作家でごはん!鍛練場
はま

断罪のエクスタシア 第二章

【断罪のエクスタシア : あらすじ】

 この世界には、八つの最強の魔法が存在している。人々はそれを、“禁忌”と呼んだ。

 主人公であるフィオナは、孤児院ララで幸せな毎日を送る一八歳の少女。しかし、ある日突然その幸せは、儚く崩れ去ることになる。

 突然の襲撃、惨殺される家族、何もできない無力な自分。

 心が壊れた彼女は、内に秘めていた禁忌を発現させ、暴走状態に陥ってしまうのであった。

 * * *

 強大な力を手にした彼女は、怒りのままに襲撃者——“牙”を惨殺していく。もう、誰にも止めることはできない、そう誰もが覚悟したその瞬間であった。

 現れたのは、“回収者”と名乗る謎の少女エリィ。彼女は、見事フィオナを鎮静化させ、その場を収めたのであった。

 襲撃後に生き残ったのは、フィオナと少数の子どもたち、そして、フィオナと同い年の親友、ミラ。

 エリィは、フィオナとミラが“禁忌”をその身に宿す“器”であることを伝える。器は八人、世界中に散らばったまま生活しており、放置していると“牙”による襲撃を受け、その力を悪用されてしまうという。

 もう、ここにはいられない——。

 そう悟ったフィオナとミラは、絶望のまま、エリィと共に器探しの旅に出るのであった。

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【断罪のエクスタシア : 用語解説】
フィオナ
 主人公。暴走すると我を忘れ、謎の黒い粘液“それ”を自由自在に操って戦う。エリィの魔法である“律命韶”を撃ち込まない限りは鎮静化できない。

ミラ
 ヒロイン。力を持ち、少ないとはいえ子どもたちを救い、牙を殺害して一矢報いたフィオナと自分を比べてしまい、強い劣等感を抱いている。

エリィ
 ヒロイン。世界連合軍“エクソダス”の一員であり、“器”の回収、育成を単独で命じられた“回収者”である。

ユキ
 フィオナが禁忌発現するトリガーを引いた少女。二人は姉妹のように良好な関係性であったが、牙の襲撃の際にユキは、フィオナの目の前で惨殺されてしまった。

禁忌について
 世界に八つ存在する禁忌。その正体は、“願いを叶える魔法”である。所持者が何かを強く願うと、その願いを最大限叶えるための魔法を一つだけ自動的に生成してくれる。また、この八つを全て揃えて“聖域”で祈ると、“無条件の世界改変”、つまり、如何なる願いでも叶えることができる、という恐ろしい力も秘めている。

ネフィリム
 かつて“聖域”で願い、力を欲した魔法を持たない“旧人類”の成れの果てである。
「力を欲した結果、世界には魔法の概念が誕生し、魔法を使用するための脳内機関“魔核”を所持した“新人類”が誕生した。しかし、その代償として、旧人類は知能と肉体を失い、“深淵”へ堕とされた」と、昔から広く語り継がれている。


 八人の器を集め、「聖域」でもう一度世界を書き換えようと企む宗教団体。真っ白なローブで全身を包んでいるため、“白装束”という別名でも呼ばれている。また、信仰対象はネフィリムであり、“命を捨ててネフィリムを受肉する”という恐ろしい強化儀式“信徒化”を、敵との戦闘中に行うことでも知られている。

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【断罪のエクスタシア : 第二章】

《1》 日常シーン

 あの惨劇から、一週間が過ぎた。

 孤児院から旅立った三人の少女たちは、数百キロメートルほど歩いた森の中で野宿をしている。
 ミラが目覚めると、横にはすうすうと寝息を立てているフィオナの姿があった。
 彼女は、フィオナの薄桃色の髪にそっと指を絡めながら微笑む。

「……寝顔だけは、昔と変わらないな」

 少しの間そうしていると、フィオナが目を覚ました。

「……ミラ?」
「おはよう、フィオナ」

 ミラが声をかけた瞬間、フィオナは起きあがろうとして、顔をしかめた。

 身体中に走る、鈍痛と虫唾。

 少し前まで当たり前であったあの幸せは、もう二度と還ってこない、その現実を、心が理解していても、身体が受け入れてくれない。
 そんな自分を、自分が拒絶している。そんな苦痛に、フィオナは苛まれていた。
 その場で、蹲りながら涙を流し、嘔吐する。
 食事のたびに、子どもたちのことを思い出し、それが一切喉を通らない。

 数日、まともな食事をとっていなかったフィオナの口から吐き出された僅かな胃液はほとんど無色透明で、零れ落ちてくる涙と共に、朝日に反射して煌めいていた。

 その朝日は、驚くほどに暖かく、穏やかなものであった。
その暖かさは、復讐を赦されたことへの安堵にも、喪失を嘆く二人へのささやかな慈悲のようにも感じる。
 一頻り経ってフィオナが落ち着きを取り戻した頃に、少し離れた所で寝ていたエリィがこちらに近づいてきた。
 彼女は、片手に食事の入ったバスケットを持ち、腰には短剣を携えている。

「フィオナ、食事もそろそろ喉に通るんじゃないか?これ以上そんな調子だと、本当に死ぬぞ」

 彼女はそう言いながら、バスケットに入っていたパンを二人に投げ渡す。
 フィオナはそれを受け取ったが、なかなか口に運ぶことができない。

「フィオナ、ほら、大丈夫だから。口、開けて?」

 ミラが、優しく声をかけながら、自分のパンを一口大にちぎってフィオナの口に運ぶ。

「……うん」

 口を開け、ミラの指から受け取るようにして、パンをゆっくりと咀嚼する。それは、言葉を交わさずとも通じ合える、幼い頃から積み重ねてきた絆の証であった。

「ありがとう、ミラ……」

 そう呟く彼女の声は、少し震えていたが、それは食事に対する恐怖からのものではなく、自分を支えてくれるミラという存在をはっきりと自覚したことによる安堵であることは誰の目にも明確であった。

 その返事を聞いて、ミラは微笑む。

「うん、少しずつでいいから、ね」

 パンをもう一度ちぎって、再びフィオナに差し出す。フィオナもそれに応えるように、何も言わずに口を開けた。
 エリィは少し離れた場所でその様子を見ていたが、何も言わなかった。

 数十分が過ぎただろうか。ミラがちぎっていたパンの残りも、そろそろ終わりを迎えようとしていたその時、エリィが口を開ける。

「前も言ったが、私たちが向かうのは“城塞都市ルキア”。そこに、器が現存しているはずだ」

 彼女はそう言いながら、腰にあるポーチに手を伸ばし、中から古びた金属製のコンパスを取り出した。
 円形の蓋を指先で軽く押し込むと、かちり、という軽い音と共に、静かに開く。
 中には、黒曜石のように鈍く光る鋭い針が、どこか一点を指し続けていた。朝日の方向を向いていることから、北を指し示すために使われる、ただのコンパスではないようである。

「これは器の居場所を指し示すために作られた特殊なコンパス、“アグノム”。四六時中、現在地から最も近い場所に存在する、発見済みである君たち二人以外の器の居場所を指し示してくれる」

 エリィはそう言って、フィオナとミラに背を向けて歩き出す。小柄な彼女が早歩きでちょこちょこと歩く様は、とても愛らしいものであった。
 しかし、次に彼女の後ろから聞こえてきたのは、足音ではなかった。
 どさり。

「……フィオナ?」

 フィオナが、地面に倒れ伏していた。なぜ、気づけなかったのだろう。ほとんど何も口にしていない状態で数日、ほとんど休みなく歩いた彼女の体は、すでにボロボロであった。
 唇は血の気を失い、目元には、深く刻まれた傷跡のような真っ黒なクマがある。肌は紙のように白く、頬はこけ、瞳の焦点も合っていなかった。

