作家でごはん!鍛練場
しいな ここみ

彼女は太陽、私は月の裏側 〜 私はトモダチのゴーストライター

 彼女はみんなを照らし、みんなから笑顔を向けられる太陽。

 私は誰にも知られない、月の裏側だった。


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 みんなが賑やかな昼休み、私はひっそりと歌を歌う。机の上に組んだ腕に顔を突っ伏して、誰にも聞こえないように歌を歌う。

 昔から歌が好きだった。
 中学2年の時から作詞作曲も始めた。
 でも誰にも聴かせたことはなく、すべては私の中だけで完結していた。

 誰も知らないヒット曲たち。

 私の頭の中だけでは世界中の人が知っている。愛してくれて、口ずさんでくれている。

 私は歌う。世界的な大きなホールだ。大観衆を前にして。後ろでは私の歌に彩りを添えてくれるバンドメンバーたちが演奏しながら笑っている。現実には存在しない、私の中で産まれた架空の人たちだ。

 一曲が終わると大歓声と広い会場を埋め尽くすほどの拍手が起こる。涼しい笑顔を観衆に向け、私が笑顔で手を振って応えていた時、背中から声をかけられた。

「ねえ」

 誰の声だろう。バンドのメンバーに女の子なんていないけど……?

「ねえ、あなた」

 なんだろう、この声。私のリアルの声とは全然違う。綺麗で、かわいい声。どこか、別の世界から響いて来るような──

「ねえ、あなた。星野さんだっけ」

「ヒッ!?」
 小さく悲鳴を上げながら机に突っ伏していた顔を上げ、振り返った。

 現実の教室の音が戻ってきて、私を包んだ。つまらない音だった。私もつまらない地味女子に戻った。そこに咲く花のように、とても美しい音楽のような彼女の声が、私に向けられていた。

「あ、ごめんごめん。びっくりさせちゃった?」
 そう言って眩しく微笑む太陽がそこにいた。

 私になんか話しかけて来るはずのない人だ。
 クラス一のアイドル、彩姫律花《あやひめのりか》さんがそこにいて、まるで私を照らす太陽のような笑顔で、私の顔を見てくれていた。

「あれ?」
 机の上に私が広げていたノートに彼女が気づいた。

「……あっ!」
 私はそれを一瞬隠すふりだけして、すぐに手をどけた。

「それ、ポエム?」
 彩姫《あやひめ》さんがそれに触れてくれた。
「それとも歌詞?」

「そっ……、そっ……、その……」
 見せびらかすようにノートを開いたまま、私は答えた。
「エヘヘ……。み、見つかっちゃった? か、歌詞……だよ」

「ヘェ……! 歌詞なんだ?」
 彼女の綺麗で小さな顔が、地味なだけの私の顔に並び、ノートを興味深そうに見てくれる。
「じゃあ、さっき歌ってたのも自作の曲? ごめん、通りかかったら歌ってるの、聞こえちゃって……」

 聞こえちゃってたんだ……。顔は真っ赤になっていただろう。私は猿みたいに何度もうなずいた。見つかったのが恥ずかしく、見つけてもらえたのが嬉しかった。


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 視聴覚室に連れて行かれた。

 彩姫さんは扉をピシャリと閉めると鍵をかけ、振り向くなり、言った。

「ね、歌って聞かせてよ?」

「え……。ええ〜……?」

 私のノートは彼女の手にあった。
 彼女はパラパラとそれをめくると、一つのページでそれを止めた。

「これ、どんなの? 『黒い白鳥の哀しみ』ってタイトル……面白そう。ね、歌ってみて?」

 心臓が固まるかと思うぐらい緊張した。

 私の下手な歌なんかでいいのだろうか……。いやわかっていた。彩姫さんが聴きたいのは私の歌唱ではなく、私の書いた歌詞にどんなメロディーが乗るのかに過ぎないのだろう。

 私が伝えたいのも、ただそれだけだった。私の歌がうまいとか下手だとかはどうでもいい。ただ私の作った歌のかたちをただ伝えたい。

 ガチガチになりながら、張り切って歌いはじめた。机を単調に叩いてリズムを取りながら。

 机に突っ伏して歌うのと全然違った。聴いてくれる人がいる。たった一人とはいえ、クラス一の美少女が、ノートの歌詞を目で追いながら、私の作った作品を、真剣に聴いてくれている。歌い終わったらどんな反応が返ってくるだろうか。ドキドキした。視聴覚室の照明がやたらと白くて眩しくて、私はダラダラと汗をかいた。

『黒い白鳥の哀しみ』はタイトルを裏切ってメロディアス・ハードな曲調だ。歌詞は黒く産まれてしまった白鳥がみんなから「ありえない」と罵られ、存在を無視されるけど、最後には強く羽ばたく場景を歌っている。

 私が歌い終えると、彩姫(あやひめ)さんが拍手をしてくれた。

「すごい! カッコいい! メロディーも最高!」

 愛想笑いとお情けの拍手かと思ったら、熱烈な拍手だった。そして、あぁ……この綺麗な顔が、本心から笑うと、こんなふうに花開くんだなと思った。

「そ……そうかな?」
 私は照れ臭さと嬉しさに、思わず顔を隠した。

「歌詞が意味深でいいなって思ったんだ。思った通り最高!」

 拍手が鳴り止まない。


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 彼女が私の家に遊びに来たいと言った。

 ウーロン茶をを二つのコップに注いでいる私に、お母さんが聞いてきた。
「たーちゃん……。あの子、お友達? ものすっっごい!綺麗な子ねぇ……」

 友達を家に連れて来たことなどなかった私が、いきなり芸能人みたいな娘を連れて帰って来たので、びっくりしてるようだ。

 私は自慢する気マンマンな口調で、言った。

「うん、友達だよ!」

 鼻が高かった。ほんとうにピノキオみたいに伸びてたかもしれない。


 自分の部屋に戻ると、律花(のりか)ちゃんが熱心に私の歌詞ノートを読んでくれていた。彼女がいるだけで自分の部屋が高級になったように錯覚してしまう。

 ほんとうに、彼女は熱心に、私の作った曲に興味をもってくれているようだった。1ページ目から順々に、それらを歌って聴かせてくれと、私にねだった。

 私はどんな顔をしてただろう。たぶん、みっともないほどの笑顔だった。挙動不審者みたいな振り付けを加えながらアカペラで次々と歌う私を、彩姫さんは真剣に見つめ、私の曲を聴いてくれた。

「すごいよ! えーと……、星野さん! 作詞も作曲も才能ある!」
 彼女に褒められ、私は有頂天になった。
「ネットで発表とかしてないの?」
 そう聞かれ、私は正直に答えた。

「あたし……。歌ヘタだし、楽器も弾けないし……」
 何よりこんなブサイクな見た目だし──と言いかけてやめた。

「ボカロは? 打ち込みでやったらいいじゃん」

「そういうのもダメなんだよね……。もう、本当、コード理論とか意味わかんないし……。頭の中で音楽作れるだけで、外に出す才能が丸っきり……」

「そっか……」

「うん……」

 彩姫さんはウーロン茶を飲み、お菓子をつまむと、言い出した。
「あたしね、バンドやってるんだ」
 初耳だった。
「まだ練習ぐらいしか活動してないけど、クラスの男子三人と」

 そのバンドで彼女が何を担当しているのか、聞く前からわかった。華のある彼女には、これ以外似合わないと思った。

「ボーカル?」

「え。わかる?」
 わかられて当然という笑顔でうなずいた。
「曲によってはキーボードも弾くけどね」

「わあ……!」

 バンドを組むのは私にとって夢だった。自分の作った曲を奏でてくれるメンバーが欲しくてしかたがなかったのだが、私は表現できないし、引っ込み思案な性格で友達もなく、半ば諦めていた。

