夏、だれ
夏の日の夕方。日課の時間だ。玄関にはサンダルと運動靴がある。足先とかかとが出ているこのサンダルでは歩きにくい。ちゃんと運動靴を選んで散歩に出かけなくちゃ。靴ひもをきゅっと結び直して、ドアを開け放った。
散歩にこの時間を選んでいるのにはちゃんと理由がある。私は早起きが苦手だから朝の散歩はむずかしい。日中は暑いので論外。夜は涼しいけれど、街灯のあまりないこの田舎ではライトを持たないといけないので不便だ。虫が苦手な私は田舎が好きではなかった。けれど、人も車も少ない道は歩きやすかった。そして前方に聳え立つ山々の威圧感が力強くて好きだった。
ふと、誰かいることに気づいた。私と同じくらいの年齢の男性、だろうか。散歩している人は珍しくないけれど、こんな田舎に私と同じくらいの年齢の人がいたなんて知らなかった。何かをじっと見ている?と、彼は突然私の方に向かって歩き出した。目が合った気がして気まずくなった。すれ違うときの会釈がぎこちなくなってしまった。夕景に佇む彼の姿は、映画のワンシーンのように、私の瞼に焼き付いた。
「ねえねえ、お母さん。このあたりに私と同じくらいの年の人っていたっけ?」
「そりゃあいるでしょう。散歩する人は少ないでしょうけどね」
けれど、一年以上続けてきた日課の散歩で、あんな人を見掛けたのは初めてだ。母に喰い下がって、
「だけど私、一年以上散歩して初めてあんな人、見掛けたよ」
「さあ、でもあんたの同級生なんじゃない?」
母はこの話は終わり、と言わんばかりに冷蔵庫から取り出していた野菜を切り始めた。
同級生、か。すれ違うときに一瞬だけ顔を盗み見たけど、違う。でも、以前から知っているような気もする。誰なんだろう。明日の散歩で遭ったら聞いてみよう。
執筆の狙い
暇つぶしに書いてみました!
表現したいものは、日常の動作や風景です!
続きは書けないかもしれないので、とりあえず投稿してみました!