作家でごはん!鍛練場
小次郎

断捨離

 校舎を出た。暖かい日差しが降り注いだ。友人の静と一緒にバス停に向かう。帰宅部の私達は、この日も真面目に寄り道一つしなかった。バス停に着くと、行列。うんざりだ。何気にバス停看板を見ていたら、この本どう? と、静が私の目の前に本を差し出してきた。

 本は白を基調とした色に、黒字で完璧自殺マニュアルと書かれている。この本は危険そうだ、そう思いながらページをめくった。思った通り、そこには自殺のやり方が書かれている。楽しい本ではない。でも、興味を惹かれる。こういう世界というか未知なものにいつも私の探求心はくすぐられるのだ。これが、自殺のやり方ではなく、他殺のやり方が書かれていたとしても、美少年にでも見とれてしまうように、引き寄せられたことだろう。
 突然、静が怒鳴った。
「花音」
「何?」
 怒声にびっくりして、私は本から目を離し、静の表情を伺った。目が釣り上がっている。
「そんなに死にたいのならあげるよ、この本」
 相変わらず、語気に含まれているのは怒りだ。たぶん、静は否定してほしかったのだ。この本を。言い繕う事も出来た。謝る事も出来た。でも、私はそうはしなかった。
「いいの? もらって」
 そうしなかったのは、物欲の方が勝ったからだ。バイトをしていない高校生にとって、千二百円は大きい。
「いいよ、死んだらいい」
 私は本をありがたく頂戴した。






 完璧自殺マニュアルを頂戴してから、十二年経った。私は二十九歳になっていて、本を参考にしながら、自殺を図る事にした。アタラックスPという睡眠誘導剤がある。体重一キロ当たりの致死量は十錠だ。私の体重は四十七キロ。でも、四百七十錠も飲む必要はない。本にはアルコールと一緒に飲むと、薬の効果が一・五倍になると書かれていた。一気に十錠口に入れ、アルコールと一緒に飲む。それを繰り返していると、吐き気に襲われた。このまま続けると吐いてしまうだろう。これでは意味がない。私は時間の間隔を開けながら、アタラックスPを飲もうと思った。十分経つ度に、十錠ずつ飲んだ。三百七十二錠を飲んで、これ以上は飲むのはやめようと思った。吐いてしまう可能性があったからだ。計算では五百五十八錠の効果。すぐに眠れると思った。しかし、アタラックスPのせいだと思うのだが、何故か、逆に私の目は冴えて、頭は逆に明瞭になっていく。人は死を前にすると、走馬灯のように次々と思い出が浮かぶと聞いた事があるが、私の脳は穏やかに死を待つばかりである。時々、目覚まし時計の針を見る。時が流れる度に、自分が少しずつ死んでいくのを感じる。
 水が飲みたくなり、トイレにも行きたくなった。目覚まし時計の針は見ようと姿勢を変えた。強い倦怠感が全身を駆け抜けた。少ししか、身体を動かしていないのに、倦怠感があるのはたぶん薬のせいだろう。
 目覚まし時計の針を見た。七時七分だ。
 起き上がる。おもらししてもいいかもしれないと思える程に倦怠感は酷かった。二階の自室から、一階のリビングに向かう。ほんの少し足を動かす。
 倦怠感。
 足を動かす。
 倦怠感。
 でも、負けないようにと、身体を動かしていった。もしも悪魔のような存在がいたとしたら、私は闘っているのだ。身体の自由を奪われないように。一階に降りて、トイレで用を済ませた。レバーを回す元気もなくなる。ついに、私は悪魔のような存在に負けた。
 ここを出なきゃ。
 レバーは回せなかったけど、一時的に悪魔のような存在に勝てて、トイレの外に出る事が出来たが、私は倒れた。

 誰かの足音が聞こえた。
「花音、花音」
 心配そうな、祖母の声が聞こえてくる。
「何?」
「何って、どうしたのよ?」
「大丈夫だから」
「大丈夫じゃないでしょ」
 足音が聞こえる。
「トイレ流してないじゃない。本当にどうしたの?」
「ほっといて」
 廊下を歩く足音がする。少しして、階段を踏む足音に変わる。
 足音は聞こえなくなったが、すぐに、急ぐような階段を踏む足音がしてきた。そして、廊下を歩く足音に変わり、音が私のすぐ側で消えた。
「不審に思ったから、花音の部屋に入った。そしたら、大量の薬の脱け殻があったけど、あれ全部一度に飲んだの?」
「飲んだ」
 祖母の息を飲む音が聞こえた。
 廊下を走るような足音、玄関のドアが開かれる音、がする。
 玄関のドアが開かれる足音、廊下を歩く足音、がする。
「一人で大丈夫ですか?」
 祖母の声が聞こえる。
「大丈夫です、任せて下さい」
 知らない男の人の声がする。
 目を閉じていたが、私はお姫様抱っこをされたのが感触でわかった。
 その後、私の身体は振動した。誰かに運ばれているのだろう。玄関のドアが開かれる音、庭を歩く音、門が開く音、道を歩く音、おそらく車のドアだろうが開く音がした。おそらく、シートだと思うがそこに降ろされた。目を開く。車の中だった。救急車の中ではない。僅かな時間の間に救急車は来れるはずがないなと思った。おそらく、近所の人が所有する車だろう。私の家は車を所有していなかった。再び目を閉じた。ドアが何度か開閉する音がした。
「よろしくお願いいたします」
 祖母の声。
「任せて下さい」
 知らない男の人の声。
 エンジン音が鳴った。車内が振動し、道を走る車の音がする。
「いつ、薬を飲んだの?」
「二十二時ぐらい」
 祖母の問いに答えた。
 しばらくして、警察車両のサイレンが鳴る音がした。
「そこの車止まりなさい」
 その男性の声は拡声器からだとわかった。自分の乗っている車が止まったのは目を瞑っていても感じる事が出来る。
 警察車両のサイレンの音が止まった。
 車内のドアが開く音。
「急患なんですよ。早く病院に行かないと死んでしまうかもしれない」
 知らない男の人の声がする。
「わかりました。行って下さい」
 私の乗っている車が動き出すのを感じた。

