タスクダス・グラデュエイト
閑古鳥の鳴き声がうるさくてとても作業に集中出来る環境だから、仕事にストレスを感じたことはない。開け閉めする度油差しの怠っている入口扉が奏でる悲鳴の声は、日に数度聞く程度のため、なにか彼のために緊急で治療してやろうという気すら湧き出てこない。店内清掃だけは慣れたもので手際が良い。しかしそれ故に、汚れも粗方落とし切った。高校を出て以来働く店に愛着はあるが、これでは構い甲斐に欠けるな、と思う。まるで僕の手助けなど必要としないかのように、店は己の魂を持ち、己の舞台に誇り高く屹立しているという印象を受ける。僕も同じ舞台に立っているのに相手がこれでは、踊りに誘うのも気が引ける。
つまらない。暇で暇で堪らない。
それだから、僕は日中専らレジカウンターで写真集を眺めたり、画集を捲ったりしている。文字を長々と追わなくていいから三十路の目に優しい。穏やかな色と鮮やかな景色と、それから虫の這う様子であったり文明の営みであったり、そのようなものを何の関係もない落ち着いた場所で、何の関係もない僕がダラダラと覗き見している。暇を紛らわせるには丁度よい心地である。店長の許可を得、給金を受け取りながら心を洗う作業は、退屈凌ぎにしてはほとんど理想的な行為なのではと密かに思うのだ。給金泥棒と呼ばれようと一向に構わない。そんな心ないことを言う同僚なんて、僕にはいない。
大晦日も懲りずに営業すると宣言した店長には最早言葉もないが、家にいても食う蕎麦も興味のある番組も無いから、金を得られるならと店番を渋く渋く引き受けた。略して、渋々。ここのところめっきり寒くなってしまって、日々眉間に皺を寄せながら生きているが、店なら無料で暖房に当たれるというのも決断の理由だ。だから朝も早よから色褪せた幟を店先に立て、錆びたシャッターを開け、鍵も開けた。午前8時の店内は気の持ちようによっては外よりも寒々しい。決して狭いフロアではないが陳列されているゲームソフトやプラモデル、ホビー類の密度は低く、加えてどれも不相応に値が張る。僕はそれらを見る時、どこか切なくなる。昔はこんな店ではなかったのに、どうしてこいつらが店の衰退に巻き込まれなければならないのだと思う。他の大型店舗の台頭は確かに厳しかった。だが僕はそれだけが原因ではないと思う。かといって、店長の経営手腕が至らないというわけでもないだろう。この時代はこぢんまりとした個人経営のゲームショップなど必要としていない。それだけのことである。でも、そこまで分かっているのに、僕はろくな転職活動をしていない。その類のアプリだってスマホに入れていない……僕は一通り開店に必要な準備を終え、とりあえずいつものようにレジカウンターに入った。そして暫しぼんやりする――ぼんやりしながら考える――死なば諸共――朧気に浮かぶ言葉はかなり陰気で、我ながら結構驚いた。
その時、しかし。
「すみません。これら、買い取っていただけるかしら」
もっと驚くべきことが起こった。
一ヶ月ぶりに客が来た。
■■■
開店早々、二十も後半かと思われる女が持ち込んで来た品々。ゴツい段ボール一杯、二杯と言わずとうとう三箱目すらカウンターに置き、それら全てに所狭しと敷き詰められ、褪せつつも鈍い輝きを放つ懐かしい品々。カード類、立体物類、映像ソフトの円盤とジャンルごとに細かく綺麗に整理整頓されていて、押入れの奥で布団と一緒に揉みくちゃにされていた品々ではないことに気付いた。
「……『タスクダスシリーズ』ですか。懐かしいですね。僕も昔は熱中してましたよ。アニメで見て憧れて、カードダスも日曜になるたびに回してました」
「あらそうなんですの。実は私もそのクチです。あんなにハマったコンテンツ、後にも先にもなくってよ」
「へえ。なのに、売っちゃうんですか。こんなにたくさん」
それは、思わずついて出た質問だった。一つ一つ箱を開けながらざっくりと中を物色する僕を観察するかのように女の目に浮かぶのは、一種の郷愁とみて間違いない。その目を細め、品々を人差し指と中指で撫で、やんわり口元を綻ばせる姿に、僕は疑問を投げかけられずにいられなかったのだ。そんなに気に入っているなら、なぜ売ってしまうのか。
「昨日やった大掃除の時に、これらコレクションが部屋の三分の一を占拠にしているのに気付きましたの。『部屋狭っ!』って……断捨離シーズンですし、決めました」
「……そうですか。部屋、狭いんすね」
「そうそう! ゲキセマなんです! 常に切り詰めてるの!」
なんの仕事をしているか知らないが、格好はそれなりに整っている。もしかしたら住む場所には頓着しない性質なのかもしれないが、僕が口を挟む義理はない。
