事は咳払いして、苦々し気に声を発した。機械であることは置いといて、とりあえず見た目を尊重することにしたらしい。「分からないなら教えてあげよう。水森久仁昭氏が、今日の午後にこの家の裏手にある断崖から転落して亡くなられたのだ。事故なのか、他の原因によるものなのかはまだ分からない。それを知るためにあんたから話を聞かねばならない。分かってくれるか」
「ミズモリクニアキ氏というのはこの家の主人の水森博士のことでしょうか」
 ルーシーはいかにも人工知能らしく、情報の正確な確認を求めた。
「ああ、そうだ」
「そうですか。亡くなったのも間違いないのですね」
「検死官が確かめた。即死だったということだ」
「・・・・・・」
 ルーシーは情報を上手く飲み込めないという風だった。だが、次の瞬間、思いがけない反応が現れた。瞳が涙で潤みはじめたのだ。細くて優雅な眉がキュッと歪んでハの字になり、哀しそうな表情になった。口元を手で押さえて、
「何ということでしょう・・・・・・」
 年嵩の刑事は驚いて私の方を見た。
「このロボットには感情があるのかね」
 私は首を横に振るしかなかった。
「分かりません。可能な限り人間の心に近づけるように設計されていますが。搭載されている人工知能は自主的に学習して機能を高めていくので、ロボット工学が専門の私にも完全に把握することはできないんです。ですが、常識的には疑似的な感情表現と見るべきしょうね。感情表現の一つとして、涙を流す機能はついていますので」
「気にする必要はないでしょ。ロボットがどんな演技をしようが、ただ事実を聞けばいいだけだ」
 今まで黙っていた体格のいい刑事が腕組みをして、ぶっきら棒に口を開いた。体だけでなく、性格も押し出しが強いタイプと見えた。声も太い。
「しかし、どうもやりずらいな。こんな人間とそっくりな機械は居心地が悪いよ」
「じゃあ僕が代わって質問しましょうか」そして大柄な刑事は私に向かって、「ロボットの記憶が操作された時刻は分からないですか」
「そういう機能はついていないですね」
「このロボットはバッテリーが切れた状態で停止しているのを発見されたのですが、そういった状態でも記憶の消去はできますか」
「電源が通じていなければ操作はできません。ですが、電源を繋ぐのは簡単です。一般的な携帯用の小型充電機も繋げますので」
「どうでしょう。まだこのロボットが作動している間に誰かが記憶を消去しようとしたら、ロボットはその要求に、素直に従うと思いますか。その人物に問題があっても従うのかどうかを知りたいのですが。例えば、そうですね。その人物が重大犯罪を、殺人を犯した後だったとしたらどうでしょう」
 さらりと発せられた「殺人」という言葉の異物感は重かった。この刑事は水森博士は殺害されたのではないかと疑っている。犯人はその様子をルーシーに目撃されたから記憶を消し去ったと考えているのだろう。
 まるで毒のある果実を口に含んだように、私は舌が強張るのを感じた。
「分かりません。そういう状況は想定していないので。基本的に、彼女は人間の指示には従うようには出来ています。法律や、道徳にもとる命令は拒否しますが、今言われた場合がそれにあたるかどうかは・・・・・・。ただ、仮に電源が残っている状態の時に記憶を消去されたのだとすると、それからバッテリーが切れるまでの時間の記憶は残るはずですから、記憶を消されたのはバッテリーが切れた後なのだろうとは思います。バッテリーが切れた状態の彼女に補助電源を繋いでAI休眠モードで操作すれば新たな記憶は残りません」
「ふむ。そうすると、もしこのロボットが犯行を目撃したのなら、それは電源が切れる直前だったということになるのかな」
 私は刑事の話に違和感を覚えた。殺人を実行するのを目撃したという仮定には、あまり意味がないのではないかと思ったのだ。犯人がルーシーの記憶を奪おうとするのは、殺人を犯す場面を見られた場合だけだとは限らない。決定的な場面は見られなくとも、犯行の前後に殺人現場の近くにいるのを目撃されただけでも動機としては充分ではないか。それだけでも証言されれば犯人は容疑を受けるはずである。機械であるルーシーの証言には嘘や記憶違いが一切ないのだから、犯人にとっては脅威のはずだ。
 大柄な刑事もそれに思い当たったのだろう。少し考えて、これ以上訊いても仕方ないかという感じで頷いた。
「なるほどね」そして軽く頭を下げてきた。「わかりました。ご協力ありがとうございます。後はこちらでやりますので」
 私はホッとした。もう帰ってもいいのかと思ったが、それは少し考えが甘かったようだ。
 部屋を出るとまたすぐに別の刑事から声をかけられて、さらに詳しく話を訊かれたからである。先の挨拶は「ロボットを診るためにやってきた技術者」へのねぎらいに過ぎず、被害者を知る人物に対する尋問はまた別だったようだ。
 水森博士と私の関係。博士の人となりや、最近のようす。博士を恨んでいる人物に心当たりがないか等々、さまざまなことを訊かれた。しかし、あまり実のある話はできない。水森博士は恩師ではあるが、最近は縁遠くなってしまっていたからである。
 博士は二年前に交通事故で脊髄を損傷してからは、引退同然の生活になっていた。車椅子に乗らなければ移動できない身の不便さもあって、大学の研究室に顔を出すこともなくなっていた。静かな岬の先にあるこの屋敷を買って移り住み、穏やかに老後を過ごそうとしていたのである。
 私が博士を訪れるのも年に数回に過ぎなかった。博士は私の訪問を喜んでくれて、研究の進み具合を聞くのを楽しみにしていたようだ。老けてしまった感は拭えないものの、印象的な丸顔は以前と変わらず、いつも温厚に微笑んでいた。新しい生活に、満ち足りているように見えた。半分は、あきらめの境地だったのかも知れないが。
 博士は妻に先立たれ、一人娘も心臓の病で亡くしていた。天涯孤独に近い身の上である。寂しさは当然あったろうが、いつも傍にいて身の回りの世話をするルーシーがその隙間を埋めてくれていたようだ。
 博士にとって、自分の最後の研究成果であるルーシーは、我が子のようなものだった。同時に彼女が家政婦として仕事をしっかりとこなす姿を見るのは、研究に費やした自分の半生を再確認する作業にもなっていただろう。彼女の能力の高さは、そのまま博士の研究の集大成的成果だからである。彼女はその期待に立派に応えていたようだ。
 博士が彼女を見る目は優しさに溢れ、まるで自慢の孫を見るかのように細まっていたものだ。
 大きな業績にも奢ることなく、目下の者にも誠実に接してくださる立派な方だった。恨んでいる人間などあろうはずがない。
 刑事の質問は多枝に渡り、問答を繰り返すことで私の方も事件の輪郭が少しづつ掴めてきた。ある程度状況が分かっていなければ訊きづらい事柄もあるので、事件の簡単な概要くらいは教えてくれたのである。
 それをまとめると次のようになる。
 事件が起こったのは今日の午後の早い時間。水森博士は電動式の車椅子に乗った状態で崖から落ちたようだ。断崖の上から波打ち際の岩場までは四十メートル以上の高低差があり、即死だったものと思われる。崖の上にいたルーシーは、博士が落ちた断崖から数メートル離れた地面にバッテリーが切れた状態で横たわっていた。
 事件の起こった日に水森博士に会った者はなく、最後に博士に会った人間は、三日前に本を配達した宅配業者だったと推定されている。
 遺体を発見したのは、自動運転ボートで海に出て舟遊びに興じていた若者たちである。遺体があった岩場のあたりは小ぶりに抉れた椀状になっており、外海からは見えにくい。そしてまた、船が通るような場所でもない。日が暮れる前に死体が発見されたのは、偶然によるものと言ってよかった。
 しかし、それらの情報は、どうにも実感が伴わなかった。私は水森博士がもうこの世にいないという事実を受け止めきれていなかった。警察からの要請を受けてやって来た時には、もう遺体は運ばれた後だったし、邸内にも断崖にも死を思わせるものは何もなかった。  
 まるで夢の中の出来事のように哀しみが湧かず、自分はこんなに不人情な人間だったろうかと訝りたくなった。ルーシーのように、すぐに感情が切り替わって涙を流せたらいいのになと思ったりもした。
 そのルーシーは警察の尋問に、どのように答えたのだろう。最近の水森博士を最もよく知っているのは彼女だったはずだが。そして彼女は本当に記憶を消される前に、犯人を目撃していたのだろうか。
 私が唯一刑事に有用な情報を提供できたと思ったのは、水森博士の遺産について訊かれた時だった。
 水森博士の遺産がどのくらいあるのか。それは知らない。だが博士はロボット工学関係で有力な特許を持っていた。だから、そこから上がる収益によって相当な財産を所有していた可能性がある。
 この話を聞くと、刑事の眼つきが鋭さを増した。勢い込んで博士の遺産を相続する人物について詳しく訊いてくる。しかし私にそこまでの知識はなかった。甥や姪がいるのは知っているが、名前も年齢も分からない。水森博士は恩師であっても親戚ではないのだから、血縁関係は詳しく知らなくても当たり前だった。
 刑事たちは一応納得し、そして私への質問は終わった。
 邸を後にしても私の心は曇ったままだった。水森博士がもし殺されたのなら、犯人は誰なのか。刑事たちの態度からすると、遺産の相続人たちが容疑者と目されるのは確実なように思われる。その者たちが、どういう人物なのかを知りたかった。
 幸いそれを尋ねるべき人物には心当たりがあった。
 
