作家でごはん!鍛練場
標識

ぼくが人でなしになった日

 別に、好き好んで痛みを許容しているわけじゃなかった。
 けれどもぼくは他人から暴力を振るわれることに慣れていて、しかも、それに本気で抗おうという気は、砂粒一粒ほども起きないのだ。
 一応、本能的な反応として、嫌がるようなそぶりを見せはする。でも心のどこかで、ぼくは自分の身体が起こすそんな反応を嘲笑っている。
 今だってそうだ。男の拳が自分の顔面にそれなりの速度で激突する。無造作で、それ故に容赦のない痛みが光のように拡散し、視界と思考を混乱させていく、この瞬間。
 暴力を振るわれる間ずっと、過去の光景がフラッシュバックしている。炎の中に飲み込まれていく少女。そこへ伸ばす自分の手。
もう二度とやり直すことのできない、あの瞬間。
 何千何万回も思い起こしたあの光景。
 あの時、ぼくは、自分の手を彼女に届けることができなかった。
 そしてすぐに諦めた。
 過去はどうしようもなく不可逆なのだ。
人生における重要な選択を一度間違えてしまった者は、その後どうやったところで帳尻を合わせることなんてできないのだろう。
 自分はもう終わった人間なのだと思う。
ぼくはあの時、非情な現実に抗うことができなかった。
 後はもう、残された長い長い“余生”を、流れ作業のように消費していくだけ。この先、何事に対しても、本気で抗う資格など、自分にはない。
 拳が、足が、ぼくの身体に叩き付けられる。乱雑に痛みが拡散する。
 もうやめてくれ──ぼくが叫ぶ。
 もうどうにでもしてくれ――ぼくが叫ぶ。


 やがて、思考は意識の底に沈んでいった。



   ***

 とある悪夢。


 ぼくの家が燃えている。
 ぼくの妹も燃えている。
 
 あの恐ろしいオレンジ色に自分まで取り込まれるのが嫌だった。
 だからぼくは今まで経験したことがないくらい懸命に、生きるための行動を取っていた。
 つまりは逃げた。


 外に出ると、野次馬や消防士や救急隊員や警察官たちの声が次々と聞こえてくる。
 理解に苦しむ言葉の数々に出迎えられる。
 労いや哀れみや憐憫や励ましが渦のように混じりあって自分を包み込むなか、ぼくはそれらの内から、消防士の男がこぼした『一人でも助かって良かった』という旨の台詞を聞き取ってしまった。

 背後からは変わらず凄まじい熱気を感じ続けている。
 多分そろそろぼくの妹は燃え尽きた頃なんじゃないだろうか。

 ……良かった?


 ぼくの家が燃えていた。
 ぼくの妹が燃えていた。
 その火はぼくの頭の中にまで燃え広がっていた。

「…………何が、良かったっていうんだ?」

 この火はもはや鎮火不可能だった。消防士ともあろう者が火を大きくしてどうするんだろうと頭の片隅でぼんやり考えながら、ぼくは先ほどの声の主に掴みかかり、その顔面に拳を振り下ろしていた。
 骨同士がぶつかる音が連続する。
 赤い血が飛び散る。
 やがて他の消防士と警察官数人に取り押さえられたぼくは、そこでようやくハッとした。
 何をやっているんだ自分は。こんな奴を殴ったって仕方ないじゃないか。
 他にもっと罰せられなければならない奴がいるじゃないか。
 そう思ったぼくは拘束を振り払い、警察官の腰のホルスターからリボルバー拳銃を奪うと、自分の顎に突きつけた。簡単だった。
 引き金を引く──ぼくの顔面は木っ端微塵になる。
 これで──ハッピーエンド。



 ……そんなわけがなかった。
 ぼくにそんなことをする力も勇気も、あるはずがなかった。
 これは現実ではない。



 意識の辺境を転げ落ちていく。



   ***

 気がつくとぼくは、母の運転する車の後部座席にいた。
 となりには妹の凪がいて、静かに微笑んでいる。
 何をしていたんだっけ。
「にー、寝ぼけてるの? “シー”行くんでしょ?」
 …………そっか。そーだっけ。
 ぼくは今、家族と遊園地に向かう途中のようだった。
 ということは今までのは全部夢なんだろう。
 車内は懐かしい香りがし、休日の午前中特有の素敵な温もりが満ちていた。これから起こる楽しいことがたくさん残された、無敵の時間帯だ。
 車は信号に捕まることもなく、スイスイと進んでいく。
「シロちゃんも来れれば良かったのにねー」
 少し残念そうな口ぶりで、凪がそう切り出した。
「仕方ないよ。アイツは空手の大会が近いから」
「にーは良かったの? ……一緒にお稽古しなくて」
「ぼくは良いんだよ。どうせもうすぐ辞めるんだから」
 そう言うと、何故か凪は申し訳なさそうな表情になってしまった。
「本当に辞めちゃうんだね。わたしのせいかな?」
 彼女の声には悲しい色が混じっていて、ぼくは内心少し焦る。
「ち、違うよ。別に凪が引け目に感じることじゃない。元々向いてなかったんだよ、空手なんて」
「でも、せっかく今まで頑張ってたのに……」
 凪の表情の曇った顔なんて見たくなかった。ぼくは慌てて言葉を重ねる。
「もう良いんだ。空手なんかより、凪と一緒にいる方がぼくは楽しいよ」
 そう言うと、凪は黒目がちの大きな瞳を見開いて、こちらを覗き込んできた。
「……ほんとっ?」
「ぼくが今まで、君に嘘ついたことある?」
 凪は首を振り、また笑顔に戻ってくれた。その様子にぼくも安堵する。やはりぼくの妹には、笑顔の方が似合う。
「楽しみだねー」
 彼女はウキウキした様子で、リュックから遊園地のパンフレットを取り出し、ぼくに見せてきた。
「着いたら何乗ろっか?」
「着いてから考えれば良いよ。時間ならたくさんあるんだから」
 これから悪いことなんて一つも起きないという確信があった。
 ぼくは安心してシートに深く座り直す。
「えっ、」
 直後、運転席から母親が発する不吉な感嘆符が聞こえてきた。
 急ブレーキ──車内に衝撃が走る。
 ぼくらの乗る車が子どもを撥ね飛ばしたところだった。
 血溜まりの中に沈んだ子どもの顔を見ると、それはぼくの妹だった。


