作家でごはん!鍛練場
いかめんたい

絵を描く男

 男がようやく瞼をひらくと、雨が銀色の糸のように降り注いでいた。雲に覆われた空は薄暗く、夕方なのか明け方なのか判然としない。手足の感覚は戻っていなかった。もはや寒さすら感じず、細かな雨粒が頬に当たるのだけがわかった。
 ーーあれから何日たったのだろう。
 再び意識が朦朧としてくる。
 頭上では黒ずんだ木々が揺れている。空を斜めに走る送電線が、雨のなか突然パチパチと火花を上げた。その瞬間、見えない力に引かれるように両腕がゆっくりと地面を離れ、男の意思とは無関係に天に向かって伸びていく。あたかも空から降りてくる何者かを抱きとめようとするがごとく。


 工藤はファミレスのドアをくぐると、首筋の汗を手の甲でぬぐい明るい店内をぐるりと見まわした。土曜日の午前中、客の入りは5割程度といったところ。まばらな客たちの顔を端から順に確認し、その作業が終わりに近づいたところでようやく佐山を見つけた。
「亮ちゃん。こっちこっち」
 向こうもこちらに気がつくと、一番奥の4人席から右手を上げ大声で呼びかけてきた。工藤は軽く会釈をすると、大柄な男の方に急ぎ足で向かった。
「すみません遅くなりました。ちょっと電車の乗り換え間違えちゃって」
「いいってことよ」
 佐山はそういいながら、ふうっと電子ではないタバコの煙を吹き出す。
「それよりちゃんとスニーカー履いてきた?」
 工藤は足をわざとテーブルの下から通路にはみ出させながら、「ばっちりです」と明るく答える。

 佐山とは都内の居酒屋や中華料理屋で落ち合うことが多かった。それが今日は「ちょっと遠征したいから」という彼の申し出にしたがって、都心から電車を乗り継ぎ1時間半の街まで足を伸ばしたのだった。待ち合わせも、男2人には似つかわしくないファミレスだ。しかも「できれば歩きやすい靴にしてくれよ。スニーカーとか」との条件付き。いったいどこに連れていかれるのか、工藤は気が気ではない。4月にしてはやけに気温が高く、とりあえず動きやすいようにと服装はハーフパンツとロングTシャツを選んだ。一方の佐山は上下黒のジャージ姿だ。
「半パン若いね。格好だけ見ると俺たち、闇バイトの指示役と実行役みたいだよね」
「やめてください聞いてた人が本気にしたらどうするんですか」

 佐山は職場のかつての先輩だ。5年ほど前に彼が会社を辞めてからは長いこと会っていなかった。それが去年の秋、会社帰りに繁華街の裏通りで、工藤はこの男が佇んでタバコを吹かしているところにぐうぜん遭遇したのだった。いかつい体に革のコートを着込み、一見風俗か飲み屋の呼び込みのようで、初めは知り合いだとは思わなかった。「亮ちゃん」と声をかけられて、ようやくそれが佐山だと気が付いた。「亮ちゃん変わらないね、今度飲みいこうよ」となつかしい大声で誘われた。「佐山さんこそ変わらないですね。ぜひいきましょう」と反射的に答えていた。それ以来、月に1度くらいの頻度で会っては酒を飲むようになった。佐山はあれから就職はしていないというが、かといって金に困っている様子もない。すこし怪しい気もするが、 工藤はそんな佐山のことを、「昔から変わった人だったな」くらいに気軽に考えている。

「さっそくだけどこれ見てよ」
 佐山はいつもの明るい調子で自分のスマホを差し出した。
 画面に表示されているのは、まだ幼い女の子が大きな犬の頭をぺしぺしと手の平で叩いている動画だった。その子にしてみれば可愛がっているつもりかもしれないが、力の加減ができていないのか、はたからは叩いているようにしかみえない。ようやく叩くのを止めたと思ったら、今度は不満そうな犬の目の前にしゃがみ、大声で吠えるまねを始めた。
 動画には、犬の飼い主らしい人物が、首輪を必死におさえている様子も映っている。それなのにこの子の親は我が子の乱暴な振る舞いを止めもせず、黙って動画を撮影しているらしかった。
「ああ最近こういうのよく見ますよね、勘違いした親子の迷惑動画でしょう?」
 工藤は先回りして感想を述べた。が、佐山が何も言わないのでそのまま喋り続ける。
「親は子どものわんぱくでかわいい様子くらいに思っているのかもしれませんけど、いくら力が弱くても犬や飼い主は嫌ですよね。これで何か問題がおきれば叩かれるのは飼い主のほうだし。でもこんな小さい子なのに大きな犬が怖くないんですかね?」
 そこで佐山が口を開いた。
「亮ちゃんは臆病だもんね」
「まあ確かに否定はしませんけど」
 工藤は不満を表すように口を尖らせる。
「別に臆病なのが悪いとは言ってないじゃん。臆病者ほど長生きするっていうから。亮ちゃんは生存本能が強いんだよ」
 これでは慰められているのかけなされているのかわからない。
「だから逆に、この子が幼くして亡くなるのは運命なのかもしれないよね」
 おかしなことをいう、と工藤は思う。言葉につまって話題を変えた。
「それより夕べのライン見てもらえました? 最近一部で流行ってる『呪いの絵』なんですけど」
「もちろんだよ。だからここまで来てもらったんだから」
 佐山は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「実はあの絵は俺も少し前から気になってんだよね。ちょうどいい機会だから夕べいろいろと調べてみたよ」
「佐山さんも知ってたんですね」
 工藤はすこし驚いた。
「当然だよ! 俺を誰だと思ってるんだよ。ネット廃人なんだから!」
 佐山がおどけて笑う。
 無職で時間を持て余しているのか、確かに佐山はインターネット上に氾濫する噂話や流行なんかにやたらと詳しい。昔から都市伝説的なトークネタは多かったが、喋り好きな性格ともあいまって、今ではまるで暴露系YouTuberよろしく、会う度に怪しげな蘊蓄や嘘か本当かわからない噂話を面白おかしくまくしたてる。人種差別的なやつとかブラック過ぎて後味が悪い話を除いて、あとは全てを信じ込まないように気をつけてさえいれば、基本的に一緒に飲んでいて楽しかった。

 工藤は数日前に「呪いの絵」をXのタイムライン上で見かけてから気にはなっていたのだが、もちろん信じてはいない。ただ次の飲みのネタになればと昨晩佐山にも送ってみたところ1時間後に返信があり、急遽今日会うことになったのだった。

「ぱっと見、呪いなんていうほど禍々しい絵でもないんですけどね」
 工藤はダブレットでドリンクバーだけ注文すると、あらためて自分のスマホにそのXのポストを表示させ、タブレットの前に佐山にも見える角度に立てかけた。
 「呪いの絵」は、赤、青、黒の三種類のかんたんな線でノートか何かに描き殴ったらしい曇り空の絵だった。紙は屋外で雨にでも打たれたように濡れている。描いた本人ではない誰かの手によってXにアップされ、

拾い物の画像ですがホンモノの呪いの絵です
この絵を保存した人は1か月以内に本人か身内の誰かが亡くなるそうです

という気味悪い文章が添えられている。
 特に上手い絵ではないが描き慣れてはいる印象だった。使用したのはボールペンだろうか、ところどころ線が滲んでいた。画面の周囲に枝や葉っぱらしきものが書き込まれているのをみると、作者は森の中に寝そべって空を見上げていたのかもしれない。それを裏付けるように、送電線が空を斜めによぎっている。
 わざわざSNSにアップするにはずいぶんと雑な絵だったが、それ以外に変わったところはないこの「呪いの絵」は、なぜか多くの「いいね」を集め、リポストが繰り返され、今この瞬間も拡散しつづけていた。