タスクダスシリーズ。元を辿れば、創作ボードゲームタスクダス。初めは関西圏に住む平凡な大学生が創作系授業の片手間に余興で作った、絵もキャラクターもない、サイコロと爪楊枝と、あればメモと鉛筆くらいで完結する小さな卓上競技だったらしい。モデルは、大学生活における課題提出。締切やら、テストやらの概念がある一対一のターン制バトルである。ずっと先の話になるが、ゲーム終了までにより多くの課題を提出出来た方が勝ちというそのシンプルな勝利条件が、後になっての爆発的な人気の根底大部分を担った。
彼はなんの自信を持ってか、それを意気揚々と学期の最終課題として提出し、見事「主旨と異なる」という事由で落第の烙印を楽々と押された。しかし落第を確定させた教授はこのルールも穴だらけな新作競技に注目し、試しに学部所属の教授たちで遊んでみたという。結果それなりに楽しめたので、学生の許可の元、それはルールと外面を整備され、一年後には『課題提出ゲームタスクダス』として世の中に広く公表された。有名イラストレーターに絵柄をつけてもらい、実力派作家の協力を仰いでリッチなフレーバーテキストや世界観を与えられ、動画サイトにはファンメイドのイメージソングとそのPVが台頭した。広告戦略は面白いくらいに上手くいったようで、僕はその頃まだ小学生だったけれど、ツイッターで何度もタスクダスが話題になっているのを見ていた。その奇抜で独特な、かつ単純明快なバトル的ファンタジー世界に一歩足を踏み入れる妄想を何度もしたが、当時は小遣いもなく、まともな試合をするのに必須のカード群を揃える余裕もなかった。
「日曜朝のあのアニメはやっぱ、革命でしたよね。あれのおかげで親も乗り気になって、スターターキット買ってくれました。親子で夢中になったコンテンツは生まれて初めてだったな」
「私もバイトのお金、ほとんどブルーレイディスクに注ぎ込んじゃった。節約術はその頃から鍛えた賜物なんですわよ」
「それで家を狭くしたんですか?」
「叡智だと思わない? 私は賢かった。そのおかげでタスクダスの趣味も大変はかどりました」
「なのに、売っちゃうんですね。全部」
彼女が持ち込んだ量はハッキリ言って尋常でない。話の口ぶりからして、愛蔵コレクションの一部とか、お気に入り以外のダブりカードとか、布教目的で買った二枚目三枚目のディスクとかではなくて、人生において集めたタスクダスの、その全てに別れを告げようとしていることはなんとなく察せられた。
僕は彼女を心から尊敬した。それほど長い期間何かに熱中するというのは、普通出来ない。僕だって、小学生から中学生にかけてはタスクダスに夢中になっていたし、アニメも毎週追って楽しみにしていた。タスクダスのおかげで今でも親しくしている友人も出来たし、テキストを読み込み戦略を立てるという論理的思考の醸成は厳しい大学受験にも大いに役立てられた。何か嫌なことが有っても、五千円使ってレアカード一枚も出ないよりはマシだと思ってやり過ごせていた――そのわりに、今はぜんぜん、タスクダスの動きに注目していないのだ。アニメもいまだに日曜の朝にやっているらしいが、僕はたいていその時間帯は疲労のため、まだ寝ている。弾数が加速するにつれて増える奇を衒いすぎた新要素には若干引いているし、公式アカウントもフォローしていない。雑誌の活字すら苦手なのに、小説版の新刊なんてもってのほかだ。僕は大人になるにつれて、それらよりも町の静かな雰囲気や、美味しい食べ物の娯楽のほうが好きになっていた。いわゆる、成長だ。対して、女は今の今まで、タスクダスに人生を捧げ続けていた。いわゆる無成長。不変。住む家の家賃を削ってまでカードを集め、アニメのディスクを買い、コンシューマ版をバージョンごとに並べ、コミックス版も小説版も、多分二次創作にすら手を出して、好きでい続けた。浅く広く――よりも、狭く深くという潔い、一途極まりない姿勢。
僕はそういう人たちを一括りに「天才」と、心のなかで呼んでいた。だからこその尊敬である。
「愛想つかしたんですの。メディアミックスの無造作な乱立、古参を蔑ろにする公式の態度、徹底的に難解な新ルール、新規を獲得しようと足掻くもことごとく失敗する迷走っぷり……もう、タスクダスには付き合いきれないわっ」
「だから……売っちゃうんですか。全部」
「そうです。だから売っちゃいます。見捨てちゃいます。もう見ていられない……タスクダスを嫌いになりたい。あれはもう――終わったコンテンツですわ」
女の言うことに、僕は頷くことも首を横に振ることも出来なかった。彼女の言い分は事実とは異なる。タスクダスは全盛期の勢いを失ったとはいえ、まだまだ現役のコンテンツだからだ。昔取った杵柄、古株ファンも多いし、そこらのぽっと出のIPに比べれば遥かに経済と文化を回す力を持つ、怪物の名を持つに相応しい地位を確固たるものとしている。だがしかし、一旦、彼女の言い分にも一理は一応あった。
