かけ湯しないで風呂に入ると、ちんこからにゅわ〜と白い入道雲み
↓変な女との、とあるLINEのやりとり
ぽくちん「お風呂みんなが入った後だと、白いの浮いてたりしない?」
変な女「白?」
変な女「カス? ポツポツ……?」
変な女「さっきから、何を言ってるんですか?」
ぽくちん「最後だとそういうことがない? 前が入った人の垢というか」
ぽくちん「かけ湯しないで、そのまま湯船の中に入っていると、そういうことになって、お母さんとお姉ちゃんにすごい怒られたことがある」
ぽくちん「身体も洗わず、かけ湯けもしないで、ね」
変な女「笑」
変な女「まぁ、、身体洗うかかけ湯したほうがいいと思いますけど笑」
ぽくちん「◯◯ちゃんの家族は、みんなかけ湯したり、身体洗った後に入るから、白いのが浮かないのかな?」
変な女「そ、そうだと思います笑」
変な女「湯船は、身体をきれいにするためじゃなくて、身体を温めるために入るものですから」
変な女「まあ家族によってルールが違うと思います」
変な女「参考になったならよかったです」
ぽくちん「むかし、一日中、仕事して帰ってきて、そのままの足で湯船に入っちゃってた」
変な女「すごい笑 外国人みたいな風呂の使い方してますね笑」
※
さて、下品な話で恐縮だが、ぽくちんはむかしから、風呂に入るときに、かけ湯というものをしたことがなかった。
一日仕事をして帰ってきたその足でそのまま湯船に浸かっていた。
子供の頃はとくに大丈夫だったが、20代後半からだろうか、とつぜん、家族からクレームが届くようになった。なんでも、白いプツプツしたものが湯船に浮かんでいるという。
さいきん、友達が、職場(病院)の同僚を連れてぽくちんのマンションを訪ねてきた。
その同僚とやらは、36歳の童貞で、一度も女性と付き合ったことがなく、背は158㎝くらいで、禿げていて、11月下旬なのに半袖短パンで、釣竿を背負ってやってきた。趣味は釣りと全国の二郎系ラーメン巡りということで、一日3〜4食、二郎系ラーメンを食べることもままあるらしく、二郎系ラーメンを食べた後に病院に出勤することもあるらしく、そういうときは、物凄い匂いを発しているらしく、リハビリ室に入った瞬間、職場の連中が大騒ぎをして、「なんだこの匂い!」「匂いやべぇ!」「クッセェーーー!」とパニックになるらしい。
たしかに、年がら年中、二郎系ラーメンを食べていそうな見た目をしていた。背脂を吸収したためか、全体的に身体がヌルヌルしていて、小柄ではあるものの身体もチャーシューみたいにパンパンに膨らんでおり、それでいて獣のように毛深く、小型イエティみたいだった。
この男については、友達から「すごい男がいる」と何度も電話で聞かされていたのだが、会うのは初めてだった。今日は釣りのためにぽくちんがいる地域にやってきたとのことで、ついでにぽくちんのマンションに立ち寄ってくれた。
しかし、ぽくちんの部屋ときたら、水に浸けておいてある生玄米と、iPadしか置いてなかったため、すぐに、温泉に行こうという話になった。
彼と相対したものの、ろくに話もせず、彼は、ぽくちんの部屋を出ると、マンションを飛び跳ねて移動した。すごい速さで駆けていき、階段にさしかかると、ジャンプして、階段の中段くらいのところまで降りると、もう一度、ジャンプして下っていった。そして、一人、マンションの外に出ると、「どの車!?」と、3階にいるぽくちん達を見て叫んだ。
「グレーのヴィッツ!」
とぽくちんが叫ぶと、「アレか!」と言って、また走り出していった。ぽくちんが遠くから赤外線のスイッチをピッとやってやると、彼はドアを開けて後部席に転がりこんだ。
なんだこいつは、思った。
ぽくちんと友達も車に乗り込むと、温泉に行く前に、どこか食べに行こうという話になり、彼が肉を食いたいというので、近くのステーキ屋に行くことになった。
