作家でごはん!鍛練場
しいな ここみ

正しいいじめ

 アパートの部屋に帰ると誰もいなかった。

 当たり前だ、私は独り暮らしのOLなんだから。しかも変わり者で通っているので友達などもいない。

 べつに寂しくはないはずだった。
 一人は好きだし、趣味も多い。
 会社でハラスメントを受けているわけでもない。ただ自分から近寄り難い空気を発しているらしく、それでほっとかれているだけだ。そのぶん自分の好きなことに没頭できる。有難いはずだった。

 猫が飼いたいな、と今日はしみじみ思う。
 ニャーとでも迎えてくれる声があれば、笑うこともできるだろうのに。
 でもうちのアパートはペット禁止なのだった。

 冷蔵庫のあり合わせのもので野菜炒めを作り、ビールを飲む。
 いつもならここで誰も見ていないのに笑顔になり、口からは豪快に息が吐き出されているところだ。

 今日はなんでこんなに寂しいんだろう──
 なんて、考えるまでもない。

 会社で提案を出したところ、それをぼろぼろに叩かれた。
 会社のためになると思って言ったことだったが、それを会社のやり方に対する批判、そして自分の能力の見せびらかしだととられてしまった。

 残りのビールをちびちびやりながらテーブルに着くと、パソコンを開く。私の数ある趣味の中でも特別好きな、写真を見るためだ。ネットの写真コンテストの発表──先日もう見たものだが、もう一度見たくなった。

 やはり私のお気に召す写真は入選作の中にひとつもなかった。

 自分の作品が選ばれなかったのもまぁ、悔しくはある。でもそれよりも、自分の作品よりも優れていると思えるものが入選作の中にないことが不服だった。
 どれも綺麗すぎるのだ。
 こんなもの、AIでいくらでもできる。
 私の作品はまぁ、恥ずかしいものではあったが、AIには思いもつかないものだと自負していた。言い方を変えればコンプライアンスに反していたから落選したのは当たり前だが──

 会社が採用した、あの宣伝用写真にも不服があった。
 綺麗すぎて、嘘といってもいいぐらいに美化されていたから、私は黙っていられなかった。もっと汚いところや不備なところも、ありのままを写した写真にするべきだと提案した。
 高校の頃に写真部に属していたこともあり、専門用語も口から出すぎてしまった。
 それで課長をはじめみんなから、歯を剥いて威嚇する猿のような顔で笑われてしまった。

「はいはい。参考にしますねw」
「自分の意見が絶対正しいと思ってるタイプだね」
「会社のイメージを『綺麗じゃない』と思ってたの?」
「普段喋らないやつがたまに喋るとコレなんだよなぁ」
「女のくせに偉そうに」

 ビールを舐めながら、パソコンモニターの中のつまらない写真たちを眺める。

「佐治《さじ》くんはここに投稿してなかったのかな……」と、ふいに独り言が口をついて出た。

 彼の写真がここにあったら──

 入選していただろうか。

 彼のあの嫌われキャラは隠して、作品だけを投稿していたら──?


 思い出す──

 あれは高校二年生の──夏のはじめだった。



 静かな夜に、蝉の声が振り注ぐ。




 場所は写真部の部室だ──






「絶対、許せない」

 あるプロのカメラマンが世に出した一枚の写真が雑誌に掲載されていた。机に置かれたそれを取り囲んで、部員のみんなが口を揃えたのだった。

「こんな写真を撮ってる暇があったら助けてやれよ」
「この女の子がかわいそう」

 私もみんなとおんなじ制服を着ていた。でもその頃から私はやはり変わり者で、みんなに馴染めてはいなかった。特段余計なことは喋らないので、『単に大人しすぎる女子部員』程度に扱われ、つまりは空気だった。

 雑誌には、外国の戦争で、空襲を受けて逃げ惑う少女の写真が掲載されていた。
 その背後にはハゲタカがついて歩き、もし少女が力尽きたら獲物にしようと狙っている。

「こんなひどい写真があの有名な賞を獲るなんて許せない」
「優しさのカケラもないよな」

 私は何も言わずに遠巻きに見ていたが、みんなに同意だった。いくら自分がアマチュアの高校生で、相手がプロのカメラマンとはいえ、人間として尊敬できないと思った。

 そこで佐治くんが発言したのだった、大声で──

「いや、ここで少女を助けるよりもまず写真を撮ったカメラマンに、俺は敬意を表する!」

 みんなが嫌そうな顔で、彼を見た。
 佐治くんはいつものように、長い前髪を華麗な手つきで払いのけると、得意顔で続けた。

「これぞカメラマンだ。カメラマンの使命は自然なリアルを写真に収め、人々の目の前につきつけ、全世界にメッセージを届けることなんだ」

「少女を見殺しにしたのが偉いっていうのかよ?」
 同級生の男子が声に軽蔑の色をこめた。

「いや、その少女はその後、側にいた兵士か誰かに助けられたらしい」

 佐治くんがそう言っても、みんなは納得しなかった。
「カメラマンが助けるべきだろ。写真なんか撮ってないで」

「それだとその写真は残らない」
 佐治くんが得意顔で力説する。
「助けることよりも写真を撮ることを優先したからこそ、その写真は今そこにあるんだ。そしてその写真は戦争の悲惨さを見る人たちに伝えているだろう? 一人の少女を助けることではなく、世界中の人々に戦争のリアルを伝えること──」
 前髪を派手にかきあげた。
「それこそがカメラマンの仕事さ!」

 みんなが極悪人を見るような顔をした。
「自分が賞賛されることを優先したんだろ」と皮肉を言ったひともいた。

 私はどんな顔をしただろう。佐治くんの言葉に反感をもったから、同じような顔をしたかもしれない。あるいは持ち前の無表情を崩さなかったかもしれなかった。

 でも、あの時、私が心のなかで『一理ある』と思ってしまったことは確かだった。



 佐治くんは部員の誰もから嫌われていた。
 私も嫌いだった。何かといえば自信たっぷりに、前髪を華麗な手つきで払いのけながら、さも自分は正しいみたいなことを言うのが気持ち悪かった。