「あ。じゃ……、もしかして」
 ふと、思ったことを聞いてみた。
「彩姫さんも作詞作曲、するとか?」

「うん。するよ」
 照れ臭そうな彼女も可愛い。
「でも、才能ないんだよね」

「そ、そんなことないよ!」

 彩姫さんがプッと笑う。
「聴いてみてもないのに、そんなこと言うの?」

「あ、アハハハ……」

 恥ずかしくなると意味もなくすぐ笑う。自分のこういうとこ、いつもながら嫌だ。

 彩姫さんは照れたようにうつむくと、言った。
「あたし、作った曲がなんだか何かに似てしまうんだ。曲調もありきたりだし」

「そんなのあるあるだよ! 音楽なんて、限られた音の組み合わせなんだから、何かに似ちゃうことなんて!」

「あ……。星野さん」

「ん?」

「下の名前、教えて?」

「ああ……」
 知って貰えてなかったことにちょっとショックを受けながらも、私は教えた。
「竪琴。星野竪琴《ほしのたてごと》だよ。『たーちゃん』って呼んで」

「いい名前! これから『たーちゃん』って呼ぶね! あたしのことも『律花《のりか》ちゃん』って呼んでいいからね!」
 こうして私たちは、本当のお友達になったのだった。
「たーちゃんとお友達になれて、あたしラッキーだったな。すごいよ、たーちゃんは。作る曲も歌詞も、すごく独創的で。羨ましいな」

「そんな……。それほどでも……」

 人生最良の日だと思った。こんな素敵な友達が出来ただけでなく、自分の子供達ともいえる楽曲をその友達がトコトン褒めてくれる。

 その上にさらに嬉しいことを律花(のりか)ちゃんが言い出したのだった。

「ね、教えてよ。メロディー覚えて、歌ってみたい」

 1コーラス教えると、彼女は歌った。

 自分の曲が肉体と魂を得た、と感じた。律花(のりか)ちゃんの声は透き通るように綺麗で、ピッチがふらつく私なんかとは違って、とても安定していた。何より感情を込めたその歌唱は聴き惚れてしまうほどだった。

 強い曲は強く、優しい曲はとても優美に歌う。まるでプロのボーカリストだった。目の前に、自分の部屋に、歌姫がいる!


 興奮のあまりその夜はほとんど眠れなかった。


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 次の日から、学校の昼休み、私は一人ぼっちで歌わなくなった。ちゃんと頭を起こして、待っていた、彼女が話しかけて来るのを。

「星野さん」

 律香(のりか)ちゃんが後ろから話しかけて来てくれた! 喜び振り向くと、彼女はなんだか冷たい表情だった。

「ちょっと、また視聴覚室来てくれる?」

 そう言うと返事も待たずに教室を出て行く。

 廊下を歩き、前を行く彼女の背中を追いかけた。足が速いので追いかけるのが大変だった。


 ピシャリと扉を閉めると、ようやく律香(のりか)ちゃんが親しげに笑ってくれた。

「たーちゃん! いいもの聴かせてあげる」

 馴れ馴れしく近寄って来てくれる彼女に嬉しくなりながら見ていると、律香(のりか)ちゃんはスマホを取り出した。

「これ、はめて」

 そう言って私の耳にイヤフォンを突っ込んで来る。彼女の指が頬に耳に触れて来るのがくすぐったかった。

「行くよ?」

 律香(のりか)ちゃんがスマホを操作した。

 音楽が流れ出す。打ち込みのドラム、ベース、コンピューター音源に乗って、透明な声が軽やかに歌い始める。

「あっ!?」

 私は思わず声を上げた。

 私の曲だ! 私の曲に伴奏がついて、それに乗せて律香(のりか)ちゃんが歌ってくれている! 涙が出るかと思った。

「どう?」

 笑顔でそう聞く律香(のりか)ちゃんに、私は同じ言葉しか言えなかった。

「すごい! すごいすごい! ……すごい!」

「コード進行とかリズムとか、これでよかったかな?」

「すごい! ありがとう!」

「ふふ」
 私の反応に笑ってしまいながら、律香(のりか)ちゃんはさらに嬉しいことを言ってくれた。
「来月、ウチのバンドの初ライブがあるの。合同ライブだけどね。そこでこの曲、やろうと思うんだけど……いいかな?」

「本当に!?」
 あまりの嬉しさに彼女の手を握った。
「うそ! 私の曲をたくさんの人に聴かせてくれるの!?」

 彼女はただにっこりと笑って、うなずいた。



 教室に帰っても非日常的なまでの多幸感は続いていた。授業内容なんて全然耳に入って来なかった。さっき聴かせてもらったプロの録音みたいな自分の曲と、それを歌う律香(のりか)ちゃんの歌声ばかりが頭を駆け巡っていた。

「へー! 凄いじゃん!」

 男子の声がして、そっちのほうを見ると、さっき私がしていたイヤフォンを、佐々木くんが耳に入れている。その向かいでは律香(のりか)ちゃんがスマホを手に持っていた。

 私の曲を聴かせてくれてるんだ。そう思って、また頬が緩む。

「これ、彩姫(あやひめ)が作ったの?」
 佐々木くんが彼女に聞く。
「これ、お前の作詞作曲?」

「うん、そうだよ」
 律香(のりか)ちゃんが確かにそう言った。
「いい曲でしょ? 自信作なんだ……」

 はっとしたように、律香(のりか)ちゃんがあたしが見ているのに気づいて、黙った。





 私達が会話をするのはいつも視聴覚室だった。

「ごめぇ〜ん、たーちゃん」
 手を前で合わせて律香(のりか)ちゃんが謝って来る。
「つい、得意になって……。あんまりいい曲なもんだから。自分が作ったって、つい……言いたくなっちゃったの。ごめんね?」

「うん」
 謝られるほどのことじゃないと思って、私は微笑んだ。
「それぐらいのこと、いいよ。ところで……なんでいちいちここに呼び出すの? 教室で言ってくれたらいいのに」

「あたしとたーちゃんが友達になったってこと、誰にも知られたくないの」

「なんで?」

「うん。たぶんだけど、嫉妬されちゃうと思うから」

「嫉妬?」

「あたしと仲良くなりたい子、多いんだよね。じつは……」
 律香(のりか)ちゃんはベージュの混じった奇麗な髪を、軽やかに揺らして、言った。
「だからよほど強い子じゃないと、陰で嫌がらせをされたりするんだ。たーちゃんがそんな目に遭うかもしれないのが心配だなって、思って」

 なるほど、と思った。

 クラスの人気者の綾姫律香(あやひめのりか)ちゃんと特別に仲良くなりたがっている子は確かに多いだろう。私のことを心配してくれる優しさが嬉しかった。

「とりあえずライブの予定決まったら教えるね」
 キラキラ笑顔が眩しかった。

「うん! 楽しみ!」
 キラキラしているかどうかはわからなかったが、私も笑顔を返した。


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 それから1ヶ月も先じゃなかった。彼女のバンドの初ライブは私の知らない間に終わっていた。

 なんで知らせてくれなかったんだろう。忘れてたのかな? 私のことなんて……。そう思うとすごく悲しくなった。

 自分の曲が披露される瞬間が見たかった。作者として、ステージから客席の私をみんなに紹介されていたことだろう。それは気恥ずかしいかな、と思えたが、日陰人生を送って来た自分にもたまにはスポットライトが当たってもいいだろう。たまにはみんなから笑顔を向けられてもみたかった。