人は何かに見切りをつければ、それをいとも容易く、少なくともその人の中では、終わらせることができる。
「査定が終わったら呼んで。私は店内を見て回りますわ。こういう玩具屋には、二度と来ることはないでしょうし、社会勉強がてら探索しますわ。ワクワクしますわね。するかしら」
「玩具屋でなくホビーショップです。そこんとこ、間違えないでいただきたい」
「何が違うと言うのです?」
「なんていうか……雰囲気ですよ雰囲気。『タスクダス』って言うか『タスダス』って言うか。そんな感じです」
咄嗟にしては良い喩えが浮かんで、期待しない馬券を不意に当てたような気分になる。女は「ぷっつーん。気持ちはわかりました。確かに愛着ある者としては表記揺れや変な略語にはムカつきます。ごめんなさい」と背中を見せながら棚と棚の間にあるホビージャングルに入っていき、僕の前にはカウンターに乗せられた三つの段ボール、その詰まった中身が歴然と残された。女がいなくなると途端に日常に戻ったみたいな静けさが蘇るが、タスクダス関連商品の山が、僕が暇すぎて白昼夢を発症した事実などないという現実を直視させる。
やれやれと思いつつ、僕はカードを一枚一枚バインダーやケースから取り出してレアリティ別に整理を始めることにした。稀にN(ノーマル)やC(コモン)にも絵柄の違いやP(プロモーション)差分で価値の跳ね上がるものもあるが、普通は一番上のL(レジェンド)、S(スーパー)、R(レア)の順で金額は下がっていくから、まずはその順列整理をしようと思ったのだ。アニメの人気キャラが使うカードは例外的に高い値を付けたり、絵柄が可愛い美少女のカードには別の価値が生まれるのでより良い基準で評定せねばならないのが地味に厄介で大変。それが終われば、映像・音楽ディスクや可動・不稼働フィギュア、書籍類、コンシューマ版ゲームを片付ける。これらはカードシリーズの本編軸に関係するか否かで、値段の付け方が明らか変わってくる。メインストーリーに関係するほうがしないほうに比べ二倍にも三倍にも転がっていくのだ。よって一方、外伝は比較的安く収まるーーと、中古ホビーの査定が本業の僕が思考を一通り巡らせてから一箱目を弄っていると、あることに気がついた。
「あいつ、全部自分で整理した上で一個一個に値段予想までつけてやがる……」
さっきざっと中を見たときには気づかなかった。カードの束には付箋で「◯◯円と予想」と貼られているのはもちろん、グッズの細かなパーツ欠損まで含めた本気の値段予想。はて、どこかで見たことある展開だ、と思ってすぐ勘付く――これは、タスクダスのアニメ第一期二三話で主人公一味がやっていた学校の期末テスト点数予想シーンのオマージュ行為だ。
呆れた。呆れ返った。
しかし呆れた以上に、もっと尊敬した。
オタクの鑑である。だから、どうしてそんなに好きなのに、見切りをつけたのだ。これからもっと、タスクダスシリーズの命運は好転していくかもしれないのに。今がたまたま、落ち目のときであるだけかもしれないのに。
「いや……好きだからこそ、なのか?」
好きだからこそ。
嫌いになりたい。
さっき女はそんなことをこしょこしょ呟いていた気がする。だとすれば、いっそ自分の分身と言ってもいいくらいの存在を風船に括り付けて飛ばすような真似をしてでも、それは分身を思っての行為ということになるのだろうか。可愛い子には旅をさせよというが、そういうことなのだろうか。それは若干意味が違うか。と、いけない、査定、査定。査定をしてさっさとお帰りいただかなければ。さしもの僕も大晦日くらい早く帰りたい。
それから僕は、彼女が付けた金額予想をほとんどなぞる形で査定作業を行うことに若干の不服を覚えながらも、半時ほどもすれば全てのアイテムの状態確認と相場研究が完了し、買取金額の提案提示もできる状態になった。僕はいつぶりか使う店内放送のマイクを使って女を呼び出そうとした。が、何が原因か、入社時に貰ったマニュアル通り動かしてもマイクは作動しなかった。先端をどすどす叩いたってうんともすんとも。
「いい加減この店にもガタが来てるな。来年にゃもう畳んじまうかね」
店長の真似をして言ってみたが、女もいないし、他に客もないので当然誰も反応してくれない。虚しい。その言葉の意味と、それが孕む寂しさにも最早慣れてしまったのが、僕は少しだけ悲しい。
■■■
「買取り金額、十万五千四百二十円でいかがです」
「私の予想とは」
「千円違いでした。あなたのほうが合計で千円ほど高い値を付けてた」
「あらそう。じゃ、あなたのこと見損ないましたわ」
と言いつつ、女は楽しげにくつくつと笑っている。僕よりも少し歳下なだけで、胸を張って若いと言える年齢でもないくせに可愛らしいが、それと同じくらい、彼女の敷いたレールに乗せられているような不気味さも感じた。
