とある日
僕はごくごく普通の会社員だった。
毎日朝6時に起きて否、起きようとして布団と激しい戦いを繰り広げ、なんとか起きてそのまま洗面所へ。顔を洗って身支度しリビングに言って冷蔵庫を開ける。冷凍庫に長持ちするように入れておいた55円の食パンが解凍されて冷蔵庫にある。ソレを取り出しその他諸々気分で食材を取り出す。今日はハムとレタスとマヨネーズ、それからヨーグルトだ。適当にマヨネーズを掛けてレタス、ハムを乗せてトーストを作り
「いただきます」
とパンにかじりつく。
チク サクッタク チク タク カチッ チク タサクッ
時計の音とパンにかじりつくたびになる音しかしない空間に耳を傾けながら
「ごちそうさま」
と言ってシンクの中にお皿を入れた。
あ、カーテンを開けるのを忘れてる。 カーテンを開くと太陽の光が部屋に差し込んできた。
今日もいい天気だなぁ と思いながら窓も開けてみた。
朝の冷たくて澄んだ匂いと空気が鼻にすっと入ってきて、胸の中に青空が広がる。僕はこの瞬間がとても好きだ。
おっと、さてもう時間がない。洗面所へ少し速歩きで行き、歯磨きをパパーっとして髪をセット。忘れ物がないかっチェックをしてカバンを持ち玄関へと向かう。もちろん窓を占めるのも忘れない。
「いってきます」
誰もいない家に言葉が置いてけぼりにされているのを少しさみしく思いながら鍵を締めた。
それから半年たった今、そんな毎日を今は送っていない。
今僕はコンロに火をつけてヤカンのお湯をわかせている。今日は布団に圧勝して起きたのでスッキリした気分だ。
最近お気に入りのジャズをスマホで掛け、珈琲豆を削る(僕は手動で削るタイプのやつ)
ゴリゴリゴリゴリ
ポコポコポコ ピューッ
♪♫〜
前までの静かな空間が嘘のようにそれぞれが奏でる音が合わさって朝を迎えている。
珈琲を飲みながら決して高くていいやつではないお気に入りの万年筆を原稿用紙に走らせていく。音楽は集中するためにちょっと止めて、代わりに窓を全開にした。
カリカリ カリ カリカリ ぎいっ
僕は椅子を少し引いて腕を伸ばした。ふと時計を見るともう9時を過ぎている。
「はぁ… 」
どうも今日はうまく書けない。書いていくにつれてアイデアがぽんぽんと出てくることもあるのだが、どうやら今日はその日ではないらしい。
こういう時は外を見よ! と聞いたことがある気がするし、外出するかなと思い窓を締めた。
行く先は 「オレンジ街」
オレンジ街は、僕の住んでいるこの街の観光地になっているレトロな街だ。
「オレンジ」 というのは、この街で昔オレンジが多く植えられていたらしく、名物になっていたから。ソレに加えて、夕暮れ時に街がとても綺麗に夕日に照らされてオレンジ色のなるのでオレンジ街というらしい。
僕は町並みを堪能しながら歩いていく。夕方に観光客が多くなって混んでしまうので今の10時ぐらいがベストだ。
とはいってもさすがは観光地。時間帯関係なく外国人も日本人も多く行き交っている。
そんなことを思いながらさっきしれっと狩った夕暮れコロッケを頬張った。
サクサクの衣に、中はホクホクのじゃがいも、そしてアクセントにドライオレンジが細かく刻まれて入っている。このコロッケが好きすぎて、ここに来るたびに買っているのだが、まったく飽きない。むしろやみつきになってしまうのだ。
そこでふと、とある店に目が止まった。
煉瓦でできている町並みにはあまりなじまない木造の小さな店。どこか浮いているようで不思議と馴染んでいる。
こんなお店、あったっけ?
