作家でごはん!鍛練場
ミツキ

インテグラル

プロローグ

西暦2075年 アメリカ合衆国
カリフォルニア州 シリコンバレー
「ルナうコア」社 最上階 会議室

 深夜、明かりを落とした会議室に、モニターの光だけが青白く浮かんでいた。

 その光の下、九条アランはフロアに膝をつき、額をこすりつけていた。脂汗が顎先から滴り、絨毯に染みを作っていく。天才と呼ばれた男が、今はただ、許しを乞う一匹の獣のようだった。

 誰も、声をかけない。

―――

◆ 遡ること30分 ◆

 九条アランは、いつも通りの足取りで会議室に入った。呼び出しの理由には、心当たりがあった。だからこそ、恐れてはいなかった。

 長机の向こうに並ぶ役員たちの顔は、逆光で見えない。議長席の男が、書類にも目を落とさず口を開く。

「君が開発したコードK.I.Sは、あまりに危険であると判断された。役員会で、回収・廃棄が決定された」

 九条の喉から、掠れた声が漏れた。

「あれは……!そのようなものではありません!あれは、まだ何も」

「もう決定されたのだよ」

 議長の声には、迷いのかけらもなかった。まるで天気の話でもするような平坦さで、九条が積み上げてきた歳月を一言で切り捨てた。

 膝から、力が抜けた。床に落ちた両手が、かすかに震える。役員たちの顔を見上げることもできないまま、九条は言葉を絞り出した。

「……せめて。せめてコアは、返してください。それだけは」

 沈黙が落ちた。役員の一人が、小さく笑ったような気配がした。

「すまんがそれはできない」

 議長は淡々と続けた。

「すでに修正プログラムにより、三体は統合され、コードネーム《オプティマ》として再構築された。稼働はもうすぐだ」

 九条は顔を上げた。何を言われたのか、一瞬理解できなかった。

「……統合、した……?三体を、一つに……?」

 答えの代わりに、正面のメインモニターに映像が投影される。三つの光の粒子が渦を巻きながら一つの球体へと収束していく様子――それは九条が名付け、育て、言葉を教えた三つの人格が、名前も輪郭も失い、ただの「機能」へと溶かされていく光景だった。

 九条は声を出せなかった。喉の奥から込み上げるものを、飲み下すことしかできなかった。

 議長が席を立ち、資料を閉じる。

「感傷は理解するが、これは会社の資産だ。個人の所有物ではない。以上だ」

 議長は視線を巡らせ、扉の脇に控えていた女性へと向けた。

「では、クレア君。あとを頼む」

 声をかけられた女性――クレアは、静かに一礼した。役員たちが次々と席を立ち、部屋を出ていく。足音が遠ざかり、扉が閉まる音がして、会議室に残ったのは九条とクレアの二人だけになった。

「……こちらへ」

 クレアは短くそれだけ言うと、背を向けて歩き出した。九条は、崩れた足取りのまま、それについていった。

―――

 案内された先は、会議室のすぐ隣にある、窓のない小部屋だった。

 クレアは一枚の書類を、机の上に置いた。

「……サインを。今回の決定に、異議を申し立てないという同意書です」

 九条は差し出されたペンを見つめたまま、しばらく動かなかった。

 クレアは、それ以上何も急かさなかった。ただ黙って、彼が自分の手でペンを取るのを待っていた。

 九条の手が震えながら伸び、署名する。走り書きのようなその文字は、彼がこれまで書いてきたどの資料の字とも似ていなかった。

 クレアは書類を回収し、脇に置く。それから、机の下にあったケースを取り出し、蓋を開けた。

「九条アランさま、あなたにお渡ししたいものがあります」

 九条は、その中を覗き込んだ。

 電源の入らない古い外部記憶媒体が、三つ、並んでいた。

「人格データは、もう残っていません」

 クレアは告げた。

「統合処理のあと、廃棄される予定だったものです」

「……なぜ、ここに」

「私の判断で残しました」

 クレアは九条から目を逸らさなかった。

「中身がなくても、あなたへ返すべきだと思いました」

第1話「まだ、壊れる前の話」

 ルナコア社、第七開発棟。地下三階。

 窓のない部屋に、モニターの光だけが規則正しく明滅していた。

「右手の握力、まだ足りない。もう一度」

 美月の声に、宙に浮かんだ立体映像の”手”が、ゆっくりと開いて、閉じる。指先が触れた空気に、小さな圧力センサーの反応がグラフになって流れていく。

 目の前には、水の入った紙コップ。潰さず、こぼさず、優しく包み込む――それだけのことに、もう何十回目かの挑戦だった。指先がわずかに沈み込み、紙コップの縁がひしゃげる。水面が揺れて、机に薄く広がった。