 そして『忖度』ということを知らなかった。

 べつのある日のことだ。近くの自然豊かな公園へみんなで出かけ、写真撮影をして帰った。それをパソコンに取り込み、みんな和気あいあいと感想を言い合っていた。

「おー、花の赤色が綺麗に出てるなぁ」
「おまえの写真もいいよ。木肌の質感がリアルに撮れてる」
「この写真は構図がちょっと残念だな。次からバランスを考えて撮ってみたら?」

 そんなふうに、みんなが楽しくやっているところに、佐治くんがやって来て、笑いながら言ったのだった。

「素人が素人カメラマンの作品を褒めちゃダメだろ」

 みんながムッとした顔になった。
 その視線を集めて気持ちよさそうに、佐治くんは前髪をかきあげ、続けた。

「俺たちは素人なんだぞ? プロの写真家の作品は褒めてもいいけど、素人の作品を褒めちゃだめだ。だって下手くそなんだから」

 男子の一人がそれに答えた。
「構図をもっと考えたほうがいいって言ったの、聞こえんかったか?」

「その前に褒めてたろ?」
 佐治くんが、バカにするように笑う。
「素人の作品を褒めるのはなぜか? 下手くそなのになぜ褒めるのか? それは自分の作品も褒めてもらいたいからだ。キャハハハハ! 醜いなぁ、褒めそやしゴッコ!」

「じゃあ、おまえの撮った写真も見せてみろよ」
 男子も負けじと歯を剥いて笑う。
「褒めちゃダメだって言ったよな? さんざん貶させてもらうわ」

「どうぞ」

 そう言って佐治くんが、彼の作品を見せた。
 草の中に落ちている犬のウンコを写していた。
 そこにぽつんと赤いテントウムシがトッピングされている。

「ばっかじゃねーの、おまえ!」
 みんなが引いた。
「何写してんだ!」  

「これが現実なんですよ」
 得意顔を佐治くんが斜め上に勢いよくのけぞらせ、長い前髪を躍らせた。
「そして現実そのものの自然を写すのが芸術というものだ。キミたちにはわからないだろうがね」

「なんでハエじゃなくてテントウムシとまってんだよ!」
「このテントウムシ、おまえが乗せただろ! ヤラセだ!」
「どこが現実そのものだよ!」

 私は表情筋が壊れている。
 だから、たぶんあの時も無表情だっただろう。
 でも、心の中では笑っていた。なんかその、みんなのやり取りがおかしくて、笑ってしまっていた。



 ある日、気づいたら部室に一人だった。
 みんなは私を置いていったこともにも気づかずに、次の『写真甲子園』に出場するためのテーマ探しにどこかへ出かけていた。

 みんなは写真を撮るのも好きだけど、ワイワイするのはもっと好きらしい。楽しそうで、私もそこに加わりたかった。でもそれよりも、私は写真が好きなのだと言い聞かせた。
 一人取り残された薄暗い部室で、パソコンで自分の撮影した写真を整理しているほうが自分らしかった。誰からも嫌われてはなかったと思うけれど、交流はなかった。あれから約十年が経った今、部員の名前も顔も、一人だけしか思い出せない。

「あれっ?」
 カララッと扉を開けて、その一人が入ってきた。
「山田さん、一人?」

 正直『うげっ』と思った。同時に、佐治くんに名前を呼ばれたことに不思議な感覚があった。今、初めて、自分に名前が産まれたような、あるいは自分がこの世に存在していることをそれで思い出したような、自分にスポットライトが当てられたような、そんな感覚だった。

 私はとても小さな声で答えた。
「みんなは次の『写真甲子園』用のテーマ探しに行ってるよ」

 佐治くんと会話したのはこれが初めてだった。

「写真甲子園? 毎年予選で敗退しててもやる気だけはあるんだね。いいことだと思う。でもそれならせめて出品用の作品をスマートフォンで撮るのはやめろって思うけどね。下手くそなりに機材にこだわるくらいすればいいのに」

「佐治くんは──」
 私はなぜか、彼との初めての会話でそんなことを聞いていた。
「何がしたいの?」

「えっ?」

 聞き返されて、私も何が聞きたかったのかわからなくなり、挙動不審になる。そんな私を助けてくれるように、佐治くんが答えた。

「俺は写真が撮りたいだけだよ」

「じゃあ……」
 おかげで私は言葉を引き継げた。
「なんであんな、みんなを怒らせるようなことするの?」

「あー」 
 少しだけ考えて、佐治くんは答えた。
「俺は本気で芸術としての写真を撮ろうとしてるからね。だから口だけわかったような間違ったことを言って、しかも褒めそやしゴッコで盛り上がってるやつらのことを、正してやろうと思ってね」

 無視しようかと思った。

 でも、気になったことがあったので、つい、聞いていた。

「カメラは何使ってる?」

「これ」と言って、佐治くんが自分のポケットからそれを取り出した。

 スマートフォンだった。

「機材にこだわれって、さっき言ってたよね!?」

「いいんだ。どうせ俺の作品は出品しないから。まだアマチュアだから、下手くそだからね。でも自信をもてる作品が撮れるようになったらいいのを買うつもりさ」
 そう言って、前髪を派手にかきあげる。
「山田さんは? どんなの使ってる? 部の共用カメラかな?」

 あたしはそう聞かれて『よくぞ聞いてくれました!』と心の中で言いながらカメラバッグを開け、それを取り出して見せた。
 佐治くんが驚いた声で言う。
「えっ? 何、それ。フィルムカメラ?」

 昔ながらの形をした真っ黒なそれは確かにフィルムカメラのように見える。
 でも、写真部の、しかもいつも偉そうなことを言ってる彼がそんなことを言っちゃいかんだろうと思いながら私は答えた。

「ライカの一眼レフデジカメ。お父さんのお古」

「うわ! 30万円ぐらいするやつだよね? 山田さん、機材マニアなんだね」

 否定しなかった。
 その通りだ。というより、私はカメラにまつわるすべてのものが好きなのだ。陰キャな私が写真部なんかに入ったのも、暗室に憧れたからだった。一人でも写真は撮れるが、暗室はここにしかないと思ったからだ。フィルムカメラで写真を撮って、暗室で現像液にフィルムを浸し、だんだん浮かびあがってくる画を見つめてニヤリと笑う──古い漫画で見たそんな光景に憧れていた。しかし結果、この高校の写真部室に暗室はなく、しまったと思っていた。それでも退部しなかったのは、なんとなくでしかなかった。