 乗っている車が止まるのを感じた。
「受付に行ってきます」
 祖母の声がする。
 車のドアが開閉する音がする。
 少しして、車のドアが開く音がした。また、私はお姫様抱っこされて、何かに乗せられた。おそらく、担架だろう。車輪が道を走る音。自動ドアだと思うが、開く音。
「急患です。退いてください。退いてください」
 女の人の声がする。
 車輪の音が止まった。
 目を開く。エレベーターの前だった。再び私は目を閉じた。
 息をするのが、苦しくなってきた。
 私の身体が振動し、同時に車輪の音が聞こえてくる。それ等はすぐに止まった。
 再び、私の身体が振動し、同時に車輪の音が聞こえ、それ等はすぐに止まった。
 ベッドの上だろうが、そこに私は降ろされた。目を開けると、ベッドの上で、医師の白衣を着た男の人が私の顔を覗き込んでいた。
 私は目を閉じる。
「呼吸困難になっている」
 おそらく、医師が言ったのだろう。
「酸素ボンベをつけるべきか、つけざるべきか」
 医師の声が続く。苦しくて、酸素ボンベをつけてほしいと私は願い、おもいっきり苦しそうな表情を意図的に創り出した。
「よし、ボンベ」
「はい」
 その瞬間、私の口におそらく酸素ボンベだろうがつけられた。息が楽になる。
「服を脱がし、心電図をつけろ」
「はい」
 冷たいものが、私の両手首、胸、両足首につけられたのを感じた。
 ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。電子音が聞こえてきた。
「胃洗浄はしなくていいんですか?」
 祖母の声がした。
「受付で聞きましたよ。二十二時に薬を飲んだんですね? もう、胃で消化され、体内に吸収されています。胃洗浄は無意味です」
 医師の声がした。