「探索お疲れさまです。何か面白いものはありましたか」
「ガンプラ見つけましたよ!」
「そりゃ、たくさんありますけど。どういう機体がお好みで?」
「なんか白くて青っぽいの!」
「……白くて、青すか」
腐る程あるから特定出来なかった。
それはさておき。
「こちらにサイン住所連絡先を。あと写真付きの身分証あります?」
僕がバインダーに挟んだ用紙を女に差し出すと、彼女は先ほどまでの勢いとは打って変わって、勿体ぶったような動きをして、それを受け取ろうとしない。ペンすら握らない。不審に思うと、数瞬の後に女はそれらを僕の方に優しく突き返した。すすっ、というバインダーがカウンターテーブルに擦れる小さな音が、調子の悪い業務暖房の息吹に紛れてデクレッシェンド的に消えていく。ほのかな緊張が現れ、僕はにわかに身構えた。
「なんだか、急に、惜しくなってきました」
「惜しい?」
「……売りたいんですのよ? でもこの店を見て回る中で、相反する気持ちが芽生えてきた。古びたデータカードダス、二十年以上前の特撮玩具、寂しく冷えたダイキャストの鉄道模型……ふつふつと、私のタスクダスグッズたちも末路、ああなってしまうのではと、そう思って、惜しくなってきましたの」
それは、得も言われぬほどさみしげな目だった。
大親友を前にした卒業式一日前のような、そんな目。
「……もちろん誰も目もくれなければ、忘れられますけど。大丈夫です、タスクダスはまだ現役でしょう。有名どこですし、古くなるにつれて希少性も上がって、逆に目立つようになることだってありうる。これだけセットとして纏まってれば尚更だ。売り惜しみは、中古屋店員の僕としては……オススメ出来ません」
「ここに他に客が来るかは微妙ですけれどねっ?」
「うるさいですね……」
「あなたが売って欲しいのは、これでしょう? ふふふ、とても貴重なものですからね。気持ちはわかります。私の一番のお気に入りですもの。仕方ありません」
女は段ボールの一つから、両の手に収まる程度の大きさの紙箱を慎重に取り出した――図星だった。査定中、それを見つけたときには大いに狼狽えた。もともと比較的初期からタスクダスが好きだった僕はすぐに分かる、今では滅多に、どころか必死に世界中探し回っても見つけられるか怪しい「なりきりアイテム」である。タスクダスシリーズ全体の主人公格の少女が常に持っている特殊なステッキを十二分の一サイズで立体化したものだが、人気も爆発前の黎明期にネットの抽選限定、かつ当時から数万円積まねば購入不可というボッタクリも甚だしい理不尽な境遇にあった玩具だ。その入手難度の高さと比例するように完成度はタスクダサーたちからも折り紙付きで、収録された撮り下ろしボイスはこのアイテムでしか聞けないし、限定千個生産の本体にはシリアルナンバーまで入っている。
「[ナンバー0001]……どうやってこんなものを」
「聞かないでくださいまし。持てる力の全てを駆使して手に入れました」
「全ての力って……いやいい。今はそこは重要じゃない。ナンバーの希少性に加え、箱付き説明書付き、折れ曲がり無し、深刻な塗装剥げ無し、日焼け無し! 未使用に近い! こんなもの、もう、なんか、大変ですよ。本来こんな小さなホビーショップに売り渡していいものじゃない。下手したらその手の博物館へ寄贈したっていいくらいです。このまま売ってくれると思ったのに……急に心変わりですか? こんなの生殺しだ!」
「少なくとも、中古で買うならさっき言われた金額の二倍から三倍は出さないと手に入りませんわね。びっくりしたでしょ」
「ええ、びっくりもびっくりです」
このステッキがあれば、何もかもがひっくり返ると思った。だから冷静を装っていたのに、女の口から情報が出て疑惑が確信に変わっていくたび、抑えていた興奮が僕の声に現れていく。この店は、言葉を濁さずに言えば潰れる寸前だ。そこに起死回生の一発、起爆剤があれば、それを利用してやれば、客は簡単に集まる。見向きもされなくなったものを見てもらうためにはきっかけが最も大切だ。どんなに小さなことでも良い。人を引き付ける何かがあれば、もう一度注目してもらえる。そのきっかけが、他のあらゆるものを凌駕する圧倒的な神秘性をまとっているのだとしたら――つまり絶大。絶大なスポットライト代わりになる。僕はその玩具のステッキが、この世界全体を照らす光の束のように見えて、それで目眩がして、胸が高鳴ったのである。
「そのステッキさえあれば、この店はきっと繁盛します。売り物としてではなく、当分は非売品の展示としてガラスケースに入れておくんです。見に来た客は、これを見に来るくらいでしょうから、ホビー類が好きなハズ。ついでにと、何かを買っていってくれるでしょう……店を守れる。こんなチャンスは二度と訪れない。あなたはこの店を復活させる、救世主になれます」