「フィオナ、しっかりしろ!」
「うっ……エリィ、ミラ、大丈夫……私……」

 そこまで言いかけた彼女は、その場で眠りについてしまった。

「……ミラ、今日一日はここで待機だ、休息を取れ」
「わかったよ、エリィ」

 そう返事をしたミラの表情は、不安げで、どこか悲し差を浮かべているようであった。一番近くで、唯一フィオナの支えになることのできる自分が、彼女の役に立てなかった。その自分の不甲斐なさに、失望していたのだ。

「……フィオナの禁忌には、少しだけ、幻覚のような作用が含まれている」

 エリィは続ける。

「恐らく、無意識下のうちに常時発動状態になっていたんだろう……あまりの、必死さのせいで」

 エリィはそう言って、哀れみのような表情でフィオナの顔を見る。痩せこけて、苦しそうな表情。何か、悪い夢を見ているのだろうか。
 自分のような境遇に、他の器を遭わせたくない。その一心で、彼女は無理をして動いていたのだった。

「私が指示を出すまで、ここで待機だ。フィオナが目覚めたら、見張っておいてくれ、今の彼女は、何をしでかすかわからないからな」

 そう言って、エリィは森の奥へと、足早に消えて行った。
一人残されたミラは、膝の上で寝息を立てるフィオナを見ながら、唇を噛み、拳を振るわせながら涙を流す。
 ただでさえ何もできない自分が、このままでは本当に足手纏いになってしまう。それが、たまらなく不安で、今の彼女にとって一番恐れている事であった。

 けれど、どれだけ願ったところで、「禁忌」を発現させることは叶わない。
 この能力で、フィオナを救えるかもしれない。
 そう、思っていたのに。

「ごめん……フィオナ……」

 彼女は、静かに泣き続ける。そして、いつしかフィオナと一緒に、深い眠りの底に落ちて行った。


《2》 戦闘シーン(エリィ)

「……フィオナ?」
「おはよう、ミラ」

 ミラが目を覚ました瞬間真っ先に視界に映ったのは、夜の闇の中でも白く浮かぶようなフィオナの顔であった。

 近い、吐息が感じられるほど、近い。

 ミラは、自分がフィオナに膝枕をされて眠っていたことに気づき、起き上がると、すぐさま、彼女と距離を取ろうとする。
 膝の温もりを失ったフィオナの表情が、わずかに曇った。

「ご、ごめん……フィオナのこと、僕が看病しないといけないのに……」
「ううん、大丈夫」

 大丈夫――僕がいなくても、フィオナは平気なのだろうか。

 その、純粋な良心から発せられたはずのフィオナの一言はミラの心にぐさりと刺さり、返しがついているかのように抜けない。それは逆に、深く、心の奥底に埋もれていくようであった。

「フィオナの心の拠り所」としての自分の存在意義を、彼女は失いたくなかったのだ。
 フィオナは、自分を頼ってくる立場でいてほしい。助ける側に、回らないでほしい。それは、フィオナに対する束縛のような、強く、重い、ミラの本心であった。

 ミラは、自分の拳を強く握りしめる。

 吐き出したい言葉が、土砂降りの雨粒のように、大量に溢れ出しそうになる。けれど、それらを口にすれば、フィオナは傷ついてしまうかもしれない。そう強く思ったミラは、許容量を超えた雨粒を自分の中に流し込み続ける。それが、いつか暴発するとも知らずに。

 フィオナもまた、何かを言いかけようとしたが、唇を微かに動かしただけで視線を伏せた。
 唯一の心の拠り所であったミラに、拒絶されているような気がして、でも、それを聞いたら、もう後戻りはできないような感じがして――。

 微妙な温度差が、夜の闇の中に広がっていく。

 気まずい。だが、それを埋める術を、二人は何も持ち合わせていなかった。

 ただ、虫の音と、それを聞きつけた蛙の鳴き声だけが、五月蝿いくらいに、強く、響く。だが、その沈黙は、暗い森の中から静かに現れたエリィによって終わりを迎えた。

「……二人とも、起きているな」

 そう言いながら、フィオナとミラと視線を交わすと、すぐさま二人に背を向け、森の中に再び歩を歩め始める

「ついて来い、見せたいものがある」

 ミラとフィオナは顔を見合わせ、わずかに逡巡した後、黙って立ち上がり彼女の後を追った。

 * * *

 五分ほど、歩き続けただろうか。エリィが立ち止まったその先では、何故か森がぱったりと姿を消していた。だからと言って、そこに何かがあるわけでもない。

「ミラ、それに近づいてみろ」

 ミラが、恐る恐る森の境界線に近づくと、その「何か」の正体が明らかになった。
 壁だ。
 真っ黒で非光沢の壁が、見渡す限り、限りなく続いていた。

「エリィ……何? これ」
「……二人には、“ネフィリム”の殲滅を最終目標とした、器探しに出てもらうと言ったな」
 
 エリィは続ける。

「ネフィリムは、肉体を持たない。では、どうやってこの世界に侵略してくるのか? その答えが、これだ」

 エリィが、指をぱちんと鳴らす。その瞬間、真っ黒な球体が姿を消した。
 そして、ミラが先程まで見ていた、黒い壁の向こう側。そこには、恐ろしい形相で三人を睨みつける巨大な魔物がいた。

「ひっ……!」

 フィオナが短く声を上げ、ミラの肩にしがみつく。彼女たちの数歩先にいる巨大な魔物は、二、三メートルほどの巨大な体躯と、熊のような顔、エリィの身体と同じくらい大きく、地面を引きずっている巨大な爪を持っていた。

「エリィ、大丈夫なのか、これ……!?」

 ミラが声を震わせながらそう言うと、エリィは動揺する素振りも見せず、淡々と答える。

「安心しろ、結界の向こう側を可視化しただけだ、こちらには来れない」

 エリィはそういうと、一歩、躊躇なく結界の向こう側に足を踏み入れた。

「見ていろ」

 そう一言言い捨てると、彼女は魔物とたった一人で対峙した。

「さあ……私を楽しませてくれよ」

 咆哮、地響きと共に突進する群れ。その中心で、エリィは一人、笑っていた。
 魔物の攻撃が、エリィに到達しようとしたその瞬間、エリィの姿が煙のように霧散する。

「詠唱破棄、第八等級魔法《終律》」

 魔物の真上に移動したエリィがそう言った、次の瞬間だった。

 至る所で魔物が爆散し、血飛沫を上げる。美しく舞う血液と肉片は、まるで花火のような華やかさを見せた。
 徐々に音が収まり、最後に一体だけが残る、それを確認したエリィも、高度を徐々に下ろしていく。その地面には、地面の土が吸収しきれなかった血液が、水溜まりのように溜まっていた。

 全身を焼かれ、溶けたような皮膚、真っ黒で光沢を持った、兜のような頭部、空洞の眼窩の奥で光る、真っ赤な双眸。その姿を見たものは問答無用で死を迎えると言われている、知能をもつ伝説級の魔物。

「さあ……かかってこい、“魔人”」

 エリィが地面に降り立ち、血溜まりに波紋が浮かぶ。
 咆哮と共に、魔人が赤を蹴って勢い良く飛び出す。
 魔人とエリィの、一騎討ちがが始まった瞬間であった。
 一瞬の、沈黙。
 次の瞬間、魔人が音もなく姿を消した。

「……っ、そう来るか」

 エリィが、魔法陣を両手に構える。美しい湖のように、月明かりを赤黒く反射させている血溜まり。そのどこかから、ぴちゃぴちゃという、規則的で、異常に小さな音が響く。その音はみるみるうちに増大し、耳障りなほどの濁流となって耳の奥を掻きむしった。

