作家でごはん!鍛練場
上松 煌

 怖話(こわばな)『シキモウレイ』元話

 シキモウレイは『引き亡霊』のことで、冬に海面と外気温の差で水蒸気が霧のように立ち昇る「気嵐(けあらし)」現象に似ている。
ただ、季節を問わず、立ち上がる影にはなぜか頭があり、胴体や手足があり、そして目鼻がある。
それが無数に海面を覆い、流れ、伸び上がり、入り乱れ、林を吹き過ぎる風のような音声を発するという。


 1989年6月~8月にかけて商船学校帆走練習船「海王丸」は最後の航海としてホノルルに旅した。
バーク型4本マストの帆船で、総重量22万トンを越える白く美しい姿は多くの人目を引き、ラスト航海ということもあって大変な歓迎であったようだ。
楽しくも忙しい日程を無事にこなし、名残を惜しみながらも帰途に着く。
ハワイ諸島の島影も後方に消えていき、行きかう船もまばらになり、太平洋の真っ只中にポツンと取り残されたような心細さを感じる。
特に夜のワッチ(見張り)は寂しさを通り越してホーム・シックになるほどだ。

 水野義明は早目にベッドを抜け出る。
仲のいい練習生の小田一郎と少し雑談がしたい。
上甲板の見張り所に行くと、小田が不審げにキョロキョロしている。
声をかけると、
「シッ。なにか聞こえる。ほら、まただ」
と言う。
熱帯低気圧が近づく時などは大気が乱れ、とんでもなく遠くの船や陸地の音声が届いたりするので、それだろうと思ったが、よく聞くと確かに怪しげだ。
かすかだが若い女の甲高い声で、
「船、船が沈むわぁ~」
と泣き叫んでいる。
ゾッと身の毛がよだつが、その声がどこからするのかはっきりしない。
「小田、船でこういうことがあったら、出来る限り知らんフリする。チョッサー(一等航海士)に報告するんだ。走るな、歩いて行けよ」
水野の祖父は大型マグロ漁船の機関長だ。
遠洋航海の怪奇話はいくつか聞いたことがある。


 ワッチを交代して、そ知らぬ顔で海を見渡す。
他船の灯火を認めたら迅速に進行方向やスピードを判断し、ブリッジに報告しなければならない。
「船、船が沈むわぁ~」
声が近づいてくる気がする。
ジンワリ冷や汗がにじむ。
身近な帆桁を監視するが、見えるのは星明かりと闇に白い帆だけだ。
緊張のため息をついた時だった。

 彼は吹っ飛んでいた。
海王丸全体が巨人の鉄槌で叩きのめされたような恐ろしい衝撃だった。
「事故だっ」
硬い甲板で肩と頭をイヤというほど打ったが、構ってはいられない。
立ち上がろうとする耳にヒュルヒュルという落下音。
複数のプロペラ音が縦横無尽にかすめ、それが急速に数を増す。
腹に響く周り中の轟音は巨大な水柱を次々に吹き上げ、雪崩落ちる反動で甲板上の機器を木っ葉のように海に叩き込む。
ドンドンという機関砲の音に、バリバリという機銃の連続音が混じる。
闇を切り裂いて、危険な跳弾があたり一面を支配する。
「クソッ、やられた」
「一矢も報いられんのか。犬死だ」
「なにを言う。負けるな。日本はすぐそこだ」
脳味噌がつんざけそうな爆裂音の真っ只中でも、こんな言葉が聞き取れた。


「総員、ヘルメットとライフジャケットを着用の上、甲板に集合せよ」
聴き慣れた館内放送にフッと意識がよみがえった気がした。
途端にあれほどの恐怖的破壊音がピタリと止み、気だるい大気と帆の音が戻ってきた。
呆然とする水野の周りに167名の乗り組員が集まって、海を指差している。
なんと、真夏の気嵐(けあらし)だった。
いや、違う。
揺れ動く白い人影だ。
海一面に隙間なく湧き上がり、流動して船にまつわり、高いマストにわだかまっては、また離れて行く。
駅に着く電車のブレーキ音のような、ヒャアァァ~オオゥォォ~という混声合唱のような声も聞こえた。
近くの数人が耳を押さえてガタガタと震えている。

 船長の柳瀬徹は定年間近の老齢だったが、何か思い当たることがあるらしく、厨房係りに命じて酒と飯を供え、招くような動作をしながら、
「どうぞ、お乗りください。いっしょに日本に帰りましょう」
と、唱え続けている。
人の形をした気嵐は言葉につれて船に群がり、次第に薄くなって消えて行き、やがて静かな海と空が戻ってきた。
海王丸はその後、何事もなく日本に帰り着き、ラスト航海は成功裏に終わったのだった。