 ピーーーーーーー。
「電気ショック」
 男の人は切迫している語勢で言った。
「もたもたするな、早くしろ」
「はい」
 冷たいものが胸に当たった。
 その瞬間、電子音は元に戻った。
「今夜が山ですね」
 医師の声が聞こえてくる。ドラマでしか聞いた事のない言葉を実際に聞く事になるとは思いもよらなかった。睡魔に、私の脳は襲われた。ゆっくり眠ろう。目を覚ますか、覚まさないかわからないけれど、永遠に目を覚ましたくなかった。
 久保田早紀の異邦人という曲が聞こえてくる。目を開ける。黄色を基調とした部屋の中に私はいた。目の前のソファーに、目を閉じている少女が一人で座っていた。私は夢を見ているのだろうか? 目を覚ましたとしても、ここは病室の筈だからだ。右の方に、鳥や雲に手を伸ばしている子供達の姿が描かれた、ステンドグラスがあった。今気づいたのだが、少女同様私もソファーに座っていた。
「私はサロメと言います。ようこそ、グレートマザールームへ」
 壊れた堤防の水のように、知識が脳を奔流する。グレートマザーというのは、ユング心理学の概念で集合的無意識の原型の一つである。集合的無意識というのは、人々は無意識の深層で繋がっているという学術的見地に立った考え方で、一方原型というのは、集合的無意識の中で、全人類が共通して持つイメージである上、無意識における力動のエネルギーとされている。そして、グレートマザーというのは、あらゆる物を育てる偉大な母のイメージで、女性の成長の究極的な目標だとされている。ただ、母という要素には二面性があり、一つは子供を慈しんで育む力であり、もう一つは子供を束縛し、呑み込んで破滅させる恐ろしい力とされている。
「私は世界の管理者」
 サロメは言って私を見据えた。
「あなたにチャンスを与える事にした。幸せになれるチャンスを」
「幸せになれるチャンス? どうして、私にチャンスを」
 確かに、私は不幸を感じている。だからこそ、自殺を図ろうとした。
「あなたと私が似ているから、ただ、それだけ。この世界を創った時、どうしても死というシステムを創らざるを得なかった。かなしかった。かつての私も人で、あなたと同じような人生を歩んできた。あなたは、定めを変えなさい。さあ、おいきなさい。定めを変えなさい」
 気がつくと、私は完璧自殺マニュアルの中身を見ていて、横には静がいた。
 過去に戻ったのだろうか? それとも、夢なんだろうか? 仮に夢であったとしても私は幸せを求めていた。
「静、この本は読まない」
 私は言って、本を返した。
「そうよね、こんな本を作った作者の気持ちはわからないし、読まない方がいいよね」
「じゃあ、なんで買って私に読ませたのよ」
「興味本位で買ってしまったの。花音にこの本を読ませたのは、あなたが心配だったから。あなたは、なんていうか自殺してもおかしくないって思えるほど、危うい感じがするから試してみたの。反応を」
 私は息を飲んだ。
「静、私は夢を見ているかもしれないの」
「夢?」
 私はこれから起こる未来の事を話した。
 静は泣いていた。
 彼氏いない暦イコール年齢な上、友達が一人もいなくなって、寂しくなって自殺する、それが私の未来だ。十代だった頃は友達が選り取り見取りだった。些細な事がきっかけなのに、私は友達との関係がうまくいかなくなる度、縁を切っていった。そういう事をしても、また、作ればいいとしか考えられなかった。でも、二十代も前半になると、徐々に友達を作れなくなっていった。
 十代だった頃は、もちろん人を断捨離していく行為は正しいものだと信じていた。ネット上では、人の断捨離をするのは良いという記事を幾つも見つけたし、なによりも人を断捨離すると心が落ち着いた。たぶん、心が落ち着くのは私が家で虐待を受けていたせいだろう。よく、お前なんて生まなければよかったと言われた。暴言や暴行を受けるのが当たり前だった。捨てられる前に捨てればいい。それが私の考え方になった。
 中学二年生のある日曜日、児童相談所に相談しにいった。相談員は親身になって私の話しを聞いてくれた。身体中の痣を見せた。でも、その時、相談員は眉一つも動かさず、驚かなかった。そういう子供達をよく見ていて、慣れているせいだと思った。
 そして、私は相談員を自分の家に案内した。両親は相談員から事情を聞かれると、意外にもすぐ虐待の事実を認め、刑務所に行く事になった。
 両親に勝った事で、快楽を感じた。それが、駄目だったのだ。
 快楽が人を簡単に断捨離してもいいという考えを芽生えさせていた。
 二十代後半になると、断捨離をしていくどころか、よく断捨離されるようになった。
 断捨離されるようになって、気がついた。これは悲しくて、寂しい事だと。こんな簡単な事を今まで気づけなかったのは、どうしてだろうか? 自分でもわからない。ただ、自分が病んでいた事は実感出来た。断捨離される側の気持ちを全く考えられなかったのだ。私の両親はともかくとして、静や他の友達は断捨離すべきではなかった。
「どうして、私との関係を切ったの?」
 静が嗚咽しながら、言う。
「暴言を吐かれたから。死ねばいいって言われたから。許せなかったの」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「こんな突拍子のない話しを信じてくれるの?」
「信じるよ、信じるから。自殺だけはやめて。私とは一生友達でいようね」
 気がつくと、私はスマホを見ていた。今は完璧自殺マニュアルを渡されてから、十二年後の世界にいて、多香子からメンタルのオープンチャットに来ないかと、ラインのメッセージが入っていた。
 過去という表現が正しいかわからないが、彼女から過去の私は断捨離される定めになっている。でも、過去ではない今の私には静がいる。静に協力を求めて、定めを変えないと。そう思った。今の私には静だけじゃなく、複数のリアルで会える友達がいる。その中でも静が一番親しかった。
 過去にも、オープンチャットに来ないかと多香子に誘われた。その時、多香子、祖母、職場の上司しかラインに人が登録されていなかった。祖父は亡くなっていたし、たったの三人だけ。でも、今は違う。十五人も登録されている。
 私は多香子の事を考えた。多香子とはとあるチャットで知りあった。彼女とはネットだけの繋がりだが、ずいぶん、お世話になった。職場で無視をされるようになった時、多香子に相談し、解決した事がある。みんなに笑顔で元気よく挨拶してごらん、上司にメンタルの病がある事を打ち明けて、職場のみんなとの関係をより良いものにしたいと、相談してごらん。そうラインでメッセージされ、その通りにしたら、問題は解決した。他にもいろんな事を相談し、解決してもらった事がある。
 私は多香子にラインのメッセージを送る事にした。
「行ってもいいよ。一つお願いがあるんだけど、友達に鬱病の人がいるんだけど、その友達も誘っていいかな?」
「いいよ」
 私は静と一緒になっちゃんが管理しているラインのオープンチャット、メンタル相談室に入った。
 静から驚いたよと、ラインのメッセージが入った。私が過去に戻ったと話した時、頭がおかしくなっていたと思い込んでいたとも語られた。でも、オープンチャットで私を断捨離した人の名前を見て、あの話し本当だったんだねとも語られた。
 なっちゃん、過去の私は彼女とも親しくなっていて、サッカー観戦の話題で盛り上がる事がよくあった。その度に、私は暖かい気持ちになった。
 メンタルが崩れそうになったら、なっちゃんと話しをする事でいつも踏ん張る事が出来た。過去の私は彼女からも断捨離された。
 静と一緒になっちゃんのオープンチャットに入った。そこでは、多香子が副管理人をしていて、いっぱいみんなにアドバイスしたり励ましたりしていた。
 多香子は医療関係の仕事をしていた事がある。メンタルの知識が豊富にあったし、薬の知識も豊富にある。彼女がメンタルのオープンチャットで主役級の働きが出来るのは、その為だろう。
 また、多香子となっちゃんと繋がれた事で、ひとまずの安堵を覚えつつも、不安だった。また、二人に断捨離されるかもしれない。そう思うと、心が切り裂かれたような痛みが駆け抜けた。
 私はオープンチャットのノートに自分のプロフィールを書いた。
 双極性障害二型があり、親から虐待を受けていた事があると。
 多香子が静に語りかけた。
 ノートに病名、任意ですが簡単なプロフィールを書き込んで下さいと。
 静がノートの書き方が分からないと語る。
 すぐに、私はインターネットでオープンチャットノートの使い方と検索し、リンクを貼った。
 親切だねと多香子に語られた。
 分からない事を聞くと、ググレカスと安直に言う人達がいる。そういう人達は私にとって反面教師だ。教える事なんて、簡単に出来る。なのに、そんな手間すらも惜しむ気持ちが理解出来ない。
 本当は静は健常者だ。でも、このオープンチャットに入る資格として、メンタルの病を抱えている必要がある。だから、静には鬱病と嘘をついてもらう事にしている。
 ノートに書きました。
 静が語った。
 ノートを見ると、鬱病があり、時々寝たきりになると静が書き込んでいた。
 書いてくれて、ありがとうと、多香子が語った。
 三十分ぐらいして、私はなっちゃんにLINEのIDを聞いた。三回に分け文字を打ってくれ、教えてくれた。IDをいっぺんに打つと自動的に機械が文字を消去する為だろう。
 オープンチャットで、多香子、なっちゃん、静、他のみんなと語り合うのは楽しかった。
 一時間ぐらいして、多香子が暴言を吐く人を強制退会させた。
「多香子、いきなり強制退会させるんじゃなくて、まず注意して、それでも言う事を聞かなかった場合にした方がよいと思います」
 なっちゃんが語った。
「生ぬるいよ」
 多香子が語る。押し問答が十五分ぐらい続き、結局彼女達は過去同様仲違いした。
「じゃあ、私はここを出て行き他の所でオープンチャットを作るけど、いい?」
 多香子が語る。
「いい」
「その際、私がここに連れてきたメンバーは私が全部連れ出すけど、これもいいよね?」
「いい」
 ラインに多香子からメッセージが入った。
 一緒に出て行こうと。
 過去同様のメッセージを私は返した。
 多香子が新しく作るオープンチャットにも行くけど、なっちゃんとも友達でいたいから、ここにも残るよ、と。
 ラインに分かったと多香子からメッセージが入った。
 多香子はなっちゃんのオープンチャットに、自分がこれから作るオープンチャットの名前は多香子の優しいメンタルチャットにするからと、語った。
 こうして、私は二つのオープンチャットに行く事になった。
 しばらくして、多香子のオープンチャットが出来、そこに行くとなっちゃんの悪口を言っていた。多香子、プリニー、由美、おちびちゃんの四人で。
 静からラインにメッセージが入った。
 みんなでなっちゃんの悪口を言い合っているけど、どう思うと。
 悲しい気持ちになると返した。
「人の悪口を言うと品が悪くなるよ」
 多香子のオープンチャットで静が語る。
「そうね、やめようやめよう」
 多香子が語りみんなが静まった。

