屋上
俺は文化祭の準備をサボり、屋上でただひたすら雲を眺める。
こんな暑い日に、グラウンドでテントの設営とかやってられっかよ。
ダン、という金属音が空に響く。
間違いない。バレた。
「おーい。またサボってるの?」
ゆずだ。
今年、同じクラスになってから話すようになった。不思議なヤツで、いつも飄々としている。
「そんなとこで寝てたら、人肉バーベキューになっちゃうよ」
「ならねぇよ。こっちの方が風が来て涼しいんだわ」
「ふーん」
雲が流れる。
メガホンの起動音が、頭の上から聞こえてきた。
「えー、二年三組、二年三組の高崎氏。現在職務放棄し、屋上にて休憩中」
「ちょ、マジでやめろ! バレるって」
後ろを振り返る。
彼女が笑っていた。
肩にも届かない髪が、風に揺れている。
「俺は休むったら休むんだよ」
ガ、ザザッ。
メガホンがノイズを吐く。
「……すき」
……。
……え?
「……暑すぎ」
なんだ。
「……別に、メガホンで言うことじゃないだろ」
「はい、サイダー。ここ置いとくね」
もう一度振り返ったときには、彼女の後ろ姿は半分、屋上のドアに隠れていた。
床には、サイダーとメガホン。
なんとなく、サイダーを飲む。
美味しい。
そして俺はメガホンを拾った。
空に向かって、誰かさんみたいに小声で呟く。
「……あー、あー。マイクテスト。マイクテスト」
返事はない。
雲だけが、ゆっくりと流れていく。
「これが恋ですか?」
執筆の狙い
daoko(現Daoko氏)の”真夏のサイダー”という曲にインスパイアされて、浮かんだ情景をそのまま掌編の小説にしました。