 あの「船が沈むわぁ~」と泣き叫んでいた女は何だったのだろう?
爆沈した戦艦武蔵や筑波でも同様のことがあったというから、船の変事を告げる「ものの気」でもあったのだろうか?
もちろん、変事は海洋丸ではなく戦時中の艦船であったわけで、水野が体験した戦闘の恐怖は日本兵の最期の無念の有様であったのだろう。


     ★このお話は創作であり、海王丸のラスト航海にこのような事実はありません★





        怖話(こわばな)『出られない室』改訂版

               
 
 室を出ようとして、辺りをうかがう。
まるでタイミングを計ったように、ガラスに近づくボクを確認しているのだろう、黒い車がやって来て少し先に止まる。
そのままだれも降りて来ない。
おそらく後部ドライブ・レコーダで、ボクの所在と行動を監視しているはずだ。
油断がならない。
奥の死角に隠れた。

 いったいだれが??
いや、正体は「ルフィ」などという支持役にあやつられる闇バイトだ。
彼らは金になるなら何でもする。
ボクはボクにとっても彼らにとってもおいしい大切な物を、背中のザックにも両手にも所持している身だ。

 現に自転車が1台、変に徐行してこっちを探りながら通り過ぎる。
続いて歩行者が4,5人、わざわざ向こうの歩道から移動して、覗き込むようにして去って行った。
いちおう、ガラスは内側から施錠してあるが、それで安心できるはずもない。
とにかくボクはこの室を素早く出なければいけない。
それは必然で、ここに居続けることなど不可能なのだ。

              
 
 靴音が近づいて止まった。
こじ開けようと、ガタガタとガラスを揺さぶる。
ドンドンと無遠慮に叩く音。
最近の半グレたちはやり口が荒っぽい。
押し込み強盗被害者の90歳にもなるお婆さんが、虫けらのように殺害されたのは記憶に新しい。
ガラスを破られたら、ボクも同様の目に遭うのだろうか?
大切な物をかかえたまま、体を思い切り縮めて床にひれ伏す。
ガッ、ガッとガラスを蹴る響き。
恐ろしさのあまり、癲癇のように強く震えた。

 パタッと音が止む。
深夜の大きな物音はマズイと気づいたのだ。
それっきり気配が消え、あきらめたのだろうか、シ~ンと静かになった。
ボクは用心深くそろそろとガラスに近づき、抜け出すチャンスを伺う。
しめたっ、黒い車も人影もない。
そ知らぬ顔で街に出た。
成功だ、ただの歩行者にしか見えない。

 だが、次の瞬間、ボクは仰天して逃げていた。
右腕が異様に長く、海賊クック船長の義足のように棒状に細くなっている。
頭はイカ状に張り出したホームベース形で真ん中に輝く星か旭日のような金色の目が1つ。
こんなモノが地球上に?
しかも不気味な黒い影は2匹。
意外に機敏な行動が恐怖だ。
とにかく全力で逃げる。
これしかないっ。

 ボクのおいしい大切なものの重みで息が切れ、眩暈がする。
前方に人影が見えた。
その人はボクを見つけ、こっちに向かって走って来る。
「た、助けてっ」
だが、なんの勘違いか、全力でタックルしてくる。
「うそっ、バケモノはあっちっ」

「くぉんぬやろうっ、2回も盗みやがって。お巡りさん、こっちぃ」
「えっ?」
よく見ると胸には「無人高級ギョーザ販売」の文字が。
店長だった。
ショックで呆然とするボクに、バケモノが追いついてくる。
2重のショックに、ボクは思わず座りションベンしてしまったほどだ。



 目撃者がしゃべっている。
「いつもどおり、通るのは通行人・自転車・車で、客が何人か来たんだけど、鍵が閉まってるらしく入れない。ドア蹴ってる人もいて。そのうちにコイツが出てきてキャアとか言って逃げ出した。なんなんでしょうね、すごく怖そうで。ま、悪いことしてる罪の意識でモンスターでも見たんじゃないっスかねぇ。あははは」
そうかも知れない。
いや、そうなのだろう。
それ以来、ボクはこのイカ状ホームベース頭と不ぞろいな腕、金色一つ目のモノをちょくちょく見かけるようになったからだ。
例えば路地の隅っこで軽犯罪法を犯しちゃおうかなって時や、鍵のかけ忘れの自転車のそば、この間なんか女の子のケツをちょっとだけタッチした途端、満員電車全体がこのバケモノで満たされていた。
なんとなく警棒を持った警官のシルエットに似てるよな、と思いながら、ボクはバケモノを見ないように気をつけながらマジメに生きている。
だって、怖いんだもん。




        怖話(こわばな)『小雨の夜のことだった』改改訂版

               