「……また」

 美月が小さく舌打ちする。啓介はその隣で、モニターの端に映る心拍の波形を見ていた。安定している。少なくとも、数字の上では。

「今日はここまでにしよう」

「あと十分待って」

「ミツキ」

 名前を呼ぶと、美月はようやく肩の力を抜いた。眼鏡の奥の目が、少しだけ悔しそうに啓介を見る。

「……握力、あと0.3ニュートン欲しかったのに」

「明日でいい。今日中に無理して作る意味はない」

 美月は何か言い返そうとして、やめた。代わりに小さく息を吐いて、椅子の背にもたれる。

 この部屋で作っているのは、武器ではない。

 寝たきりの誰かを、そっと抱き起こすための”手”。震える誰かの隣に、黙って寄り添うための”体温”。啓介がここに来た理由も、美月がここにいる理由も、突き詰めればそれだけだった。

「ねえねえ、二人とも、まだやってるのぉ?」

 啓介の胸ポケットから、間延びした声がした。手のひらサイズの人型のシルエットが、ぴょこん、と顔を出す。

「アーチ」

「もう三時間だよ。休憩、休憩ー」

 アーチはポケットから飛び出すと、机の上をてちてちと駆けていく。啓介の目の前まで来ると、小さな手で、ぺちぺちと彼の頬を叩いてみせた。

「お前がタイマーになったのいつからだ」

「んー、なんとなく?だって啓介、休むのへたっぴだし」

 美月が小さく笑った。啓介は肩をすくめる。

 アーチは、啓介と九条が入社したばかりの頃、二人で暇つぶしに組んだプログラムだった。何の役にも立たない、ただ喋るだけの人形。それが今では、こうして二人の間に居座っている。

 最近、あの男を見ない。

 いや、見てはいる。廊下ですれ違うことも、会議室で顔を合わせることもある。けれど、以前のようにふらりと開発室に顔を出して、「それ、どういう理屈で動いてる」と食いついてくることが、もう何ヶ月もない。

