桜田さんは優しい 第1話
○会社
美雪「えっ……クビですか?」
社長「そうだよ」
美雪「どうしてですか!? 確かに私、他の人よりちょっと失敗はあったかもしれませんけど、一生懸命……!」
社長「(美晴の主張が終わる前に)君ねぇ、一生懸命頑張るのは良いんだけど、ちょっとじゃなくて、毎日失敗ばかりじゃないか。今日だって、クライアントから苦情が来たし」
美雪「そ、それは……申し訳ありませんでした。でも……!」
社長「(美晴の主張が終わる前に)さっきも言ったけど、たとえ君がどんなに一生懸命頑張っても、結果を出せなかったら意味は無いからね」
○美雪、無言で涙目になる
美雪「……」
○夜、オフィス街の外・ベンチに座りながら、ずーんと落ち込む美雪(ベンチの隣には荷物が入ったスーツケースとリュックが置いてある)
美雪「はぁ……せっかく仕事を求めて上京したのに、どうして失敗ばかりしちゃうんだろう?」
美雪の回想シーン開始
○美雪、転んだ拍子にお盆に乗ったお茶をクライアント(会社社長)の頭に吹っ掛けてしまう。
美雪(独白)「前の会社では、お茶汲みで、転んだ拍子に元請の社長の頭にお茶を吹っ掛けちゃうし」
○会社中にコンピューターウイルスをバラまいてしまう美雪
美雪(独白)「その前の会社では、ファイルをダウンロードしたら、ウイルスを会社中にバラまいちゃうし」
○美雪、コンビニで大量のダンボールを誤発注して、店長共々押し潰されそうになる。
美雪(独白)「コンビニでは、間違って大量のダンボールを発注しちゃうし」
美雪の回想シーン終了
○ベンチで完全に落ち込む美雪
美雪「退職と同時に、社宅からも追い出されちゃったし。一体これからどうすれば……」
○落ち込む美雪の前に、何者かがおにぎり(白ゴマと鮭を混ぜた三角おにぎり)を差し出す。
?「はい、これ」
美雪「へっ?」
○美雪がふと見上げると、そこに立っていたのは桜田優真(笑顔)だった。
○美雪に話しかける桜田
桜田「僕が作った鮭と白ゴマのおにぎり。弁当の残り物だけど、食べる?」
美雪「(おにぎりを受け取りながら)あっ、ありがとうございます」
○美雪、桜田が作ったおにぎりを受け取り、一口食べる。
美雪「……美味しい」
桜田「気に入ってくれた?」
美雪「はい! ありがとうございます!」
桜田「ははは……それはどうも」
○桜田、美雪の隣に座って彼女に尋ねる。
桜田「それで、何で君はこんなところに座っていたの?」
美雪「えっ?」
桜田「だって、もう夜なのに、こんな所に女の子が一人でいたら危ないでしょ?」
美雪「(言いづらそうに)……実は私、今日会社をクビになっちゃいまして」
桜田「えぇっ!?」
美雪「しかも、今まで住んでいた社宅も追い出されてしまって、もう帰る場所が無いんです」
桜田「そうなんだ……」
桜田「地元には帰らないの?」
美雪「地元はここから遠いですし」
○美雪の回想シーン
○『売家』という紙が貼られた家の前で呆然と立ち尽くす美雪の図
美雪「帰ったところで、私の実家はもう無いですから……」
○美雪の回想シーン終了
○まさかの回答に一時絶句する桜田
桜田「……」
○慌てて謝る桜田に「気にしないで」と告げる美雪
桜田「あっ、ごめんごめん! 嫌なことを思い出させちゃって!」
美雪「いえ、気にしなくて結構です」
○家に住まないかと誘う桜田
桜田「家が無いんだったら、住まわせてあげようか」
美雪「えっ!?」
桜田「だって、こんなところで野宿をしたりネカフェで寝泊まりするよりかは良いでしょ。市役所やホームレス支援だって、この時間はもう閉まっているし」
美雪「そうですけど……良いんですか!?」
桜田「(笑顔で)うん」
美雪(独白)「えっ、何なの、この急展開!? まさか、突如現れたイケメンから、突然『住まわせてあげようか』と言われるなんて! これって、もしかして……同棲のお誘い!?」
○美雪、妄想シーン開始
○美雪、ゆっくりと目を開ける
美雪「ん……うーん……」
○そこには爽やかな笑顔で声を掛ける桜田に驚く美雪
桜田「おはよう」