 だが、エリィは落ち着き、微動だにせずに構えを解かない。濁流が決壊し、音が最高潮に達したであろう、その瞬間だった。

 ――真横。

 気配は、一切感じられなかった。なのに、エリィの真右、距離約一メートル。そこに、突如として魔人が出現した。まるで、煙のように、滲む空気が突然捻れ、そこから魔人の黒い脚が伸びてきたのだ。

 次の瞬間月明かりに煌めいたのは、魔人の五本の狂爪。それは、迷いなくエリィの喉元へと振り翳された。だが――

「甘いな。気配の隠し方が成っていない、出現も典型的だ。せめて他方向からの同時攻撃くらいはしないと」

 魔法陣の浮かび上がるエリィの右腕が、あっさりとその狂爪を受け止めた。

「手本を、みせてやろう」

 そう言った瞬間、今度はエリィの姿がどこかへと消失する。混乱した魔人は、辺りを見渡して警戒する。

「先ほど言っただろう? この戦法なら、全方向からの急襲程度はこなさないといけない」

 突如、血溜まりが弾けた。地面からの衝撃を受けた血液は壁のようにして、魔人の周囲を一瞬にして覆う。

「簡易錬成《戟》」

 視界を制限された魔人にとどめを刺すかのように、赤黒い壁の至る所から棘状の何かが突き出る。反射的に魔人が地面から飛び上がった、その時だった。

「極限まで逃げ場をなくし、術者の独壇場に敵を追い込んで本命の攻撃を放つ――魔法を使う者の基本だろう?」

 魔人が飛び上がった先で待ち構えていたエリィは、そのまま魔人に左手を翳し、詠唱を試みる。

「律命……」

 だが、魔人も簡単にそれを許してはくれない。即座にエリィとの距離を取り、地面に着地する。
 次の瞬間、頭上に閃光。

「“地を圧し、空を裂け”、第七階級魔法《断空》!」

 詠唱後、突如として、魔物のいた場所が大きく抉れ、ぐしゃりと音を立てながら消失した。“断空”――それは、指定範囲内の物体密度を強制的に極限まで高め、面積を縮小して抉り取る魔法。魔人は、跳躍して攻撃を回避しようとするが、間に合わない。断空の衝撃波でそのまま吹き飛ばされた魔人は、鮮血の軌跡を空に描きながら地面に転がった。

 ゆっくりと、血溜まりから起き上がった魔人の胴体、右脇腹から腰にかけてが大きく抉られていた。エリィは宙に浮かんだまま、魔物を睨み続けている、その時だった。

 ズズ……ッ、ズルゥ……

 まるで、肉が喉を鳴らして奇声を上げているような、耳障りな異音が魔人から発せられる。そしてすぐさま、抉られたはずの胴体が再生を始めた。

 まるで時間を巻き戻すかのように骨が伸びて繋がり、同時に内側の内臓が再生していく。数秒後には、元の人型に戻っていた。
 それを見たエリィは、乾いた口調で呟く。

「再生魔法……どこで手に入れたんだか」

 魔人は、何も言わずに再び攻撃を仕掛ける。
 手を上方向に挙げ、そして、喉の奥から唸り声のような言語を吐き出す。それは、少なくとも人間には理解し得ない、呪詛のような響きを孕んでいた。

 その言葉が終わると同時に、大地が震え始める。次の瞬間、地面が、まるで巨大な刃物で切り取られたように隆起し始めた。

 整然と切り取られた、直方体型の土の塔。二十メートルはあろうかという巨大なそれが、数十本も空に向かってそびえ立っていた。

 あらゆる場所が死角になり得る、どこから攻撃を仕掛けられてもおかしくないトラップ。その一つ一つが、エリィを殺すためだけに造られた巨大兵器のようであった。

 地面に着地したエリィは冷静を保ちながら、先の、魔物がいた方向に向かって走り出す、その時だった。
 
 エリィは、瞬時にそれを感じ取り、前方に飛び出しながら身体を反対に捻り、上空方面に青色の魔法陣を展開する。

 遙か上空、一本の土の塔の上で、静かにエリィを見つめる黒い影があった。

 次の瞬間、一本の閃光が空を裂いた。それは、瞬時に彼女の元に到達したが、かろうじて魔法陣がそれを弾いたことでその光線は右方向へと逸れ、大爆発を起こす。

 エリィは、光線の残滓から、上空にいる魔人の位置を正確に捉えた。
 白銀の月明かりを背にし、魔人が一本の塔の立っていた。その真っ黒な眼窩は、どこまでも冷たく、正確にエリィの存在を射抜いているようであった。
 爆発によって倒壊した塔によって巻き起こった土煙が、辺りを覆う。

「だが……」

 ――見られているのは、お互い様だ。

「こっちから出向いてやろうじゃないか。砕け散れ、“斬昇”」

 エリィの言葉と共に、土煙が横真っ二つに切断される。そのまま、魔人のいる場所目掛けて放たれた巨大な斬撃は、大量の土の塔を斜め上方向に分断していった。

 だが、エリィの策略は破壊ではない、構築だ。

 切断された断面が、段階的にずれ落ちていき、まるで階段のように変形を遂げていく。土の塔は、みるみるうちに“登るもの”へと姿を変えていった。

 エリィは土煙から飛び出し、そのまま土の階段を駆け登っていく。上空から迫る殺気、それが、一気に膨れ上がった。

――来る。

 階段へと変貌と遂げた土の壁と水平方向、遙か上空から、殺気の塊が飛んでくる。それは、魔人の手から放たれた圧縮魔力弾。エリィは、それを走りながら躱し、どんどん速度を上げてさらに近づいていく。

 魔人は、咆哮と共に次々と魔力弾を打ち出す。詠唱すら必要としないその技は、質より量にものを言わせた焦りの象徴であり、同時に自身の限界を物語っていた。

 魔人が再び咆哮する。まるで、止まれ、とでも懇願するかのように。だが、エリィは止まらない。

 閃光が走り、爆発が起きるたびに、彼女はそれを躱し、相殺しながら地を蹴り、空を駆ける。まるで、攻撃全てが幻覚であるかのように、魔人の全力は何一つとして届くことはなかった。

 悲鳴のような咆哮と共に、魔人が右腕を振り上げる。その瞬間、数十本の土の塔が再びエリィの前に生成された。魔人の最後の力を振り絞った全力。だが、無情にもそれが、彼女に敵うことは無かった。

「邪魔だ。“斬壊”」

 赤い魔法陣の展開と共に、呆気なくその全力は崩れ落ちる。粉塵の中を、真っ直ぐエリィが突き進んでいく。既に、彼女と魔人の距離は数メートルまで迫っていた。
 魔人は、声にならない悲鳴と共に、両手を上に上げる。しかし、何も起こらなかった。もう、魔力を練るための力は残っていなかった。

「終わりだ、魔人」

 その言葉と共に、土煙からエリィが現れる。その右手には、純白に染まった魔法陣を展開していた。彼女は、そっと魔人の胸に右の掌を当てて詠唱する。

「律命葬、ここに告ぐ。彼の者の魂を、永劫の闇に封じよ」

 魔人の眼から光が消え、黒い肉が崩れて塵となり、徐々に全身が霧散していく。
 魔物のいた場所は真っ赤に染まり、巨大な土の塔だけが残されていた。

 魔神との死闘を終えたエリィが、ゆっくりと地面に向かって降下していく。その姿を静かに見つめるフィオナとミラは、ただ唖然とし、その場に立ち尽くしていた。

 静寂の中、エリィが二人の前に降り立つ。傷一つ、いや、それどころか、返り血一つ、彼女の身体にはついていなかった。何も無かったかのようにその場に立つ少女の姿は、まるで神話から抜け出して来たような、恐ろしく、神々しい、強者の風格を振り撒いているかのようであった。

