愛犬がエルフ? 僕が地球を守る理由!
1-1 遭遇
僕は川村航平23才。北陸の片田舎に住んでいる平凡なサラリーマンだ。
恋人は、いないよ! なぜなら僕にはチャコちゃんがいるからっ!!
チャコが生まれたのは3年前。両親が飼っているトイプードルのメスが仔犬を産んだ。
どうやら、いつも連れて行くドックランで、いつの間にか種付けされていたらしい。
そして、母犬は3匹の子犬を産んだのだけど2匹は死産。唯一生き残ったのが、僕の愛犬チャコちゃんだった。
僕は今まで犬は普通に好きではあったが、両親が母犬を溺愛していたので、反面的にそれ程の興味は無かった。
しかし、チャコが生まれた時に何かが弾けた。
小さな体で目をうるうるさせ、こちらを見つめる姿に、ハートを撃ち抜かれてしまった僕は、両親に宣言した。
「チャコは僕が面倒をみる!」
その日から、チャコは僕の愛犬になった。
幸い、大学へは車で通える為、その日の講義が終わると、両親に買ってもらった中古の軽四を走らせ急いで家に帰る。
家に着くと裏山へ行き、まったりとチャコの散歩をするのが僕の日課になっていた。
そして、社会人になった今でも、それは続いている。
だから、恋人ができないんだと言う友人もいるが、そんなの関係ね〜だ!
働き始めて1年ちょっと。職場には僕に好意を寄せてくれる女性がいるにはいる。
しかし、僕のチャコ愛を知っているのは、職場の同僚で幼なじみの海斗だけ。
もし、海斗がその女性に僕のチャコ愛をバラせば、次の日からは変人認定され、女性から総スカンを食らうだろう。
それはさて置き、僕が働いている会社は世界に誇るショベルカーを作っている大企業。故に給料はそこそこ良くて美人さんも多く、大抵の社員は職場結婚をしているみたいだ。
もしもチャコがいなければ、僕も月並みな人生を送っていた事だろう。
しかしこの夏、僕のチャコ愛を更に大きく狂わせる事件が起きた。
☆☆☆☆☆☆☆
ある金曜日の夕方、仕事から帰った僕は、いつもの様にチャコと裏山へ出掛けた。
裏山の頂上には小さな公園があり、そこのベンチに座って、縫いぐるみの様な薄茶色の毛を撫でながら、チャコとお話しをする。
「チャコちゃん、だいぶ毛が伸びちゃいましたね〜! 明日はトリミングでも行きまちゅか?」
ワン、ワン!
チャコに話が通じたのか、ワンと返事が返ってくる。おまけに尻尾は高速回転し、喜びを全身で表現する。
最も癒やされるチャコの仕草だ。
そして、袋からおやつを取り出すと、尻尾の回転速度が更に上がる。
ガリガリガリ!
美味しそうに食べるチャコ。
ハァ〜、見ているだけで癒やされる〜!
何時間でもこうしていたい。だけど、辺りが暗くなってきた。
「チャコ、そろそろ帰ろうか?」
ワンッ!
僕がベンチから立ち上がろうとした時、空中に魔法陣が浮かび上がると、次の瞬間、そこから人が落ちてきた。
ヅダ〜ン!!
「ガハッ!」
2メートル位の高さから落ちて、地面に直撃したその人は、頭から血を流して倒れていた。
「大丈夫ですか〜!?」
急いで駆け寄った僕とチャコは、落ちてきた人の顔を見て驚いた。
長い銀髪に、透き通るような白い肌。妖精の衣装の様な服を纏い、美しく気品のある顔立ちの若い女性。
そして、腰にはレイピアを帯刀している。
ただ、耳が、耳が、エルフ耳!
「ハァハァ!」
息が荒いエルフ耳の女性の頭を抱き起こすと、ぬめっとした感触が手に伝わる。
僕の手には真っ赤な血糊がべっとりと付いていた。
そして、背中には大きな刀傷があり、大量の血が今も流れ出していた。
この人に何があったんだ?
