作家でごはん!鍛練場
えんがわ

震度3

「トマトとホウレン草のパスタ、コーヒーはホットで食後に」
「かしこまりました」

 ウェイターは身体がちょっと右に傾いでいる。ネクタイが居心地悪そうに締められている。バイトさん見習いかな、大学一年生かな、と初々しさが眩しく見える。

「木漏れ日ヴィエント」は喫茶店にしては広く、レストランとしては狭い。職場からは少し遠く、田んぼの中にぽつんとあるような一軒家だが、イタリア帰りというシェフの評判もあってか、なかなかに繁盛している。緑の観葉植物が水を浴びて生き生きとしている。

「さいあくー、今日ね、占いで、運勢最悪だって」
「どうせテレビの時間つぶしのやつでしょ、それにもう一日の半分は過ぎちゃったじゃない」
「でもでも」

 なんと客は制服姿の女子高生が大半だ。
 時代は変わったものだ。
 わたしが若い頃は、学校帰りにこんな所に寄れなかったな。髪の綺麗な同級生がそこで先輩に告白されたとかどうとか、そんな噂話に、なんだかもっと特別な場所って感じだった。
 まあ「若い頃は」って、今でも十分に若いのだけど、と言い訳してしまうくらいに、わたしは純然たる若人ではない。一生来るもんかとすら思えた三十路という言葉が、ひたひたと迫る年齢だ。

「それでね、今日、体育の沼田が」
「げっ、沼田、かんべん」
「聞いてよっ、ほんとむかつくんだからー」
「いや。無理、むり、ムリっしょ」

 店内の落ち着いたピアノクラシックに、あけっぴろげな甲高い声がのっかる。
 客が店を選べても、店は客を選べない。
 ガラス細工のグラスを用意しても、そこに注がれる液体が必ずしもワインとは限らない。オレンジジュースな時もある。
 でも、その不調和な元気の良さが、今の自分には助かる。しっとりとしたムードで、少し長めの時間を持て余してしまったら、わたしは泣いてしまうかもしれない。

 彼氏にフラれた。

 大学時代からの付き合いだった。お互いの実家は知らず、口に出すことはなかったが、将来はこの人と、と思うような人だった。
 恋の最初の夢のひと時が過ぎると、ゆるやかな倦怠期が訪れて、デートは水族館の空飛ぶペンギンから街中華の塩ラーメンへとなっていく。
 そのゆるやかさが、妙に馴染んで、心地よかった。それがずっと続いていって、そのままもっとスローになって、家族になっていくんだなと思っていた。

 一昨年の初詣で、人ごみに紛れてあやうく迷子になりかけ、それでも「二人このままで」と願をかけ、相手もきっと同じような願いをしただろうと幸せを思った。そこが二人の時間のピークだった。

 その年の春に三年計画の大きな仕事を受け持つこととなり、三年計画が五年の規模となり、いやいやもっと大きくと成りかけて、休日出勤も出張も多くなり、二人で過ごす時間も大きく削られていった。

 このままではダメだ、と二泊三日の台湾旅行を予約して、二人で本場の屋台飯を、なんて語ったりしていたら、やり手の先輩が胃潰瘍で身体を壊した。
 その日は名古屋への出張へと変わり、大事な用があるからと言うのを何とか説得し、二週間後のフレンチレストランでテリーヌのキャビア添えを目の前にしたら、そこで別れを告げられた。

 らしくない背広姿で固くなって
「これまでだよな、俺たち。ごめんな、ごめんなさい、貴重な時間を奪ってしまって」
 なんて、らしくないセリフを使われた。

 キャビアがやけにしょっぱかった。

 にこやかに笑って、思い出の映画館や公園や、それこそラーメン屋で、さっとお別れして欲しかった。その方があの人らしかった。いや、こう、踏ん切りがつかずに、さよならするのに形式ばっちゃうところが彼らしい、のかもしれないのだけど。
 だからなのか、別れたという実感がなかった。