「……嘘。こんなの、人間のできることじゃ……」

 ミラが、震えた声でそう呟く。フィオナは、無言で下を向き、拳を握りしめていた。圧倒的な精度、判断力、戦術、そして、力。

――この境地に至らなければ、“願い”を遂行することは、叶わないのだろうか。

 フィオナは、そんな悔しさを、強く胸に抱いていた。

「ネフィリムは、魔物の身体を依代にしてこの世界に君臨している。そして、先の魔人は、ネフィリムに晒される前の個体だ」

 エリィは続ける。

「本物のネフィリムは、あれの何十倍、いや、何百倍も強い力を持ったものばかりだ。今後、ああいった存在とも数えきれないほど遭遇するだろう」

 彼女は、二人を見据え、はっきりと言った。

「だから、修行をしてもらう。フィオナも、ミラも。そして、今後現れる“器”たちも全員、私と十二分に張り合えるまで育て上げる」

 やがて日が傾き、三人は少し離れた森の縁に、簡単な野営地を設けた。焚き火の火は小さく、周囲を照らす陽光は傾き始め、空には星がちらちらと瞬き、風の音だけが耳に届く。

 ミラは焚き火の前にしゃがみ込み、黙々と枝をくべていた。かつては得意げに火起こしをしていた彼女も、今は沈黙の中にいた。
 その背を見つめながら、フィオナは膝を抱えて座っていた。ゆらゆらと揺れる焚き火の火が、その瞳に温かく差し込む。

 エリィは木の根元に背を預け、目を閉じていた。だが、眠ってはいない。

「……怖くないの?」

 静かに、フィオナが口を開いた。しばらくの沈黙の後、エリィはわずかに瞼を開ける。

「何が?」
「ネフィリムと、戦うこと。そんな……そんな訳の分からないものと、向き合うことが」

 その問いに、エリィは一度だけ目を伏せ、そして言った。

「怖いと思うことはある。だが、それは止まる理由にはならない」
「それは、強いから……?」

 フィオナの声は、どこか頼るような響きを帯びていた。
 けれど、エリィは小さく首を振った。

「違う。“願い”があるから、進むだけ。強さは、そのための手段に過ぎない」

 焚き火の音が、ぱちぱちと小さく弾けた。

「自分の願いを、他人任せにしたくない。ただ、それだけだ」

 その言葉に、フィオナも、ミラも、何も言い返せない。
 エリィはただ目を閉じて思考を巡らせ、ミラは焚き火の灯を見つめながら歯を食いしばり、フィオナは胸に去来する悔しさと希望の入り混じった感情の中で葛藤を繰り返していた。

『自分の願いを、他人任せにしたくない』

 先のエリィの言葉が、フィオナの心の中で響き、増大していく。
 私の、“願い”。
 本当にそれは、正しいのだろうか?
 牙への復讐と、自殺という名の自分への断罪。それは、私が本心から願っている結末なのだろうか?
 解の出ない空白の解答用紙が、フィオナの中で量産されていく。誰の助言も助けも求めず、ただ独り、心の中で。
 あたりを包む夜の暗闇が、深く静かに、彼女の意識を微睡の中に溶けさせていった。
 ―――――――そして、夜が明けた。


《3》 魔法の説明、訓練シーン

  澄み渡る空の下、朝露を踏みしめながら、エリィが背を向けて歩き出す。

「さて、行くぞ。」

 エリィの一声で、簡単な朝食を済ませて荷物をまとめた三人の少女たちは再び歩き始めた。目的地は、拠点から少し離れた所にある開けた草原。魔法の練習にうってつけの場所だ。

 朝の澄んだ空気を吸い込みながら、彼女たちは歩を進める。やがて視界が開け、見えてきた草原には、心地の良い風が吹き、既に天頂に到達した太陽が地面をきらきらと煌めかせていた。

「ここなら、思いきりやれるな」

エリィが足を止め、振り返る。

「では、始めるぞ」

 フィオナとミラは緊張と期待を込め、エリィを見つめた。エリィは深呼吸を一つしてから、ゆっくりと彼女たちに向き直った。真剣な表情を浮かべると、手を軽く振り上げながら話し始める。

「魔法を使う時の第一ステップは魔力を『集める』ことだ」

 そう言ってエリィが振り上げた腕を下げると、彼女の腕の周りに赤くキラキラした粒子状のものが発生する。

「大気中の『魔力』は、『火、水、草、風、土』の五大属性が混在した状態で存在している。私の場合、属性は『火』だから、この中から火属性の魔力を抽出した状態ーー火属性の魔粒子を司る色である『赤色』に辺りの魔粒子が発光する」

 そう言うと彼女は、それを手で覆い始める。

「次に、この魔力を魔法に変えるために、手のひらを通してこの『魔粒子』を脳内器官の『魔核』に送り込んで魔粒エネルギーに変換する」

 彼女が手で覆った魔粒子は発光したまま、彼女の腕、首を伝って頭の方に向かっていった。

「その後、変換したエネルギーを再び手に送り込んで……」

 脳に送り届けられた魔粒子は魔粒エネルギーへと姿を変えてさらに発光し、彼女の首、腕を伝って再び手の中にエネルギーを送り出す。

「この状態で前方に魔力を押し出すイメージで手を開くと、エネルギーを使って『魔法』が出る」

 彼女がパッと手を開くと、そこから小さな火が発生した。

「このように、『魔力の抽出による魔粒子の精製』『魔粒子を魔粒エネルギーに変換』『魔粒エネルギーを魔法に変換』『魔法を行使する』と言う4工程で『魔法』は成り立っている、そして……」

 そこまで言った彼女は、自分の手を開いたまま前に突き出す。

「フレイヤ」

 そう彼女が唱えた直後、目の前に全てを焼き尽くすような大きな炎が出現した。太陽をも凌ぐかのような熱気と明るさに、ミラとフィオナは圧倒される。

「このように、先の魔力変換工程を無視して魔法を打ち出すために使う詠唱等の儀式――これを、“魔術式”と言う」

 強くなりたい、やってみたい。でも、本当にできるのだろうか。フィオナとミラは、そんな興奮と不安を抑えきれない様子で手のひらを見つめる。

「じゃあ、実際にやってみろ。二人に今からやってもらうのは、属性の適正検査だ」

 エリィは腕を組んでそう言う。

「人間は、生まれつき二属性までの使用が限界であると言われている。これから行う初の魔力抽出、そこで発生した色を、魔法使いはその生涯をかけて極めていくんだ」

 エリィがそう口にする。先に動いたのは、フィオナだった。

 ――守りたい。でも守れなかった、あの子たちのために。
 ――もう誰にも、願いの邪魔をさせたくない。
 ――だから、強くならなくちゃ、いけないんだ。

 フィオナの掌の上で、徐々に魔力が色付いていく。

「やった……! エリィ、できた……よ……?」

 フィオナの横にいたエリィは、彼女を見て驚愕していた。それは、これまで余裕の表情を常に見続けてきた二人にとって驚くべきものであった。

「嘘……だろ……?」

 『魔法は、一人につきニ属性までしか使用できない』

 それが、これまでの世界の常識、そうであったはずなのに。
 ――彼女の周りに発生し、飛び交っている魔粒子は、五つの色を発していた。
 少しの間唖然としていたエリィだったがすぐに状況を理解したのか、平静をとり戻して話し始める。