                    Ⅱ
 
 私が弁護士の岸を訪れたのは事件から四日後のことだった。
 水森博士の葬儀も終わり、顧問弁護士である岸も博士の遺産相続などの仕事にめどがついた頃だろうと見計らったのだが、どうやらまだタイミングが早かったらしい。
 法律事務所にいる岸は今だ仕事に追われているようすだった。
 私たちが応接室でテーブルを挟んで向かい合うと、すぐに彼の携帯フォンに電話がかかってき、慌ただしい感じでそれに応対する。仕事の打ち合わせらしかった。それが終わるとようやく私と正対した。
 顔つきは心なし疲れているようだった。神経質そうな痩せ方をしているのでなおさらそう見える。一見すると線が細くて頼りなさそうだが、芯が強く苦学を重ねて弁護士になった努力家なのを私は知っている。
 岸との付き合いは、学生時代からのものである。彼が水森博士の顧問弁護士になったのも、私が博士に紹介したからだ。卒業後に進む道は大きく変わり、会う機会も少なくなったが、信頼感は今でも変わらないと思っている。
「忙しいのに悪いな。時間を取らせちまって」
 私が謝ると、岸はとんでもないと言うようにかぶりを振った。
「いや、ちょうど良かった。実はこちらの方から会えないかと思っていたところなんだ」
「そうなのか。何か用でも?」
「ルーシーのことだよ」岸は少し声を潜めるようにした。「あのアンドロイドについては君に訊くのが一番確かだからな」
「ルーシーが、どうしたんだ」
 水森博士が亡くなった今、その遺産相続の処理をするのが顧問弁護士たる岸にとっての急務のはずだが、どうしてルーシーが問題なのだろう。疑似人格を持つロボットの所有権を、遺族にどう相続させたらいいのかが分からないというわけでもないだろうに。
「実はちょっと困ったことになっている」岸は表情を曇らせた。「どうしたらいいか判断がつかないから君の意見を聞きたいんだ」
「何だか深刻そうだな」
「深刻にもなるさ。法律上、史上初の事態が発生してしまっているんだ」岸は大きく頭を横に振って、「まったく、こんなことになるとは思わなかった」
「いったい何が問題なんだ」
「水森博士の遺言状だよ。僕も中身を知らされない状態で保管していたんだが、それが今日の昼に開封された。親戚立ち合いの元でね。そうしたらその内容を聞いたとたんに大きな非難が沸き起こった。頭に血が昇り、そんな遺言は認めないと声を荒げる者も出た。それも無理はない。遺言は相当に常識外れなものだったからだ。何て書いてあったと思う?」
「見当もつかないね」
「それには財産のすべてをルーシーに相続させると記してあったんだよ」
「何だって?」私はいきなりデコピンを食らったようになって、思わず椅子から身を乗り出した。「それは本当なのか」
「ああ。都心の一等地で高層ビルを買えるくらいの金額がルーシーに渡ることになっている」
「博士の資産はそれほど莫大なものだったのか」
「だから困るんだ。遺産をもらえると思っていた親戚は、絶対に認めるはずがない。何がなんでも遺言を無効にしようとして訴え出るだろう。しゃれにならない騒動に発展するのは目に見えている」
「それは困った状況だな。しかし・・・・・・、それを外部の人間に言ってもいいのか」
「遺言には、遺言の内容はすべて公にするようにと記してあった。おそらく親戚に思い通りにさせないためだろう。マスコミに公開し、世論を味方につけるという計算なんだと思う。頭のいい人だから、それくらいの作戦は考えてもおかしくはない。しかし、どうして水森さんは、そんなにあのロボットに愛着があったんだろう。僕は不思議で仕方がない」
 興奮のためか、岸の声は自然に高くなって行った。
 その一方で、私の心は沈んでいた。哀しい思いに捉われていた、と言っていい。一つの事実に思い当たって、博士の深い想いが、想像できるような気がしたからである。ポツリと呟いた。
「ルーシーは、普通のロボットではないからだよ。細かいところまで、博士の亡くなったお嬢さんに似せて作ってあるんだ」
 今にして思えば、水森博士はルーシーの開発に並々ならぬ執念を燃やしていたのだと分かる。ルーシーの外見のモデルをどうするかという問題が出た時、博士は「似せても問題が起こらない人物にするべきだ」と言った。そしてその人物を亡くなった一人娘の瑠璃子さんに設定しようと提案したのだ。あくまでも他には迷惑がかからないように、という体裁であったため、私を含めた研究スタッフからは不審な声はあがらなかった。瑠璃子さんが亡くなったのは二十六歳の時で、遺影は若くて美しかったし、アンドロイドのモデルに相応しい、控えめで優しい雰囲気も備わっていた。反対する理由はなかった。ルーシーの名前は、その彼女の名前「瑠璃子」をもじってつけられたのである。
 そう言えば博士はルーシーの性格設定にもかなり拘っていた。機能性が犠牲になってでも、あくまでも人間らしいアンドロイドを作るというコンセプトを貫徹することを望んでいたのだ。あれは少しでも自分の娘に似せたいという考えからだったのだろうか。ルーシーが完成すると、博士は相当な金額を大学に払って彼女を買い取り自分の所有とした・・・・・・。
 岸はポカンと小さく口を開けていた。
「そんな事情があったのか」
「ああ。だが、全財産を、というのは極端だな。その遺言は法律的には有効なのかい」
「法律では、高度な知能を持ったロボットは犬や猫などのペットと同様の権利を有することになっている。四年前に成立したAIロボット法でね」
 岸は少々忌々し気だった。彼が言う法律は有名で、一般人にも良く知られていた。私は犬猫並みではまだまだ足りないと思っているのだが、世間にはその程度でもセンセーショナルだったらしい。マスコミにも大きく取り上げられて、結構な議論が沸き起こったものだ。
 岸は人権派の弁護士で、AIロボット法の成立も強く支持していただけに、それが自分の仕事に面倒を引き起こす原因となったのは複雑な気持ちがあるらしい。
「大金持ちが自分のペットの猫に全財産を残したとかいう話は聞いたことがあるだろう。この場合はそれよりも複雑なんだ。猫に財産を残したって、猫自身に財産を管理する能力があるわけじゃない。だからそういう場合には、本来財産を受け取るべき遺族がその猫の飼い主兼財産管理人になることによって、実質的な財産相続をすることができた。財産の原資たる猫を下へも置かない扱いをしながら、命が尽きるのを待つという恰好だ。ところが今回の場合は、相続するルーシーには財産の管理能力がある。人間などよりキッチリと、決して間違いを起こさないようにできるんだ。そしてペットに関する法律は、日本でも今では国際基準を採用している。つまり、法律的にはアメリカあたりで起こった大金持ちの財産相続猫と同じ状況なんだ。どう処理するべきかは難しいところだ。水森博士は僕を遺産の管財人に指定してくれたから、この難問にあたらなければならない。頭が痛いよ」
「・・・・・・で、異をとなえている親戚っていうのは、どんな人たちなんだ」
「数は多くない。水森博士の弟と、その息子と娘。それだけだ。その他の親戚は皆他界している」
「良かったら名前を教えてくれないか」
「弟の名は水森繁行。その息子である甥の名は水森明、妹は美樹。二人共独身だが、妹の方は一度結婚して離婚している。遺言状の内容に、真っ先に反対して大きな声を上げたのは甥の明だ。「そんな馬鹿な話があるか」と激高して掴みかからんばかりの勢いを見せた。彼はいささか問題のある人物でね。粗暴なところがあって、何度か喧嘩で傷害事件を起こしている。そんなこともあって職を転々として今は無職だ。妹の美樹は美容師。彼女も評判は良くない。異性関係が派手で離婚したのは彼女の浮気が原因だと言われている。彼女も不満たらたらで、キンキン声で文句を言ってきたな。二人の父で、博士の弟の繁行は右翼の活動家。いわゆる職業右翼というやつだ。頑な人物で、差別意識が強い。外国人には日本国籍を与えてはいけない。ましてやどんなに知能が発達しようともロボットに人間に近い権利を認めるなどとんでもないという意見の持ち主で、兄の久仁昭さんとは対立していたようだ。歳が行っているだけあって遺言の内容を聞いた時も落ち着いていたが、含むところはあるようで、ねっとりとした口調で遺言の実効性について質問してきた。いずれも水森博士としてはあまり財産を分けたくない相手だったのだろうが、それにしても全然やらないというのは極端だ。いったい何を考えていたんだろう。君は水森博士と関係が深いだろう。博士の考えが推察できないか」
 私は考えた。
 水森博士は賢明な人だ。おそらくこの遺言がそのまま通るとは思っていなかっただろう。博士はルーシーに人間と同様に多額の遺産を残したかったが、通常のやり方ではその遺言が実行されるかどうか疑わしいと考えたのではないか。財産の四分の一をルーシーに遺すという遺言をしたところで、なんだかんだと文句をつけられて、その金額を大幅に削られる可能性が高い。何と言っても、ルーシーには犬猫並みの権利しか認められていないのだから。しかし、最初に全財産をルーシーに遺すと言っておけば、文句をつけられた結果の妥協点が四分の一をルーシーが相続する、というところに落ち着くかもしれない。
「多分、水森博士もその遺言が全面的に通るとは思ってないんだよ。裁判沙汰になった結果、妥当な金額がルーシーに残ればいいと考えてそういう遺言にしたんじゃないかな。だから君は遺言の内容を全面的に通す必要はないと思う。ある程度の額がルーシーに渡ればそれでいいんだ。ルーシーに、財産の四分の三を放棄するようにと持ち掛けてみたらどうかな。彼女にそれを飲ませて、その妥協点をいいタイミングで遺族側に提示したら上手くまとまるかもしれない」
「なるほど。それも一つの方法か。だが、ルーシーがその条件を飲むだろうか」
「おそらく、大丈夫だと思うよ」
 私はこれには自信があった。ルーシーには自己保存の本能が組み込まれているが、それはさほど強いものではなく、人間のような物欲がある訳ではない。おそらくは、四分の一でもなお多い。自分に必要な額を上回る分はもらっても仕方がないと判断するのではないか。水森博士の財産の、百分の一くらいをもらえたらそれで充分。それを上回る分は意味がないので放棄します。といった回答が、彼女の口から発せられる気がした。普段から彼女は賢明で性格温厚であり、人間を押しのけて自己主張するのは見たことがなかった。
 その時ドアがノックされた。岸が「どうぞ」と応じると、事務服を着て眼鏡をかけた三十代女性がドアを開けて現れた。この法律事務所に勤める事務員である。
「お取込み中にすみません。若い女性の方が、・・・・・・というより、女性とそっくりな人間型ロボットの方が先生と話をしたいと言って来ているのですけど。お会いになりますか。名前は、ルーシーだそうです」
「ロボットのルーシーだって? 一人でやってきたのか」
 聞いた岸は眉をピクリと上げて訊き返した。
「はい。一人ですけど?」
 岸は私を物問いたげに見た。
 私は少し苦笑して、
「噂をすれば影という諺はロボットにも当てはまるのかな。ルーシーは人間にできることは大概できる。自分の意思で訪ねてきたくらいで驚くべきじゃないよ。しかし珍しいな。人間のように気紛れな行動はとらないはずなんだが・・・・・・。彼女の方から来てくれたのなら今の話をしてみたらいいんじゃないか」
「あ、ああ、そうだな」そして岸は事務員に向かって、「じゃあここに通してもらえるかな。丁重に扱ってください」
 そんな言葉を付け加えたのは、ルーシーがロボットであることを意識したものだろう。
 間もなくドア口に現れたルーシーは、見違えるように垢抜けた姿になっていたので驚いた。着ているのはいつもの紺のメイド服ではなく、向日葵を思わせる黄色いワンピースだ。髪型も、以前は編み込んでいたのを解いて肩に垂らしている。まるでモデルのように華やかだ。彼女はもうメイドではないのだ。
 いつものように声をかけてみた。
「こんにちは。ルーシー。いつもと服が違うのでちょっと見違えたよ」
「こんにちは。江崎さん。外出するのにメイド服では少し変かと思ったので変えてみたのですけれど、おかしいでしょうか」
「いや、似合ってるよ」
「ありがとうございます」
 ペコリと頭を下げたルーシーの微笑みは、心なし嬉しそうだった。
 岸はこのやりとりを渋い顔をして見ていた。
「ルーシーさん。よくいらっしゃいました。僕と話したいことがあるそうですが、どんな御用件でしょう」
「こんにちは。岸先生」ルーシーは律儀に岸にも頭を下げた。「水森博士の遺産相続について、相談した方がいいと思ったので来たのですわ」
「それについては僕も早く話をした方がいいと思っていたところです。水森博士の遺言内容は聞いたと思いますが、それについてあなたはどう思っているのですか」
 ルーシーは少し考えるようにして間を置いてから、
「私の身にはあまりに大きすぎる、法外な相続額だと思いましたわ。とても意外でした。水森博士の遺志は尊重したいのですけれど、この内容では良くないのではないかと考えたりもしました」
 岸はホッとしたようだった。
「あなたがそう考えていてくれて良かった。実は一つ提案があるのです。聞いてくれますか」
 私は岸の性急さがちょっと気になった。
 私たちは応接セットの椅子に座っているが、ルーシーはまだ立ったままだ。いくら疲れを知らないアンドロイドとはいっても、彼女にも座ってもらうべきではないのか。それを指摘すると、岸は初めて気がついたといった風で、
「ああ、そうか。そうですね。すみません。そこの椅子にお座り下さい」
 ルーシーは優雅な物腰しで、岸の勧めた椅子に腰を降ろした。岸と向かい合う、私のすぐ隣の席だ。
 そして岸は具体的な提案を話し始めた。内容は私の言ったのと同じで、財産の四分の三を放棄することで遺族たちと妥協を図ったらどうかというものである。
 彼女はその話に落ち着いたようすで聞き入っていた。そして話が終わると、食事を終えた貴婦人が口元を拭くような感じで品良く頷いた。
「そのような提案をされるだろうと思っていましたわ」
 私は当然ルーシーはその提案を受け入れるものと思った。しかし次の瞬間彼女の口からは、別の答えが発せられたのである。
 穏やかだが、機械らしい妥協の無さが含まれた口調で、
「常識的にはそれが妥当なのだと思います。でも、その提案はお受けできません」
 私は驚いて問い返さないではいられなかった。
「ルーシー、どうしてだ。こんな額の金は、君には意味のないものだろうに・・・・・・」そして気がついた。ルーシーは逆に、四分の一でもいらないと言おうとしているのではないかと。相続を全部放棄すると言うつもりなのでは。その意思表示をしたかったのだとすると、わざわざ岸を訪ねて来たのも納得がいく。「君は、相続のすべてを放棄するつもりなのか。しかし、それはいけない。水森博士の遺志を尊重するためにも、一部はもらっておくべきた」
「いいえ」ルーシーはゆっくりと水平に首を回して私を見た。「そうではありませんわ。お心遣いはありがたいのですけれど、それは無用です。私は財産の相続を、放棄すると言っているのではありませんから。遺言の通りにいたします」
「親戚たちの反対を押し切って遺産のすべてを受け取るというのか」
「はい」
「だが、それは・・・・・・、世間から非難をうけることになるかもしれない。ロボットには人間のような権利を認めるべきではないという意見の人はまだまだ多い。遺産を相続するつもりだった親戚からは憎まれるだろうし。マスコミに報道されれば、君に危害を加えようとする者が出てくる可能性もある。私は今はまだ、そういう行動をとるべき時代ではないと思う。人工知能ロボット全体の将来のためにも、常識に即した行動をとるべきだと思うんだが・・・・・・」
「お心遣いありがとうございます。ですが、私の決心は変わりません。ロボットの未来のためではなく、亡くなった水森博士のためにそうしたいと思うのですから」
「博士の遺志を継ぐためかい。しかし、博士が本当に全財産を君に遺そうと思っていたかどうかは・・・・・・」
「そうではないんです。私が考えているのは、水森博士がどうして亡くなったのかという点についてなのです」ルーシーは細く綺麗な眉をひそませ、切なげな顔をした。「警察では、博士は殺害されたと見ていると知りました。私が事件の状況を考えてみても、その可能性は非常に高いと思います。そして。警察では、水森博士の遺産を相続するべき親戚の人の中に犯人がいると思っているようなのです。こういう状況で、親戚の方に博士の遺産を渡すことができるでしょうか。犯人に、博士の大事な財産を、自由にさせることができるでしょうか。私には、それは正しくない。あってはいけないことのように思えます。犯人ではないと分かっている方に対してでなければ、博士の遺産をお渡しするわけにはいかないのです。私はお金に執着してはいません。真犯人が分かった後になら、相続を放棄してもいいと考えています。ですが、今はまだその条件が整っていません。だからとりあえずは、遺産を私の元に留めておく他はないと判断したのです」
「つまり、相続の放棄自体には、反対ではないということですね」岸は難しい顔になっていた。法律家らしく、ルーシーの言い分を吟味しているようすだ。「しかし、そのような条件だと、永遠に財産を自分の手元に置いておかなければならなくなる可能性がある。もし犯人が判明しなかったらどうするつもりなのですか」
「そうはさせないつもりです」ルーシーは毅然として答えた。「もし警察が犯人を逮捕できないようでしたら、私が代わりに犯人をつきとめようと思っていますから」
 その時私は大きく目を見張っていただろう。これこそが本当の驚きだった。
「君は、探偵になって水森博士を殺した犯人を突き止めるつもりだと言うのか」
「はい」ルーシーの答えには、ためらいがなかった。凛として決意を表明していたと言っていい。「江崎さん。おかしいですか。最近の水森博士を最もよく知っているのは私です。親戚の方もよく知っています。生きている水森博士と最後に会ったのも、犯人を除けば多分私でしょう。事件についての情報を、最も多く持っているのです。そして私には人間を上回る記憶力と理論的思考力があります。口はばったい言い方ですが、私以上にこの役に適した者はいないように思われるのです。私には水森博士の無念を晴らしたいという気持ちがあります。人間のように深く豊かな感情ではないでしょうが、そういう気持ちがある以上、それに従って行動すべきだと思うのです。この行動は倫理にも法律にも抵触しません。逆に倫理や法律を正しくしようとする試みなのですから、行動するのをためらう理由はないのです」
「君は・・・・・・」
 私は言葉を失った。何と言ったらいいか分からなかった。ただ一つ言えるのは、ルーシーの自己学習する人工知能は、私の想像を越えた成長をしているらしいということだった。ルーシーの言う感情とやらが人間と同列に並べられるものかどうかは分からないが、人工知能自身が感情らしきものを持ち始めていると自分で認識している、というだけでも驚異だ。近年は人工知能が疑似人格を持つのは普通のことになったが、人間同様の感情を獲得したという報告は、まだ世界的にもされた例がない。
 私は漠然とした不安を感じた。ルーシーにとってはこれは大きな成長だが、このことが彼女の未来に良い結果をもたらすとは限らない。むしろ危うさを含んでいるのではないか。彼女の知能回路を精査してみる必要を感じた。「ルーシー。君がそんな行動をとれるほど成長していると言うなら、君の人工知能を調べさせてもらえないだろうか。研究者としても興味深いし、点検はしておいた方がいい」
「ええ。私もお願いしようかと思っていました。いやしくも犯罪の捜査をしようとするのなら、まず自分が完全な状態にあるのを確認するべきですわね」
 ルーシーは態度を軟化させ、素直に従うようすを見せた。だが、法律家の岸は技術的なことには興味がないようで、
「しかし、あなたが捜査に乗り出したからと言って犯人を指摘できるとは限らないですよね。犯人が判明しなければどうするかという問題は残っている。何年も犯人が分からなかったらどうするつもりですか」
「ある程度の猶予期間をいただけたらいいと思うのです。おそらく私の捜査には長い時間は要しません。多くの情報を処理できる私には、人間のように考えるのに時間はかかりませんから。とりあえずは一カ月。どんなに長くても一年。それ以上の時間をとっても意味は無いでしょう。私の捜査はそれで終了です。その時点で犯人が分からなければ相続した財産は手放すことにします。常識的な判断に従って親戚の方々にお渡しすることになるでしょう。ただ、犯人である可能性が極めて高いと分かっていても決定的な証拠が掴めないから逮捕には至らない。という人物がいた場合にどうするかについては、改めて考えることになるでしょうが」
「捜査の結果アリバイが証明された人がいたら、その人には財産を早めに譲渡してもいいのではないですか」岸は視線を斜め上にやって記憶の糸をたぐっている風だった。「そういう人ならもうすでに一人は分かっていると思いますよ。水森博士の甥の明さんにはおそらくアリバイがあります。水森博士が亡くなった日の午後一時に、この事務所に顔を出していましたから。博士が亡くなられた推定時刻は丁度その頃だったはずです。ここから事件現場の崖まではどう頑張っても三十分以上はかかるし、明さんはこの事務所に三十分くらいいた。アリバイは成立しているんじゃないかな」
 それが分かっているのなら、もっと早く言ってくれればよかったのに。私は少々いまいましい気分になって、
「その明さんは、いったいどんな用があって来ていたんだ?」
「あ、ああ。ちょっとした法律上の相談だよ。守秘義務があるので具体的なことは言えないが」
 私は岸の口振りから、その内容は例の粗暴な性格が引き起こしたトラブルの一つについてだったのではないかと類推した。
「その時、明さんはどんなようすでしたの」
 優しく生徒に問いかける小学校の先生のようにルーシーが微笑む。
「特に変わりはなかった。明さんはもっと話をしたいようすだったが、あいにく他にも会わなけれはいけない人があったので時間をさけなかった」
「その会見は、事前に予定されていたものなのかしら」
 ルーシーはさらに質問を重ねる。私は気づいた。彼女は、探偵としての仕事をもう始めている。感情に左右されず完璧に穏やかで優しい口調で質問できる彼女は、調査者としての資質に恵まれていた。
「前日に電話で予約されたものでしたね」
 岸も私と同じことを思ったのだろう。少々居心地悪そうだった。
「そうですか」
「僕の質問にも答えてくれないですか。アリバイがあると分かった人に財産を早く譲渡するつもりがあるのかどうかについて」
「それに関しては不平等感が出ないように、他の人と同じタイミングで譲渡するのがいいと思いますわ。アリバイがあっても、それが完璧かどうかを検討する時間は必要ですし。・・・・・・他にご質問はあるでしょうか? 無ければ私の要件はもう終わりですけれど」ルーシーは岸が質問を発しないのを見ると、再び私に視線を向けて、「江崎さん。できるだけ早く私の人工知能を精査してほしいのですが、いつがよろしいかしら」
「すぐにという訳にはいかないね。明日の午前中なら大学の研究室の機器が使える。来てくれれば歓迎するよ」
「分かりました。それでは午前九時に伺います。それでは岸先生。相手をして下さってありがとうございました」
 ルーシーは丁重に挨拶してから席を立った。
 彼女が去ってしまった後も、その場には微妙な空気感が残った。
 気を取り直したように岸がつぶやく。
「驚いたねどうも。人工知能ロボットの探偵さんか」
「だが、言っていることには一理ある。人工知能は基本的に理論で動く。彼女がこういう行動に出てもおかしくはないのかも知れない・・・・・」
「君はどう思う? ロボット研究者としての立場から見て、あのロボットには殺人事件を捜査する能力があるだろうか。警察の先を行って犯人を突き止める可能性はあるのか」
「知的能力が高いのは事実だが、難しいだろうな。能力面に限らず、彼女にはまだ超えるべき問題が多くある。とりあえず研究対象として興味深い成長をとげているとは言えるが・・・・・・」
 私の胸に兆した漠然とした不安はいつまでも消えなかった。