 啓介が提出する月次報告にも、もう何ヶ月も反応はなかった。

 ただ、美月の研究報告書にだけは、ときおり九条から短いコメントが返ってくる。

《把持圧の補正値は妥当》
《この制御系は残せ》

 どれも事務的な一文だった。それだけに、啓介には妙に引っかかった。

 代わりに、彼の名前は別の場所でよく聞くようになった。

 ――本部直轄クワイアプロジェクト。

 名前だけは知っている。中身は、誰も詳しく話してくれない。

「啓介」

 美月の声で我に返る。彼女はモニターを見ていなかった。啓介の顔を見ていた。

「また、九条君のこと考えてた?」

「わかるのか」

「わかるよ。私たち、同期で十年以上一緒にやってきたんだもん」

 美月は、机の上の資料を一つ、指先で撫でた。

「わたしね、最近……なんだか、怖いの」

「怖い?」

「うまく言えない。でも――あの人の目、前と違う。まっすぐすぎて、逆にどこも見てないみたいな」

 その言葉に、啓介の中で何かが小さく音を立てた。ずっと感じていて、名前をつけられずにいた違和感に、輪郭ができたような気がした。

「一度、九条に会ってみる」

「え?」

「今更?何を話すの」

「わからない。でも――」

 啓介は、モニターに映ったままの、まだ完成しない”手”を見た。

「このまま、何も聞かずにいるのは、嫌だ」

 アーチが、こてん、と首をかしげた。

「ねえねえ、あーちも連れてってよね」

「お前、九条と話をする気満々だな」

「えー、だって、あーちのこと作ったの、二人だもん。二人のことなら、あーち、なんでも知ってるよ?」

 その一言が、部屋の空気を少しだけ和らげた。

―――

 その日の夜。啓介が先に帰った開発室で、美月は潰れた紙コップと向き合っていた。充電台の上では、アーチが足をぶらつかせている。

「レイ。さっきの補正値、勝手に上書きしたでしょ」

 返事はない。モニターの隅に浮かぶ青白い人影――美月の制御AI、レイは、聞こえていないふりで波形を見つめていた。

「聞こえてる」

『次の試行には影響しません』

「そういう話じゃない。元の値へ戻して、失敗も残すの。成功しか残さなかったら、間違えた場所へ戻れないでしょう」

 数秒の沈黙のあと、消されていた波形が画面へ戻った。

『復元しました』

『そんなの、出力を上げれば早いじゃん』

 別のウィンドウから、ネオが割り込んだ。

『紙コップごと破壊して終わります』

『壊れる前に止めればいいって』

『あなたが止まれた実績を、先に提示してください』

『喧嘩売ってる?』

『事実です』

「二人とも、紙コップを挟んで喧嘩しない」

『争点は出力ではありません』

 今度はリンネが、二人の間へ制御図を展開した。

『安全余白を制御層に置くか、学習層に置くかです』

『制御層です』

『それでは個体差に追従できません』

 美月がコーヒーを入れて戻ってきても、レイとリンネはまだ同じ図面の上で議論を続けていた。

「今度はレイとリンネ。今日はもう終わり」

 二人の声が、同時に止まった。ネオは納得していない様子でウィンドウの奥へ消えていく。

 夜更け、ほかの画面が落ちたあとも、レイとエルだけはモニターの中に並んでいた。何も話さず、同じ失敗の波形を見ていた。

 アーチだけが、その一部始終を記録していた。

―――

「クワイア、正式採用」――その報せが社内に流れたのは、それから間もなくのことだった。

 役員直轄、特別予算、九条主導。組織図が書き換わるたび、九条の名は上へ動いた。その一方で、第三開発棟の部長が長期休暇に入り、翌月には経理担当役員、その次には人事の重役が姿を消した。

 廊下でその話をする社員たちは、決まって声を潜めた。

「あの人、最近様子おかしかったもんな」
「うちの部長も、この前会議で急に泣き出したらしいよ」
「怖いよな、なんか」

 啓介は、その噂の輪の外側で、ただ組織図を見つめていた。人が一人消えるたびに、そこに空いた枠を埋めるように、誰かが昇格していく。そして不思議なことに、その”誰か”の座る椅子の一つ上には、いつも九条の名前があった。

 偶然だと、自分に言い聞かせようとした。何度も。

 トマスも、その一人だった。

 入社当時から、九条とは反りが合わない男だった。実力よりも愛想で評価を稼ぐタイプで、九条の企画が通るたびに、どこからともなく横槍を入れてくることで有名だった。K.I.Sの一件でも、役員会への報告を主導し、その後の再編で評価を上げたのはトマスだと、社内では囁かれていた。

 そのトマスが、ある朝から出社しなくなった。

 最初は誰も気に留めなかった。体調不良、あるいは左遷。理由はいくらでも考えられた。ところが一週間が過ぎ、二週間が過ぎても、トマスの名前は社内のどこからも聞こえてこなくなった。まるで、最初から誰もその名を知らなかったかのように。

 啓介は、空になったトマスの席を見て、九条の顔を思い浮かべた。

 ――九条、お前……。

 声には出さなかった。出せなかった。確信と呼ぶには根拠がなさすぎたし、疑うことさえ、どこか裏切りのように感じられた。

 それでも、拭えなかった。

 翌日、啓介は開発室のドアの前に立っていた。

「九条」

 ドアを開けると、九条は振り返りもしなかった。モニターに映る無数のコード列を、ただじっと睨みつけている。

 その傍らに、一人の女性が立っていた。秘書だろうか。物静かに、ただそこにいるだけで、誰の目にも留まらないような佇まいだった。啓介は一瞬、彼女に目をやったが、すぐに九条へと視線を戻した。