「……今、君の禁忌が判明した。“人を殺す魔法”――その名は、間違いだったようだな」

 彼女は、フィオナの目をまっすぐ見て伝える。

「『全属』、全ての魔法を使える魔法。それが、君の能力だ」

 その言葉を聞いたフィオナは、少し驚いた後、目を細めて微笑んだ。静かに、深く熱を孕んだ笑みであった。

「……そう」

 フィオナは、嬉しかった。
 今まで名前すらなかった、縦横無尽に命を刈り取る“人を殺す魔法”。それが、明確な殺意を持って刺し向けることのできるものであったと、判明した瞬間であったからだ。

 ――これで、あの連中を皆殺しにできる。

 そんな、執着にも近いような感情が、彼女の心の空白を埋め尽くしていく。

「ありがとう、エリィ。教えてくれて」

 フィオナは真っ直ぐとエリィの目を見つめ返し、まっすぐに微笑む。

 その表情は、まるで長年の“空腹”を満たすための餌を目前にして、自分は既に満腹であるという錯覚と快感を抱いた獣のような、喜び、落ち着き払ったものであった。

 その表情を見て、ミラの喉がごくりと鳴る。
 喜びでも、感動でもない。自分の私欲をフィオナに貶される恐怖と彼女自身に対する畏れを、ミラは見せていた。

「じゃあ……次はミラ、君の番だ」

 エリィがそう言い、ミラが立ち上がる。彼女はこくりと頷き、緊張で震える右の掌を胸の前に出した。

 ――フィオナは出来たんだ、僕に出来ない訳が無い。

 けれど、どれだけ気をこめても、掌には何の変化も起きることは無かった。
 ただの、静寂。魔力が出てくる感覚の一切すらも、ミラは感じることができなかった。

「……っ」

 ミラは必死で笑みを作り、もう一度、掌に力を込め始める。
 ――思いを、祈りを、願いを込める、イメージ。
 しかし、その沈黙が破られることはなかった。

「……ミラ」

 フィオナが、心配そうに声をかける。
 その優しさは、親友として、家族として、かつてはかけがえのないものだった、そのはずなのに。
 ――いつからこの目が、声が、存在が、自分に苦痛を与えるものになったのだろうか。
 ミラは、自分の拳を強く握りしめる。

「まだ、やれる……!」

 声は掠れ、心が焦り、全身から脂汗が吹き出す。

「ミラ、落ち着け」

 そんな時、エリィが彼女に近づき、その突き出した腕にそっと手を置いた。

「君は、魔力に対する適性が極端に弱いみたいだ。無理に魔力を引き出そうとすればするほど、生命力を使って死に近づいていく」

 その言葉に、ミラの肩が震える。

「そんなはず……ない。私だって……私だって、フィオナの隣に立ちたくて……っ」

 唇を噛み、俯き、啜り泣く。
 フィオナは、ミラの背中を摩ってあげようと近づいた。
 ――そんな憐れむような目で、僕を見るんじゃない。
 
 ――――――消えて、しまえばいいのに。

「触るなッ!」

 ミラは、近づけたフィオナの手を思い切り払い除ける。
 その行為は、フィオナとミラ、どちらの心にも大きな傷を残した。


 《4》 戦闘シーン(フィオナ)

 その日の夕方、陽が傾き、薄紅色の空がフィオナたちの全身を染め上げ始める頃であった。
 彼女は、ものの数時間のうちに、信じられない速さで全属性の基礎魔法を覚えていった。

 火の弓矢、草の腕、水の刃、風の障壁、土の盾。

 一つ一つの精度はまだまだ荒いものの、実用面においては十分な威力を備えていた。

「……見事だ。この調子なら、一ヶ月以内に中位魔法も扱えるようになるかもしれないな」

 エリィが腕を組みながらそう言う。
 その後ろで、ミラは地面に座ったまま、ただ静かに膝を抱えて俯いていた。魔力の出力どころか、抽出すらも、彼女は最後まで成功させることができなかった。

 ――どうして、できないの?
 ――どうして、フィオナばかり?
 ――おかしい、嫌だ。こんなの、認めたくない。

 自分だって、ずっと支えてきた、いつだって傍にいた。
 それなのに、フィオナは“力”に選ばれ、自分は“無能”に選ばれ、その現実を嘲笑い、突きつけてくる。

 ミラは、顔を膝の間に埋めたまま、肩を小さく震わす。

 自分では押さえ込んでいるつもりであったが、フィオナの耳にはその呼吸音がひどく乱れているのがはっきりと聞こえていた。
 だが、声をかけることはできなかった。もう、自分の優しさがミラに届くことはないのだと、フィオナは悟っていた。

 そんな時、ふと、エリィの視線がどこか遠くへと向けられる。
 そして、顔を一瞬、僅かにしかめた後、静かに小さく舌打ちを漏らした。

「……面倒だな」

 フィオナが、その声に反応する。

「エリィ?」
「結界が何者かに破られた。おそらく、私と同程度……もしくは、それ以上の力を持った魔法使いの仕業だ」

 そう言って、エリィは警戒を始め、辺りを見回し始める。緊張が走り、痛いほどの静寂が三人を包んでいく。

「おやおや、こんな所にいたとはね」

 次の瞬間、一つの人影が闇世に紛れたまま座り込んだミラの後ろに突然現れた。
 一切の気配を感じさせなかった。なのに、それが口を開けた瞬間、数百トンもあるかのような錘に押しつぶされたかのような重圧を孕んだ存在感を一瞬にして纏わせていく。

「誰!?」

 ミラが咄嗟に後ろを振り返ると、そこにいたのは、真紅のローブを羽織った謎の女。全身を覆い隠した格好、恐ろしいほどの存在感。それは、先の白装束の雰囲気を彷彿とさせていた。彼女は、にやりと不気味な笑みをミラに見せたまま口を開ける。

「君は……いや、君も、器なのかな? まあ、私の標的ではないさ……今はまだ、ね」

 そうミラに告げた彼女は次に、フィオナを見つめて言った。

「こんにちは……名を、“フィオナ”と言ったかな。私は“追跡者”のユズ。今宵、君が器に相応しいかどうか、“選別”を行わせてもらう」

 そう言って、謎の女――ユズは詠唱を初めた。

「選定の輪よ、試練と審判の劇場よ、神の目より外れし魂を写し賜え。隔絶結界《聖壇》」

 そんな時だった。ユズの背後に、彼女のものを軽く凌駕する程の殺気を纏った少女、エリィが現れる。彼女は、魔法陣を展開した右手をユズの後頭部に当てながら口を開けた。

「どう言うつもりだ、ユズ」
「どう言うつもりも何も、私は自分の使命を果たすだけ。それが、我がノア一族の役目ですから」

 激しい怒気を纏ったその問いに、いまだ不気味な笑みを浮かべているユズはあっけらかんとした口調で返答する。

「では始めようか、“全属の器” よ」

 その言葉を皮切りに、二人の周りが一瞬で漆黒の結界に覆われた。

「なに……これ……」

 フィオナが、愕然としながらそう呟く。
 漆黒の内側は、まるで別世界のようであった。赤黒く、雲一つない空。真っ黒な壁に囲われた半径三百メートルほどの半球状の空間。そして、中心には円形の舞台のようなものが存在しており、周囲には巨大で血塗れになった知育玩具のようなものが大量に転がって、謎の力によって不気味に蠢いている。

 全てが、術者と、被術者のイメージが混同することによって生まれる“実態のあるイメージ”。全ては精神と魔力を刺激し、外界と隔絶するためだけの“結界”――聖壇。

「始めよう、フィオナ。貴女に、“世界に選ばれる価値” があるかどうか、見極めさせてもらう」

 そうユズが言った瞬間、その姿が掻き消える。

「第三階級魔法《紅雷》」

 どこからか、雷のような轟音と共に、目で追うことの出来ない程の速度で三本の槍が射出される。
 真紅に染まり、炎と静電気を纏わせているそれは、フィオナの周囲をぐるぐると回転しながら速度を増していき、攻撃のタイミングを撹乱していく。