 名古屋名物、ういろうのお土産を職場の同僚と片付けても、心は傷ついた箇所がわからないように、痛む歯がわからないように、じんじんと疼いて、所在なかった。

 隣のテーブルの女子高生は一年後には恥ずかしくなるような流行りの一発ギャグで「もう、古いよ、それ」なんて話を弾ませている。チーズケーキの白と、そこに添えられたレモンソースなんて、「オシャレ」とか「彩りのセンスある」とかそんな言葉を待っているだろうに。
 でも、そんなネットやテレビの聞きなれたセリフを瑞々しく言えるそんな仲は、確かに羨ましかった。

 思ったよりも長い、料理が来るまでの時間に、わたしはスマホを取り出す。ニュースやらファッションやら取り留めもなく。心がざっくばらんにスライドしていく。そして習慣からか、ほんとにそれは習慣なのだろうけど、彼氏のツイッター、今はXっていうけどわたしはどうもそれに慣れない、へとどうしても流れてしまう。

ひであき@hideaki9274・32m
勝龍軒の麻婆豆腐定食 相変わらず美味し♪

 わたしは何を期待していたのだろう。しているのだろう。
 ブックマークから外して、もう見ないって決めたのに、取り留めもない時間が来ると、どうしようもなくそのツイッターを覗き、そこに自分の痕跡がどこにもないことを認め、また言葉ではどうとも言い表せない気分に沈んでいく。

 ほんとに、わたしは、しょうもない女だ。

   *

 トマトとホウレン草のパスタを胃に収め、隣のテーブルには女子高生の代わりに化粧が濃いおばさんらが座り、食後のコーヒーも冷めていった。

 やっと取れた休日。一人で部屋にこもっていてはダメになる、とカフェにまで来て自分を保っている。
 そもそも保っているのが、自分なのか。
 ここにいる自分は、自分なのだろうか。
 本当の自分なのだろうか。
 あんなに笑っていた自分なのに。

 最近はこんな風に考え込んでしまい、哲学的だなと自嘲してしまうが、それもどうでもいい考え事なのだろう。
 こんなことよりも明日の天気や気温、このところ毎日快適なのだけど、を調べた方がずっと健康的で建設的だ。
 そしてそのわたしの手元にはスマホがある。

 だけど、そうした思考はとどまりを知らず、また、わたしを飲み込む。飲み込んでいく。その時だった。

 手元がふるえた。
 コーヒーカップの黒い液体が揺れた。
 身体が揺れた。
 おばさんの取り留めもない会話が「きゃっ」となった。
 わたしも何か声を出しそうになった。

 揺れは続いている。
 思ったよりも続いている。
 もしかして本格的に揺れるのでは、大きなものが来るのではと思ったところで、それは徐々に緩やかになり、収まった。

 震度はおそらく、3くらいだろうか。
 まだ心は震えている。
 地震。
 大震災。
 続いていく毎日の中で、完全に頭から可能性を消していた。
 蘇る。
 光景。
 写真。
 新聞記事。
 そして、彼氏の声。

 おばさん達は、スマホに見入っている。
 ラインでも送っているのだろうか。震災情報を確認しているのだろうか。
 わたしもニュースサイトを回ってチェックする。
 幸い、地震の規模は思ったよりも大きくないようだ。震源地は南関東の方で、机がガタコトと揺れるテレビの放送局の様子が映されていた。

 あの時も、そんな地震だった。
 彼氏と付き合いだしてまだスノボにも行ってなかったころ。
 地震があって。
 それは外国で大地震があった直ぐ後だったからなのかもしれないけど。

 震度3。
 その直後に、スマホが鳴った。
 思わず手に取ると、彼氏だった。

「無事だったか」
「うん」
「怪我はないか」
「うん」
「よかったあ」
「おおげさだよ」

「だって、心配だったんだよ」
「大丈夫だよ」
「でもなー」
「なんか恥ずかしいな、ありがと、でもやっぱり大げさだよ」

 わたしはニュースサイトのチェックを終え、しばらく店内の観葉植物を眺めた。
 それからツイッターへとタッチした。

ひであき@hideaki9274・2h
勝龍軒の麻婆豆腐定食 相変わらず美味し♪

 更新されていなかった。
 その当たり前の画面を見つめるわたしの目から、涙がこぼれた。

震度3

執筆の狙い

作者 えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

どうにかこうにか。こうにかどうにか。
よろしくお願いします。

コメント

fj168.net112140023.thn.ne.jp

拝読しました。
雰囲気づくりの描写に力を入れているのはわかりますが、本題に入るまでがちと長すぎやしませんか?
冒頭はもっとすっきりさせて良いかと。

―――

「トマトとホウレン草のパスタ、コーヒーはホットで食後に」
「かしこまりました」

ウェイターは身体が少し右に傾いでいる。ネクタイもぎこちなく締められていて、いかにも働き始めたばかりの学生アルバイトといった印象だ。その初々しさが妙に眩しく思える。きっと大学一年生くらいなのだろう。

