エミリのオムライスは一味違う
『喫茶はっぴーほーむ!!』。そこは、かなり繁盛していて、『メイド自ら料理を作る!』がコンセプトのメイドカフェだ。
そのカフェの看板メイドは、『エミリ』。料理が抜群に上手く、人気ナンバーワンだが、普通のメイドと異なる点が一つだけあるのだった。
喫茶はっぴーほーむ!!は今日も大忙し。メイドたちはせかせかと働いている。
「おかえりなさいませ、ご主人様!」
「おいしくなあれ、萌え萌えきゅん♡」
このように、多くのメイドが可愛く、従順に、客を喜ばせようとしている。
ただ、その中で一人だけ、異様なオーラを漂わせるメイドがいた。これこそ、エミリ。
エミリは『Fuck you!』と書かれたオムライスを、無表情で運んでいる。
「おまたせしました」
オムライスをドン!と乱暴にテーブルに置く。
客は笑顔でオムライスを受け取り、もじもじする。
「あの……。萌え萌えきゅん♡をいただけませんか……?」
「あぁ?」
エミリは客をギロリと睨む。
「そのようなサービスは行っていませんので」
エミリは無愛想に去っていった。
遠くからエミリを見ていた他のメイド達は、深くため息をつく。
「エミリってさ、あんなどぎつい性格なのによく人気だよね……」
「物好きなのかな?」
「それは店長もでしょう」
そう、エミリは店長に見入だされてメイドになったのだ。
店長は、このメイドカフェを経営する凄腕の女性でエミリの強火担。
カフェのバイト面接の日、エミリはものすごく舐めた態度だった。
「エミリでーす。ここを志望した理由は、えーと……時給高いから?」
普通ならば、即落とされるであろう。しかし、店長はエミリの顔をまじまじと見つめた。
だるそうな目だが、ぱっちり二重でまつげも長い。
唇は薄く、鼻筋が通っている。
身長は小さめなので、メイド服が映えるであろう。茶色いふわふわヘアーがよく似合っている。
あの性格は、万人受けはしないだろうが、熱狂的な客は現れるであろう。かなりの逸材ではないか。
あと、個人的に好み!すごい好み!性格も好み!ハッキリ言ってタイプ!!!
そう考えた店長は、エミリをここで働かせた。……まあ、エミリのポテンシャルを見抜いたというより、ものすごくタイプであるという店長の私情の方が強かったが。
だが、こうして実際熱狂的な客を多数獲得している。結果オーライというやつではないか。
ただ、エミリは万人受けしないきつい性格のため、他のメイド達との仲はあまりよろしくないようだ。
「まあ、あれを選ぶ客の気持ちが分からないよね」
メイドたちはうなずいた。
ある日、喫茶はっぴーほーむ!!は新しいメイドを雇うことになった。
「マユカって言います!今日からお世話になります!」
マユカ、というメイドは、小柄で黒髪ボブの、可愛らしいメイドだった。
「まあ、可愛い!」
エミリを除く他のメイドは、マユカと談笑をする。
エミリは見るからに興味なさそうだ。
その朝、エミリはマユカに一切話しかけることはなかった。
エミリは淡々と、昼になるまでいつも通り仕事をした。
昼休み、エミリは一人でバックヤードでお弁当を食べた。
店長はエミリに話しかける。
「エミリちゃん、マユカちゃんと一回でも話し」
「結構です」
エミリはズバッと店長の話をさえぎった。無愛想なのは店長にも同じ。
「あぁ……この態度が良い……」
エミリは店長を視界に入れず、黙々とお弁当を食べる。
そこに、マユカがやって来た。
「店長!エミリ様!お疲れさまです!」
「エミリ……様?」
エミリは怪訝そうな顔をする。
「お疲れ、マユカちゃん」
店長はふわふわしている。
エミリは再び下を向き、弁当を食べようとする。
「少し、お時間いただけますか!?」
「無理」
「私、エミリ様の大ファンなんです!」
無理って言ったのが、聞こえなかったのか?ていうか大ファンってなんだよ、とエミリは思った。
「私、エミリ様に憧れてここで働こうと面接を受けたんです!」
「そして、マユカちゃんは私と超絶気が合うため、働くのをOKしたのが私」
店長とマユカは手を取り合って、ルンルンと踊った。
「は……?」
エミリの顔はひきつる。
「はぁ……エミリ様、その態度最高です!」
「なんなんだよこの女!」
エミリは身に恐怖を覚えた。しかし、マユカにとってはその言葉もご褒美だ。
「今日からよろしくおねがいしますね!」
「イヤアアァァ!!」
エミリは恐怖を顔ににじませた。
その日、エミリは始めて早退をした。信者の相手は、店長だけでいっぱいいっぱいだったのに、もう一人追加されるなんて聞いていない。
「だから休んだのだけど……どうしてついていくの、あんた?」
「マユカですけど……でも、あんたって呼ばれるのもかなり良い!」
「やめて」
そう、エミリの後ろにはマユカがいる。エミリにピッタリとついてきている。