「山田さんの作品、見せてよ」

 佐治くんにそう言われ、心の中で躍り上がった。
 褒めることはしないだろうけど、一理あることを言う彼に自分の作品を評価してもらうのは、とてもしてほしいことだった。
 私はパソコンの中の山田フォルダを開くと、一番気に入っている写真を彼に見せた。

 白いヤマユリの写真だ。
 前に部のみんなと山へ行った時に撮ったやつだった。
 背の高い茎の上に、グロテスクといってもいい、それでいて華麗な花が開いている。
 背景の森は暗く、まるで人間界とはべつの、冥界に咲いているようだ。
 赤い雄蕊が六本、花の奥からにょっきりと突き出している。それがまるで血を流すような色をしていて、美しき冥界の花といった雰囲気を醸し出していた。それを見事に写真に収められた自信があった。
 主役のヤマユリと暗い背景の森とのコントラストが特にお気に入りで、自分の内面の景色を写しだしたような達成感があった。

「へぇ!」
 佐治くんが感動した声をあげた。
「これはいいよ!」

 どんな一理ある貶し言葉が出てくるかと身構えていたので、肩透かしを食った。
 何を言われても私には自信があるし、むしろ私のまだ至らない点を指摘してくれたら参考になると思っていたので、『なんだそれ』としか思わなかった。
 でもあとからジワジワと嬉しさが込み上がってきて、無表情にムズムズとヒビが入るのを抑えながら、彼に聞いた。

「素人は下手くそなんだから褒めちゃいけないんじゃなかった?」

「いや、うーん……。批判すべきところが見つからないんだ」

 エヘヘと声が出そうになった。
 でも、それに続く佐治くんの言葉に、また無表情に戻る。

「特にこれ! この、茎にとまってる小さなゴミムシがいい。美しい花とうんこ臭そうな虫との対比が見事だよ! よくこんな自然なリアルの一瞬を切り取ったよね」

 私の作品も佐治くんのあのウンコの写真と同系統だったのか──初めて気づかされた真実に呆然とした。

 そうだ。
 私はあのウンコ写真しか、彼の作品を見たことがない。

「そっちの写真も見せてよ」
 心から見てみたくて、リクエストした。
「褒めずに批判してあげるから」

「お願いします」
 急に佐治くんがしおらしくなり、パソコンに向かうと、佐治フォルダを開いた。
「色々あるんだ。ぜひ、ぜんぶ見てほしい」

 1枚ずつ、解説を加えながら見せられた。
 どの写真も加工臭かった。
 桔梗の花に猫がじゃれついている写真、つくしに犬がおしっこをかけている写真、岩の上にトンビが立っている写真──

「……どれも加工じゃないの?」

「そう思うだろう? だが、しかし──!」
 佐治くんが今まで見た中で一番に前髪をはね上げた。
「これ、すべて加工なしなんだ! 俺はよくこういう信じられない一瞬を収めてる! 運も実力のうちっていうけど、俺ってすごいのかも?」

「……じゃあ、正直に批判するね?」

「お願いします!」

「正直……これなんて露出が多すぎる。花びらの色が溶けちゃってる。ここのボケかたも中途半端でキレがない。スマホだから仕方ないとかはナシね。スマホを使うならむしろ加工したほうがいい。フェイク画像を作れって意味じゃなくて、エフェクトをかけたほうがむしろ自然になる。元の解像度があまりよくないんだから──」

 私は調子に乗って色々と喋った。
 いつもなら一日に50文字くらいしか喋らない私が、いっぺんに二千文字くらい喋ったように思う。
 黙ってそれを聞いていた佐治くんが、私が喋り終わるなり、嬉しそうに、叫ぶように言った。

「ありがとうございます! なるほど、やっぱり機材は大事かぁ……! 下手くそでもいい機材を使わないと、思うようなものの半分も満足に撮れませんよね! よし! カメラを買うぞ!」

 思いもかけない彼の素直さに私は驚いていた。
 そしてその数日後、ほんとうに佐治くんは、中古の一眼レフカメラを買ってきたのだった。



 他のみんなは佐治くんの作品を見ようともしなかった。
 まぁ、日頃の行いだよなと、私も彼を弁護することはなかった。
 佐治くんはといえば、露骨に私にベタベタ近づいてくるようになった。

「山田さんは俺の仲間だ」

 そんなことをはっきりと言われて、私はみんなの前では積極的に彼を避けるようになった。仲間だなんて思われてはかなわない。

 それでも部室に二人きりになると、よく議論みたいなことを交わす間柄にはなっていった。

「見てよ山田さん。これ、俺の新しいカメラで撮ったんだ」

 明らかに作品の質があがっていた。
 それは機材の性能がよくなったからだけではなかった。
 佐治くんは私のアドバイスを真摯に聞いてくれて、それによってめきめきと腕を上げているのがよくわかった。カメラの性能を使いこなし、構図などもよくなっている。
 それでいて、彼のへんな個性はそのままなのが、私にはなんだか嬉しかった。
 花瓶に挿した花に茶色い絵の具のように、子どものGがついている。
 猫の額についたノミが見えている。
 必ず彼の写真には、綺麗なものやかわいいものに、汚いものが最低ひとつ、ついていた。そしてそれはほんとうに加工などではないらしかった。

 佐治くんと互いの作品の講評をし合うようになってから、私はへんなひとが好きになってしまった。へんなひとそのもの……というより、へんなひとの作るものや話すことが面白いと感じるようになった。誰でもが言うようなことを言わない彼は、ふつうのひとよりもよっぽど面白かった。いくらなんでも極端すぎることを言いながらも、大抵その中に『一理ある』と思えることがあった。

 でもやっぱり彼という人間のことは嫌いだった。

 面白い作品って大抵、人間としては嫌いな、だけど作家としては素晴らしい、そういうへんなひとが作るものだと思うようになった。

 そしてそんなへんなやつである佐治くんからそんなことを言い出されて、私は辟易としたのだった。

「俺……、人物を撮ったことがないんだよな。ずっと撮りたいって思ってた」
 私の顔をばっ! と見て、前髪をぎこちない動作でかきあげて、思い切ったように言った。
「山田さん! モデルになってくれないかな!」