 それを知ったのはすぐ近くの席で永里(ながさと)くんが友達とその話をしているのが聞こえたからだった。

「俺、彩姫(あやひめ)をボーカルにしたバンドでベースやってんだ」
 永里(ながさと)くんがそう言ったので私は聞き耳を立てた。

「へー! 永里(ながさと)、お前、あの彩姫(あやひめ)様とバンドやってんの!? 羨ましい!」

「それで一昨日の日曜、物産ホールで初ライブやったんだけどな」

「おおー! どんな曲やんの?」

「大半はコピーなんだけど、オリジナル一曲だけやった」

「誰の作曲?」

「彩姫(あやひめ)。あいつ、急に作曲能力上がってさー。歌詞なんかも意味深でカッコよくて、すげーんだ」

「ルックスだけじゃないとか、すげーな!」


 胸がざわざわした。

 律香(のりか)ちゃんの姿を探すと、取り巻きの人達と楽しそうに話をしていた。

 私はあそこに混じるわけに行かない。彼女と友達になっていることがバレてはいけないのだ。嫉妬されて嫌がらせを受けることをせっかく心配してくれている律香(のりか)ちゃんの気持ちを無駄にすることになる。

 私は彼女が視聴覚室に誘ってくれるのを待つしかなかった。




「聞いちゃったんだ? 初ライブ、もう終わってたこと」

 視聴覚室の扉を閉めるなり、ばつが悪そうにそう言い出した律香(のりか)ちゃんに、私は微笑んだ。

「忘れちゃってたの? 私に教えること」

「そうなの。あたしってバカだから」
 軽そうな拳で自分の頭をコツンと叩く。

「見たかったな……」

 私がすねて見せると、彼女が後ろからハグをして来た。そして、耳元にキスするように、言った。

「ねぇ、また家に行っていい?」

「うっ……、うん。いいよ!」
 胸がドキドキして、声が上ずってしまった。

「いっぱい曲を教えてよ。あたし覚えるから。たーちゃんのことも、もっと知りたいな」


 嬉しかった。またプロの録音みたいに形にしてくれるのだろうか。それ以上に、私のことを知りたがってくれることが嬉しかった。


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「へー、洋楽ロック好きなの?」

 お菓子をつまみながら、律香(のりか)ちゃんが言った。

 私はコレクションのCDをいっぱい見せながら、自分のベッドに背中をもたれて、天国気分だった。大好きな友達の律香(のりか)ちゃんが私の好きなものを知ってくれる。なんて幸せなことだろう!

「でもあたし、洋楽は全然興味ないんだよねー」
 CDケースを次々と素早くカードをめくるように眺めながら、律香(のりか)ちゃんが言った。

「そうなの?」

「うん。聴くのは日本のばっかりだよ。だって歌詞の意味がわかんないとつまんないじゃん」

「わからないからこそ自由にイメージができるの。それに外国語の響きってとても……」

「あたし有名な曲でも洋楽はちっとも知らんからさー」

「あ。ごめん」
 私は自分を恥じた。
「興味ないものの話なんてつまんないよね?」

「あ。いーよ、いーよ。たーちゃんの影響受けて洋楽に目覚めてみようかな。何か聴かせて?」

 一番有名な、誰でも知っているであろう古い洋楽ロックの名曲をかけたが、彼女は知らなかった。本当に、その興味のなさは、びっくりするほどだった。

「やっぱ、あたしには無理だわ。なんで言葉がわからん歌を聴くのか理解できん」

 律香(のりか)ちゃんがそう言ったので、私は音楽を止めた。

 お菓子を一口食べ、お茶を流し込むと、彼女が言った。
「今度のライブの時は間違いなく呼ぶよ。ごめんね、今回は」

「いいってば。でも今度は絶対だよ?」

「うん。そこで話なんだけどさ……」

「ん?」

「今度はもっとオリジナル曲、たくさんやろうと思うんだ」

「私の曲を?」
 思わず顔がにやけてしまった。

「で……さ。相談なんだけど」
 お菓子を食べながら、何でもないことのように、律香(のりか)ちゃんが言った。
「オリジナル曲、あたしの作詞作曲ってことにさせてくれないかな」

「え?」
 意味がわからなかった。
「なんで?」

「え?」
 律香(のりか)ちゃんも意味がわからないように、目を見開いた。
「だって、あたしが編曲して、歌ってあげなかったら、誰にも知られずに終わってたんだよ? それって実質あたしが作ってるようなもんじゃん」

「そんな……」

「違う? たーちゃん、1人で世に知らしめることが出来てた? 楽器も出来ないのに? 歌だってはっきり言って下手だし、それに顔も……あ、ごめん」

 私は何も言い返せなかった。

「あたし、たーちゃんの才能を世に知らしめたいんだよ。あたしがたーちゃんを照らし出す太陽になってあげる」

「それなら……」

 律香(のりか)ちゃんの口調が少し怒っているみたいだったので、私は黙り込んだ。『それなら、私を照らし出してくれようというのなら、作者のことを隠す必要ないんじゃない?』なんて、優しい律香(のりか)ちゃんに対して、そんな偉そうなこと、言えなかった。

 私もバンドに入れてほしい。ピエロの格好して旗を振るビジュアル担当でも何でもやるから。そう思ったが、そんなことも言い出せなかった。

 彼女のバンドメンバーと仲良くなれる自信がない。私の友達は、律花(のりか)ちゃんただ一人だった。

「あたしはたーちゃんのこと思って言ってあげてるんだよ?」
 律花(のりか)ちゃんの口調が優しくなった。
「たーちゃんの作った曲を歌って、あたしが輝けば輝くほど、たーちゃんも嬉しくない? あのステージ上で輝いてる子は、自分が輝かせてんだ! って、思いなよ。一人じゃそんなの出来ないでしょ?」

 確かに言う通りだと思った。わたし一人では、ノートに歌詞を書いて、頭の中で歌うしか出来ないのだ。

「いわばたーちゃんは太陽を輝かせることの出来る星なんだよ? そんなの普通じゃないじゃん! 凄いよ! 宇宙で唯一、太陽を照らせる星なんだ! たーちゃん、凄い!」

「エヘヘ……」
 なんか、笑ってしまった。

「じゃ、いいよね? オリジナル曲はあたしが作ってるってことにするからね?」

 私はどうすることも出来ず、こくんとうなずいた。

「じゃ、いっぱい曲を教えて? 歌詞は写真に撮って、メロディーは歌ってくれたら録音するから」
 律花(のりか)ちゃんはとても嬉しそうにそう言うと、コップのウーロン茶を飲み干した。



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 次の日から学校で、私はまた机に突っ伏して歌うことを始めた。こうすると新しい曲が浮かんで来るのだ。それに、律花(のりか)ちゃんから話しかけられることがなくなってしまったので。