 三ヶ月ぐらいして、朝の支度をしている時に多香子からラインにメッセージが入った。
 昨日、オープンチャットに来なかったけど、どうしてたの? と。
 過去のように、正直に答えてはいけないなと思った。過去の私はなっちゃんの部屋に荒らしが入っていたから、守っていたとメッセージを返した。その私の行動を多香子は気にくわなかったようだ。多香子のオープンチャットを強制退会させられ、ラインをブロックされたから。
「昨日はずっとテレビを見ていたよ」
 返すと、嘘ね、と多香子は語った。
「えっ?」
 とぼけてみる事にした。とりあえず、状況を調べ見極めない事には、と思う。迂闊な事を言ったら、悪化しそうだった。
「おちびちゃんになっちゃんのオープンチャットにスパイとして入ってもらっているの。名前を変えてもらってね。だから、昨日博士がなっちゃんのオープンチャットを荒らしから守っていた事、分かっているから」
 博士というのは私のハンドルネームだ。どうしてこのハンドルネームにしたかというと、いろいろな事を分析したり調べたりする事が好きだから。
「知ってて、聞いてきたのね」
「あなたは嘘をつくのね」
 まずい、と私は思った。
 このままでは、過去のように断捨離される。
 流れを変えようと思った。苦肉の策だけど、二人で話すよりみんなを巻き込んだ方がうまくいきそうな気がする。
「ねー、多香子?」
「何?」
「二人で話すよりみんなにもジャッジしてもらうのはどう?提案だけど」
「いいけど。あなたの味方は静ぐらいしかいないと思うよ」
「それでもいいよ」
「みんなが集まれるかどうか分からないけど、二十時に集合してほしいと個チャでみんなに送るけど、二十時来れる?」
「来れる」
 仕事を終えて、お家に帰り家事やお風呂を済ませCDプレイヤーでペルソナ4の音楽を聴きながら、二十時になるまで時間を潰した。
 私は多香子の優しいメンタルチャットに入った。多香子、プリニー、由美、おちびちゃん、静と挨拶を交わす。すぐに、多香子が切り出してきた。
「博士、どういうつもり?」
「どういうつもりとは?」
「なっちゃんの部屋守っていたでしょ?」
「それっていけない事なの」
「あれだけ、みんなが悪口を言っていた相手よ。あいつは性格が曲がっているの」
 みんなという言葉がひっかかるし、なっちゃんの良い部分をよく知っている私は、違う、と思った。
 みんなという言葉は皆の強調後である。私や静はみんなの中に含まれていない。そもそも、多香子が語るみんなというのは同調圧力だ。もしも、私以外のみんながなっちゃんの悪口を言っていたとしても、私が同調する必要はないはずだ。私は個人的になっちゃんを評価してもいいはずである。
「みんなって何?」
 私が語る。
「は?」
「私は悪口に同調していないし、静も同調していないよ」
「静はともかく、あなたは黙っていた」
「黙っていただけよ。成り行き上そうぜるをえなかったから」
「黙るって事は認めるのと同じ事よ」
 私は溜め息をついた。それは多香子の考え方だ。
「ああいう状況で反論する勇気はなかった」
「あなたは弱い人間ね」
「弱かったり汚い部分があるのが人間じゃないの?」
「開き直るのね」
「開き直るの語源あなたは知らないの?」
 静が割って入ってきた。おそらく助け船を出すつもりなのだろう。私は感謝した。
「語源?」
 多香子が語る。
「博士と人間の弱い部分や汚い部分について、私はよく話しているんだけど、別に開き直ってもいいの