 私は嫌悪感半分、好奇心半分だった。

 自分の容姿に自信がないのも手伝って、必要以上にワタワタしながら、答えた。

「私よりもうちょっとかわいい女の子、部員にいるじゃん?」

「いいや! 山田さんがいいんだ!」
 佐治くんの言葉にはなんだか得体の知れない情熱がこもっていた。
「山田さんを撮りたい!」

 そう言われて不思議に悪い気はしなかった。



 その場ですぐにそれは始められた。

 机を挟んで向かい合っている佐治くんがカメラの準備をするのを待ちながら、私は横に視線をすべらせながら、聞いた。

「どんな表情したらいい?」

「自然でいいんだ。ありのままの山田さんが撮りたい」

「じゃあ……無表情か」

「いや、カメラの話をしている時の山田さんだ。それが俺にとって一番自然な山田さんなんだ」

「じゃあ……カメラの話、する?」

「お願いします」

 私はカメラの話を遠慮なく始めた。
 興味のないひとが聞いたら引くこと間違いなしの、私の好きな話だ。
 ライカの歴史を語り、暗室に対する憧れを語り、『良い写真とは?』を語りに語り、語りまくった。それを佐治くんがスナイパーのように写真に収めた。途中、ハエが頬にとまって、なんだか嫌な予感がした。

「やった!」
 何枚も撮影したそれを眺めながら、佐治くんが声をあげた。
「最高なのが撮れたよ! 見て、山田さん!」

 その写真を見て、私は目を見瞠った。
 
「これ……、私……?」

 自然でリアルな自分の顔とは思えなかった。
 もちろん芸能人みたいに美しくはない。でも、美しかった。内面から滲み出る『好き』を露出させ、目はこっちを見てはいないけれどキラキラ輝き、ニキビさえも美しく見える。そしてやはり頬にハエがとまっていたが、意外にもそれが緑色のアクセサリーみたいになっていた。

「これぞ自然なリアル」
 佐治くんが前髪を思い切りかき上げた。
「人間好みに飾りつけた、アイドルのグラビアなんかとは違う、真実の山田さんを激写した芸術作品だよ」

 良い写真だった。

 被写体に対する贔屓目を差し引いても、良い写真だ。主役が引き立っている。構図も露出もいい。そしてドラマを感じさせる。私の笑顔、内面の『好き』が滲み出た笑顔、そしてそんな私の頬にとまったハエ──1枚の中に多彩なドラマが、その一瞬が完璧に捉えられていた。

 佐治くんは、天才なのかもしれない──

 人間性はべつとして、奇跡の一瞬を捉える天才なのかもしれない。

 他人には好き放題、狭い自分の思う正しいことを押しつけるけど、そこには必ず『一理』がある。

 そして自分の主張はけっして曲げないながらも、写真に関する他人のアドバイスは真面目に聞き、目に見えて成長している。

 私は佐治くんというカメラマンが、そしてその作品が、好きになっていった。

 佐治くんと、色んな話をした。といっても写真の話ばかりだったが。
 佐治くんは私の話から知識を吸収してくれた。
 私も佐治くんの話から教えられることがあった。
 私と彼は、まるで親友のように、写真の話で繋がり合った。

 でも、やっぱり佐治くんのことじたいは、私は嫌いだった。




 ある日、遂に男子の一人が佐治くんにキレた。

「コイツがいる部室にはいたくない! 佐治が辞めないなら俺、辞める!」

 それをきっかけに、みんなが一斉にキレた。 
 夏休み前の暑さが、みんなの不快指数を上げていたのかもしれない。ずっと我慢していた佐治くんの偉そうな物言いに、みんなの保っていた堰が、一斉に決壊したのだった。

「コイツ自分が下手くそなのを棚に上げて他人を下手くそ呼ばわりするからな!」
「コイツがいると部活が楽しくない!」
「コイツさえいなけりゃ真面目に活動できるのに!」

「わぁ〜、褒めそやしゴッコのひとたちが怒ってる」
 それを佐治くんがまた煽った。
「ほんとうのこと言われてキレちゃったよ、ハハハッ!」

「佐治がいたら新入部員が入ってもすぐ辞めて行くのは確かだな」
 部長が言った。
「佐治、おまえ、自主的に退部しろ」

「嫌ですよ〜。なんで俺のほうが悪いってことになるんですか〜? みんなが下手くそなのが悪いのに」
 そう言って佐治くんは、ぐるんと私のほうを向いた。
「この部で唯一まともなのは山田さんだけだ。みんな山田さんを見習ったほうがいいよ」

 隅っこに離れて立っていた私のほうを、みんなが向いた。こんなやつ、いたっけ? みたいな顔でみんなが私を見る。

 恐怖を感じた。
 みんなの佐治くんへの攻撃性が、私にまで向けられるのではと思うと、なんとか避けなければと、私は精一杯の弁解をした。

「な……、仲間じゃないです」

 みんなの視線が佐治くんに戻ってくれた。
 ホッとして、部室を抜け出して私が帰ろうとすると、それが始まったのだった。

「山田さんだけが、素人だけどうまい。それ以外のやつらはうまくなろうとさえ思ってない、ただの下手くそだ」

 そう言って笑う佐治くんのお腹に、男子の一人が蹴りを入れたのだった。

 それを合図とするように、みんなが一発ずつ、佐治くんの身体のどこかに蹴りを入れはじめた。

「俺らが下手くそなら、おまえは下手くそ以下のゴミだ」
「謙虚さのカケラもない、ただの嫌なやつだ」
「人間としてゴミだ」
「こいつ、殺したい」

 あの佐治くんが、何も言い返さなかった。
 蹴られる痛みに顔を歪めて、何も言い返せなかった。

『これって……』
 私は思った。
『いじめじゃない?』
 思うだけで、止めなかった。
 止めることができなかった。止めたら『佐治の仲間』になってしまいそうで──

 四方八方から蹴りを入れられる彼を見ながら、でも言いたいことは私の中で膨らんでいった。

『佐治くんは頑張ってます!』
『確かに人間性には問題あるけど──』
『ほんとうに写真を撮ることが好きで、だから必要以上に毒舌になっちゃってるだけなんです!』
『私を撮ったあの写真を見てください!』
『真実の私を、写真に収めてくれたひとなんです!』