ぽくちんと友達は400g、彼は600gの肉を注文した。そのときの彼の食い方は凄まじいものだった。まず、肉を頭上高くにかかげ、それに向かって自らかぶりついていくというものだった。フォークを口元に運ぶのではなく、自分からその高さまで口を持っていっていた。また、肉を噛みちぎるさい、ウェルキンゲトリクス率いるガリア人部族たちがするように、首を激しくふって、噛み切った反動で後頭部が後方に激しくもたれるという、一回いっかい、噛みちぎるたびに、『いらっしゃーい』みたいに、アゴが天井に向くぐらい上を向いていた。
「何この食い方?」と俺は友達に聞くと、
「これマジだよ」と友達は言った。
「俺と会うのが初めてだから、爪痕を残そうとしてるんじゃなくて?」
「違うよ」と、友達は言った。「こいつはいつもこうなの。いつも、病院の食堂でもこの食べ方をしていて、もう病院名物になってる」
「へぇ」とぽくちんは感心して答えた。
「まぁ、病院のおばさんたちもみんな笑ってるよ」
「最初の一口だけふざけてやってるのかと思ったら、ずっとやってるじゃん」
「そう。食べ方の癖だけは直らないっていうね」
「へぇ〜〜!」と、ぽくちんは感心して、彼をマジマジと見つめた。「狙ってやってたら寒いけど、これ、マジなんだぁ〜〜……。あぁ、たしかに、これ、マジだね、これはマジだわ。いや、これはすごいわ。やっぱり、いるんだね、こういう人って、いや、いいよ。これはいい。すごくいいと思う……。これは、なくなっちゃったら、寂しいやつかもね」
「でしょ?」と友達は自分の手柄のように言った。「俺もすごい好きなんよ」
友達は続けて言った。「女から見たら、ちょっと引くかもね」
「やっぱ、引かれるかねぇ。俺は、すごくいいと思うんだけどなぁ」とぽくちんは目を輝かせながら言った。
彼は、まったくお構いなしといった調子で肉を食べ続けていた。
ぽくちんは言った。「俺がさ、この、たった一人の人間が、これだけ強く感動してるんだからさぁ、たぶん、女のほうでも、感動するやつがいても不思議じゃないような気がするんだけどなぁ? 同じように感動する子は絶対いると思う。男より少ないだろうけど」
「俺も登呂田(とろた)を見ていると思うんだけどね」と友達は言った。「でもこいつ、もう諦めてるらしくて、今世は恋愛はいいんだってさ」
「今世は?」
「ん、まぁ」と登呂田氏は、肉を激しく噛み切りながら答えた。
「俺はそのままでいいと思う」ぽくちんは言った。「なくなっちゃったら、ちょっと寂しいかもね。冬なのに短パン、半袖、背中に釣竿背負ってる。初対面の人の車にダッシュで乗り込んでいく。おまけにこんな飯の食い方されたら……ねぇ」
「病院でも、けっこうこいつのこと好きな人多いんだよ。もちろん女も含めてね」と友達は言った。
「……」
彼は恋愛の話になると、どこ吹く風といったように会話に参加しようとはしなかった。
友達が疑問を投げかけた。「その、さぁ……。こういうのを、自信満々でやられるのと、つい、癖で、しかたなく出ちゃった、というのとでは、大きな差があると思わない? 俺はこいつの、この、勝手に出ちゃった感がすごいいいと思うんだよね。直そうとしているけど、直らなくて出ちゃった……、みたいな? その方が可愛いような気がする。これが、自分から出そうとしたり、自分で許しちゃってると、ちょっと話が違くなってこない?」
「たしかに」とぽくちんは言った。
「一応は、君のこと気にしてるんだよっていう気遣いは欲しいと思う」
「一応は?」とぽくちんは聞いた。
「一応は」と友達は答えた。
彼はなんのことかさっぱりわからない、といった様子で、会話に参加せずに肉に喰らいついていた。
※