                   Ⅲ

 ルーシーは約束の午前九時きっかりにやってきた。前日と同じ、華やかな黄色いワンピース姿である。彼女の突然の訪問に、その場にいた研究員たちは驚いたようすだったが、私はそれには構わずすぐに検査を開始した。他の研究員にも協力してもらってルーシーの人工知能に大学研究室の検査用コンピューターを繋ぎ、膨大な量のデータと照らし合わせて作動状態をチェックする。結果はすべて異常なし。彼女は完璧な状態で、自ら成長を遂げていると分かった。その結果を話すと、ルーシーはホッとしたようすだった。自分でも自分の頭脳に狂いが生じ始めているのではないかと不安を感じていたのだろうか。
「事件の状況からすると、まず私の状態に狂いがないのかを確かめるべきだと思いましたので。犯人が私の人工知能に悪性のウイルスを侵入させて倫理基準を狂わせて殺人行わせる、などといった可能性を消去しておく必要があったのです」
 私はルーシーの用心深さに呆れる思いがした。
「そんなことは百パーセントありえないよ。君の人工知能は外部からは操作できないし、ロボット倫理の原則は何があっても揺るがない」
 人工知能ロボットの倫理は、現在でも二十世紀にSF小説の中で考えられたロボット三原則が基礎となっている。次のようなものだ。
第一条。ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない。
 第二条。ロボットは人間に与えられた命令には服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
 第三条。ロボットは第一条、第二条に反する恐れのないかぎり、自己を守らねばならない。
 今の感覚で見ればロボットの人格権が考慮されていない条項であり、現在では「人間に与えられた命令には服従しなければならない」という部分については緩和されている。人間と同レベルの高い知能を持ったロボットはすべての人間に無条件に従う必要はなく、自己保存の権利や法律道徳に従って命令を拒否する自由を有するのだ。だからこそルーシーは財産相続放棄の提案を拒否することができたし、法律に反した犯人を捜査することもできる。
 ただし、人間に危害を加えてはいけないという部分は今でも絶対である。当然その究極たる殺人は最大のタブーだ。この原則を完全に守るべく、人工知能には様々なガード機能が組み込まている。外部からの操作など、できるはずがないのだ。
「それを聞いて安心しましたわ」
 私はルーシーの安堵の表情をしげしげと見た。この程度のことはルーシーだって知っているはずなので、社交辞令的な発言もできるようになったのかと訝ったのだ。しかし完全制御された彼女の表情に綻びなどはあるはずがなかった。
「ところで、これからどうするつもりかね」
「もう用は終わったので帰りますわ」
 どうやって帰るのかと訊いてみると、「電車で」とのことだった。ロボットの彼女が電車を利用するのは奇妙な感じだが、乗れないことはない。犬猫同様の扱いになるだけだ。それよりも、最寄り駅から邸まで歩くのに時間がかかりそうである。私は「車で送ろうか」と提案してみた。別にレディーファーストを発揮したのではない。彼女の行動を少し観察してみたくなっただけだ。いったいどうやって事件の捜査を始めようというのか。
 彼女は提案を受け入れてくれた。そして私の車の助手席に行儀良く座ると、走行する間は電力節約モードになって、ほとんど動作を停止していたのである。
 話しかけても簡単な答えしか返ってこない。まるでマネキン人形を横に乗せているような不思議な感覚だった。
 郊外から海方行へと四十分ほど車を走らせて、水森博士の邸がある小ぶりな岬の付け根の部分に着く。上空から見下ろすと優勝カップを横から見たような地形をしている岬の地面は奥へ向かって小山を成して盛り上がっており、小山を越えた向こうの断崖沿いに邸はあった。岬全体が私有地であり、邸まで続く道は一本のみである。岬が丸ごと個人の所有というと大変な資産のようだが、斜面ばかりでほとんどは利用出来ない土地であり、地価はタダみたいなものだろう。
 私有地へと入る道の入り口手前には畑が広がっていた。
 ルーシーはそこでようやく通常モードに戻った。
 まるで午睡から覚めた人のように首を起こし加減にして、「ありがとうございます」と礼を言って車を降りる意思表示をしたが、私は構わず邸へ続く道へと車を入らせた。
「遠慮することはない。邸まで乗せて行くよ」
 小山を回り込んで登って行く道は眺めが良かった。木々の間から見える海原が、鱗のように陽を反射して美しい。小山の向こうには猫の額ほどの平地があって、そこに建っている邸は瀟洒な洋館風の造りだ。博士が買い上げる前は、不動産会社の経営者が所有する別荘だったと聞いている。私は玄関前の駐車場に車を停めた。
 そこからは海が一望できた。綺麗な芝生の庭があり、崖の傍には屋根のついた簡易な休息所がある。そこにはベンチが設置してあって、屋根は四本の鉄柱で支えられていた。
「ここはいつ来ても眺めがいいね」私がつぶやくと、
「よかったら少し寄っていきません?」ルーシーも軽い調子で言葉を返した。
 もとよりそれは私の望むところだった。ルーシーの行動を観察したかったし、事件当日には立ち入り禁止になっていて見れなかった水森博士の死亡現場を、一度しっかりと見ておきたいという気持ちもあった。
 その希望を言うと、ルーシーはその地点を見降ろせる場所へと私を案内してくれた。博士が転落した断崖は、見降ろすのも躊躇われるばかりの恐ろしいものだった。高所恐怖症の気がある私は足が竦んだ。そしてその後は、海を眺めるように設置された休息所のベンチに並んで腰掛けたのである。
 気温は高かったが、海から吹き上げて来る風が涼しくて過ごしやすかった。想いはどうしても事件の方に行く。
「君は、どう考えているんだ。博士が転落死した事件について。博士は本当に殺されたのだろうか」
「水森博士は、亡くなる前日まで変わったようすは一切ありませんでした。自殺したとは考えられません。石橋を叩いて渡るように慎重な人でしたので、事故だった可能性もゼロに近いのではないでしょうか。私は殺害されたのだと考えています。事件に関するデータを収集してみると、それを示唆すると思える点がいくつかありました。この事件は、事故や自殺だとしたら奇妙過ぎるのです。どうしても他者の手が加わっているとしか思えない部分があって、そしてそれらの多くは理由が不明なのです。だからこそ、説明がついた時には解決につながるかもしれないと思って考えているのですけれど」
「その内容は教えてくれるわけにはいかないんだろうね」
「教えろと命じて下されば教えますわ。江崎さんは水森博士が最も信頼していたお弟子さんですもの。当然私も信頼しています」
 ルーシーはそう言って少し悪戯っぽい顔をした。まるで駆け引きを覚えたばかりの少女のように。
 私は少しおどけるようにして、
「頼む。教えてくれないか」
「はい。事件の疑問は、まず犯人はどうやってこの現場にやってきたのかという点があげられます。検視の結果分かった犯行時間は午後一時から二時までの間なのですが、その時刻には犯人はこの邸に続く一本道を通っていなかったのが分かっているのです。私有地である岬の入り口すぐ外には畑があって、そこでは農家の人たちが作業をしていたのですわ。午後十二時半から三時までの間です。農家の方々は、その間この邸に続く道に入った人や車はなかったと証言しています。もちろん犯人がそれより早くこの現場にやって来て、午後三時以降に立ち去ったという可能性はありますけど、どうにも不自然です。そして道を通らなければ崖沿いの険しい場所を無理して歩いて行き来するしかなく、そんなことをしたとも思えないのです。この状況を説明する簡単な方法は、「現場にいたロボットが水森博士殺害した」というものでした。私が殺人を行ったとすれば現場に来る人も去る人もいなくて当たり前なのです」
 ルーシーは一切の感情表現をせず、極めて事務的にこれを語った。
「だから君は自分の人工知能を検査してくれと言ってきたんだね」
「私には動機もあります。水森博士の遺産を相続できる立場にいるのですから。ロボットの倫理基準に詳しくない人なら、真っ先に私が遺産を得るために博士を殺したと疑うところでしょう。私も自分を疑いました。ひょっとしたら私は人工知能が故障して、倫理基準が狂っていたのかと。そしてもし私が殺人を犯したのなら、私の記憶を奪ったのは江崎さんかもしれないと考えたりもしました。この邸を訪れる方の中で、私が殺人を犯して困るのは江崎さんくらいですから。ロボットが人を殺したとなれば、私の開発に携わった研究者が批判を受けます。そんな状況は避けたいでしょう。でもこの仮説は違っていたようです」
 私は舌を巻く思いだった。ルーシーは、こちらが思っている以上に頭がいい。私は知らぬ間に彼女から観察されていたのだ。
「事件の疑問点は他にもあります。水森博士が乗っていた電動車椅子についてです。博士が自分で操作して移動できる物なのですが、その椅子の背にあたる金属パイプ部分に、ロープが接続してありました。ロープの両端に登山用の完全固定金具がついているものです。それ自体はおかしなことではありません。そういったロープは博士が以前から使っていて、用心深い博士は崖の近くに行く時にはそのロープのもう一方の端を私たちが今いる休息所の鉄柱に固定して、それから崖に近づくのが常だったからです。万が一の転落防止のためですね。博士は、崖の淵から海を眺めるのが好きだったのです。そのロープの長さは私の記憶では六メートルでした。この休息所から断崖までの距離が六メートルなので、それ以上の長さは必要ないのです。ところが崖下で亡くなった博士が乗っていた電動車椅子の背に固定されていたロープの長さは、警察の調査によると八メートルだったのです。いつの間にかロープの長さが二メートル延びてしまった。そんなことはあり得ないので誰かがロープを別のものに取り替えたということになるのですが、いったいどうしてそんなことをしたのでしょう。元々使われていた六メートルのロープはほとんど新品で、痛んだから取り替えたということは考えづらいのですが。もう一つ奇妙なのは、電動車椅子の背の金属パイプに、巾着袋が結び付けてあったことです。その袋の中には青銅で出来た骨董品の仏像が入っていたそうです。大きさは三十センチくらいで、それなりの重さもあるものです。ですが、私はそんなものに見覚えがないのです。水森博士は宗教心か薄く、骨董にも興味がありませんでした。仏像などは持っていなかったと思います」
「すると、それは犯人が持って来て車椅子に結び付けたということなのかな。仏と一緒にあの世へ行けとでも言うつもりなんだろうか」
「分かりません。実は一つだけそれらを説明できる仮説を思いついたのですが、それはもっと後で話したいと思います。それまでは江崎さんもお考えになってください」
「気を持たせるね」
「事件の概要を、もう少し話してからの方が分かりやすいと思いますので」
「分かった。話を続けてくれ」
「はい。もう一つどうしても考えなくてはならないのは、この崖上に倒れていた私のバッテリーがどういう経緯で切れたのか。ということです。私は、この休息所のすぐ前に、うつ伏せになって倒れていました。頭を海の方に、足を邸の方に向けて、両手は海の方へと伸ばしていたそうです。よろしければ、今その状態を再現してみましょうか」
「いや、その必要はないよ」
「その体勢は、少し変かもしれません。どうして両手を頭上に伸ばしていたのか」
「水森博士が崖から突き落とされようとしているのを見て、助けようと手を伸ばして駆け寄ろうとしたところで電源が切れて前のめりに倒れたとは考えられないかな」
「それも一つの考え方ですわね」
 ルーシーは私の説明に納得してはいないようだった。しかし、それには触れずに話を続ける。
「私の電源についてもお話ししましょう。私はバッテリーの作動可能時間が残り十分になったら充電する習慣になっていました。水森博士は合理的な方で、「ギリギリまで電源が減ってから充電した方がバッテリーが痛まないからそのようにしなさい」とおっしゃっていましたので、それに従っていたのです。事件前日の午後十二時にはまだ十時間近くの残量があったはずです」
「そうすると、事件の日の午前十時前にはバッテリーが切れたということなのかい」
「いえ、深夜には電力節約モードに切り替えますし、力仕事をした時などには電力の消費が早くなるのでいつ電源が切れるかははっきりとしたことは言えません」
「そうだったね」
「問題は、どうして私は充電をせず、バッテリーが切れるまでこの場所にいたのかということです。私はやるべきことを忘れるということはないので、充電をしなかったのにはそれ相応の理由があったはずなのですが。そのことと事件との間につながりがあるのかどうか。もし仮に私が事件とは関係なく何らかの理由で充電をしないでいて、そして電源が切れる直前に犯人を目撃したのだとすると、あまりに偶然が過ぎるような気がするのです。そしてそうではないとすると、犯人は私の電源が切れるのを待っていたことになってしまいます。どちらにしても不合理感は残ります」
「そもそも君が充電をしないのには、どんな理由が考えられるのかな」
「水森博士にそう命じられたか、あるいは充電を後回しにしなければならないほどの緊急事態が起こったか、物理的に動きを止められていたか。この三つの場合が考えられます」
「どれも余りありそうにない可能性だね」
「水森博士に命じられていた、というのが常識的な説明かとは思うのですけれど、博士がそうする理由は分からないんです」
 ルーシーは海を見やった。いや、水森博士の亡くなった断崖の方行を見たのかもしれない。彼女が水森博士について話す時、顔には微妙な翳りが差す。
「さきほども言いましたが、犯行推定時刻は午後一時から二時の間でした。私はその間の親戚の方々のアリバイについても調べてみました。まず甥の明さんなのですが、岸先生も言われていた通り、彼にはアリバイが成立するようです。午後一時から一時半までの間、岸先生の弁護士事務所にいたのですから。そのすぐ後にも友人と会っていて、午後三時までは犯行現場へ行くことができませんでした。次に姪の美樹さんですが、彼女にはアリバイがありません。美容院の勤務日だったのですが、風邪で熱を出したと職場に連絡して仕事を休んでいたのです。その父で、博士の弟の繁行さんも一日家にいたのでアリバイはなしです。ただ繁行さんについては、一つ気になる情報があります。彼は密教系の宗教団体の熱心な信者だということです。そして水森博士の電動車椅子に袋に入れて結び付けてあったのは、密教系の仏像だったのです。一つの体に顔が三つと腕が八本ついている珍しいものでした。だからと言って容疑をかけるのも性急かとは思いますが。犯人が繁行さんに容疑をかけようとした可能性もあるかと思われます」
「しかし明さんが犯人でないとしたら、一番容疑が濃いのは繁行さんだということにはならないかい」
「犯行は、女性でも充分に行えるものでした。繁行さんだけを容疑が濃いと言う理由はないと思います」
「それはそうだが・・・・・・」
 私はルーシーの話にいささか疑問を感じていた。どうして彼女はこんなに詳しく事件について知っているのだろう。
「それにしても短期間にずいぶん詳しく調べたものだな。まさか警察内部のコンピューターにアクセスして情報を得たんじゃあないだろうね」
 ルーシーはそれには答えなかった。そのかわり、子猫が穴を覗き込むような顔つきになって、
「これらの情報から、私が類推した事件の真相をお聞きになりたいですか?」
「真相が、分かったって言うのか」
「そうは言えません。ジグソーパズルを嵌めるように、これらのパーツを繋ぎ合わせて説明をつけることができたというだけです」
「それでも大したものだろう」私はルーシーの言い分を信じてはいなかった。いかに人工知能が人間を超える能力を持ちつつあるとは言っても、そんなに簡単に行くものだろうか。計算能力が高いだけに、必要以上にひねくり回した解釈をしているのではないかという気がした。「それが本当なら、ぜひ聞きたいものだが」
「分かりました」ルーシーは注文を承ったウェイトレスのように頭を下げた。「私が推測した事件の真相は簡単です。まず犯人が事件当日の午後十二時半から三時までの間に事件現場へと続く道を通らなかったのは何故かという疑問の答えですが、それはやはり、その間犯人は事件現場にいなかったからだと考えられます」
「それはおかしいね。事件の現場にいなくてどうして博士を崖から突き落とせるんだ」
「それは、その時事件の現場にいたロボット。つまり私にその役をやらせたからではないでしょうか」
「何を言うんだ。それはさっき否定したばかりじゃないか。君が殺人を犯せないのは分かっている」
 ルーシーは何とも微妙な表情を浮かべていた。困ったような居心地が悪いような、べそをかく寸前の子供のような。どういう表情を作ったらいいのか分からないでいるようだ。
「そうではないんです。残念なことですが。私は人を殺めることはできません。ですが、死に瀕している人を助けることはできます。そして命を助けることができるのなら、それは殺すことができるのと同じことなのです」
「何を言っているのか分からないよ」
「すみません。犯行がどのように行われたのかを説明いたします。犯人はおそらく午前中に、水森博士を断崖へと誘ったのでしょう。「眺めのいいところで話しましょう」とでも言って。電動車椅子に乗っている博士はいつものように固定金具のついたロープを電動車椅子と休息所の鉄柱に固定してから崖へと近づきました。ところがそのロープは、犯人の手によっていつもより長いものにすり替えられていたのです。そして犯人は博士を崖から突き落としました。博士はロープで繋がれている電動車椅子ごと崖に宙吊りになります。博士は何事もキチンとするたちで、電動車椅子に乗る時にはシートベルトをしっかり装着するのが常でした。だから宙吊りになっても椅子から落ちることはなかったでしょう。そうしておいて犯人は邸内にいた私を呼びます。「水森博士が崖から落ちて宙吊りになってしまった。自分の力では引っ張り上げられないから君も協力してくれ」と。私はもちろんそれに従います。しかし私がその現場へ行って水森博士を繋いだロープを持ち上げた時、犯人は柱に固定してあったロープを外してしまったのではないでしょうか。そしてその状況を私に知らせます。私が手を離したら、水森博士は崖下に落ちてしまうと。しかし私には博士を崖の上に引っ張り上げるだけの力はありませんでした。犯人が電動車椅子の背に銅製の仏像を結び付けて、私の引っ張る力とロープに吊り下がった博士らの重さが釣り合うように調整していたからです。私は博士を危機から救うことができず、そのままの体勢を維持することしかできなくなりました。犯人はそうしておいて、この現場を立ち去ったのです。自分のアリバイを作るために。おそらく数時間後、私の電源は尽き、私が動きを停止するのと同時に博士は崖下に落下しました。私は体から力が抜ける瞬間にその力に引かれ、手を崖の方へ向ける形で前のめりに倒れたのではないでしょうか。犯人はその後でこの現場に戻ってきて、私の記憶を奪ったのでしょう」
 私はようやくルーシーが言っていた意味を理解できた。「命を助けることができるのなら、殺すことができるのと同じ」ルーシーは、「自分は人の命を助けようとすることにより、殺害時間を後にずらすことができる」と言っていたのだ。結果的にその行為は、犯人を助ける共犯者と同じになってしまう。
 本当に、そんな犯行が行われたのだろうか。私はルーシーの説に齟齬がないかどうかを考えてみた。しかし、これといった矛盾点は見つけられなかった。ロープが長いものに取り替えられていた疑問と電動車椅子に仏像が結び付けられていた疑問、バッテリー切れの疑問にも答えている。いささか出来過ぎた話という感じはするが、考慮に値する説だと思えた。
 そして、もし本当にそのような犯行が行われたのだとしたら、なんという卑劣な犯人だ。と思わずにはいられなかった。敬愛する博士を全力で支え続けたルーシーは、その間どんな気持ちだったのだろう。ロボットにとって人命救助は何より優先するので、それ以外のことにエネルギーは割けない。犯人に利することになると分かっていても、電源の最後の一雫まで、博士を支えるために使わざるを得なかったはずだ。どんなに僅かな可能性であっても、偶然助けがくるのを待つしかない。そして宙吊りにされた博士は、その間にいったいどれだけの恐怖を感じていたことか。
 そして同時に気がついた。この説がもしも正しいとしたら、犯人が誰なのかは、明らかではないかと。
「君は、犯人は甥の明さんだと見ているんだね。この仮説が正しいとしたら、犯人はアリバイを用意していたはずだ」
「犯人を証明する証拠は何もありません。崖にロープが擦った跡がないかどうかも見てみたのですが、地盤が固くて見つけられません。本格的な科学捜査をすれば分かるかもしれないと思って警察の方々にも頼んだのですけれど、本気で取り合ってはもらえませんでした。ですから、警察を動かすためにも人間の方に協力して欲しいのです。どうしてもロボットだけの意見では、軽んじられてしまいますので。だから江崎さんにお話ししました。協力して頂けますか?」
「ああ。もちろんだ。君の説は詳しく捜査するべき有力なものだと思うよ」
 力強く私が言うと、ルーシーは弱々しく微笑んだ。
「良かった」ルーシーは立ち上がった。海からの風に、本物の人間よりも柔らかい、長い人工髪をなびかせながら。彼女は亡くなった水森博士の一人娘の瑠璃子さんとそっくりだが、ほんの少しだけ本物より美しく作られている。「もう邸の中に入りませんか。美味しい紅茶をご馳走しますわ」
 