 気楽な仲間と都心で飲んだ。
終電で立川駅に着き、タクシー溜まりを見るが、雨模様のせいか一台もいない。
市会議員程度では専属の運転手は持てないから、ハイヤー契約はしてあるものの深夜では気の毒だ。
高松町のマンションまでの2キロ足らず、たまには歩くのもいい。
小ぬか雨が涼しくて気持ちがいいくらいだ。
西部バスの営業所前を過ぎた。
さぁ、もう少しだ。

 車の往来もまばらな深夜の大通りから1本、緑道にそれると木々の香りが爽やかだ。
寝静まった住宅街を歩いてゆく。
コッ、コッ、コッ、コッ……。
どこからかヒールの音。
(こんな夜更けに無用心だなぁ)
と、思うが、大して気にならない。
現代人は多忙なのだ。
おれのように飲み会もあるし、残業だって、遅番早番だってある。

 だが、待てよ。
この足音はどこからだろう?
前、後ろ、いない。
道は碁盤の目状に区画してあるから、隣の道路から響いてくるのだろうか?
それにしては4~5メートルの範囲から聞こえてくるのがおかしい。
音が近すぎるのだ。
ちょっとゾッとしてしまう。
足早になり、住宅の向こうに聳える白亜のマンションに急ぐ。

 コッ、コッ、コッ、コッ……。
遠ざかりも近づきもしないヒール音。
後ろを振り返るが人影はない。
緑道の黒々した木々が、不安を煽るように揺れ動く。
雨足が蜘蛛の糸のように体にまつわりつく気がする。
深夜の正体不明の音はやはり気味が悪い。
コッ、コッ、コッ、コッ……。
耐えられず、走り出そうとしたときだった。

 コンッ、コ、コ、コンッ。
かかとで床を打つ、優しいモールス信号のような響き。
まるで、私のことを忘れたの? とでも言いたげに。
「えっ?」

『おい、美紀ちゃん、疲れただろ。ハイヤー使って。もう、帰っていいから、』
『いえ。ハイヤーは議員さんのための契約です。それに秘書は24時間在戦場ですから。この3丁目の事案、もうちょっと纏めてからにします』
『大丈夫? これから選挙戦でもっと忙しくなる。いい加減にして帰ってよ』
そんな会話を交わした翌日だった。
彼女は突然、亡くなった。
国道での3台を巻き込む「もらい事故」だった。
信じられない。
運転は男並みに上手いのに、やはり疲れでとっさの回避行動が遅れたのだろうか?
この選挙戦が終わったら、彼女への思いを告白するつもりだった。
その矢先になんということだろう。
意気消沈のあまり、出馬を断念しようとした。
それでも公設秘書たちに励まされ、鞭打たれて、何とか再選には勝利したのだ。

 驚きと懐かしさが言葉になる。
「美紀ちゃん、帰ってきてくれたの? 姿見せて。おれ、もう泣きそうだよっ」
静まり返った周囲に向かって声高に言う。
深夜に闇としゃべる怪しげな市会議員。
市民に見られたら問題だが、おれは今現在正常で狂っているわけでは決してない。

 コンッ、コ、コ、コンッ。
再び、まるで返事のような小さな靴音。
生前の彼女の本当に機嫌のいい時のボディ・ランゲージだ。
「ああ。美紀ちゃんだ。やっぱ美紀ちゃんだね」
哀しさとうれしさが綯い混ぜになって、涙がとめどなくあふれる。
あやうく慟哭してしまうところだったが、男のプライドでかろうじて抑えた。
やがて、
コッ、コッ、コッ、コッ……。
さぁ、行きましょ、とでも言うようにマンションに向かう足音がいざなう。
そう、いつまでもこんな所に突っ立っていても始まらない。
おれは飼い主の足元にまつわる忠実な猫様のように、いそいそとヒール音に並ぶ。
横目にボンヤリと、彼女の愛しい横顔が見えた気がした。

 怖話(こわばな)『シキモウレイ』元話

執筆の狙い

作者 上松 煌
214.226.132.27.ap.yournet.ne.jp

主催者が「改訂版OK。目先が変わって楽しめる」ということなので、思いっきり総改定ね。

1)怖話(こわばな)『シキモウレイ』=本格正統的、実話系の怖い話・元話
2)怖話(こわばな)『出られない室』=他人にはお笑いでも本人には怖い話・改訂版
3)こわばな)『小雨の夜のことだった』=恋愛が絡んだ人情話・改改訂版

もちろん「元話」以外は審査対象外!