 それから何日かが過ぎた。私が顔を腕の中に隠して小さな声で歌っていると、背中を誰かに突(つつ)かれた。

 律花(のりか)ちゃんだった。

「星野さん……。はい、これあげる」

 そう言って何か券のようなものを机に置くと、サッと向こうへ行ってしまった。

 何だろう? とそれを取り、見ると、私の顔が笑った。

 チケットだった。3組のバンドの合同ライブで、律花(のりか)ちゃんの『彩姫(あやひめ)バンド』は一番最後のステージだ。

 私がそれを見つめて嬉しそうにしていると、後ろからまた話しかけられた。今度は男子の声だ。

「星野さん、それ、今、彩姫(あやひめ)に貰ってたよね?」

 振り返るとそこに立っていたのは律花(のりか)ちゃんのバンドのベーシスト、永里(ながさと)くんだった。長い前髪の間から覗く目が優しく、心配するように私を見ている。

「彩姫(あやひめ)と親しいの? 友達?」

 そう聞かれて、心臓の鼓動が早くなった。

「あ、違うよ? そんなんじゃない」

「じゃあなんで、チケット貰ってたの?」

「な、なんか知らないけど、来てほしいって……。お客さんたくさん呼びたいから、私なんかにも声かけてくれたんじゃないかな」

「ふーん……」
 何かを疑うように、じろじろ見て来る。
「あいつ、最近になって急に作曲能力上がったんだよね。不自然なほどに。それについて何か知らない?」

 私がムキになったように首を横に何度も振ると、永里(ながさと)くんは疑うような視線をさらに強くした。次には何を聞かれるのだろうと身構えていると、

「ま、いいけど」

 そう言い残して、あっちへ行ってくれた。


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 次の『彩姫(あやひめ)バンド』のライブ、私は客席にいた。

 簡素な白い照明の下、律花(のりか)ちゃんは輝いていた。マイクを持って動き回り、しっとりした曲ではキーボードを弾きながら、みんなの視線を吸い寄せていた。

「じゃ、次はオリジナル曲行くよー? 聴いてください。虐げられた人々の気持ちを考えて作った曲です。『黒い白鳥の哀しみ』」

 律花(のりか)ちゃんはステージ上でよく喋る。曲の頭には必ず曲紹介を加える。

「最近、曲作りがノリにノッてて、次々とオリジナル曲増えてます。評判もいいみたいで、『才能すごいね』って同級生に言われちゃったよー。きゃー嬉しいっ!」

 その天衣無縫の明るいお喋りがまた好評なようだった。客席から頻繁に好意100%の笑い声が上がる。

 私は客席にいて、ただそれを眺めていた。周りの人達は誰もがステージの上を見ていて、称賛の笑顔を律花(のりか)ちゃんに向けていた。

 私は誰にも見られない暗闇の中にいた。


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 最初のうち、律花(のりか)ちゃんが家に遊びに来る時は、私が先を歩き、少し後を彼女がついて来ていた。最近は私が一人で帰った後、時間を置いて彼女が呼鈴を押す。あくまでも私と友達だということを知られたくないようだ。履歴が残るのが嫌だと言って、LINEでのやりとりもあまりしない。彼女の部屋に私が遊びに行ったことは一度もない。

 その日は私の部屋に入って来るなり、律花(のりか)ちゃんは顔を輝かせ、重大な報告を口にした。

「聞いて聞いて、たーちゃん! こないだのライブでね、レコード会社のスカウトの人に声かけられちゃった!」

 さすがにびっくりして、私も顔を輝かせた。
「本当に!? すごい!」

「ソングライティングに関してもベタ褒めだったよ? 個性的ですごくいいって」

「あ、そうなんだ……」

「たーちゃん……」
 彼女が私を正面から抱き締めて来た。
「これもみんなたーちゃんのお陰だよ」

「違うよ。律花(のりか)ちゃんに魅力があるからだよ」

「あたしがプロデビューしても」
 律花(のりか)ちゃんは私を抱き締めたまま、言った。
「変わらずあたしに曲を提供してくれる?」

 私はしばらく答えなかった。

「ずっと友達だよね?」
 律花(のりか)ちゃんの腕の力が強くなった。
「あたし達、友達だよね? しかも、プロのシンガーソングライターの友達になれるんだよ?」

「うん、友達だもんね」
 私はようやく口を開くと、にっこり笑いながら、言った。
「デビューしたら、とんでもなく美しい曲を作ってプレゼントしたいな」


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 そしてその日がやって来ることになった。

 今度のライブ、レコード会社のスカウトの人が、上のほうの人を連れて見に来ることになったのだ。

 気に入られればデビューの話を持ちかけられることだろう、とのことだった。


「ちょっと星野。いいかな?」

 5限目が終わった時、永里(ながさと)くんが私に話しかけて来た。屋上に呼び出されたけど、告白でないのは雰囲気でわかった。


 屋上は風が強かった。

「何?」

 私がおそるおそる聞くと、永里(ながさと)くんは刑事のように問い詰めて来た。

「星野! お前、彩姫(あやひめ)のゴーストライターやってないか?」

 一瞬ドキリとしたが、私はうまくとぼけた。
「は? なんで? っていうかなんのこと?」

「あいつに曲作りの才能なんてなかったんだ。それが突然、凄い曲を作るようになった。しかも次々とだ。おかしいだろ!?」

「いや、なんでそれが私と関係があると?」

「あいつ、急にお前と親しくなりはじめた。しかもなぜかコソコソとだ。そりゃおかしいって思う。この前|尾《つ》けてみたら、あいつ、お前ん家に入って行ったぞ?」

「そ、それは……」
 私は言い訳を探して、見つからなかったので、本当のことを言うしかなかった。
「と、友達になったんだよ。でも、大っぴらに仲良くすると、私が他の子から焼き餅焼かれて、いじめられるかもって、律花(のりか)ちゃんが心配してくれて……」

「騙されてんだ、お前。いいように利用されてんだ、あいつに。気づけ」

 ムッとしたので、言い方がキツくなった。
「何よ? 何、友達の仲、裂こうとしてんの? あんたに何か関係ある?」

「不正とか許せねーんだよ。それに彩姫(あやひめ)のためにもなんないだろ? 何よりお前、それでいいのかよ?」

「意味わかんない。教室帰るよ?」

「じゃ、放課後、見せてやるよ」

「何を?」

「あいつの本性」




 永里(ながさと)くんは私に掃除用ロッカーの中に隠れていろと言った。私は言われる通り、素直にそこに身を隠していた。

 是非、それを見せてほしかったのかもしれない。


 教室に律花(のりか)ちゃんが、続けて永里(ながさと)くんが入って来た。

「何よ? 話って?」
 いつもと違う声で律花(のりか)ちゃんが言った。

 私の前ではいつもニコニコしていて、優しい律花(のりか)ちゃんの、機嫌の悪そうな声なんて、初めて聞いた。

 永里(ながさと)くんがいきなり切り出す。
「彩姫(あやひめ)。お前、星野さんにゴーストライターやらせてるだろ?」

 律花(のりか)ちゃんが怪獣みたいに吠えた。
「ハァ!? 永里(ながさと)、アンタ、何言い出してんの!? 星野さん? なんで星野さんが出て来るのよ!? あたしあんな人と友達じゃないわよ!」

「そのわりには親しそうじゃないか? 二人っきりで視聴覚室に籠もったりして。お前があいつの家に入って行くとこも見たぞ?」

「何!? 尾行してたの!? 嫌らしい!」

「急にいい曲作りはじめるからおかしいと思ったんだ。彼女に作らせてたんだよな? 不正はやめろ。みんなが許したとしても俺は許さん」

「証拠でもあるの!? あるなら出してみなさいよ!」

「お前、言ってたじゃん」
 永里(ながさと)くんが、私の初めて聞くことを言った。
「星野って、いっつも机に突っ伏して変な声出してる、キモいやつだって。そんなバカにしてたやつなんかの家に、なんで遊びになんか行くんだ?」