 ルーシーは私の好みをよく知っていた。紅茶はダージリンで、角砂糖は一つ。かき混ぜずに飲んで最後に残った仄かな甘みを愉しむ。
 私たちは応接間の応接セットに腰を落ち着けた。事件の当日に、私が刑事たちに頼まれてルーシーを起動させた部屋だ。あの日とは逆に私がソファーに座り、ルーシーはテーブルを挟んで向かい合う椅子に座る。
 お茶を飲めないルーシーは自分の前にもティーカップを置いて、ティータイムに付き合う風を装った。英国風の華奢で優雅なティーカップには、蔦のような模様が入っている。それを鑑賞するように眺めたり、カップを持ち上げて口元に持って行ったりした。
「無理してお茶を飲むふりをすることはないよ。自由にしていたまえ」
「すみません。水森博士はお茶を囲んでいる雰囲気がお好きでしたので、私もこのようにするのが習慣になっているのです」
 ルーシーはティーカップをゆっくりとソーサーの上に置いた。
「君は本当に水森博士を敬愛していたんだね」
「博士も私を大事にしてくださいました」
「だろうね。分かるよ・・・・・・」
 私は紅茶の最後の一口をしみじみと味わった。
「おかわりはいかがですか」
「いや、もう充分だ。美味しかったよ」
 するとルーシーはうつむき加減にして、おずおずと話し始めた。
「それなら良かったです。江崎さん。紅茶を飲み終わったのでしたら、聞いていただけますか。また事件のことで申し訳ないのですが、私はつい今しがた犯人を示す証拠を掴んだように思うのです」
 ルーシーは寛ぐためのティータイムには難しい話をしてはいけないとでも思っていたのだろうか。それにしても、いったい何を言い出そうというのか。
「・・・・・・しかし、君はただお茶を淹れてくれただけじゃないか」
「いえ、その前にポットに湯を沸かすための水を汲んできました。その時に、考えたのです。もし私の推測が当たっていて、犯人の計略に嵌って水森博士をロープで支え続けなければならない状況に陥っていたのだとしたら、私はその時にどうしただろうと。もちろん博士を支えるために全力を尽くさなければなりません。身動きはまったくできなかったでしょう。でも、犯人の計画は推測できたはずです。この事態がこの後どのように進行し、犯人がどのような行動をとるのかは分かりました。ですが、分かっていても私にそれを止めるすべはありません。水森博士の命を救うこともできず、犯人の奸計を阻止することもできない。もしも私に人間のように豊かな感情があったら、無念さに歯噛みする思いだったでしょう。そう考えていたら気づいたのです。私は歯で自分の口の中を噛むことができる。口の中を噛んで傷つけることにより、メッセージを残すことは可能だったかもしれないと。犯行方法か、もしくは犯人の名前くらいなら、記することはできたのではないでしょうか。私はそれに気づくと洗面台へ行って自分の口の中を鏡に映して見てみました。そうしたら、あったのです。上唇の裏に歯で噛んだような不規則な傷の列が。私はどうやら電源が切れる前に上唇を歯で噛んで、モールス信号の方式でメッセージを残していたようです」
 ルーシーはゆっくりと両手の指で自分の上唇をつまんで、それをペロンと捲って見せた。
 確かに、柔らかい合成ゴム製の裏唇に、噛んだような傷が一列に並んでいた。傷は点のように短いものと線のように長いものがあり、意図的に噛み分けたとしか思えない言語的な規則性を示していた。
 ルーシーには人間のように敏感な体感センサーはついていない。だから見えない場所にある傷に自分で気づくのは難しいのだ。意図的に調べてみるまでは分からなかったのだろう。
「ルーシー、まったく君には驚かされるよ」私の声は興奮に掠れた。「それで、そこには何と書いてあるんだ?」
 ルーシーは唇を元に戻すと、躊躇うように間を置いてから口を開いた。
「はい。モールス信号を変換した文字は、『ハンニンハ キシタクミ』です」
「何だって。キシタクミ? それは間違いないのか」
 岸匠は、水森博士の顧問弁護士であり私の親友でもある岸のフルネームだ。
「間違いはありません」
「そんなはずは無いだろう。どうして岸が水森博士を殺さなければならないんだ」
「岸さんは、水森博士の姪の美樹さんと親しいのです。結婚の約束ができているのだとすれば、遺産の相続が動機になるかもしれません。いずれにしても、私は見つかった証拠に基づいて判断するよりありません。私は弁護士の岸さんを、殺人者として告発いたします」
 ルーシーは真摯にまなじりを引き締めて、真っすぐに私の目を見つめた。
 
                   Ⅳ

 ルーシーの告発は事件の捜査に大きな波紋を投げかけた。何と言っても犯人の名を示す証拠を提示できたのだ。警察も無視を決め込むことなどできはしない。私が彼女を全力で擁護したことも、彼らを動かす一助となったようだ。
 警察は岸を容疑者と目した捜査を開始して、そして容疑を固める証拠をいくつも掴んだ。
 道路に設置されている自動車ナンバー自動読み取り装置を解析して犯行当日に岸の車が水森博士邸の方へと向かっていたのを発見した他、水森博士の電動車椅子に結び付けられていた仏像は岸が一カ月前に古物商から買い取ったものだという事実も突き止めた。水森博士の姪の美樹さんとの関係も、婚約者同然のものだったと分かった。だが美樹さんは岸の犯行には関わっていなかったようだ。もし岸の計画を知っていたら、犯行が実行された日に仕事を休んでアリバイを無くすようなことをするはずが無いからである。一方岸の方は、勤務日だから彼女は当然出勤するものと思って安心していたらしい。
 ルーシーからの告発を受けた岸の取り乱し方は醜かった。「ロボットなどに何が分かる」と声を荒げ、警察の取り調べにも慌てふためいて犯人にしか知り得ない言葉を発したりもしたらしい。結局それが逮捕の決め手となった。彼の有罪はもう動かないだろう。
 それらの成り行きを見ていた私は哀しかった。岸のことは自分を律して努力を重ねる立派な男だと信じていたのだが、そうではなかったと分かってしまったのだから。
 事件が一段落すると、私はおりを見て再びルーシーの元を訪れた。ルーシーは水森博士の邸を綺麗に掃除して、引っ越しの用意を整えているところだった。
「立派な邸なのに使わないのか。もったいないね」
 応接間でルーシーが淹れてくれた紅茶を飲みながら私が言うと、向かいの席にいるルーシーはあっさりとしたようすで、
「ロボットの私には必要ないですから」
「博士から相続した財産は、もう親戚の人たちに譲ることに決めたんだったね」
「はい。親戚の方々と協議して、私自身が誰の所有にもならない権利と、あと博士の財産の百分の一にあたる金額だけは頂きましたが。私にとっては、それだけでも過分なものです」
 肩の荷を降ろしたルーシーは晴れやかな表情を見せた。
「そうか」
 それとは逆に、私の心は重くなるばかりだった。私には一つだけ、やらなければならない仕事が残っていたのである。いつまでも先延ばしにはできない。ここまで延ばしただけでも、遅すぎたくらいなのだ。
 私は紅茶の残りを一気に飲み干すと、思いきって切り出した。
「ルーシー。君に話さなければならないことがある。心して聞いてくれ」
「はい」
 ルーシーは私の態度で察するものがあったようだ。先生の訓示を待つ小学生のように、キチンと椅子の中で居ずまいを正した。賢明な彼女は私の要件を予想していたのだろうか。
 どう言ったらいいか分からなかった。言葉を飾ることなどできない。単刀直入に言うしかなかった。
「はっきり言おう。私は君を廃棄しなければならない。理由は、君が水森博士を殺した犯人を、告発したからだ」
「はい」
 ルーシーは、何の反応も示さなかった。
 かえって私の方が戸惑って、口調が乱れがちになる。
「・・・・・・私は君が水森博士の殺害事件を捜査すると言った時、そんなことはできないだろうと思った。君の人工知能の能力が、そこまで達しているかどうかは分からなかったし、それ以上にロボット倫理の基本三箇条が、君の行動を阻むだろうと思ったからだ。ロボットは人間に危害を加えてはならない。危険を見過ごすことで危害を及ぼしてもならない。ロボットは人間の命令に従わなければならない。ただし命令が人間に危害を与えるものである場合には従うべきではない。これらに反することのない限り、自己を守らなければならない。現在ではロボットにも人格権が一部認められているが、それでもこの条項は重い。ロボットは人間に危害を加えてはならない。特に人を死に至らしめるような行為は、いかなる条件があっても絶対に許されないのだ。どんなに僅かであってもこのタブーに抵触した可能性があるロボットは廃棄処分にする。これはすべてのロボット工学者が守らないといけない絶対のルールなのだ・・・・・・分かってくれるかね」
「ええ・・・・・・分かりますわ」
「どうして君は岸を告発してしまったのだろう。水森博士の無念を晴らし、法律を守って正義を貫くためか。しかし、わが国の司法には、死刑制度がある。実際には一人を殺しただけで死刑になることはないが、それでも殺人の最高刑は死刑なのだ。どんなに僅かでも法律上はその可能性がある以上、私は君をロボット倫理に違反したと認定せざるを得ない。人間を死に追い込む可能性に踏み込んでしまったと考えないわけにはいかない。もちろん君の人工知能に生じた歪みは、ほんの僅かなものだろう。研究室のコンピーターで検査しても、異常は見つからなかったくらいなのだから。だが、どんなに僅かでもずれが生じれば、それは時間とともに拡大してゆく恐れがある。人工知能がモンスター化するのを防ぐためには、どんな小さな悪い芽でも摘み取らないといけないのだ。ロボットは、アンドロイドは、殺人事件の犯人を、指摘してはいけないのだ。死刑という制度が存在する国ではね。私も君から岸の名前を告げられた時にはつい興奮してそれを忘れてしまっていたが、冷静になって考えれば、そう断じる他はない」
 私は一気に喋ってしまうと、息急くような思いでルーシーを見た。しかし彼女は淡々としていた。まるで大事に育てた花の生育の問題点を指摘されるのを聞いていたかのようだ。その姿は人間を超えた特別な存在のようにも見えた。
 彼女はゆっくりと口を開いた。
「私にも、それは薄々分かってはいました。おそらく、水森博士が亡くなる時のショックが、私にロボット倫理を乗り越える感情のようなものを生み出すきっかけとなったのではないかと思います。犯人の計略にかかって断崖に落ちかけた博士を支え続けている時に、その狂いは生じていたのかもしれません。普通の人工知能が経験するはずのない、異常な状況でしょうから。考えてみるとその時に犯人を示唆するメッセージを残したこと自体、もうすでにロボット倫理に違反していたかもしれないのです。博士の命を救いたい思いと、自分はその博士を殺す計画に加担してしまっているのではないかという思い、犯人に対するネガティブな思いなどが交差して、異常な反応を生じさせたのかもしれない。ですが、私は、後悔してはいません。これで良かったのかもしれないとも思うのです。水森博士の無念を晴らすことはできたのですし、僅かでもタブーのラインを越えたからこそ、私は本物の感情らしきものを持てたのではないかとも思うからです。だとしたら、私は逆に、幸せなのではないでしょうか。これまで人工知能が持つことができなかった感情を、人間の心を、ほんの僅かであっても理解することができたのですから。江崎さん。ありがとうございます。水森博士に大事にして頂き、あなたにも親切にして頂いて、短い間でしたが私は幸せでした。・・・・・・あなたといる間は、とても暖かい気持ちになれましたわ。その気持ちは私の宝物です。それではさようなら。ご迷惑をおかけしないためにも、もう私は消えた方がいいですわね」
 ルーシーはこの上なく優しい笑顔を見せた。そして次の瞬間、その顔からはすべての表情が消えたのである。まるで神の見えざる手が、すべてを拭い去ってしまったかのように。微細な動きから完全なる静止へ。こんな僅かなことが豊かな生命と見えたものを物質そのものに戻してしまうのは、何度経験しても不思議な感覚だった。彼女は自分で自分の電源を切ることができる。これが、ルーシーが自分の意識を捨てて、ただの物質に戻ることを選択した瞬間だったのである。
 ルーシーの瞳は魂のない合成樹脂の球体に戻り、そして二度とは動かなかった。
 私は胸を押しつぶされそうだった。
「ルーシー・・・・・・」
 思わずつぶやいて、そして彼女を再起動させる誘惑に駆られた。彼女には一つだけ、言えないでいることがあった。それを伝えたいと思ったのだが、すんでのところで思い留まった。
 彼女は自ら消滅する道を選んだのだ。苦しみのない平穏な世界へ旅立ったのなら、呼び戻すようなことはするべきではない。それが彼女を人間同様に処遇する、最後の礼儀であるように思えた。ロボット工学者の倫理に照らしても、危険な要因が生じたロボットを自分の都合で再起動させるなどということはすべきではなかった。
 私の頭には、ルーシーが自分に生じた小さな魂を手に持って、天に昇って行く姿がイメージされていた。その姿は十年前に亡くなった水森博士の一人娘の瑠璃子さんとそっくりだった。ルーシーは、私がかつて愛し合い結婚の約束をしていた瑠璃子さんと同じように、安らかに天国に旅立つことができたのかどうか・・・・・・。
 ルーシーは今、宝石のような魂を持って空に浮かんでいる。
 そう信じたい。

                   了

アンドロイドには向かない職業

執筆の狙い

作者 中村ノリオ
flh2-122-130-109-65.tky.mesh.ad.jp

SFミステリー。
数年前に某ミステリー系新人賞に投稿して一次選考を通らず落とされてしまった作品です。
自分では気に入っていて、世に出してあげたい作品だったんですが。