銭湯に行くと、また例のごとく、彼は床のタイルを駆けていき、「どーーーん!」と言って、湯船に飛び込んだ。
ぽくちんは思わず「おお……」と言ってしまった。
「今どきやるっていうね」
ふだん、こういうときに、どちらかというと、常識知らずのために注意される方の立場であることが多い友達が、「お前、まわりの人に迷惑だからやめろよ」と言った。
「えー! いいじゃん! 今、だれもいないじゃん!」と登呂田氏は言った。
まるで、人がいないときは飛びこまなければソンと言わんばかりだった。プールの飛び込み台かなにかのように思っているらしい。
たしかに、これまで多くの奇人変人を見てきたが、ネットでの活動を通じても、いろんな変人を見てきたが、彼はまた一味違うらしかった。この手の輩は、たいがいニートだったり働かなかったり、底辺層をウロウロしているのが常だが、彼は立派に作業療法士の資格をもって病院に勤めている36歳だ。ちょうど常識人と変人のあいだを自由に行き来するので、こちらでもどちらで対応していいかわからなくなる。
「こんな人間がそこらを車で運転している事実があるんだから」とぽくちんは言った。
「身体洗えよ」と友達が言った。
登呂田氏は身体を洗わずに湯船に入っていた。「えー! いいじゃん! はやく入ろうよ!」と彼は子供みたいに言った。ぽくちんと友達は洗い場で身体を洗っていた。先に話した通り、ぽくちんはもともと身体を洗う習慣がなかったが、彼もまたそうらしかった。しかし、ぽくちんは公共浴場など、TPOに合わせて、ときたま身体を洗ったりはするが、彼はそれすらもしなかった、というより、頭から考えていないようだった。
ぽくちんは軽くシャワーだけ済ませて、友達より先に彼のもとへ行った。彼はのほほんとした顔で湯に浸かっていた。
ぽくちんは彼のとなりに座ると、その瞬間、すごい光景を見た。
彼の身体から、脂身のようなものがにゅわ〜〜っと浮かんでいたのだ。背脂? ラーメンのスープの脂身みたいなものが浮かんでいた。白く濁って脂分が浮いている。ポツポツしたもの、というレベルではなかった。二郎系ラーメンの背脂? それをつぶさに観察していると、とくに彼のちんこの裏の部分、金玉の裏部から、にゅわ〜〜っと、白い雲のような、金玉の裏がタバコを吸っているかのような、あきらかにちんこが基盤として放たれている白い入道雲のようなものがあった。
やっぱりちんこなんだなぁと思った。世間のちんこに対する答えがあらわれていると思った。たしかに、これは「悪」だと思った。
だから、みんな、ちんこに対して、悪徳めいたもの、悪い、邪悪なものとして対峙するのだろう。
たしかに、いちばん、「こもる」のだろう。金玉の裏がへばりつく、あのやるせなさ、あの不快感、湿気感、下着の中の陰気、それが湯気という形で外にひらかれている。
ちんこだけ特別にとんこつペーストを塗りたくったわけではない、条件でいえば同じなのだ。条件でいえば、ちんこも全身も同じ肌であり、湯に浸かることで毛穴が開かれるという同じ条件でつらぬかれている。が、入道雲を発しているのはちんこだけだった。
「悪」だと思った。人々がちんこを魔的なもの、魔大国の帝王みたいに考えているのは、ここからきていると思った。
外国のトイレには、腰ぐらいの高さの、妙な高さの洗面台が常設されていると聞いたことがあるが、いったいそれはなんのために使うのかわからない高さのために日本人は最初戸惑ってしまうらしいが、あれは、ちんこを洗うためらしい。彼らは毎日風呂には入らないが、ちんこだけはしばしば洗うのは、この魔の所業をおさえるためだろう。
執筆の狙い
タイトルは『かけ湯しないで風呂に入ると、ちんこからにゅわ〜と白い入道雲みたいのが浮かぶ』です。
https://youtu.be/xfaZjVkUz_E
この前、すごく面白い動画が撮れたのでぜひ