 ぜんぶ口からは出なかった。

 その代わりというように、私は側にいた男子に、消え入るような声でこう言った。

「これって……、いじめじゃない?」

「ハァ?」
 その男子は答えた。
「いじめじゃねーよ。佐治が悪いんだ。百歩譲ってこれがいじめだとしても、正しいいじめだろ。べつにこいつを全裸にひん剥いて写真に撮ってそれをばらまこうなんてわけじゃないんだから」
 そう言いながら、そうしたそうだった。

 正しいいじめ──

 そんなものがあるのだろうか。

 あるんだろうな。

 佐治くんは、あまりにも部の空気を壊しすぎた。だから、これは彼に対する正しい懲罰なのだ。村八分──それは正しいいじめなのだ。

 でも、私はいじめには加わらなかった。

 怪我は負わせない程度に、靴の裏で佐治くんを蹴るみんなを、ただ眺めていた。

 集団で自分たちのことを『正しい』と自信たっぷりに言うみんなのことが、怖く見えた。




 夏休みが明けると、写真部に佐治くんの姿はなくなっていた。強制退部させられたらしい。

 私はパソコンにまだ残っていた佐治フォルダを開くと、私を写してくれたあの写真を私のスマートフォンに転送し、大事に持ち続けた。

 その後、佐治くんとは会うこともなかった。
 クラスが違うので、たまに廊下で見かけることはあったが、話しかけることはなかった。
 
 そしてそのままだった。
 私たちは高校を、卒業した。




 ビールをちびりちびりやりながら、写真コンテストの入選作を眺める。
 どれも主催者が欲しがりそうな、ただ綺麗なだけの写真ばかりだ。

 ここに佐治くんの作品があったら──
 私はまた妄想する。

 きっと美しいものに汚いものがくっついた作品だったことだろう。そしてそれは主催者側が欲しがるような作品ではなかったことだろう、どれだけ奇跡のように、自然なリアルを捉えた一枚であったとしても。私の、あの、チューリップの花に鳥のフンがくっついた写真のように──

 高校を卒業してもうおよそ十年になる。

 佐治くんの行方を私は知らない。

 けれど私は確実に、彼に影響されていた。

 人間としては嫌悪するしかない彼に──

 しかしカメラマンとしては、みんなと違う『一理あること』を言う彼に──

 言い方の問題はあるにしても、集団と違う
ことを言ってはいけないのだろうか。会社で私がした提案は、聞く耳をもつぐらいされてもよかったのではないだろうか。

 集団と違うやり方は、正しくないやり方なのだろうか。

 佐治くんに影響を受けた、私の投稿作品を選外とするこの人間社会から、正しいいじめを受けていると、私はなんとなく感じている。

正しいいじめ

執筆の狙い

作者 しいな ここみ
KD124209077171.au-net.ne.jp

10,648文字。高校の写真部を舞台にした純文学です。佐治くんにモデルはいません。

コメント

せんちゃん
27.230.35.86

拝読しました。

面白いか面白くないかで言えば面白かったです。

これはこのサイトで最高の褒め言葉だと思っています。

おっと、素人の作品を褒めてはいけない、みたいな声が聞こえてきそうです。

確かにこの作品には素人臭がぷんぷんしますが、だからといって褒めてはいけない理由にはなりません。

素人臭くても、面白いかどうかは別物です。



さて、佐治くんにモデルはいませんと書いてあるのを見て、違和感を覚えました。

普通は、登場人物にモデルはいません、と書くところでしょう。

あえてピンポイントで佐伯。

読んでみて、意味はわかりました。

なるほどです。

うまく例えることができていると思いました(え?)



佐伯については、あえて言えば、

撮った写真は撮影者を離れるので、いくら批判されても構わない、みたいことを佐伯に言わせつつも、作品への褒め言葉に過剰に反応する矛盾などを描いてみてもリアリティが増すかもですw

冗談はさておき、

この物語の主人公も実に面白いですね。

自分の提案が拒絶されたのは、大衆に理解がないからだ。

自分には独自性があり、周りはそれを認めない。

自分は孤独だ。

なんという「あるある」でしょうw

この主人公の設定が、陳腐というか、ありきたりというか、こんな主人公だから職場で提案が通らないのだろうと、説得力のある設定に唸らされました。

自分は特殊であり、周りから理解されない

って大勢の人が思っているわけなんですよね。

この主人公って、自分が大衆の一部っていう自覚はないと思いますし、一生、それに気づくことはないと思います。

主人公が思っている大衆の常識の一部に自分がなっているという自覚をすることは無理です。

なぜなら、自分は特殊であり大衆とは違う、という人たちの集まりのことを大衆と言いますから。

そのあたりの主人公の気づきがあれば、この作品は「ありきたりな素人臭い作品」から脱することができるような気がしました。

作品の中に記述はなかったように思いますが、この主人公は写真でもたいした成功はしていないと思います。主人公の考え方を見れば明白ですけどね。

そういった、「自分は特殊幻想」を描いていた点はリアリティがありましたし、とても面白く読めました。

しまるこ
133.106.193.171

面白かったです。

最初の、少女の写真で、(いや……助けろよ……)と私も読んでいて思ったのですが。佐治くんのこれがカメラマンのあるべき姿だという説明を聞いて、一理あるなと思っていたら、主人公の独白で、一理あるという言葉が出てきて、リンクして面白いなと思って、どんどん読んでいきました。

少し疑問に思ったのは、カメラマン云々のそれだけの理由をもって言えるぐらいの人なら、あまり、不必要に他者をバカにしない知性を合わせ持っていそうというか、知性の平行性というか、こっちの部分では大人なのに、こっちの部分では子供だなと感じたといいますか。それは高校2年生だからそうかもしれませんが。

佐治くんは、真実への妥協を許さないというか、むしろ意味を説明したいタイプのような人に思えたけれども、ハエじゃなくてどうしてテントウムシなんだと問われたら、むしろ、その意味を熱く語りそうな、芸術論を展開させそうなタイプに思えたけれども、隠喩めいた一言で終わらせてしまったり、山田さんの写真を撮った時も、これが人間の真実だとかリアルと言っているけれども、それこそ、どこがリアルでどこが真実だの熱く語りそうに思えるけれども、そこは語らないのか、と思ったり。なんとなくこのあたりは、作者さん自身がそれに対する答えを持っておらず、ただ外形のやりとりから、キャラクターの印象づけをしたいからなのかなとは思いました。良い写真だったという説明の記述もあるのですが、この記述も作者が物語の調子に合わせているだけのように見えました。