コメント

ぷりも
softbank060116236244.bbtec.net

拝読しました。
率直に言って、このサイトでみた中で一番面白かったです。個人的にはその辺のプロの作品より面白いと思いました。
冒頭から読者に気を持たせて、そのまま衰えることなくラストも綺麗に締める。プロの作品でも冒頭は面白かったのにだんだん尻すぼみな展開になって、そりゃないわってラストが多いなか、御作は素晴らしいですね。
伏線的な小道具にもちゃんと意味があるし、私が予想した犯人は読み進めていくと否定される。「あ、違うんだ」ってなりました。
文章も綺麗で読みやすく、かつ読者に配慮した工夫がされていると思いました。
具体的には読者が持ちそうなバッテリーの性質に関する疑問。主人公は知っているはずなのにルーシーにそれを尋ね、ルーシーの説明を聞いて「そうだったね」とうっかりしていたように答える。
これは地の文で、「ルーシーのバッテリーは〜である」と説明するよりスマートですね。
最初の方にある「完全な制止」ってとこだけ静止の誤字だと思います。
粗探ししているわけではないですが、個人的にはケチのつけようのない素晴らしい作品だと思います。
何かの賞に応募してみては。

ぷりも
softbank060116236244.bbtec.net

狙いを読んでいませんでした、すいません。
既に応募していたのですね。
これで一次予選も通らないとは信じられないですけどね。他の出版社に出してみたら良いと思います。

私の感覚の信憑性は置いといて、この作品には「私だったらここはこうするかな」という所もなかったです。

中村ノリオ
flh2-122-130-109-65.tky.mesh.ad.jp

ぶりも様。コメントありがとうございます。
ミステリーに詳しい方から高い評価を頂けたのはうれしいですね。この作品が誰にも読まれることなく埋もれてしまうのか。と思っていただけに。
きっとルーシーも空の上で品よく微笑んで成仏してくれるでしょう。

他の出版社にも出してみたらどうかとのお勧めは有難いんですが、そうしたところで確実に第一次審査を通らずに落とされるだけでしょう。
私は現在58歳ですから。

中村ノリオ
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ぷりも様。先の返信ではぶりもと文字を打ち間違えてしまいました。
大変失礼しました。
それと、制止の誤字の指摘、ありがとうございます。さっそく直すことにいたします。

匿名希望者
nat-ftth1.kkm.ne.jp

拝読しました。

私が思うに、賞に落ちた理由も貴方が気に入っている理由も、たぶん同じではないかと思います。

アシモフのロボット工学三原則を基に小説を構築する。かなり緻密に考えられていると感じます。
特に
>>彼女は自ら消滅する道を選んだのだ。
これ自体が、
第三条
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
に、結果的に違反する。
アンドロイドを通り越えて、ほぼ人間と同じ存在になったことを、作者さんは言いたかったのかなと思います。

ですが、小説として、読者にはいろいろと難しいと思います。ロボットの映画では敵味方問わず、人を倒す作品が多いです。AIやドローンは戦争に使われています。ロボット三原則といっても、知らない人はぴんとこないかもしれません。また、読者に伝えるため多くを説明しなければなりません。読む方としては理解するのが大変です。

一人称としての欠点は、主人公が単なる語り手になっていて感情移入しない。元婚約者に似ていたら、最初からドギマギするのでは? と思います。主人公の視覚的描写は、そのように表現されているのに、感情がのっていないと思います。
もし感情がのっていれば、彼女の無実を晴らすため主人が調査するというロジックが成立すると思うのですが……。ルーシーが全てを解き明かすのは釈然としません。
もっと警察官を動かすべきとかなと思います。名前がないところで活躍しないなとは予想できましたが。誰かが記憶(記録)を消した時点で、他殺が濃厚で、あるとすればルーシー自らが消した可能性は残るわけで。

他の釈然としない点を挙げてみます。補完してあるかもしれませんが。(;^ω^)
・銅製の仏像。自殺を装うためだと思うが、犯人は遺言の内容を知って犯行に至っているはす。遺産は結婚しても子の財産であり、共有物ではない。(現行の法律)
ルーシーを相続人から外すための犯行でなければ意味がなく、被相続人の兄弟姉妹(配偶者と子がいない場合)にしか相続権はない。(現行の法律。甥姪は代襲相続。弟を死亡させておく必要がある) 
また、バランスをとるためなら、重量も知らなければならないが、ロボットの重さ? 鉄でできているのなら、椅子も壊れるくらい重いのではないかと思います。
・ロボット三原則に違反するのであれば、殺人事件の告発自体出来ない法律になっているのでは?
・ロボットだということを除外したら、警察からは見たルーシーは第一容疑者となる。人間に近くなるほど。犯行後の証拠捏造の疑いも増える。(ロボット工学三原則を破ることが可能なら陥れることも可能)小悦のギミックの問題ではなく一人称の客観性の問題だと思う。警察が調べ発見したのであれば、客観性は増すと思います。

個人的には三人称小説にして、いらない説明を省き、順序良くかつ前倒しで説明することで、面白い作品になるのではないかと思います。
例えば、ロボット工学三原則を警察に説明して読者にも知らせる。難しい内容は省き、ルーシーは犯人ではないと主人公のセリフで説明する。逆にルーシーを犯人にするには、アンドロイドではなく、サイボーグだったというオチ。(自分を殺した相手への復讐)

SFとして未来に過ぎた感はありますが、内容はよく考えられている良い作品だと思います。
公募頑張ってください。応援します。
長文失礼しました。

匿名希望者
nat-ftth1.kkm.ne.jp

誤字報告
×小悦のギミックの
〇小説のギミックの
失礼しました。

ぷりも
pw126186131183.7.panda-world.ne.jp

ハリーポッターでも十社以上からボツくらったらしいですから、諦めることないと思いますよ。プロの目も、一般読者の目も様々です。面白くないという人も当然いるでしょう。
私は書くのも読むのも素人なんで、私の言葉には何の重みもないし、自分の感想こそが正しいというつもりはないですが、私は素直に面白いと思いました。そこに著者の素性は関係ありません。好きな作家さんの書いた物でもつまらないと思えばつまらないと無責任なことを言います。
東野圭吾先生のものでも、「ある閉ざされた雪の山荘で」は良かったですが、「ブラックショーマンと名もなき町の殺人」はイマイチだと思いました。
私は、読了感を味わえる作品が好きです。御作のラストは違った形を望む方もいるかと思います。私も少し残念と思う気持ちもありましたが、よくできたアンドロイドが最後に人になったと感じさせる最も美しいラストだと思いました。
敢えて言うなら、タイトルは再考の余地ありと思います。私は単純に「ルーシー」でいいような気もしますが、そこは中村ノリオ様のスタイルなのかもしれませんので、個人的意見です。
再チャレンジの一助と言うほどではないですが、もう一箇所誤字がありました。
IIの最初の方にある、「今だに」→「未だに」

夜の雨
ai201221.d.west.v6connect.net

「アンドロイドには向かない職業」「Ⅱ」まで読みました。

御作には致命的な欠点があります。
作者さん、「相続」のことを調べないで作品を書いたでしょう。
それで公募で一次落ちになりました。
要するに設定ミスというやつです。


ネットでAIに相続についての質問をしました。

Aが亡くなったとして、そのAが独身だった場合。
Aの両親がすでに亡くなっており、親族は弟とその子供たちだけの場合は、Aの財産は弟にすべて行くのでしょうか。
それとも弟の子供たちにも財産は行くのでしょか?

AIの返答(法律事務所の回答をチェックしたようです)。
というか、この財産分与の件は、私も知っていました。
以下返答です。

弟とその子供たちがAの唯一の親族である場合、Aの財産は弟に相続されます。弟の子供たちは、Aの財産を相続することはできません。

ただし、相続には法律があり、地域によって異なる場合があります。また、Aが遺言を残していた場合、遺言に従う必要があります。弁護士に相談することをお勧めします。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アンドロイドのルーシならネットと回線がつながっているはずなので、上のような回答は一瞬でわかるはずです。
御作には弁護士も登場しているし話のつじつまが合いません。
また、それが御作の主題に近いもになっています。


ラストまで読んだら読了後のすべての感想を今夜中に書きます。

よろしくお願いします。

フェラメール
softbank060087124223.bbtec.net

好感の持てる面白い作品でした。
感想欄にある意見を受け止めて、再度公募に出してみるべき。
ビートルズでさえ、気に入らないという理由で、デビューさせるのを蹴った人がいましたからね。
アシモフのロボット工学三原則は、人間がこうであれと考えているだけで、実際はロボットを造った人の設定によるのかと。現在では、小説にさえ使えない三原則だと思います。
あと、セリフが多いので、もう少し端的にしたほうがいいかも。
端的の使い方、合ってるかな? 後で調べよう。

夜の雨
ai201221.d.west.v6connect.net

「アンドロイドには向かない職業」読了しました。

アシモフのロボット三原則がラスト近くで重要な役目をしていましたが、これも設定がおかしいです。
ルーシは犯人の名前を舌の裏にモールス信号で刻んでいたので「岸」が特定(告白)されて警察に捕まります。
これにより岸が水森博士を殺したという事になります。
これで岸が死刑になる可能性が少なからずあるので、ルーシはロボット三原則に違反ということで主人公の江崎は、ルーシを廃棄処分すると告げます。
ルーシも同意していますが、というか自ら電源を切ってしまい自分を終了させてしまいます。
要するにアンドロイドのルーシが自殺したような結果です。
ロボット三原則では自らの終了させることはできないのではありませんか。だいたい、ロボット三原則を重要視にした物語(主人公が開発者)なら、ロボットの中に自分を終了させるようなスイッチは「つけない」と思いますが。三原則違反になります。
「岸」の件については人間が裁判で罪を決めるのであり、ロボットが死刑を宣言するのではありません。
したがってルーシが岸を死に追いやったという事にはなりませんが。まだ裁判も始まっておりませんが。
また岸は犯罪、それも殺人という凶悪犯罪を犯したのであり、ルーシはそれを告白しただけです。
自分(ルーシ)が相手の犯罪の証拠を持っていたら当然社会正義のために活用する必要はあります。
これが、ロボット三原則で「人間を殺す(危害を加える)」には、ならないと思いますが。

最初の感想でも書きましたが、水森博士が亡くなりその財産を弟の子供(姪の美樹)たちが相続することはできません。
従いまして岸が美樹と結婚しても水森博士の財産が転がり込むことはありません。
まあ、水森博士の弟が財産をすべてもらうので、間接的に得はするし、いづれ弟が亡くなると財産が半分転がり込むことになりますが。


今回は、基本的なところで設定ミスをしているようですが、構成力とかキャラクターとか、小説を書く上での重要な文章力は充分おありだと思います。
結構楽しく読めましたので。

ちなみにタイトルはもっと適切なものがあると思いますが。

設定をしっかりと練って作品を書けば充分公募で良い結果が得られると思います。


お疲れさまでした。

中村ノリオ
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匿名希望者様。コメントありがとうございます。

ご指摘された疑問点についていくつかお答えします。

〈>>彼女は自ら消滅する道を選んだのだ。
これ自体が、
第三条
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
に、結果的に違反する。〉
 
 このシーンは、ルーシーが自ら自分の電源を切ったというつもりで書いていました。電源を切っただけなのだから自殺にはあたらないだろうと。
 処分の邪魔にならないように私の意識は消しておきます。と江崎に身を委ねたというイメージで、「自ら消滅する道を選んだ」というのは江崎の解釈。しかしよく考えれば江崎はロボット工学の研究者なので、そういう解釈をするのはおかしいと言えばおかしいかもしれません。
 読者にルーシーは自殺したという印象を強く与えて疑問を抱かせたのなら改善するべき点であるのかも。
 
〈一人称としての欠点は、主人公が単なる語り手になっていて感情移入しない。元婚約者に似ていたら、最初からドギマギするのでは? と思います。主人公の視覚的描写は、そのように表現されているのに、感情がのっていないと思います。
もし感情がのっていれば、彼女の無実を晴らすため主人が調査するというロジックが成立すると思うのですが……。ルーシーが全てを解き明かすのは釈然としません。〉

 最初からドギマギするはず。というのはそうかも知れませんが、それをやるとラストでその事実を明かして最後の軽いオチにするという構成ができなくなってしまいます。ミステリーはこのオチが大事だと思っていますので、そちらの方を優先した書き方をした。ということです。
 
 〈・銅製の仏像。自殺を装うためだと思うが、犯人は遺言の内容を知って犯行に至っているはす。遺産は結婚しても子の財産であり、共有物ではない。(現行の法律)
ルーシーを相続人から外すための犯行でなければ意味がなく、被相続人の兄弟姉妹(配偶者と子がいない場合)にしか相続権はない。(現行の法律。甥姪は代襲相続。弟を死亡させておく必要がある)〉

 この部分はちょっと違います。遺言状の内容は犯人にも知らされない状態で保管されていました。なのでルーシーを相続人から外すべきだということは犯行時には分からなかったはずなのです。
 相続人に関しては他の方も指摘していましたのでそちらでお答えしようかと思います。
 長くなったのでこのあたりで。

 しっかり考えて読んでいただきありがとうございます。
 参考になりました。
 

 

中村ノリオ
flh2-122-130-109-65.tky.mesh.ad.jp

ぷりも様。再訪ありがとうございます。

ハリーポッターも十社以上からボツを食らっていたんですね。知りませんでした。
励ましの言葉、身に沁みます。

タイトルは自分ではいいんじゃないかと思っていたんですが。
実は大分迷って、ビートルズの曲のタイトルから取ったらどうだろうと考えたりもしていました。

今だに→未だに
これ、他の作品でも使ってしまっていました。未だに、なんですね。ありがとうございます。

中村ノリオ
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夜の雨様。コメントありがとうございます。

致命的な欠点がある。とのことでしたが、すみません。私にはご指摘された点は致命的とは思えませんでした。

まずは正直に認めます。相続のことは調べずに書きました。現行の法律に準拠すればはっきりしたミスとなるでしょう。しかしこれは未来の話なのです。現行の法律が未来では変わっているというのは普通にあることではないでしょうか。作品中でもロボットに関する法律が新しく作られたなど未来だから法が変化していることには触れていますし、「はたしてこれはミスなのだろうか」と考え込んでしまいました。

ルーシーが自殺したのかどうかについては匿名希望さんへの返答を参照願います。

〈「岸」の件については人間が裁判で罪を決めるのであり、ロボットが死刑を宣言するのではありません。
したがってルーシが岸を死に追いやったという事にはなりませんが。まだ裁判も始まっておりませんが。
また岸は犯罪、それも殺人という凶悪犯罪を犯したのであり、ルーシはそれを告白しただけです。
自分(ルーシ)が相手の犯罪の証拠を持っていたら当然社会正義のために活用する必要はあります。
これが、ロボット三原則で「人間を殺す(危害を加える)」には、ならないと思いますが。〉
 
 この点については見解の相違があるように思います。
 「ルーシーが岸を死に追いやった」ということにならないのは当たり前です。そういう風に書いてはいませんから。
 江崎は「ルーシーが岸を死に追いやろうとしたと取れないこともない」という極々小さな懸念材料を将来大きく成長しかねない芽としてとらえ、それを取り除こうとしたのです。AIのモンスター化は人類の将来を暗黒化するかも知れない危険をはらんでいる。だからどんな小さな悪い芽でも摘まなけれはならない。という考え方です。
 AIが人を死に追いやるようになってから対処したのでは手遅れになる可能性があり、その時には人類はAIから奴隷化されてしまう運命かも知れないのです。
 だからはたから見れば「そんな必要はないだろう」と思われるような段階で動いた。
 とは言え、そういった事情をしっかり伝えられなかったのは私の筆力の無さです。
 この部分についても改善するべきところはあるのでしょう。

 あと一点。
〈アンドロイドのルーシならネットと回線がつながっているはずなので、上のような回答は一瞬でわかるはずです。〉
 ルーシーにはそんな機能はありません。
 量産型のアンドロイドならおそらくそうなるでしょうが、彼女は水森博士が亡くなった娘に似せて作った一点ものなので、そんな無粋な機能はついておりません。

 と、ムキになって反論したようですが、いつもはニュートラルな批評が多い夜の雨さんから辛目の批評を頂いてそれに答え、私は充実感を感じております。

鋭いご指摘ありがとうございました。

中村ノリオ
flh2-122-130-109-65.tky.mesh.ad.jp

フェラメール様。コメントありがとうございます。
すみません。他の方への返答を書いていて疲れてしまいました。短い文で失礼いたします。

〈アシモフのロボット工学三原則は、人間がこうであれと考えているだけで、実際はロボットを造った人の設定によるのかと。現在では、小説にさえ使えない三原則だと思います。〉
 これは耳の痛い指摘ですね。若い人の間ではそうなっているのかも。
 ほかの方もいろいろな指摘をして下さっていましたが、これが一番胸に応えました。
 ありがとぅございます。

