好きなゲームで遊んでただけなのになんか閉じ込められました!?
登場人物紹介
主人公:夏木翔子(なつき しょうこ)
中学1年生、明るく好奇心旺盛で負けず嫌い。VRゲームが大好きで、ゲーム内の知識が豊富。現実世界に戻るために奮闘する強い意志を持つ。
謎のガイドキャラクター:アルト
ゲーム内で突然現れた謎の少年型NPC。何故か翔子にだけ話しかけ、脱出のヒントを与える。本当の正体や目的は謎に包まれている。
仲間プレイヤー:ミカ
同じくログアウト不可になったプレイヤーの一人。冷静沈着で戦術に長けているが、過去に秘密がある。
現実世界のサポーター:夏木優太
現実世界で翔子の異変に気づき、調査を始める。技術に詳しく、ゲーム運営やシステムの裏を探る役割。
「う〜ん、あーあ、今日の授業も退屈ーー、ねぇねぇ、帰ったらまたあのゲームやろうよ!」
いかにも退屈そうに大きな伸びをしながら、翔子は友達のミカに話しかけた。
「いいわね、あのゲーム面白いもの」
「やったぁ、決まり決まり! 宿題が終わるの5時ぐらいだからその時間にゲームで集合!」
「ふふ、いいわよ。5時ね」
ミカは、相変わらずだな、苦笑する。
翔子はゲームが下手っぴなくせに負けず嫌いで大好きで、ミカはたまたま、そのゲームプレイを見たことがあった。知識はあるのに活用できていないその様子を見て、放っておけなくなったのだ。リアルで同じ学校だったのが幸いし、友達同士になったのだった。
「ん〜勉強終わった〜、さてゲームゲームっと、」
翔子はガサガサとVRゲームに必須なゴーグルを探す。結構ダダ草で、すぐに見えなくなってしまうが、ゲームの置き場所だけは忘れない。
「と、あったあった。スイッチお〜ん」
『ポコンッ』
『ログアウトがゲーム運営の都合上禁止になりました』
それは突然、
「は……? 何よ、どういうこと!?」
始まったのだった──。
第一章 不可能ゲーの始まり。
「は!? 何よ、どうなって──!!!」
しかし無常にも画面が変わって、いつもの広場が出てくる。
「そ、そうだ、ミカは!?」
「私はここよ、なんだかおかしなことになったわね、」
「ミカ! 良かった来てくれてたんだ! っていうかこれどうなってんの!? 私のゲーム史上こんなのなかったんだけど!?」
「落ち着きなさいよ、混乱してるのはわかったけど、」
「でも……! ……わかった……」
翔子は、混乱した頭でまだ情報を整理できてない。ここは、情報を整理するのが得意なミカに任せるのが得策だろう。
「やぁ、お困りのようだね」
すると、突然男の子が話しかけてきた。
「あ、あなたは……?」
ミカは用心深く尋ねる。年は、自分たちより2,3個下だろうか?