美雪「うわぁっ!」
桜田「あっ、驚かせちゃってごめんね」
美雪「……あっ、大丈夫です」
美雪(独白)「朝、爽やかに『おはよう』を声を掛けられて……」
○おにぎりに卵焼きとみそ汁の朝食を見せる桜田
桜田「さぁ、朝ごはんだよ。とっても美味しいよ」
美雪(独白)「朝ごはんには、おにぎりに卵焼きとみそ汁が付いていて……」
○桜田、箸で卵焼きを持って、美雪に差し出す。
桜田「はい、あ~ん」
美雪「あ~ん(口を開ける)」
○卵焼きを口にして、頬に手を当てながら目を輝かせる美雪
美雪「美味しい!」
桜田「でしょ?」
○外出時
美雪「それじゃ、行ってきまーす」
桜田「待って」
美雪「どうしたのですか?」
桜田「行ってきますのキスがまだだろ?」
美雪「えっ……?」
○桜田、美雪の両頬に手を当てて、顔をゆっくりと近づける。
○すんでのところで、美雪の妄想シーン終了
○妄想を膨らませて顔がにやける美雪に対し、それを訂正する桜田
美雪(独白)「な~んてことが……」
桜田「あっ、家と言っても僕の家じゃなくて、僕の知り合いが経営しているアパートなんだけど」
○それを聞いて肩を落とす美雪
美雪「あっ……そうですか……(少し肩を落とす)」
桜田「ん?」(美雪が肩を落とす様子に疑問を浮かべる)
○アパートまで歩きながら会話する桜田と美雪
桜田「へぇ、柏原さんって福井から上京してきたんだ」
美雪「はい。福井だと求人が少ないし給料も安いので」
桜田「なるほどね。でも、蟹は美味しいでしょ?」
美雪「そうですね。でも、私の家は貧乏なので、蟹は今まで蟹缶くらいしか食べたことがないんですよ(苦笑)」
桜田「えっ、そうなの!?(驚)」
美雪「はい(苦笑)」
美雪「桜田さんは、福井に行ったことはあるのですか?」
桜田「僕は福井に行ったことはないな。でも、機会があったら一度で良いから行ってみたいな」
美雪「いや、田舎ですから行っても何もないですよ。冬は寒いですし雪も多いですし」
桜田「でも、蟹があるじゃない!」
美雪「いや、それ以外は大したことないですよ~」
○笑い合う2人、美雪は桜田との会話が楽しいと思うようになる。
美雪(独白)「桜田さんと話していると、何だか楽しいな。人と話していて、こんなに楽しいと感じたのは、初めてかも……」
○アパート到着
桜田「ここがアパートだよ。建物はちょっと古いけど、リフォームはしているし、風呂と台所も付いているから」
美雪「ありがとうございます。初対面なのに、色々と助けてくださって」
桜田「お礼なんていらないよ。僕は大したことはしてないから」
美雪「でも、嬉しかったです」
桜田「(手を振って)それじゃあ、後は頑張ってね」
桜田、その場を立ち去る。
美雪(独白)「ここで別れたら、もう二度と会えない」
美雪「桜田さん!」
桜田「(振り向く)何?」
美雪「あの……私!」
○美雪が告白しようとしたとき、スマホのアラームが鳴り、桜田の足が止まる。
桜田「あっ、ごめん。俺のスマホだ」
○桜田、ポケットからスマホを取り出す。
桜田「あっ、LINEだ」
○桜田のLINE画面には、『今から自宅に帰ります』という文面。
美雪「あの……誰からのメッセージですか?」
○桜田、美雪の問いに答える。
桜田「あぁ、嫁から。『今から自宅に帰る』って」
○美雪、桜田の発言で目が点になる。
美雪「えっ……奥さん、いたんですか?」
○スマホを持ちながら、美雪に自身が既婚者と告げる桜田
桜田「あぁ。言っておくけど、僕は既婚者だから」
○唖然とする美雪
○アパート内、ちゃぶ台の上に伏する美雪の後ろ姿
美雪(独白)「早すぎる失恋だったな……」
○桜田の笑顔を思い出す美雪
美雪(独白)「あの人、私よりも年上に見えたけど、かなりカッコ良かったな……おにぎりも美味しかったし」
美雪「でも……」
○桜田が「僕は既婚者だから」という言葉を思い出して落ち込む美雪
美雪(独白)「あんな素敵な人に奥さんがいない訳がないか……」
○慌ててスマホやノートパソコンで職探しを始める美雪