「そんな胡散臭い称号に興味はなくてよ。私は、ただ大切なものに別れを告げるためにここに来ました……けれど、選んだ店が悪かったわね。妙なノスタルジーに襲われて、今とっても葛藤しています。タスクダスはきっと、私の今後の人生の邪魔になってしまう。だから、別れなければならないことは明白なのに、わかっているのに、本当にさよならしなくちゃいけないのか迷い始めている。よくない傾向だわ……」
激レアステッキを含むタスクダスグッズを売り惜しむ女と、それらを何としても売って欲しい僕の平行線が遠い彼方まで敷かれたことに気付いた。年の瀬にこのような熱い展開になるなんて予想だにしていなかった分衝撃が大きい。どうにかして勝ち筋を探さなければ、女は諦めて帰ってしまうかもしれない。そうなれば、僕はこの場で何かを発言したり、行動しなかったことに、一生後悔してしまう気がした。
たかがカードゲームと、その関連商品だ。それにもう僕はタスクダスに熱意を傾けているわけでもない。もうゲームをプレイすることからも、カードを集めることからも、物語を楽しむことからも卒業したのだ。新しい情報も入れていない僕の中で、確かにタスクダスシリーズは終焉を迎えている。査定中だって、リニューアル後のカード柄を「こんなことになっているのか」と初めて現物でまじまじ眺めたくらいだ。
彼女が救世主に興味がないのと同じように、僕はタスクダスにもう、なんの未練も興味もない。
「僕は……タスクダスで店を救えるのなら、そうしたいと思っています」
それなのに僕は、アニメのシーンを覚えていたし、レアリティの種類だって事細かに記憶している。カードテキストに書かれている基本的な用語を見て懐かしいと思いこそすれ、思い出した、という感覚にはならなかった。僕はあの時全力で取り組んでいた遊びの思い出を、忘れていなかったのだ。なんの未練も興味もなくたって、今感じている気持ちに嘘はつきたくない。なんとなく、雰囲気で、それは気持ちよくないから。
「あなたの持ち込んだ品々を査定していて、僕も変に満たされた気分になったんです。もうとっくに引退してたのに、久しぶりに心が躍った。たぶん僕と同じように、タスクダスから離れて長く、あの頃の熱を宙ぶらりんにしている人は沢山いる……みんなにも、久しぶりに胸躍ってもらいたい。この気持ちを味わってみてほしい。だからこそこの段ボールの中身が、必要なんです」
でないと店が潰れて元も子もないですからね、と付け加えると、女はクスリと堪えきれない様子で笑った。僕も釣られて口角を上げ、どうでしょう、と首を傾げてみる。
死なば諸共、ではなく、生きねばどうにも転がらない。
十万五千四百二十円で、忘れ形見を売ってはみませんか。
「そうですわね。ちなみに、ステッキにはおいくらつけました? 私の予想では……」
「僕がつけた買値は五万六千円です。相場に上乗せで、状態の良さと僕の主観を加味しました」
「……そう。五万七千ではなくって?」
「いえ。どうやらここで千円分の誤差が生じましたね」
「そのようですわね。なるほど結構、わかりました、あなたなかなかの審美眼をお持ちのようです」
そう言うと、女は軽く息を吸って吐き、僕の目を真っ直ぐ捉え、ひときわハッキリとした声で。
「決めました。私の、タスクダスに対するケジメをつけさせて頂戴。その儀式を……させて頂戴」
「……はい、構いません。なんなりと」
「あなた! 今から私と、最後のタスクダス対決しませんこと? あなたなら最後の対戦相手にとって不足なしですわ。負ければ私、タスクダスのこと、何もかも忘れます。ステッキもタダでお譲りします。私のタスクダス収めに付き合ってくださいまし」
年末年始だからそんな言い方をするのかと勘繰ったが、ちょっと掘って尋ねてみると、別に狙ってはいなかったらしい。
意図せず冗談を言ったようになってしまった女。
気にしなくていいものを、それを冗談と捉えてしまった僕。
互いに「アっ……」と、ほんのり赤くて気まずい吐息。
■■■
店の片隅に、ほとんど本来の用途では使われていないテーブルと椅子がある。古くは数多くのカードゲームの大会を店が開催し、十も二十もある椅子は毎度全て埋まって大層賑わったそうだ。掃除だけはしているが、それが今では誰も座らないし、上にカードも、ゲームも、自慢のフィギュアも置かない。せいぜい僕がたまに昼飯のカップラーメンを置く程度だ。僕らはこれからこの大きなテーブルの真ん中で、その記憶を復活させる。