 ――避けられない。

 そう悟ったフィオナは、咄嗟に地面を隆起させ、即席の土壁を作り出した。そして、感電の影響を最小限に防ぎ、槍の纏う炎による熱を防ぐために、ありったけの物量の水で自らの周りを覆う。

 次の瞬間、槍が三方向から彼女目掛けて勢いよく飛んで行った。槍が土壁に着弾した瞬間、衝撃と共に鈍い爆発音が鳴る。

 紅槍の纏う炎の衝撃波が土壁にぶつかると同時に、その熱が周囲へと拡散する。だが、フィオナの構築した水の壁がそれを包み込み、音を立てながら熱を奪って鎮火した。

 同時に、雷が壁を貫こうと走る。だが、電気を通しにくい土はその効果を半減させ、同時に水の壁に通電することによって影響を中和し、全ての攻撃を相殺した。

「……、成功した!」

 土壁から出てきたフィオナが短く息を漏らす。
 赤い蒸気と焦げた土の匂いが辺りを包む。
 だが、フィオナ自身には傷ひとつ付いていなかった。
 彼女は、上空でその光景を眺めていたユズを睨みつける。

「へぇ……“熱”と“電気”を分離して相殺するなんて」

 音もなく、まるで風そのもののように空中を飛翔しながら、ユズが静かにそう言う。

「基礎魔法だけでここまでやれる子、久しぶりに見たな」

 褒めているのだろうか。だが、その声にはどこか、この状況を楽しんでいるような愉悦と、必死で魔法を繰り出すフィオナを観察するかのような試しの色が見えていた。

「……ありがとう。でも私は、貴女に負けるつもりはない」

 ――こんなところで負けていたら、牙になんて勝てっこない。
 フィオナが静かに、そして決意のこもった声でそう答える。その両手には、次の魔法出力に使うであろう、五色も魔粒子が集まり始めていた。
 ユズはその様子を見て、再び不気味な笑みを見せる。

「なら、もう少しやってみようか」

 ユズが、そっと指を鳴らす。

「第四階級魔法《散滅群雨》」

 次の瞬間、ユズの姿が再びどこかへと消え失せる。それと同時に、空に無数の光点が浮かび上がり始め、そこから小規模の雷と火球が次々と降り注ぎ始める。

 フィオナは咄嗟に、水を含んだ泥の壁で雷の猛攻を防ぎ、暴風を発生させることで火球を受け流していくが、雨のように連続して降り注ぐそれは、全く止む気配を見せない。

 どれも小さく、威力としては致死までには至らない。だが、数が多すぎる。絶え間なく降り注ぎ、攻撃対象の体力、集中力、魔力を同時にじりじりと削いでいくその戦い方は、まさしく消耗戦という名に相応しいものであった。

「なに……これ……」

 依然として、ユズはフィオナの前に姿を見せない。攻撃の威力密度を上げるわけでもなく、ただ淡々と同じ攻撃を彼女に浴びせ続けていた。

「……何が目的なの! 私を殺す気なら、もうとっくにできてるはずでしょ!?」

 痺れを切らしたフィオナがそう叫んだ瞬間、何故か、後ろから声が聞こえる。

「目的……それは、“選別だよ”」

 フィオナの背後に出現したユズは、ゆっくりと彼女の後頭部に右手を触れる。それと同時に、攻撃の威力がどんどんと増していく。

 攻撃を止めて振り向けば、背中に弾幕が当たって致命傷を負って死ぬ。逆に、このまま防御し続けたらユズからの攻撃を無防備に受けてしまう。

 詰み、だった。

「私の目的は、君を殺すことじゃない。君の“禁忌”を、知りたいだけなんだよ」

 そう言ったユズは、静かに詠唱を始める。

「第六階級魔法《想起審断》」

 瞬間、フィオナはこの世のものとは思えないような苦痛を味わった。

 まるで、頭の中に誰かが手を突っ込み、そのまま脳内を直接犯してくるような感覚。 

 目の前の世界が一瞬にして赤く染まる。

 次に見えたのは、“あの夜”の光景だった。

 焼け落ちる孤児院。子供達の絶叫。折れた椅子、割れた皿、弾け飛ぶ内蔵。目を背けたくても、誰かが無理やり、内側から瞼をこじ開け、心の奥底に封じようとしていた地獄を押し付けてくる。

「やめて……やめて……ッ」
「“禁忌”は、願いの純度に比例して強くなっていくんだ。どれだけ自分が無力で、惨めでちっぽけな存在であるかを身に染みて自覚し、その上でもう一度抗おうとする意思。力を欲する、狂ったほどの欲望。それが、“器”としての資格であり、発現の条件となる」

 フィオナの目が揺れる。赤黒く、血の色に。

 そして、目の前に現れたユキが彼女の頬にそっと手を当て、目の前で再びこう言うのだ。


      ひ と ご ろ し


 次の瞬間、彼女の周りから黒く、ドロドロとした“それ”が発生し始める。

「……これが、君の“禁忌”か」

 結界の中心で、フィオナの禁忌が暴れ出す。
 地面が避け、空が更に赤黒く染まっていく。
 この世界に、“それ”が再び生まれ落ちた瞬間だった。

 * * *

 日は完全に落ち切り、広場には月光だけが刺していた。
 その中央に、黒い半球が沈んでいる。地面から生えるようにして形作っている漆黒の結界。それはまるで、世界から切り離された何かのように、静かに、しかし確かな威圧感を放ちながら空間に存在していた。
 その結界の前に立つ少女、エリィはそっとその結界に触れる。

「……“聖壇”、まさか、こんな所で見ることになるとはな」

 彼女が結界に触れ、少し力を込めるような動作をするが、それは微動だにしない。

「完全封鎖、か。内と外、両方からの干渉を受けつけていないのかな」

 彼女の表情に、焦りも苛立ちも見られない。ただ静かに、指先で何かを計測するように、結界をなぞり始める。

「そろそろ、だな」

 次の瞬間、あらゆる事象、物体をも隔絶する結界の内側から、殺気が波のように押し寄せてくる。それは、ただの人間ではない。その枠から逸脱した、何かの胎動――。

「発現した、か。ユズ……お前はまた、やりすぎた」

 エリィは、腰に身につけていた小袋から、白銀の刃のついた小刀を手に取り、静かに地面を蹴って大きく跳躍する。

「時間がない。制圧優先、使用許可は後回しだ」

 そう言った彼女は、結界の天頂にそれを勢いよく突き刺した。

 * * *

 結界内部。そこには、もはや“ヒト”の姿を残していない一つの影があった。
 “それ”が地面から湧き上がり、彼女の周りで触手のように蠢いている。
 血のように赤黒く染まった瞳と髪、ヒトの形を無くし、変幻自在に変化する手足、そして、額に生えた一本の黒角。
 フィオナは、喉の奥底から呻き声を上げながら、目の前に存在する一つの標的をその相貌で鋭く睨みつける。
 次の瞬間、地面が破裂するように隆起し、鋭利な棘のように変化した“それ”が四方八方に突き出された。

「……完璧」

 棘を回避し、後ろに退がったユズは、陶酔したように顔を赤らめながらそう呟く。

「これだ……この胎動! 他の器にはなかった、この純粋な怒り、恐れ、憎しみ……そして、殺意! なんて素晴らし……」

 言葉を終える前に、一本の影がユズの真横を掠める。

「っと……危ない危ない」

 間一髪で飛び退いたユズであったが、すぐに第二波がくる。数十本の黒い槍が、至る場所から彼女に猛攻を仕掛ける。
 しかし、ユズはそれを躱し、最小限の結界で全てを防ぎ切った。