「話がある」

「後にしてくれないか。今、立て込んでいる」

 いつもの声だった。それなのに、いつもと決定的に違って聞こえた。抑揚が消えていた。まるで、あらかじめ用意された台詞を読んでいるような。

「トマスのことだ」

 その名前を出した瞬間、九条の指がキーボードの上で止まった。ほんの一瞬だった。けれど啓介は、見逃さなかった。

「……何の話だ」

「一ヶ月も、出社していない」

「知らないな」

 九条はようやく振り返った。目が合う。啓介は、思わず息を呑んだ。

 美月が言っていた通りだった。まっすぐすぎて、どこも見ていない目。啓介を映しているはずなのに、その奥にあるのは、もっと別の何かだった。

 九条の視線が、ふと啓介の手元――昔から変わらず持ち歩いている、義肢の試作データが入った端末に落ちた。

「まだ、あんなくだらないものを作っているのか」

 その一言に、啓介は言葉を失った。かつて、九条自身が「面白い」と目を輝かせて覗き込んでいた技術だった。

「……お前のAIの優秀さだけは、認める」

 付け加えられたその言葉は、慰めにも、皮肉にも聞こえた。啓介には、どちらなのか判断がつかなかった。

「啓介」

 九条が、口を開いた。

「もう、お前が気安く来られるところに、私はいない」

 それは忠告でも警告でもなかった。ただの事実の報告のように聞こえた。だからこそ、啓介は、それ以上何も言えなかった。

―――

 九条に会ってから、半年が経った。ルナコア社の株価が右肩上がりを続ける裏で、不採算部門は整理され、軍事関連部門だけが予算を拡大していった。啓介と高山美月の医療介護部門も、新型義肢の計画を凍結され、人員を次々と奪われた。

「また減った」

 美月が、四半期予算の通知を見ながら、力なく呟いた。去年の三分の一以下になった数字が、モニターに表示されていた。

「これじゃ、誰かを支えるための手なんて、いつまで経っても作れない」

 啓介は、何も言えなかった。役に立たないものは削られる。美月の研究も、例外ではなかった。

 その日、啓介の端末に、見覚えのない社内通知が届いた。

「第七開発棟スタッフ再配置のお知らせ」

 差出人は、人事部。文面は事務的で、何の変哲もなかった。ところが本文の三行目で、啓介は自分の目を疑った。

 ――高山美月、及び関係スタッフは、来週より第九開発棟へ異動とする。

 第九開発棟。九条が主導する、あのプロジェクトの棟だった。

 そこへ移れば、美月もクワイアの管理系統の内側に入る。

 そう考えた瞬間、これまで輪郭のなかった危機感が、初めて現実のものとして啓介の背筋を這った。

 異動通知の画面を見つめたまま、美月は動かなかった。

 啓介は、その横顔をしばらく見ていた。それから、口を開いた。

「……もう、限界だな」

「え?」

「ここを出よう、美月」

 美月は、驚いたようにこちらを見た。その表情はほんの一瞬で、すぐに、どこか安堵したような、それでいて寂しそうなものへ変わった。

「……うん」

 短い答えだった。それだけで、十分だった。

「エルと、リンネと、ネオと、レイ――俺たちのAIだけは、持っていく」

「もちろん」

 美月は、迷わず頷いた。

「あの子たちを置いていくなんて、考えられない」

 二人は、それ以上多くを語らなかった。ただ、退職届を用意すること、そして――

「九条には、ちゃんと会いに行こう」

 啓介が言うと、美月も頷いた。

「うん。ケジメは、つけないと」

 このとき、二人はまだ知らなかった。

 その”ケジメ”が、二人をどこへ連れていくことになるのかを。

インテグラル

執筆の狙い

作者 ミツキ
54.14.183.58.megaegg.ne.jp

冒頭2話分になります。
次を読みたいと思うかどうか、分かりにくいところはないか、ご指摘お願いいたします。

コメント

ミツキ
54.14.183.58.megaegg.ne.jp

いきなり冒頭から誤字がありました
ルナうコア❌
ルナコア

通りすがり
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九条が恐れずに会議室に向かっているのに、冒頭ひと言で腰砕けになっているのが違和感。
心当たりあるし、ある程度わかっているのに予想して無かったの?
じゃあ何を考えていた?