美雪「って、いつまでも落ち込んでちゃダメだ! バイトでも違う業種でも何でも良いから、まずは新しい仕事を探さないと!」
○求人誌を読んだり面接をしたりする美雪の図
○美雪のスマホに会社から1通のメールが届く。
○男性社員に社内を案内される美雪
男性社員「弊社では、総合制作会社のデザイン部に若手の人材育成に力を入れています」
男性社員「柏原さんは、デザイナー志望でしたよね?」
美雪「はい」
美雪(独白)「小さいけど、デザイン会社に就職することが出来た」
男性社員「柏原さんのポートフォリオを拝見した上で、推しておきましたから」
美雪「ありがとうございます!」
美雪(独白)「これを皮切りに頑張るぞー!」
○社内ドアに男性社員の手が掛かる
○職場にいた社員が一斉に美雪の方を振り向く
○社員からの視線に、赤面する美雪
美雪(独白)「あーっ! 皆が一斉に私を見ているーっ!」
男性社員の声「新しく配属された柏原美雪さんです」
○緊張しながら挨拶をするも、思いきり舌を噛んでしまう美雪
美雪「か、柏原美雪です。不束者ではございますが、一生懸命頑張りますので、よろしくお願いしましゅっ……!(思いきり舌を嚙む)」
○くすくすと笑う社員達に赤面する美雪を宥める男性社員
男性社員「そんなに緊張しなくて良いですよ」
美雪「(舌を痛めながら)しゅ、……」
美雪(独白)「こういう場面は、何度やっても緊張するなぁ……」
○美雪の席の椅子を引く男性の手、そこへ美雪が座る。
男性社員の声「柏原さんの席は、コチラです」
○スーツ姿の桜田の足元を出す。
桜田「お待ちしておりました」
○桜田、再登場
桜田「教育係の桜田優真です」
○笑顔で挨拶する桜田
桜田「こんにちは、柏原美雪さん」
○桜田とまさかの再会に、衝撃が走る美雪
○美雪、驚きのあまり大声を出しながら立ち上がり、社員が一斉に美雪の方を振り向く。
美雪「えーーーーーっ!?」
桜田「どうしたんですか?」
○心配そうに声を掛ける桜田
桜田「声が大きいですよ?」
○ハッと我に返り、しどろもどろになりながら謝罪する美雪
美雪「あっ……す、すみません……」
○逃げるようにお手洗い室へと走る美雪
美雪「ちょっと、お手洗いへ!」
桜田「?」
○美雪について、ひそひそと陰口を叩く社員達
女性社員A「ねぇ、初日から大声出しちゃって、大丈夫なの?」
女性社員B「今時の若者は、皆あんな感じなのかしら?」
○お手洗い室
○水でバシャバシャと顔を洗う美雪
○両手で両頬をパンパンと叩く美雪
○鏡の前で予想外の事態に悩む美雪
美雪「まさか、こんなところで桜田さんと再会するなんて……」
○笑顔の桜田を思い出す美雪
美雪(独白)「ダメだ! やっぱり桜田さんの顔を見たら、ドキドキしちゃう!」
○黒コマに白文字で、「バレたら、ここにはいられない」
○美雪、右手を胸にキュッと押し当てて、自身の恋心を隠し通すことを決意する。
美雪「この気持ち、絶対誰にもバレない様にしなくちゃ……!」
執筆の狙い
伝言板で「脚本形式でも規約違反にはならない」と言われたので、投稿しました。
無能すぎて仕事が長続きせず、遂には路頭に迷ってしまったポンコツOL・柏原美雪は、通りすがりの男性・桜田優真に手を差し伸べられて一目惚れ。2人は急速に仲良くなるのだが、実は桜田は…。
創作大賞2025 エンタメ原作部門に向けて、投稿する作品です。
なぜこの作品を書いたのか
「どうしようもないときに、異性から手を差し伸べられると、ときめいちゃうよね。たとえ相手が○○(答えは、作品を読んでね)でも…」という想いを込めて書きました。あまり無いタイプの話だと思ったので、書きたいと思った次第です。
表現したいものは何か
脚本形式だが、優しくて何かと世話を焼いてくれる桜田と彼を前にドキドキが止められない美雪を楽しんでくれると、ありがたいです。
コメントに何を求めるか
批判、ダメ出しだけの文章だと落ち込むので、長所が無くてもせめてアドバイスは書いてほしい(見込みが無いなら、スルーで)。あと、続きのネタに困っているので、詳細はコメント欄にて。