 ──ごめんね、にー。
 ──もう一緒に居られなくて。



 勘弁してくれ。



   ***

 瞬きをすると景色が変わり、そこは法廷だった。ぼくが居る傍聴席の両隣には、すっかり憔悴した様子の両親も座っている。
 被告人の──犯人の男が喋っている最中だった。
 ぼくらの家に火をつけた、凪のストーカー。
「言っときますけど、反省とか謝罪とか、そういうの一切ありませんからね。もう済んだことなんですから今更何を言っても無駄でしょうし。遺族の方たちももうクヨクヨするのやめませんか? 娘さんが戻ってくるわけでもないんですから。
 えっ、後悔? うーん、それもありませんね。むしろ最後に好きなことできて良かったと思ってますよ。大満足です。
 ……そう言われても、ぼくにはそもそも失うものもなにもありませんでしたからね。金も女も職もなくて。そんな生活で何をどう失うっていうんですか?
 現状を良くするために少しでも頑張ろう、などという発想は微塵もありませんでしたよ。ぼくはもう随分前に終わった人間ですからね。人生って残酷なもので、勘の良い人間ならかなり初期の段階でそれが良質なものなのかそうでないのかが判断できてしまうと思うんです。ぼくは頭の出来は悪かったけれど勘の方はそこそこ良かったから、小学校低学年くらいには自分が負け組なんだと自覚できてました。
 あの頃、ぼくには好きな女の子がいたんです。けど、フラれちゃいまして。……いや、今思えばあれはそんな生易しいものじゃなかったな。クラスのみんなの前で存在を否定されたんです。とても悲しかったけど、勘が良いぼくには彼女の言葉が根拠のない誹謗中傷なんかじゃなく事実だと理解できました。だからぼくは何も言い返しませんでした。あの年齢で受け入れたんですよ、現実を。偉くないっすか?
 ぼくが思うに、何か一つでも致命的な失敗を犯した人間って、それから先何をどうしようと帳尻を合わせることなんてできないんですよね。現にぼく、あれから歳を重ねるにつれて何度か女性とお付き合いしたこともあったんですが、小学生時代の失恋で空いた心の穴が埋まることはありませんでした。当たり前ですけど時間は不可逆だから、子どもの頃にしたかったことを大人になってから果たしたとしてもまったく意味なんてないんです。小学生時代のぼくのために頑張ってあげられた自分は、小学生時代のぼくだけ。それを過ぎたからにはもう何もかも手遅れだったのです。
 まあ仮に小学生の頃頑張っていたとしても、きっと無駄だったでしょうけどね。ぼく、生まれた時点でポテンシャルが最悪だったんです。自分が、父親が母親に酒飲ませまくって無理やりヤったときにできた子だって知ったときも妙に納得できましたね。望まれない子ってやつ。何かの間違いで生まれちゃったんすよ。
 そんなわけでぼくは、成長して大人になってからも、一生懸命努力するなんてこととは一切無縁でした。何をどう頑張っても無駄だって分かってましたからね。高校中退して、定職にも就けず、金もなく、成人したあたりから恋人もできないで…………そんな生活が続いて、三十を過ぎたくらいかな。プッツンしちゃいまして。何もかも厭になったんです。もう人生にキッパリ見切りつけようと。
 だから、電車にでも飛び込もうと最寄りの駅に向かったんです。でもそこで、ぼくは彼女に出会った。
 本当に偶然の出会いでした。駅前で彼女と──被害者のあの子とすれ違ったときは驚きました。まるで小学生時代にぼくを拒絶した女の子の生き写しのようだった。
 いや、違いますよ。何も最初から殺そうだなんて思っていたわけじゃありません。ぼくはただ、死ぬ前に、彼女とほんの少しだけで良いから話がしたかった。それだけなんです。なのに、それなのにあの子は……ぼくに酷いことを言った。それはもうえもいわれぬ暴言でした。ぼくがいくらクズでも、あんなに口汚く罵られる筋合いは──エッ? 何ですって? 目撃証言では……ぼくがその時、自分の股間を──はぁ? それは何かの間違いですよ。ぼくがそんなことをするわけないじゃないですか。変態じゃないんだから。
 それで、彼女を許せないと思ったぼくは、最後に自分がやりたいことをやろうと思いました。復讐です。子どものぼくを拒絶した彼女と、大人のぼくを拒絶した彼女にまとめて恨みを晴らしてやろうと。彼女は彼女の生き写しなわけで、つまり同じことですからね。
 そしてぼくは彼女をつけて自宅を特定し、みんなが寝静まった頃に火をつけました。彼女をあんな風に育てた親も同罪なので、全員死ねば良いと思ってやりました。
 結果は彼女以外は死ななかったみたいですけれどね。それだけが残念でしたよ。他に心残りがあるとすれば──あ? 何ですって? ……知りませんよそんなこと。今ぼくが喋ってるんですから…………あぁ、うるさいうるさい。うるさいなぁ。ちょっと、遺族の人たち黙らせてくださいよ。他人が喋ってるっていうのに遮るなんて非常識にもほどがあるでしょ。どんな神経してんだろ。可哀相に、きっとろくな教育を受けさせてもらえなかったんだろうな。まったく、娘が娘なら親も親だよ」
 ぼくの手にはさっき警官から奪った拳銃が握られていた。なので犯人の頭に照準を定めて、撃った。
 犯人の頭が破裂した。
 一仕事終えると、ぼくは次に犯人の弁護士を撃った。
 弁護士の頭が破裂した。
 ぼくは次に裁判官たちを撃った。
 ぼくは次に裁判員たちを撃った。
 ぼくは次に検事たちを撃った。
 いつしか法廷中に人の血が飛び散りまくっていた。
 ぼくは最後に、拳銃を自分の顎に突きつけた。引き金を引いた。
 ぼくの頭は破裂しなかった。
 残弾が切れていた。