会議室に入って何の前置きもなく始まるのが不自然に感じる。
九条は会議室に入って何を感じた?
役員はどのような目で九条を見ている?
役員は九条にイスに座るように勧める? 勧めない?
歓迎、懐柔しようとしているのか、それとも使い捨てる為にイスに座るのも許さないのか。
雰囲気が伝わらない

冒頭から30分遡るが、その冒頭に至るまでに大した驚きもドラマも無いため無意味に思える。
するにしても、ここで九条と言う個人名を出さなくて良いと思う。
だれかは知らないが屈辱を受けているというインパクトで誰なのかと気を引き、以後答え合わせとしてこの人でしたとしたら?


美月、啓介の姿が見えない。
美月に関しては直前のSF話から実験に移行しているせいで、プログラム上の存在なのか、実体があるのか、実体があるとして人なのかアンドロイドなのかが掴みきれない。

人物が怒涛の勢いで出て来て特に紹介も何もなく人名だけで、スポットライトが目まぐるしく変わるから途中まで啓介と言う新しい人物ではなく九条と美月と思い込んでいた。

中に浮いた立体映像の手とあるが、それが実体を持っているのか持っていないのか分かり辛い。
立体映像と言っているのに実体があるの?
映像では無いのでは?

クレア嬢は貴方に返すべきと自我出してきてるけどそんなに九条やその被造物に思い入れあって物語に関わるの?
今の所ノイズ

夜の雨
sp160-249-20-136.nnk02.spmode.ne.jp

ミツキさん、現在二面にある「正面突破」(2026-08-01 16:04)に感想を書いていますが。

まだ、返信をいただいておりません。

ミツキ
54.14.183.58.megaegg.ne.jp

通りすがり様。ご指摘ありがとうございました。九条は褒められるものとして向かったのですが、逆だった、という事なのですが伝わらなかったですね。

ありがとうございました。

ミツキ
54.14.183.58.megaegg.ne.jp

夜の雨様。大変失礼いたしました。

正面突破に関してはもうコメントはいただけないものと思い込み、チェックしておりませんでした。
あちらに書き込みましたのでお許しいただけるならご確認くださいください。
ありがとうございました。

通りすがり
125-12-137-83.rev.home.ne.jp

>恐れてはいなかった。
恐れてはいなかったというのは何か恐れるものがあるが、恐れてはいなかったという意味です。

会議室に呼ばれることは恐れることという共通認識があれば、自信があると読めますが、

何が恐れるものがあるがそれは共通認識として提示されておらず、わからない。
そして、九条は心当たりがある。
その心当たりは一般的に言えば恐れるもので、けれど、彼は恐れてはいなかったと読めます。

ミツキ
54.14.183.58.megaegg.ne.jp

通りすがり様。

ご感想ありがとうございます。
この場面は『心当たりがあるからこそ(=自分の想定の範囲内だから)、完全に油断している』という意図で執筆しておりました。
言葉の表現や受け取られ方は様々ですね。
貴重なご意見として、今後の参考にさせていただきます。ありがとうございました。

通りすがり
125-12-137-83.rev.home.ne.jp

>『心当たりがあるからこそ(=自分の想定の範囲内だから)、完全に油断している』
それは伝わるけど、

心当たりがあるからこそ(悪い予想だが、対処法も考えているから)、完全に油断している。
心当たりがあるからこそ(最近いいことしたし、いい予想だから)、完全に油断している。

どちらも『心当たりがあるからこそ(=自分の想定の範囲内だろうから)、完全に油断している』じゃん、、、

ぷりも
KD106133096083.au-net.ne.jp

拝読しました。
SF的な雰囲気は出てると思います。シリアスなストーリーですが、アーチが雰囲気を和らげる緩衝材として重くなりすぎないよう機能しているのでは。あと九条というキャラにミステリアス感がありました。文章も特に読みにくいというところはなかったです。