「何言っているの? 弱い部分や汚い部分は消さないといけないじゃない。それから語源は何?」
「順を追って話すね。自分の弱い部分や汚い部分を理解してあげたり、労ってあげる事も必要なの。でなければ、誰が自分を癒してあげられるの? 精神科医? カウンセラー? 彼等も癒してくれるかもしれないけど、本当の自分は自分しか癒せないの」
「本当の自分?」
「開き直るの語源。開き直るは、開き+直るでできているの。開きはふさがっていたものが空くという意味の他、わだかまりがなくなるという意味がある。一方、直るは元の良い状態に戻るという意味がある。実は開き直るは、元々心のわだかまりが取れて良い状態に戻るという意味や、反省して態度を改めるという意味で使われていたの」
「ふーん。で?」
「弱かったり、汚かったりするのが本当の自分ならそれでいいんじゃない?」
「反省して態度を改めるという意味もあるんでしょ?」
「うん。心のわだかまりが取れて良い状態に戻るという意味もあるよ」
「つまり?」
「心が弱いとか汚いとか、そういう部分を直すんじゃなくて、固執するんじゃなくて、そういう発想のわだかまりを取って良い状態に戻すの。その良い状態が本当の自分」
 喉が乾いてきた私は、二階の自室から一階のリビングに行き、コーヒーを、入れ、飲んだ。
「じゃあさ、その汚い自分とやらが快楽殺人者だったらどうするのよ?」
「快楽殺人者の心を持っているの?」
「極論を話しているの」
「そうね。それでも、と思う。それを実行に移すといけないけれど、理解してあげたり労ったりする事はできるわ。そうしなければシャドウに支配される事もある」
「シャドウ?」
「シャドウというのはユング心理学の概念で、抑圧している自分の事を指すの」
「難しいよ」
「ユングはね、他者に見せる自分をペルソナと言っている。一方シャドウはそれとは正反対の自分」
「は?は?」
「説明するから待って」
「静もういいよ。ここからは私が説明するから」
 私が語る。
「うん」
 静が語る。
 静にいつまでも話しを任せなかったのは、私が多香子に伝えたい、そう思ったからだ。
「ペルソナという言葉は、元々ギリシャやローマで演劇の際に被られる仮面を指していた。それでね、ユング心理学ではペルソナ、つまり、仮面は周りの人に見せる自分という意味で使われているんだ。この仮面は一つだけじゃなく幾つもあって、TPOに応じて使いわけている、というのがユングのペルソナの概念。わかりやすく言うと、家族の前では相談役かもしれないけれど、恋人の前では甘えん坊かもしれない。一方、シャドウは普段は押さえ込んでいる自分なの。シャドウ、まさに、影。たとえば、私なら普段人を断捨離しないけれど、断捨離する人を見て、自分も断捨離したいと思う事もある。その断捨離したいと思う自分が私のシャドウ。シャドウを抑圧しすぎるとね、何かの拍子に表に出る。私なら誰かを断捨離してしまうという事よ。シャドウはね、肯定してはいけないし、否定してもいけないみたい。だけど、理解しようとしたり、労る事はできる。そうすると、人間的に成長出来るみたい。で、ね、本当の自分ていうのはペルソナだけじゃなく、シャドウも含まれるんだよ」
「なるほど。でも、私のカウンセラーは一緒に強くなりましょうと言うよ」
「それは、多香子がカウンセラーに自分がなりたい自分を要求してるからじゃないかな?」
「その概念はよくわかったけど、博士は馬鹿よ。私よりなっちゃんを選ぶもの。馬鹿、馬鹿、馬鹿」
「私は多香子に断捨離されたくない。一つ分かってほしいんだけど、私は友達としてあなたが好きなの。なっちゃんの事もね。許してくれるのなら、博士の優しいメンタルチャットというオープンチャットに来て。今から創るから」
「考えとくわ」
 考えとくという言葉は多くの場合やんわり断る時に、使われる。少なくとも私の経験上ではそうだ。でも、多香子ははっきりした性格である。それは、本当に考えとくなのだろう。
 私は自ら多香子の優しいメンタルチャットから退会し、博士の優しいメンタルチャットを創る事にした。多香子の優しいメンタルチャットを自ら退会したのは、勘が働くからである。その方が流れを変えられそうな気がするのだ。
 私は博士の優しいメンタルチャットを創った。そこに、なっちゃんも誘おうと思った。多香子の事、なっちゃんの事を考えると、身体が震える。不安だった。過去において、多香子に断捨離されたとなっちゃんに報告すると、ぶざまねと言われた。そして、旗色を鮮明にしていないあなたの事が嫌いだから、この際バイバイするわとも言われ、彼女からも断捨離されたのである。だから、また過去のようになっちゃんからも断捨離されるおそれがあった。しかしながら、今は流れを変えようとしている。自ら多香子の優しいメンタルチャットを退会したし、博士の優しいメンタルチャットを創った。私はなっちゃんのラインにメッセージを送った。
「今、博士の優しいメンタルチャットというオープンチャットを創ったから来てほしい」
「行きたくない」
「どうして?」
「多香子来るかもしれないじゃない。あなたと多香子とのやり取りをプリニーと由美から聞いている。あの二人は私のスパイなの。スパイを送られるとも知らないで、馬鹿ね、多香子は」
 驚いた。あの二人はなっちゃんの悪口を言っていた筈だ。
「あの二人、なっちゃんの悪口を言っていたけど」
「それは、二人から聞いている。多香子を安心させる為に、そうしたと報告が来たから、大丈夫なの」
 どちらにしろ、なっちゃん、あなたも多香子からスパイを送られているんだよ。言いたくなったがやめた。言ってしまうと、二人の関係が余計にこじれそうだった。
「とにかく、待っているから」
 私が語る。メンタル相談室は退会しないでおいた。旗色をなっちゃんの方に傾けているというポーズを創っていた方が良さそうに思えたからだ。博士の優しいメンタルチャットが検索に引っ掛かるまで、一日ぐらいはかかるだろうか? 気長に待つ事にした。
 一日経ち、多香子となっちゃんが博士の優しいメンタルチャットに訪れてくれた。二人共、過去の私を断捨離したとは思えないぐらい、優しく接してくれる。
 でも。