店の名は「木漏れ日ヴィエント」──

喫茶店にしては広くて、レストランとしては狭い。
田んぼの中にぽつんと立つ、古民家を改装した雰囲気のあるお店。店内のあちこちに観葉植物が散りばめられていて、天窓からの陽を浴びて、その光をきらきら反射して。

そんな静かな雰囲気を求めて来たはずが、今日は制服を着た女子高生たちが主役のように座を仕切り、その甲高い笑い声が、BGMの『Greensleeves』をかき消している。

「さいあくー、今日ね、占いで、運勢最悪だってば」
「どうせテレビのやつでしょ。それにもう日付の半分は過ぎたじゃない」
「でもでも!」

無邪気なやりとりになんだか胸がちくりとした。
そういえば、高校の頃、私たちにとってカフェに寄ることはひとつの冒険だった。同級生の中で話題の先輩に告白するタイミングを皆で計画したり、学校帰りに制服のままでどこかに入ること自体が少し奮い立つ行為だった。けれど、いつしかそうした「特別感」は薄れ、自分の年齢が足し算されていることだけが逐一実感として残る。

しかしまあ、「若い頃」なんて言うほど私はまだ年をとっていない。実際、三十路はもう目前だけど。
でも、彼女たちの、この店との不調和な元気の良さが、今の自分には助かる。しっとりとしたムードで、少し長めの時間を持て余してしまったら、わたしは泣いてしまうかもしれない。

彼氏に──振られた。

大学時代から付き合っていた人。
四年付き合って、結婚のことを具体的に話したことはなかったけれど――それでもこのまま穏やかに時間が進み、家族になるんだろうなと勝手に思ってた。

―――

こんな感じで。

で、この後の二人のエピソードの描写を今以上に奥行を持たせていけば、もっと感情移入できると思いました。

fj168.net112140023.thn.ne.jp

おっと、
グリーンスリーブスはロン・カーターでお願いします(笑)
https://youtu.be/moTnpQlvFQE?si=ZvpkKqIHPQ3xz5g6

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

>凪さん

ありがとです。
時間を割いて推敲案まで見せていただいて、ありがたいです。


あっ、はい。
転部を立たせたくて、スローなテンポにしたのですけど、ご指摘をいただいて読み直すと、まどろっこしい感じが。
ですね。二人のエピソードを重ねたり、力を入れるところがもっとあったような。

描写バランス、むずかしーです。こういうセンス、自分はあんまりないというか、「スッキリ」というのは耳に痛いです。
ごちゃっとしがち。

凪さんの文章、すっきりしただけでなく、どこかロマンチックで雰囲気ありました。
自分の書いたのより大人な感じがあって。ああ、洒落てるなぁって。

動画を観たのですが「グリーンスリーブス」は趣きある曲だなー。
主人公が曲名がわかるおしゃれな人物というのもいいかも? うーん。でも思ってたのとちょっと離れちゃうかな。
ここらへん、作者の教養が人物にも反映されちゃいますよね。自分のは無知。はずかしー。むずかしー。

ヘツポツ斎(=佐藤)
133-149-194-131.east.xps.vectant.ne.jp

読ませていただきました。

あえて作家性的なところに話を寄せさせていただければ笑、やはりえんがわさんのお話は視覚超優位型だな、と言う印象です。いい、悪いとかではなく。

最近もろもろ内観を進めていて、「自分がなんのひとか」と「人さまがなんのひとか」を比較する、というのに興味をいだいておりまして。で、自分の場合何かというと「想念超優位型」なんですよね。感じたこととかよりも思考そのものが先にくる感じ。この観点から他の方のお話もいろいろ見て回れると面白そうだな、などという自分語りを盛大に決めつつ。