コメント

上松 煌
214.226.132.27.ap.yournet.ne.jp

「戦艦陸奥と筑波の実話」張っとく。
戦時中の貴重な体験談だ。
https://kaii-library.com/archives/post-2467.html

上松 煌
214.226.132.27.ap.yournet.ne.jp

 ごめ。
文中「戦艦武蔵」は「戦艦陸奥」の間違い。

夜の雨
ai225046.d.west.v6connect.net

「怖話(こわばな)『シキモウレイ』元話」読みました。


文章が立派というか文体に味わいがあるので世界観に入っていきやすいです。

「シキモウレイは『引き亡霊』」の説明から入っているので、海の怪奇が始まるのだろうと予感させられます。
これが「わくわく感」があってよいですね。
怖いというよりも怪しいことが始まるのだろうという予感です。

話としては商船学校帆走練習船「海王丸」の最後の航海でシキモウレイに遭遇するというか、憑りつかれる。
水野義明が仲のいい練習生の小田一郎と上甲板の見張り所で雑談していると「船、船が沈むわぁ~」と、若い女の甲高い声が聞こえる。
ここの説明文で。
>熱帯低気圧が近づく時などは大気が乱れ、とんでもなく遠くの船や陸地の音声が届いたりするので、それだろうと思ったが、よく聞くと確かに怪しげだ。<
と、書いてあるのがうまいです。
嘘っぽくない。
いかにもありますよこういう不思議なこと。

水野が冷静沈着に小田に一等航海士に報告に行けというのですが、「ゆっくりと歩いて行け」というところなどはリアルですね。
たしかに急いで行くと「亡霊に足元を見られますからね」おまえ、怖がっているなぁ、焦っているなぁと、というように。

プロペラ音が聞こえて爆撃されるあたりは第二次世界大戦をほうふつとさせるので、そのあたりの亡霊があらわれたのだろうと。
このエピソードもしっかりと書き込まれているので臨場感が伝わります。

艦内放送でライフジャケット着用とか冷静な指示が行われますが、これも「ゆっくりと歩いて行け」と同じで亡霊に足元を見られないようにしている。
それで、戦争を思わせる破壊音やらが消えて普段の帆船と波の音になる。
やってきた船長が何が起こったのかをしっかりと理解していて、厨房係りに命じて酒と飯を供え、「どうぞ、お乗りください。いっしょに日本に帰りましょう」
と、唱え続けている。
こうして無事に海王丸は最後の航海を終える。

海の亡霊のお話でしたが「短い中で」なかなかきれいにまとまっていました。

御作のような作品を読むとちゃちな作風で遊んでいる場合か、と反省しますね。
怪奇小説といえども、大人の小説を書かなければ。


「戦艦武蔵のさいご」ノンフィクション 渡辺 清
なら、手元にあります。



ウィキペディアより。
リアル「海王丸」は22万トンではなくて、下記になっています。
総トン数 2238.4トン
全長 97 m
全幅 13 m
機関方式 ディーゼル
主機関 2基


あと二作は、あとで感想を書きます。


お疲れさまでした。

夜の雨
ai225046.d.west.v6connect.net

残りの二本読みました。

最初の作品と比べると出来がだいぶ違います。


『出られない室』改訂版

後半の下記「A」で何が起こっていたのかがわかりますが。

A
>「くぉんぬやろうっ、2回も盗みやがって。お巡りさん、こっちぃ」
>「えっ?」
>よく見ると胸には「無人高級ギョーザ販売」の文字が。
>店長だった。


そういうトリックね、といったところ。
まあ、主人公の一人称視点なので何でもありと言えば何でもありかな。

このAに持っていくまでが、作者さんの腕の見せ所というわけです。


『小雨の夜のことだった』改訂版

こちらの作品はある市会議員の先生の秘書が亡くなっているのに、彼女のハンヒールの足音がという展開ですが。
彼女の先生想いがよく伝わりました。
それ以上でも以下でもないといったところですかね。

こちらの二作品は文章上のトリックというかテクニックを使ってネタを魅せようとしているので、深夜になり、睡眠不足の頭では細部まで内容が入りにくいと言ったところです。


最初の『シキモウレイ』は文章上のトリックなどは使わないで怖さと哀しみ、それに深みみたいなものを描いていましたけれどね。
あとの二作品と比べると格が上です。


それではこの辺で。


お疲れさまでした。

上松 煌
214.226.132.27.ap.yournet.ne.jp

夜の雨さま、こんばんは

 非常に早い段階でお読みくださり、ありがとうございました。
さっそく返信を、と思ったのですが、飲んで帰ってきたのでもうだめぽです。
すっかり出来上がっているので、お返事は明日必ずいたします。
すみませんがご了承ください。
ヒック

鶏肉の味噌焼
softbank060071250255.bbtec.net

三作品全部、良かったです。
文章も流れもグッドです。
分かりやすい素直な作品という感じでした。
ご参加ありがとう!