「かっ、可哀想だから、仲良くなってあげただけよ! 憐れみよ!」

「ほ〜ら、やっぱり仲良しなんじゃねーか。さっきはなぜ嘘ついた? 友達じゃないとか?」

「友達じゃないっ!」

「どっちだよ……」

「あの子の下の名前知ってる? 星野竪琴(ほしのたてごと)って言うんだよ? 笑っちゃうよなー」

「ひでー名前」
 感情の籠もらない声で永里(ながさと)くんが同意した。

「だろ!? な〜にが竪琴だよ。大正琴にも及ばねージミ顔しやがって。笑えるよな」

「笑う〜」
 律花(のりか)ちゃんを煽っているように聞こえた。

「だからあたしはアイツとは友達なんかじゃねーよ! ただあたし様って優しいからさ、お情けで家庭訪問してやってんだよ! 施しだよ、施し! そんだけだ! わかったか!?」

「ああ、わかった」
 永里(ながさと)くんの声ににんまりと笑いが籠もっていた。
「充分だ」




 律花(のりか)ちゃんが教室を出て、怒ったような足音が遠ざかると、永里(ながさと)くんがロッカーの戸を開けてくれた。

「聞いたよな? あれがアイツの本心だ。かばう必要なんかねぇ。お前、アイツのゴーストライター、やってるよな?」

 私は何も答えず、ロッカーから出ると、ロッカーの中に隠していた荷物を持ち、教室を出た。

 廊下を歩いた。

 玄関で靴を履き替えた。

 まっすぐ家に帰った。

 帰るとすぐに、ノートに歌詞を書きはじめた。

 律花(のりか)ちゃんにプレゼントするための、とんでもなく美しい曲の、その歌詞を。


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「新曲?」

「うん。出来たんだ。聞いてみて?」

 私は予めスマホに録音してあったその曲を、ノートに書いた歌詞を見せながら、律花(のりか)ちゃんに聴かせた。

 私の部屋の絨毯の上に敷いたクッションで腰を揺らして、律花(のりか)ちゃんは目を瞑ってその曲を聴いてくれた。『漂泊者の狂詩曲』とタイトルをつけた、その曲を。私はドキドキしながら彼女の言葉を待った。出て来るのは賞賛だろうか、それともあのロッカーの中で聞いたような汚い罵りだろうか。

「すごい!」
 曲のまだ途中で、彼女は感激したように笑い、堪えきれないように、言った。
「これ、名曲! すごいよ、たーちゃん!」

 私は嬉しかった。最高の笑顔になった。
「とんでもなく美しい曲をプレゼントしたいって言ったでしょ? プロデビューできるかもしれない律花(のりか)ちゃんのために心を込めて作ったの。気に入った?」

「うんうん! これ、今度のライブで歌いたい! レコード会社の人達の前でこれ、聴かせたい!」

「ピアノの弾き語り用に書いたんだよ」
 抱き締めて来る彼女を抱き締め返しながら、優しい声で提案した。
「だからさ、バンドメンバーの人達もびっくりさせようよ。一人で練習してさ、誰にも内緒にしといて、本番のステージで初披露するの」

「メンバーにも内緒に? なるほど、サプライズだね? それ、面白そう!」

「メンバーの人達も、いきなり完成品を聴かされて、あまりの美しさにビビると思うよ?」

「作った自分で言うなよ」
 苦笑すると、またうっとりとする。
「でも本当に夢みたいに綺麗な曲……。ありがとう! たーちゃん、ありがとう!」

「当たり前だよ」
 再びぎゅっと抱きついて来た律花(のりか)ちゃんを、私は抱き締め返した。
「友達でしょ」

「この曲、私のデビュー曲にするよ」
 夢見るように、律花(のりか)ちゃんは言った。
「印税入ったらもちろんたーちゃんにも分けてあげる。山分けだよ? 1割あげるからね」

 ふふっと笑うと、私は彼女の形のいい頭を撫でた。




 そしてその日がやって来た。




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 会場は県民ホールで500人収容の客席はぎっしりだった。

 みんなが律花(のりか)ちゃんを見に来ていた。それほどまでに彼女の評判は高まっていた。

 ルックスも良く、声もよく、歌もうまくてキーボードも弾ける。何より彼女の作る曲が非常に独創的で、歌詞もミステリアスで、それが最大の魅力だと言われていた。

 誰もが律花(のりか)ちゃんだけに注目していた。レコード会社の人達も、デビューするならバンドではなく、彼女をソロデビューさせたいという話らしかった。未来の大スターになるかもしれない彼女一人に、観客の注目が集まっていた。

「今日は私のライブを観に来てくれてありがとうございます」

 純真無垢をイメージしたような白い衣裳に身を包み、律花(のりか)ちゃんはそう言った。『私達のライブ』ではなく、『私のライブ』と。

「心を込めて歌いますので、どうぞごゆっくり、あるいはノリノリで楽しんでください」

 そう言ってベロを出し、愛嬌を振りまく彼女は輝くほどに可愛らしかった。

 私は暗い客席の、後ろのほうにいた。

 その日のセットリストはほとんどオリジナル曲で固めていた。私の作った曲の数々で。律花(のりか)ちゃんはそれがどういう気持ちで自分が作った曲なのかを、必ず曲の前に解説に入れた。

「ノリカちゃーん!」と客席からコールが上がると手を振って、愛想のいい笑顔で応えた。

 前のほうに頭の見えるレコード会社の人達を見ると、好感触のようで、しきりにうなずきながら興奮したように話し合っている。

 6曲目が終わった頃には会場はすっかり彼女の色に染められていた。

 拍手が終わると、バンドメンバーが袖に引っ込む。いよいよ私がプレゼントしたあの美しい曲を弾き語りするのだな、と気づいた。

 律花(のりか)ちゃんがぺこりと挨拶すると、語り出す。

「次の曲は出来たてホヤホヤの新曲で、じつはまだバンドメンバーにさえ披露していません。今日、みなさんの前で歌うこれが初披露になります」

 オオー! と観客席から期待の声が上がる。

「出来れば、もしデビューさせて頂けるのでしたら、この曲をデビュー曲にしたいなって思えるほどの自信作です」

 そう言って、レコード会社の人達のほうを媚びるように見た。

「一寸先の見えないこの現実の中で、産んでくれたママに感謝と謝罪を捧げながら、未来へ向かって新しい日々を切り拓いて行く、人生の漂泊者の心境をイメージして作りました」

 パチパチパチと、まだ律花(のりか)ちゃんがキーボードに向かってもいないのに、ところどころから拍手が上がった。

「では、聴いてください。『漂泊者の狂詩曲』」

 律花(のりか)ちゃんが椅子に座り、ピアノの音色でイントロを奏で始めた。

 会場はしんと静まり返り、イントロの美しい音色に耳を傾け、彼女が歌い始めるのを待つ。

 うっとりするような声で律花(のりか)ちゃんが歌い出す。

 会場の空気が変わった。

「あれ?」という声を、私の隣の人が出す。

 私の前の席にいた、友人同士らしき二人連れの男の人が、私の耳にはっきり聞こえる声で言い合った。

「これ……、なんか聴いたことあるけど……もしかして有名な洋楽じゃね?」

「日本語の歌詞つけてるだけで、まんまクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』だよ、これ! パクリどころかそのまんまじゃん!」

 会場のざわめきがだんだんと大きくなる。

「ママーーーー」と、彼女が高らかにサビを歌い始めた頃には、会場全体がざわざわとどよめいていた。レコード会社の人達も、何やら帰り支度を始めている。ステージ上の律花(のりか)ちゃんは気づいておらず、目を閉じて気持ちよさそうに歌い続けていた。照明を浴びて、真っ白な姿で、世界的に有名なフレディー・マーキュリーの作った美しいメロディーを、自分の作った曲だと言い張って、自信たっぷりに、歌い上げるその姿は、ピエロのようだった。

 どう? 私からのプレゼント。

 私の気持ち、伝わったかな?