お話としては「描かれていること」に、そのまま主人公の気持ちも仮託されている印象です。変わらないままであってほしいと思ったものが変わってしまった、あるいは「変わっていたことに気付けていないと気付かされた」といったような。これはおそらく一人称だからこそ、さり気なく心理も描写の中に織り込まれる、と言う形になってきているのかもしれませんね。

外面が心理に接続され、また地震というできごとが「心の揺れ」をも描き出す。そうした景色を見せていただけた気がします。ありがとうございます。

アン・カルネ
KD106155051181.au-net.ne.jp

前半のお店紹介のところでは「喫茶店」となってましたけど、後半は「カフェ」。雰囲気的にはカフェの方があってるのかな、と思ったり。
タイトルが良かったなあと。私も地震と心の揺れっていうのが巧いなって思いました。
にしても元カレ、「怪我はないか」って、おまえが言う?って。たらしだな、コイツ、たらしだなってちょっと思ってしまいました(笑)。だからラストの「涙」にはとても共感しました。
私はパフュームオイルファクトリーの香水に添えられているストーリーがとても好きなのですが、それを読んだ時の読後感と同じような高揚感が得られました。
良かったです。

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

>ヘツポツ斎(=佐藤)さん

ありがとうございます。

>視覚超優位型

自分はけっこう感覚とか感じたこととか大事にするタイプかも。
なかなかね、「何を言いたかったんだ、あんた」なんて言われるような文章ばっか書いている気もします。

うん。
なんかヘツポツさんの分析を聞いていて思ったのですが。
主人公の見える景色に、それを見る主人公の感情というか心が溶け込んだようなものを描く。
というのが理想にある気がします。
むずかしーんですけどー。
理想は理想で高く持ちたいなー。

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

>アン・カルネさん

はい。「カフェ」で統一した方が良さげですね。うん。
失恋ものですけど、彼女も元カレも悪い奴として書きたくなかったんです。なんかこう、どーしーよもなく別れてしまったというか。でもそれがどこまで上手く行っているかはなんかあんまり手ごたえを感じないな。もっと巧く書きようはなかったかな。うーん。


>「パフュームオイルファクトリーの香水」

ググったらお洒落なサイトが映りました。
うー、そういうのを例に出していただくなんて、恐れ多い。ううう。
なんか、そう感じていただいてありがたいです。

でも、そろそろアンさんの好みから外れても、思いきった作品を捻り出さないと、いけない頃かも。
なんか冒険したい。

西山鷹志
softbank219054162233.bbtec.net

拝読いたしました。

>「木漏れ日ヴィエント」は喫茶店にしては広く、レストランとしては狭い。職場からは少し遠く、田んぼの中にぽつんとあるような一軒家だが、イタリア帰りというシェフの評判もあってか、なかなかに繁盛している。

いいですね。こんな場所
まるでオアスシのようで。
しかもイタリア帰りというシェフとなれば飲み物以外にも料理が楽しみです。
暇なひとならば半日くらい寛いでいたいが、そんなに長いと迷惑でしょうが(笑)

sp1-75-6-140.msc.spmode.ne.jp

ふと思ったのですが、
えんがわさんのさらっとした文体は、モノガタリーで受けるのではないですかね。
今回、あちらのサイトに掲載されている作品を読んでみてそう感じました。
日々のお題も創作意欲を刺激しますが、コラボコンテストなどに出品したらいかがかなと。

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

>西山鷹志さん

そですねー。
なんかちょっと贅沢な空間で、気分を転換できるような場所があったらいいなぁとか思って。
近所の畑の中のイタリアンレストランがモデルなんです。
ガレット、そば粉を使ったクレープ、とか初めて食べました。

ありがとう。毎回訪ねてきてくれて。励みになります。

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

>凪さん
モノガタリ―かー。

自分はお題に沿って書くのはあまり得意ではないのね。
でも短編がメインなのは今の自分には合ってそう。

時間があったら参加してみようかな?