僕は気が動転して何度も呼びかける。
「お嬢さん、お嬢さん、大丈夫ですか〜?」
「クウ〜ン」
チャコも女性の頬をペロペロなめる。
すると、女性の目が微かに開き、僕を見て何やら呟いた。
「あ、あなたは地球の方ですか?」
「はい!?」
「ち、地球が狙われています。追手の魔物が直ぐそこにッ!」
「ギヒッ!」
すると、林の中から黒いフードを被った男が、片手に剣を持って襲いかかってきた。
「死ねェ〜〜〜!!!」
ガウッ〜!
男の剣が目の前で振り下ろされ、もう駄目だと思った瞬間、チャコが男に体当たりをした。
ドカッ!
突然の不意討ちに、男が剣を落とす。
「チッ、クソ犬め!」
ガルルルッ!
チャコとフードの男が睨み合い、次の瞬間、チャコがキバを剥き出して男に飛びかかった。
しかし、チャコのキバは男に届く事は無く、男が懐から出した短剣が、無惨にもチャコの腹に突き刺さっていた。
キャン、キャン!
チャコは腹に短剣を刺されて地面に転がり、ピクピク痙攣している。
「チャコぉぉぉぉ〜〜〜!!!」
「キサマぁぁぁぁ〜〜!!」
僕は男が落とした剣を拾い上げると、フードの男へ突進した。
ザクッ! ズブズブズブッ!
剣は無防備の男の腹に突き刺さり、僕は怒りに任せて根元まで刃を押し込んだ。
ギェェェェッ!
男は断末魔の叫びを上げて息絶えた。
僕はすぐさまチャコに駆け寄ると、抱きかかえて腹に刺さった短剣を抜く。
そして、腹から流れ出る血に手を当てて、少しでも止血しようとするが、出血の勢いは一向に治まらない。
クゥ〜ン!
チャコが弱々しい声を上げる。
「チャコ〜、死なないでくれ〜!」
だんだんと息が小さくなっていくチャコを抱え、どうすれば良いかも分からずに、僕は大きな声を上げて泣き崩れた。
すると、側にいた瀕死のエルフ耳の女性が、僕に話しかけてきた。
「わ、私はもう助かりません! それに、その子も残念ながら助かりません。ですが、エルフ族に伝わる秘術を使えば、その子を助ける事が出来るかもしれません。
ハァハァ、もう時間がありません。よろしいですか?」
もう訳が分からない。チャコさえ助かるなら何でもいい!
僕は即座に頷いた。
すると、エルフのお姉さんは、ブツブツ呪文を唱えると、最後に大きな声で叫んだ!
「反魂秘術、生者の契り!」
すると、エルフのお姉さんの体が粒子に変わり、やがて大きな白い玉になった。そして、ゆらゆらとチャコの方へ向かっていくと、ストンとチャコの身体に入っていった。
その後、白い玉が入ったチャコの体は、みるみる生気を取り戻し、刺された傷跡もいつの間にか消えていた。
「チャコ〜! 大丈夫か〜!?」
ワンッ!
チャコは一見、何事も無かった様に見える。そして、周りにはエルフ姉さんの血のりが地面に残されていた。また、男の体もいつの間にか消え失せており、残されたフードの上には小さな宝石が1つ落ちていた。
僕はチャコと家に帰り、何事も無かった様に家族で夕食を済ませると、頭を整理するため自室に籠もった。
今日の出来事は夢だったのだろうか?
色々と考えながら、今晩もチャコと一緒に布団に入る。
「おやすみ、チャコ!」
ワン!
・・・・・・・
翌朝。
「う、う〜ん」
いつもと違う、柔らかい何かが腕に当たる感覚で目が覚めた。
なんだろうと思い、柔らかい物を手で掴む。
ムニュ、ムニュ!?
「ええっ〜! おっぱい〜? そして、あんた誰ぇ〜?」
見知らぬ顔の綺麗な女が、僕の腕に抱きついて、全裸でスヤスヤと寝ていたのだった。
執筆の狙い
来年のコンテストに向けて、新作を考えています。できれば書籍化も狙っています。
概要は、犬好きの独身男性が魔物と戦い地球を守るという話です。
以上を踏まえて、可能性をお聞きしたいのですが、
この作品は、コンテストで3位以内に入れますか? 書籍化の可能性はありますか? 世の中のニーズに合っていますか? 感想を聞いて、方向性が合っているか確かめたいです。
以上、シビアな感想をお聞かせ下さい!