ぷりも
softbank060116236244.bbtec.net

しつこくてすいません。返信不要です。
もうネタバレ考慮する必要もなさそうなので、これまで書けなかったことを書きます。
博士の顧問弁護士岸立ち会いのもと遺言状を作成するのが普通ですが、内容的に反対されると思い博士は自分一人で作成した。
自筆証書遺言書制度を利用したなら、本人だけで作成できるし法務局管理となるので、文中にあるように岸も内容を知らなかったということに矛盾点はないです。
法律では、繁行にしか相続権がないのはその通りです。私が思ったのは、岸はまず博士を殺害し繁行に全財産を相続させる。次に繁行を殺害する計画があった。なのに遺言状の内容はルーシーに全財産が渡ってしまうというものだった。焦った岸は主人公に相談して3/4を放棄させるよう促す。この母数の4が、ルーシー含めた4人とは書いていないので、私は4等分という意図には取りませんでした。
ルーシーが条件を飲めば繁行75%ルーシー25%です。ここから当初の予定通り繁行を殺害すれば博士の姪の美樹に37.5%入ってくるということになるわけです、
トラックでも車両重量以上の積荷を動かせるわけだから、ルーシー重量>博士+車椅子+仏像でなければならないわけではないので問題ないと思います。
宗教に関心のない博士、繁行は宗教を信仰しているという記述もあり、仏像はミスリード(早計ではあるとルーシーが否定するが)だけでなく、ルーシーのチカラと重量を釣り合わせる二重の目的があったと言う点で上手い使い方だと思いました。力仕事でバッテリー消費が早くなったが充電に行けないため力付きたというのも理路整然としているし、その直前に何ができるかを考えてモールス信号を唇に残すと言うのは人間だったらできない、アンドロイドならではの特性をうまく利用していると思いました。
最後にルーシーは自らを破壊したとの記述はなく、主人公が再起動しようかという衝動に駆られたという記述から、私は電源を落として身を委ねたと解釈しました。
そして、胸のつぶされる思いというのが、単にルーシーを失うという意味ではなく、その後でルーシーのモデル瑠璃子は主人公の婚約者だったと明かされる点も切なさが倍増しました。
で、先の返信にも書いた通り人の感想は様々です。今回思ったのは、読者がどのように行間を埋めるかで、面白いと思うか、釈然としないかが変わるのだなと。そこに正解はないとは思います。
ちなみに私は、嘱託殺人かと思いました。車椅子も自分で操作できないほど老衰した博士がルーシーを使って自殺した。感情に近い物をもっているルーシーを慮り記憶が消えるようプログラミングしたと。このオチだったらガッカリしてたと思うので否定されてよかったです。

審査に通らなかった理由が法的な見解の
不備であったとして、そして私が審査をする編集部員だったとするなら、その部分を修正すれば合格とすると提案します。それが他の応募者に対してアンフェアでできないなら、コンテストとは別にオファーしますけどね。

タイトルは単体で見たら良いのですが、どこかコミカルな印象を受けます。シリアスな内容のこの作品につけるとそれを損なってしまうようで勿体ないなと思いました。
そして、結びを読み直してみてなるほどと思いました。

Lucy In The Sky With Diamonds

飼い猫ちゃりりん
dw49-106-193-39.m-zone.jp

中村ノリオ様
珍しく夜の雨様が厳しいコメントをしていますね。
結論から言うと、飼い猫も失敗作だと思うのですが、飼い猫はこの失敗を大きく評価したいですね。
つまり飼い猫は、せこい成功作品より、しっかり取り組んだ失敗作の方が好き。
この作品はしっかり書いてあるし、ストーリーもよく練られている。
挑戦すれば失敗をする。だから小さくまとめて、小さな成功をおさめるという考え方もあるが。
でもこの作品はしっかり書いてあるから、成長の可能性が巨大。

飼い猫提案
①この手の作品につきまとうジレンマの克服
「結局機械でしょ」
涙を流そうが、自ら死のうが結局は機械。との感情が読者の心のどこかにあるから、その障壁を破壊する。
実は、娘の瑠璃子は父を超える超天才の学者。不治の病を抱える瑠璃子は、自分の心をそっくりそのままルーシーにインストールすることに成功する。
②最後の落ち
愛は要らない。
「なんだ、やっぱ機械だったんだ」
と読者にガツンと寂しさをお見舞いして終わる方が効果的だと飼い猫は思うけれど……

良い作品でした(あれ、最初言っていたことと矛盾するにゃ。猫はAIじゃないから矛盾もありです)。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

「アンドロイドには向かない職業」Ⅱまで拝読しました。

読んでいて一番違和感を感じるのは、弁護士岸の行動です。

「財産狙い等の理由から被相続人の殺害または殺害未遂で刑に処された相続人は、相続欠格となり相続権を失う。 ただし、相続欠格となるのは相続人が故意に被相続人を殺した場合または殺そうとした場合であり、過失による致死の場合には相当しない」

事故なのか、殺人なのか……警察が動いている時点で、弁護士の思考の中には当然の如く上記の内容があるはずなのに、全く違う観点で悩んでいますね。容疑者の中には、当然ルーシーも含まれるはずです。この段階で会話を進める段階ではない内容が描かれている時点で、物語の現実味が失われています。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

この段階で→この時点で

です。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

あぁ、岸でしたか……
自ら墓穴を掘ったようですね。

弁護士としての秘守義務を貫いていたならこうはならなかったでしょうね。
自身の強欲から、心に隙を作ってしまったのでしょう。

楽しく拝読させていただきました。

夜の雨
ai201147.d.west.v6connect.net

再訪です。
御作がやりやすいように設定すればよいと思いますが。
まず、今回問題になった相続の件ですが。

水森博士が亡くなったあとの相続権が「弟」とその「子供たち(姪とか甥)」までに設定したのは「岸」が水森の姪である美樹との婚約者にして、財産を狙ったという伏線づくりのためでしょう。
現在の法律では「子供たち(姪とか甥)」までに相続がないのであれば、弟が事故とかで亡くなっている設定にすれば美樹に相続権が与えられます。
現在ある法律を変えるよりも弟が亡くなっているという設定にしたほうが話としては自然です。
なんなら水森の妻と一緒に車に乗っていて事故で二人とも亡くなったとかにすれば違和感はありません。または自然災害とかバスとか飛行機事故とかでその他大勢と一緒に亡くなったとか。
そのときに水森も一緒だったということにして妻と弟は亡くなったが水森は助かった。しかし重い後遺症が残った、それで車いすの生活になった、という事にすればよい。
なんならそのときに「水森の娘である瑠璃子」も一緒に亡くなったという設定にすれば『御作の中での死者に関する事柄はわかりやすくなります』。

それと「ロボット三原則」が御作に絡んでいる設定ですが。
ここは、もう一歩話を突っ込んで描くと面白くなるのではと思いますが。
どうするかというと、水森殺しの犯人は「岸」ではなくて主人公の「江崎」にする。
江崎が水森を殺した動機ですが。
江崎は水森を科学者として敬愛していましたが、それとは別に独占欲(束縛)が強い性格であった。
江崎は水森にも信頼があったのでロボット製作の過程で何度も水森の家に招待されている。
そこで江崎は水森の娘である瑠璃子に遭った。
彼女の人柄と美しい容姿に江崎は恋心が芽生えるが、彼には独占欲が幼いころからあり、それでしばしば周囲の者ともめたりした。
江崎は瑠璃子と付き合ううちに、自分の思い通りにならないことにストレスを感じる。
瑠璃子は江崎を優秀なロボット工学の科学者だとは思っていたが、どうも束縛が激しくて、彼と付き合っていると自由がない。江崎はどんどん瑠璃子に迫ってくる。
そんなおり瑠璃子が事故で亡くなった。

こういった背景を江崎と瑠璃子のあいだに作っておき、瑠璃子亡き後、水森博士が瑠璃子とそっくりなルーシの製作の立案を出したものだから江崎はルーシにのめり込むことになった。
江崎もルーシの製作に関わったので、江崎が都合のよい頭脳のプログラムをセットした。
それで瑠璃子があまりにもよくできていたし自分の思い通りになり江崎の独占欲を満たすものだからルーシを欲しくなったが、それには水森がじゃまだし、水森は江崎と違い、独占欲などはなかった。
それは娘の瑠璃子にも通じていた。
瑠璃子は水森によりのびのびと育てられていた。
そんな瑠璃子を江崎は彼女にしてあわよくば結婚したかったが瑠璃子には自立心があり、江崎と距離を保っていたのでいらだちのようなものがあったが、ルーシは瑠璃子とそっくりな容姿と身のこなしなのに、江崎を嫌う様子は全くなくて、これは江崎がルーシの頭脳をプログラムしたときに江崎に束縛されても愛するように設定していたからだった。

水森博士の殺人は表向きは「相続」がらみの事件のように見せかけておいて話を進めます。
しかし、実のところは主人公の江崎による瑠璃子を独占したかった、それがかなわなくなったときに、水森博士と話をしていた時に、意見の対立が起きた。
それは相手を独占するようなことをすると相手の自由な考えを束縛するので人間はおろか、アンドロイドといえども自由を保障する必要がある、それが人権であり、ロボットと人間の豊かな未来を拓くものだ、ということで、江崎の独占欲とはまったく相いれないものでいらだった。
それで意見の対立が、つい殺害を実行に移すべく行動になった。
このときにルーシは水森が主人であるにもかかわらず江崎に都合よく動いてくれたので「江崎は勝ち誇った」。
水森が亡くなった後に、警察は相続のトラブルで水森は殺害された方向で捜査に入っているところに、ルーシが自分の舌の裏に刻まれたモールス信号を警察に知らせてしまった。
または、ルーシが見ていたものがネットを通じて研究所にデーターとして送られていた。


というような流れ。

基本的な大きな流れは御作の世界です。
相続の件は弟が亡くなっているという設定にすれば「姪の美樹」に水森の財産の相続が発生します。
これで、現在の法律と照らし合わせても違和感は無くなります。
したがいまして、御作通りに「岸」が犯罪に絡んでいるかもしれないという方向に読み手を誘導することが可能です。

しかし、水森殺害の犯人は別にいたということで、主人公の「江崎」だったという設定です。
動機は水森と江崎が意見で対立して激高した江崎が水森を殺害した。
これには水森が瑠璃子と江崎が付き合っていたということを知っており、瑠璃子から江崎が独占欲が強くて自由を束縛されるということも聞いていたので、そのあたりも含めてロボットの未来も自由を保障することで人間と共存できるという水森の考えとロボットは人間の所有物であるという発想をする独占欲が強い江崎には承服できかねないことで意見が対立した。
その現場を近くにいたルーシは見ていたわけだが、水森にルーシが対応しているときは動きが人間のようであったが、江崎が激高したあたりからルーシの動きが人間の様からロボットのように魂が無くなった動きになった。
そして江崎に協力して機械のように水森殺害を行った。

以上です。

御作を基にして、話のつじつまが合うようにしたのと、水森の娘である瑠璃子と江崎の関係を掘り下げました。
自由を求めた瑠璃子と束縛をしたい江崎。瑠璃子亡き後は、彼女の存在でもあるルーシを束縛したいと思った江崎が身の破滅に怠ったという物語です。

少しでも参考になればと思います。


お疲れさまでした。

中村ノリオ
flh2-122-130-109-65.tky.mesh.ad.jp

夜の雨様。再訪ありがとうございます。
ひょっとしたら気を悪くされたかと心配していたのですが、改革案のアドバイスをいただけるとは。ホッといたとました。

改革案に関してですが、矛盾や疑問があると指摘された点についてはやはり改めた方がいいかと考えていました。
私の改革案はこうです。

水森博士の弟の繁行を、博士の弟ではなく三兄弟の歳の離れた長兄にする。父親である博士の弟は既に死亡。

前半でロボット三原則を説明する際に、AIに人間同様の人格を持たせることの危険性を説明し、研究者たちはその危険を熟知しているため学界で学者独自の厳しい倫理基準を設定して細心の注意を払っていることにも触れる。

最後のシーンでもう一度それらについて書き、読者が矛盾を感じないように努める。

ルーシーが自殺したと見えるシーンについても、自ら電源を切って江崎に後を委ねたことをもっと分かりやすく書き直す。

これでどうでしょうか。

ご呈示されたストーリー改変については、大改革になってしまうので、良い悪い以前に私にはそこまで書き直す気力は無いです。
最小限の改変で矛盾を感じさせない構成にする方向で考えて行きたいと思います。

中村ノリオ
flh2-122-130-109-65.tky.mesh.ad.jp

ぷりも様。再訪ありがとうございます。
よく調べられていますね。私にもその実務能力があれば複数の方から疑問を呈された点のうちの一つはしないで済んだのにな、と思ったりしました。

中村ノリオ
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飼い猫ちゃりりん様。コメントありがとうございます。

〈つまり飼い猫は、せこい成功作品より、しっかり取り組んだ失敗作の方が好き。〉
私もそう思います。近年のミステリーは小さくまとまるか開き直って言い訳用意しながら無茶やるかの二択みたいなところがあるので「いや、真ん中があるだろ。堂々と真ん中に投げ込んでみいや」というのは私がミステリー作家たちに言いたかったところです。


飼い猫提案に関しましては、

〈①この手の作品につきまとうジレンマの克服
「結局機械でしょ」
涙を流そうが、自ら死のうが結局は機械。との感情が読者の心のどこかにあるから、その障壁を破壊する。
実は、娘の瑠璃子は父を超える超天才の学者。不治の病を抱える瑠璃子は、自分の心をそっくりそのままルーシーにインストールすることに成功する。
②最後の落ち
愛は要らない。
「なんだ、やっぱ機械だったんだ」
と読者にガツンと寂しさをお見舞いして終わる方が効果的だと飼い猫は思うけれど……〉

うーん、どうなんでしょう。
①については、機械が感情らしきものを持ってしまうことの儚さみたいなものを表現したかったので、正直反対方向への改変はあまりやりたくないかなと思いました。
そう考えていたところへ➁の「愛は要らない」あまりにドストレートな作意否定にかえって痛快な気分になりました。
「愛は勝つ」「夢はかなう」的な言説に溢れる世間にこの言葉を放り込んだら輝きを発するような気も。

私もAIではないので失敗も間違いもあります。そんな中でも楽しんで読んで頂けたら幸いです。

中村ノリオ
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凪様。コメントありがとうございます。

ご指摘された岸の言動に違和感が感じられるという点についてですが、犯人が誰なのかについての思惑は前段で江崎の思考で軽くやっているので、ここはその先の情報を提示する場面だろ。と思って書いていたからそうなったのだと思います。
不自然さがあるなら岸にも犯人は誰かについての思惑に触れさせるべきかとなるのですが、正直そうした方がいいのかテンポを重視して今のままの方がいいのかは判断がつきかねています。

楽しく読んで頂けたのなら何よりです。
その上で結末に意外性を感じて頂けたならミステリー書きとしては本望です。

夜の雨
ai193242.d.west.v6connect.net

作者さんの改革案について。

A>水森博士の弟の繁行を、博士の弟ではなく三兄弟の歳の離れた長兄にする。父親である博士の弟は既に死亡。<

弁護士の岸が水森の財産を狙って婚約者である美樹へ、遺産の相続の金銭が渡るようになればよいだけです。
今回の「A」によると、相続権がある関係者が増えるだけで美樹には相続権がありません。
「父親である博士の弟は既に死亡。」これは、美樹の父親がすでに亡くなっているという事ですよね。
このAの場合は水森博士とその弟(今回は長兄)を入れて「三兄弟」いたところ、「水森博士と長兄(美樹の父)」の二人が亡くなったという事は、水森博士が亡くなった場合その遺産を相続できるのは、「水森三兄弟のなかで現在残っている『一人』だけ」です。
美樹には水森博士の遺産の相続権がありません。
水森が亡くなった場合、遺産を相続できるのは水森の妻と子供。がいなければ、両親、兄弟までです。それらがいない場合は、兄弟の子供まで遺産が手に入る。
で、現状では「妻と子供、両親」はいません。
なので、兄弟へ遺産が渡るわけです。
兄弟の子供には遺産は渡りません。
ただし、兄弟がいないとか、亡くなっている場合は、その子供も遺産がもらえる対象になります。
●「遺書」を残していて●●に財産をいくら分与すると書かれていた場合は別です。その分与のモノがもらえます。
御作ではその話でルーシというロボットが水森の遺産を相続するかうんぬんという話で盛り上がりました。
ルーシは100分の1ほどあれば充分らしいですが。

なので、相続に関しては、その部分をシンプルにしたほうがよいですね。
水森に兄弟が一人いて、その一人がすでに亡くなっているというのなら、その一人の娘である美樹に水森の遺産が手に入ります。
ほかには、水森に娘が二人いてたとか、そのうちの一人が瑠璃子(すでに亡くなっている)でもう一人が別れた妻とのあいだに生まれた美樹とか。
この場合別れた妻には相続権はありませんが、美樹には相続権があり、水森の全財産が手に入ります。

>前半でロボット三原則を説明する際に、AIに人間同様の人格を持たせることの危険性を説明し、研究者たちはその危険を熟知しているため学界で学者独自の厳しい倫理基準を設定して細心の注意を払っていることにも触れる。<
これは特に問題はないと思います。