久々の男
softbank126059016076.bbtec.net

【アリホワイト】えんがわさん、どーも💛 久々の男の心の中に巣食う女神の一人アリホワイトで~す。そして、そこの横にいるのが、へっこぽの片割れアリブラックでーす。さあ、ブラックも挨拶して。
【アリブラック】ホワイトよ、へっぽこは余計じゃ。えんがわどの、お久しゅう、アリブラックじゃ。よろしゅう頼む。
【ホワイト】さて、今回は素敵なゲストを招いています。国際久々大学特任教授のノブオ教授です。教授は大学で官能学を専攻。久々の男の性癖がご専門です。教授、一言挨拶をお願いします。
【ノブオ】マ〇コ!
【ブラック】?!
【ノブオ】マ〇コペロペロ!
【ブラック】こやつは何を言っておるのじゃ?
【ホワイト】まあ、ブラック。教授には深遠な洞察があるのよ。私が解説するから。さあ、教授、えんがわさんのこの作品について一言お願いします。
【ノブオ】ヘンリー塚本!
【ブラック】???
【ホワイト】説明すると、ヘンリー塚本というのはAV監督で、昭和の郷愁漂うエロを近年まで撮り続けた名監督。教授が伝えたいことは、文章表現の可能性のこと。近年、生成AIでリアルそっくりな画像ならぬ、CG動画が創られるようになった。官能小説も瀕死状態だと教授は思っている。そんな中、人間の手による文章表現をされているえんがわさんへの最大のリスペクトを教授はこの一言に込めている。この一言はAIなど使わず、人間の生身の頭脳で創作しているえんがわさんへのエール。
【ブラック】ホントじゃろか?
【ノブオ】瀬戸環奈ノー! 恋渕ももなイエース! Himariノー! 田野憂イエース!
【ホワイト】コレは……(汗)なかなか教授の言っている意味が取りづらいんだけど、こういうことじゃないかしら? 瀬戸環奈は最近の若手AV女優の中でも注目株の新進気鋭の超美人女優さん。恋渕ももなはちょっと前にデビューした中堅爆乳女優(Oカップ)HimariはQカップの圧倒的爆乳女優。田野憂はLカップの有村架純似のベビーフェイス女優。要するに瀬戸環奈とHimariは圧倒的なオーラを持っている。まさにパーフェクト。それに対して、恋渕ももなと田野憂は少し久々の男の個人的な好みで、ちょっと落ちる。多分、凪さんの修正原稿を受けての久々の男の個人的な感想。凪さんの書き直した文章はまさにパーフェクト。完成度が高い。しかし、久々の男は元々のえんがわさんの少し読みづらい原稿の方が人間臭いと思っている。先ほどのAIを受けての久々の男が個人的に思っていること。それは、これからは絵でも文章でも「上手い」ものではなく、その作者の人間らしい不完全さが求められるのではないか、ということ。
【ブラック】かなりこじつけっぽいぞ。このちんちくりんのハゲ中年の言葉にそんな深い意味があるのじゃろうか?
【ノブオ】チクビ
【ブラック】?
【ノブオ】チクビちゅーちゅー
【ブラック】うわあ! こやつ、わしに抱きついてきたぞ! 助けてくれぇーっ!
【ホワイト】(メガトンハンマーをノブオの脳天に振り下ろす)ドンッ!!!
【ブラック】はぁーはぁー 何だったんじゃあ……。
【ホワイト】気を取り直して二人で進めましょう。ブラックはこの作品を読み終えての第一印象は?
【ブラック】ヘツポツ斎どのとアン・カルネどのが言うように、地震と、ヒロインの心を同じ「揺れ」で鮮やかに表現している所が印象的じゃった。あと、主人公が地震の前に「哲学的」に自分自身のことを省みるシーンがあるが、このあたりの彼女の繊細な心の逡巡が見事じゃった。情景と心情のシンクロじゃな。
【ホワイト】物語の前半と後半でカフェでの隣客が女子高生から中年の主婦に代わるけど、これもそのシンクロをさり気なく狙っているかもね。
【ブラック】でも、わしはオチがよく分からなかったのじゃが……。
【ホワイト】どういうこと?
【ブラック】物語の終盤で、地震が今現在起こって元カレから安否確認の電話が来たのか? それとも過去の回想で昔の地震の時に彼氏から電話があったことを思い出したのか?
【ホワイト】まあ、丹念に読めばそんな誤読はないんだけどね。
【ブラック】この2つのパターンによって、ラストの涙の意味は変わってくるじゃろ。前者だったら別れたと思っていた元カレから電話が来たので喜びの涙になるし、後者だったら変わらない現状を嘆く悲しみの涙となる。
【ホワイト】誤読して2倍楽しめる小説よね。この繊細さが私もブラックも好きよ。
【ノブオ】マ〇汁のみたい……(小声で起き上がって)
【ホワイト】【ブラック】まだ生きていたのか!