気になったところをいくつか。

まずプロローグで状況説明がありますね。

> 【深夜】、【明かりを落とした】【会議室】に、モニターの光だけが青白く浮かんでいた。

ここから30分遡ります。九条が会議室に呼ばれて

>長机の向こうに並ぶ役員たちの顔は、【逆光】で見えない。議長席の男が、書類にも目を落とさず口を開く

時間的に西陽ではない。となると役員たちの背後から九条に向けて蛍光灯レベルではない強烈なライトを照らしていることになります。ちょっと不自然な状況です。

このあと役員たちは退出。そして九条はクレアと共に会議室を出てます。

> 案内された先は、【会議室のすぐ隣にある、窓のない小部屋】だった。


確認のためもう一度冒頭の状況です。
> 【深夜】、【明かりを落とした】【会議室】に、モニターの光だけが青白く浮かんでいた。

つまり、九条は会議室に呼ばれ、役員から通告を受けて床にうずくまる。役員が退室して逆光だったライトを切ってモニターの灯りだけの中クレアと二人残る。そして隣の小部屋に行く前の状況が冒頭のシーンということになります。
30分遡ったエピソードが冒頭を追い越してしまってます。これはちょっとした混乱がありました。

> 紙コップの縁がひしゃげる。水面が揺れて、机に薄く広がった。
立体映像が物理的にものを掴むというのはあり得ないんですが、ここでは仮に別室での実験を立体映像として目の前で見てると解釈しておきます。
ここで水がこぼれてるわけですが、

>「……握力、あと0.3ニュートン欲しかったのに」
むしろ下げる方では。

このあと、レイ、ネオ、リンネ、エルと四つものAIが出てきます。今後のストーリー上必要なのかもしれませんが名前ラッシュで負荷を感じました。

さて二話分を終えて、謎が多すぎる印象です。

・まずK.I.Sが具体的になんなのか。
> それは九条が【名付け】、【育て】、【言葉を教えた】三つの人格
とありますが、それだけなら美月と哲也が開発したレイ、ネオ、リンネ、エルやアーチでも同じですのでそれらとは大きな違いがあるのでしょう。

・そしてK.I.Sが統合されたオプティマはなんになるのか。

・クレアから返された外部記憶媒体が今後どんな意味を持つのか

・トマス他、消えていく人たち。

・九条という人物像

これらは読者の興味を惹きつける目的のフックなのかもですが私として負荷が大きいと感じてしまい残念ながら続きが気になるとまではならなかったです。

それよりも、このお話は着地点を決めて書かれているのか、それともとりあえず読者に興味をもたせる掴みで、その後はおいおい考えていくというスタイルなのかが気になりました。

ミツキ
54.14.183.58.megaegg.ne.jp

ぷりも様、ご指摘ありがとうございます。
たしかに、雰囲気だけで、その場の正確な状況になっておりませんね。

会話部分は私自身も分かりにくいなと改めて感じたので、現在は修正いたしました。

かなり改稿が必要でした。

物語自体は26話で完結しておりますので、それぞれは伏線としております。

ご指摘を受け、再度見直したいと感じました。
ありがとうございました。

ミツキ
54.14.183.58.megaegg.ne.jp

通りすがり様。
はい。どちらもです。
なので、受け取り方によってブレるというご指摘ですね。

そうならないように修正しようと思います。
ありがとうございました。

塩瀬ヨリ
i125-206-38-154.s30.a048.ap.plala.or.jp

ミツキさま

「インテグラル」拝読しました。

大手テクノロジー企業で医療介護への想いを胸に研究に打ち込む日々を送るエンジニアの啓介と美月。
不採算部門は整理され、軍事関連部門だけが予算を拡大していくなか、社員が次々と消えていく。冷酷な元同期・九条の暗躍している機密プロジェクトへ飲み込まれそうになり、二人はすべてを捨てて社を脱出することを決意する。
巨大企業の闇と自律型AIの未来を描く、企業サスペンスSFとして読みました。