「今どきはもっとインパクトの強い絵もたくさん上がってるからね。特にAIで生成したやつとかは人間じゃ考えつかないようなどきっとする造形のものも多いし」
 佐山は画面を横目でみなが、灰皿にタバコの灰を落とす。
「でもじっと見ていると、この絵にも普通とは違う独特の不気味さがあるんですよ」
 そう答えた工藤はそもそも絵が嫌いではない。実家には古い大判の美術全集があって、子どもの頃はそれを床に広げ眺めて過ごすのが好きだった。好みの画家はコロー、プッサン、コンスタブル。とくに自然な光にあふれた風景画に惹かれていた。
 ただこの「呪いの絵」には、他の風景画にはない違和感があった。おかしな言い方だが、ラフな手描きの絵なのにAIっぽいというか、無機質で、まるで作者の意思が存在していないようにみえるのだ。
「なんか、例えば誰か他人に無理やり描かされたような感じがするんですよね」
 そう工藤はつぶやいた。
「最初はよくある都市伝説のひとつだったんだろうね。ただ実際に、その絵を保存した数日後に家族が亡くなったという返信がちらほらつくようになって、いっきに拡散したらしいよ」
 佐山はタバコの先で工藤のスマホのほうを指した。
「いまではインプレッションは百万件を超え、『いいね』も数万件単位でついている絵だ。見たり保存したりした人のうちにはその後、偶然に身内が亡くなった人がいても確かにおかしくはないよな」
「ただそれにしては、そうした返信の数が馬鹿に多い気がしませんか? もちろん嘘や冗談の可能性も高いですけど」
 工藤が尋ねる。
「まあそれでも、呪い云々は単なる偶然と考えるのが自然だよ」
 佐山はタバコを灰皿に押し付けて消すと、楽しそうに付け加えた。
「普通はね」

2
「ここからはこっちを使って説明するよ」

 そういって佐山は自分のスマホの電源を入れたところで、「うわ、一平ちゃん自伝を書いてさらに映画化の話まであるって」とニュースの見出しを読み上げた。
「まじですか?」
 工藤も思わず反応する。
「確かに何かで一発逆転しないと返済しようもない金額だからね。でも相変わらずギャンブルみたいなことやろうとしてんのか。やっぱりこわいよね依存症は。スケールがでかすぎて俺の競馬やパチンコなんかとは別世界だけどさ」
 そんなことより、と口にしながら佐山は画面に指を走らせる。
「ちょっとこれを見てくれる?」
 スマホの着信音がなる。工藤が手に取ると佐山からショートメールが届いていて、開くと画像が添付されていた。
「まず手始めに、『呪いの絵』の類似画像をアプリで検索してみたんだ。色んなアプリでやってみてその結果を眺めててピンときたのがこの一枚さ。こういうことにかけちゃ最近は本当に便利になったな」
 それはかなりラフなタッチの絵だ。黄色い雲と赤い空、あとは青い湖のようなものがどうにか判別できる。現実の風景とはかけ離れた色使いだが、嫌いではないなと工藤は思う。
「これもXに上げられた絵なんだ。そのポストをみると、タイトルは『声』とある。画材はアクリル絵の具。サイズは1号くらいと小さめだな。あと、絵と一緒にこんな文章もアップされている」
 再び着信音が鳴り、工藤は次のメールを開く。今度はポストのスクショが添付されていた。

今日 大切な家族を失った
少なくとも俺のなかに家族はもういない
あんなことは絶対に許されない
俺は100羽の鳥たちのように静かに生きていきたい

 何かに腹を立てているような、あるいは悲しんでいるような文章だが、これだけではまったく意味がわからない。が、自己陶酔的なアカウントではままあることだし、深く考えても意味がないだろう。アカウントの表示名は「NORIさん」。プロフィール画像は絵垢によくある自画像で、見た限り工藤よりやや年上の40歳代くらいらしい。
「これでフォロワーは3,000人超えなんだからな。そこだけはかなりくやしい。俺なんて頑張っていろいろポストしてるのに、まだフォロワー50人にも満たないんだから」
「怪しい人だと思われてるんじゃないですか? 佐山さんけっこう危ないことも書いているから。返信相手ともめごともよく起こすし」
 工藤がすかさず突っ込むと「まあでもそのくらいがちょうどいいのかもしれないよ」と言って佐山は腕を組んだ。
「もめごとじゃなくてフォロワー数の話ね。何事も過ぎたるは及ばざるがごとし。亮ちゃんみたいにただ見てるだけっていうのもつまらないけどね」
「僕は自分から世間に発信したいことなんて別にないんです」
 答えながらも工藤はその絵を眺め続けていた。
「それよりこの絵、ぱっと見はわからないですけど、確かにどことなく『呪いの絵』と共通するものがありますね。色使いや雲の表現なんかが似ているというか」
「さすが絵のことになるとするどいね」
 佐山がにやりと笑う。
「それにもう一つ、『呪いの絵』と同じで、この作者は左利きだ」
 言われてみれば確かにそうだ。「呪いの絵」のなかで影を表す斜線は、右下から左上に向かって斜めに走っている。それに「声」のほうも絵の具の盛り上がり具合などが、右から左へと向かう筆の動きを表していた。いずれも左利きの特長だった。
 なるほどと思うと同時に、佐山の観察眼にも改めて舌を巻く。工藤とは違い、これまで彼が絵画に関心があるなんて話は聞いたこともなかったのに。確かに一緒に営業周りをしていたころから、色んなことによく気がつく人ではあったけれど。
「このアカウントにはほかにも多くの絵がアップされているよ。風景画、自画像、抽象画。まあアマチュアが趣味として、自分の描きたいものを自由に描いて載せているって感じかな」
 佐山が自分のスマホをスクロールしながら話し続ける。
「ただとくにここ1年くらいは、アップするペースが尋常ではないかな。絵っていうより、むしろXにはまっていた感じすらある。古いほうのポストはまだ間隔も空いていて、絵のほかに子どもの写真や動画もかなり上がってたんだけどね。さっきの子どもが犬を叩いている動画も4年くらい前にこのアカウントにアップされていたやつなんだ」
 ようやく先程の動画の意味がわかった。
「それで過去のポストをあさっていてこんな絵を見つけたよ」
 ふたたび着信音。添付を開くと三色のボールペンで描かれた風景画だった。
「ああまさに『呪いの絵』同じ描き方ですね」
「ほかにも似たような絵が数点ある。どうやら作者の男は手帳と3色のボールペンを常に持ち歩いて、野外でのスケッチなんかに使っていたらしい。手帳のほうは絵だけじゃなくて、本来の目的にも使っていたようだけど。これも古いやつだけど例えばこのポスト」
 そういって今度は、自分のスマホの画面を工藤に向けた。