   ***

 やがてぼく──雲井嵐は目を覚ました。
 街灯の光も届かない校舎裏。
 すっかり日は暮れ、部活動もとうに終わっているような時間帯。
 幼なじみである真白シロ──彼女だけが、ぼくを見下ろしていた。
「やほ。起きた?」
 シロが労うような口調で言う。
「……なんで君がいるのさ」
「わたし今日空手オフだから」
「理由になってないでしょ……」
 そう言いつつ、ぼくはシロから差し伸べられた手を掴んで、どうにか立ち上がった。
「大変だったね」
「殺されかけたよ」
「死にたかった?」
「……そんなわけないじゃん」
 土埃まみれの全身を申し訳程度にはたいてから、辺りを見回してみる。先ほどまでぼくをリンチにしていた不良たちはどこにも居なかった。
 ──また彼女に助けられたのか、ぼくは。
「一緒に帰ろ」
「い、良いけどさ……」
 ぼくらは荷物をまとめると、まずは保健室に寄った。傷の手当てをしてくれた保険医は相変わらず見事なことなかれ主義者で、怪我の理由を問うことは一切なかった。そもそも、入試で問題用紙に名前さえ書けば合格できるような馬鹿高校では、暴力沙汰など日常茶飯事なのだ。
 凪が死んでから何もかもがどうでも良くなったぼくは、学業というものにも一切興味を示すことができなくなり、こんな底辺の高校にしか通えないおつむになってしまった。
 そして、県内でも成績が比較的上位に入っていたシロも、わざわざ第一志望を蹴って、ぼくと同じ高校に進学した。ぼくの精神状態を心配しての決断だったが、当然、そのことで彼女は親と相当揉めたらしい。
 ぼくは一生、彼女に対して色々な後ろめたさを感じ続けなければならないのかもしれない、と思う。
 しかしもう、今更どうにもならない。何もかもどうしようもないのだ──既に終わっているぼくには。


 人気の疎らになった校内を後にし、二人で駅までの道を歩き始める。
「嵐くん、弱くなったよね。空手やめてから」
 シロが、そんな風に口火を切った。
「そりゃね」
 空手のことなんかもうどうでも良い。それなのにしつこくこの話題を振ってくるシロに、ぼくは内心辟易していた。だから、返事にも少し不機嫌な色が混じる。
「……怒った?」
「怒った。もう顔も見たくない」
「泣いちゃう泣いちゃう」
 そう言って嘘泣きを始めたシロには構わず、ぼくは今更ながら、先ほどの校舎裏でのことを問いただすことにした。
「……さっきの連中、追い払ってくれたのシロなんだろ?」
「やっぱバレてる?」
「そりゃ、アイツらがこんな簡単に勘弁してくれるはずないし……財布から札も抜かれてなかったしさ」
「余計なお世話だった?」
 シロが、心配と呆れの入り交じったような表情で尋ねてくる。
「放っといてくれて良いって、いつも言ってるじゃん」
 きっぱりと言いきってやる。
「だって、そういうわけにもいかないじゃん」
 するとシロはぼくの口調を真似て言い返してきた。調子が狂う。
「……こんなの続けてたら、シロ、いつか過剰防衛か何かで訴えられるよ」
「心配してくれてるんだ?」
「そりゃあ……」
「そう思うんならさ、自分で自分の身くらい守れるようになってよ」
「無理だよ、ぼくには」
「無理じゃないよ。嵐くんに無理なことなんて一つもないよ」
 信心深さすら感じさせるほどひたむきな声音で、彼女はそんなことを言う──ぼくの胸には温かな痛みが走る。
 この手の感覚にあまり注意を向けたくないぼくは、自然と彼女から目をそらしてしまう。
「……それは言い過ぎだよ」
「言い過ぎじゃないよ。また一緒に空手やろうよ」
「嫌だよ、痛いし」
「強情だなぁ」
 そうこう話してるうちにぼくらは学校の最寄り駅に着いていた。改札を抜け、跨線橋を昇る最中、シロがふと思い付いたように言葉をこぼした。
「あ、今日嵐くんち行っても良い?」
「……良いけど。散らかってるよ」
「平気平気。凪ちゃんのお線香、あげようと思って。久しぶりに」
「……あー、」
 何でまた急に。
 訝りながらも、特に断る理由もなし。
 ぼくらはちょうど来ていた電車に、いそいそと乗り込んだ。
 ここから私鉄で二駅下ったところが、 ぼくらの自宅からの最寄りである。
 ぼくの今の自宅は駅から徒歩十五分ほどのところにある賃貸アパートで、高校生の一人暮らしにしては立派なところだろう。
 母はあの事件があった直後に精神に異常をきたしてしまい入院中(事件当日は盲腸で入院をしていたため助かった)、父は元々単身赴任でほとんどこちらに帰ってくることはなかった。
 家賃と生活費は父が毎月出してくれている。
 父からは一緒に住むよう何度も説得されたが、ぼくは丁重に断った。凪のいない世界なんてどこにいようと地獄なのだ。同じ地獄なら、凪やシロとの思い出が染み込んだこの町にいたかった。
 電車内は満員と言うほどでもなく、かといってボックスシートに座れるスペースもなく、まあここらの地域のこの時間では妥当な混み具合だった。
 適当な位置にシロと並んで立つと、彼女は今思い付いたように口にした。
「あー……駅前のスーパー、寄るけど良い?」
「ん」
「晩御飯作ってあげるよ。クリームシチュー……好きでしょ?」
「……ありがとう」
「良かったねー。不良に殴り殺されてたらわたしの美味しい料理も食べられなかったでしょ」
「自分で言うかな」
 だが確かに、シロの料理がうまいのは確かだ。