「翔子、君はどうして閉じ込められてしまったか知りたいんじゃないかい?」
「ちょっと、私のことはシカト? どういうつもりなのか知らないけどッ、翔子に手出しなんかさせないから!」
しかし、少年は聞こえていないかのように──
いや、事実聞こえていなかった。
翔子も用心深く尋ねる。
「あなたは一体? なんでミカの話に反応しないの?」
すると少年は、こんな事を言いだした。
「僕は、君のことしか見えない。君の声しか聞こえない。そういうふうに作られたんだ。僕はアルト。NPCだけど、HPの概念はないよ、きみにヒントをあげる。でも、答えは教えてあげられない。そういうふうに作られているから」
どうやらこの少年は色々訳アリらしい。翔子はすぐに信じたが、ミカはまだ警戒を解いていない。
「ヒントって何よ、なんのこと?」
ミカは鋭く問いかける。──無反応。
翔子が話しかける──反応。
「ヒントって言うのは、この異常を解決してもらうためのヒントだよ」
どうやら、先程のログアウト不可については運営の仕業、というだけではないようだ。しかし、ミカはまだ信じない。
「だったら、なんかヒントを出しなさいよ」
再び鋭く問いかける。──無反応。
翔子は優しく問いかける。──反応。
「そうだね、まずは、なにか魔物を倒してもらおうかな?」
「え、魔物?? このゲームパズルゲームだよ???」
「そうだね、パズルゲームだ。魔物が出るようになっちゃったんだよ」
第二章 ゲーム開始(ゲームセット)
──パズル・フロンティア。それは、ブロック崩し系の未開の地、開拓を目標とした、パズルゲームである──
「魔物て、本当にいるとして、どうやって戦うのよ?」
ミカは用心深く問う。だが、アルトにその声は届かない。
「魔物と戦うにはどうすればいいの?」
翔子が問いかける。アルトはようやく反応した。
「ごめんね、答えは教えられないんだ。でもヒントなら教えられるよ。これは何をやるゲームだった?」
「え〜っと、あっそうだ、ブロック崩しで開拓するんだったよね! そっかそれを利用して戦うんだね! それにしても、本当に大変だね、不便じゃない?」
翔子は心配そうにあるとの顔を覗き込む。アルトは軽く笑ってこう言った。
「あははっ、僕はそういうふうに作られているんだ、不便でもなんでもないよ。答えを教えられないのは残念だけどね」
「ふ〜ん、まぁ、いいや、魔物ってどこにいるのってあぁ、答えは言えないんだっけ……じゃぁ、魔物のいる場所のヒント頂戴!」
次から次へと答えを聞こうとする翔子に対して、アルトは少し苦笑する。
「そうだなぁ……、まぁ、とりあえず開拓してみたらわかるかもね?」
そういったあとに、アルトの姿は掻き消えた。
「あれ!? アルト!? ……消えちゃったよ……ま、いっか! ミカ、あの子のアドバイス通りに開拓してみよ!」
ミカもその様子を見てため息を付く。アルトがどこかへ行った理由がわかるからだ。あの様子では矢継ぎ早に質問されてしまうだろう。
「はぁ……、まぁいいわよ。流石に閉じ込められたまんまじゃ学校に行けないし」
渋々ついていくのは、翔子が危なっかしいからであった……。
一方で。
「翔子〜? 飯食わねぇのか〜??」
返事がない。あいつまだゲームしてるのか? 普段ならとっくに下に降りてきてるはずなんだけどな……? 夏木優太は妹の部屋へ向かう。
「翔子〜? 飯だぞ〜? ……おい、聞いてんのか?」
優太は妹の肩を揺さぶる。……反応がない。
「おい、翔子! 聞こえるか!?? 翔子!!」
様子がおかしい。優太はまっさきに両親にこの事を伝えにいった。
第三章 現実世界への影響
「と、っ父さん! 翔子の様子が変なんだ!」
優太の焦った様子に驚く両親。
「どうしたんだ? そんなに焦って……」
「いつもなら声かけたらすぐにゲーム辞めるのに、反応すらしないんだ!」
二人は困惑する。『パズル・フロンティア』は意識をゲーム内に没入させるゲームではあるが、外の音声は届くようになっている。それで反応しないとなると……。
「ゲームの中で眠ってるんじゃないか?」
「んなわけ無いだろ! パズルゲームだぞ!!」
呑気な両親の様子に腹を立てる優太、その後も両親は危機感を覚えず翔子抜きでの夕ご飯となった。
(こんなのぜってぇありえねぇ……。待ってろよ翔子、必ず兄ちゃんが助けてやるから……!)