今日はこれから娘のお迎えです❤

 そう書かれた下に、手帳のページの写真が添付されている。定規で丁寧に引いた青い枠囲みの中に、赤い細かな文字で「19:00 保育園お迎え(帰りにスーパーで由奈が好きな雪見大福を買う)」と、書き込まれていた。
「ずいぶん子煩悩っぽいですね」
「それに几帳面な性格だったんだろうね。スマホのスケジュールだけじゃなくて丁寧に手書きでメモをとっておくタイプなんだな」
 そういいながら佐山はスマホをひっこめた。
「なんにせよ『呪いの絵』は、そのアカウントの主が描いたもので間違いなさそうですね」
 佐山が画面を見ながらうなずく。
「ただし例の『呪いの絵』は、少なくとも現時点でこのアカウントにはアップされていない」
「じゃあやっぱり違うんですか?」
「そうじゃないよ。現時点ではって言っただろう」
 そう言いながらも指は相変わらずスマホを操作している。
「まあいい。話を先に進めよう。それでどうやらこの男は文章を書くことも好きなんだな。俺はさっきの『100羽の鳥たち』っていう表現が気になって、この言葉をヒントにいろいろと検索をかけてみたら、こんなのを見つけたよ」
 また着信音。貼られたURLのリンク先は「ノリスケ」という人物のnoteのアカウントだった。
「こっちにはプロフィールもある程度書かれている。妻と小学校高学年の長女の3人暮らしのサラリーマンで、絵とランニングが趣味とある。記事に添付された画像なんかを見ても、Xの『NORIさん』と同一人物でほぼ間違い無い。Xの犬と女の子の動画、あれが4年くらい前の動画だから年齢的にも辻褄があう」
 工藤は、この短い間によくいろいろと調べたものだと改めて感心する。
「noteのほうは基本的に、絵ではなくて男のもう一つの趣味であるランニング用だな。最近は一人で近隣の山にトレランに行ったりもしていたっぽい。Xでやればいいのにと思うかもしれないけど、大会やトレーニング中の様子を臨場感をもって伝えるのには、写真よりも文章のほうがはるかに相性がいいんだよ。特にレースのレポートなんかはびっくりするくらい長文になることもあるから、字数制限のあるXには不向きなんだ」
「佐山さんは日頃そんなものまで目を通してるんですか?」
 工藤はあきれた。
「そもそもその体型で走れるとも思えないのに」
「失礼だな、俺が走れるわけねえだろ!」
 佐山はおどけてすごむフリをする。
「ただネットを徘徊して、いろいろと楽しんでいるだけだよ。ほらネット廃人だからさ、俺」
 一転して楽しげな口調。相変わらずテンションが高い。
「どれだけひまなんですか」
 工藤も負けじと悪態をつく。佐山はそれを無視して続ける。
「まあこのブログも、日頃のトレーニングやフォームに関する考察なんかを中心にしたよくある内容なんだけどさ、そんな中でちょっと毛色の違った、気になる文章があってね。なんか童話みたいな。それでこいつが検索にひっかかったんだ。亮ちゃんもこれ読んでみてくれない?」
今度は自分のスマホに記事を表示して手渡してきた。
「さっきの『100羽の鳥』の正体さ」

100羽の鳥

その惑星にはちょうど100羽の巨大な鳥が、100の山の山頂に一羽ずつ暮らしていた。

何万年もの間、それは変わらなかった。新たな生物が生まれまたほかの生物が絶滅しても、鳥たちはいつも変わらず100羽だった。

鳥たちは恐竜みたいに大きくて、寿命は人間と同じくらい長い。そしてたいていは一生に一度だけ、自分の死期を悟った時に空に向かって鳴き声を発する。

離れ離れに暮らす鳥たちは普段は仲間の姿を見ることもない。ただその鳴き声は遥か遠くの山々まで届く。

その鳴き声を聞くと、100羽のうちのとあるメスが、自分の山を離れ別の山に向け飛び立った。そしてそこに住むオスとつがいになって、卵を1つ産んだ。

しばらく2羽は一緒に暮らすが、卵が無事にかえるとメスは自分の山に帰っていった。もとからその山にいたオスも山を離れて、鳴き声の聞こえてきた方角に向かって飛び立った。まだ飛べないヒナは1羽きりで残され、その山で暮らした。

オスが向かった先には、鳴き声を発した鳥がすでに死に、住むもののいなくなった山があった。オスはそこを新たな自分の住処とした。

鳥たちはそうやって、1羽が死ぬと1羽が生まれた。100の山にそれぞれ1羽ずつ、全部で100羽というルールを厳密に守り、長い間しずかに命を繋いできた。お互いが必要以上に親しくなることもなければ、争うこともない。

「なんですかこれ?」
「なにって書いてある通りだよ。きっとこれがこの時、男の思い描いていた理想の世界だったんだ。それぞれが相手に干渉することなく、自分を守り、孤独に暮らしている。人口はちょうど同じ数のまま増えも減りもしなしいから、無用な争いごとも起こらない。発展もしなければ衰退もしない、永遠に静寂な世界。そんな世界で、絵を描いて静かに暮らしたい、それで十分に満たされる世界であって欲しい。そんな感じじゃないかな」
 佐山は一気にまくしたてた。
「くらいっすね」
「くらいよね」
 彼も同意した。
「それでさっきの『声』って絵。きっとあれはこの鳥の鳴き声をモチーフにした絵だったんだと思う。タイトルは『声』だし、あのポストには『100羽の鳥たちみたいに暮らしたい』ってあっただろう? 孤独に生きていながらも、世界中の全ての鳥に届き心を動かす鳴き声。この男はそんなものを絵で実現したいと願っていたんじゃないかな」
「孤独を好むくせに承認欲求だけはあると」
 工藤は思わずつぶやいた。
「きつい言い方するね。承認欲求なら俺もあるぜ」
「やけに同情的ですね」
「この男の弱さが亮ちゃん見ているみたいで見捨てられない」
 僕のほうが佐山さんより真面目に社会生活を営んでいるんですけどね、といいかけて止める。佐山は続けた。「そしてXとnoteのどちらの更新もある時を境にぴたりと止まっている。おそらくこの時期に何かが起きたんだ」
 いよいよ核心に近づいてきた。工藤は無言で佐川に先をうながす。
「それでトレランで山に行った時の記事なんかから住んでいるエリアがだいたい絞れたんで、その時期のニュースをあさっていたら、こんなのを見つけたよ」
 再び、今度は誰かのブログのURL送られてくる。そこには地方新聞の小さな記事の写真とともに、「御冥福をお祈りします。この件は我々トレイルランナーにとって他人事ではありあません。例え近所であっても単独で山に入るのは絶対にやめましょう!」と書かれていた。
 新聞記事の写真を拡大すると、見出しには

行方不明の男性
山中で遺体で発見
トレラン中にコースから外れ遭難か

とあった。
「これってもしかして」
「ああ、おそらくこのXとnoteのアカウントの持ち主にして、『呪いの絵』を描いた男のことだ。トレラン中に尾根から転落して動けなくなり、そのまま低体温症で死んだそうだ。現場はここからすぐ近くだ」
 さらに拡大して記事を読む。

 11月5日朝に単独でトレイルランニングにでかけ2日経ってももどらなかったため家族から捜索願が出されていた○○市在住の男性(38)が昨日、朝霧山の山中で遺体で発見された。死因は低体温症。現場は登山道から30mほど下方の草むらで、警察は男性が滑落して動けなくなりそのまま亡くなったものとみて捜査を進めている。入山届は出されていなかった。

