ルス
両親が旅行に行った。二泊三日の九州の旅。さっき無事に旅館に着いたとの連絡があった。
三人家族なので家にいるのは一人だけ。
俺は学生。大学には自宅から通っている。
一応、全部の戸締まりを済ませた。
夕方。外は暗くなりかけている。
二階の自分の部屋でくつろいでいると、救急車らしきサイレンの音が聞こえてきた。
驚いたことに、それは家の前で止まった。
どうした?
近くに家はない。
結構、登山者もいる山の麓に建てられた俺の家は、ポツンと一軒家状態。
と言っても、車で五分も走れば街中だ。
登山者でも倒れてるのか……?
そいつが携帯で呼んだのかも……。
そう思っていると、いきなり玄関のドアの開く音がして、ドカドカと人が入って来た。
へ? 何で?
何が何だか分からない。俺は恐怖を感じた。
戸締まりを済ませた後だ。玄関の鍵も、ちゃんと確認した。
中から開けたのか──!
一体、誰が? ひょっとして泥棒……?
急に具合が悪くなったりして自分で救急車を呼んだのか……?
恐る恐る一階に向かった。
すると何者かを乗せた担架を運ぶ救急隊員が玄関から出ようとしているところだった。
「一体どういうことです!」
彼らに向かって言った。
だが無視された。
彼らは担架を救急車に乗せ、車を走らせて行ってしまった。
運ばれた者の顔は見れなかった。
俺は玄関の外に立ち尽くした。
そのとき思った。
ひょっとして、まだ中に誰かいるかも……。
通報したのが本人以外だったことも考えられるのだ──。
警察を呼ぶべきか──?
怖くて家の中に入れない……。
通報したのは誰だ? 誰だ? 誰がかけた?
誰がかけたんだ?
そのときだった。
コツコツと音が聞こえてきた。
ハイヒールの音だった。
一人の女性が門から入って来て、俺のすぐ目の前で止まった。
彼女は言った。
「こんばんは。秘密の花園から来ました萌音です。コースは顔○コースでよろしかったでしょうか?」
ああ。こっちは俺がかけた……。
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秘密の花園に電話をかけて彼女を呼んだ俺は、
今夜、彼女にもかけるかもしれない……
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おしマイケル……
執筆の狙い
作家でごはんには、俺様に匹敵する書き手は、ただの一人もいない。
この俺様の作品を読めば誰もが泣いてしまうだろう。
素晴らしい! 傑作だ! こいつは天才の仕事だ!
そんな賞賛が今から聞こえてきそうだ。