「先輩が早退するんですから。心配して見送りをするのは当たり前でしょう?」
「……原因は何だと思っているの」
エミリは頭を抱えた。早く帰りたいと願うばかりだ。
エミリはしばらくマユカとは目を合わせず、ただスタスタと歩いていた。
しばらく歩いて、ようやく家の前。
「エミリ様、また今度!」
エミリは何も言わず家に入った。
ふと気がつく。
「私……あのマユカとかいうやつに家を教えちゃったんじゃ?」
エミリの気分は、さらにズーンと重くなった。
翌日。エミリは覚悟を決めて出勤した。
「おはよう、エミリちゃん。気分は大丈夫?」
「はい」
冷たく返事をする。
「エーミーリー様っ!」
「げっ!」
「ありがとうございます!エミリ様に褒めてもらうために、私は働く様子、ガンガンアピールしていきますからね!」
「結構です」
エミリはスンとした態度を取った。
ただ、マユカの働きっぷりは意外にも悪くなかった。
仕事覚えは早く、料理の腕も中々。最初から、客を喜ばせる最低限のスキルは身についている。
日に日に、マユカのエミリ信者度と、仕事の腕は上がっていくのだった。
マユカが働き始めてからしばらくたった日の朝、エミリのメイド服に赤いペンキがぶちまけられていた。
「はぁ?」
すると、エミリとマユカ以外のメイドはくすくすと笑う。
「正直、エミリってむかつくよね」
エミリの眉がぴくりと少しだけ動いた。
「わかるー」
「あれの何が良いの?」
「店長に気に入られてるだけでしょ」
「そーだねー」
メイドたちの嘲笑は、すべてエミリに向けられていた。
エミリはズボンの裾をぎゅっと掴む。
「おはよーございまーす!」
場違いなくらい明るい声が店内に響く。マユカの声だ。
その声を聞き、メイド達は、にやりと笑う。
「あ、マユカじゃーん」
「はい!何か用ですか?」
「いやー、エミリって……大してすごくないくせに傲慢だよね?」
「え?」
メイド達はくすくすと笑う。
「傲慢で。愛想のかけらもないし。店長に気に入られてなかったらどこでも働けないでしょ」
「客を喜ばせるスキルがないよね」
「メイド失格だっつーの」
マユカは、わなわなと震えている。
「マユカも、エミリは傲慢で、高飛車で、性格の悪いやつだと思うよね?」
「っつ……!黙れぇぇぇ!!!!」
マユカは本気で怒っていた。体の底からふつふつと怒りがこみ上げてくる。
「エミリ様はそういうキャラなの!キャラに文句言ってんじゃねぇよ!!!」
「あ……え……」
メイド達はたじろいでいる。
「あのな!エミリ様は店長に気に入られたとかそれ以前に、この店の看板なんだよ!一番人気なんだよ!」
「その通り」
いつの間に、店長も参戦していた。
「私がエミリちゃんを一番気に入ってるのも、ちゃんと結果を出せるメイドだからなの!……まあそれ以外の理由もあるけど……。それは置いておいて!エミリちゃんは客をちゃんと喜ばせれるメイドなの!」
「その通り!」
マユカは一息で叫ぶ。
「エミリ様の実力は本物!そもそも料理のレベルが違うんだよ!エミリ様のオムライスは、一味違うんだよ!」
「……!」
エミリは、はっとした。
「ケチャップの罵詈雑言やきつい態度は、もはや高級スパイス!」
「おっしゃる通り!」
「お…おお…」
メイド達は二人の剣幕に押されている。
二人は冷たい笑みを浮かべる。
「「さあ、謝って?」」
「「「「すみませんでした!!」」」」
「「謝る相手が違うでしょ!!」」
二人は今日一番の大声を出した。
メイド達はエミリの前に立つ。
「「「「すみませんでした」」」」
メイド達はそそくさと走って逃げていった。
「ほんっと、失礼な輩でしたね」
「全員再教育しないと」
二人は悪い笑みを浮かべる。
マユカはエミリの前に立った。優しい声で話しかける。
「エミリ様、あんな失礼な人たちには一泡吹かせておきました。これからはもう安心ですよ?」
「……私のオムライスは、一味違うの?」
マユカは大きくうなずく。
「はい!他のどんな料理よりも、ずっごく、すっごく美味しいです!エミリ様は私の推しです!」
「そう……」
エミリはそっぽを向く。顔が赤いのが見られたくないからだ。
「ありがとう」
ボソっと小さくつぶやいただけだったが、マユカはその言葉を聞き逃さなかった。
「どういたしまして!照れてるの可愛い!お顔見せて!」
「え!私も見たい!」
黙って二人の会話を聞いたいた店長も血眼になってエミリの顔を見ようとしている。
「無理!やっぱあんたらダメだわ!」
「照れながら口答え可愛い!」
「いやあああああああ!!!」
まあ、少しは分かり合え、仲良くなったのではないだろうか。
マユカと店長のオタクっぷりに、拍車はかかってしまったが。
執筆の狙い
なんかスマホのメモから中三の時ノリで書いた作品が出てきて……。ノリで投稿しました☆