しいなさんの哲学の部分が面白く、興味深く読めたけれども、キャラの行動としては、あまり自身の内面から出発しているほどでもなさそうだなと思いました。一つの哲学として、言いたいことは伝わってくるのだけれども、物語の細部のところで、キャラの言動としてその真実性が担保されていない、すなわち書き切れていないとは思いました。

しいな ここみ
KD106130058001.au-net.ne.jp

>せんちゃんさま
お読みくださり、ありがとうございます(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ

執筆の狙いに佐治くんのモデルはいないと明記しましたのは、このサイトでは特に『このキャラってあのひとがモデルでは?』と思われる危険性を感じたからです。もちろん佐治くんの言動にはその方のパロディー的なものがありますが、私は彼を否定的に描いたつもりはありません。何より言動をパロっただけで、佐治くん=その方ではなく、単に類型的な寓話のようなものだと釘を刺しておきたかったのです。

できればすべてのものを肯定したいと思って私は小説を書いております。『自分は特殊であり大衆とは違う、という人たちの集まりのことを大衆と言う』←これも正しいと思いますが、『自分たちは多数派であり、それゆえに特殊なことを言う少数派を叩き潰してでも自分たちが正しいことにしようとするのも大衆』であると私は考えます。つまりこの世界に登場するのは自己の特殊性を信じる大衆と多数派ゆえに自信マンマンな大衆の戦い──のようなものでしょうか。口だけではなく向上心もある佐治くんは正しく、他のみんなも多数派であるがゆえに強く、そして正しいものとして描いたつもりです。

しいな ここみ
KD106130057154.au-net.ne.jp

>しまるこさま
丁寧なご感想をありがとうございますm(_ _)m

ネットを見渡しての私見なのですが、めちゃめちゃ本を読んでらっしゃるアラフォーの方とかはむしろ積極的に『無知な大衆』をバカにしたような文章をお書きになってますよ(^.^; このサイトではあの方をモデルにしていると見られそうだったので『執筆の狙い』で否定しておいたのですが、ネットでたまによく見る『大多数とは違う物の見方ができるがゆえに他人をバカにしたコメントをするタイプ』をモデルにしているつもりです。

私に哲学なんて体系化されたものはないです。この作品は単に見えている世界を寓話的に描いてみただけです。ただ、じつは私、写真撮影にまったく興味がないどころか明確に『嫌い』なんですよね。それゆえに写真が趣味のひとに読まれたら……とビクビクしながら書いたところはあります(^.^; でもまぁ、写真でもなんでもエンタメと芸術みたいなものはたぶん分けられていて、エンタメ=人間好みの綺麗に作られたもの、芸術=人間好みではない真実も赤裸々に描いたもの──みたいな感じなのかな? と思って、それは広く認識されている自明のことかと思い、詳しくキャラの口からは言わせませんでした。太宰治作品でいえば『御伽草子』なんて、容赦なく人間の醜いところまで描きながら、それでいて美しいんですよね。そしてその美しさはアイドルのグラビア写真とかとは違う類いのもの──そんな程度の認識です。『良い写真』の定義みたいなのはAIさんに聞いて『なるほど』と思って引用しただけです。

仰る通り、私の内面から出たものはあまりありません。私は自分自身をAIのようなものだと思っています。ネットの世界を見渡して、目に見えたものを材料として収集し、私の中で再構築して生成し、物語として出力したものですので、いつものことですが主張みたいなものはありません。読んだ方それぞれがこの箱庭世界を見て何か感じてくれたらいいな、とだけ思っております。

ありがとうございました(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ

トンボ
KD106179132252.ppp-bb.dion.ne.jp

先程はコメントありがとうございました。
正直な感想は下手だと言うのとリアリティがないことです。
会社に関しては何か誤解をされているような気がします。
高校の写真部ですが、登場人物が極端すぎて、活動自体も違和感がありました。
ストーリーがしっかりとあるのはいいと思います。文章も読みにくいわけではないです。
ただ全体の構成などは一度プロを意識して書いた方がいいと思います。

小次郎
madb68ab04.ap.nuro.jp

最初に、鳥は怖いなーとリアルに思いました。
そこから、だんだんひきこまれていきましたね。
正しいいじめはないと思うけど、それは、主人公の主観だなってことで、僕の感覚と切り離しながら読みましたよ。

しいな ここみ
KD124209077231.au-net.ne.jp

>トンボさま
ありがとうございます(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ
何事に関しても『自分はうまい』なんて思ったら終わり、その先の成長など見込めませんので、下手だと再確認させていただけるのは大変有難いことです。
ただ、読むこともコメントすることも鍛錬です。もう少しツッコミに具体性がないと『くそぅ……』と思うことすらできません。
もっと殴り合いのスキルを磨いてほしいなと思います。

>小次郎さま
ありがとうございます。正直に申しますが、この作品はこのサイトを見ていて『よし、これを寓話的にして描こう』と書いたものになります。最新の小次郎さまの彼の人に対するコメントを拝読して、なるほど小次郎さまは言葉通り『正しいいじめ』をしないひとなんだな、とほっこりしております(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ

夜の雨
sp49-109-70-239.nnk01.spmode.ne.jp

しいな ここみさん「正しいいじめ」読みました。

基本的に人物のキャラがぶつかっていて、面白そうだなと感じました。
それに主人公の山田という女子が生き方に哲学を持っているようで、部活の写真部では、部屋の隅っこにいるようなキャラを自身で演出していて、無駄な闘争は「しないほうがお得」というような考え方で、かしこく生きている。
ところが同じ写真部の佐治は自意識が高すぎて、写真部で浮いてしまっている。対立スキスキのキャラということで、主人公の山田女子との関係がどうなるのだろうかと思っていると、写真に対する意識は二人ともが高くって、お互いに上を目指すことが出来そうな設定で、社会人になってからも専門家として活躍できるかも。というようなタイプ。
御作のエピソードの中では、佐治よりも山田の方が写真の技術は高いという事になっていて、佐治が山田に教わるというような構成になっています。
このときの佐治は山田を立てていて対立スキスキの自意識が高いキャラでは、ないのですよね。なので、山田に教えを乞うだけではなくって恋愛意識もあるのかもしれないのですが、エピソードの中では、おつきあいへは、進むような展開にはなっていません。
山田が佐治とは、一線を置いているので。
つまり佐治は山田に対しては対立をあらわさないが、周囲の者とは、問題を起こす個性の持ち主なので、山田のタイプではないようです。