 そして。
 電車に揺られること四、五分。
 スーパーでの買い物を済ませると、シロを連れだって帰宅。
 ぼくらは凪の仏壇に手を合わせると、各々の作業に取りかかった。シロは調理、ぼくは散らかり放題の部屋の片付け。
 料理ができると、ぼくらは食卓を囲みながら、適当に学校での近況や今季のアニメについて話しつつ……やがて、紆余曲折あって、話題はまた空手のことに戻ってしまった。
「空手はもういいよ。痛いもん」
「でもこのままじゃ、もっと痛い目に合い続けるでしょ?」
「じゃあ、もうそれでも良いよ。正直さ、どうだって良いんだよ。何もかも」
 箸を動かしながら憮然と吐き出すその台詞は本心だった。『どうでも良い』というただ一言で、これ以上になくぼくの心情は完結してしまう。
「ほら、そういうとこ。一生懸命生きるのは嫌で、かといって死ぬのも嫌。だから目先の辛いことからはすぐ逃げるの」
 今日、ぼくがいつも以上に本格的にボコボコにされたから、というのもあるのだろうか。シロが完全にお説教モードに入ってしまって辟易する。彼女はこうなるとちょっと面倒くさいのだ。
「……良いじゃないか、逃げたって。逃げることの何が悪いのさ。生物って本来そういうものでしょ? それとも、シロはぼくに死ねっていうの?」
「違うよ。もっと足掻いて、抗ってよ。これ以上逃げ続けたって、袋小路にはまるだけじゃない。それってゆるやかに自殺するのと同じだよ」
「そんな大げさな……ぼく別に自殺願望はないよ」
「うーん……でも、嵐くんは立派な死にたがりだよ。自殺志願者じゃないってだけで」
「シロは何言ってるか分からないよ」
「死にたいけど自殺する勇気はないから、誰かに殺してほしい、みたいな」
「そんなわけないじゃん」
「じゃあ何で自分から殴られてるの?」
 またシロが矛盾したことを言う。ぼくは別にマゾじゃない。
「皆が勝手に殴ってくるんだってば。どうせぼくは殴りたくなるような顔してるんだよ」
「顔は関係ない。身体全体からボコってくれオーラを自分から出してるの」
「……オーラとかは分かんないけど……まあ、君の言う通り積極的に生きる気力は皆無だけどね」
「ほらやっぱり。そういうのってすっごくダメだと思う」
「シロも、ぼくのことなんか放っとけばいいのに」
「そういうわけにいかないでしょ。殴られ所が悪くて死んじゃったらどうすんの」
「じゃあもう、死んだっていいよ。ぼくみたいな奴」
 疲れているのか、いつもより踏み込んだことを言った感じがする。露悪的になりすぎているような。
「何で、そういうこと言うのかな……」
 案の定、シロが悲しい顔をする。でもぼくの舌は意外にもベラベラと回っていた。
「シロがぼくのこと、死にたがり呼ばわりしたんだろ?」
「そうだけど……」
「ぼくは、兄貴のくせに、妹を助けられなかったんだ。そんな奴がこの先人生を謳歌できるんだとしたら、そんな世界狂ってるよ」
 確かにぼくも悪い──それは分かっている。
 友達に向かって、こんな嫌な言い方をするべきじゃなかった。
 しかし、次の瞬間の、彼女の言葉は──、
「で、でも……それは君のせいじゃないでしょ……?」
 ──その言葉を聞いて。腹の底で何かが揺れるような錯覚を覚えた。
 いつもならここまで踏み込んだ会話はしない。
 だって、ぼくが自分から死んでもいい、なんていうことはなかったんだから。
 だから、彼女の言葉は、見事にぼくの地雷を踏み抜いてしまっていた。
「……は?」
 『ぼくのせいじゃない』、と来た。
 違う。ぼくの責任はぼくのものだ。他人がどうこう言うものじゃない。しかもそれが凪に関することだとすると、尚更腹立たしい。
 ほとんど無意識にぼくは舌打ちを溢してしまったらしい。彼女の表情が驚きに染まっていく。
「君に、何が分かるって言うんだ?」
「あ、嵐くん……?」
「知ったようなこと言うなよ!!」
 ぼくは立ち上がり、手のひらをテーブルに叩き付けていた。食器が衝撃ではぜる。怒りはその一撃で収まることはなく、腹の底から言葉と共に、我先へと溢れ出てきた。
「ぼくは目の前で燃えながら苦しんでる妹を見捨てて逃げたんだぞ!? 炎が怖くて!! テンパりながらも頭の中で『あ、この状況じゃもう無理だな』って冷酷に判断して助けるの諦めたんだぞ!? そんな道を選んだ奴が、この先度の面下げて生きてけっていうんだよ!?」
 ぼくは自分がこんな大きな声を出したことにも、こんな暴挙に出たことにも驚いていた。しかし、胸の内はどす黒い陶酔にすっかり支配されていて、混乱しつつも怒りを抑えることはとてもできなかった。
 シロは怯みながらも、同じように立ち上がり、ぼくのために言葉を紡いでくる。
「……あ、あんな状況で、誰も君にそこまでのこと求められるわけないじゃない! それで嵐くんまで死んじゃってたらわたしはもっと辛い思いしてたんだよ!?」
「ふざけるなよ!! お前まであの消防士と同じことを言うのか!? ぼくだけ生き残っ
てた方がまだマシだとでも!」
「マシに決まってるでしょ!? アンタ自分の命なんだと思ってんのよ!?」
「こんな命どうだって良い!! ぼくは妹を殺したんだぞ!?」
 ぼくは再度手のひらをテーブルに叩きつけた。料理の一部が床に飛び散った。 
「違うでしょ!? 殺したのは放火した犯人でしょ!?」
「同じだ。 ぼくはあの犯人と何にも変わらないんだ……裁判の傍聴の時そう感じた……」
「何、言ってんの……」
「ぼくは、死ぬのが怖かったんだよ……自分が死ぬのが!! ぼくは死ぬのが怖かったんだ!! ぼくは死ぬのが怖かったんだ!! ぼくは死ぬのが怖かったんだ!! ぼくは死ぬのが怖かったんだぼくは死ぬのが怖かったんだぼくは死ぬのが怖かったんだぼくは死ぬのが──」
「落ち着いてよ!! 死ぬのなんて誰だって怖いよ!!」
 子どものように地団駄を踏んで暴れるぼくをシロは押さえつけ、背中をさすって落ち着かせようとしてきた。
 ぼくはそれを振り払った。
「……シロ、君は言ってはいけないことを言った。凪は生きたまま焼き殺されたっていうのに、ぼくみたいなどうでも良い人間の命が助かったっていうだけで、この結果を『マシだった』って形容したんだ。『マシ』ってのは『比較的良かった』って意味だろ? 何だよ良かったって?」
「わ、わたし別にそんなこと言って――」
「言ったんだよ。君は凪が焼け死んだという結果を少しでも肯定してしまったんだ。君はあの子の墓の前で、『あなたは死んじゃったけどあなたを見捨てて逃げたお兄ちゃんは生きてて良かったね』なんて言えるのか? 最低だな」
「やめてよ!!」
 一際大きい、悲鳴のような怒号が前からぶつかってきた。
「わたしだって……、わたしだってさぁ!!」
 その声で、ぼくはハッとして──おそらくは正気に還った。
「わたしだって、凪ちゃん大好きだったよ!!」
 シロが絞り出すように叫んでいる。
「凪ちゃん居なくなってわたしだって悲しいんだよ。そりゃ、その場に居なかったわたしが『君と同じくらい』とまで言って良いとは思わないけど……でも、悲しんでるのは同じなの」
 シロの瞳から零れる涙を直視したまま焦点が合わなくなり、そのまま視界がぐにゃぐにゃになった。
「ごめんね。わたしきっと、君から見たら凄い酷いこと言ってるんだよね。……でもね、わたしから見たら、凪ちゃんの命も嵐くんの命も、同じくらい大事なの……。それなのに、このまま嵐くんまでいなくなっちゃったら、わたしきっとどうにかなっちゃうよ…………」
 彼女の声は消え入りそうなのに、ハッキリ痛々しかった。ぼくは何か反応しなければならない衝動に駆られたが、瞬き一つできなくなっていた。
「毎日毎日怖くて仕方ないんだ。嵐くんの目、もうこの世の何にも興味ないみたいで……いつかフッと居なくなっちゃうんじゃないかって……」
 そう言ったきり、シロは泣き崩れてしまう。
「……………………」
 それでもぼくは動くことができないでいた。自分の言葉が引き起こした事態に唖然としていた。