それから、学校に行く時間になっても翔子はゲームから目覚めなかった。いくらなんでもこれは異常と気づくだろうとと両親を説得に行くと、
「あら、翔子、昨日夜ご飯食べにこなかったけどお腹すいてない? お弁当多めにしておいたからね」
「え……?」
なぜか、母親が何もいない空間に向かって、何かを渡す仕草をしていた。
「え、何してるの……?」
「あら、優太。何してるのって、翔子に弁当渡してるんでしょ?」
「何言ってるんだよ? 翔子ならまだ部屋でゲームしてて、俺それを伝えに来たんだぞ……? 大体、そこに翔子はいないし、母さん何も持ってないよ??」
しかし、母親は無反応。何ならこちらの反応を待っている。
「優太? どうかした? 学校遅刻するわよ?」
「あ、あぁ、うん。いってくる……」
「何なんだよ、この世界で何が起きてんだよ……」
優太は道すがら翔子を救出するための策を練り続けるのだった。
『ゲーム世界』
「……朝に、なっちゃったね……」
「そうね……、私たち、一生ここから出られないのかしら……」
翔子たちはというと、いくら歩いても魔物と遭遇できず、お腹が空いて道で倒れ込んでいた。
ザザザ、ザーザーザー、ザザザ
ゲーム内の音楽に、突然ノイズが走る。
「え、何!?」
その言葉をきっかけに、世界の色彩が反転した。
「え……!? なに、これ……」
すると突如目の前に化け物が湧き始めた。
──そう、これが、
「魔物……」
「じぃぃぃ……が、が、が、ぎぎぎぃぃぎぎぃぎぎ」
「ぅ、耳障りな鳴き声ね……」
翔子もそれに賛同する。
「うん、耳が壊れそう……」
翔子は耳を抑えつつ、魔物を退治するための策を考え始めた。
これまでの記憶をありったけ引き出す。
ここまでの道なり、角、崖、それらから効率的にブロック崩しができる地形を探し出す。
「あった! こっち、ついてきて!」
「っ! わかったわ!!」
走りながら翔子は瞑想する、魔物の追ってくるスピードに合わせ、少しづつスピードを落とす。
「ここで右に曲がる……!!!」
曲がった先は、
「行き止まりじゃない! 何考えてるのよ!」
ミカは焦る、もう魔物はすぐ前だ。
「大丈夫、いけぇ!」
その時、ぽんっという可愛らしい音とともに雪崩が発生した。雪崩に巻き込まれた魔物は機械のノイズのような音で消滅していった。
「ふぅっ、久しぶりに知識を活かせたよ! スッキリ〜」
「ねぇ、久しぶりにって、もしかして今までやったことなかったの!? あなた殺す気!?」
「え〜殺すとかひどいな〜。ミカだってテクニックはあるのに知識だけないじゃん、お互い様でしょ〜?」
「ゥ゙、それを言われると……」
そんなこんなで、空腹を忘れて会話を楽しんでいると、どこかへ消えたアルトが姿を表した。
「やぁ、無事に魔物を倒せたんだね。ほらこれ、お腹すいてるでしょ? 友だちがいるって言ってたし、2人分用意しといた」
「あ、アルト! ありがと〜ちょうどおなかすいてたとこなんだ〜……って、ここゲームの世界だよね!? 流石に空腹は満たされないんじゃ……?」
「残念ながら、ここでも、空腹を満たせるようになっちゃったんだ。何なら栄養も取れるしね」
その言葉を聞いて翔子とミカは困惑する。流石にありえない。
「……、どういうことよ?どんな技術使ったらそうなるわけ?」
とりあえず、持ってきてくれたサンドイッチを食べて、本当にお腹が膨れたので、信用はする。しかし理解は及ばない。そして、ミカが話しかけてもアルトは反応しない。
「あ、えっと、どんな技術を使ったらそうなるの?」
「それは僕にもわからないよ、人間ってすごいよね」
「……私だけ質問できないのほんっと不便」
「そういうのは良くないよ」