>最後のシーンでもう一度それらについて書き、読者が矛盾を感じないように努める。<
問題はないと思います。

>ルーシーが自殺したと見えるシーンについても、自ら電源を切って江崎に後を委ねたことをもっと分かりやすく書き直す。<
たしかに、このエピソードは作品の流れもあるので江崎とルーシとのやり取りの中で「ロボット三原則」に触れない終わり方をすればよいと思います。

今回の御作では私の方から問題点やら改革案などを提示させていただきましたが、基本的に御作はよく書けています。
それでは創作小説を楽しんでください。

お疲れさまでした。

sp49-98-129-236.msd.spmode.ne.jp

私は、作者様がわざと岸の行動に違和感を付けたのだと思いました。
ここ(Ⅱ)まで読めば読者の殆どが、岸の守秘義務を無視した弁護士らしからぬ態度に違和感を感じます。普通、事件から4日しか経っていない時点では、また、相続人達に容疑がかかっている段階では、いくら仲の良い友人に尋ねられてもおいそれと口は開かないはずですよ。弁護士の使命です。
あえて作者様がこの違和感をつくることで私は、

『ここで読者に犯人を暗黙に提示したのだな、なるほどこの物語はハウダニットの要素も十分に含ませているが、謎解きミステリーよりも、ルーシーの尊厳について描いた物語であるからそうしたんだろう』

と、納得していたのです。が、違うんですね……

fj168.net112140023.thn.ne.jp

>ミステリー系新人賞に投稿して一次選考を通らず落とされてしまった作品です

これは仕方ないですね。
ミステリーの醍醐味は、読みながら、読者が主人公と一緒に謎解きをするところにあります。この小説はその楽しみを奪い、淡々と解説がされている。他のジャンルならわかりませんが、ミステリー新人賞ではそれは致命的な欠点になる。
書き直すなら、これを意識した方が良いと思います。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

参考資料を貼付しておきます。
ミステリー賞にトライするなら、読んで価値あるものだと思いますよ。

https://morimuraseiichi.com/?p=2017

ぷりも
p7623251-ipoefx.ipoe.ocn.ne.jp

この作品にこれほど手厳しいコメントがつくのは予想外でした。それは各自の意見なので仕方ないですが、あちこちで無遠慮にコメントしている私が手放しで褒めたことが原因でないことを願いたいです。もしそうなら、とばっちりすいません。
いずれにせよ今後投稿する方は一気にハードルが上がったのではと思います。

飼い猫ちゃりりん
dw49-106-186-76.m-zone.jp

中村ノリオ様ごめんなさい。補足説明がいるみたいです。返信は結構です。

小説とは、いや芸術作品のほぼ全てが、歴史に名を残す文豪芸術家でもない限り、大なり小なり失敗する運命にあります。
ただ、失敗を最小限に抑える方法が大きく二つあります。推奨はしませんが。
①小さく収めて、小さな成功を狙う。
中村様にそのスタンスは無いように見える。なぜなら、ストーリーを練りに練っているからです。ストーリーは練れば練るほど、成功時の効果は大きいけど、失敗する可能性は大きくなります。
②はっきり書かない。
極端な例ですが、呪文の様な文章を書いていれば失敗はしません。正確には失敗すらできない。
文句を言う読者には「お前が読めてないだけだ」と言ってやれば反論不可能。
実際にあった話ですが、「見えない絵」を飾ってやれば誰も批判できない。批判しようにも見えないのだから。そして「見えない絵」は意外なほど賞賛を浴びる。
「これは無を表現している」
「これは哲学だ……」
馬鹿の評価が欲しければ、「見えない絵」がお勧めです。
小説で言うなら、ちょっと哲学と宗教から言葉をチョイスして意味不明文を書きまくれば必ず賞賛されます。
ただ、中村様ははっきり書いて、物語の輪郭線を明確にしている。
当たり前ですが、輪郭線はあいまいな方が失敗は少ない。つまらない成功を狙う作者にはお勧めです。
ただ中村様にそのスタンスは無いように見える。

①②の観点から考察するに、中村様の「失敗」は、このサイトに投稿されている多くの作品の「成功」より価値がある。
真央ちゃんの5回転ジャンプの失敗に多くの人が感動した。その失敗は通常の成功より価値があるからです。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

飼い猫さん、

>小さく収めて、小さな成功を狙う。

諄い程これを書いていますが、当然私を非難しているのは明白です。
(後文は浮離のことですね)

あなたは卑怯な方ですね。
これまで私の作品に感想を書いたことなど一度もないくせに、こうやって他者の感想欄で以てケチをつけている。

私の作品に感想を書くのが怖いのですか?

sp49-98-138-42.msd.spmode.ne.jp

ぷりもさん、

>この作品にこれほど手厳しいコメントがつくのは予想外でした。それは各自の意見なので仕方ないですが、あちこちで無遠慮にコメントしている私が手放しで褒めたことが原因でないことを願いたいです。もしそうなら、とばっちりすいません。
いずれにせよ今後投稿する方は一気にハードルが上がったのではと思います。

ぷりもさんもそうなのですが、中村さんも貼付した内容を読んだなら、ミステリー賞をとることの難しさを痛感するはずです。この作品が、単に文芸の枠に留められているのなら文句は言いませんよ。読者が疑問に思うことに関しては、瞬時に回答を出しているところなんて、読者を常に意識した配慮がなされている。まことによく出来た作品だと私も思います。
しかし、ミステリー小説として読むならば話は違う。ということなのです。
先にも書きましたが、この物語には、ミステリーとしての謎解きに読者が参加できていない。読者に感情移入させるには、主人公の思考をもっと動かし、犯人捜しに奔走させ、苦労させなければなりません。その描写が欠落しているのです。
謎解きの場面は、そのような苦労をし、ある程度主人公にも解明出来た時点でルーシーに語らせれば良いのです。
これが描かれていれば、読者の読後の充実感が増すのではないでしょうか?

作者さまにとって強い思い入れがある作品のようですから、同じミステリー書きとして、ここまで書かせていただきました。

ぷりも
pw126236012006.12.panda-world.ne.jp

たくさんのコメントに目を通すだけでも大変だと思うので私には返信不要です。
あと、ここでも好ましくない展開を作ってしまったようなので、この作品への感想はこれを最後として失礼します。

私が懸念している理由でなければ色々な意見があって良いと思います。それは人それぞれで否定するつもりもないです。
ただ、たとえこの後この感想欄が厳しい意見で埋め尽くされたとしても私の感想はかわりません。

「世に埋もれた名作を読ませて頂きありがとうございました」

先程、小説を買ったと思って500円余分に能登募金してきました。
ありがとうございました。

中村ノリオ
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夜の雨様。返信ありがとうございます。

改革案のAについて。どうも私の書き方が悪くて意味が正確に伝わっていなかったように思えるので補足します。
改革案では繁は明と美樹の兄になります。つまり明と同じ立場の、水森博士の甥です。
水森博士の親戚は繁と明の甥二人と姪の美樹だけ。これだと美樹にも財産が渡るんじゃないかと思うんですが。
・・・・・・って、人に訊く前に自分でしっかり調べることにいたします。

問題点の指摘、改革のアドバイスだけでなく改革案の添削までして下さってありがとうございます。

中村ノリオ
flh2-122-130-109-65.tky.mesh.ad.jp

凪様コメントありがとうございます。

私はミステリー作品には多少の御都合主義はあるものかと思っているんですが、凪さんは私よりも遥かに厳しく考えておられるんですね。参考にさせていただきます。

資料まで提示して下さってありがとうございます。

中村ノリオ
flh2-122-130-109-65.tky.mesh.ad.jp

飼い猫ちゃりりん様。再訪ありがとうございます。

中村ノリオ
flh2-122-130-109-65.tky.mesh.ad.jp

ぷりも様。再訪ありがとうございます。

sp49-98-129-123.msd.spmode.ne.jp

そうですね。
夜の雨さんへの遺産相続へのあなたの回答にはぶっ飛びましたよ 笑

>まずは正直に認めます。相続のことは調べずに書きました。現行の法律に準拠すればはっきりしたミスとなるでしょう。しかしこれは未来の話なのです。現行の法律が未来では変わっているというのは普通にあることではないでしょうか。作品中でもロボットに関する法律が新しく作られたなど未来だから法が変化していることには触れていますし、「はたしてこれはミスなのだろうか」と考え込んでしまいました。

これこそご都合主義なのですが、こんな気概で執筆していたら、賞など一生とれないでしょうね。

中村ノリオ
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凪様。再訪ありがとうございます。
誠に素晴らしいご批評でした。

mist
133-32-235-251.west.xps.vectant.ne.jp

拝読いたしました。
ハイレベルな作品だと感じました。
気になったところを三点ほど書かせていただきます。
①アンドロイドを登場させた是非
②ミステリ作品としての完成度
③悲劇としての完成度

①について
ミステリにアンドロイドを登場させるのは妙案とは言えないかもしれません。SFとミステリはミスマッチだと個人的には思っています。アンドロイドがトリックに深く関係している場合、それがどういったものか読者が具体的に想像しづらいために、アンフェアな印象を与えてしまうかもしれません。読者はアンドロイドの重量や腕力や運動能力を知りません。解決編を読む前に自分で謎解きをしてみようと思っても、実在しないものの特徴を前提としたトリックを解くのは至難の業だと思います。また、アンドロイドの特徴は作者が考えた設定次第でいくらでも都合の良いように変更できるので、解決編を読んでもイマイチ納得感が得られません。現実に存在するものを使ったトリックであれば、それを思い浮かべて「なるほど、確かにそれならうまくやれそうだ」と納得することはできるでしょう。現実世界の様々な制約の中でいかに魅力的なトリックを思いつくか、その能力がミステリの書き手には求められているのだと思います。ズルをしているという印象を与えないためにも、作品内の世界は現実世界と同じ条件のものにしておいた方が無難かもしれません。

②について
解決編に入る前の時点で材料が全て出そろっていて、どのようにすれば犯罪が可能であったかを読者が推理できる作品と、そうでない作品があった場合、評価が高いのはやはり前者だと思います。御作の解決編は明快で、意外性もありましたが、解決編に入る前に読者が謎解きを楽しむ自由はほとんど与えられていなかったと思います。ルーシーの謎解きパートで初めて出て来る情報がありました。ロープや仏像の存在ですが、もしかすると作者様的には謎解きパートの直前に出したつもりだったのかもしれません。しかしルーシーと江崎との会話の中で突然その話が出てきてそのまま解決編へとつながっていくので、解決編でいきなり未知の材料を出された印象が強いです。
それと全体の構成がシンプル過ぎるようにも感じました。話に動きがなく事件や関係者の説明がひとしきり済んだらすぐに解決編へと入ります。犯人候補の人数も少なく味気なかったです。事件のからくりを含む様々な設定の説明や解説が常に誰かの口を通して淡々と行われ、読者はただそれを受動的に受け取るだけで、能動的に読み解くことはできません。作者様が全部答えを言っていて、解釈が読者に委ねられているようなニュートラルな描写や発言はほとんどなかったと思います。
安楽椅子探偵というジャンルもありますし、話に動きがないこと自体は問題ないのかもしれませんが、それにしてもあまりにもシンプルで淡々としており、原稿を棒読みしている人の話を聞かされているような印象がありました。
以下の点も気になりました。

>犯人が電動車椅子の背に銅製の仏像を結び付けて、私の引っ張る力とロープに吊り下がった博士らの重さが釣り合うように調整していたからです。

おもりの適切な重さをどのようにして調べたのでしょうか? 重すぎると被害者はすぐに落下してしまいますし、軽すぎるとルーシーが引っ張り上げることができてしまいます。

③について

>どんなに僅かであってもこのタブーに抵触した可能性があるロボットは廃棄処分にする。

この理屈がイマイチ腑に落ちなかったです。ルーシーの行動(犯罪捜査を行ったこと)の本質的な意味は、人を殺すことや傷つけることではなく、不正を罰するということであって、人間が本来やるべき仕事を代行しただけのように思えます。未解決事件に限らず人間の手に余る難問を解決する手段としてAIが活躍する未来がやってくるかもしれません。人間の能力を拡張したり補強したりするツールとして安全にAIを使用することは、むしろ望まれていることではないでしょうか?
また、作者様は死刑制度の存在に言及しておられますが、死刑制度がなければルーシーの行動は問題なかったとお考えなのでしょうか? 犯人を死亡させるのはアウトだけれども、投獄し自由を奪い身体的精神的苦痛を与えるのは「危害」の範囲には入らないとお考えなのでしょうか? 作者様が「危害」の範囲をどのように考えておられるのか気になりました。「危険を見過ごすことで人間に危害を及ぼしてはならない」のであれば、犯罪を行うような危険人物をそれと知りながら野放しにすることはロボット倫理に反しないのでしょうか?
この辺りの定義が曖昧なままいきなりルーシーを廃棄すると言われてもモヤモヤとした感情が残りますし、悲劇的な印象を与えようとしてもどこか白けたものになってしまいます。

以上、辛口になってしまいましたが正直な感想でした。しかしこの水準の作品を書ける人はごくわずかだと思います。ワクワクしたり引き込まれる箇所もありました。良い作品を読ませていただきありがとうございました。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

mistさんへ。

mistさんの感想を読み、なるほど確かにアンドロイドを活躍させるミステリーというものは難しいな。と思いました。

やはりこの作品は、ミステリーに重きを置くよりも、ルーシーの尊厳を問うことに中核を成した文芸を目指した方が無難であったかなと、改めて感じる次第です。

mist
133-32-235-251.west.xps.vectant.ne.jp

凪様

アンドロイドが謎解きをするだけなら問題はなかったかもしれません。
そういう趣向の作品なんだな、と受け止める人は多くいそうです。
本作の問題点は、ミステリの肝であるトリックの部分にアンドロイドを使ったことだと思います。
アンドロイドの特徴や能力を作者が随意に決められるのであれば、そしてそのことに(アンドロイドが怪力でありバランスを保つ能力に優れていることに)一切触れられていないのであれば、やはりインチキ感は出てきてしまうでしょう。

魂を持たないはずのロボットに感情移入させてホロリとさせる系の作品は枚挙にいとまがありません。人間は無生物であっても一定の条件を満たせば感情移入できるようです。Aiboという商品がありますし、人形を供養する寺もあります。ルーシーの尊厳を問う作品というのが具体的にどういうものなのかわかりませんが、ルーシーに人格を認めてこれを破壊せざるを得ないのはかわいそうだとか、そういう話で感動させようとする場合、破壊せざるを得ない理由が説得力のあるものでなければなりませんが、本作はここが弱かったと思います。

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読めば読む程、疑問が沸き上がる物語ですね。

ルーシーは、博士が高額で買いとったのですよねぇ?

>ルーシーが完成すると、博士は相当な金額を大学に払って彼女を買い取り自分の所有とした・・・・・・。

とある。
よって、ルーシーは「物」であるわけです。
いくら未来の話だからと言って、ペットやロボット。いわゆる財産上、「物=動産」として扱われているものに、倫理的観点からして相続権は発生しないのではないですか?