「ごめんね。今日はもう帰るね……」
















 ***

 シロが帰った後の自宅。
 静寂が耳に刺さった。ただ無音であるということだけが原因とは思えないほどの息苦しさが空間に充満していた。
 ぼくは自分の体重が何十倍にも増えてしまったんじゃないかというほどの重圧にさらされながら、それでも動けずにいた。今まで感じたことがないほど強い自己嫌悪に圧倒されていたのだ。
 自分がシロに放った言葉を思い返し、反芻し、その都度罪悪感に苛まれ叫びだしたい衝動に駆られるという思考プロセスを幾度も繰り返していた。
 やがて……どれくらいの時間が経ったことだろう。
 シロが荷物を置いたまま出ていってしまっていたことに思い至った。
 さすがに……そのままにはしておけないだろう。
 そう思うと、ようやくぼくは身体を動かすことができた。一度深呼吸をして、シロの残した鞄に近づき、持ち上げた。
 時計を見る──体感時間からすると嘘のようだが、まだ数分しか経っていない。彼女もまだそこまで遠くには行っていないだろう。
 彼女に追い付いて、これを返す……いやそれより、謝らなければならない。
 ぼくは彼女の鞄を手に、自宅を後にした。


 シロの家に向かう途中、彼女の悲鳴が聞こえた。
 路地裏で、先ほどぼくをリンチにしていた不良たちが、シロを不意打ちでダウンさせて路地裏に引きずり込み、報復で暴行しているようだった。


 何かで肉を打つ音が響く直後、シロの悲鳴が空間を裂いていく。それが繰り返されている。
 起こっていることが信じられなかった。彼女がこんなに一方的に暴力を受けているなんて……
 いや、そもそもその考え方がおかしいんだ。いくら空手が強いとはいえ、複数人の男たちから、それも不意打ちされたんだとしたら、対抗するのは難しいだろう。彼女が戦うことを当然のように受け入れているのは、都合が良すぎる。
 この状況はぼくのせいだ。
 こうなる危険性を、ぼくはずっと彼女に背負わせてしまっていたのだ。
 何か、この状況を打開できる要素はないか──辺りを見回すも、不自然なほど動きがない。
「くそっ、住宅街だろ!? 何で誰も出てこないんだよ!?」
 路地裏の喧騒に対して、住宅街は、触らぬ神に祟りなしとばかりに静かだった。人情のなさに絶望するしかない。
 今から通報したとしても、警察が来る頃には手遅れだろうし、どうすれば良いのか。
 こんな状況でも人任せにしようとしている自分に嫌気がさす。
 恥ずかしいことに、ぼくの手足は震えていた。根が生えたようにアスファルトにくっつき、一歩を踏み出す様子もない。
 まるであの時と同じ状況だ。何もできない。
 クズは何周してもクズなのだろうか。
 悲鳴が起こる度にシロの声は弱々しくなっていく。焦燥ばかりが込み上げてくる。
 炎に飲み込まれる妹の姿がフラッシュバックする。あの一瞬に置いては、ぼくはまだ凪を失っていなかった。あのとき何かできていればと、何千何万回後悔したことか。
 時間はどうしようもなく不可逆だ。一秒ごとに有限が損なわれていく。
 視界が狭まり、聴覚が撹拌されていく。
 頭の中のイメージと現実の光景が境を曖昧にしていき。
 そして。過去の凪の悲鳴と、現在のシロの悲鳴が重なったそのとき。
 自分の内面で、ほとんど奇跡のような衝動が起きた。
 何かの感情の暴発か神経の気まぐれか知らないが、ぼくの足はそれに従うことでようやく一歩を踏み出していた。
 ここぞとばかりに、何も考えずぼくは足に力を込めていく。……二歩も三歩も同じだった。
 歩みはやがて走りへと変化し、路地の奥へ進んでいく。
 悲鳴が近づき、いつしか彼女の姿が目に入った。
 人形のようにグッタリとアスファルトに密着させた身体は、衣服を剥ぎ取られており、ところどころがあざだらけで、殴られたのか顔は腫れ上がっていた。
 あまりに痛々しい惨状。
 彼女が死んでしまうかもしれない──不安が加速する。
 自分はこの感情を、ずっと前から知っているはずだった。喪失に対する恐怖だ。
 それなのにぼくは、長い間、シロにこんな感情を、慢性的に与え続けていたというのか。
 なんて酷い奴なんだ。
 自分に対する怒りと情けなさが、目の前の恐怖を微かに覆い隠してくれる。負の感情は思いっきり、連中にぶつけてやろう。ぼくは拳を握りしめる。空手をやっていた頃の感覚なんてちっとも覚えていないが、知ったことか。
 騙し騙しでも良いから、全力で前に進まなければならない──!