「俺はこんな事故知らなかったけどさ、トレランやる連中の間ではそれなりに話題になっていたようだね。そのブログもそんな連中の1人だよ。今どきブログっていうのもあれだけど」
 佐山は珍しく固い表情をしている。
「そうした連中のアップしている情報なんかを総合すると、どうやら男が遭難した地点もほぼ特定されているようだ。男は尾根から滑落してどっか怪我でもしたのかもしれない。自力では脱出できずに救助がくるのを待っていたけれど、そのうちに雨まで降り始め、結局誰にも発見されないまま低体温症で死んでしまった。低山だけれども夜は極端に気温が下がることがあるし、トレランだから軽装だったのもまずかったかもな」
 佐山は一瞬間を置いた。
「それで死ぬ間際にそこから見た景色をスケッチしてXにポストした。それが『呪いの絵』の正体さ」
 店内の物音が一瞬途切れる。空気が急に重くなった気がした。
「でも、スマホを持っていたんでしょう? ネットにアクセスできてるんだから。それなのになんで」
 佐山は手をあげて発言をさえぎる。
「日付を見て思い出さないか」
 工藤には何のことか見当がつかない。
「男が遭難したのは、例の、2日間以上にわたるスマホキャリアの大規模な通信障害があった日なんだよ」
「あっ」
「ついてないよな。完全復旧したのは男が遺体で発見された日だ。まさにつながったのは死ぬ直前だったんじゃないかな。その頃には男は既に、自分がもう助からないと覚悟していたのかもしれない。それでそこから見える空の絵を、いつも携帯している3色ボールペンで手帳に描いた。それを写真に撮りXにアップしたんだ」
「それでも、スマホが使えるようになったのであれば、そんなことする前になんで最後の力を振り絞ってでも警察や家族に連絡して助けを呼ばなかったんでしょうか」
「これは全部いつもの推論だぜ」と佐山は前置きする。
「もしかすると衰弱しきってもう助からないと感じた男は、自分の絵を世界に向けて発信することを最後に望んだのかもしれない。まさにあの異世界の鳥みたいにね」
 工藤の頭のなかにある映像が浮かぶ。草むらに横たわり、天を見つめる男。空は分厚い雲でおおわれ、冷たい雨が降りしきっている。男はどうにかペンを手にすると、その様子をスケッチし始める。
「そんなのまともな人間のすることじゃないですよ」
 工藤の背中を冷たいものが走る。
「とっくにまともじゃなくなってたんだと思うよ」
 佐山がこともなげに言う。
「それにしても、なぜXのアカウントにはこの絵だけ残されていないんでしょうか?」
 工藤は気を取り直して尋ねた。
「うん、そこだよね問題は。俺もそこで悩んだんだけど、ヒントはさっきの手帳だよ」
「手帳?」
「遺体が所持していたスマホは、事件性がないとわかれば警察から遺品として遺族に返還される。中のデータごとね。そういうのはデジタル遺品というらしい。通常は家族といえどもスマホのロック解除は容易ではない。ただ男がIDやパスワードをどこかに書き残していれば話は別だ。例えば、あのいつも持ち歩いていた手帳なんかに」
「ああ」
 確かにそうだ。この男は几帳面なうえに、手書きで記録を残すたちなのだ。
「遺族は案外、簡単にひらくことができたんじゃないかな。それで家族がその絵のポストだけ削除したんだと思うよ。男のスマホを操作して。なんてったって死ぬ間際に描かれて、遺体の発見現場からアップされた絵なわけだから、遺族からすれば他人に見てほしいような代物ではない。そのまま人目にさらしておくのはきっとはばかられただろう。あるいは警察が削除するよう勧めたのかもしれないな。人が1人死んでいるわけだし、今回みたいな変な噂が広まったりしないないように」
 そこで佐山はいったん言葉を切った。
「ただ、フォロワーのうち男と個人的にやり取りのあった何人かは、この絵が投稿された当初から、ニュースなんかで気づいていたのかもしれないよね。男が山で亡くなっていて、その絵は遭難現場からアップされたものらしいと。それで削除される前にその絵を手元に保存していた誰かが、事故死の話とからめて面白おかしく拡散した、と」
「なるほど確かに辻褄はあいそうですね」
 工藤はぞくぞくしてきた。空のコーヒーカップはとっくに乾いている。気が付けば、いつも通りすっかり佐山のペースに乗せられていた。
「佐山さん今日も冴えてますね」
「まあ後味の悪い話だけど、ある意味男の願いは叶ったともいえるかな。今も彼が断末魔に描いた絵は世界に向けて拡散し続けているんだから」
「経緯はわかりました。でもそれがなんで呪いの絵なんていうオヒレがついて、しかもここまで拡散してしまったんでしょう」
 工藤は当初からずっと気になっていた疑問を投げかける。
「確かに死ぬ間際の絵だと考えると薄気味悪くもありますし、不幸な事故だったとも思いますが、呪いなんていわれるほど禍々しい絵や出来事だとも思いませんが」「それを理解するにはな」
 佐山がぐっと身を乗り出し、顔を近づけてくる。
「現場に行ってみることだ」
「現場って、男が遭難した現場ですか?」
「もちろんさ。そのためにわざわざスニーカーを履いてきてもらったんだから」