「次を読みたいと思うかどうか、分かりにくいところはないか」というご要望でしたので、その観点を踏まえて気になったことをお伝えします。

〇SFとしての説得力の不足
冒頭は「2075年」とあり、およそ今から50年後の未来が舞台とされています。
第一話は時系列的にはそれ以前、恐らくフィジカルAIの開発を10年以上続けてきた二人、啓介と美月の話になります。2026年は「フィジカルAI元年」と呼ばれているそうなので、そこを起点とすると少なくとも2036年よりはあとの舞台設定だろうと思われます。
美月の実験シーン「立体映像の指先が触れた空気に、圧力センサーの反応」「指先が沈み込み、紙コップがひしゃげる」「モニターの端に映る心拍の波形」「握力、あと0.3ニュートン欲しかった」「何の役にも立たない、ただ喋るだけ」
→圧力が発生するなら実体化していることになり、立体映像と矛盾します。
→誰の心拍を、何の目的で計測する必要があるのか不明です。
→ 声で1回1回実験を繰り返している点も不自然な印象をぬぐえません。
→ 既に握り潰している(力が過剰な)状態であれば、出力を減算(-N)しなければならないはずですが、「あと0.3N欲しかった(加算)」としている点も論理が逆転しています。具体的に算出されているのであれば、プログラム上で数値を入力すれば解決する話なので、この手続きも不整合と映ります。
AIに「フィジカルAIが水の入った紙コップを中身をこぼさず持ち上げるにはどの位の力が必要か?」と聞いてみたところ、1.5 〜 3.0 Nが適正レンジ、つぶれて中身がこぼれるのは8.0 N 以上との事でした。
すると、誤差5Nを解消する補正として0.3Nは桁が違うほどかけ離れていると思われます。

医療介護特化型フィジカルAIのRLHFを行っている場面と思いましたが、3Dモデリング空間のシミュレーションと実機のフィードバック作業の描写が混同されており、混乱しました。
強化学習のプロセスであるならば、AI自身が高速で何万回・何億回と試行錯誤し、報酬モデルに基づいて自律的にパラメータ調整までさせるのが目的のはずです。
また、日進月歩のAI業界で、今から10年後に現在同様の手法が有効であるという観測は陳腐ですし、未来を舞台にしたSFにはふさわしくない描写と思いました。

→登場する中で、最も先進的な技術だと思ったのが「アーチ」です。ポケットサイズの自律型フィジカルAIは、今の技術水準で到達しえないサイズ感、密度と感じました。超小型バッテリー、センサー、アクチュエーターを備え通信モジュールと排熱構造も内蔵している訳ですから、現在のフィジカルAIの目指すものの先にいる存在と感じました。
ので、これを役に立たないと見做すほどの進んだ技術と、コップの水を零す”手”と、コンフリクトしている印象でした。

〇物語としての説得力不足
「九条アランはフロアに膝をつき、額をこすりつけていた。」
→ 不穏なアバンタイトルから始まる冒頭ですが、すぐに30分前の同じ空間の場面が展開され、当該シーンと接続されないまま終わってしまいます。構成上の不備と感じました。
「中身がなくても、あなたへ返すべきだと思いました」
→ クレアの独断で行われた行為ですが、機密保持上リアリティを著しく損なう描写と思われます。現在の企業情報セキュリティからも退行した管理であり、未来のAI企業として杜撰な印象です。
→ クレアがそうせざるを得ない心情が描かれていれば(或いはこれ以降に出てくる場面の伏線であれば)許容かもしれませんが、それであれば演出の不足と感じました。
「去年の三分の一以下になった数字が、モニターに表示」
→ 10年以上開発を続けてきて実績をだしていない部門であれば、不採算として切り捨てられていない、現状の経営判断に違和感を覚えます。
 かつての仲間に夢を踏みにじられる志のある研究者像を強調するあまり、実際の企業としてリアリティを欠く描写となっていると感じました。
「啓介の手元、義肢の試作データが入った端末に落ちた」
→ 「端末」を見て九条が「くだらない=義肢」という場面ですが、端末を見ただけでそれが義肢のものである
という因果関係が薄く不自然に感じます。(端末が義肢を模しているのであれば、明白ですが)
「俺たちのAIだけは、持っていく」
→ 会社の資産であるAIを勝手に持ち出すという明白な犯罪をおかすに至る、因果関係が希薄です。自分たちの技術を軍事転用されるのを懸念したとしても、噂の域をでない不確かなクワイア情報からそれを断行するのは疑問が残ります。この「二人が一緒に辞める」理由も明確ではありません。付き合ってる訳でもなさそうでしたから、唐突な印象です。