「コイツ、雲井じゃねえか!!」
「バカか!? 丸腰で一人出てきやがって!」

 寄声を上げて突っ込んでいく。
 こんな連中、あの炎に比べれば、全然大したことない。
 やがてぼくの拳は彼らに到達する。だがそれは到底、思い描いていたような勢いはなく、何だかしっくりこない、頼りない反動が右手を覆った。
 当然すぐにぼくへの反撃は行われ、よく知った痛みに全身が包まれた。
 だがぼくは殴られに来たわけじゃない。シロを助けに来たのだ。
 ぼくは可能な限り暴れまくった。狂ったように手足を振り回し、奴らを引っ掻きまくり、誰か一人の股間を蹴り潰してやった。
 だが、素人の抵抗などそう長く続くはずなく、ぼくはすぐに殴り倒され、一方的なリンチに身をさらしてしまった。
 やがて意識が遠退いていく。
 もうダメなんだろうか……と思った頃、パトカーのサイレンが聞こえ出した。
 事前に誰かが通報してくれていたのだろうか。
 不良たちの足音と痛みが遠退いていく中、声が聞こえた。
「あらし、くん……?」
 声の主は当然、シロだ。
「シロ、無事!?」
 身体が動かせず、彼女の姿を確認することができないのがもどかしい。
「なんとかね……」
 彼女はそう言うものの、声は消え入りそうなほど弱々しい。彼女を安心させたい気持ちが胸をかきむしった。
「も、もう大丈夫! た、助けに……きたよ……!」
 そう言うと、彼女はクスリと笑ってくれた。
「何それ……そっちもボロボロなくせに」
「お、おっしゃる通りで…………」
 その通りすぎてぐうの音も出なかった。やはり情けない。
 これだけで終わりというのもあんまりなので、ぼくは少し考えて、
「……だから今度は、あんな奴ら追っ払えるくらい、ぼくも強くなるよ……」
 そう言ってみると、どこか嬉しそうな様子で、
「え、ほんとっ?」
 と反応があった。
 そして、彼女が安心したように微笑む気配が空気を介して伝わってきた。
 そこでぼくの意識は途絶えた。




   ***

 全身に満ちていたはずの痛みが徐々に引いていくような感じがして、心地がよかった。
 ぼくはどこかに横たわっているようだが、詳細は分からない。なにも見えないが、柔らかい綿のようなものに包まれているような感触だけがあった。
「にー、よく頑張ったね」
 少女の声が聞こえた。忘れることのない声だった。
 感傷が滝のように溢れてきた。
 感情の波に呑まれそうになって返事ができないでいると、彼女がまた付け足すように言った。
「えらいよ。さすがにーだよ」
「そ、そうかなぁ……」
「うん。格好よかった」
「結局やられっぱなしで情けなかったと思うけど……」
「そんなことない。……にーはもう、大丈夫そうだね」
 それはとても安堵したような言い方で、その感情はぼくにも伝染していくようだった。
「シロちゃん助けてくれて、ありがとね」
「何で凪がお礼言うのさ」
「だってわたしも、シロちゃん大好きだから」
「……そっか。そうだよね」
 悲しいのはぼくだけじゃないんだ。改めてそれを感じて、また自分が情けなくなった。
「ごめんね、先に死んじゃって」
「謝らないでよ。ぼくが凪を守れなかったのが悪いんだ」
「違うの。自分の身を守れなかったのはわたしなんだから。……わたし、ダメな妹だったね」
 凪が申し訳なさそうに言う。
「そんなことないよ。凪にダメなところなんて一つもないよ」
「それは言い過ぎでしょ?」
「言い過ぎじゃないよ。もし君を責めるような奴がいたら、ぼくが全員ぶっ飛ばしてやるよ」
「そんなことしちゃダメだよ」
「だって……君は最高の妹なんだ」
「……兄ばか」
 彼女が静かに微笑むのが伝わってきた。
「何とでも言いなよ」
 そう言い返した直後、凪の気配が遠退いていくのを感じた。きっともう、この瞬間が過ぎれば、今後彼女がぼくの元を訪れることはないのだろう。
 塊のような激しい寂しさが胸を内側から圧迫する。
 でも、これはきっとどうしようもないことなんだ。
 この感情を乗り切らない限り、ぼくは永遠に前に進むことはできない──今のぼくにはそれが理解できた。
 ぼくは喪失に向き合わなければならない。
 ないものは、ないのだから。
 過去にばかり囚われている暇があるなら、ぼくたちは残された限りある大切なものを守るために、少しでも足掻くべきなのだ。
「にー、シロちゃんのこと大事にしてね」
「うん」
「若いうちに死んじゃダメだよ」
「うん」
「わたしのことも、時々は思い出してね」「うん」
「幸せになってね」

「…………うん」

 凪のことは絶対に忘れない。たとえ世界が滅んでも覚えてる。
 君はぼくにとって最高の妹なんだ。
 だから、これから先もぼくは生きて、それで、凪に顔向けできないような大人にだけはならないって、誓うよ。

 さよなら。




   ***









「…………生きて、にー」

ぼくが人でなしになった日

執筆の狙い

作者 標識
182-50-214-97.cnc.jp

妹のストーカーがとち狂った挙げ句、ぼくらの家に火をつけてしまったその日。
ぼくは炎が怖くて我先にと逃げ出した。目の前で燃けながら苦しんでいる妹のことなんて露ほども考えず。
結果として自分だけが生き残り、その日からぼくは人でなしになった。
 ↑
【あらすじ】

主人公の少年が妹の死と向き合っていく話です。
よろしくお願いします。

コメント

偏差値45
KD111239160163.au-net.ne.jp

お疲れ様です。長いです。
正直に言えば、笑ってしまうほど「つまらない」かな。
なぜなら、感情曲線が下ったままだからです。
夢も希望もない。そんなかんじでしょうか。
折角、書くならば戦略的に考えてみてはいかがでしょうか。

で、ラストはワンピースの一コマに似ていたかな。
ジンベエ「失った物ばかり数えるな!!! お前にまだ 残っておるものは何じゃ!!!」
ルフィ「仲間がいる゛よ!!!!」
そんな結論だったような気がしますね。

次回作はより良いものを期待しています。

中小路昌宏
softbank060105244178.bbtec.net

 読みました。

 コメントを書くつもりは無かったのですが、偏差値45さんのコメントを読んで、ひとこと書いておかねば、という気になりました。

 偏差値さんの感想とは正反対の印象を受けました。
 こういう作品は自分の好みでは無いのですが、私にはとても、文章が巧みで、迂曲した主人公の心の動きがよくわかる秀作だと感じました。