3
 店から出ると、強烈な陽光に一瞬目の前が真っ白になる。季節外れの陽射しと暑さだった。色の濃いサングラスをかけ、怪しさがさらに増した佐山は、スマホ片手にずんずん先に進んでいった。
 住宅街の中の広い公園まで来たところで佐山は足を止めた。スマホに手をかざして影を作ると、工藤にも覗くよう促す。画面には地図と赤いラインで何かのコースらしきものが表示されていた。
「ここはこの辺では有名なトレラン大会のスタート地点なんだ。これは大会に参加するランナーが使用したコースマップだよ」
 そう言って佐山は赤いラインを指先でなぞった。
「登山道や一般道をつなぐ約20Kmの道のり。おそらく男はこのコースを辿っていたはずなんだ」
「20Kmですか」
 たまらずため息を漏らす。
「心配するなよ。誰も踏破しようなんて言ってないじゃん」
 佐山は続ける。
「登山道に加えて一部では一般道や住宅街なんかも通る。この辺は山地と人が暮らすエリアが複雑に入り組んでるんだ。ただ登山道自体はあまりメジャーじゃないから、大会が開催されるとき以外に通る人はまれだろうね。スタートして3Kmくらいから延々と尾根を走るアップダウンのきついゾーンがあるんだけど、地図をみるとそのすぐ下まで広大な墓地の敷地が迫っていたりする。ちなみにネットの情報だと男が死んだのはちょうどそのあたりらしい」
 佐山は画面のそれらしき地点を指差したが、工藤には方角の検討すらつかない。
「さあ、気合い入れて行こうか!」
 佐山は再び歩き始めた。後を追う工藤がその足元に目をやると、ちゃっかり登山用らしきごついシューズを履いている。
「なんでも持ってますね」
「大会のウェブサイトが残っているからこんな地図は簡単に手に入るよ」
 いやそうじゃなくて、と言いかけててやめた。連れ立って歩く道路はすでに息切れするほど急な上り坂だった。やがて舗装路が終わり、二人は道の両脇から草が覆い被さる細い登山道へと足を踏み入れた。
 辺りは木々がうっそうと繁り濃い日影を作っていた。ただ傾斜はきつく、直ぐに汗が吹き出してくる。それでもなんとか佐山の後について歩きつづけると、徐々に呼吸が整い汗もひいてきた。そのうちに工藤は、木の枝先や金属製の手すりなどに、ぽつぽつと赤いリボンが結びつけてあるのに気がついた。
「佐山さんそれ」
 工藤が指さす。
「コースの分岐点とかところどころに結んであるみたいだね、目印として」
 佐山は立ち止まりもしない。やがて辺りはさらに暗くなり、ついには何本かの倒木が行く手をふさいだ。だが佐山は気にとめる様子もなく倒木の上を乗り越え、下をくぐるとさらに先へと進んで行く。
「ところでさ、インターネットのおかげで特定の場所に突然、人が集まるようになることがあるじゃない」
 歩く速度を落とさずに佐山が言う。息も切れていないらしい。あれだけタバコを吸うくせに、いったいどういう体のつくりをしているんだろう。工藤は弾む息で「はい」とだけ答える。
「日本人は見向きもしない場所に、外国からの観光客が押し寄せたり、どこかの道の駅にある日、走り屋が集結してしまったり」
 確かにそんなニュースを見たなと工藤は思う。
「SNSなんかで噂がひろまって、ってやつですよね」
「そうそう、それでさ。鉄塔には霊が集まるって話、聞いたことある?」
「ネットで見たことある、ような気がします」
 工藤は途切れ途切れに答えた。
「もともと、大量の電気が流れている場所には霊が集まるって良く言われるんだよね。あとは水辺とか」
 工藤は口をつぐんで続きを待つ。佐山は気にせず話し続ける。
「ほかには、現世をさまよっている霊が成仏したくて高いところを目指すんだ、なんて話もあったっけ。むかし5ちゃんで読んだんだけど」
「それは僕も知ってます」
「まあそんな理屈なんて、みんな眉唾ものかもしれないけどさ、ただ本当に霊が存在するのだとすると、やっぱり鉄塔とかそういった場所に集まってくる可能性は高いよね」
「なぜそんなことがいえるんです?」
 工藤が聞き返す。
「一定の数の人間が、鉄塔は霊の集まる場所かもしれないと認識しているからだよ」
 何を言っているのかわからない。
「亮ちゃんだって知ってたくらいなんだから。そこは例えば、霊感が強かったり、面白半分にしても霊に興味があったりする人々が集まりやすい場所なんだ。今はそんな情報はあっという間に拡散するからね」
「でもネットの情報で集まってくるのは霊じゃなくて人でしょう?」
「きっとそういう場所はさ、誰かに思いを伝えたい、存在を知ってもらいたい、さらには恨みをはらしたいなんて思いを抱いた霊にとっても、うってつけなんだよ。自分の存在を感じてもらいやすいターゲットが勝手に集まってくる訳だからね。いわゆる心霊スポットで繰り返し心霊現象が起きるのはたぶんだけどそんな理由さ」
 思わず「なるほど」と声が出る。
「なんだか鶏と卵どちらが先かみたいな話ですね」
 工藤がそう答えたところで佐山がようやく立ち止まった。尾根伝いの道がちょうど上りから下りにさしかかる少し開けた地点で、その真ん中には巨大な鉄塔がそびえ立っていた。その周りをぐるりと背の高い草が取り囲み、見上げるとコースと斜めに交わるように何本もの送電線が走っている。佐山がスマホを工藤に向かって差し出した。
「さて、この先の進み方がわかるかい?」
 地図上に赤く表示されたコースは、鉄塔の反対側へと続いていた。工藤は左右を見比べて左側が多少は開けてると思い、そこから回り込もうとした。が、すぐに丈の高い草に行手を阻まれてしまった。
 それじゃあと今度は右に進んでみると、行手をさえぎる草の一部に人が踏み分けたような後がある。「ここか」と思い工藤が踏み込む、とその途端に足を踏み外しバランスを崩した。「やばい」と感じたところで、佐山に腕をつかまれる。
「危ないよ」
 工藤は驚いて言葉も出なかった。
「気いつけて。落ちたら上がってこられないよ。たぶんその下が男が亡くなった現場だから」
 工藤は草の隙間から恐る恐る覗き込む。草に覆われてわからなかったがそこから先は人が登れないほど急角度の斜面で、木々の陰になり下がどうなっているのかまったく見通せない。
「今年の大会はコースを変えざるを得ないだろうね。そうじゃなきゃ中止かも」
 二人は再び鉄塔の正面まで戻った。
「正解はさ、まっすぐ鉄塔の下を潜り抜けるんだよ。ほら、向こうにリボンが見えるだろう?」
 佐山が鉄骨と鉄骨の間を指さす。その先には細い木の枝に結ばれた赤いリボンが、風に揺れて見え隠れしていた。
「俺はすぐに気がついたけど、亮ちゃんはやっぱりダメだったか。何か障害物を見つけると対峙する前にまず避けようとする癖がついてるんだな」
 返す言葉が浮かばない。
「たぶんあの男もそうだった。それで同じようにここから落ちたんだ」
 いつの間にか風が強まり、草がざわざわと揺れている。見上げると雲が早いスピードで流れていく。佐山が続ける。
「頭上には霊が集まりやすい鉄塔。そして崖下にあるのは広大な墓地だ。その間に横たわる死にかけている男と死の間際に描かれた一枚の絵。『呪いの絵』が誕生するのに、まさにうってつけの状況だと思わない?」
 その時工藤は、鉄塔からジリジリと不快な音がしているのに気がついた。子どもの頃、どこかで聞いたことのある音だ。
「それじゃあの絵は、ほんものの『呪いの絵』だっていうんですか?」
 佐山のいつものほら話だろうと、理性では考えていてる。ただ、なぜか背筋に悪寒が走る。鉄塔の立てる音が一層大きくなった気がする。
「でも、家族が死ぬっていう噂はいったいどこから出てきたんでしょうか。男の家族は別に死んではいないでしょうし」
 そこまで話して、ふと、何かいやな記憶が意識をかすめる。佐山がまたスマホを操作する。
「それなんだけど、これを見てよ。男が遺体で発見されたさらに翌月、12月のニュースなんだけどさ。男に関する情報をあさっているなかでたまたま見つけたんだ」
 工藤が読むより先に、佐山が内容を説明する。
「この付近で電車事故があって、母親と娘が亡くなっている。遮断機がおりた踏切に侵入した小学生の娘と、助けようとした母親の二人ともが電車にはねられてね」
 工藤は思わず「ああ」と声を漏らした。
「記事の母親の名前から検索して、彼女のインスタを見つけたよ。そこに娘が幼いころの写真も載っていたんだけど、犬の動画の女の子とおんなじ子だったよ」
 そう、佐山は最初から口にしていたのだ。「この子は幼くして亡くなる運命」だったのだと。

4
「亮ちゃんはこれをどうおもう?」
「佐山さんが言いたいのは、男が死の間際に描いてSNSに載せた絵が、この場所に集まる霊的な力によって『呪いの絵』となり、さらにその力が男の家族を殺した、ということでしょうか」
 尾根の上を一瞬、強い風が駆けぬける。
「家族はその絵をXから削除していますが、写真の保存されたスマホは遺品として所持していた訳ですし。そしてその話がインターネットを通じてさらに広まって」
「もちろん全てはあくまで仮説だけどね」
 佐山が笑う。
「さらに言うと、もしかすると死の間際に絵を描いてSNSにアップする行為自体に、既に男の意思とは別の力が働いていたのかもしれないよ。まあ男の願望を他の誰かが利用したといったほうがより正確かな」
 佐山はタバコをくわえると、風上に背を向けて火をつけた。
「だって俺は、この絵を描いた時にこの男がまだ生きていたとは、ちょっと思えないんだ」
 そこでふっと煙を吐き出した。
「電波障害が解消されたのは、男が遺体で発見されたのと同じ日だ。だとすると男はまさに死の直前になってこの絵をアップしたことになる。それこそ断末魔にね」
 佐山が人差し指でタバコを軽く叩く。まだかすかに火の残った灰が風に飛ばされて舞い上がる。
「まもなく息を引き取るくらいに衰弱している状態で、その時に目に映った光景を絵に描くことなんて果たしてできるのかな。手だってもうろくに動きやしないだろう。ましてやスマホを捜査してそれを撮影しネットに上げるなんて」
 確かに、と工藤は思う。
「亮ちゃんも言ってたろう、まるで誰かに描かされたような絵だって」
 工藤がこの絵に感じた違和感、一つひとつの線に込められた作者の思いみたいなものがまったく感じられない理由も、それなら説明がつく。すでに死んだ人間が何か別の力で描かされたものだとしたら。
「でも仮にそうした何か不可解な、いわば霊的な力が働いたのだとしても、なぜ男の家族まで死なないといけないんでしょうか?」
 工藤はなぜか佐山に少し腹が立ち始めていた。
「男は別に誰かを呪っていたわけではないでしょう? ましてや自分の大切な家族のことなんて」
 そこで言葉を切った。
「思い出したかい」
 ーーそうだった。
「この男は『大切な家族を失った』って自分で書いていたろう」
 佐山は携帯灰皿を取り出し、その中にタバコを捨てた。
「だいたいおかしいとは思わないか? 娘はまだ小学生だ。普通の父親なら、休日は家族とのレジャーや予定を優先するものじゃないのかな」
 佐山の言う通りだった。
「そしてこの男もかつてはそうだったはずだ。昔から家族を遠ざけていたわけじゃない。子煩悩だって亮ちゃんも言ってたじゃん。娘の写真や動画だって嬉々として大量にアップしていたし。あの犬の動画を見る限りじゃ、むしろ親バカの部類だろう。絵はそうした合間に趣味程度に描いていたはずだ」
 工藤にはもはや、佐山の話が当たり前の真実のように響いていた。
「それが彼はある時期からそうした写真や動画をアップしなくなった。別に仕事が急に忙しくなったわけでもなさそうなのに、いつの間にかただの趣味だった絵やランニング、さらにはSNSに異様にのめりこみ、家族に関することにはまったく触れなくなっていく。家にいるときはおそらく1人部屋に閉じこもり、絵を描き続けて、完成すると片っ端からネットに上げる生活。そうでなければ家族を置いて1人でランニングやトレランに出かけてしまう。家族と過ごす時間はおそらく一切ない」
 確かに、単に孤独が好きな性格だというだけでは説明がつかないほどの、極端な変わりようだ。まるで家族をうとましく思っているような。
「それでさ、そんなふうになる直前の時期にSNSにアップされたのが、例の『声』だったんだ」