偏差値45
KD106180001188.au-net.ne.jp

>シキモウレイ
造語でしょうか。

>「気嵐(けあらし)」現象
幻想的ではありますね。
富士山の河口湖で見ましたね。
他の観光客が「けあらしだ、けあらしだ」と叫んでいましたが、
僕には知らない言葉だったので、その当時は理解できませんでしたね。
とはいえ、
晴れ渡る光と雲のような気嵐はより富士山を美しく観ることが出来ました。
そういうこともあって、個人的にはプラスのイメージが強いですね。

>1989年6月~8月にかけて商船学校帆走練習船「海王丸
具体的な数字は、リアリティーが増すので味が出ていいと思います。

>ハワイ諸島の島影も後方に消えていき、
>「船、船が沈むわぁ~」
「えひめ丸」衝突事故の関連かと思いましたが……。
それとは違ったようです。

>複数のプロペラ音が縦横無尽にかすめ、それが急速に数を増す。
腹に響く周り中の轟音は巨大な水柱を次々に吹き上げ、雪崩落ちる反動で甲板上の機器を木っ葉のように海に叩き込む。
>「どうぞ、お乗りください。いっしょに日本に帰りましょう」
と、唱え続けている。

戦闘中の描写であるから、かつてこのエリアで起きた出来事かな。
とは考えましたが、該当する海戦は思い出せませんでしたね。
霊的現象で言えば、かつて線路があった場所で電車の音が聞こえるような話であったり、
防空壕の中に居たら、爆弾の音が聞こえた来た。そんな過去を繰り返す怪異に
近い気がしますね。
現実に遭遇したら驚き不気味に感じるでしょうね。

お話としてはよくまとまっていて良かったと思いますが、
個人的には、折角なので沈んでしまい、
サメに食べられる恐怖(ジョーズみたいな)展開も面白いかな。
でも、そうなるとまとまりのない作品になってしまうんでしょうね。

上松 煌
214.226.132.27.ap.yournet.ne.jp

夜の雨さま、こんばんは

 昨夜は失礼しました。
楽しく飲んだので上機嫌で帰ってきたのですが、それだけにとんでもなくおバカなお返事を書きそうな気がしたので、今日にしました。

   >>文章が立派というか文体に味園内にわいがあるので世界観に入っていきやすいです   
    ↑
 ありがとうございます。

   >>「シキモウレイは『引き亡霊』」の説明から入っているので、海の怪奇が始まるのだろうと予感させられます。これが「わくわく感」があってよいですね。怖いというよりも怪しいことが始まるのだろうという予感です<<
    ↑
 はい、よくお読みいただいてうれしいです。
これはどこかの地方の訛った言い方で、おれとしては「引き亡霊(もうりょう)」が正しいのでは? と思っています。
   
   >>熱帯低気圧が近づく時などは大気が乱れ、とんでもなく遠くの船や陸地の音声が届いたりするので、それだろうと思ったが、よく聞くと確かに怪しげだ。<と、書いてあるのがうまいです。嘘っぽくない。いかにもありますよこういう不思議なこと<<
    ↑
 おれは鈍いので、こうした心霊体験はありませんが、まぁ、そういった事態に遭遇したら一般的にこんな感じだろうと思っています。

   >>水野が冷静沈着に小田に一等航海士に報告に行けというのですが、「ゆっくりと歩いて行け」というところなどはリアルですね。たしかに急いで行くと「亡霊に足元を見られますからね」おまえ、怖がっているなぁ、焦っているなぁと、というように<<
    ↑
 昔から海、あるいは船中では「かようなこと(怪異)は申さぬこと」という禁忌があり、それを破ってはいけないとされています。
知らんふりもその一環です。
1度、伊豆で漁船をチャーター(すんげぇ高かった)し、湾内を巡ってもらった時に「怖いことや不思議なことに会ったことがありますか?」と聞いたとき、一瞬、絶句してから話題を変えられてしまったことがあります。

   >>プロペラ音が聞こえて爆撃されるあたりは第二次世界大戦をほうふつとさせるので、そのあたりの亡霊があらわれたのだろうと。このエピソードもしっかりと書き込まれているので臨場感が伝わります<<
    ↑
 ありがとうございます。
ただ、不思議なことに英霊が船に乗り込んできたという体験談なり、言い伝えはないですね。
わずかに自衛隊の怖い話に、
「硫黄島(いおうじま)に交代要員や物資を運ぶ川崎C1という飛行機の重量が、帰りには行きよりなぜか重い」
というものがありました。
暗に英霊が乗り込んでいるから、と言っているのですが、どうやって計ったのか?という疑問が残ります。
ま、消費する燃料が多いから、ということなのでしょうが、マユツバだなぁw