あったら絶対に行っている。落ち着いた、今にも木々の木漏れ日の中に溶け込んでしまいそうなお店。僕の好みにどストライクだ。新しくできたのかな? と思いながら興味津々で入った。
チリンチリン
背の低い、若芽のような色の髪をしたいかにも妖精のような少女が店の奥から出てきた。
「いらっしゃいませ」
僕はしばらくその可憐さに見惚れていたが、ふとそこで店の違和感に気がついた。
「蝶?」
美しい太陽のような色をした蝶があたりをゆっくり、ひらひらと舞っていたのだ。
「はい、蝶です。でも普通の蝶とは違うんですよ?」
んふふっ と可愛らしい笑みをこぼしながらその店員は言った。
「あの、ここってなんの店なんですか? 」
この店にはたくさんの机と、引き出し おまけにキッチンまである。喫茶店のような、でも少し違うような不思議な店だ。
「ここはお手紙のお店です。」
「手紙? 」
「はい、ここには世界中の便箋や封筒、ペン、インクなどなど、お手紙を書く上で使えるものは何でも揃っております。ここでは好きな飲物やお菓子を食べたり音楽を聞いたりしながら、思いを、誰かに伝えてあげたいことをお手紙にして、その手紙を今必要としている方に届けるというものです。 宛先は自由です。過去の自分に書くつもりでも、未来でも、家族でも友人でも構いません。ただし、〇〇へ と書いてはいけませんからね 」
不思議なシステムだ。そんなファンタジーのようなことあるのだろうか。いや、あるのかもしれない。このお店ならなんとなくあるきがする。
「書いてみたいです 」
もしそんなことが可能なら、僕はどうしても伝えたいことがある。
その店員はニコッと微笑み、
「かしこまりました 」
とお辞儀をした。
んふふっ
「あのお客様、とても素敵なお手紙を書かれていきました。ん? そうですか。 それではこのお手紙を届けましょう 」
蝶と話したその妖精は手紙にふうっと息を吹きかけた。手紙はゆっくりと蝶の姿となり窓から外へと飛び立っていった。
パサッ
「ん? 手紙?」
机の上で勉強をしていたら窓の方から何かが落ちる音がしたので見ると手紙が落ちていた。
「机の上に手紙おいてて落ちちゃったのかな? 」
そう思いながら手紙を拾い上げる。優しい黄色のお手紙
ゆっくりと開くと、珈琲の匂いと甘いケーキの匂いが広がった。
「わあ、なんか凄く落ち着く匂い」
便箋を取り出し、その優しい、少し線の細い文字を読んでいく。読み終わった頃には私の心はすっと落ち着いていて、今までの悩みがまるでなかったのように消えていた。
「ちょっと休憩しよ! 」
私は軽い弾むような心でリビングへと降りていった。
これを読んでいるあなたはきっと今頃なにかに追われているんじゃないかなぁ
実際、僕も前までそうでした。 仕事に追われて毎日おんなじようなことをして、やらなきゃ、もっと頑張らないとって必死になっていました。
正直凄くつまんなかったし疲れたし、楽しくなかった。こんなことに気づく余裕すらなかったかもしれない。
でもね、ちょっと変えてみたんだ。
少し肩の力を抜いて、まあ大丈夫でしょ! って思うようにしたらなんか凄く楽になったんだ。どうやら僕らみたいな人たちは必要以上に今詰めちゃうみたい。それでね、心に余裕が出たから諦めかけていた小説家にちょっと再挑戦してやろうと思って応募したんだ。そしたらなんと賞をとちゃった。今ではしっかり小説家として働いているよ。これを書いている今はいいネタがなくて困っている最中なんだけどね。
心に少し余裕ができれば、したいことだとかやってみたいこともできるし、毎日が少しずつ楽しくなっていくと思うんだ。だからあなたもちょっと肩の力を抜いてみないかな?
「どうやら届いたようですね。いいお顔をしていらっしゃいます。それにしても、あのお客様にはこの蝶が見えたのですね。霊感が強いのかも… 今度魔空への招待状を送って差し上げましょう。きっと素晴らしい小説を書いてくれますから。」
後日、僕は大ヒット小説を作り上げることとなった。
執筆の狙い
お久しぶりです。少し忙しさが落ち着いたのでやっと投稿することができました。前から書いているTrick Nightは現在構想を練り中ですので違うのを出してみました。だいたいこんな感じで書こうかなぁという感じなのでざっくりとしか書かれていないところもあります。久々で色々と変なところがあるかもしれないですが、アドバイスを下さると嬉しいです。