 もちろん、何も問題点が無いという訳ではありませんが、こういう分野の作品を描ける人は少ないと思うし、もう少しわかりやすく、推敲を重ねたものであれば、どこかの文学賞に応募したとき、一定の評価をしてくれる審査員もいるのではないかと、私は思います。

 偏差値45さん、ごめんなさい。貴兄に反論するつもりでは無く、この作者の才能の芽を摘んでしまうのが勿体無いと思ったので、正直に申し上げました。

凡人
sp49-97-23-25.msc.spmode.ne.jp

 読ませて頂きました。

>笑ってしまうほど「つまらない」かな。
>文章が巧みで、迂曲した主人公の心の動きがよくわかる秀作だと感じました。

と相反する評価のコメントを先に読んで、自分は果たしてどちら派かな? と思いながら本編を読みました。結果は後者派で有り、それ以上に”上手い“、“良い”という印象を受けました。読み始めは、いくつものエピソードが散りばめられ、且つ、現実と妄想が交錯するなど、頭の中で整理しながら読まないといけないような煩わしさを、少し感じでいました。
 ところが、読み進めるに従ってバラバラのエピソードが一点に収束して行き、ラストに落とし込まれる。見事だと思いました。

 ストーカーに襲われ焼死した妹を救えなかったというトラウマ。強くあれず、寧ろマゾ匕ティックな自分を肯定しながら嫌悪している自分を、また、自分が見ている。
 結論は、スーパー・ヒーローに変身するでもなく、ほんのちょっと前向きになれたところで、未来への薄日が差してくる。
 読み違い出なければ、そんなストーリーだと思います。
 
 少し、不満が残るのは、嵐とストーカーのキャラが負け犬タイプで被り、妹・凪と同級生のシロとのキャラが、前向きな女の子として被っていて、若干バターン化しているかなと言うところですかね。シロと呼ぶいわれも一言欲しかったですね。
 もちろん、嵐は自分のダメさ加減に本当は苦しんでいるのに、ストーカーは自己中、無反省と言う書き分けはしているが、それは、作中の役割上、当然そうなると思います。

 平等とか公平と言う概念は人が社会生活を送るのに必要なものとして作り上げた概念ですよね。
 人も動物であると考えれば、食うものも居れば食われるものも居る。生存能力が高く、その優秀さから多くの子孫を残すものも居れば、餌が取れずに餓死したり、強者に捕食されて命を終わるものだって居る訳です。自然はそれらのものを全て含む中でバランスを取って成り立っているわけですから。
 草食獣ならその中には肉食獣に食われるものが一定数居るのは当然だし、居なければ肉食獣が絶滅してしまう。自然の中ではそれが当然のことなんですよね。人間だけが、なぜなんだろうと悩む。
 
 優秀な人間も居れば、何をやっても駄目な人間も居る。自分は何故駄目なんだと思うのも、不公平だと思うのも、それは人間だからであり、自然界の中では普通のことです。ただ、動物と人間が少しだけ違う部分は、人間は意識の持ちようによって、未来をほんの少しは変える事が出来ると言うことでしょうかね。

上松 煌
18.235.74.110.ap.yournet.ne.jp

標識さん、こんにちは
 
 仕事なので、昼食を食いながら拝見しました。
そうですね、様々なことを考えさせられる良作でしたよ。

 ただ、やっぱり定型というかよく見るパターン化が気になりました。
妹……なぜ、兄や姉、弟ではいけないのだろう?
こういう話で幼馴染や妹というのはもう、食傷気味の定番。

 それから、『一人でも助かって良かった』という言葉に過剰反応する主人公。
これは自分が妹を見捨てたという罪悪感の裏返しの反応で、非常に他罰的で醜い。
人間として実に甘ったれで臆病弱虫な反応で、それ以降の主人公の独白や心模様が、まさしく放火犯の無反省・自己擁護・自業自得的虚無と=(イコール)であったのにも、ムカついて飯が食えなくなりました。
主人公も犯人も「逝ってよし」といいたくなるほど、弱く愚かだ。
人間ってそんなものだよ、という大合唱が聞こえてきそうですが、果たして人間ってそんなものなの???

『一人でも助かって良かった』は救助隊として当然の心情で、
「だれも助からないより、【せめて】、1人でも助かって良かった」
という意味です。
もちろん、彼らも本音では、
「助けるなら若いオネーチャンや幼女ね。男や老人はちょっと」
とオフレコしているのは知っています。
それでもおれはここにひっかかってひっかかって、以前、ちょっとした疾病で医者からダメ出しされたことを思い出しました。
医者は、おれの最愛の家内に
「お子さんがいるなら呼んであげてください。ご両親や親戚、友人知人などにもご連絡お願いします」
つまり、もう、助からないよ、ってこと。

『一人でも助かって良かった』
「お子さんがいるなら呼んであげてください」
は、状況もニュアンスも全く違った言葉。
それでも前者は、消火だけでなく人命救助も司る彼らの敗北感の中にもせめてもの希望と慰めを込めたものであり、後者の医者の言葉はやはり救命を使命とする彼の、手の施しようがないという敗北宣言ね。
やっぱ、そういうギリギリの場面で発せられる、あるいは吐露される言葉は素直に受け止められる人でありたい。
ま、おれは運よく助かっちゃったんだけどさ。

 ラストまでの経緯も、定番だよね。
愛するもののために体を張る。
「またぁ」って思うくらいよくある話だけど、これはこれでいいと思いますよ。
最初にも書いたけど、久しぶりにいろいろ考えさせられるお話でした。

u
opt-211-132-65-253.client.pikara.ne.jp

圧倒的にwww 文章はこなれているかもww

話的には各エピがブツギレ的ではあるのですが
全体読めばマアなんだか繋がっているのはわかるのよね

↑で他のかたが指摘しているように
主と敵ヒロイン妹のキャラ設定が被るのは残念かなwww

↑で他のかたが指摘しているように
定番www これもご指摘通りかも

もうひとひねり欲しいかもね

最近のこのサイトでは
そこそこ書けていると思った(文章)
ストリ心理展開頑張ったらいいかも 

標識
182-50-214-97.cnc.jp

 偏差値45さん、感想ありがとうございます。


>長いです。

 すみません。適切な長さにまとめるのが苦手なもので……


>正直に言えば、笑ってしまうほど「つまらない」かな。

 ええと、『つまらなかった』という感想を否定するつもりは毛頭ないんですけど……ここまで狙いすぎな言い方をされると、反応に困りますね。


>感情曲線が下ったままだからです。
夢も希望もない。そんなかんじでしょうか。

 ぼくの構成力不足だと思います。貴重なご意見ありがとうございます。


>で、ラストはワンピースの一コマに似ていたかな。
ジンベエ「失った物ばかり数えるな!!! お前にまだ 残っておるものは何じゃ!!!」
ルフィ「仲間がいる゛よ!!!!」
そんな結論だったような気がしますね。

