作家でごはん!鍛練場
煌空

金色のペンダント

「っ……うぅ……」
「じゃあ、返して」
少女の呻き声と男の冷めた声が聞こえる。
地下にある極秘の研究所。
ここでは人体実験が行われていた。
人体実験を行なっているのは『テウフェル』という宗教団体だった。
悪魔、『テウフェル』を神とする宗教団体で、研究所で実験をしている者は、『テウフェル』の中でも過激派と呼ばれる50人ほど。
先ほど呻き声を上げていた少女は『M』と呼ばれる実験体で、今年で10歳ほどになる子供だった。
(痛い……苦しい……)
彼女に与えられた唯一の物である4畳ほどの部屋に押し込められると、声に出さず思った。
光の差し込まない研究所に閉じ込められて2年半くらい。
毎日のように注射を打たれて、体を切り刻まれた。
研究という名の拷問だ。
研究員たちは皆、「テウフェルさまへ捧げるための準備だ」
と言うが、もちろんMは信用していなかった。
「お父さん……」
質素なベットに腰掛けると、涙が溢れ出て来た。
Mはこの研究所に閉じ込められる前、父親と2人暮らしだった。
母親は自分が産まれてすぐに亡くなったらしい。
日々の暮らしは苦しいながらも、父親と協力して生活していた。
研究員が家に来るまでは。
研究員たちは実験に少女が必要だと言って、家に押しかけて来た、
少女を出してくれれば、200万円渡すと。
父親はMと引き換えに200万円を貰う道を選んだ。
父親は泣きながら謝っていたが、本当には見えなかった。
研究員にMを渡す時、その口元が歪んでいたから。
本当の名前さえ忘れてしまったM。
彼女は枕を顔に押し当てると、声を殺して泣いた。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
Mは枕から顔を上げた。
どうやら泣いている途中に眠ってしまったようだ。
オレンジ色の薄暗い電球がチカチカと点滅する。
ふと視界に見慣れない物が映った気がして、視線を戻す。
体育座りをしている人がいる。
(えっと……誰?)
戸惑うMを置いて、座っている人は顔を上げた。
「んん〜、あ、おはよう」
その人は顔を上げるとこちらを見た。
茶髪の優しげな男の人。
まだ若そうに見える。20代前後だろうか。
「どちら様ですか……?」
「僕の名前はフォル。親父がここで研究員してて。実験体さんがどんな風なのかなぁって気になって潜り込んだんだ」
そうやってニコッと笑う男の人ーフォル。
彼は長らく見ていない、太陽みたいに明るかった。
しばらく他愛の無い話をしてー主にフォルが話していたがー10分ほどすると、腕時計を見たフォルが声を上げた。
「あ、そろそろ行かなきゃ。親父にバレると面倒臭いし。」
そう言うと彼は立ち上がって、鍵のかかった扉に手をかけた。
と、思い出したように、急いでこちらに戻って来た。
「これ、あげるよ」
差し出した手には赤色の包装紙に包まれた物があった。
次こそフォルは扉を開けて行ってしまった。
鍵はかかっていないようだ。
ただMは、出ようとはしなかった。
一度逃げ出した事があったが、研究員たちには敵わずまた押し込まれてしまったからだ。
先ほどフォルに手渡された物を見る。
赤い包装紙を丁寧に剥ぎ取る。
中から出て来たのは、ペンダントだった。
金色のチェーンの先に金色の猫の飾りが付いていた。
(いつぶりかな、誰かに物貰ったの)
それを首に……はかけず、側にある棚の中に入れた。
研究員にバレたら、まずいと思ったからだ。
その時、ノックの音がした。
Mはベットから立ち上がる。
なぜか、私を地獄へ連れて行く合図のノックの音も、心無しか軽く聞こえた。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
それからというものの、フォルは何度も研究所を訪れた。
来るたびにお土産を持って来たりして。
お菓子や小物など、いろいろな物を持って来てくれた。
「……怒られないんですか?」
「こっそり来てるからね。まぁバレたらど叱られるんだけどね」
そう言って苦笑するフォル。
どうして来るのかと、Mは数回目に聞いてみた。
フォルは
「君といると楽しいから」
と言った。
フォルはMのことをあまり深く聞かない。
フワフワしていてよく分からないフォル。
いつの日からかMはフォルが来るのを心待ちにするようになっていった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
「痛っ……」
実験が終わって部屋に帰されたM。
しかしそろそろフォルが来る頃かと思うと、心も軽かった。
と、鍵のかかった扉の向こうから怒鳴り声が聞こえて来た。
薄い壁に耳を付けると、途切れ途切れだった言葉がはっきり聞こえるようになった。
男の人と、フィルの声だった。
「何でMに無断で接触した!」
「親父に言っても意味は無いと思ったからだ!」
「テウフェル様への捧げ物をお前のような者に汚されるなんて!」
「僕はテウフェルなんて信じないっ!」
「お前っ……!!」
次の瞬間、グサッという何かに刃物が通る音と、フォルの悲鳴が聞こえてきた。
「……フォル?」
その先の事は自分もよく覚えていない。
思い出せるのはそれが終わった後、警察がやってきて研究者たちを捕まえた事。
それとフォルとの最後の会話だった。
「フォルッ……!」
「あぁ、M……か」
薄暗い研究室の中、倒れているフォルに駆け寄る。
フォルの周りには救急隊とみれる人たちが集まっていたが、Mの姿を見ると、後ろに下がった。
フォルの下には血の池があり、辺りには鉄の匂いが充満していた。
「フォル、死んだら嫌っ!」
「君らしく……無いよ」
フォルはいつものように微笑みを向ける。
しかしそれで青白くなった顔が隠せるわけでは無い。
火照ったMの頬を涙が蔦っては落ちて、蔦っては落ちていく。
「M、最期に……言う……事……が……」
「嫌だっ!最期なんて言わないで!」
喘ぎながら言うフォルをMは遮る。
(この血の量で助からないのはわかってる。でもっ……!)
と、フォルの手がすっかり濡れきったMの頬に当てられる。
冷たいフォルの手に、Mは何も言えなくなる。
1番辛いのはフォルだと、気づいたから。
「M、君の……本当の……名前は……ね……マナ……っていうんだ……」
「どうしてわかったの……?」
己すら覚えていなかった名前をフォルは知っていた。
Mーマナはつい問い返してしまう。
「……だって……僕と君……は……幼馴染……だった……もん……結婚を誓い……合った仲だし……」
「そんなの……覚えてないよ」
鼻を啜りながら、涙を堪えながら必死で返答するマナ。
「最初にあげた……ペンダント……つけてないの?」
「私がつけるには勿体無いよ……」
そう言うとフィルは苦笑した。
「つけてよ……絶対似合うから……」
咳き込むフォルの口元からは、血が流れ落ちていた。
「マナ……愛してるよ……親父が……ごめんね……待って……るよ……」
「フォル……」
その言葉を最後に、フィルの手が落ちた。
「フォルっ!!!」
暗い研究室に、愛する者を失ったマナの声が響いたー
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
あれから1年。
父親の元に戻ったマナは、13歳になっていた。
ある晴れた晴天の早朝。
ふと空を見上げる。
(フォル……)
自らのせいで命を落としたフォル。
空には明るい一等星が輝いている。
それがフォルの明るい笑顔と重なる。
なぜか彼は怒ってないように感じた。
それがマナの罪から逃れるためのものだったとしても。
フォルはマナが傷つくのを望んでいないーそう感じたのだった。
フォルはそんなお人好しだから。
首には彼に貰った最初のお土産、ネックレスがかけられている。
マナはそのネックレスに誓う。
(これからも、絶対にフォルの事は忘れない。たとえ何年経とうと)
暖かい風が、これから春を迎える事を告げていた。