 立ち上がって帰ろうとすると、後ろから肩を叩かれた。振り向くと永里(ながさと)くんがいた。

「帰んなよ。最後まで聴けよ。俺が一緒にいて守っててやるから」

「ありがとう」
 私はにっこり笑った。
「でもいいの? バンドのベーシストがステージにいなくて」

「どうせライブを続けるどころじゃなくなんよ」
 そう言って、スッキリしたように笑う。

「でも……よかった」
 私は彼に肩を支えられながら、ステージ上の律花(のりか)ちゃんに再び目を向けた。
「よかった、彼女が洋楽を全然知らなくて。完全に私が作ったオリジナル曲だと信じてるわ。曲が終わった後のみんなの反応が楽しみだよね」

「お前、俺と音楽やんねぇか?」
 永里(ながさと)くんが、そう言った。
「作詞作曲担当だけでいいからさ。お前の才能、俺に預けてみねぇ?」

「ボーカルは? 律花(のりか)ちゃん?」

「さあな」
 否定されるかと思ったら、曖昧な答えだった。
「ボカロでもいいけど、アイツが心を入れ替えるんなら、考えねーでもねぇ」

 二人で寄り添って、律花(のりか)ちゃんの美しい歌声に耳を傾けた。そうしながら、ぽつりと彼が言う。

「アイツも凄い才能だからな。殺すまではしたくねぇよ」

 永里(ながさと)くんの言葉に、なぜだか涙が止まらなくなって、私は清らかな気持ちで、心から律花(のりか)ちゃんのことを許していた。


  (了)

彼女は太陽、私は月の裏側 〜 私はトモダチのゴーストライター

執筆の狙い

作者 しいな ここみ
KD124209091173.au-net.ne.jp

構想を練り、何度も推敲した作品となります。

14,300文字──

正直な感想をよろしくお願いします。
途中で読むのを止められた場合は、どこで読むのを止めたかをお教えください。

コメント

飼い猫ちゃりりん
118-106-68-240.area1a.commufa.jp

しいな ここみ様。
率直な感想を言いますよ。素晴らしい作品です。

ただ、残念な点も……
途中で主人公の名前が変わっています。律花から律香。なんかの仕掛けかなぁって思いながら読んでました。

あと、もうちょい慎重にストーリーを。そのフレディさんのそのメロディーは、ちょっと有名すぎて。いくら洋楽を知らないと言っても、少なくともバンドボーカルをしている人が知らないって、無理がないですか。そのメロディーは、どっかのおばちゃん、おっさんでも知っているでしょ。

冒頭の文章に固さがあったけど、みみっちい指摘はやめておきます。不愉快でしょうから。

かなり細かいことですが、主人公のたーちゃんのキャラに若干の揺らぎが。
復讐を計画するあたり。今までの地味キャラが、急にクール少女。憎しみと友情に引き裂かれながら、計画を練ってしまう方が良くないですか?

この作品は、かなりストーリーが練られている。
登場人物の数もほどよく、読みやすい。ここみさんらしいノリの良い文章とストーリーで最後まで、グイグイ読者を引っ張る。読者は文章を読むのではなく読まされる。このサイトでは滅多にないこと。

特に最後の落ちが、しっとりとして良い。最後に悪女を完全成敗せず、許すことが意外に思いつかない粋なストーリー。

もし、贅沢を言わせてもらえば、最後の最後まで描き切るべきかと。最後はちょっと余韻で逃げた感もなくはない。
この作品はもっと良くできると思います。今でも十分良い作品ではありますが。

しいな ここみ
KD124209091173.au-net.ne.jp

>飼い猫ちゃりりんさま
お読みいただき、ありがとうございま(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾
>途中で主人公の名前が変わっています
Σ(º ロ º๑)
ฅ(º ロ º ฅ)
……
この作品、私史上二番目推敲したものなのですが……それでもこんなミスあるんですね……(-_-;)
ちなみにこれ、書いたのが確か5年前なので、AIを使ってのチェックとかはまだ思いつきもしない頃でした。よし、これからはAIさんに推敲してもらおう。
読み返してみると、たった5年の間に作品が古くなっていると感じました。今なら表現する手段がなくても音楽生成AIさんが代わりに表現してくれますからね。
仰る通り、使用した既存の楽曲はかなり有名なものですが、身近にマイケル・ジャクソンの『スリラー』をまっまく知らないひと、いましたよ。現実は小説よりも奇なり、でしょうか。
ちなみにこちやの作品、一度書き上げて『小説家になろう』に投稿したのをさらに改稿したのですが、『固い』とのご指摘を受けた冒頭部分を大幅に書き直しました。私は推敲・改稿すると文章が固くなるという弱点を感じているのですが、やはりそうだったか……m(_ _;)m

丁寧にお読みいただき、ありがとうございました。ご指摘いただいた点、考慮してみます。

トンボ
KD106179132252.ppp-bb.dion.ne.jp

読ませていただきました。
先ほどはコメントありがとうございました。
正直な感想を書こうと思います。

文章力とストーリーは悪くないと思います。
一応小説にはなっています。
ただ読んでいて小説を読むおもしろさはないです。
ただ作者が一方的に書いたものを読まされている感じでした。例えると興味のない話を延々と聞かされているような感じでした。
読んでいて作者は孤独なのだろうと思いました。小説というよりは妄想に近い気がします。
現時点では文学賞の一次選考にも及ばないレベルだと思います。
ただお若いようですし、これから伸びる可能性もあるので、小説は書き続けて欲しいです。年を経れば客観的に自分の書いた作品を見ることができるようになると思うので。
頑張ってください。

しいな ここみ
KD124209091173.au-net.ne.jp

>トンボさま
お読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m
音楽に興味のない方には特に冒頭は入りにくいですよね。ただ、自分の作品を、そして名声を盗られることについては誰でも興味があるものだと思っておりました。
ご推察の通り、私は孤独です。友達一人もおりませんし、一人が好きです。そこに何か問題でも?(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾←
おまけに軽度の聴覚障害者で精神疾患もちで、社会経験があまりに未熟なあまり、一般の方々が共感するものがわかりません。
それが私の武器だと思っております。

飼い猫ちゃりりん
sp1-75-224-209.msc.spmode.ne.jp

しいな ここみ様。返信は要りません。
いいっぱなしでもいけないので、冒頭の固いと思った文章について、少しだけコメント。

>「ヒッ!?」
 小さく悲鳴を上げながら机に突っ伏していた顔を上げ、振り返った。

悲鳴をあげながら顔をあげますかね。悲鳴をあげてから顔をあげませんか?。

(修正案)
>「ヒッ!」
 顔を上げて振り返った。

悲鳴であることも、机も、突っ伏しも、文脈から読み取れます。

これで最後にしますね。なんか素晴らしい作品にケチをつけているみたいで、こっちの気が引けます。

しいな ここみ
KD124209091173.au-net.ne.jp

>飼い猫ちゃりりんさま
なるほど。確かにそのほうがいいですね。
推敲すると無駄に文が長くなる癖、痛感いたしましたm(_ _)m

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

歌の歌詞の一節も書かれていないように思えました。
だからからか、歌として作中に入って来なくて、文字を追う感じなので、どうなのかなって気がしました。

作者に音楽の素養があるのか、詩の素養があるのか、そういうのなくても書けるっていう意味では素晴らしいんでしょうけど。
全体的に薄く感じました。

しいな ここみ
KD124209091049.au-net.ne.jp

>えんがわさま
お読みいただき、ありがとうございます(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ
歌詞は故意に記しておりません。私ならそんなの書いてあっても読み飛ばしますので。その代わりに『黒く産まれてしまった白鳥がみんなから「ありえない」と罵られ、存在を無視されるけど、最後には強く羽ばたく場景を歌っている』などと、どういう内容か簡単には記しております。
ちなみにですがたーちゃんのモデルは自分自身で、頭の中に名曲はあるのに表現手段がなくて悶々としていました。でも最近では音楽生成AIさんにうたって