 すいませんワンピースに詳しくないのでよく分かりません。


>次回作はより良いものを期待しています。

 ありがとうございます。

標識
182-50-214-97.cnc.jp

 中小路昌宏さん、感想ありがとうございます。

>何も問題点が無いという訳ではありませんが、こういう分野の作品を描ける人は少ないと思うし、もう少しわかりやすく、推敲を重ねたものであれば、どこかの文学賞に応募したとき、一定の評価をしてくれる審査員もいるのではないかと、私は思います。

 励みになります。頑張ってみます。

>偏差値45さん、ごめんなさい。貴兄に反論するつもりでは無く、この作者の才能の芽を摘んでしまうのが勿体無いと思ったので、正直に申し上げました。

 ぼくがどうこう言うようなことではないかもしれないのですが、他の方とは違う感想を主張することに何か問題があるとも思えないので、そこまで気を使う必要はないんじゃないかな、と、個人的には思います。余計なことだったらすみません。

標識
182-50-214-97.cnc.jp

 凡人さん、感想ありがとうございます。

 >読み進めるに従ってバラバラのエピソードが一点に収束して行き、ラストに落とし込まれる。見事だと思いました。

 ありがとうございます。

>ストーカーに襲われ焼死した妹を救えなかったというトラウマ。強くあれず、寧ろマゾ匕ティックな自分を肯定しながら嫌悪している自分を、また、自分が見ている。
 結論は、スーパー・ヒーローに変身するでもなく、ほんのちょっと前向きになれたところで、未来への薄日が差してくる。
 読み違い出なければ、そんなストーリーだと思います。

 そうだと思います。

>少し、不満が残るのは、嵐とストーカーのキャラが負け犬タイプで被り、妹・凪と同級生のシロとのキャラが、前向きな女の子として被っていて、若干バターン化しているかなと言うところですかね。シロと呼ぶいわれも一言欲しかったですね。

 嵐とストーカーが被ってるのは意図的なんですが、イマイチでしたでしょうか。
 凪とシロのキャラが被ってるのは、自分でも問題だと思っています。尺がもっと長かった場合、区別がつかなくなりそうです。キャラの書き分けができるようになりたいです。

>シロと呼ぶいわれも一言欲しかったですね。

 名前が『シロ』なのでそう呼んでいるというだけなんですが、何かおかしかったでしょうか?

>草食獣ならその中には肉食獣に食われるものが一定数居るのは当然だし、居なければ肉食獣が絶滅してしまう。自然の中ではそれが当然のことなんですよね。人間だけが、なぜなんだろうと悩む。

 自然界は残酷ですね。

標識
182-50-214-97.cnc.jp

 上松煌さん、感想ありがとうございます。

>仕事なので、昼食を食いながら拝見しました。

 貴重な時間を使って読んでくださりありがとうございます。

>そうですね、様々なことを考えさせられる良作でしたよ。

 ありがとうございます。

>ただ、やっぱり定型というかよく見るパターン化が気になりました。
妹……なぜ、兄や姉、弟ではいけないのだろう?
こういう話で幼馴染や妹というのはもう、食傷気味の定番。

 キャラが典型的というのはその通りであり、自分の至らない点だと思います。
 ただ、妹や幼馴染といった役割のキャラが出てくること自体を批判しているのであれば、失礼ながら少し反論させていただきたいです。
 こういう話で幼馴染や妹が出てくることが多いのは、単に『こういう話だから』ではないでしょうか。少年漫画では少年が、少女漫画では少女が、アクション映画ではガタイの良い男が、それぞれ主人公である場合が多いのと同じように。もちろん他のパターンがあっても良いとは思いますが、ジャンル特有のお約束が悪いことだとは、ぼくには思えません。

>人間ってそんなものだよ、という大合唱が聞こえてきそうですが、果たして人間ってそんなものなの???

 他人がどう考えているかなんて本当のところ分からないし、世の中には色んな人がいると思うので、ぼく自身は『人間ってそんなものだよ』なんて言うつもりはありません。
 しかし、『大合唱』というからには、多くの人がそう思っていそう、だということでしょうか? ちょっと、この疑問の対象が分からなかったので。

>『一人でも助かって良かった』は救助隊として当然の心情で、
「だれも助からないより、【せめて】、1人でも助かって良かった」
という意味です。

 それは分かります。
 あくまでも主人公の主観なので。

>もちろん、彼らも本音では、
「助けるなら若いオネーチャンや幼女ね。男や老人はちょっと」
とオフレコしているのは知っています。

 そうなんですか?
 『知っている』ということは、救助隊の方がそのようなことを言っているということを、上松さんが実際に聞いてしまったということでしょうか。
 だとしても、それを一般化してしまうのはどうかと思います。そんな人ばかりとは限らないので。

>ラストまでの経緯も、定番だよね。
愛するもののために体を張る。
「またぁ」って思うくらいよくある話だけど、これはこれでいいと思いますよ。

 一応、最後は王道を目指したつもりです。

標識
182-50-214-97.cnc.jp

 uさん、感想ありがとうございます。

>圧倒的にwww 文章はこなれているかもww

 ありがとうございます。

↑で他のかたが指摘しているように
主と敵ヒロイン妹のキャラ設定が被るのは残念かなwww
↑で他のかたが指摘しているように
定番www これもご指摘通りかも

 自分の至らない点だと思います。精進します。

>ストリ心理展開頑張ったらいいかも

 『ストリ』はストーリーのことですか?

 あとどうでも良いんですけど何でずっと草生やしてるんですか?

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