「やはり、完全制御には至ってないようだね。けれど、その無秩序さも、また美しい……!」

 フィオナは、ただ叫び、ユズを睨み続ける。

「殺す……殺す……!」

 その言葉に、空間ごと避けたような衝撃。地面、空、至る所に巨大な魔法陣が浮かび上がり、数百、数千本の槍が、同時にユズを襲う。
 避ける箇所のない、確実に殺すことだけを目的とした最強の物量攻撃。

「くっ……!」

 ユズは防御結界を展開したが、全てを防ぎきれずに被弾。肩口を深く抉られて血を流す。

「っは、いいね、もっと見せてよ」

 痛みさえも愉悦に感じるのか、彼女は狂気的な目でフィオナを見つめる。

 再び、フィオナが数十本の槍をユズに向かって発射した。今までよりも、更に速度を増した槍は、音速を超えるほどの超高速でユズ目掛けて直進する。が、ユズは冷静に魔法陣を両手に展開してそれを受け止めた。

 結界で中和、相殺できないほどの魔力密度を誇る、フィオナの生み出した“それ”が形作っている漆黒の槍。それは、轟音と共にユズが何重にも重ねて展開した超硬度の防御結界をじりじりと貫通し、鈍い破壊音と共にゆっくりとユズの身体を貫こうと距離を詰めてくる。

「私と持久戦を繰り広げようっていうのかい? まだまだ甘いね、第八階級魔法《断空》!」

 エリィが、先の魔物との戦闘でも使った技、断空。それによってフィオナの攻撃は全て圧縮され、無力化される。
 フィオナは怒りで表情を酷く歪ませながら、自分の爪を大きく肥大化させて姿勢を低く構える。

「次は肉弾戦かい? その勝負、受けて立とうじゃないか」

 そう言って、ユズは自分のポケットから何か赤い結晶を取り出し、その先端を咥え、そして、噛み砕いた。

「《赫烈身》――発動」

 ユズがそう言うと、手に持っていた欠片が霧散し、赤い粒子が彼女の周りを覆っていく。彼女の金髪はみるみるうちに真紅に染まり、黒目は肥大化、その瞳孔は猫のように縦に細長く変化していく。全身に赤い、謎の紋様のようなものが浮かび始め、そこから赤黒い煙が上がっていった。

「これで、終わりにしようじゃないか」

 瞬間、フィオナが地を蹴る。
 その跳躍は音を裂き、刹那のうちにユズの眼前に迫った。両腕が変化した凶爪は空を裂き、びりびりと空気を震わせた。
 ユズは、逃げない。逆に、両腕を前で交差し、その一撃を真正面から受け止める。
 肉がぶつかり合い、弾ける音と共に衝撃波と沈黙のみが辺りを支配する。

「お互い本気の肉弾戦。どうだい、興奮するだろう?」

 愉悦に満ちた囁き。次の瞬間、二人の距離が、マイナスになる。
 ユズの拳がフィオナの腹にねじ込まれた。だが、フィオナは意にも介さず、それを振り払って反撃の一撃をユズに喰らわせようとする。爪がユズの肩口をかすめ、赤い飛沫が宙を舞った。
 ユズは笑う。その頬には血が垂れ、目には光が宿る。
 足が交錯し、膝が突き上がり、拳が連打される。爪と爪、拳と拳、互いの攻撃が寸前で躱され、時には打ち合う。

 フィオナの攻撃は、重く素早い。無駄がなく、殺意に満ちている。目の前の敵をただ「破壊するためだけ」に動いている。

 一方でユズは、流れるように動く。その洗練された動きが直線的な暴力を優雅に受け流していく様は、血の滲むような努力と、それによって獲得した技量であることをひしひしと感じさせた。一次元のように典型的な攻撃を交わし、上下左右から差し込むように、多種多様の技巧で返していく。細かく魔力で強化された全身が、フィオナの人智を超えた速度に対応していった。

 ユズの右拳が突き出される。フィオナは顔を傾けて避けるが、その拳から散った魔力が皮膚を裂く。

 反撃の凶爪がユズの腰を狙う。彼女はひねりながら下がり、跳躍。背後に回り、そのままフィオナの首元狙って攻撃を放とうとする。

 ――しかし、フィオナの反応速度は、既に常識を超えていた。

 後ろにも目が付いているのだろうか。ノールックのまま迷いなくその拳を空中で掴み、ユズを地面に叩きつける。

 地面が砕けた。石片が舞い、粉塵が広がる。
 立ち上がろうとするユズ。口の端を拭い、顔を紅潮させたまま、ゆっくりとこちらを振り向くフィオナを見上げた。

「いいねえ、フィオナ。こんなプレイ、久しぶりだ」

 脚のバネを使って一気に飛び上がる。フィオナの顔面へと、飛び膝蹴り。
 ――命中。
 フィオナの首が跳ね、体勢が崩れる。だが、時間を巻き戻したかのようにすぐさま体勢を戻したフィオナは、その反動をのせた拳をユズに叩きつける。

 ユズは腕で受けるが、その衝撃に数歩後退。
 拳と爪が連続して交錯する。音速を超える速度で、空気が連続的に破裂していく。
 攻防の一瞬ごとに魔力が弾け、地面には無数のひび割れが走り、空間が歪む。

 互角だった。

 だが、わずかな差が生まれる。
 フィオナの拳が、ユズの左肩を正面から貫いた。

「っ……!」

 後方へと吹き飛ばされるユズ。空中で体勢を立て直すも、地に落ちた瞬間に右の拳が飛んでくる。
 今度は、避けきれなかった。
 鈍い音とともに、ユズの身体が数メートル弾かれ、地面を滑って止まる。
 身体中に走る痛み。息が切れ、意識がぼやける。

 それでも、ユズは笑っていた。

「なあ、フィオナ……最後に聞かせてくれよ。たった今、君の“心の底”が見えたんだ」

 彼女は、息絶え絶えのまま、こちらに向かってゆっくりと歩き出すフィオナに問い掛ける。
 

「先の孤児院での発現……あれ、初めてじゃないんだろ?」
 

 その問いは、すでにフィオナの耳には届かない。
 彼女の浮かべる血の混じった笑み。それは、破壊衝動と怒りの入り混じった、人間とは思えないほどに無機質で、それなのに、異常なまでに人間臭い興奮を見せていた。

 ひどく傷を負ったユズの顔からは血が流れ、手足を覆っていた赤いローブも襤褸雑巾のようにズタズタに引き裂かれている。まさに、瀕死というような状態であった。

 死ぬ――――。

 その予感と恐怖心だけが、彼女の心の中を埋め尽くしていった。ユズは、唇を噛んで肩膝をついたまま、右手を空に翳す。

「最後に、悪あがきしてみるさ。これが私の、最後の切り札……!」

 彼女が空に翳した掌の中に、光が収束していく。

「第九階級複合魔法《暁》!!」

 ユズのその一言と同時に、結界内に謎の光が一斉に散りばめられる。
 暁――その光は空間を切り裂き、魔力を無に帰し、敵味方を問わず、肉体と精神に破滅の波動を刻む。
 フィオナの全身を、無数の光の刃が切り刻んだ。
 ――はずだった。

「……嘘」

 閃光が止み、視界が晴れる。
 その向こうにいたのは、血のように赤黒い、こちらを睨みつけている双眸。

 フィオナだった。

 全身が真っ黒な“それ”に覆われ、音を立てながらみるみるうちに再生を遂げていく。
 異常な再生速度。自分の全力を持ってしても、一切の攻撃が通らなかった絶望と無力感。
 ユズの瞳が、震える。
 魔法使いにとっての、“ノア一族”にとっての最終奥義が、時間稼ぎにすらなかった。

