超音速
時は20××年。日本スーパーエクスプレス航空(JSE)は、日の丸翼航空(HWA)や日本月光航空(jma)との競争激化により、超音速旅客機コンコルドを導入することを決意。花形路線に投入し、業績は右肩上がりになっていた。
ある年の夏休み、食品会社勤めの28歳の森口康太郎と27歳の森口靖子はハワイに新婚旅行へ向かっていた。
超音速旅客機コンコルドに乗って特別な思い出を作る予定だ。
「靖子、ハワイに行くの楽しみか?」
「うん!」
一方、私立探偵で紺色のスーツと赤いネクタイ、鼻の下の小さな髭がトレードマークの41歳の佐嘉銀次郎は、事件続きだったため英気を養おうと奮発してハワイに行く予定である。一人で観光地を回ったり、ドライブしたり、飲み歩きしたりするのが彼の楽しみなのである。
パイロットは2人。機長は46歳の永田正義。副操縦士は42歳、大潮赤尾。さらにエンジニアとして後藤信介39歳が乗っていた。
「大潮君、エンジンパワーチェックを頼む。」
「了解です、機長。」
テキパキとパイロットが動いたお陰で、定刻ちょうどの13時45分、JSE 246便は離陸。
「管制センター、離陸完了。」
「OK。良い旅を。」
気の利いた会話の中で、けたたましいエンジン音と共に機体の高度は上がっていく。
「機長、操縦交代します。高度は何フィート(飛行機の高度の単位。ジェット機の最大高度は30000フィートで、10000メートルほどである。)ですか?」
大潮の声がコックピットにこだまする。
「えー、12000フィート。」
「12000フィート了解、ありがとうございます。」
一方客室。
佐嘉は新聞を読みながらコーヒーを好物の嗜んでいる。いかにも紳士といった風貌によく似合った好みだ。
彼は好いた女性もいなく、一人の生活を楽しんでいる。
そんな彼とは反対に、楽しげに話し合う森口夫妻。
「明日はこのビーチ行ってみない?」
「マウイ島に着いたらこれは見たいよね。」
二人の会話が客室中に響いた時、機体が揺れた。
「な、何だ!!」
再びコックピット。
「エンジン異常なし、フラップも確認しましたが、正常です!」
「大潮君、方向舵を見てくれ!」
「はいっ、システム確認モニター、展開!」
警報が鳴り響くコックピットで、大潮が確認をする中、永田はコントロールを図って操縦桿を握り、エンジニアの後藤はマニュアルで対処しようとしている。
「機長、全システムを確認したところ、ラダー(昇降舵とも言い、航空機に重要な箇所である。)が故障して急降下しているようです!」
「分かった。私は無線をする、君は緊急着陸の準備を!」
「ラジャー!」
「管制センター、こちら246、メーデーメーデーメーデー!羽田空港に引き返したい!」
「246OK、受け入れ態勢に入る。」
コンコルドは空港に戻り出した。
「…ねぇ康太郎、どういうこと?すごい怖い…」
「大丈夫だよ靖子、きっと、きっと…」
だが揺れは収まらず、降下し続けている。誰もが死を覚悟したその時だった。
「乗客の皆様!機長の永田です!当機は故障により羽田に緊急着陸します、シートベルトを締め、背もたれを戻し、頭を下げてください!飲み物の紙コップやトレイは、通路に捨ててください、尖ったヒールやスパイクはを外してください、ご協力お願いします!」
「お客様!乗務員からお願いがございます、脱出の際は手荷物を一切持たず、シュートを滑って降り、90秒以内に300メートル程は走ってください!でないと、爆発が起きた際に、巻き込まれてしまう可能性がございます!」
それを聞くと乗客たちは一斉にトレイやカップを捨てて、スパイクを取ったり、ヒールを脱いだりし始めた。
機体はいよいよ空港の正面を向いた。
「はい今から有良の壁、東京電化製品店街ロケ、スタート!って、うわあああ!」
「嘘だろ、真上をコンコルドが!」
「み、耳が壊れる!」
ガシャン!!大きな音を立て、機体は着陸。
「大潮君、ブレーキ!」
「今踏んでます、あぁ、滑走路から外れるっ!!」
機体は滑走路離脱寸前で停止した。
「お客様、すぐに、ですが順序を守って降りてください!」
「村川さんはお客様のお手伝い、白鳥さんはシュートを展開してください!」
「分かりました!!」
「靖子、急げ!」
「うん、康太郎も!!」
「…ソレっ!」
二人でシュートに飛び乗り、地面まで滑る。結構高くて、靖子の手を握っていても恐ろしかった。
そして佐嘉は、冷静沈着だった。
乗務員を手伝い、乗客では最後に滑り降りた。
そして106人の搭乗者全員、走って機体から離れ、難を逃れた。
「靖子、俺たち生きてるんだよな…」
「えぇ、康太郎。」
ー上には青空が広がっていた。
執筆の狙い
飛行機が緊急着陸する、内容としては浅い短編です。
コンコルド、この通り名前にするくらい好きでしてね。
子供の時、よく憧れていました。
ぜひ、コメントお願いします。