まあ、現状では、という事ですが。
もし、この作品に続きがあるとしたら、山田と佐治がおつきあいすることになるかもしれませんので。

山田は、高校の写真部という事なのですが、内部が活動の一部しか描いていないようなので、物語の奥行き(背景)をもっと演出すればよいかなっと。写真部の一部の人物しか描かれていないような感じ。
これは佐治と対立する側の生徒のエピソードだけで構成しているから、その他の部員が描かれていない。
説明で背景を描くだけでもしておくと、奥行きが出るのではないかと思います。
どちらにしろ、全体のバランスですがね。

御作は、練り込んだら、かなり良くなるのではないかと思いますが。
現状では「第一稿」というところかな。
冒頭では主人公の山田の日常の一部とかも描かれているので、そのあたりもしっかりと構成して、会社勤めとかのエピソードなども挿入して、日常生活の部分も描いて、高校生の時の佐治との話を背景に絡めれば、物語として広がるのでは。
現状の御作は、物語の視野が、高校生のときの写真部での山田と佐治のお話という程度にしか、描かれていないような気がしますね。

まあ、原稿用紙46枚の作品なので、上に書いたようなことを構成してエピソードとして描けば100枚は行きそうな感じですが。
物語の作り方しだいでは200枚とかも可能ではないかな。
それだけ描ける物語性はあると思います。


どちらにしろ、書ける方だなッと思います。

しいな ここみ
KD124209078160.au-net.ne.jp

>夜の雨さま
お読みくださり、ありがとうございます(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ

山田はただの病的な写真好きの引っ込み思案として描いたつもりでしたが、いつも隅っこに一人でいるキャラ=哲学を持っている、みたいに読まれるようですね。参考になります。ちなみに山田と佐治くん、どちらの技術が上とかは書いた覚えがありません。お互いに切磋琢磨が必要な、写真に対して本気の子たちなので、忖度なく批評し合いますし、批評を素直に受け取る心構えもできている感じです。同志を見つけて佐治くんは嬉しかったのでしょうね。山田は彼を天才かもしれないと認めながら、人間としては嫌悪していたみたいな感じです。恋愛には発展しようもありません。


本文中にも書きましたが、語り手の山田は佐治くん以外の部員のことは名前も覚えておりません。だから『私と佐治くんと、その他』が登場人物となるのが自然かと思いました。写真でいえば山田と佐治という主役にフォーカスをあてて、その他はぼやけているみたいな画です。これ以上書くと群衆を俯瞰した写真になってしまい、何を写したかったのかわからないものになってしまいそうです。


まぁ、私、写真を撮る趣味はじつはまったくないのですが_(._.)_

前の『シアワセロボット』の時も思いましたが、背景を描き込むか、あるいはメインテーマがむき出しになるほどシンプルにするか──そのへんの匙加減って難しいですね。

塩瀬ヨリ
softbank126115136200.bbtec.net

しいなここみさま
「正しいいじめ」拝読しました。 
社内の同調圧力に馴染めず孤立する主人公のOLが趣味の写真を眺めながら、高校時代に同じ部活だった佐治を回想する。多数派vs少数派の非対称性が生み出す軋轢や、いろいろな角度の”正しさ”を配置する寓話的なアプローチ、表現の審美性を写真を通して俯瞰する作品として読みました。
なぜか佐治くんが途中からちび〇子ちゃんのキャラに見えてきて、都度んふふっと笑ってしまいました。

いつも思うことですが、この長文でも読みやすいのがすごいなと感じます。
過去回想への導入も親切で、負荷が少なく、なるほどこれだとすんなり別なレイヤーへ移行できるのだなと思いました。
反面、文体的な特徴が少ない、識別性の低さがトレードオフでしょうか。

他の方へのコメントも拝見してしまっているので、その辺を知らないフリで申し上げた方がいいのか、その逆がいいのか。
難しいところですが、殴り合いをする気は微塵もありませんので、そこだけご承知おきください。

以下、気になった点をお伝えしますね。

>コンプライアンスに反していたから落選したのは当たり前だが──
>汚いところや不備なところも、ありのままを写した写真
>美しいものに汚いものがくっついた作品
写真に対する評価基準が、単純な二項対立に記号化されすぎていて主人公の葛藤が矮小化される気がしました。
コンテストや会社の宣材など、用途に応じて評価基準が変わることは、社会人経験のある主人公なら当然認識していそうなものですが。
そういう概念がなさそうに見えるのは、高校卒業して10年もたつ社会人にしては妙に幼稚な印象でした。
つまり、「そりゃあ・・・・・・そうなるよね」という感じです。
単に、変わってる自分が嫌いじゃないという自意識の幼さが、被害妄想と自己憐憫をあたかも社会の構造であるごとくに因果関係のすり替えをしているように見えました。
そう見えてしまうと、本来のテーマの”正しさ”を多層的かつ客観的に浮かび上がらせるという目的を損なうと感じました。

>外国の戦争で、空襲を受けて逃げ惑う少女の写真~ハゲタカが少女が力尽きたら獲物にしようと狙っている。
超有名な戦場報道写真を指すと思われますが、二つの写真の内容が一つにまとめられて描写されています。事実関係の混同に見えましたが、それがどのような意図の改変なのか判断できませんでした。版権ですかね?

