纏わりつく不快
「あ〜」
額からしたたり落ちる汗をすこし黄ばんだシャツの襟で拭った。
一人で奇声を発してる生徒がいる。あれは2年A組の吉田祐介だ。何とかしてくれないか。
そんな近所からの奇異の目を勝手に妄想しながらカシャン。と自転車のカギを回す
今日から夏休み。に入る前に担任から進路指導室に呼び出された30分前のことを反芻する。
「なあ祐介。お前やりたい事とか、好きなことはないのか?まだ進路が決まってないのはクラスの中でお前だけだぞ」
在り来りな工夫のない質問をして子供を困らすな。それが先生のやりたい事なのですか?
「あとから変えたってもいいんだからさ。大雑把でも方向性だけでも教えてくれないか。進学する気はあるのか…とかさ」
このゴリラみたいな顔をした体躯のいい教師はなぜ数学の教師をやっているのか。体育の教師に興味はないのか。どうせならそういうことを教えてくれればいいのに。
世の中のことなんて、何も知らないボクに進路を決めろなんて気がはやい話だ。
引きつった出来損ないの笑顔を浮かべて、ハァ…とかヘェ…としか言わないボクに呆れたのか
「もし何か決めたら相談してくれな、またちゃんと聞くからさ、今日はこの辺で…」そそくさと手元の荷物をまとめながら担任はそう言う。今日のところは解放されたが次からはもっと準備してこようと思う。
羽化に失敗したセミの幼虫の様な笑顔じゃなく完璧に誤魔化せるようにしよう。
笑顔の練習を
ボクは将来について考えると期待と不安で鼓動が早くなる。やりたい事ならいっぱいあるが、やれる事は人並みより少ない。
顔上いっぱいに広がる青雲の海に半狂乱になって飛び込んだ。眼下100mの急勾配な下坂。自転車で一気に駆け下りれば、全身に纏わりつくような蒸し暑さを吹き飛ばす事ができる
住宅街を大きく越した遠くに見える夏の海。そこから届く磯の匂いが以外と新鮮でボクは好きだった。
執筆の狙い
文章鍛錬や発想力の強化を目的として、書かせて頂きました。主人公のダメさにクスッとでもして頂ければ幸いです。
皆様の様々な奇譚のないご意見をお待ちしています。