しいな ここみ
KD124209091049.au-net.ne.jp

途中送信失礼(*>_<*)ノ

最近では音楽生成AIさんに歌ってもらっております。
https://suno.com/s/uuJlqbJndPwRWjVw
https://suno.com/s/1hzZiYBb0EohaJot
https://suno.com/s/Cq7g4Vjqf8TRz3zP
↑こんな感じ

abejunichi
104.28.83.160

しいなここみさま

御作読ませていただきました。
僕はとても面白かったですね。
sunoの歌も聴かせていただきました。
本文中に歌詞はなくて正解だと思います。
根暗な方が、歌詞が書け、メロディが作れるというのも、真実だと思いますし、
個人的にとても面白かったです。
ありがとうございました。

小次郎
133-106-72-117.mvno.rakuten.jp

うーん、こういう盗作系の話はありますよね。
で、盗作されてから、復讐みたいな展開が。
あるあるな話ではありますが、読んでいて。
律花に腹が立ってきます。
他人の作品を無許可で使うな!!!
と思って、そこがよかったです。
感情を煽るのが上手でした。
あえて、ケチつけるとしたら、比喩が使い古されてるかなー。
太陽のような
とか。
綺麗な文章で、感情移入も出来る。
ただ、展開が予定調和すぎるかも?
復讐ものじゃない方が、変則でよいかもしれないです。

飼い猫ちゃりりん
sp1-75-224-209.msc.spmode.ne.jp

しいな ここみ様。
ここみしゃん。ごめんなさい。やっぱ言いっぱなしは気持ち悪いので。飼い猫としては、結構、重要度高めにゃんです。
問題はここ。↓


>
「聞いたよな? あれがアイツの本心だ。かばう必要なんかねぇ。お前、アイツのゴーストライター、やってるよな?」

 私は何も答えず、ロッカーから出ると、ロッカーの中に隠していた荷物を持ち、教室を出た。

 廊下を歩いた。

 玄関で靴を履き替えた。

 まっすぐ家に帰った。

 帰るとすぐに、ノートに歌詞を書きはじめた。

 律花(のりか)ちゃんにプレゼントするための、とんでもなく美しい曲の、その歌詞を。
>


すぐにノートに書き始めちゃあかんと思う。
竪琴キャラは、
地味女子。繊細で鈍臭い。優柔不断。モジモジしてはっきりしない。考えすぎて決断できない。そんな自分に疲れている。
ではないですか?

(修正案)

 とぼとぼと、歩く帰り道。
 涙が溢れる。あたしは作品を、いや愛する子供を盗まれたんだ。母から子供を奪う。これは史上最悪の犯罪だ。律花、聞いているか! 地味女子だからって、何をしても許されると思うなあ。
 待て、まてまて、竪琴待てー! 律花ちゃんは、あたしの子供たちを愛してくれた。
 あの子たちは、律花ちゃんと楽しそうに遊んでいた。律花ちゃんは、あの子たちの恩人。律花ちゃんがいなければ、あたしの子供たちは、地味女子の根暗異世界で生きるしかなかったんだ。なのに復讐なんて、竪琴、悪人はあんたじゃない。
 でも、でもでも、律花ちゃんは、あたしから、愛する子供を奪ったんだ。復讐の何が悪いの。地味女子は搾取されるしかないなんて。神様、酷すぎるよお。

 帰ると自分の部屋にこもって泣き続けた。気づくと、とんでもなく美しい曲ができていた。この曲を律花ちゃんにプレゼントしよう。
 

しいな ここみ
KD106130059227.au-net.ne.jp

>abejunichiさま
ありがとうございます。
sunoでは約200曲作りました。
作曲も自分のものもあるし、作詞は99%自作です(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾
ミュージシャンになりたかったんだよm(_ _;)m

>小次郎さま
ありがとうございます(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ
じつは私『ざまぁ』が読むのも書くのも苦手なのですが、私流『ざまぁ』を書いてみようと思って書いた作品でもあります。

しいな ここみ
KD106130059227.au-net.ne.jp

>飼い猫ちゃりりんさま
あっ。そこはわざとです。
マルケス『百年の孤独』に登場した一族で一番あかるくてかわいい娘が父親に恋人を射殺されてそれから一生感情も言葉も失ったあのエピソードと、小説家になろうに投稿してらっしゃった若き天才純文学作家さんに『好きな女の子の死の報せを聞いて、何も悲しみの描写をされず、ただ家に帰る男の子』という表現方法がありまして、そういう『意外な描写』『動揺すべきところでまったく動揺を見せないことによって、かえってその内面を想像させる』みたいな表現方法を真似してみたつもりです。違和感を覚えてほしかったところです。それまでの経緯からしても、たーちゃんの中にここでどんなことが起こったかは、むしろあっさりと、何もないみたいに描いたほうがいいと思いました。

もちろん、飼い猫さまの書き方のほうが『ふつう』だとは思っております。

飼い猫ちゃりりん
sp1-75-250-4.msb.spmode.ne.jp

しいな ここみ様。そーいうことだったんですね。能ある猫は爪を隠すっていうやつですね。

ちょっと雑感。

猫はこの物語を単純な『復讐譚』とは読まなかったんです。

>『黒い白鳥の哀しみ』はタイトルを裏切ってメロディアス・ハードな曲調だ。歌詞は黒く産まれてしまった白鳥がみんなから「ありえない」と罵られ、存在を無視されるけど、最後には強く羽ばたく場景を歌っている。

竪琴が復讐を果たして、
「ざまあ。お前の未来は終わってら」
とやったら、竪琴は「黒い黒鳥」、普通に黒鳥やん。でも竪琴は律花を許す。それは竪琴自身が「黒い白鳥」だから。というメッセージ。

だから飼い猫は、律花と竪琴の60年後までを描く壮大な物語を思い描いていたんです。


ついに律花はデビュー60周年を迎え、引退を宣言する。
「病に侵され、もう声が出ないのです。ファンの皆様。長い間応援してくれてありがとうございました。」

雪の降るイブの日の夜。そこは大病院の個室。律花は竪琴の手を握り、か細い声で言う。
「たーちゃん。あなたのおかげで、幸せな人生でした。ありがとう」
 それが最期の言葉であった。
「さようなら。あたしの太陽」
 病院からの帰り道。竪琴は静かに雪の中に消える。まるで白い世界に帰るように。


つーようなエンディングで。

abejunichi
softbank036240200133.bbtec.net

しいなさま
sunoで200曲作られたんですか。そりゃすごい。
で、小説をAIにランキングさせるだけでなく、最近は曲や歌詞をAIにランキングさせることをはじめています。
https://musikrank.com
というものです。

僕も曲も作るので、自分用に作ったのですが、
意外と面白いサービスになったかな?と思っています。
よかったら、みてくださいね。

しいな ここみ
KD106130056224.au-net.ne.jp

>飼い猫ちゃりりんさま
私はこの方の真似をしただけですよ(*´ω`*)↓

https://ncode.syosetu.com/n5934hc/

これを書かれた時まだ十代だったように記憶してます。十代で、これ……。天才ですのでよろしかったら読むだけでもしてあげてください。なろうではわかるひとが少なく、人気のなさに心折れてしまったのか、しばらくお見かけしておりません(/_;)