   >>艦内放送でライフジャケット着用とか冷静な指示が行われますが、これも「ゆっくりと歩いて行け」と同じで亡霊に足元を見られないようにしている<<
    ↑
 そうですね。
この部分は報告を聞いた船長が、普段行われる有事の避難訓練にかこつけたのですが、「船が沈む」という不吉な言葉にもしもの時を考えて、総員を甲板に集めた場面です。
船中に残っていると流入する海水で脱出できなくなるからです。

   >>海の亡霊のお話でしたが「短い中で」なかなかきれいにまとまっていました。御作のような作品を読あむとちゃちな作風で遊んでいる場合か、と反省しますね。怪奇小説といえども、大人の小説を書かなければ<<
    ↑
 誠に卓見だと思います。
ただ、このお話は現実路線を踏襲したものだからこそ、この文体でOKですが、怖さにもいろいろあり、心霊や怪奇の他にも、生命存続の怖さ・生活維持の怖さ・愛や執着の怖さ・金や若さを失う怖さなどさまざまなモノがあります。
やはり、それぞれにふさわしい文体・表現があってしかるべきかと。

   >>「海王丸」は22万トンではなくて、下記になっています。総トン数 2238.4トン<<
    ↑
 これは失礼しました。
おれの書き間違いです。
wikiを引用くださり、お手数でした。
長くなりましたが、お付き合いくださりありがとうございました。

青井水脈
om126255132190.24.openmobile.ne.jp

『シキモウレイ』読ませていただきました、とりあえず企画参加作のこちらの感想から。

>「どうぞ、お乗りください。いっしょに日本に帰りましょう」 と、唱え続けている。 人の形をした気嵐は言葉につれて船に群がり、次第に薄くなって消えて行き、やがて静かな海と空が戻ってきた。

さすがはやっぱりベテラン船長ですね。練習生には出る幕がなく。この辺は、『アイリーン・モア灯台の謎』でも思いました。ベテランと新人との経験値の差というのか、もちろん他の業種や分野でもありますが、大自然相手の海の世界の方がより顕著、といったところでしょうか。

>腹に響く周り中の轟音は巨大な水柱を次々に吹き上げ、雪崩落ちる反動で甲板上の機器を木っ葉のように海に叩き込む。

海、それよりも海戦の描写がリアリティあると思いました。見てきたような、とでもいうのか。今でも映像で観ることはできるんですが、それこそ描写力が問われますし。

上松 煌
214.226.132.27.ap.yournet.ne.jp

鶏肉の味噌焼(主催者)さま、こんばんは

 早速お読みくださり、うれしく思っています。
怖話(こわばな)という中々面白い命題をくださり、改定もOKという寛容なご配慮をいただいたので、思い切り楽しませていただきました。

   >>三作品全部、良かったです。文章も流れもグッドです。分かりやすい素直な作品という感じでした<<
    ↑
 あははは、主催者として、参加者の作品はけなせないということですか。
そこまでお気を使ってくださらなくてもよかったのに。
でも、ホメられるのが大好きなおれは、バッチシ額面どおり受け取らせていただきました。
ありがとうございました。

上松 煌
214.226.132.27.ap.yournet.ne.jp

偏差値45さま、こんばんは

 お読みいただき、とてもうれしく思っています。
たまに読んでくださるのですね。
   >>シキモウレイ 造語でしょうか<<
    ↑
 いえいえ、どこかの地方の訛りです。
おれは「引き亡霊(もうりょう)」が正しいのでは? と思っています。

   >>「気嵐(けあらし)」現象 幻想的ではありますね。富士山の河口湖で見ましたね。他の観光客が「けあらしだ、けあらしだ」と叫んでいましたが、僕には知らない言葉だったので、その当時は理解できませんでしたね。とはいえ、晴れ渡る光と雲のような気嵐はより富士山を美しく観ることが出来ました。そういうこともあって、個人的にはプラスのイメージが強いですね<<
    ↑
 そうですか。
マレな現象を見られて幸運でしたね。
おれは現物は見たことがなく、TVニュースで北海道のどこだかの漁港内のものを見ました。
風に吹き散らされて、流れる如く立ち上がるが如く入り乱れて、実際にその中のいくつかは頭らしきものや手を振り上げるように見えて「あ~、シキモウレイはこの現象からの連想だな」と思ったものです。

   >>>1989年6月~8月にかけて商船学校帆走練習船「海王丸 具体的な数字は、リアリティーが増すので味が出ていいと思います<<
    ↑
 ありがとうございます。

   >>>ハワイ諸島の島影も後方に消えていき、>「船、船が沈むわぁ~ 「えひめ丸」衝突事故の関連かと思いましたが……。それとは違ったようです<<
    ↑
 全く無関係です。
ちなみにあなたが「えひめ丸」と書いてくださったので、関連する怪奇話がないかとggりましたが、そういったものはありませんでした。
ま、おれのこのお話も創作ですので……。
海や船関係の怖い話は案外、少ないのかもしれません。

