海旅ダイアリー
珈琲の海
角砂糖カプチーノに投げ込めば、泡の下の珈琲プールに沈んでった。
寒風なびくバルコニーには、ベーコンエッグトーストにブルーベリージャム。
ゆっくりと平らげてやろう。
誰もいないテラスで独占するは、紺碧の海一面。
薄青の空には、はは、海と空の真ん中色の富士山まで浮かんでら。
カプチーノとトーストを詰め込んで、ぼくも水と大地の一部になろう。
地球へのラブレター
周りにしゃへい物がないので、風がようしゃなく吹き付ける。
広い空はからっとしていて水色。
その下には青と緑の中間、エメラルドグリーンの海が太陽に照らされ波打ち。
そのせんたんがレース状の白いあぶくと一緒にぼくに襲いかかる。
ぼくはわざとそれをぎりぎりまで引き付けて、ステップしてよける。
貝殻の混じった砂が水にぬれてしめっぽい色になる。
ぼくの茶色のスニーカーのくつさきはわずかにぬれたが、くつしたはまだまだ大丈夫だ。
また次の大きな波が来る。
ぼくは息を弾ませ「よっ」とする。
そんなふうに一時間、海岸沿いの砂浜を歩く。
誰もいない砂浜を。
ぼくはこういうのが好きだ。
白いバス停
晴れの天気とちょっと重い足で見つけたバス停は
真っ白な待合室を備えていた。
日を透かした光の中、開け放たれた窓には、真っ青のブルーの海。
辺りは車の音と波音とトンビのピーヒョロロ。
目当てのバスが来たが、もう少しこの窓の風景と一緒にいよう。
バスはまたいつも通りここに来て、ぼくを次へ運ぶのだから。
老人と犬
ざああああ。ざああああ。
波は穏やかに砂浜を滑る。
老人が犬を連れて、砂浜を横ぎる。
犬はぐいぐい紐を引っ張り、やがて老人は駆け足になり、とうとう砂浜を駆け出す。
犬は尻尾を振り、首を上げ下げし、砂を散らし、老人の手のひらに紐がくいこむ。
足が持たず、背中がきしみ、笑いがこぼれ、とうとう歩が止まる。
冬の暖かな日、風が休むこの時。
濃紺のジャンパーの中で、うっすらと汗が滲んだ。
老人は口を丸める。
「そう急いちゃ、いかん」
ざあああああ。ざああああ。
浜から競り立った小山に、木のベンチがある。
松林の間から、老人と犬は金色の海を望む。
老人も犬も缶ビールも、その空気の一つとなる。
執筆の狙い
映像詩というものをやってみました。
以下のリンクから各詩をつけた映像に飛びます。
珈琲の海
https://youtu.be/mZ6IHnhO3Kc
地球へのラブレター
https://youtu.be/apRmrzvHejY
白いバス停
https://youtu.be/MUjmnl06l2M
老人と犬
https://youtu.be/AAkOCmjk-pI