私が『ざまぁ』が嫌いなのは、虐げられた者が何かの力を借りて復讐するというのは結局、同類同士の争いだからなんですよね。復讐する側が美化されてるけど、メンタルはどちらも同じ。しかも大抵劣等感に基づいた醜いマウント返し……。高橋源一郎さまだったかが水戸黄門を『巨悪をもって小悪を制す物語』と仰っていたのに私はとても共感します。もちろん中には池井戸潤さま『下町ロケット』みたいに個人的に面白かったものもありますが……

他人のメンタルはそうそう変わるものではなく、この後たぶんたーちゃんは律花ちゃんからさんざん罵られ、恨まれたことでしょう。でもなんだかんだあって和解し、ひとつの道を手を繋いで歩きだしたかもしれません。そして飼い猫さまが描かれたような未来に辿り着いたかもしれません。

そのへんは読者さまの想像にお任せしました(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ

けっして書くのがめんどくさかったわけでは……け、けっしてそんなことは……

ありません(๑•̀ㅂ•́;)و✧

しいな ここみ
KD106130056224.au-net.ne.jp

>abejunichiさま
す、凄いですね。AIを使って色々なサイトを作られてるのですね。

ご紹介、ありがとうございます。面白そう(๑•̀ㅂ•́)و✧

今は仕事中ですので、というかしばらくずっと仕事ですので、明後日ぐらいに時間ができたら利用してみます(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ

神に祈ったが髪がないので神はいない
59-130-52-82.area62b.commufa.jp

はえーすっごい...
文才すっごぉ

しいな ここみ
KD182249070054.au-net.ne.jp

>神に祈ったが髪がないので神はいないさま
神と髪は英語でいえば完全に別物ですよー。自信をもって!

夜の雨
sp1-73-27-63.nnk01.spmode.ne.jp

しいな ここみさん「彼女は太陽、私は月の裏側 〜 私はトモダチのゴーストライター」読みました。


地味な主人公こと、星野竪琴《ほしのたてごと》。学校でも机にうつむけになり口ずさんで小声で唄っていたが。

それを聞きつけてクラスのアイドルでもある、彩姫律花《あやひめのりか》が声を掛けてきた。

そして視聴覚室で自身が作詞作曲した『黒い白鳥の哀しみ』を歌うと律花は驚いて。

という冒頭から入り、主人公は自分のコンプレックスからアイドルの律花に彼女が『黒い白鳥の哀しみ』を自作したことで披露してもよいことに同意してしまうが。

結局は、律花が竪琴の曲作りの才能を利用しょうとして、それに乗せられてしまう過程を描いた作品で。
後半では、律花には曲作りの才能がないことを見抜いていた彼女のバンド仲間でありクラスの「永里(ながさと)」が竪琴に律花の正体を知らしめるのだった。

律花は有名な洋楽も知らないというか興味がなかったので、ラストは、そのあたりから竪琴が仕掛けるというオチになっていました。


御作は原稿用紙69枚で、無駄のない構成とキャラ作りで、しっかりと物語が出来上がっていました。

そのあたりの作りはよかったのですが、流れ(ストーリー)がストレートだったので、もっと、物語の背景部分を厚くすればどうかなと思いましたね。

たとえば「永里(ながさと)」の人物像をもっと厚くするとか。
御作は、星野竪琴《ほしのたてごと》と彩姫律花《あやひめのりか》が軸になっていて、ストーリーが一本道です。
永里の登場理由は不正が許せないという結構単純な背景になっています。

たとえば、この永里を彩姫律花の恋人にするとか。
そして永里と律花のエピソードもしっかりと創る。
または、永里を彩姫律花の恋人にする話を軸にして、律花が竪琴が作った歌を自分が作った歌として発表したことで。二人の関係がこじれる物語にして、竪琴が被害者になっているので、重要な役割を物語の中でしているとか。
こちらの場合は、永里が律花と恋人同士なので、恋愛ドラマになり、二人のキャラクターを掘り下げることができるので、青春ドラマにもなる。


そうすると御作は竪琴と律花のふたりだけのストレートな物語ではなくって、永里と律花のドラマを重ねることで、奥行きが出るのではないかと思います。

ほかには。
竪琴や律花、それに永里の背景部分。家庭生活の部分を掘り下げるとか。
これらキャラクターたちが、どうしてこういった個性の持ち主になっているのかとかを掘り下げる。

現状の御作は69枚なので、100枚前後ぐらいまでエピソードを盛り込むと物語に厚みが出るのではないかと思いますが。

こんなところですかね。


「下の名前、教えて?」

「ああ……」
 知って貰えてなかったことにちょっとショックを受けながらも、私は教えた。
「竪琴。星野竪琴《ほしのたてごと》だよ。『たーちゃん』って呼んで」

ちなみに、ふつうは、クラスの同級生のフルネームなどは、知らないと思いますが。


> 彼女が私の家に遊びに来たいと言った。

〇 彼女が私の家に遊びに行きたいと言った。


 >ウーロン茶をを二つのコップに注いでいる私に、お母さんが聞いてきた。
〇 ウーロン茶を二つのコップに注いでいる私に、お母さんが聞いてきた。


>「うん。聴くのは日本のばっかりだよ。だって歌詞の意味がわかんないとつまんないじゃん」

「わからないからこそ自由にイメージができるの。それに外国語の響きってとても……」

「あたし有名な曲でも洋楽はちっとも知らんからさー」

洋楽の歌詞はネット検索すればよい。
有名な曲なら動画で日本語に訳しているのもあるが。
検索すれば、また、は翻訳すればよい。

だいたい律花は竪琴の歌を最初に聞いたときに、自分で唄えなければ「ボーカロイド」を使えばよいとか、言っているし。
竪琴はそういうのは、苦手だとか、話していたが。
要するに、律花は竪琴を相手に「ボーカロイド」うんぬんの話をするのなら、洋楽の歌詞の日本語訳の検索ぐらいはするのが自然だと思う。

こんなところでしょうかね。


基本、御作はよくできていました。

しいな ここみ
KD182249022166.au-net.ne.jp

>夜の雨さま
お読みいただき、ありがとうございます(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾ぺこ

>原稿用紙69枚

おぉ……! 原稿用紙には久しく書いていないので、そう言われるとなんだか「書いたなぁ」って気になりますね。教えてくださり、ありがとうございます。

確かに二人だけに焦点を当てているので、奥行きはないですね。ご指摘いただき、ありがとうございます。ただ律花ちゃんの背景を描くには内向的なたーちゃんの一人称視点では限界がありますので、三人称視点のほうがよかったですかね?

たーちゃんがトモダチにフルネームを知ってもらえてなかったことをショックに思ったのは、彼女の『トモダチに対する期待』が強すぎたからなんです。このへんは自分の実体験を元にしております。


『彼女が私の家に遊びに行きたいと言った』なら括弧が要りますね。『彼女が私の家に「遊びに行きたい」と言った』──原文ではたーちゃん視点ですので『彼女が私の家に遊びに来たいと言った』が正しいと思います。

>ウーロン茶をを

あれだけ推敲したのに!(*>_<*)ノ
まだ誤字脱字があるとは! ……ありがとうございます。

洋楽をまったく知らない律花ちゃんにもじつは実在のモデルがおります。興味のないものにはトコトン興味をもたないものですよ。びっくりするぐらい(*´艸`*)
しかもそのひと、英語の曲が嫌いなのかと思いきや、カルチャー・クラブの『カーマは気まぐれ』だけは大好きだったので、正直意味がわからんです(*´ω`*)

また、こちらの作品、書いたのは約五年前となりますが、たったの五年で自分でも古さを感じております。ネットの進化、恐るべしです(*>_<*)ノ

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

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