「ガァアアアアァアアッ!!」

 咆哮と共にフィオナが地を裂くように突進した。
 ユズが反応するよりも早く彼女の右手がユズの首元を掴んでいた。

 ――――死ぬ。

 その予感は、確信へと変わっていた。
 首を締め上げられ、身体が宙に浮かぶ。視界が、涙と薄れゆく意識の中で霞んでいった。
 意識が、なくなる。その瞬間だった。

 どさり。

 突然、首に加えられていた圧迫感がなくなり、地面に落ちて倒れ込む。

「ぐ、ぅ……っ!」

 フィオナの動きが、止まった。彼女は、自分の頭を抱えながら呻く。

「やめろ……やめて……わたし……わたし……」

 その声は、怒りでも憎しみでもなかった。
 助けを、求める声であった。

「もう、殺したくない……!」

 その時だった。
 パリン。
 軽い音と共に、空が割れた。亀裂が入り、ガラスのように結界が崩壊を迎える。差し込んだ白銀の光の下には、一人の少女がいた。

「そこまでだ、フィオナ」

 エリィの声と共に、彼女の持っていたナイフが霧散する。
 空間に、風が戻る。
 彼女は、未だ呻き続けるフィオナに近づき、強くその身体を抱きしめた。

「律命韶、ここに告ぐ。彼の者の穢れを禊ぎ祓え」

 粘液が溶け、角が霧散し、触手が灰と化していく。あらゆる禁忌の痕跡が、みるみるうちに彼女の肉体から消えていった。

 フィオナは静かに涙を流し、エリィを見て一瞬微笑み、膝をついて彼女に身体を委ねる。

「……間に合ったか」

 エリィは、崩れ落ちたフィオナの身体を支えながら、安堵のため息をついた。
 その横で、ユズもまた地面に膝をつき呆然とした表情で崩れ落ちていた。

「……まさか、私が殺されかけるなんてな……」

 彼女はそう呟きながら、静かに笑った。
 それは、敗北の笑みであり、同時に、歓喜に満ちた笑みでもあった。

 ――これが、“選ばれし器”の力。

 彼女はこの時確信したのだ。この少女は確かに、“世界を書き換える”のに足る存在であるのだ、と。

 ——第三章に続く

断罪のエクスタシア 第二章

執筆の狙い

作者 はま
125-31-74-232.ppp.bbiq.jp

 小説を書き始めて大体二、三ヶ月ほどの未熟者ですので、厳し目のアドバイスお願いします!

 今回は、明確に教えて欲しい部分が何点かあるので、それについてアドバイスをもらえると嬉しいです。また、全体を4パートに区切っているので、それぞれの箇所について別々の感想、アドバイス等が欲しいです、お願いします!

 あと、簡単な指標として「書籍化できるレベル」を10点満点として、以下の質問に点数を付けてもらいたいです!

コメント

はま
125-31-74-232.ppp.bbiq.jp

1.面白さについて
純粋な面白さです。ストーリーや文章など、全てにおいて良いものかを教えてください。また、そうでないのならば、どうすれば良くなるかを教えて欲しいです。

2.文章力について
先ほども述べましたが、書き始めて二、三ヶ月ほどが経っています。どれほどの文章力が付いているかを評価して欲しいです。

3.戦闘描写について
戦闘描写を、スピード感と迫力があり、かつ情景がありありと読者の脳内に浮かぶようにすることを意識しながら執筆しました。構成、戦闘内容、戦闘描写など、総合的に見てどうかを判断、評価して欲しいです。

沢山のアドバイスや感想、お待ちしております!

中村ノリオ
flh2-122-130-109-65.tky.mesh.ad.jp

序盤だけですが読ませていただきました。

とりあえず冒頭をあらすじや用語解説で始めるのは良くないと思います。いかにも小説を書きなれていない感じで、その後の本編も内容が頭に入ってきませんでした。
小説をたくさん読むことから始めた方がいいんじゃないかなという印象です。
プロの作品を読んで作品がどのように構成されているのかを考えたり、文章を書き写してみて自分の文とどう違うのかを知ろうとしたりといった努力が必要かと。

序盤しか読んでないので点とかはつけられないです。

偏差値45
KD059132062057.au-net.ne.jp

僕もだいたい中村ノリオ氏と同じ意見ですね。

とはいえ、
>小説をたくさん読むことから始めた方がいいんじゃないかなという印象です。
まあ、これは大変な時間を必要としますので、ほどほどがいいと思いますよ。
小説家になりたいのであって、読者家になりたいわけではないでしょうからね。

個人的には「気楽に読めるような作品づくり」を心がけた方がいいんじゃないかな、
と思いますね。

紅月麻実
softbank060066098154.bbtec.net

拝読しました。“二冊目”が説明ばかりになってしまうのは仕方がないかもしれません。
前回を読んでいない人のための解説ですよね。
でも、用語解説がしたいのなら、あらすじはもっと簡潔に。

「これは、ある宗教団体に、大切な孤児院の仲間を殺された少女に紡ぐ、復讐の物語。」
こんな感じ。そこから前回で起こった、「孤児院での惨殺」「ユキの死」を手短に説明。誰が生き残ったとかは書かなくてもいいかもしれない。

>> 現れたのは、“回収者”と名乗る謎の少女エリィ。彼女は、見事フィオナを鎮静化させ、その場を収めたのであった。 
(ここ、例の魔法とか追加したほうが、あとから説明する手間省けるよ。詠唱の呪文とかでも、どんな効果かは分かるから、細かく書かなくて大丈夫)

 襲撃後に生き残ったのは、フィオナと少数の子どもたち、そして、フィオナと同い年の親友、ミラ。

 エリィは、フィオナとミラが“禁忌”をその身に宿す“器”であることを伝える。器は八人、世界中に散らばったまま生活しており、放置していると“牙”による襲撃を受け、その力を悪用されてしまうという。
(ここは物語の中で「復習しよう、まず……」ってやらせるほうがいいとおもう。

それと、これがあるなら登場人物紹介はいらない。もしくは、こっちを消して登場人物を紹介したほうがいい。
禁忌、ネフィリムについても、作中で綺麗に紹介できてるから、省いてもいい。

この次は1,2,3について述べます。

紅月麻実
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1 おもしろさ
 面白いと思いますよ。
 ただ、所見では読みにくい漢字があるので、最初にふりがなを振るといいかもしれません。

2文章力
 文章力は上がっていると思いますよ! 自身を持ってください!

3 戦闘
 イメージは、しにくいですね。フィオナの基礎魔法なら想像できますけど、即座にイメージできるかといえばそうでもないかもです。

 フィオナは命の危険を感じ、咄嗟に手を下から上へと突き上げた。すると、地面から土埃をあげて土壁がせり上がる。彼女は続いて壁をなぞるように水の膜を貼った。みるみる泥へと変貌したその壁は、見事に雷を打ち消してみせた。

こちらのほうが、想像しやすいのではないかと個人的に思います。

あと、『紅雷』。ここから3本の雷槍と想像するのが難しいです。普通に『雷槍』(らいそう)でいいと思います。
 紅にちなんだものがいいのなら、いっそ炎でいいのでは。
 雷に紅の要素は難しいかと。基本黄色。頑張っても紫。

 基本的に魔法の名前がわかりにくいですね。「フレイヤ」ならまだわかりますが、、、
 一般的な「フレイム」でいと思います。「ん?」ってなります。

厳しいことを言ってしまいましたが、私もまだまだ初心者ですし、あなたもプロを目指しているようなので、一緒に頑張っていきましょう! 

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