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

>久々の男さん
ありがとです。
アリブラックさんもノブオさんもありがとう。

自分はあまりAVは詳しくないので、観るには観るのですけど女優名とか覚えきれないので、的を当てられない感じもありますけど。でも妙に伝わってくる説得力のあるコメントでした。


>ヘンリー塚本!
ですよねー。AVとか人間臭さって大事ですよね? なんというか演技しすぎたり、計算が立つと興奮しきれないというか。
素朴さというか、ハンドメイドっぽさって萌えの大きな要素だと思います。

>瀬戸環奈ノー! 恋渕ももなイエース! Himariノー! 田野憂イエース!
凪さんのスマートさには憧れますが、自分のできる範囲で自分の使う言葉で書いていかないといけないと思ってて。
だからそう言ってくださるのは、望外の喜びで、励みになります。

>誤読
がんばんないといけななですね。
説明を足すのではなく、流れではっと読めるのが理想ですけど、まだまだです。
読み直していただくのは嬉しいですけど、それに甘えちゃいかんよな。


ありがとでしたー。
温もりというか抱き心地のよい文章を書きたいものです。
ノブオさん、お大事に……

中小路昌宏
60.87.153.75

 読みました。

 読むに値しない投稿が多い中、えんがわさんの作品はいつも光っています。私には無い感性は、ただ若いから、というだけでなく、生来のものなのでしょうかね。
 題名は≪震度3≫でしたが、実際の中身の ≪失恋≫ というテーマを与えられただけでここまで書ける人はなかなかいないのではないでしょうか?
 もちろん、枝葉末節を言えば問題点もあるでしょうけど、それはこの作品の価値を損ねる程のものでは無いと、私は思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【わたしは何を期待していたのだろう。しているのだろう。】から始まり、
 
 【ほんとに、わたしは、しょうもない女だ。】という部分、それから、

 
 【やっと取れた休日。一人で部屋にこもっていてはダメになる、とカフェにまで来て自分を保っている】

 このあたり、失恋した虚しい気持ちが本当によく分かります。

 今後も、良い作品を書かれることを期待しています。ご苦労様でした。
 
 
  
 

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

>中小路昌宏

自分はあまり周りと比較しないので難しいのですけど、自分はそれほど上手くないし、他の方もそれぞれこだわりがあって個性的でなかなかいいとこだと思うんですよ、ここ。

失恋は自分は恋が実ることがほとんど無いので、実感が出たかもね。ははは。
ただ、恋愛ものはそんなに得意じゃないかも。
年齢も40半ばで、そこまで恋に生きる年じゃないし……保守的かな。もっと恋をした方が良いのかな。

まだまだ理想に至らないところがあるので、磨きたい。にゃ!

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

あー、敬称が抜けてたー。

中小路昌宏さん、ごめんなさい。
呼び捨てしちゃったよ。ごめんね。
ところで何て読むんんだろ? 中小路さんって。
なかのこうじまさひろさん?

中小路昌宏
60.87.153.75

 なかこうじです。1473年ごろ、応仁の乱で京都が大混乱に陥ったとき、京都の文化人や公家たちが越前朝倉家の庇護を求めて、福井へやってきました。そのうちの一つが中小路家の一族です。
 その途中、敦賀の民家で一夜を過ごした時に、どうか、お胤を授けて下さいと言ってその家の娘が中小路家当主の部屋へ遣わされたそうです。そして誕生した子を家祖として、我が家・中道家を創立したと、亡くなった父から聞かされています。
 どこまで本当なのかどうか分かりませんが、ロマンのある話なので、小説を書き始めた時から、ペンネームとして使っています。