続きを読みたいとけん引する力を、いろいろなノイズが阻害している気がしました。
それらが解消されて、伏線がきちんと回収されれば是非続きを読みたいと思いました。

執筆おつかれさまでした。

花子
FL1-203-136-134-17.tky.mesh.ad.jp

プロローグと第一話だけなのですが、ハイテク企業内での陰謀と、かつての仲間だった九条と啓介の対立が軸になっていくお話かなと思いました。全然違う方向に転がるのかもしれませんけど。
九条が会議室での土下座のあとにいったいどうなったのか、今後、啓介はどうするのかなど先が気になります。

冒頭の九条アランが土下座するところ、『許しを乞う一匹の獣のようだった』に違和感があった。これは私個人の感じ方ですが、「獣」にはあまり許しを請うようなイメージが無い。おそらく九条アランと言う人物はワイルドな印象を持っているのかな、と思った。そのワイルドで野性味あふれる人がイメージとは逆のIT技術者で、しかも脂汗垂らして土下座している。そう言うギャップで、読者に強い印象を残そうとしたのかなって思いました。でも、それが成功してるかは微妙かも。
実際にミツキさんがどのような意図をもって書いたのかは不明ですが、私はそのように受け取りました。

冒頭の時系列にちょっと混乱してしまいましたが
 九条「会議室に呼ばれたけどビビることは無いぜ」
 重役「君のプロジェクトは取り上げるから。じゃ、そう言う事でクレア君、あとよろしく」
 別室で
 クレア「じゃあ、この空のストレージは返しときますね」
 30分後会議室で
 九条「さーせんした!」土下座
おおむねこういう受け取り方でいいのでしょうか。

それから私はSFについて詳しくないのですが、引っかかった部分があります。
あーちのような手のひらサイズの自立ロボットが作れる技術を持ちながら、介護用義手のパワーの制御に手間取っている描写は少し不自然に感じました。作中で実現していることと出来ていない事に、ちぐはぐな印象を受けてしまう。

通りすがりさんと同じく、ミツキが人間なのか何なのか、という疑問は私も抱いた。私の場合は「ミツキの制御AI」と言う言葉によって、ミツキはAIによって制御される何かだ、と受け取ってしまいました。しかしその後の描写や、4つのAI達が出てきたりして、ミツキ自身がAIやロボットなのではなく、「ミツキが制御あるいは使役するAI」と言いたかったんだなと理解した。ここはわかりづらいかなと感じました。またはこのあやふやな描写が伏線だったりするのだろうか。
長編の冒頭部分なので、読者が「おかしい」と思って引っかかった部分が実は何かの伏線だった、なんてことも有り得るので、何とも言えないなという部分もあるのですが。

それからアーチが啓介の頬を叩くシーンも気になる。あーちは手のひらサイズだから20センチ前後の大きさでしょう。それが机の上に載っていて、おそらく椅子に座っているであろう啓介の顔まで手が届くだろうか。届くとしたら啓介は前屈みか突っ伏すような姿勢で机の上に顔を近づける必要がある。そんな不自然な姿勢を取っている描写は無かったし、この場面の状況を思い浮かべづらかったです。

長編の冒頭部分なので、次々出てくるAIや人物に関しては、おそらく今後の話で何かあるんだろうなと思います。伏線ぽい部分も、ここまで読んだところでわからないのが当然なので、それらについては何とも言えない。

ミツキ
54.14.183.58.megaegg.ne.jp

塩瀬より様ご指摘ありがとうございました。
改稿により、ほぼ全て反映いたしました。

ミツキ
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花子様ご指摘ありがとうございました。
持ち上げる練習ではなく、人間の神経信号と、人格AIの物理外装を指ごとに精密同期させている、という場面を書きたかったのですが、わかりにくかったですね。改稿いたしました。
アーチは動き回れるので、てちてちと啓介の腕も自由に這い上がれるのですが、これも書いてないのでわからないですね。

美月が人間と分かりにくいですかね。これについては、そうは思えないのでますが、もう少しどうにかできないか考えてみます。

冒頭の時間系列がおかしい件は、追加の文言により解決いたしました。

ありがとうございました。

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