金色のペンダント

執筆の狙い

作者 煌空
h061-211-143-076.user.starcat.ne.jp

自信作です!
恋愛系の小説は苦手ですが、頑張りました!
このサイトでの投稿は初めてなので、ご意見いただけると嬉しいです。

コメント

ふみゆう
103.152.112.147

読了。失礼します。

スラスラと読みましたが、恋愛系なのに恋愛要素はほとんど見えない。
もっとストーリーを詳しくを書いてみたら...?読み手の私は五里霧中になりました。読む時の表情もコントロールできなくて。なんというか、文体はラノベ...に近くて、少しイタかった。


お疲れ様でした。

偏差値45
KD111239161029.au-net.ne.jp

気になった点。

>彼女に与えられた唯一の物である4畳ほどの部屋に押し込められると、声に出さず思った。
最後、日本語としてすっきりしない。

>いつぶりかな、誰かに物貰ったの
助詞が抜けてないかな。

>自信作です!
逆の意味で期待して読んでみました。
だいたいこの種の言葉のある作品は、「つまらない」ことが多いからです。

>恋愛系の小説は苦手ですが、頑張りました!
先の「自信作です!」とは矛盾している気がするのですが……。

で、恋愛小説という印象ではなかったです。
むしろ、哀れみ、同情、そういう気持ちの方が強いのではないか、
そんな気がしました。

>「っ……うぅ……」
>「じゃあ、返して」
いきなり意味の分からない会話なので「やれやれ」そんな気持ちになりました。
冒頭でこんな展開をしていたら、挫折する可能性が高くなるので良くないですね。

>研究員にMを渡す時、その口元が歪んでいたから。
>本当の名前さえ忘れてしまったM。

計算すると、七歳半ぐらいで宗教施設で監禁されているわけですが、
その年齢だったら、忘れることはない気がしますね。
それに口元が歪んでいるか、いないか? それとは関係ないと思うのですが……。

>次の瞬間、グサッという何かに刃物が通る音と、フォルの悲鳴が聞こえてきた。
ちょっと行動が安易過ぎていないか?
簡単に言えば、動機としてそこまですることではない気がするんですよね。

>その先の事は自分もよく覚えていない。
>思い出せるのはそれが終わった後、警察がやってきて研究者たちを捕まえた事。

うーん。自分も? たぶん、Mのことでしょうか。
その先の事はMはよく覚えていない。これだったら自然のような気がします。

総じて言えることは、「つまらない」ことはなかったですが、
逆に「面白い」とも言えないかな。
個人的にはハッピーエンドでもないですし、恋愛が成就したわけでもない、
なにか作者様の主張があったわけでもない。そういう意味では不満が残るかな。

煌空
h061-211-143-124.user.starcat.ne.jp

ふみゆう様

ありがとうございます。
今後の創作活動の参考にさせていただきます。

煌空
h061-211-143-124.user.starcat.ne.jp

偏差値45様

ありがとうございます。
今後の創作活動の参考にさせていただきます

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