 その100年後に朝倉家は織田信長によって滅ぼされていますから、中小路本家もその後どうなったのか分かりません。

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

>中小路昌宏さん

今はあるかどうかわからない、室町時代からのロマン。
夢がある由縁ですねー。いいっすねー。
敬称抜かしちゃってごめんなさいです。
怒らないで由来までお教えいただくなんて優しいなぁ。中小路さん。

飼い猫ちゃりりん
27.230.34.24

えんがわ様
久しぶりに、えんがわ様の作品を読みました。ほのぼのした気分になれる作品は、えんがわさんの18番ですね。
文章に優しさがあり、好感が持てます。
ふんわりとした優しいストーリーは、意外と書くのが難しいんですよね。飼い猫のような、刺激多めのストーリーの方が、実は書くのが簡単なんです。
良いものを読ませていただきました。ありがとうございました。

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

>飼い猫ちゃりりんさん

どうも。こんにちわ。
伝言板ではなんかつっかかっちゃってごめんね。華麗に避けてたから大丈夫か…

お久しぶりです。
自分はふんわりとしか書けない感じです。
ちゃりりんさんの「憎しみの河」を読もうとしたのですが、ハードすぎる展開に読めなくなってしまった。
「転校生の贈り物」はなんとか読めて、感想書いたーん。

だからこういうのって、好みの問題なのかな。
刺激多めのストーリーの方が自分には書けないなって思うんですけど、でも自分のタイプの方が少ないというのはわかる。

ほのぼのとした中に、ちょっとした切なさを潜ませたいのですが、むずかしーです。まだまだです。

夜の雨
ai249194.d.west.v6connect.net

えんがわさん「震度3-」読みました。

なにげなさの物語を書くのがうまいですね。

日常をさりげなく描きつつ、重要なエピソードはしっかりと語る。

それらが、説明ではなくて描くところがうまいです。

ウェイターの体が傾いているところとか、普段は気にしないところが書かれているので、詳細に世界が見えているのだなと。

女子高生が話している「今日の占いが最悪」だとか。
それが主人公の過去と絡み合い「ふられたことがわかる」ところなどは小説的な作法としてはうまい。主人公には、同情する。

人生何が起きるのか、わからないですね。

震度3の地震が起きたりするもので。
小説としての震度3の地震を読んでいるわけですが、作品の流れで読むと、主人公の置かれている立場が伝わってくる気がします。

これは文章が結構深いところで、共振しているのでしょう。

ラストまで読み、「ひであき」さんも傷ついているのだと感じました。(ツイッターが更新されていないので)
それは、主人公以外との事(件が原因)なのかもしれませんが。
それが、主人公には、現在のところでは、わからないのがつらいところです。

以前の「震度3の地震」のときには、主人公のスマホに連絡がはいって、「いたわりの内容が語られたので」御作のオチは堪えますね……。


ありがとうございました。

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

>夜の雨さん

ありがとです。

色々とさりげなく描いたのですけど、読者さんに半分は伝わっているような手ごたえがありました。

地震は怖いです。
最近大きなニュースないけど、そろそろ関東あたりヤバいと思う。思うだけならいいんだけど。

彼氏も良い奴だとは思うんですけど、もう主人公から知る術はないという。
人と人の間の距離、というのを書けてたら嬉しいな。

上松 煌
M106073145001.v4.enabler.ne.jp

えんがわさん、こんばんは

 感想返しが遅くなってしまいましたが、拝見しましたよ。
いつものえんがわ節で、気負わない日常が淡々と書かれていました。

 みんながホメているのにすみませんが、おれから見たらいくつか気になる点があり、ちょっと指摘したく思いますのでよろしく。
先ず、
★タイトル。
これは恋愛、しかも失恋話ですよね。
>>震度3<< という表題は果たして的確でしょうか?
あの3,11以来、震度3くらいでは日本人はびっくりしないから、失恋しても大した衝撃ではない、という暗示なの?
ちょっと意味不で気になりました。