今日 大切な家族を失った
少なくとも俺のなかにはもういない
あんなことは絶対に許されない
俺は100羽の鳥たちのように静かに生きていきたい

 さっきまでとは違ういやな汗が出てくる。
「いったいどういう意味でしょうか」
「確かなことはもちろん俺にもわからないけど、ただこの日だけ、男の一人称は『私』ではなく『俺』になっているんだ。おそらく、男の本音に近い気持ちを勢い任せに吐き出しているからさ。外面を取り繕う余裕もなく。そんなに動揺するくらいの出来事があったんだろう。『大切な家族を失った』『あんなことは絶対に許されない』と書いているところをみると、何かひどい暴力や犯罪被害にあったようにも思える。あるいは「いじめ」とか」
 佐山は続ける。
「ただあくまでも『少なくとも俺の心の中では』としているから、現実に誰か家族が死んだり傷ついたりした訳ではないはずだよ。あと、その後の男の家族を避けるような態度と照らし合わせると、男の家族は被害にあったのではなくて、むしろ加害者だったのではないかと思うんだ。それが許せなくて、男は家族を避け孤独を求めるようになった。そう考えた方が自然だろう」
「例えば、娘が誰かほかの子をいじめていたということですか? それが何かのきっかけで発覚したと」
「いいね、亮ちゃん。今日は本当に冴えてるよ」
 佐山が工藤の顔を指差して微笑む。
「これはまあ、俺のいつもの妄想だと思って聞いてほしい。気の弱い男にとって、娘がやった他の子に対するひどいいじめと、おそらくそれをきっかけにした家族との不和は耐え難いものだった。失ったのは「娘」ではなく「家族」とあっただろう? 男は娘だけではなく嫁のことも許せなかったんだ」
 工藤はうなずく。
「だから男は家庭を遠ざけ、一人で絵やランニングに没頭するようになった。そうしたら意外にも、絵をアップしているXのほうで同好の士から多くの好意的な反応が得られるようになり、ますますのめりこんでいった。フォロワー3,000人は、趣味のSNSとしては少ない数字じゃないよな。孤独な男が我を忘れてはまってしまうのも無理はない」
 確かに自分のポストに「いいね」や返信がつく快感は、工藤にもなんとなく想像がついた。
「そんな男の心の中に『こんな家族なんていなければもっと自由に創作活動ができるのに』という思いは果たしてなかったか? なんなら仕事をやめてでも自分の好きなことだけに集中したいと思った時に、最後の足かせはやはり家族だったのではないか? 突き詰めれば、心のどこかで家族がいなくなることを望んでいた可能性は?」
「男の家族をうとましく感じる思いが、霊の力によって現実のものになったということですか」
 工藤が口を開く。
「人間、そんなふうに考えるものなんでしょうか。かつては大切だと思っていた家族のことを、何かのきっかけがあったとはいえ、今度は自分のやりたいことのためにいなくなってほしいだなんて。そんなに身勝手な男だったんでしょうか」
「ほら、一平ちゃんと同じだよ」
 佐山が言う。
「何かに依存するとね、人は誰でも狂ってしまうんだ。それがギャンブルでも女でも、SNSでもさ」
 佐山のサングラスの表面を雲が流れていく。「それで僕たちはどうすればいいんですか?」
 工藤は力無く聞いた。鉄塔はあいかわらずジリジリと音を発している。
「今も呪いの絵は拡散し続けているんですよ。男が思い描いていた通りに」
 佐山は待ってましたとばかりに声を張り上げる。
「なにを本気になっているんだよ!」
 満面の笑みだ。
「あくまでも仮説だっていっただろう? 何一つ証拠なんてない。いつものただのほら話だよ!」
 それから少し声のトーンを落とした。
「それに、今さら心配したってしょうがない。一度ネットの海に放たれた情報はどうやったって消すことなんてできないんだから」
 それはそうだと工藤も思う。もちろん100%信じている訳ではない。ただ今の話が例え嘘でも本当でも、もはや彼らに出来ることはない。
「さあ、山を下りて飲もうじゃないか。駅前に安くてうまそうな居酒屋を見つけてあるんだ」
 そういうと佐山は先頭に立って今きた道を戻り始めた。

おわり

絵を描く男

執筆の狙い

作者 いかめんたい
M106073000002.v4.enabler.ne.jp

SNSにアップされた絵にまつわる、ちょっとホラーテイストの連作のうちの一話です。2週間前に投稿したお話の一つ前のお話で、これが1話目です。基本的にネットで読まれることを前提にしています。前回と違い、普通に三人称です。40枚くらい。お読みいただけると嬉しいです。何卒よろしくお願いいたします。

コメント

えんがわ
M014008022192.v4.enabler.ne.jp

こんにちわー。かなり辛口になってしまい、ごめんなさい。
基本的な筆力はあると思うのですが、コンセプトというか書き方みたいなとこでなんか自分に合わなかったんです。


前回の話の感想で、事件をネタに酒の席で話をしているような緊張感の少なさというのを言った気がするのですが。
それはある部分、途中から現地に行くことで解消されていますが、ただネックの部分は残っている気がします。

特に冒頭から3までにかけて、ひたすら噂話として事件が語られるので、当事者としての緊張感に欠け、導入としての引力が弱い気がします。
そして現地に行って物語が動くかなと思ったら、事件が起こるのではなく検証で終わってしまい、それはそれでリアリティがあるのですが、物語としての仕掛けとしては弱い気がします。

事件の被害者とかを知人にしたり、主人公らが呪いの画像をダウンロードしたり、何かしらの緊張感の種というか、事件の近さを作る結びつきがあってもという気がしますよ。

なにかね、勿体ないシリーズです。
サスペンスらしい空気を作る文体や、現代的な小道具を使う話のリアリティがあるので。
そこにフィクションの面白さと物語の当事者性があれば迫力が出るだろうなと思います。