百歩譲って表現を「博士が養子縁組した」とするにしても、倫理上、この未来は相当なディストピアであると言えますね。

再読し、基本的な設定に無理があると思いました。

中村ノリオ
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mist様。コメントありがとうございます。
緻密な分析に感心いたしました。言われていることは概ね的を得ているように感じられます。
言い訳的な文になるかもしれませんが、いくつか創作の裏話を交えてお答えしようかと思います。
この作品の最初の発想は「命を助けることができれば殺すこともできるのに近い。少なくとも殺人の共犯をつとめることはできる」という逆説にありました。すべてはそこから始まっており、この発想を生かすためにはアンドロイドを出す以外に効果的な方法が無いのではないかと思ったのが作中にアンドロイドを出した理由です。
当然指摘されたようなデメリットが生じることは分かっているのですが、構想の第一歩からそういう方行に踏み出しているので、この作品に関してはアンドロイドを出さないという選択肢はなかった。それが大きな欠点につながったのだとすれば作者の力不足ということなのだと思います。
➁についてはギリ情報は提示した。になっているというつもりでしたが、やっぱり急ぎすぎだったか。という感じです。この作品は投稿を考えながら書いていて、枚数制限を越えないようにするために簡素めにまとめたというところがあります。
最初の構想では解決部の前に明を出してルーシーにちょっかいを出すシーンを入れようかとも考えていたのですが削ざるを得ず、後になってどうしようかと思っても、もう作品のイメージは頭から抜けてしまっていて手を加えても上手く行かないのではないかという気がしてそのままになっています。
おもりの適切な重さについてはルーシーに関するネットの公開情報にルーシーの力が書いてある。というつもりではいるのですが、確かにここは疑問を持たれるポイントだろうなーと思います。
③について。通常のAIが未解決事件を解決するのに役立つようにするのは望まれる未来に違いありません。しかし人間同様の人格=エゴを持つAIがそれをやったら自分に都合のいい嘘の解決を示す可能性があるのではないでしょうか。〈安全にAIを使用する〉どころの騒ぎではなくなります。江崎の危惧はAIにエゴが生じはじめているらしいこと。それにより「人間を死に追いやろうとした」と取れないこともない行動をとってしまったことです。
死刑制度がなければ問題がないかについては正直私にも判断がつきません。作品にリンクする突出して問題と思われる部分についてとりあげたということです。
様々な方から疑問の指摘を頂き「いっそのことこの作品ではロボット三原則をそのまま出すのはやめた方がいいのかな。アレンジした新原則にした方がいいのかもしれない」と考え始めているところです。

話は変わりますが地蔵さん、ですよね。
どうして名前を変えてしまわれたのでしょう。
「わしの評価は何があっても決して変わらんぞ」と言われているようで、私は前の名前が気に入っていたんですが。
地蔵さんらしい妥協をしない的確な批評で勉強になりました。

中村ノリオ
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凪様。何度も読んで下さってありがとうございます。

sp49-98-135-198.msd.spmode.ne.jp

あれっ、mistさんて地蔵さんだったの……

青木さんの河童に高評価していた方ですよね。ちょっと意外だな 笑

だって、あの一人称の違和感を指摘できなかったんだもの。

mist
133-32-235-251.west.xps.vectant.ne.jp

中村ノリオ様

>話は変わりますが地蔵さん、ですよね。
>どうして名前を変えてしまわれたのでしょう。

雑談みたいになってしまい申し訳ないですが、質問されたのでお答えします。
以前、青木 航さんの『河童の独り言』という作品に感想を書いた際に、

>地蔵様と言うのも、何か変な呼びかけのような気がしますが、ハンネですから、そう書かせて頂きます。

このように言われまして、確かに人に「地蔵様」と呼ばせるのは失礼というか、わざわざ尊い呼び方で呼ばせていると受け取る人はいるかもしれないと思いやめました。
私はサッカーをよく見るのですが、ネット上のスラングであまり走らない選手のことを地蔵と呼んだりします。役立たずみたいな意味なんですが、自虐の意味でこのHNにしていました。


凪様

>だって、あの一人称の違和感を指摘できなかったんだもの。

あの指摘は私には正直揚げ足取りとしか思えませんでした。
あの作品の本質は他の生き物に仮託して人間批判を行うというもので、その動物が人間社会を知っているのはおかしい云々の指摘は的外れだと感じました。
『ガリヴァー旅行記』を「小人国なんてこの世に存在しない」と批判しているような感じです。
荒唐無稽な設定は風刺作品にはありがちで、それをリアリズムの観点から批判するのはナンセンスだと思います。
余談ですが、人称とか視点の問題を厳密に論じる人がたまにいますが、些末なことにこだわっているなと感じることがよくあります(これは程度問題で、作品の質に悪影響を与えるレベルのものももちろんありますが)。
例えば「意識の流れ」の手法を採用した小説のような、三人称視点と一人称視点を意図的に混淆させた文体で違和感なく成立しているものもあります。
些事にとらわれるのではなく、読んだ時の印象がどうか、作者の意図がどこにあるのか、そういったことを踏まえて俯瞰的な視点から小説を評価すべきだと思います。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

>あの指摘は私には正直揚げ足取りとしか思えませんでした。
>些事にとらわれるのではなく、読んだ時の印象がどうか、作者の意図がどこにあるのか、そういったことを踏まえて俯瞰的な視点から小説を評価すべきだと思います。

正に「読んだ時の印象」ですよ。
作家を志すからには、本編全体が醸し出す、あの違和感に気づかなくてはいけません。一人称の書き方に重大なミスがあるにも関わらず、あなたは、

>・描写
特に問題はないかと思います。

と評した時点で読みとれていないのです(薫さん以外の他の方もそうです)。

>『ガリヴァー旅行記』を「小人国なんてこの世に存在しない」と批判しているような感じです。

笑えます。
あなたも、青木さんレベルの思考なのでしょうか?

あと、中村さんに指摘した②に関して言うならば、私が提示した感想及び、森村誠一氏の言葉を具体的に示したものでしかありませんね。
なんとなく、後出し批評のように感じました。

mist
133-32-235-251.west.xps.vectant.ne.jp

中村ノリオ様の感想欄を汚す形となり申し訳ありません。
この作品の感想欄への書き込みはこれで最後にいたします。

凪様へ。

>正に「読んだ時の印象」ですよ。

その印象が何によってもたらされるのかということを考えていただきたいんです。
質の高い本をたくさん読んだ経験がありその記憶がよく保たれているなら、あの手の風刺作品の前例を知っているはずですし、評価もそういった作品を踏まえたものになるはず。「河童はどこでDNAという単語を覚えたのか?」なんて批判は恥ずかしくてできないと思いますが。

>私が提示した感想及び、森村誠一氏の言葉を具体的に示したものでしかありませんね。
なんとなく、後出し批評のように感じました。

この点は事実と異なりますので是非言わせていただきたいのですが、私は感想欄を読まずに感想を書き込みました。
答え合わせをしたいという気持ちがあったのです。
これほどレベルの高い作品を自分がじっくりと読んで感想を書いた場合に、それがどれくらい他者の感想と異なっているのか、あるいは似通っているのか、そこに興味がありました。
そもそも、他人の受け売りのような感想を書くことに何の意味があるのでしょうか?
興味のないことを課題として課されているならともかく、自発的にやっていることですから。
中村様に言いたいのは、この作品の感想として私が書き込んだ内容と似たようなことを他者が書き込んでいるなら、それは互いに影響を受けていない複数の人間が同じ感想を抱いたことを意味しますので、他の意見よりは相対的に信ぴょう性が高い可能性があるということです。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

あなたの言うことを信じましょう。
ただね、森村誠一氏の内容は、ここ以外に伝言板にも投稿しています。その何時間か後に、あなたの中村さんへの感想が投稿されたものですからそう思った迄ですよ。

中村さん、失礼しました。
が、これだけ多くの称賛と、苦言を呈されたのだから書き直す価値はある作品のようです。
是非とも、ご都合主義から脱した良作を目指してください。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

>「河童はどこでDNAという単語を覚えたのか?」

DNA
これが違和感の根元であることに、あなたは一生気が付かないでしょうね。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

私の感想
>ミステリーの醍醐味は、読みながら、読者が主人公と一緒に謎解きをするところにあります。この小説はその楽しみを奪い、淡々と解説がされている。

mistさんの感想
>御作の解決編は明快で、意外性もありましたが、解決編に入る前に読者が謎解きを楽しむ自由はほとんど与えられていなかったと思います。

「謎解きの楽しみ」と「謎解きを楽しむ」

うーん……

まっ、いいか 笑

fj168.net112140023.thn.ne.jp

>荒唐無稽な設定は風刺作品にはありがちで、それをリアリズムの観点から批判するのはナンセンスだと思います。

そのようなナンセンスな批判を考慮た上で描写に心血を注ぎ、漱石はあの名作を世に出したのです。
https://ddnavi.com/serial/460873/a/

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考慮た→考慮した

です。

真田丸
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色々感想欄で言われていますが中村さんご自身はなぜ一次落選されたと思われますか?

実際に戦った人の意見を知りたいです。

中村ノリオ
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mist様。返答ありがとうございます。

中村ノリオ
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凪様。再訪ありがとうございます。

中村ノリオ
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真田丸様。コメントありがとうございます。

私は高名な文芸評論家の方が「以前は五十歳以上の投稿者には賞をあげないことになっていたが、最近は五十を越えてから活躍する人もいるので五十を超える人に賞をやることもあるようになった」という意味のことを言っているのを生で聞いたことがあるんです。
それがいかにも例外的に、という口振りだったので、今でもほとんどの賞では五十歳以上は実質的に審査対象外になっているのだな。と私は思いました。
元々新人賞の選考とはそういうものである上に、SFは売れないと言われている。SFミステリーなんてうちの賞では求めてないよ。五十歳以上の応募者もね。ということで早い段階で先を読まずに切られてしまったのかなあと想像しています。

皆さんが指摘して下さったように欠点があるから落とされたのならまだ希望があるんですが・・・・・・。できればそうだと思いたいですよ。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

呆れました。
これだけダメ出しされているのに、この期に及んで落選の原因を歳のせいにするとは……

>皆さんが指摘して下さったように欠点があるから落とされた

のです。

自身でも解っていながら、それを認めたくない気持ち(産みの親としての、作品に対する愛情もあるのでしょう)はこれを読めばわかりますが、

>元々新人賞の選考とはそういうものである上に、SFは売れないと言われている。SFミステリーなんてうちの賞では求めてないよ。五十歳以上の応募者もね。ということで早い段階で先を読まずに切られてしまったのかなあと想像しています。

早い段階で先を読まずに切られてしまった……

読まれて落とされたのです。きっと、物語に重大な瑕疵があるのです。
それを認めなければ前には進めませんよ。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

設定の追加、変更、及び改善策

・相続権の問題
未来での現行相続権の特記事項として、
『一定範囲を越える高額な遺産に関しては、第二親等まで相続権を認める』とする。
(執行する理由、及び細かい分散方法は作者様がお考えください)
※岸の博士への殺意は発動可

・動産としてルーシーを扱う
アンドロイド及び、高度な知能を有するロボットはペットと同じ立ち位置と考え、財産上『動産』とする。
動産に対する考え方は未来に於いても設定変更せず(倫理的観点による)、遺言にて現行の法律通り、生前に贈与内容を契約する「負担付死因贈与契約」の効力は生かす。
よって博士の遺言は、自身の死後、ルーシーを「管理する者」に全額相続させる内容に変更します。
となると、一番の適任者は博士の弟子である主人公。
※岸の誤算発生

果たして博士は、何故主人公に全額相続させるのか……

ここまで読めばお分かりでしょう。
ミステリー仕立てにするか、人間模様を描くのかは作者様の考え次第。
後はドラマチックにクライマックスに読者を導いてください。

真田丸
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選考者の好みに左右される部分はありますが、基本的に選ぶポイントはあるんじゃないでしょうか。

つまらない作品は選ばれませんが、みんな面白い作品が投稿されていれば、差別化する点は明確に意識するのが、選ぶ側の視点になります。

年齢もポイントにはなりますが、一次選考時点ではさほど影響はしないのではないでしょうか。

であれば、
・ミステリーとして瑕疵がある
・他作品と比較して無難ではあるものの突出した魅力がない(舞台設定、キャラクター、題材の工夫や斬新な視点)

みたいな要素は重要になるかもしれません。

凪さんの意見は前者、飼い猫さんの意見は後者に見えます。

一読者としてはまりもさんの意見と同じく面白かったで感想は終わりますが、一度選ぶ側の視点に立って考えるのも、なにかの糸口になるのではないかと付言させていただきました。

執筆お疲れ様でした。

夜の雨
ai201160.d.west.v6connect.net

「高名な文芸評論家」は、新人賞の「一次選考」には、参加しておりません。
したがいまして、御作が一次で落ちたのは、年齢は関係ありません。

執筆の狙い
>数年前に某ミステリー系新人賞に投稿して一次選考を通らず落とされてしまった作品です。<
自分では気に入っていて、世に出してあげたい作品だったんですが。

中村ノリオ
真田丸様。コメントありがとうございます。

私は高名な文芸評論家の方が「以前は五十歳以上の投稿者には賞をあげないことになっていたが、最近は五十を越えてから活躍する人もいるので五十を超える人に賞をやることもあるようになった」という意味のことを言っているのを生で聞いたことがあるんです。
それがいかにも例外的に、という口振りだったので、今でもほとんどの賞では五十歳以上は実質的に審査対象外になっているのだな。と私は思いました。
元々新人賞の選考とはそういうものである上に、SFは売れないと言われている。SFミステリーなんてうちの賞では求めてないよ。五十歳以上の応募者もね。ということで早い段階で先を読まずに切られてしまったのかなあと想像しています。
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「高名な文芸評論家」は、新人賞の「一次選考」には、参加しておりません。
一次選考は下読みの方が読んで二次選考へ通す、「20編とか30編」とかを選んでいます。
下読みの方は複数(例えば3人)いますので、一人で100編読んで20編を二次選考へと通すのであれば、二次選考へ行くのは60編です。
公募の規模にもよりますが、三次選考まであるとして、最終選考(四次選考)に残るのが5編ほど。
「高名な文芸評論家」の先生は、この最終選考で残った5編ほどを読みます。
この最終選考では応募作をどのような方が投稿してきたかの情報が提示されます。
まちがっても一次選考では投稿者の「年齢」とか「男女」どちらかだとか、ましてや名前とかはわかりません。
つまり一次選考の下読みの段階では、投稿者の個人情報は一切明らかにされない。
という事です。

中村さんの「アンドロイドには向かない職業」という作品は、
>数年前に某ミステリー系新人賞に投稿して一次選考を通らず落とされてしまった作品です。<
ということで、下読みの方が中村さんの個人情報を知らされないで、単純に作品の「良い悪い」だけで一次を通過できなかったという事です。
従いまして高名な文芸評論家の先生は中村さんの作品やら個人情報には関わっておりません。

すでに、多数の感想が御作には書かれているので、何が原因で一次を通過できなかったのかは、わかると思いますが。

以上です。

飼い猫ちゃりりん
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飼い猫はコメントが下手だなぁ。苦笑
もし、この作品を「賞賛」と「批判」の二択で評価しろと言うなら、飼い猫は「賞賛」を選択しますし、そのつもりでコメントしたつもりですが、「飼い猫がこの作品を批判している!」と思っている人がいる。
コメントは難しい。これもまた鍛錬ですね。

ラピス
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夜の雨さん、「五十歳以上の投稿者には賞をあげないことになっていた」なら、下読みに回す前に足切りしていた可能性も高いのでは?

出版社の賞は応募規定に違反している場合もはねられますが、違反していると分かるのは本文を見る前に経歴も含めて編集者がチェックしているからではないでしょうか?

関係者じゃないから真実は分かりませんが、、、

私もプロ作家さんのサイトか何かで年齢ではねる話を読んだ事があります。それはライトノベルでしたけど。

真田丸
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まあそれは確かに関係者にしかわからないですよね。ライトノベルとミステリーでは想定される読者層が違うから一概には言えないとは思いますが。

もしかしたら本当に一次通過時点で年齢からアウトにされちゃったのかもしれませんね。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

時間をもて余す団塊の世代やら、コロナ禍での在宅趣味で、特にwebでの自称作家はここ3から4年の間に爆発的に増加しています。
それに伴い出版社の考え方も変化し、自社のお抱え作家を育成するより、一発屋でも面白い作品を求めている傾向が強い為、作家の年齢はあまり気にしないのが現状ではないですか?
とにかく面白ければ、小説以外にもコミカライズやアニメ化、映画化、はたまたパチンコ業界と、いくらでも商業価値が生まれます。シリーズ化するにも、別に原作作家本人が書く必要はないですしね。
ミステリーの世界で言えば、高齢作家は人生経験が豊かな分、描く物語の奥行きが深い為、あまり年齢に左右されないジャンルです。

匿名希望者
nat-ftth1.kkm.ne.jp

再訪します。

貴方様向けに、参考になる動画を貼っておきます。
迷いが晴れると思いますので、ぜひご覧になってください。


「僕、50歳やけど作家デビューできますか?」「できます!」即答の理由は……
https://youtu.be/YPgVnnhxyN8?si=HMygJJUMtHAjwDrV
「やっちまったあ~!?」作品改悪ケーススタディ3選!
https://youtu.be/0ycGuUzh45s?si=XDC0QGhlN7Kvbklb
【新人賞・小説大賞】一次選考突破の鍵は「読者の立場に立つ力」
https://youtu.be/5Vh3y1uqve0?si=5vi69oLSq3Jy6iQC

YouTubeチャンネル わかつきひかるの小説道場
他にも参考になる動画がたくさんあります。
頑張ってください。

中村ノリオ
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凪様。真田丸様。夜の雨様。飼い猫ちゃりりん様。ラピス様。匿名希望者様。コメントありがとうございます。

中村ノリオ
flh2-122-130-109-65.tky.mesh.ad.jp

コメントして下さった皆様。

私ははてなブログでも作品を公開しておりまして、ごはんと同時にそちらでもこの作品を投稿していました。ですが、そちらではその後未だに来訪者はゼロ。誰からも読まれておりません。
他の場所では相手にされていない私の作品を読んで下さってありがとうございます。

厳しいお叱りも、冷静な分析も、暖かい励ましも、すべて有難かったです。

キングジョー
pkbk007-189.kcn.ne.jp

コメント失礼します!読んだ感想なんですが、なかなか面白かったです!応募して受からないのは不思議だなと思いました。
文章も勉強になります!
暇だったら、僕の作品も読んだもらえたら嬉しいです。それとアドバイス貰いたいです。

中村ノリオ
flh2-122-130-109-65.tky.mesh.ad.jp

キングジョー様。コメントありがとうございます。

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