テーブルには女のタスクダスグッズを山と乗せ、壁のボードには「タスクダス命運臨時決定杯決勝試合」と薄いマーカーで書き殴った。十分な本数の爪楊枝とサイコロと筆記具を準備し、僕たち二人は対面になるようチープな椅子を引き、腰掛けた。埃はきちんと払っているから汚くはないと思う。僕は女の椅子が汚れていないか少し心配したものの、彼女は目の前に築かれた、ある種夢のような光景に夢中のようだった。
波打つように積まれた大量の新版タスクダスカードに、登場キャラクターの立体フィギュアの群像。名シーンの頁に捲られた小説、店舗限定配布の栞を挟んだ漫画。挙句の果てには店内スピーカーでアニメの主題歌を大音量で流すのだ。僕の声は頑なに拾わなかったくせに生意気な音響機器だと思った。
「いいかしら? 勝っても負けても恨みっこなしです」
「ええ。すべては勝負に従いましょう。それが一番相応しい」
女は、負ければ金輪際タスクダスを忘れる。その時はステッキだけは無料で店に提供すると気前のいいことを言ってくれた。さすれば、店は客で一杯になるだろう。電子レジスターが唸りをあげ、売買が活性化し、商品の新陳代謝が始まる。その過程で客はあの頃夢中になっていたコンテンツに再び目を向けるのだ。女がタスクダスから離れる代わりに、みんなはタスクダスを思い出す。
女が勝てば、彼女はまだ時ではないと判断し、全ての品を持ち帰る。そしてもう一年間タスクダスに向き合った上でその「好き」を継続させる努力をするそうだ。それだから少なくとも来年の大晦日まで、女はこの店に来ることはない。だがその頃には、きっとこの店は潰れている。女はタスクダスの愛を、少なくとも一年忘れることはないが、店は消え、みんながタスクダスを思い出すこともない。
二つの運命のうち一つを選び取る、未来を決める戦いの火蓋は切って落とされた。
「ーー【履修登録】」
「ーー【履修登録】ですわ」
互いにサイコロを四回ずつ振って持ち課題数を確定、僕二十一、女十九。持ち課題数が二十以上の場合の【フル単】宣言をすると、蓋をしていた記憶が、その蓋をぶわっとぶっ飛ばした。中身を思いっきり吸い込むと静かな安心感が僕と女を包み込む。忘れていない。まだ忘れてない。フル単宣言ーー言わなければその時点で強制的に負けなのだ、たまに宣言し忘れて友達と一悶着あった。そんなこと覚えていてどうする、みたいなことを覚えていたこと自体に、何かしらの意味がある気がする。
今回カード類や特定のマットを使用しないクラシックルール。爪楊枝とサイコロ、あればメモさえあればすぐに開始できる点が魅力で、道具一式が必要な新版に比べ華やかさ派手さ戦略性全てにおいて劣るが、シンプルな様式と原点崇拝性から、今なお根強い人気がある。二人とも最新版のルールには慣れていないこともあって、今回カード類や特定のマットを使用しないクラシックルール。を採用。女は意外なことに、ここ数ヶ月タスクダスで対人戦をしていないという。見放したくなっていたーーその兆候があったということなのだろう。よって今回、カード類や特定のマットを使用しないクラシックルール。
フル単がいる場合そちらが先攻。
「1ターン目。課題三つを【提出】。じゃ、振りますね。偶数でいきます」
「いきなり攻めますわね」
「ここで尻込みしてちゃ勝てないんですよ」
「あくまでもそれは心の持ち様に過ぎませんわ。カードデッキの無いクラシックルールのタスクダスは、新版と比較にならないほど運の力が強いんです。堅実にいったほうが良いのではなくて?」
「騙されませんからね。そうやって怯えてると、結局持ち課題を消化しきれずに減点食らうんだ……」
14ターンを一セットとし、その中でそれぞれ持っている課題の【提出】を行っていく。野球で言えば表と裏のように、順に攻撃をする形だ。一度に三つまでしか提出できない上、三つ全て出せるかもサイコロを使った運要素が絡み、失敗すればリスクが伴ってかなり手痛い。よって最後まで試合は読めない。そこにクラシックルールならではの緊張感と唯一無二のゲーム性がある。
「三連続偶数……! 成功ですか。お強いんですね」
「ふふ、攻めの姿勢が功を奏しました」
無事十四回のうちに持っている課題を提出し終われば、平たく言ってボーナスタイムが発生し、自分のターンの始め、サイコロによって持ち課題を追加した上でさらにそれを直接そのまま提出可能。つまり、なるべく早く課題を出したほうが有利になりやすいという単純さがある。根幹としては、これを【前期】と【後期】の2セット行い、最終的により多くの課題を提出出来たほうが勝ちである。
一セット目は僕が終始有利になるようタスクダス神は微笑み、そのまま持ち課題を処理し終わった僕は【締切厳守ボーナス】を発動させ、ターン始めに追加提出をする体制に移行した。女もしぶとく持ち課題を減らすよう行動したが、運が振るわず、結局1セット目は僕に軍配が上がった。
「【欠席】しますわっ!」