途中から流し読みになってしまったので、自分、読み込みが圧倒的に足らないのですが、流し読みになってしまったという所に物語のはらはら感というか事件感に問題があるようにも思うような。それは自分の集中力の無さの責任転嫁といえばそれまでですが。

スーピ
p7606195-ipoefx.ipoe.ocn.ne.jp

 ドキュメンタリー的で読みづらくはなかったのですが客観的過ぎるというか、雑誌記事のような解説さを感じてしまいました。
 そこそこ書けているけれど何かが物足りないような、もっとパンチが欲しい気がしました。

いかめんたい
M106073000002.v4.enabler.ne.jp

えんがわ様

お読みいただきありがとうございました。

>かなり辛口になってしまい、ごめんなさい。

いいえ、ぜんぜんかまいません。むしろそういうのが聞きたくてわざわざここに投稿しました。なのでまじうれしいです。

>特に冒頭から3までにかけて、ひたすら噂話として事件が語られるので、当事者としての緊張感に欠け、導入としての引力が弱い

そうですね。前回も同じようなご指摘を受けておきながら、という感じではありますが、書いたのはこちらが先だったのでその点はご容赦を。

それでそもそもこの文章は、自分の絵をSNSでアップしている人たち界隈に向けて、そんなSNS上の絵をテーマにしたホラー小説風の軽めの文章を提示してみてはどうだろうと、そんな思いつきで書いてみたものでした。

それで絵をテーマにしたインターネット上の都市伝説的なものを、ネット廃人的な男が解き明かしていくという枠組みを考えたのですが、どうやらこのスタイルが緊張感とか臨場感の欠如に繋がっているようですね。

一話、二話ときて、三話目では聞き役である工藤が呪いの対象となるという想定ではあったのですが、すでに二話目までで興味を失われるようではだめでしたね。

>物語のはらはら感というか事件感に問題がある
>にフィクションの面白さと物語の当事者性があれば迫力が出るだろうなと思います。

これはそうなんでしょうね。私は小野不由美の『残穢』みたいなドキュメンタリータッチのやつも好きなんですが、それが悪い方に作用しているのかもしれません。

ご意見が聞けて嬉しかったです。
ありがとうございました。

神楽堂
p3339011-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp

>いかめんたいさん

読ませていただきました。
が、途中は流し読みになってしまいました^^;

素材はいいと思うのですけど、なんとなく入っていかないんですよね。
呪いの絵ということですが、まず、その絵がどんな絵なのか、伝わってきませんでした。
文章で絵を表現するのは難しいとは思いますが、やはりここは
文字の力でぜひとも、読者の脳内にその絵を描いてほしいと思いました。

あと、三人称視点で書いているのも、なんだか盛り上がりに欠ける要素かなと。
私だけの感想かもしれませんが、どうにもこの物語が他人事のような感じになってしまって入ってこないんですよね。
ほとんどが二人の会話なので、ただそれを聞いているだけというか。
私だったら、一人称視点で書きます。
不思議に思ったり怖いと思ったり、主人公と読者が一体となって話を読み進められるように書きます。

作品を読ませていただきありがとうございました。

いかめんたい
M106073000002.v4.enabler.ne.jp

スーピ様

こんにちは。
お読みいただきありがとうございました。

>ドキュメンタリー的
>客観的過ぎる

だいたい皆様から同様のご指摘をいただいています。
上で他の方にも言われたのですが、主人公たちが巻き込まれる要素が必要なんでしょうね。
それで私が考えた枠組みはそもそもそうなっていない訳で、そこはもう少し考えてみようと思います。

お読みいただきありがとうございました。

いかめんたい
M106073000002.v4.enabler.ne.jp

神楽堂様

こんにちは。
お読みいただきありがとうございました。

>呪いの絵ということですが、まず、その絵がどんな絵なのか、伝わってきませんでした。

これはちょっと悩んだところでもありました。手帳にボールペンでラフに描きなぐった絵、というところを示せばある程度想像してもらえるかなと思ったのですが、この条件でだけで想像してくれる人というのは自分で絵を描いたりする人に限定されるのかもしれないなとも思いました。

三人称と一人称については、三人称のほうが楽に書けるのでついつい選んでしまいます。

>どうにもこの物語が他人事

これは前回、今回とご感想をいただいたほぼ全員から、同様のご指摘をいただきました。
その一番の要因は、主人公たちがあくまでも第三者のままで怪異に巻き込まれていない、という点にあるということも。

なので、そもそもこのお話の枠組みがこれでよかったのか検討し直す必要があるねと、そんなことを考えているところです。

お読みいただきありがとうございました。

霜月のゆき
softbank126130099158.bbtec.net

いかめんたい さん

こんばんは。お邪魔します。

アームチェアデイテクティブ、というのかな。
現場には行ってるけど、行かなくても解決(?)しそうな話だなと。
基本的には霜月好みの話でした。故に残念な部分があって、ちょっと書いてみます。

冒頭の章が「呪いの絵」を書いたとされる男の末期の描写だと思うんだけど、最後に回収をしてほしかったな。冒頭で伸ばした手が最後に何を抱きとめたのか抱きとめられなかったのか。はっきり書いちゃうのも野暮ったいけど、ちらりと匂わせると話としてきっちり閉じた感じが出るかも。

佐山と工藤のシーンは登山から始めてもいいかもしれない。舞台を変える感じ。作中のトレランコースは傾斜の緩急があるみたいだからそれに合わせて謎解きの緩急を付けてもおもしろいかも。
この事件(?)自体がふたりには他人事なので、佐山と工藤に頑張って山登りしてもらってそこに読者の共感とか親近感を引っ張ってくるのも手かなって思う。
とか。言うのは簡単よねー。

佐山と工藤の説明調になりがちな会話の中に、ときどきつっこみとか方向の違う雑談を挟んでいるところはうまいなあと思った。気を配って書いてる感じがした。

佐山はおもしろいキャラだね。いろんな切り口で物語れそう。
工藤はこの先もバディとして登場するのかしら。もしそうならふたりのなれそめだとかはこの先で少しずつ小出しにしておいて、今現時点の二人の関係性だけを出しておけばいいような気がする。

>ましてやスマホを捜査してそれを~
→重箱の隅でごめん。誤変換見つけちゃった。

男が家族を失った理由について。
霜月はてっきり男が嫁さんの不倫を知って、しかも娘は違う男の胤だった、とか下世話な想像をしてました。
なるほど。一平ちゃんがからんでくるのはこういうわけか、と納得。
承認欲求と依存。これがテーマかしら。
それと鉄塔を避けちゃう亮ちゃんの本質。
なかなかに深いものがあるのかもしれないと思った。

ちょっととか言いながら長々と書いてしまいました。

お邪魔しました。

いかめんたい
sp1-72-6-80.msc.spmode.ne.jp

霜月のゆき様

こんにちは。
お読みいただきありがとうございました。
確かにアームチェアディテクティブ的でもありますし、もっとストレートにいうとネットの情報を根拠にいろいろと詮索する人たち、でもありました。

>冒頭で伸ばした手が最後に何を抱きとめたのか

ここはなんか思わせぶりになってしまい反省です。私としては、鉄塔から降りてきた「何か」によって、本人の意図ではなく絵を描かさせようとしているところ、をイメージしてました。