 多香子となっちゃんは険悪なままだった。二人は互いに暴言を吐きあっていた。その姿勢は、私を少なからず嫌悪させた。暴言は、私の父や母を連想させるのである。自己分析してみて、私のシャドウの一つは暴言を吐きたがっている事はわかっている。二人を嫌悪してはいけないなと思った。
 目が開いた。私はベッドの上にいた。見知らぬ部屋で、病院かと思われた。酸素ボンベと点滴の管と尿道カテーテルが私の身体についていた。心電図のパッドはついていなかった。おそらく、生死の境の危険な山を越えてしまったからだろう。あれは、全部夢だったんだ。そう思うと涙が溢れてきた。私には友達がやはり一人もいないのだ。一縷の望みをかけてみようと思った。祖母に連絡し、スマホを持ってきてもらおうと思った。もしかしたら、スマホには十六人の友達が登録されているかもしれない。
 大量の薬を飲んだせいか、頭がぼーとする。
 酸素ボンベ、点滴の管、尿道カテーテルの順に外した。ベッドの周りがカーテンで仕切られていている。私は立ち上がってカーテンを開けて、ベッド周りを出た。病室は四人部屋になっている。気配はするが、人の姿は見えない。カーテンで仕切られている為だ。病室を出て、ナースステーションを探す事にした。
 歩いていると、壁が見えた。逆の方へ足を進める事にした。その方向に、ナースステーションはあった。ガラス越しに、若い看護婦の姿と四十代ぐらいの看護婦の姿が見え、私は四十代ぐらいの看護婦と目を合わせた。彼女の方が優しそうに見えたからだ。
「あの?」
「何でしょうか?」
「電話を貸して頂けませんか?」
「分かりました。少々お待ち下さい」
 彼女は言って、ガラスを支える台とガラスの設置部分の空いている所から電話を差し出してきた。私は受話器を取って、実家に電話した。四回目のコールで電話が取られた。
「はい、橘です」
 祖母の声だった。
「おばあちゃん、私、花音。スマホを病室まで持ってきてほしいの」
「呆れた。第一声がそれ。心配していたのよ」
 私は何日ぐらい寝ていたのだろうか。祖母からしてみれば、その間心配していた事は私にも容易に理解できる。祖母を心配させた事、胸が傷んだがそれどころではない。でも、謝るのは筋だった。
「ごめんなさい」
 十秒程だろうか、沈黙が流れた。
「まあ、いいでしょう。スマホね。ちょっと待ってて」
 病室に戻り、私は自分のベッドで、寝転がった。待っている間に、誰か女性の話し声が廊下から聞こえてきた。
「アタPをお酒と一緒に飲んだそうよ。点滴や尿道カテーテルを勝手に外して。全く何を考えているのかしら」
 わざと聞こえるように言っているのだろうか? 確かに、勝手したのは悪かったかもしれないけれど、悔しかった。何か言ってやりたいという気持ちを抑えた。
 電話をかけてから、一時間ぐらいが経ち、私のいるベッド周りのカーテンが開かれた。祖母だった。
「花音、はい、スマホ。身体は大丈夫?」
 スマホを差し出された私は、受け取った。
「大丈夫、薬のせいか、頭が少しぼーとするけど」
「何か欲しいものある? ジュースでも買ってこようか?」
「悪いけど、本当に悪いけど、今は一人でいさせてちょうだい」
「分かった」
 怒りにまみれた声で言う祖母は、カーテンを開けて出ていった。
 スマホを操作する。私のラインには四人しか友達が登録されていなかった。多香子、なっちゃん、祖母、会社の上司。多香子となっちゃんのラインを見たが、やはり既読はついていなかった。多香子となっちゃん、かつての私に言ってやりたかった。人付き合いに責任を持て、簡単に断捨離するなと。怒りで落ち着かなくなってきて、私は病室の外に出る事にした。病室を出た所で、私は驚いた。看護婦の制服を着た静がいたからだ。十一年ぶりに見たが、顔の輪郭やら、パーツやらですぐに分かった。静の私を見る表情は心配そうだった。
「花音」
 私を呼ぶ声にも、心配そうな響きがあった。
「私を嗤いにきたの?」
 違う事はわかっている。わかっていた。でも、何故か自分でもわからないけど、そんな言葉が出た。
「違うよ、花音。どうして、アタPを飲んだの?」
「話したくない」
「ねー、花音。こんな時になんだけど、また、あなたと学生だった頃みたいに、どこかに遊びに行きたい」
 彼女の語勢は強かった。
「私と、また?」
「うん」
 嬉しくなって、私の頬に暖かいものが伝った。でも、一秒で冷静になり、暖かかったものを手の平で拭った。
「私はあなたを断捨離したのよ。同情してるだけでしょ? 私が自殺未遂したから」
「違う。花音、私はずっとあなたの事が好きなの。断捨離された後も、あなたの事が気になっていた」
「静」
 私は小さな声で彼女を呼んだ。
「花音」
 彼女も小さな声で、私を呼んだ。
「静」
 私は声のボリュームを上げて彼女を呼んだ。
「花音」
 彼女も声のボリュームを上げて私を呼んだ。
「ありがとう、静」
「もっと話したいけど、今は仕事があるから。また、あなたに会いにいくからね」
「ありがとう」
 私は病室に戻り、再びベッドで寝転がった。二時間ぐらい経った時、近づいて来る足音が、カーテンの外で消えた。
「開けていいかな?」
 男性の声だった。
「はい」
 カーテンが開けられた。医師の白衣を着た男性の姿があった。医師からいろいろな事を聞かれた。
「人の身体は簡単に死ねないように出来ているんだ」
 嘘だという事はわかっていた。この病院に運ばれて、ベッドで眠る前に、今夜が山ですねという声を聞いたから。でも、事実を言って医師を困らせたくなかった。たぶん、医師も私に死んでほしくないと思っているに違いない。
「安心して下さい、私はもう自殺しようとなんてしませんから」
「本当に?」
「本当です」
 安堵の表情を医師は浮かべた。夢が私を導いてくれたから、もしも、静に断捨離されたとしても、私は自殺を図らない。シャドウを嫌悪してはいけないから。退院したら、父と母に会いに行こうと思った。暴言を吐かれ暴行をされた事、正直、今でも受け入れるのは難しいけれど、両親が私を愛してくれた時の事、その思い出は心に詰まっている。刑務所に入れた私を両親は許してくれるかわからないけれど、好きだと伝えようと思った。
END