   >>戦闘中の描写であるから、かつてこのエリアで起きた出来事かな。とは考えましたが、該当する海戦は思い出せませんでしたね<<
    ↑
 創作ですから。

   >>霊的現象で言えば、かつて線路があった場所で電車の音が聞こえるような話であったり、防空壕の中に居たら、爆弾の音が聞こえた来た。そんな過去を繰り返す怪異に近い気がしますね<<
    ↑
 そのとおりですね。

   >>お話としてはよくまとまっていて良かったと思いますが、個人的には、折角なので沈んでしまい、サメに食べられる恐怖(ジョーズみたいな)展開も面白いかな。でも、そうなるとまとまりのない作品になってしまうんでしょうね<<
    ↑
 あははは、スゴイお話ですね。
偏差値45さまが書いてみては?
ただ、2,000字限定のこのお話ではムリです。
これだけでも確か2,000に喃々としていたはずなので。
いや、でも、アイディア面白いですよ。
期待しています。

上松 煌
214.226.132.27.ap.yournet.ne.jp

青井水脈さま、こんばんは

 いつもお読みくださり、うれしくありがたく思っています。

   >>さすがはやっぱりベテラン船長ですね。練習生には出る幕がなく。この辺は、『アイリーン・モア灯台の謎』でも思いました。ベテランと新人との経験値の差というのか、もちろん他の業種や分野でもありますが、大自然相手の海の世界の方がより顕著、といったところでしょうか<<
    ↑
 おっしゃるとおりですね。
海の男というものは、陸地の人間に比べて非常に沈着冷静で、思考力があり、犠牲的精神に富む人々が多いようです。
昔から「海の男」と言われて一目置かれるのもむべなるかなと思います。

   >>海、それよりも海戦の描写がリアリティあると思いました。見てきたような、とでもいうのか。今でも映像で観ることはできるんですが、それこそ描写力が問われますし<<
    ↑
 えぇ~、「講釈師見てきたようなウソを言い」ですかぁww
そうですね、物事を的確に描写するには、「語彙」が豊富でなければなりません。
チャチな言葉、同じような単語の使いまわしては読者はイメージを膨らませることが出来ません。
特に戦闘のようなテンポの速い場面では、短く適切な、あるいは印象的で具体的な言葉を積み上げる必要があります。
これは文章で書くと面倒に思えますが、書いているうちに自然に身につくもので、心配ありません。
青井水脈さまも戦闘シーンを書いてみてはいかがでしょう?

青木 航
sp49-98-216-7.msd.spmode.ne.jp

 上松様読ませて頂きました。

 怪奇譚と言うんでしょうかね。タモリ進行の『世にも不思議な物語』と言う番組がありましたが、好きで良く見ていました。
 ふと、そんな感覚に襲われました。

 1話目は海で戦争中の幻覚に襲われるという話。個人の夢なのか、集団の体験なのか、読み切れませんでした。

 2話目は、闇バイトの話かと思ったら、小悪党の幻覚。しかし、その幻覚が元で少しずつ悪さを行わなくなると言う珍しいオチ。

 3話目は、結婚を申し込もうとしていた秘書が突然の交通事故で死んでしまい。夜マンションへ歩いて帰る途中、不明な足音を彼女のものと認識し、生きているかのように共に歩き始める。
 この主人公、交通事故で死ぬんじゃないですかね。単なる幻想で終わらせるのか、死の前触れなのか、敢えてそこは書かなかったんですかね。

 何れにしろ私には書けないものばかりなので面白く読ませていただきました。

 本来私はシンプルな文章が好きなのですが、あまりにも『描写が出来ていない』と言われ続けたもので、一時、過剰な描写に陥り、上松さんにご指摘頂いた事がありました。御作を読んでいると、シンプルな文章でも情景を目に浮かばせる事は十分可能なのだと分かりました。
 勉強になりました。有難うございます。

上松 煌
214.226.132.27.ap.yournet.ne.jp

青木 航さま、こんばんは

 久しぶりに感想を下さり、ありがとうございます。
   >>1話目は海で戦争中の幻覚に襲われるという話。個人の夢なのか、集団の体験なのか、読み切れませんでした<<
    ↑
 1話はシキモウレイという海で死んだ浮かばれない霊(この場合は英霊)たちが、帆走練習船「海洋丸」に群がって、日本に帰ろうとするものです。
戦闘の幻覚を見たのは、ワッチについた水野義明だけで、他の乗組員は甲板でシキモウレイの姿を見るに留まっています。
船長の供養で船に乗り込むことが出来たシキモウレイは、海洋丸とともに日本に帰りついたであろうという結末です。
 また、「船、船が沈むわぁ~」と泣き叫んでいた「ものの気」は大戦中に沈んだ船に取り付いていたモノで、沈むという言葉を重視した船長が万が一を考えて、総員を甲板に集めたため、乗組員はシキモウレイに出会った場合、どうすればいいかを学ぶことが出来ました。