耐えられないというようにミカがボソッという、翔子は小さい声で諌める。たしかに不便であろう、ミカが何かを話しかけても、アルトには聞こえないようになっているのだから。
「じゃ、次のヒントを教えるね。現実世界の人と、どうにかして連絡を取るんだ」
アルトは、そう言い残し、サンドイッチの入ったバスケットを残して消えてった。
いつの間にか、世界の色はもとどおりになっていた──
『現実世界』(朝)
その頃──
優太は、キーボードを叩きながら、妹のいるゲームの中を模索していた。
「っち、なんで干渉できないんだよ!? 俺、こんなときに……!!」
無力、あまりにも無力だった──。
第四章 兄の気持ち、妹知らず。
「ハァ、なんでだよ! なんで、こっちから干渉できないんだ!? ゲームに入ろうとしてもなんか跳ね返されるし!」
翔子の兄、夏木優太は家に帰ったあとでも、助け出す方法がないか探っていた。
「待ってろよ翔子、兄ちゃんがぜってぇ助け出してやっからな……!」
一方 ゲーム内で。
「──ってわけで、あれがこうなって、今度はこっちが連鎖して崩れるの。そしたら今度は──」
証拠は、現実で苦戦する優太のことなど気にもとめずに、先程、どうしてあそこまで連鎖したのか説明していた。
「へぇ……、翔子って、知識だけはすごいのよねぇ……」
「『だけは』って何よ! 私だって、たまにはやれるんだからね!」
ミカは、知識だけはある翔子のことを、心の底から感心しながら話を聞いていた。ミカは腕は良いのだが、知識はそこまで無いのだ。翔子は見ての通り目立ちたがり。一緒にいるだけで、勝手にゲームの知識を学べる。
「褒めてるんだけどな、でも翔子って、よくミスってるじゃない」
「ウグ、それを言っちゃだめよぉ……」
二人は、そんな茶番をしながらも、今後のことを考えていた。
『現実世界の人と連絡を取れ』
……外の声、音、それら一切が聞こえない。無理に決まってる。そんなとき。
ザザザ ザーザーザー ザザザ
世界の色彩が反転した。
「……! まさか、また魔物が出るの!?」
「警戒しよう、どこから出るかわからない」
それは、フラグとも言えた。決定的な、ピンチフラグ。
「グギィィィィ!! ギァァァァァ!!」
「ジィ! ジィ! ギギ!? ギキキキキ!」
「ガショ! ガショション! ガション!」
「ジィィィィィ、グギィィィィィィィ」
「何体いるのよ!? こんなのどうすれば!」
たくさんの魔物が押し寄せてきた。数は十体を超える。こんなのどうしようもない。
「ねぇ! 翔子!! こいつ等、まとめてやっつけられない?!」
「無理だよ、こんな数! それに、このあたりはあらかた整地されちゃってるからブロック崩しもできない!」
「そんな!? ……キャァァァァ!? 痛い!! やめて!!」
魔物の一体がミカに襲いかかった。その体の表面は赤い線が数本滲んでいた。そして、その傷跡は急激に紫色に変色した。
「ミカ!? そんな! なんで! ミカ! ミカ! ねぇ聞こえる?? 返事してよ! ねぇっ!!」
ミカは何のアクションも起こさない。
「そんな、そんな、どうしたらいいの!? ねぇ、助けて! 誰かミカを助けてよ!!」
「ギキキキキキキキキキキキキィィィィィ!!」
だが、翔子も、ミカも魔物に囲まれている。魔物たちの、機械的なノイズ乗っ様な鳴き声が、不協和音のように耳に流れ込み、翔子の不安感を煽った。
「ひっ……あ……や……ごめんなさい、ごめんなさい……」
翔子はただ怯えて、意味もなく謝り続けた。
《この話はまだ完結していません》
執筆の狙い
まだ書き途中ですが、他のジャンルを書いてみました。
高校生です! 真面目に小説家を目指しています!
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