崖っ淵にて
僕の人生は佳境に入り、気づけば崖の先まで足を進めておりました。不可抗力ではありません。僕の意思でそこまで歩みを進めたのです。
さあ、あとはわざと足を踏み外すだけだ。崖の先でうろうろと動き回っていたら恰好がつかない。最期くらい潔くいこうじゃないか。
いや、その前に半生を振り返ろう。死が身近になればなるほど過去を振り返りたくなるものです。どんなに苦い思い出も美化されてしまいます。
あんなことがあった、こんなことがあったなどと懐かしんでいるうち、引っかかるものに気付きました。死の間際でも美化されないぼやっとした記憶があるのです。
その記憶を避けて、その前後の記憶を思い出してみました。そのうち、僕は自身の過ちからここまで来たのではなく、誰かによって追いやられたのかもしれないと思えてきたのです。
だとしたらどうする。自滅的な生き方は自ら選択したのではなく誰かによるものだとしたら――
そんな疑念がここにきてふと、頭をもたげたのです。
では僕の人生は一体なんだったんだ。いや、きっかけはどうであれ僕は多くの過ちを犯している。そのことに変わりはない。
さあ、もういいじゃないか。しかし僕の背中を最初に押したのは誰なんだ。気になって仕方がない。
心当たりなら、ある。しかしそれは僕に誰かを恨めと言うことだろうか。それは出来ない。僕はあの感情は苦手だ。この気質が僕をここまで来させたというのに。いまさら他人に憎悪をぶつけるなどできるわけがない。
そうだ、僕の過ちが消えるわけじゃない。もういいんだ。さあさあ、とっとと足を踏み外そう。崖の下の底の無い暗闇を覗いていたら足を踏み外して転落したことにするんだ。その方が僕らしい。誰も見ていないだろうに大袈裟にリアクションして滑稽劇として終わらせようとするところが僕らしい。
考え事をしながら歩き回っていると足を踏み外してしまった。最期に落ちまいと手足をばたつかせる姿はとても僕らしかった。
執筆の狙い
まず文章を読んで下さった方に謝らせてください。大変申し訳ございません。この文章は小説ではありません。
それを承知で投稿させていただきました。誰かが読んでくれないと僕が死んでしまうので投稿してしまいました。本当に申し訳ありません。
独りよがりな文章です。読む相手がいることを無視して書いた文章です。それでも読んでほしくて投稿してしまいました。
感想は大丈夫です。きっと感想も意見もしたくない文章だと思います。読んで下さる方がいるだけで僕は救われます。
本当に申し訳ございません。