「なにッ、【欠席】だと」
2セット目は対照的に僕の方にツキが回ってこず、開幕から女に振り回される結果になった。僕は【欠席】を使いこなす女に衝撃を受けるーールール上は存在するものの、使い方が限定的かつハイリスク・ハイリターンのためほとんど死に設定と化している戦略だった。ターン中【提出】を行えない代わりに【課題捨て場】から好きなだけ課題を復活させ、持ち課題に加えることができる。しかしセット終了時に未提出の課題があれば提出済課題から減点となるため、自身の運を信じ、状況を見極めなければしっぺ返しを喰らう戦い方だ。ところが女は鮮やかな手練手管で持ち課題を正確に管理し、その勢いのまま2セット目を獲った。そんな彼女の手腕を、僕は本物だと思った。いくら今の対戦様式に不慣れだといって、逆に言えば昔の様式には理解がありすぎるほどあるということ。それをいまだ、タスクダスを手放そうとしている今でも忘れていないということ。
タスクダスを、愛しているということーー。
「……提出課題数、まさかの同数、ですか」
「珍しいこともあるものですわね……【集中講義】でよろしいかしら?」
「そのワードを聞いたのも久しぶりだな……構いませんよ。決着を着けましょう」
2セット終了し、提出課題数が両者で揃うということは滅多にない。運要素が密接に関係する仕様のため、その状況が成立する確率は非常に低いのだ。この、どこか象徴的な局面に、僕は穏やかな高揚を味わっていた。女も何か直感を感じ取ったようで、こんなことを言ってきた。
「……抗っているのかしら」
「抗う、ですか?」
「どちらかが、勝ちたくないーーあるいは、負けたい、なんててんでおかしなことを思ってるんじゃなくて? ふふふっ」
「はは。そりゃ、面白い冗談です。ああ、今度こそ普通の冗談ですよね?」
「さて、それはどうかしら? ……」
万が一2セット終わっても決着がつかない、またはどちらかが不服を申し立てた場合、相手が承認すれば【集中講義】を開催し、もう1セット(有り体に言えば泣きの一回)勝負することが可能。通常のセットと違って半分の7ターンでけりを着けるのが一般的だが、どちらかが何か言うわけでもなく、僕らはもう14ターンで勝負することを選び、各々賽を振って持ち課題を新たに獲得する。目の前の対戦相手が何を言いたいのか、そんなもの、言葉を介さずとも分かるのだ。
ああ、3セット目ができるなんて、なんて幸運なのだろう。
もうちょっと、まだあと少しだけ……勝負していたい。
「――【再履修確定】、ですわ。参りました」
「……僕の勝ちですね」
【勉強お疲れ様でした。また来期会いましょう。】。
と、お馴染みの、でももう二度と言うことのないだろう締め挨拶をする女に、僕も倣って同じように返した。女はリモコンで主題歌をぶちっとぶつ切りしてから、かすかすになったマーカーを使って壁のボードに今更のように適当なトーナメント表を書き、僕の名前を頂点に登らせた。
王冠マークの絵が丸っこくて可愛かった。
楽しい時間ほど過ぎるのは早く、呆気ないものである。3セット13ターン目の終わり際、ラストターンを待たずして女はルールに則った敗北宣言をした。降参である。彼女の手元には十を超える課題が爪楊枝の形で取り残されていた。【欠席】制度によって手札に吸収したはいいもののサイコロの目に報われず、いたずらに積み上げられた負債が仇となったのだ。それまでに僕が無駄にツキの回ってきているものだから、彼女は点で追いつこうと必死に【欠席】を使いデッキを増やした。しかし3つの課題を一度に出そうとしてまたサイコロに恵まれず失敗し、その課題たちを捨て場に直行させていくことの繰り返し。幾度も無情にも重なっていく【落単】。無難に提出するはずだった課題たちも7ターン目の【テスト】で消滅し、遂に女は袋小路に追い詰められた。それだから3セット中盤を過ぎたあたりから、僕も女も、この勝負の行く末をほのかに悟っていた。
僕が勝ち――私が負ける。
もう取り返しなどつかないのだと。店にタスクダスの思い出を悠々見せびらかしに来た時点で運命は決まっていたのだと……遡れば、女が自分の部屋を「なんだか狭い」と思ってしまった時点で、こうなることはかの崇高なるタスクダス神によって定められていたのかもしれない。
「優勝おめでとう。約束通りステッキはお譲りします。他のグッズは、まとめれば二束三文にはならないでしょうし、買い取って頂ける?」
「……はい。でも、本当にこれでよかったんですか? たしかに、僕は久しぶりに楽しかったですけど、あなたはあんなカッコ悪い負け方で納得できるんですか」
「すべては勝負に従う、それが最も相応しいと、あなたが言ったんですわよ。私もそうしますわ。『あなたは負けた』と、そうタスクダスが言ってるんですもの。旧友のよしみで聞き入れてあげますの」