断捨離

執筆の狙い

作者 小次郎
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自分にしては長く書けたんですが、小説になってないと思います。これを小説にするにはどうしたらよいでしょうか?

コメント

南の風
softbank060091003055.bbtec.net

読ませて頂きました。
LINE のオープンチャットやスパイ、ODなど今時の言葉がたくさん散りばめられていて、正直今の若い人たちの精神的な日常は大変だなあと思いました。
小説として気になったのは、大きな視点が足らないことです。景色や風、匂い、肌感覚などです。小さく小さくなってしまうと読む方も苦しくなってしまいます。
小説とは何でしょう。
私は最近考えるのですが、小説とは作者の「理想の表出」ではないかと思うのです。
現実社会は苦しいことがいろいろあるけれども、自分が書く作品の中では美しいものを書こうという、ひょっとすると「自分のため」なのかもしれません。推敲の時間も、わかりやすく読みやすくする読者向けの目的もありますが、実は「私の理想はもっともっと高くて美しい」という自分に向けた行為かもしれません。
その意味では、もう少し理想を大きく書いてもいいかもしれませんね。
よく書けていると思いますよ。また読ませてください。

小次郎
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南の風様。
お読みいただきありがとうございます。
オープンチャットは、最近の言葉ですが、ODは十年以上前から、スパイはもっと前からあったと思いますよ?
確かに、肌感覚などの五感が少ないですね。言い訳になってしまうんですが、この物語のシーンがチャット多くて、五感を挿入しにくかったです。でも、他のシーンで挿入する余地ありましたね。理想というと、芸術的な表現という意味でしょうか? 難しいですが善処してみたいですね。

矢追弦音
janis220254000132.janis.or.jp

読ませていただきました。
私はまだ書きはじめたばっかりですので専門的なことは言えませんが、とてもいいと思いました。
歌の歌詞をいれるとか、、、参考になりました。
私、学生ですが異邦人という曲が大好きです。
また読ませてください。

小次郎
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矢追弦音様。
お読みいただきありがとうございます。
異邦人をこの物語に取り入れたのは、作品のイメージとリンクするからです。上手く機能していたらよいんですが。
とてもいいとお褒めいただき嬉しく思います。

夜の雨
ai226128.d.west.v6connect.net

「断捨離」半分過ぎまで読みました。

多香子の反乱で、なっちゃんのオープンチャットにスパイを入れてまでして、壊そうとする展開。
主人公の「花音」は以前精神的に破たんしたことなどがあり、仲間や友人に切られることに対して不安に思っている。

この作品、かなり重い内容ですね。
主人公の花音が精神的に壊れているようなキャラクターのところに、友人の「静」が「自殺マニュアル」とか、いう本を見せるというか、あげるから。どんどん精神的に追い込まれるような個性になっていく。
「静」という友人もしっかりと内面やら人物像を描くと深くなると思います。

御作は、太宰の「人間失格」並みの重さです。
まあ、太宰の作品は読みやすいですけれど。
御作は、多香子が出てきてから、読みやすくなりました。
これは、エピソードが具体的で状況がわかりやすいからだと思います。
ということは、前半はエピソードが具体的でなく、状況がわかりにくい。
そのあたりは、必要な情報を書かないで飛ばしているからだろうと思います。
主人公の花音が精神的に壊れた理由が、エピソードではなくて説明的だったためだろうと。
まあ、10代のときの状況がしっかりと描かれていなかった、からだろうと思います。


多香子が出てきてからの御作は具体的なエピソードで状況が語られいるので、わかりやすく、人間関係もやばそうなところが、怖いが、展開的には面白い。

第三者の読み手の私からすると、なっちゃんのオープンチャットから出たんだから、ちょっかい出したり、スパイする必要はないと思いますが。
このあたりの登場人物の、個々人の動きが面白いですね。

多香子のエピソードから、外に向けた作風になりましたので、わかりよくなった。

全体的には、「裡に」「こもる」ような作風です。

それでは、引き続いて後半読みます。

小次郎
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夜の雨様。
お読みいただきありがとうございます。
なるほど、具体的な描写が足りなかったのですね。ふむふむ。
中盤あたりから、わかりやすくなったみたいで。ここからは、しっかり書けているのですね。よかったー。

夜の雨
ai226128.d.west.v6connect.net

「断捨離」読了しました。

この作品、構成がややっこしいですね。
主人公の「花音」が精神的に不安定なところに「自殺マニュアル」というような本を友人の「静」が見せるところから、人間関係がやばそうなのですが。
花音は両親に虐待を受けていて。
執行猶予ではなくて、刑務所に入れられるぐらいだから、相当ひどいことをされたのだろうと思いますが。
具体的なエピソードがないので、両親の虐待がどの程度かは、わかりません。
まあ、体に傷があるとかで中学生の時に公的機関に相談して両親は服役。
そうなると生活はどうなったのだろうとか、考えてしまいます。
祖母がいましたが。
生活のことについては、書かれていません。