 2話はおっしゃるとおり、無人販売店の高級ギョーザをチョンボる悪党の話で、ビクビクしている彼には極フツーの通行人や自転車、車などが、指示役にあやつられた半グレに見えてしまい、自分の盗んだものが奪われたり、自分も殺されたりするのでは? と妄想を膨らまします。
そして首尾よく店を抜け出したものの、目撃者の言うように罪の意識から制服姿の警官がバケモノに見えてしまい、その恐怖から、心ならずもマジメ生きてしまうというイイお話です。
また、このお話はちょっとしたクイズになっていて、読者がどのあたりでギョーザ泥棒の話しだと気づくか? という面白みもあります。

 3話も、あなたのおっしゃる通りなのですが、この市会議員と秘書がマジメ人間で市民のために忙しく仕事をしている会話を入れて、この2人の人となりも描いています。
秘書の事故死も仕事疲れからでは? という疑念も書いてあります。
短いですが、意外に芸が細かい作品なのです。

   >>この主人公、交通事故で死ぬんじゃないですかね。単なる幻想で終わらせるのか、死の前触れなのか、敢えてそこは書かなかったんですかね<<
    ↑
 なるほど。
いろいろ先行きを考えられる作品だと言うことですね。
アン・カルネさんという人が、以前、
『読者というのは「作者がペンを置いたところから始める」ものなんです』
とおっしゃってくださっています。
青木さまのご感想がまさにその事なのかな? と思っています。
 
   >>御作を読んでいると、シンプルな文章でも情景を目に浮かばせる事は十分可能なのだと分かりました<<
    ↑
 いえいえ、拙いおれの文章如きでそれに気づくあなたの感性及び読解力こそ、大したものです。 
きっと思い通りの文章をモノにできるヒトだと思っています。

上松 煌
214.226.132.27.ap.yournet.ne.jp

夜の雨さま、こんにちは

  改訂版も読んでくださったのに気づきませんでした。
お返事が遅くなりごめんなさいね。
主催者さんが、「改定もOK」ということでしたので、様々なニュアンスの怖さで、少し遊ばせていただきました。
正統的怖話(こわばな)第1話に比べて、2・3話のほうが工夫が凝らしてあったのですが……w

 つまり、怖さの質と内容が違う。
2話は執筆の狙い通り、「他人にはお笑いでも本人には怖い話」。
おれはさまざまな怖さという意味で、この話が一番なのでは?? と思っているのですが、おチャラケとユーモアで包んであるので、一見、軽くて浅い話に見えてしまう。
でも、そのぶん読みやすくお気楽で、鼻歌交じりに読める。
ただ、この話には罠があって、ちゃんと読まないと、種明かしの瞬間までギョーザ泥棒の話と気づきにくい。
もちろん、ヒントはそこここに転がしてある。
室のガラスは店舗の入り口のガラスだし、恐怖の半グレはただの客だし、おいしい大切な物は金ではなくてギョーザ。
そして走ってくるのは救助者ではなく店長。

 バケモノは制服姿の警官で、主人公はこの一件以降、取り付かれたようにこの姿を見るようになってしまう。
でも、悪心さえ持たなければびくつくこともないので、自然に全うな道を歩んでいく。
あ~、イイ話ww
世の中こうだったらいいなぁ。

 3話は3つの中で一番短く、お話も単純。
それでも市会議員と秘書のマジメな人柄や仕事ぶりも短い会話の中で書いてあるし、秘書の事故死は疲労からではないかという部分もほのめかしてある。
ラストは2人が相思相愛で、議員のほうも愛情豊かな人間で、これから霊と生者、何とか楽しくやっていくんじゃないの? という希望あるお話。
サガワ便が連続ピンポンしていても、トイレ行きたくて必死でも、理解できる人情話と思ったんだけどなぁ……。

   >>こちらの二作品は文章上のトリックというかテクニックを使ってネタを魅せようとしているので、深夜になり、睡眠不足の頭では細部まで内容が入りにくいと言ったところです<<
    ↑
 まぁ、人それぞれだし、好みの問題もあるので、おれももっと万人向けの話が書けるよう、研鑽しないといけないですね。
寝不足なのに律儀にお読みいただけて恐縮&うれしかったです。
おれなんかの作品のために、ご無理をなさらないでくださいね。

ご利用のブラウザの言語モードを「日本語(ja, ja-JP)」に設定して頂くことで書き込みが可能です。

テクニカルサポート

3,000字以内