「もう、友達じゃないってことですか」
「向こうはまだ友達だと思ってくれてるかもしれませんけどね。私が提案して私が強行した、一方的な絶交ですから」
でも人生前に進むためには、別れこそ必要でしょう。
さっきのはきっと卒業式みたいなものなんですわ。
きっとね。きっと、そうですわ。
なんとか留年せずに済みました。
女はそう言って、テーブルの上にぶち撒けられて試合の行く末を見守っていた品々を一回か、二回、ぐるりと見回したあと、それらを雑な、冷たい手つきで一纏めに、一箇所に集め始めた。いっそ不自然なほどに、グッズに対する態度の豹変。店員として品々の集積は僕がするべき作業だったが、女の顔に表れている複雑で曲がりくねった皺と決意に、差し挟める手なんてなかった。たぶん、あえてそうして、タスクダスを突き放している。懐かしさと高揚で燃えていた空間がさっきまでの息苦しい廃れた店に戻ったのを僕は感じていた。
束の間だったけれど、あの心躍る胸高鳴る脳がはしゃぐ感覚をせいぜいなるべくぎゅーっと抱きしめて、ぐーっと長引かせるのが、この女に対するせめともの礼儀でもあるのかなと、ぼんやり想像した。
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あれほど勿体振っていたサインも住所も連絡先も、写真付き身分証すらもあっさり提示した後、女は金を受け取って「あー、めっちゃ楽しかったなぁ。じゃあ、バイバイ」とだけ呟いて、すたすた店から出ていった。急な砕けた言葉遣いに一瞬面食らったが、女は僕に何か言わせる隙も見せなかった――だから何も言えずじまいだ。
「またね」とは、彼女は言わなかった。
女はどうやら徒歩でのご来店らしく、そんなに厚みのある服でもなかった。外は朝からずっと曇っていて、とても寒かろう。なんだか不自然に思ったが、もしかしたら、あまり長居するつもりもなかったのかもしれない。そうなのかどうかは、今となっては分かりっこないことだった。訊きそびれたことは沢山あるが、あんまり僕が小さなところまで知ったってしょうがないから、これで良かったのかもしれない。
僕はレジカウンターから少し奥にある、先ほどまで熱戦が繰り広げられていたテーブルに立ち並ぶ思い出の結晶たちを眺めてみる。それらが来た経緯は勿論分かってはいるが、なんだか突然、まばたきをしたら現れたみたいな気がしている。少し不思議な事が起こって、少し遅めのクリスマスプレゼントか、早めのお年玉が届いたとか、そういう気分だ。
女は終わりゆくものを心から愛し、だが愛するからこそそれを捨てた。見切りをつけた。引退した。本人は愛想をつかしたなどと言っていたが、それはたぶん、嘘である。愛想をつかすどころか、つかせることが出来ないでいた。だからこの店に駆け込んで無理やり「つかす」しかなかったのだろう。
僕は、愛するからこそ、終わっていくものを諦めるなんてできそうにない。できればずっとそこにあって、好きでいつづけさせてほしい。でももし、その愛する対象が、自分が認められないほど理想から遠ざかって、醜いものに成り果ててしまったのだとしたら――あの女のように、多少自分の心を無視してでも強引に捨ててしまうのだろうか。考えてみても分からない。
カウンターを出て、グッズが並べられているテーブルに向かい、僕はある一つの品を手に取った。シリアルナンバー0001のステッキではなく、逆に当時、最も手に入りやすかったものだ。今でもそんなに値は張らない。それは新版タスクダスのスターターキットで、平く広いパッケージに透明な蓋がしてあって、昔見たことのあるキャラクターのカードがこれ見よがしに封入されていた。子供の頃は、この右上にいる、ドラゴン使いのキャラクターが好きだったなと回想する。
「……未開封。使わなかったのか、保存用に別で買ったのか」
僕が初めて親にタスクダスを買ってもらったこの店で、誰かがタスクダスを辞めたということに感慨はそれほど無い。だが、終わらせることが出来るなら何か新しく始めることはもちろん、終わってしまった何かを再び始めることだって出来るのではないかと思った。
誕生と、終焉と、再生。まだまだ勝負は始まったばかり。
「ーー【履修登録】」
これから1セット目といこう。
休んでなんかいられない。
まずは壊れてしまったマイクでも直そうか。
片付けるべき課題は山積みだ。
執筆の狙い
架空のボードゲームを創作し、それについての小説を書くという試みです。
あなたの好きなものが、他の人からはもう見向きもされなかったら。あなたが人生を捧げたなにかが、世間ではもう忘れられていたら。そんな切なさをお話にしてみました。
ちょっと昔の夢を思い出してもらえれば嬉しいです。