友人の「静」との関係も「断捨離」したということですが、そのエピソードもありません。
まあ、「自殺マニュアル」を精神が不安定になっている花音にわたすような友人は切った方がよいかもしれませんが。
こういった主要登場人物のキャラクターや関係性はしっかりと描いておいた方が、読みやすくなります。何度も、読み返さなくてよい。

「花音」が自殺未遂を起こした決定的な動機もいまいちわかりません。
大騒ぎして入院ということになったわけですが。

そこからなっちゃんのオープンチャットで多香子と仲良くなり職場での悩みの相談に乗ってもらう。
ところがしっかり者の多香子がなっちゃんと揉めて、自分で別のオープンチャットを作った。
仲間の引き抜きとかがあり、スパイやら逆スパイとか、すごい展開。
上にも書きましたが第三者の私から見ると、そんなに揉めるような内容かなと思いますが。
実際に「作家でごはん」のサイトやらを見ていると、揉めまくりですが。
そういうところから、チャットなどの場合だとリアルではないので、揉めたりするのかなと思います。
そういえば昔ヤフーでチャットをしていたときに、グループみたいなのを作っていて、よそ者を攻撃していた者もいましたね。
御作ではこの「オープンチャット」絡みから、話がかなり動いているので、そのあたりが面白いですが。
それにしてもみなさんリアルな生活があるので、オープンチャットなどは趣味の一つと考えればよいのに。
ひとつで揉めれば、新しいチャットを作る。
このあたりがゲーム感覚ですね。
主人公が死ねば、その前の場面から始めるとか。と、同じ。

御作に戻ると。
主人公の「花音」は、病院で「オープンチャット」の夢を見ていたという展開、になるのですかね?
このあたりがわかりにくい。
それとも「オープンチャット」で人間関係が揉めて、壊れたから自殺未遂を花音はおかした。
話の節目のところが、わかりにくいですね。
ちなみに「静」は、いつのまに花音が入院している病院の看護師になったのですかね? 驚きました。静の看護師には、何か設定上の意味があるのですか?
「なっちゃん」とは、どういう関係で知り合いになっているのか、エピソードとかで書いておいた方がよいですね。ちょっと人間関係が希薄だと思います。だから、簡単に「断捨離」してしまう。

全体では面白かったですけれどね。
御作は、もっと地の文章とかを入れると、よくなるのでは。

それでは頑張ってください。


お疲れさまでした。

ウオッチャー
sp49-96-27-201.msd.spmode.ne.jp

「自殺マニュアル」と言う本ですか? ネットの闇サイトなら分かりますが、どこの出版社がこんな本を出版出来るんですか? 大手では有り得ないですね。アングラ出版社? 販売ルートは? 採算合うほど売れますか? それとも自費出版?

すいません。そればかり気になってしまって……

小次郎
121-85-44-6f1.hyg1.eonet.ne.jp

夜の雨様。
再訪問ありがとうございます。
そうです。オープンチャットの夢を見ていたという展開です。
静が花音が入院している病院の看護士になっていたのは、偶然ですが、もっと主人公の驚き感を書いた方がよかったですね。まだまだ、書く余地があるというご指摘、確かにと、思いました。

小次郎
121-85-44-6f1.hyg1.eonet.ne.jp

ウォッチャー様。
お読みいただきありがとうございます。
二十年以上前に、出版された本で完全自殺マニュアルというものがあります。当時、本屋で売られておりました。
今もネットで買えます。
そこそこ有名だと思いますよ。採算取れているかどうかはわかりかねます。

通りすがり
119-173-139-201.rev.home.ne.jp

小次郎さま。ちゃんと小説になってると思いますよ。
「完全自殺マニュアル」はベストセラーになって、
そのあと問題になって、今は「安易に読まないで」
みたいな注意書きをつけて、ビニール梱包で書店売りも
されてたような。

下校のバス停で、刺激的な本を、友達が差し出す、
というのが唐突すぎてもったいないかな、と。
主人公の反応も冷静すぎのような。

すでに、存在を知ってて読みたいなーと思っていたり、
買って熟読している、実行するなら、あの方法、
それとも、なんて思ってるけど、すっとぼける、とか。

薬物~救急車~病院での処置とかが、冗長に感じました。
でも、描写力を鍛えるのに良いチャレンジですね。
自分でしたら、どの方法を選んだかは、ぼかすかも
しれません。いろいろ話題になりましたが、
「完全自殺マニュアル」は良本だと思うので、
読者を増やしたいという意図で、「~へ行くことにした」
とか「~を買おうとしたら咎められたので、変更」とか
そのくらいにとどめ、具体的な方法は飛ばし、
気がついたら、親がパニック状態とか、救急車の中みたい、
病院のベッドで寝ていた、としようかな、と。

「断捨離」がそういう事になされるんだ! と、
ここは不謹慎ながら、斬新でいいと思います。
ネットがある分、むかしより、人付き合いに過敏な不憫さが
出てますね。学校が授業でタブレットを支給したり、
合わない学校、クラスだったら、授業中も休み時間も、
相互監視感覚、息苦しさ、さらに割り増しでしょうね。
「もう、いらない」と切るしかできない不器用さに
読者を引き込めたら、すごくなりそうです。
主人公だけじゃなく、全員の鬱屈も、それぞれのキャラ
らしく出たらいいと思いました。親や先生も。

一年くらい前、奥さんの遺品がどうしても処分できなかった
男性が、施設に入ることになり持ち込みに制限があるので、
とイヤイヤ着手、でも、気持ちが変わっていって、という
「感謝離(かんしゃり)」という本を読んで、
不覚にもこみあげるものがありました。映画にも
なってたんですね。もとは新聞への投稿だったそうですが、
本当に共感を得ると、ネットがある分、反響が大きいですね。

そんな作品になりえるのでは。

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