★「木漏れ日ヴィエント」の描写
>>「木漏れ日ヴィエント」は喫茶店にしては広く、レストランとしては狭い<<
     ↑
 喫茶店の説明部分ですが、これはいらないのでは?
相対的に何を基準にして広い狭いと言っているのか曖昧で、立地や集客数により様々な店舗があるからです。
また、>>イタリア帰りというシェフ<< という記述があるため、読者のアタマには喫茶店よりむしろイタリアン・レストランが浮かんでしまう。
喫茶店なら【店主】と表現すべきです。
さらに中段に、
>>ガラス細工のグラスを用意しても、そこに注がれる液体が必ずしもワインとは限らない。オレンジジュースな時もある<<
     ↑
という記載で、ますますレストラン臭が色濃くなってしまう。
ソフト・ドリンクはレストランにもさまざまな種類が用意されているからです。


 その後の、
>>しっとりとしたムードで、少し長めの時間を持て余してしまったら、わたしは泣いてしまうかもしれない。 彼氏にフラれた<<
    ↑
 この記述と流れはいいですね。
でも、すぐ下の、
>>恋の最初の夢のひと時が過ぎると、ゆるやかな倦怠期が訪れて (中略) そのゆるやかさが、妙に馴染んで、心地よかった。それがずっと続いていって、そのままもっとスローになって、家族になっていくんだなと思っていた<<
     ↑
 が、よくない。
>>倦怠期<< が、心地よいはずがないのです。
恋愛に倦み疲れ、相手の人格や現在の状況に疑問を持ち、愛情に亀裂が生じる状態が倦怠期です。
男女の仲では決していい傾向ではなく、不和を経て破局に至ることが多い。
言葉選びが的確でないですね。

 だから、
>> 一昨年の初詣で、人ごみに紛れてあやうく迷子になりかけ、それでも「二人このままで」と願をかけ、相手もきっと同じような願いをしただろうと幸せを思った。そこが二人の時間のピークだった<<
     ↑
 の、言葉が生きてこない。
>>倦怠期<< が、>>二人の時間のピークだった<< はずがない。
でも、迷子になりかけたという記述は、彼らの将来を暗示していいですね。



>>その年の春に三年計画の大きな仕事を受け持つこととなり、三年計画が五年の規模となり、いやいやもっと大きくと成りかけて、休日出勤も出張も多くなり、二人で過ごす時間も大きく削られていった<<
    ↑
 これは一瞬、彼の近況かと思いました。
ちょっとどちらともとれる不親切な記述です。

>>いや、こう、踏ん切りがつかずに、さよならするのに形式ばっちゃうところが彼らしい、のかもしれないのだけど<<
     ↑
 これはラストの優柔不断なtel?・メール?の伏線でいい。

 あと、
>> わたしは何を期待していたのだろう。しているのだろう。ブックマークから外して、もう見ないって決めたのに、取り留めもない時間が来ると、どうしようもなくそのツイッターを覗き、そこに自分の痕跡がどこにもないことを認め、また言葉ではどうとも言い表せない気分に沈んでいく。 ほんとに、わたしは、しょうもない女だ<<
     ↑
 彼女も未練があるらしく、彼のsnsを覗く、この心理は実にいい。
小説はこのように書くのです。

 それからタイトルにある地震となるのですが、この話は復縁を匂わしても共感を得られそうですね。
ま、好みの問題ですが、そんな所感を持ちました。

えんがわ
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>上松 煌さん

>「深度3」
というタイトルは個人的には気に入ってるのですが、人によって解釈の幅がある、というかブレがある曖昧なタイトルということは自覚しないといけなかったかー。「失恋はたいしたことない」と取られてしまったら、失敗でした。
むずかしーねー。タイトルって。

>レストランか喫茶店か

その中間の店というか曖昧なところにカテゴリーされる店ってあると思うんだけど。
そこらへん上手く伝えられませんでした。
かといってこれ以上、説明に行を費やすのも凪さんがいうように余計になってしまうんでしょうし。
巧く伝えられないのがもどかしいなぁ。なんか、上手く表現する言葉が自分の中に見つからないんだよな。
「ビストロ」とか言うと余計分かりにくくなるかー。

>>倦怠期<< が、心地よいはずがないのです。

言葉選びまずかったですね。伝えたい気持ちと言葉が合いませんでした。うん。


ありがとうございます。
丁寧に読んでくださったのが伝わるコメントでした。
ありがたい。
ありがとう。
元気にやってきます。

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