>褒めそやしゴッコ!
高校生の口語としては不自然な気もしますが、佐治くんのエキセントリックさの演出ならありかもしれません。

>『いじめじゃない?』
いじめの範疇を超えているというか、明確な傷害事件のレベルなので違和感がありました。
タイトルに回帰するための台詞と思うと”いじめ”である必要があるとは思いますが、露骨な暴力ではなく多勢であるゆえの暴力性、みたいなものの方がテーマにあう気がしました。

また、部員たちが記号的で、彼らの正しさが単なる「嫌なヤツへの攻撃性」としか現れていません。
正しいからなされたのではなく、行為を正当化するために後から貼られた”タグ”でしかない。
それは、それぞれの思い描く正しさがぶつかり合う構図ではなく、ただ数の暴力です。
彼らの正しさのロジックが見えないと、それによって虐げられる少数側のロジックも照応しなくなると思います。

>ビールをちびりちびりやりながら、写真コンテストの入選作を眺める。
過去回想パートから戻った現在の場面。主人公の内省が、急にコラムっぽいトーンになって戸惑いました。
ここで主人公は、「集団と違うやり方は、正しくないやり方なのだろうか」と、正しさについて一定の答えを誘引している表現だと感じます。
オチに据えられていることもあり、書き手の意図がどちらの正しさも肯定的に扱う、という姿勢とは感じられませんでした。

執筆おつかれさまでした!

タイム
158.144.237.160.cyberhome.jp

 とても考えさせられるお話でした。主人公と同じような立場になった時、自分だったらどうするだろうかと考えたり、佐治くんの立場だったら、他の部員達の立場だったら等さまざまな視点に切り替えて読み直したりもしましたが、答えは出ないままです。
 純文学とは何か、という問いかけに対する答えは人によって様々かと思いますが、個人的な見解と致しましては「弱さと強さ、卑しさや尊さ、醜さと美しさ等、相反するものを抱えた登場人物の心理的葛藤を描き出した作品」のことではないかと考えているので、御作は(私の独断と偏見によれば)まさに純文学だなと感じました。
 上手な文章を書く方々は世の中にたくさんいますが、良きにつけ悪しきにつけ、心を波立たせるような文章を紡ぐ書き手というのは希少かと思います。
 しいなさんの作品には、痛みだけではなく癒しがあり、絶望だけでなく希望があるなと感じることが多いです。
 読み手の心にさまざまな感情(プラスなものだけでなくマイナスなものも含みます)を呼び起こす作品を書かれる方なので、いつも勉強になるなと思いながら拝読しています。

しいな ここみ
KD124209085064.au-net.ne.jp

>塩瀬ヨリさま
ありがとうございます(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ

ちびまる子ちゃんをあまり知らないのですが、それでも『そんなキャラ、いたなぁ』とうなずいてしまいました(*´艸`*)

ちなみに私、なろうで『しいな文体はすぐわかる』みたいに言われておりますけど、仰る通り作者を消すようなことも意識しております。それこそが『無節操』だと思っております。

私は誰か登場人物の一人の肩をもつみたいなことはなるべくしたくなく、ゆえに登場人物みんな正しくて、みんな間違っていると思っております。山田があえてコンプライアンスに反する作品を投稿したのは『反抗』であり、求められているものはわかりつつそれに反抗するのが芸術家だという、いわば尖った反骨精神なんだと思います。そしてそれはもちろんコンテストに受かろうとするなら仰る通り『幼稚な精神性』ですよね。それを彼女自身は『正しいこと』と思っていますが、集団から見ればもちろん『間違ったこと』でしょう。

有名な写真二つをミックスしたのは仰る通り『ヤバいのかな?』と思ったからです(^.^;

仰る通りの『数の暴力』を描きました。たとえ長い人類の歴史の中で『正しい』とされていることがあったとしても、それが気に食わない一般人が大多数なら、偉人たちの言葉は消され、現代の一般大衆の気に入るもののほうが『正しい』とされてしまいます。

まぁ……そのへん、作品内で主張とかはしていないので……、ご指摘の通りですが──

この作品、じつはこちらのサイトで最近目にしていた光景を高校写真部での出来事にたとえて描いてみたものだったのですが、露骨に寓話っぽくすると誹謗中傷っぽくなるかな? と思ってぼやかしすぎたかなと思うところはあります。また、誰が正しいのかとかいった主張は私ごときにはできません。ただ自分を客観視するための手助けになればな、と思って書きました。もちほん、私自身も含めて──

しいな ここみ
KD124209085064.au-net.ne.jp

>タイムさま
もしかして『なろう』から来られた方ですか?

それならば、知ってるはず!

私は叩かれれば叩かれるほどにやる気の漲るドMだということを!

叩いてください。

最近、というかこの6年ぐらい、叩かれ不足で力が出んのです。

叩いてください!

モグラ叩きのモグラのようににょっきり喜びますので(๑•̀ㅂ•́)و✧

飼い猫ちゃりりん
14-133-218-254.area1a.commufa.jp

しいな ここみ様。
『本当に恐ろしいものとは、悪じゃなくて正義なんだ。』
みたいなことをニーチェが言ってましたよね。
このサイトの大衆には「なに言ってんだ。アホか』くらいにしか思われないでしょう。
悪より善が恐ろしい。これ人間の歴史を見れば常識なんですけどね。

飼い猫がこの作品に感想を寄せると、また荒れてしいな様にも迷惑をかけるでしょうから、ちょっと遠慮しておきます。

飼い猫ちゃりりん
14-133-218-254.area1a.commufa.jp

いやもとい。人間の歴史ではなく、人間の日常を見れば常識なんです。

しいな ここみ
KD124209079143.au-net.ne.jp

>飼い猫さゃりりんさま

そしてさじりんさまはご自分が『正しい』とお思いですか?

飼い猫ちゃりりん
118-105-102-224.area1a.commufa.jp

しいな ここみ様。猫が「自分が正しい」と思うことはあり得ません。なぜなら「正しい」という状態が嫌いだからです。
ただし、猫が奴隷となったら、常に正しくありたいです。じゃなきゃ殺処分されちゃうから。

ちなみに、写真家ちゃり男は、目の前で猫が死にそうになっていたら、写真なんかどうでもいいから、猫を助けます。当たり前ですよね。

しいな ここみ
KD124209080191.au-net.ne.jp

>飼い猫ちゃりりんさま
私から見たら、さゃりりんさまはこのサイトでは一番正しいですよ。あくまで常識的な正しさですけど。ただ、そんな常識を他のユーザーさんがどうやら知らないらしいことに調子に乗って、上から目線の物言いをされているように見えます。

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