小人先生。
ぼくは小人。
いつも、ぼくのお家のやぬしとせいかつしている。
最近、やぬしが帰ってくるのが遅い。
「いってきます」
っていって朝、勢い良く扉を開けて走っていく。
やぬしは、「カイシャ」というところにいって、ぼくたち小人みたいにお仕事をしているらしい。
ニンゲンの世界にも、ぼくたちみたいに大きな木があって、そこから美味しいご飯を取ってきているみたい。
やぬしが帰ってくるのはお外がまっくらになって、なんにも見えなくなった時。
やぬしは青白いお化粧をして、お家に帰ってくる。
そして、鋭い綺麗なぴかぴかの尖ったもので、腕をなぞっている。
腕をやぬしがなぞると、赤色の新しいお化粧品が出てくるんだ。
やぬしって、ほんとにすごい!
でも、ぼくは、やぬしに赤いお化粧は似合わないし、青白いお化粧も似合わないよって伝えたんだ。
そしたら、やぬしは下を向いちゃった。
なにか置いてあったのかな、と思ってやぬしの視線の先をじーっとみてみるけど、地面しかない。
そのやぬしの顔が、ぼくたちが転んじゃった時みたいに苦しそう。
「やぬし、いたいの?」
「うん、ちょっと痛い、かも」
「どこがいたいかおしえて!ぼくが治してあげる!」
「心、が痛いの、」
「ココロ?」
ぼくはココロっていう場所がどこかわかんない。
それに、ココロの直し方は誰からも聞いたことがない。
「じゃあ、いたいのいたいの、とんでけー!」
そう力いっぱいやぬしのためにぐーって体を縮めて叫んでみたの。
そしたらね、
「ありがと、元気でたよ、もう心、痛くない」
「ほんと、!?ぼく、すごいでしょ!」
えっへんと胸を張ってみせる。
やぬしがくすっと声を漏らした。
そのとき、やぬしの四角い光る板が喋りだしたの。
小鳥がなく声よりも高くて、大きい音。
「ごめん、ちょっとまっててね、」
『おい!制作途中のプレゼン資料はどうなってんだ!!はやく完成させろといっただろ!!こんなこともできないのか、この無能が!いいか、プレゼン資料は2日以内に必ず仕上げろ。いいな?』
「はい、、申し訳ございません、。取引先への資料は完成したので、」
『うっせぇ!!さっさとプレゼン資料は完成させろ!!社長との大切な直接の会議だぞ!お前が完成させなかったら、俺まで恥をかくんだ!!!!』
「申し訳ございません、」
『働けねぇなら、とっととやめろや!!』
ぴぃっと甲高い音が聞こえてきて、四角い板は黙っちゃった。
やぬしはしばらくじーっと四角い板を見つめて、ぎゅっと下を向いていた。
やぬしは、お耳、痛くないのかな?
ぼくは、音がおっきくて痛くなっちゃったけど。
やぬしは、四角い板にもっと喋ってほしかったのかな?
でも、なんでかわからないけど、ぼくは四角い板の声を聞くと、きゅーっと潰されそうになった。
「やぬし?」
「…うん、ごめん、ちょっと考え事してた、」
やぬしはぼくが呼ぶと、顔をちょこっと上げて、笑顔になった。
でも口の端がぷるぷるってしてる。
「ごめんね、音、大きかったよね、」
「ちょっとお耳が痛いけど、ぜんぜんだいじょーぶ!」
やぬしはぼくの方を向いて、さっきよりもゆるっとした笑顔になった。
そのあと、やぬしは床に座り込んで、ぼくのほうをきちんとみてくれた。
それだけで、ぼくとやぬしの世界が近づいたような気がした。
「やぬしー、さっきのココロってさ!」
「うん、」
「さっきぼくがいたいのいたいのとんでけー!したら元気になったんでしょ?」
「うん、そうだね、」
それを聞いて、ぼくは安心して、自分の胸をぽんっと叩いた。
「じゃあね、ココロはひとりだとわかんないよーってなっちゃうんだとおもう!」
「んー、つまり、迷子ってこと、?」
「そーゆーこと!いまのやぬしはココロが迷子なの、だから、ぼくがいーっぱい話す!」
「ありがと、」
「多分、ココロっていうのは、誰かに見てもらわないと帰ってこれないんだとおもう!」
やぬしは目をぱちっぱちって大きくまばたきをして、目をぎゅーっと閉じたあと、ぼくのほうを向いて言った。
「小人先生だね、」
「えっへん」
ふんすっと胸を張るぼくをゆっくりとぼく専用のソファに移してくれる。
その夜、やぬしは四角い板をまた別の小さい板とくっつけて板を伏せた。
それから、明かりをちょっと暗くした。
あったかいココアっていう美味しい飲み物をつくって、一緒にすする。
じんわり、と胸の奥があったかくほぐれていく。
ぼくは湯気の中で、泡をいっこ、にこ、と数えていた。
「明日もカイシャいくの?」
「うん、でもね、」
「うんー」
「今日はゆっくり休もうと思ったんだ、小人先生のおかげでね」
それを聞いた時、ぼくはもう一回胸を張りたくなったけど、やぬしの笑顔を崩したくないからやめた。
やぬしは、いつも「がんばる」「がんばらなきゃ」って精一杯。
でも、もっと軽くなきゃ痛いと思うんだ。
やぬしはおふとんに入って、ぼくを手のひらの上に乗せて、いった。
「いるだけでいいからね。」
「まかせて!」
ぼくはきゅーっと丸くなって、やぬしのそばにいた。
ココロっていうものがどこにあるかはわからないけど、迷子にならないように、やぬしのココロを見守ろうと思った。
外は寒くて真っ暗だけど、中はあったかい夜があった。
執筆の狙い
小人の視点から、人間の心の疲れを描いた作品です。
無垢な語りと重たい現実の対比がどこまで成立しているかを意識して書いています。
語り口の一貫性、感情描写の精度、情報の出し方や構成について、技術面での添削・ご指摘をいただけると嬉しいです。
学生のため至らない点も多いかと思いますが、率直なご意見をお願いします。