>佐山と工藤のシーンは登山から始めてもいいかもしれない。

なるほど、確かにそうですね。お店に座って話しているだけよりもいろいろと変化もつけられそうです。書くのしんどそうでもありますが。

>佐山はおもしろいキャラだね。

初めてそう言っていただきました。ありがとうございます。

>男が家族を失った理由について。

これは逆に思いつきませんでした。私的には多分、嫁が何かをしても子煩悩な父親がそれを理由に子どもを嫌いにはなれないだろうなというのもあり、子ども自身に原因がある方向で考えてました。犬を叩いちゃうくらい乱暴な子にしたのもそのためでした。ただそもそも自分の子どもでなかったとすると•••。それもありですね。

>承認欲求と依存。これがテーマかしら。
それと鉄塔を避けちゃう亮ちゃんの本質。

これはほぼご指摘通りですね。
それでここからは独り言に近いのですが、このお話にぼんやりとでもテーマがあったとすれば、SNSとインターネットでした(まさに「承認欲求と依存」)。難しい話じゃなくて、私も含めみんな身近に使って生活に入り込んじゃってるその手のもろもろ全般みたいなイメージです。

現実には、不安や恐れがあると直視して対処したり見て見ぬ振りして後悔したりする訳ですけど、そういうのを第三者的立場から気軽に無責任に楽しめるスタンスとでもいいますか、それが良い悪いじゃなくてそういう環境で楽しむものの一つとして、小説なんて構えなくても、もっとお手軽に読める何かを書けないかなと考えてました。

読者対象はSNSで作品投稿とかしている絵描きの人たち界隈で、当初はPDFにしてXに画像として貼り付けるつもりでした。

それを目指して書き始めたんですけど、長さはどっちつかずの中途半端になり、内容としてもSNS的環境で読んでいただくからといって、登場人物やお話がSNSらしい第三者的無責任さや他人事感をまとっている必要はなかったかもしれないなと、今さらながらに考えているところです。

いろいろと参考になるご意見をありがとうございました。

夜の雨
ai202078.d.west.v6connect.net

「絵を描く男」(1まで)読みました。

この作品はかなり推敲して練り込んでいますね「1」までで、それがよく伝わりました。
つまり時間をかけて作品を創りこんだ、ということでは。

一般的な作品はさらさらと書いてあるのですが、御作は一文一文時間をかけて描いているのが伝わります。

今夜は時間がないので、ラストまでの感想は8日の土曜の夜までに書きます。

ちなみに御作は原稿用紙設定で54枚です。

夜の雨
ai192051.d.west.v6connect.net

「絵を描く男」読みました。

冒頭の情景描写から入ったところの男が主人公だと思っていると、それは違っていて被害者だった。別の意味での主人公ですよね。

そこから物語の1以降が始まり、事の顛末が描かれる。
その描き方が工藤という主人公の青年と佐山という元同僚でいかつい体をした男でネットの廃人という組み合わせが面白い。
この二人が物語の主人公で冒頭の男の死にまつわる呪いの話が展開していくわけですが、別に事件が起きるわけではなくて、二人で会話を重ねて事の真相を掘り下げるという流れです。
なので主人公の工藤を女性にしてもよいかなと思いました。
推理とかオカルト好きで格闘技とかもやっていてもよいかなと。
どちらか一人を女性にすると読みやすくなるのではと思ったりしました。

現状の御作でも二人の会話に違和感はなかったですが。
佐山が登場したときはこの男は怪しい奴かなと勘ぐりましたが、ふつうに友達という感じですね。
呪いにまつわる物語の進行などですが。
話を練り込んであるのか引き込まれました。
ネタの開示方法がよいのかもしれません。

女の子が犬の頭をペシペシ叩く動画ですが、このあたりは単純に再生回数を稼ぐためのやらせかと思い、御作の流れ自体が『呪いの絵』の本筋も含めて金儲けの手段になっている。
そのあたりが暴露されていく話かなと思って読んでおりました。
結局は犬の頭を叩いていた女の子も犬の飼い主も父と娘の関係だし、それで再生回数が上がれば金は稼げるしね。
子供と猫や犬の動画などは動画サイトによく上がっています。
結構副収入になっているのでは。

御作では女の子がいじめの側で加害者になっていて、それで父親が娘と嫁という家族と距離をおいたというような展開から、家族と一緒ではなくて一人で行動するようになり山で遭難した、それも低山で。そこに鉄塔が建っていて、鉄塔には霊が集まるとかという設定で主人公たちふたりも男が亡くなった現場の山に行き、工藤が落ちかけるというあたりがドラマだなと思いましたが。
ふつうは「危ないので」落ちかける前に「あそこは危ないからと、注意する」と思います。
男が遭難で亡くなった後に、家族の嫁と娘は踏切で亡くなっているのですよね。
この踏切で娘が事故に遭いそうになり母親が助けに行き電車にはねられるというあたりは、ちょっと無理があるかなと思いましたので。
この事故は「呪い」の伏線(犬がらみ)を仕掛けておくとスムーズに読めると思いました。

男が亡くなり娘と妻の家族みんなが亡くなるという流れは御作の世界観からすると違和感はありません。
そういえば、犬が残っていますね。
踏切の事故は犬がらみにするとよいかも。
男が山の遭難で亡くなったあと、残った妻が娘と犬を連れて散歩していて踏切で電車が通るのを待っていたところ、急に犬が吠えると遮断機が下りた踏切を向こう側に走り出した。
それで娘が犬を捕まえようと犬の後を追いかけた。
電車が迫る中、母親があわてて娘を助けようと。
こういった流れで事故になった。
助かったのは犬だけ。
踏切の向こう側で犬は死んだはずの男の胸に飛び込んで尾っぽをちぎれんばかりに振っている。
亡霊の男は犬の頭を撫でながらも踏切のなかの娘と妻の死にゆくさまをじっと見ていた。
●ちなみにこういった「犬と男の愛情」をからめるのなら、男が犬を大事にしている描写とか説明の伏線が必要です。

話はホラー系として読ませていただきましたが、そこに家族が絡んでいましたので、この家族の話を掘り下げると御作はパワーアップすると思いました。

お疲れさまでした。

いかめんたい
M106073000002.v4.enabler.ne.jp

夜の雨様

こんにちは。
お読みいただきありがとうございました。

>ちなみに御作は原稿用紙設定で54枚です。

枚数は書いてる途中で一度確認していたのですが、その後いじってるうちに増えてしまったみたいです。ご指摘ありがとうございました。

>どちらか一人を女性にすると読みやすくなるのではと思ったりしました。

なるほど思いつきませんでした。キャラクターの魅力のなさは割と指摘を受けていたので、解決策の一つかもしれません。でも違うお話になってしまう気もしますが。

>女の子が犬の頭をペシペシ叩く動画ですが、このあたりは単純に再生回数を稼ぐためのやらせかと思い

これは公園かどこかでよその家の犬を勝手に、というつもりでした。確かにわかりにくい書き方でした。

>ふつうは「危ないので」落ちかける前に「あそこは危ないからと、注意する」と思います。

ここは演出上の作者都合で。まあ普通は事前に説明しますよね。

>そういえば、犬が残っていますね。
踏切の事故は犬がらみにするとよいかも。

これは「確かに」と思いました。犬はなんだかほったらかしなので、踏切事故と絡めるのはすごくいいですね。ただ主人公たちは現場に居合わせているわけではなくネットの情報から推理するだけという設定なので、使い方を考えてみます。
近所で同じ日に大型犬が飼い主の元から脱走する事件があって、その犬に追いかけられて女の子が踏切の中に入る瞬間が、たまたま通りかかった車のドライブレコーダーに残っていたとか。

>そこに家族が絡んでいましたので、この家族の話を掘り下げると御作はパワーアップすると思いました。

ありがとうございます。ただ一方で、できるだけ短くまとめたいという私の都合もあって、いろいろと考えてみます。

参考になるご意見ありがとうございました。

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